Good News Ministry

聖書的観点から見た世界の社会的、政治的、文化的、地域的現実を捉え、祈り備える。

EU ロシア対応で温度差

2018年03月27日 | 世界情勢
欧州連合(EU)は英国での神経剤襲撃事件で、多くの加盟国がロシア外交官の国外追放で協調し、英国に対する連帯を示した。だが、同調しなかった国も少なくない。背景にはロシアとの政治・経済的な結びつきが指摘される。EUとしての共通外交でなく、各国の主権に基づいた措置は一方でロシア対応での温度差も浮かび上がらせた。北大西洋条約機構(NATO)を含め、これまでに追放を決めたのは欧米28カ国・機関で対象者は150人以上。英国を含むEU28カ国では19カ国が追放を決める一方、9カ国が見送った。これらには駐NATO ロシア外交官150人追放露大使の召還でEUとしての協調を示した国もある。

追放を見送ったオーストリアのクルツ首相は「われわれは中立国であり、東西の橋渡し役」と理由を説明する。同国は戦後、永世中立国を宣言。冷戦終結後にEUに加盟したが、NATOには未加盟だ。ただ、昨年末に発足した現政権は極右の自由党と連立を組む。ロシアは近年、ポピュリズム(大衆迎合主義)が台頭する欧州で、同党など各国の極右政党との関係を構築。自由党の政権入りで懸念されたオーストリアの対露融和姿勢が表れたともいえる形だ。ブルガリアのボリソフ首相はEUの現議長国との立場から「意思疎通の手段を維持する」と追放見送りを説明するが、同国では文化や宗教が近いロシアに親近感が強く、民族主義的な連立相手や大統領が親露派。合意形成が困難なようだ。

旧共産圏ではロシアへの接近が目立つハンガリーが追放に同調したが、スロバキアは踏み切らず、対露強硬派のポーランドやバルト三国との相違を見せた。財政危機に陥るギリシャはチプラス政権が近年、特にロシアとの関係を強化。EUの対露経済制裁にもかねて批判的だ。ギリシャと関係が深いキプロスは金融機関がロシアの資金に依存しているとの事情もある。小国には対抗措置で数少ない駐露外交官が追放されると現地の大使館業務が滞るとの懸念もある。ただ、小国でもマルタの場合、EU域内も自由に移動できる同国の市民権を巨額投資などとの引き換えで露富豪にも売却しており、「関係を崩したくない」(独メディア)との見方も出ている。(4/01/2018 産経新聞)

◾️EU ロシア外交官150人追放
英国でロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)のスクリパリ元大佐らが神経剤で襲撃された事件に絡み、北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は27日、ロシア代表部の外交官7人を追放すると発表した。NATOはこのほか露側が申請した外交官3人の登録を保留。ロシア代表部の人員規模を現在の最大30人から20人に縮小させる。ストルテンベルグ氏は「容認できない危険な振る舞いには報いがある」と述べた。英国に足並みをそろえた露外交官の国外追放は27日も相次ぎ、アイルランドやモルドバも表明。ロイター通信などの集計では、NATOを含め27カ国・機関、150人に上る。メイ英首相は26日、「ロシアが国際法を無視し続けることができない最大級のメッセージを連帯して送る」と述べ、各国の動きを歓迎した。(3/28/2018 産経新聞)


▪️米政府 ロシア外交官60人追放
英国でロシアの元スパイらが神経剤を使われたとされる殺人未遂事件の報復措置として、トランプ米大統領は26日、米国駐在のロシア外交官60人を国外追放し、シアトルのロシア総領事館を閉鎖するよう命じた。また欧州連合(EU)の28加盟国のうち14カ国も同日、ロシア外交官の国外追放を決定し、米欧とロシアの対立が激しくなるのは避けられない情勢だ。米政府によるロシア外交官の追放は、1986年に当時のレーガン大統領がスパイ活動で旧ソ連の外交官約80人を追放して以来最多とみられる。米国から追放される60人のうち48人が在米ロシア大使館、12人がニューヨークのロシア国連代表部所属という。退去の猶予は1週間とした。また、シアトルの総領事館閉鎖は、潜水艦基地やボーイング社の拠点が近いことが理由だという。ホワイトハウスは声明で「ロシアが英国で兵器級の化学兵器を使ったことへの対抗措置だ」と強調。

ロシアの情報当局者が米国で外交官の名の下にスパイ活動に従事しているとし、「今回の措置により、ロシアの米国でのスパイ活動や安全保障を脅かす工作をする能力を減少させる」とした。ログイン前の続き米高官は記者団に「我々の友人を攻撃すれば、ロシア政府は深刻な代償に直面する」と強調した。一方、EU首脳会議のトゥスク常任議長は会見で「数日、数週間のうちにさらなる追放など追加措置もありうる」と述べた。AP通信などによると、欧州各国が追放するロシア外交官はドイツ、フランス、ポーランドが4人、リトアニアやチェコが3人、デンマークやイタリアが2人など。計約30人に上るという。EU外ではウクライナも13人の追放に踏み切った。今月22、23日に開かれたEU首脳会議では、事件はロシアに責任がある可能性が極めて高いという英国の判断を支持することで一致。駐ロシアEU大使を召還することも決めていた。欧州各国がロシア外交官追放の動きに同調するのは、事件の責任がロシアにある可能性が「極めて高い」とみる英国の判断を支持し、足並みをそろえてロシアに制裁を加えるものだ。ロシア包囲網は格段に強まっている。ロシア外務省は26日に声明を出し、各国の措置を「英国と連帯した挑発行為だ」と批判。「非友好的行為には対応する」と、報復措置を取る考えを示した。(3/27/2018 朝日新聞)

ボルトン米大統領補佐官「恫喝外交」助長の懸念

2018年03月23日 | 世界情勢
トランプ米大統領が22日、外交・安全保障政策の司令塔となる大統領補佐官(国家安全保障問題担当)にジョン・ボルトン元国連大使の起用を決めた。ボルトン氏はかつてイラクへの単独攻撃を主張したタカ派。北朝鮮への先制攻撃を唱え、中国にも強硬姿勢をみせる。国際協調を軽んじ、相手国を恫喝して譲歩を引き出すトランプ外交の負の側面が助長される懸念をはらむ。トランプ氏は22日、ホワイトハウスにボルトン氏を招き、マクマスター現大統領補佐官の後任となることを打診した。ボルトン氏は同日のFOXニュースで自身の外交政策を問われたが、「まだ移行途中だ」として見解を明らかにしなかった。

同氏はブッシュ(子)政権でチェイニー副大統領らとともにネオコン(新保守主義派)の一角を占め、単独行動主義を重視する。これがトランプ氏が掲げる「米国第一」と共鳴するゆえんだ。トランプ氏は国務副長官への起用を検討したこともあるが、上院での承認が見込めず、見送りになった。大統領補佐官は議会承認が要らない。その人物が司令塔になれば、外交・安保政策の変容は不可避だ。「米国が北朝鮮を先制攻撃するのは、完全に正当性がある」。2月、ボルトン氏は米紙にこう寄稿した。米朝対話は意味がないとも指摘。トランプ氏と金正恩委員長の首脳会談に向けた調整が進むなかで、ボルトン氏の見解が影を落とす可能性がある。

イラン核合意に関してもかねて破棄をトランプ氏に促し、「目標はイランの体制転換だ」と発言した。マクマスター氏は国際協調にある程度は目配りし、破棄には慎重だった。トランプ氏はティラーソン国務長官の解任理由にこの問題での不一致を挙げている。核合意の破棄が現実味を増す。中国への強硬姿勢が強まるのも確実だ。ボルトン氏は米紙への寄稿で沖縄県の在日米軍を台湾に移すことを主張し、台湾との軍事協力の強化に前向きな姿勢をみせたことがある。中国をけん制するカードに台湾を使えば、中国の反発は必至。トランプ政権は貿易面でも中国への強硬姿勢に傾斜している。まず交渉相手を畏怖させ、その後に譲歩を引き出す外交姿勢が一段と鮮明になる。

トランプ氏は北朝鮮の非核化の意思を見極める米朝首脳会談を控え、マクマスター氏よりも「一枚岩」になれるとみたボルトン氏を選んだ。ボルトン氏はトランプ氏と頻繁に意見を交換し、直感に頼る政策決定を評価する。現実路線を志向するマクマスター、ティラーソン両氏らが去ることで、政権の権力構造にも変化をもたらす。マティス国防長官はティラーソン氏と連携し、トランプ氏の暴走を防ぐ防波堤となっていた。マティス氏はボルトン氏の強硬姿勢への警戒感が強い。政権を去ったティラーソン氏の後任のポンペオ米中央情報局(CIA)長官はトランプ氏の意向に沿った発言をする傾向があるとの見方がある。「もの申す」マティス氏が孤立すれば、トランプ氏の独断専行に拍車がかかる恐れがある。(3/23/2018 Reuters)

親イスラエル、親台湾でイラク戦争のある意味張本人。北対策に関しては「核放棄以外は何やっても無駄ぢゃ!!」という考えの人である。

CIA主導で米朝首脳会談

2018年03月20日 | 世界情勢
トランプ大統領から新国務長官に指名されたマイク・ポンペオCIA長官が、5月までに予定されるトランプと北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長による米朝首脳会談の実現に向け、事前交渉の陣頭指揮にあたっている、と米紙ニューヨーク・タイムズが報じた。現職米大統領とならず者国家の最高指導者による外交上最も大胆な賭けの一つとして注目を集める米朝首脳会談で、国務省は蚊帳の外に置かれ、代わりに情報機関が暗躍している現状が浮き彫りになった、とニューヨーク・タイムズは書く。ポンペオはCIAと北朝鮮の間に設けた裏の外交ルートを通じて、北朝鮮当局者と水面下で接触しているという。

ポンペオは昨年5月、米バージニア州ラングレーにあるCIA本部の中に北朝鮮の核・ミサイル問題を専門に扱う内部組織「コリア・ミッションセンター」を新設したと発表。「CIAはアメリカや同盟国に対する北朝鮮の重大な脅威に対処するため、これまで以上に資源を集中投下できるようになる」と、彼は言った。ポンペオが自ら北朝鮮との交渉にあたっていることから、なぜトランプがレックス・ティラーソン米国務長官を突然解任したのかも説明がつく、とニューヨーク・タイムズは書く。トランプは3月8日に金正恩からの首脳会談の要請を受け入れて以降、自分とウマが合う国務長官への交代を望んでいた。

ティラーソンは以前から北朝鮮との対話路線を主張するなど、重大な外交方針をめぐってホワイトハウスと意見が対立していた。良い例は昨年10月、中国訪問中に北朝鮮との対話に意欲を示したティラーソンに対し、トランプがツイッターで「小さなロケットマンと交渉しようとしても時間の無駄」とおおっぴらに批判したことだ。ポンペオは、ティラーソンと違い対北朝鮮強硬派だ。北朝鮮の体制転覆に含みを持たせたこともあり、金正恩との直接交渉には懐疑的と見られている。昨年7月には北朝鮮の人々は「(核兵器よりも危険な性格の)金正恩が去るのを見たいはずだ」と言って、北朝鮮を激怒させた。ポンペオが国務長官に就任するには議会上院の承認が必要だが、手続きは難航しそうだ。ポンペオと、その後任としてトランプがCIA次期長官に指名したジーナ・ハスペルCIA副長官の登用に、民主党議員らは早くも懸念を表明している。2人とも、過去にテロ容疑者への水責めや拷問を容認していた、と米紙USATodayは報じている。(3/19/2018 Newsweek)

プーチン再選 スターリンに次ぐ長期政権

2018年03月19日 | 世界情勢
3月18日、ロシアで大統領選の投開票が行われ、現職のプーチン大統領が開票率ほぼ50%の段階で75.0%の票を獲得し、再選が確実となった。任期は6年で、2024年までとなる。プーチン氏は2000年以降、大統領または首相として政権を担ってきた。今回の再選により四半世紀近くにわたりロシアを支配することになり、旧ソ連の指導者スターリンに次ぐ長期政権となる。プーチン氏は欧米に対する防衛を強化し、生活水準を引き上げると表明している。プーチン氏の勝利は幅広く予想されていた。

今回の大統領選にはプーチン氏を含めて8人が立候補していたが、対抗馬として有力視された候補者はおらず、野党指導者ナワリヌイ氏は出馬を認められなかった。プーチン氏の次に得票率が高いのはロシア共産党のグルディニン氏(約13%)、続いて自由民主党のジリノフスキー氏(約6%)となっている。プーチン大統領は勝利宣言を行い、大統領選での勝利は厳しい状況下で達成したことに対する信任投票だと受け止めているとし、「この結束を維持することが非常に重要だ」と述べた。

英南部でロシア元情報機関員に軍用神経剤が使用された事件を巡り、ロシアと英国は外交的に対立している。プーチン大統領は18日、ロシアが同事件に関与したと考えることはばかげており、ロシア政府は英国側と協力する用意があると述べた。プーチン氏がいつまで実権掌握を望んでいるかは明らかになっていない。ロシアでは大統領の連続3選は認められておらず、プーチン氏は2008年、大統領を2期務めた後に首相に転じた。2012年から大統領の任期は、それまでの4年から6年に延長されている。(3/19/2018 Newsweek)

イラン核開発にサウジが対抗

2018年03月15日 | 世界情勢
サウジアラビアのムハンマド皇太子は、敵対するイランが原子爆弾を開発する場合、サウジアラビアも開発するとの考えを示した。CBSのインタビューで語った。インタビューの一部は15日公開された。インタビュー全体は18日に放送予定。皇太子の発言を受け、中東で覇権を争うサウジアラビアとイランの対立が核開発競争に発展する可能性が浮上している。皇太子はインタビューで「サウジアラビアは原爆の保有を望まないが、イランがそれを開発する場合、われわれは間違いなく、可能な限り早期に開発する」と発言。イランについて、サウジアラビアと並ぶほどの力は持たないと語った。イラン政府はこれに反発。イラン国営テレビは15日、ムハンマド皇太子は政治を知らない「妄想ばかりの世間知らず」だとする外務省報道官の発言を伝えた。(3/15/2018 Reuters)

トランプ大統領 ティラーソン国務長官を解任

2018年03月14日 | 世界情勢
トランプ米大統領は13日、自身のツイッターでティラーソン国務長官を解任し、後任にマイク・ポンペオ中央情報局(CIA)長官を充てることを表明した。ポンペオ氏について「彼はすばらしい仕事をするだろう」と記した。ティラーソン氏はトランプ氏が大統領選に勝利した後、2016年12月に国務長官に指名された。北朝鮮との対話路線を進めようとし、昨秋にはトランプ氏から「時間の無駄だ」と指弾されていた。トランプ氏が米朝首脳会談を承諾した時には、アフリカを歴訪中だった。

トランプ氏は13日のツイートで「ティラーソンのこれまでの貢献に感謝する!」とつぶやいた。またCIA長官の後任には、ジーナ・ハスペル氏を充てるとし「初の女性長官だ」とした。ティラーソン国務長官の解任を記したトランプ大統領のツイート全文は以下の通り。

マイク・ポンペオ中央情報局長官が我々の新しい国務長官になる。彼は素晴らしい仕事をするだろう! レックス・ティラーソン、これまでの貢献ありがとう! ジーナ・ハスペルが、新たなCIA長官になる。女性初のCIA長官だ。みんなおめでとう!(3/13/2018 朝日新聞)

2007年のシリア原子炉空爆 イスラエルが認める

2018年03月12日 | 世界情勢
イスラエル軍は21日、同軍の戦闘機が2007年にシリアのアサド政権が同国東部デリゾールで建設中だった原子炉を空爆、破壊していたと発表した。アイゼンコット参謀総長は声明で「イスラエルの存在を脅かす(核の)力の獲得を許さないというメッセージだ」と述べた。軍はこの日、作戦実行時の映像や写真も公表した。発表によれば、軍は2004年から原子炉に関する情報収集を始め、2007年9月5日夜から6日未明にかけ、稼働間近になった段階の原子炉に対して空爆を実施。「イスラエルや地域全体に対する核の脅威を取り除いた」と成果を強調した。アサド政権はイランの軍事支援を受けている。イスラエルが10年以上前の作戦についてこの時点で発表したのは、トランプ米大統領がイラン核合意からの離脱を警告する中、同合意の修正や破棄を求めるイスラエルに同調する機運が国際社会で高まるよう仕向ける狙いもあるとみられる。(3/12/2018 時事通信)

サウジ イスラエル発着便の領空通過を承認

2018年03月08日 | イスラエル情勢
インドの国営航空エア・インディアは、3月下旬に開設する首都ニューデリーとイスラエルのテルアビブを結ぶ航空便に、サウジアラビア当局が領空通過を許可したと明らかにした。ロイター通信などが9日までに伝えた。イスラエルと国交がないサウジは、イスラエル発着便の領空通過を認めておらず、これが初めてのケースになるという。サウジとイスラエルは長年対立してきたが、最近は双方が敵視するイランの台頭を受け、水面下で協力関係を構築しているとされる。

ロイターなどによると、エア・インディアは3月22日から週3回、ニューデリー―テルアビブ便を運航する予定。サウジ領空を通過できない場合に比べて飛行時間が約2時間短縮される。イスラエルの航空会社エルアル・イスラエル航空はテルアビブとインド・ムンバイを結ぶ便を週4回運航しているが、サウジ領空を通過できず、アフリカのエチオピアまで南下してインドに向かうルートを使っている。同社は、エア・インディアが「重大で不公平な利益」を得たと主張。国際民間航空機関(ICAO)に対し、エルアル航空便にもサウジ領空通過が認められるべきだとする書簡を送り、許可取得に向けた協力を求めた。(3/09/2018 共同通信)

戦略兵器の常識を変えるロシア

2018年03月02日 | 世界情勢
米トランプ政権が先月、打ち出したNPR=核兵器態勢見直し報告は、米国の戦略核兵器態勢が「主として1980年代かそれ以前に配備された」ものとして、事実上、米国の戦略核兵器が時代遅れになったと認めたもの。さらに、NPRは、5大国以外の核兵器保有やSSC-8巡航ミサイル保有による、ロシアのINF条約違反疑惑等、様々な事案にも対処するため、小型核兵器の開発に乗り出す構想を打ち出したものだった。戦略核兵器攻撃以外の事態にも、核兵器で抑止するというものであるため、議論を呼んだ。

プーチン大統領が1日の演説で打ち出した各種新兵器の構想は、予測はされてはいたものの、CGアニメなどを駆使して、大統領自らが公に説明するという点が注目される。これまで、静かに進めてきた構想をNPRに対する回答として、一気に吐き出したとも見える。読者は、石切り(水切り)という遊びをされたことはあるだろうか。平べったい石を川面や池に投げて、一度潜った石が再び、空中に飛び出て、水に潜り、再び水の上を跳ねていき、それを繰り返すというもの。

それを応用したのがロシアの新型ICBM、RS-28の極超音速滑空弾頭構想だ。従来のICBMの弾頭は、大気圏を飛び出た後、放物線を描いて、標的を目指すが、極超音速滑空弾頭は、大気圏を飛び出た後、大気圏と宇宙の間を跳ねるようにして目標を目指す。その結果、同じ標的に向かっても、従来の放物線軌道より、距離は、はるかに短くなり、時間的にも早くなるのが極超音速滑空弾頭の特徴だ。プーチン大統領が示したCGアニメでは、極超音速滑空弾頭がコースを変え、巧みに防空網を回避する様も描かれている(画像参照)。米国を中心に配備が進められる弾道ミサイル防衛も突破できると言わんばかりである。

さらに驚かされるのが、潜水艦に搭載される、核弾頭搭載大陸間魚雷とでもいうべきもの。1隻の潜水艦の前胴体にたった、1発が収納される。そして、潜水艦から放たれた後、長距離の監視網を掻い潜り、敵の艦船や沿岸を狙うというもの。西側には、恐らく、これに類する発想の兵器はないし、従来の軍縮交渉・条約に当てはまるカテゴリーがあったかどうかさえ不明だ。この兵器、または兵器構想を、交渉の枠内に入れようとするならば、全く新しい米露交渉が必要となるかもしれない。ロシアは以前から、米国を中心にすすむ弾道ミサイル防衛に反発しており、交渉の枠組みによっては、日本が北朝鮮の脅威に対して進めてきたミサイル防衛にも影響が出るかもしれない。(3/02/2018 ホウドウキョク)