欧州連合(EU)は英国での神経剤襲撃事件で、多くの加盟国がロシア外交官の国外追放で協調し、英国に対する連帯を示した。だが、同調しなかった国も少なくない。背景にはロシアとの政治・経済的な結びつきが指摘される。EUとしての共通外交でなく、各国の主権に基づいた措置は一方でロシア対応での温度差も浮かび上がらせた。北大西洋条約機構(NATO)を含め、これまでに追放を決めたのは欧米28カ国・機関で対象者は150人以上。英国を含むEU28カ国では19カ国が追放を決める一方、9カ国が見送った。これらには駐NATO ロシア外交官150人追放露大使の召還でEUとしての協調を示した国もある。
追放を見送ったオーストリアのクルツ首相は「われわれは中立国であり、東西の橋渡し役」と理由を説明する。同国は戦後、永世中立国を宣言。冷戦終結後にEUに加盟したが、NATOには未加盟だ。ただ、昨年末に発足した現政権は極右の自由党と連立を組む。ロシアは近年、ポピュリズム(大衆迎合主義)が台頭する欧州で、同党など各国の極右政党との関係を構築。自由党の政権入りで懸念されたオーストリアの対露融和姿勢が表れたともいえる形だ。ブルガリアのボリソフ首相はEUの現議長国との立場から「意思疎通の手段を維持する」と追放見送りを説明するが、同国では文化や宗教が近いロシアに親近感が強く、民族主義的な連立相手や大統領が親露派。合意形成が困難なようだ。
旧共産圏ではロシアへの接近が目立つハンガリーが追放に同調したが、スロバキアは踏み切らず、対露強硬派のポーランドやバルト三国との相違を見せた。財政危機に陥るギリシャはチプラス政権が近年、特にロシアとの関係を強化。EUの対露経済制裁にもかねて批判的だ。ギリシャと関係が深いキプロスは金融機関がロシアの資金に依存しているとの事情もある。小国には対抗措置で数少ない駐露外交官が追放されると現地の大使館業務が滞るとの懸念もある。ただ、小国でもマルタの場合、EU域内も自由に移動できる同国の市民権を巨額投資などとの引き換えで露富豪にも売却しており、「関係を崩したくない」(独メディア)との見方も出ている。(4/01/2018 産経新聞)
◾️EU ロシア外交官150人追放
英国でロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)のスクリパリ元大佐らが神経剤で襲撃された事件に絡み、北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は27日、ロシア代表部の外交官7人を追放すると発表した。NATOはこのほか露側が申請した外交官3人の登録を保留。ロシア代表部の人員規模を現在の最大30人から20人に縮小させる。ストルテンベルグ氏は「容認できない危険な振る舞いには報いがある」と述べた。英国に足並みをそろえた露外交官の国外追放は27日も相次ぎ、アイルランドやモルドバも表明。ロイター通信などの集計では、NATOを含め27カ国・機関、150人に上る。メイ英首相は26日、「ロシアが国際法を無視し続けることができない最大級のメッセージを連帯して送る」と述べ、各国の動きを歓迎した。(3/28/2018 産経新聞)
▪️米政府 ロシア外交官60人追放
英国でロシアの元スパイらが神経剤を使われたとされる殺人未遂事件の報復措置として、トランプ米大統領は26日、米国駐在のロシア外交官60人を国外追放し、シアトルのロシア総領事館を閉鎖するよう命じた。また欧州連合(EU)の28加盟国のうち14カ国も同日、ロシア外交官の国外追放を決定し、米欧とロシアの対立が激しくなるのは避けられない情勢だ。米政府によるロシア外交官の追放は、1986年に当時のレーガン大統領がスパイ活動で旧ソ連の外交官約80人を追放して以来最多とみられる。米国から追放される60人のうち48人が在米ロシア大使館、12人がニューヨークのロシア国連代表部所属という。退去の猶予は1週間とした。また、シアトルの総領事館閉鎖は、潜水艦基地やボーイング社の拠点が近いことが理由だという。ホワイトハウスは声明で「ロシアが英国で兵器級の化学兵器を使ったことへの対抗措置だ」と強調。
ロシアの情報当局者が米国で外交官の名の下にスパイ活動に従事しているとし、「今回の措置により、ロシアの米国でのスパイ活動や安全保障を脅かす工作をする能力を減少させる」とした。ログイン前の続き米高官は記者団に「我々の友人を攻撃すれば、ロシア政府は深刻な代償に直面する」と強調した。一方、EU首脳会議のトゥスク常任議長は会見で「数日、数週間のうちにさらなる追放など追加措置もありうる」と述べた。AP通信などによると、欧州各国が追放するロシア外交官はドイツ、フランス、ポーランドが4人、リトアニアやチェコが3人、デンマークやイタリアが2人など。計約30人に上るという。EU外ではウクライナも13人の追放に踏み切った。今月22、23日に開かれたEU首脳会議では、事件はロシアに責任がある可能性が極めて高いという英国の判断を支持することで一致。駐ロシアEU大使を召還することも決めていた。欧州各国がロシア外交官追放の動きに同調するのは、事件の責任がロシアにある可能性が「極めて高い」とみる英国の判断を支持し、足並みをそろえてロシアに制裁を加えるものだ。ロシア包囲網は格段に強まっている。ロシア外務省は26日に声明を出し、各国の措置を「英国と連帯した挑発行為だ」と批判。「非友好的行為には対応する」と、報復措置を取る考えを示した。(3/27/2018 朝日新聞)
追放を見送ったオーストリアのクルツ首相は「われわれは中立国であり、東西の橋渡し役」と理由を説明する。同国は戦後、永世中立国を宣言。冷戦終結後にEUに加盟したが、NATOには未加盟だ。ただ、昨年末に発足した現政権は極右の自由党と連立を組む。ロシアは近年、ポピュリズム(大衆迎合主義)が台頭する欧州で、同党など各国の極右政党との関係を構築。自由党の政権入りで懸念されたオーストリアの対露融和姿勢が表れたともいえる形だ。ブルガリアのボリソフ首相はEUの現議長国との立場から「意思疎通の手段を維持する」と追放見送りを説明するが、同国では文化や宗教が近いロシアに親近感が強く、民族主義的な連立相手や大統領が親露派。合意形成が困難なようだ。
旧共産圏ではロシアへの接近が目立つハンガリーが追放に同調したが、スロバキアは踏み切らず、対露強硬派のポーランドやバルト三国との相違を見せた。財政危機に陥るギリシャはチプラス政権が近年、特にロシアとの関係を強化。EUの対露経済制裁にもかねて批判的だ。ギリシャと関係が深いキプロスは金融機関がロシアの資金に依存しているとの事情もある。小国には対抗措置で数少ない駐露外交官が追放されると現地の大使館業務が滞るとの懸念もある。ただ、小国でもマルタの場合、EU域内も自由に移動できる同国の市民権を巨額投資などとの引き換えで露富豪にも売却しており、「関係を崩したくない」(独メディア)との見方も出ている。(4/01/2018 産経新聞)
◾️EU ロシア外交官150人追放
英国でロシア連邦軍参謀本部情報総局(GRU)のスクリパリ元大佐らが神経剤で襲撃された事件に絡み、北大西洋条約機構(NATO)のストルテンベルグ事務総長は27日、ロシア代表部の外交官7人を追放すると発表した。NATOはこのほか露側が申請した外交官3人の登録を保留。ロシア代表部の人員規模を現在の最大30人から20人に縮小させる。ストルテンベルグ氏は「容認できない危険な振る舞いには報いがある」と述べた。英国に足並みをそろえた露外交官の国外追放は27日も相次ぎ、アイルランドやモルドバも表明。ロイター通信などの集計では、NATOを含め27カ国・機関、150人に上る。メイ英首相は26日、「ロシアが国際法を無視し続けることができない最大級のメッセージを連帯して送る」と述べ、各国の動きを歓迎した。(3/28/2018 産経新聞)
▪️米政府 ロシア外交官60人追放
英国でロシアの元スパイらが神経剤を使われたとされる殺人未遂事件の報復措置として、トランプ米大統領は26日、米国駐在のロシア外交官60人を国外追放し、シアトルのロシア総領事館を閉鎖するよう命じた。また欧州連合(EU)の28加盟国のうち14カ国も同日、ロシア外交官の国外追放を決定し、米欧とロシアの対立が激しくなるのは避けられない情勢だ。米政府によるロシア外交官の追放は、1986年に当時のレーガン大統領がスパイ活動で旧ソ連の外交官約80人を追放して以来最多とみられる。米国から追放される60人のうち48人が在米ロシア大使館、12人がニューヨークのロシア国連代表部所属という。退去の猶予は1週間とした。また、シアトルの総領事館閉鎖は、潜水艦基地やボーイング社の拠点が近いことが理由だという。ホワイトハウスは声明で「ロシアが英国で兵器級の化学兵器を使ったことへの対抗措置だ」と強調。
ロシアの情報当局者が米国で外交官の名の下にスパイ活動に従事しているとし、「今回の措置により、ロシアの米国でのスパイ活動や安全保障を脅かす工作をする能力を減少させる」とした。ログイン前の続き米高官は記者団に「我々の友人を攻撃すれば、ロシア政府は深刻な代償に直面する」と強調した。一方、EU首脳会議のトゥスク常任議長は会見で「数日、数週間のうちにさらなる追放など追加措置もありうる」と述べた。AP通信などによると、欧州各国が追放するロシア外交官はドイツ、フランス、ポーランドが4人、リトアニアやチェコが3人、デンマークやイタリアが2人など。計約30人に上るという。EU外ではウクライナも13人の追放に踏み切った。今月22、23日に開かれたEU首脳会議では、事件はロシアに責任がある可能性が極めて高いという英国の判断を支持することで一致。駐ロシアEU大使を召還することも決めていた。欧州各国がロシア外交官追放の動きに同調するのは、事件の責任がロシアにある可能性が「極めて高い」とみる英国の判断を支持し、足並みをそろえてロシアに制裁を加えるものだ。ロシア包囲網は格段に強まっている。ロシア外務省は26日に声明を出し、各国の措置を「英国と連帯した挑発行為だ」と批判。「非友好的行為には対応する」と、報復措置を取る考えを示した。(3/27/2018 朝日新聞)