Good News Ministry

聖書的観点から見た世界の社会的、政治的、文化的、地域的現実を捉え、祈り備える。

異常気象で広がるアフリカの民族紛争

2019年08月13日 | 世界情勢
地球温暖化の影響で、アフリカでは降雨量が減り、気温が上がっている。その結果、水を利用できる土地が減り、そうした土地をめぐって牧畜民と農耕民の衝突が増えている。こうした争いは武器やイスラーム過激派の流入により激しさを増しており、異常気象はアフリカが難民やテロの供給地になる一因となっている。地球温暖化による異常気象は、日本ではゲリラ豪雨や超大型台風など「過剰な水」になりやすいが、アフリカには干ばつや砂漠化など「極度の水不足」をもたらしている。それは水の豊かな土地をめぐる民族・宗教間の衝突が激しくなる火種にもなっている。

水や土地をめぐる争いはアフリカでエスカレートしている。そのうちの一つであるマリでは4月18日、マイガ首相以下、全閣僚が辞任した。中部モプティ州で3月23日、農耕民ドゴンが牧畜民フラニの村を襲撃して160人が死亡した事件を受け、これを防げなかった責任を追及されるなかでの辞任だった。フラニはサハラ砂漠一帯(サヘルと呼ばれる)からアフリカ中央部にかけて広く居住し、一部は都市に定住しているものの、多くは牛を追って生活している。その多くはムスリムだ。これに対して農耕民ドゴンの多くはキリスト教徒だ。マリに限らず、アフリカでは牧畜民が牛を追って農耕民の土地に入り込み、争いになることは珍しくない。実際、ドゴンとのトラブルも以前から報告されていたが、かつては交渉で解決することが多かった。ところが、近年では多くの死傷者を出す衝突が増え、2018年にはマリのモプティ州だけで42件の衝突が発生し、民間人の死者は202人にのぼった。

マリのような事例は、アフリカのなかでもサヘル周辺で特に目立つ。例えば、ナイジェリアでは2016年から2018年末までに牧畜民フラニと農耕民アダラの衝突でおよそ3600人が死亡。チャドでは今週、やはり牧畜民と農耕民の衝突で37人が死亡し、デビー大統領が「国家的懸念」を示した。こうした争いは「民族紛争」、「宗教紛争」と捉えられやすい。しかし、単に民族や宗教が異なるから争うのではなく、実際には数多くの事情が積み重なっている。そこには、異常気象以外にも、主に以下の要因があげられる。



1)人口爆発による土地不足
 日本では少子化が進んでいるが、アフリカでは人口増加が続いている。国連の推計によると、2017年段階で約12億人だったその人口は、2050年までに25億人を超える。急速な人口増加は食糧の需要を高め、さらに農業、牧畜を問わず、重要な資源である肥沃な土地をめぐる争いになりやすい。

2)政府の土地改革
 多くの国では近年、牧畜民が好きに放牧できないように規制する法律が施行されてきた。これは人口の多い農耕民の政治力によるところが大きい。それは結果的に牧畜民の不満を高め、摩擦を増やした。

3)イスラーム過激派と武器の流入
 2011年の「アラブの春」とリビア内戦による混乱、そして2014年の「イスラーム国」(IS)建国宣言で、北アフリカからサヘルにかけてイスラーム過激派の活動が活発化し、武器の流入も増えた。

これらとともに、地球温暖化はアフリカの民族紛争に無視できない影響を及ぼしている。



ここでアフリカにおける地球温暖化についてみていこう。北西アフリカにあるサハラ砂漠は、アメリカ合衆国の面積にほぼ匹敵するほど広大な世界最大の砂漠だ。この周辺のサヘル地域では平均気温の上昇が続き、国連によると、その上昇ペースは世界全体の気温上昇と比べて1.5倍高い。平均気温の上昇と並行して、この地域では降雨量が長期的に減少している。地球温暖化に関する調査・研究を行う学術機関、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると、サヘルでは1970~80年代に大幅に雨が減り、各地で干ばつや飢饉が発生。1990年代にやや回復したものの、1960年代以前の水準には戻っていない。

気温上昇と降雨量の減少により、サハラ砂漠の面積は拡大し続けている。メリーランド大学の研究チームによると、1920年~2013年の間に約10%広がったという。その結果、牧畜や農耕に適した土地が減少し、食糧不足に拍車がかかったり、暮らせなくなった人々が難民として国外へ逃れたりするだけでなく、肥沃な土地の奪い合いが激しくなっているのだ。国連のシェパード報道官は今年初頭、サヘルが地球温暖化に特に脆弱で、約3億人がその影響を受けていると述べたうえで、この地域では約500万人が居住地を追われ、2400万人が人道支援を必要としているという試算を発表した。



サヘルで増える牧畜民と農耕民の民族対立の背景には、こうした自然環境の変動がある。さらに、この地域にはムスリムも多く、異常気象で生活苦に拍車がかかった人々が、西アフリカ一帯で勢力を広げるボコ・ハラムなどのイスラーム過激派に吸収されることも珍しくない。ただし、これらの「民族紛争」や「宗教テロ」において、民族的なアイデンティティや宗教的なイデオロギーは看板以上の意味をほとんど持たない。実際、同じ民族や宗教のなかでの争いも珍しくない。例えば、冒頭に取り上げたマリの場合、牧畜民フラニのほとんどはムスリムだが、ISなどイスラーム過激派を拒絶しており、フラニ同士やムスリム同士の争いも報告されている。

また、サヘルを含む西アフリカ一帯でテロ活動を続けるイスラーム過激派ボコ・ハラムは、外国人を誘拐した場合、身代金と引き換えに解放することが圧倒的に多いが、これは被害者をカメラの前で殺害して自分たちのメッセージを広く発信するISなどと異なり、テロ活動そのものが生活の手段となっていることを示す。つまり、サヘルで広がる紛争の多くは、暴力をもって生活苦を克服しようとするものといえる。だとすれば、その抑制には軍事力だけでなく、貧困対策が欠かせない。そうでなければ、これまで以上にアフリカはテロと難民の輸出元として台頭することになりかねず、先進国もその影響は免れないのである。(8/12/2019 Yahoo News 六辻彰二 / 国際政治学者)

ロシア爆発事故 原子力新型兵器と関連

2019年08月12日 | 世界情勢
ロシア北部アルハンゲリスク州の海軍実験場で起きたミサイル実験の爆発事故で、実験に関与していた国営原子力企業ロスアトムの専門家は12日までに、小型原子炉開発に関連した事故だったと明らかにした。軍事機密に関わるため詳細は不明だが、原子力利用の新型兵器の開発に関係した事故であることが確実となった。爆発事故で死亡した5人はロスアトム傘下の核・実験物理学研究センターの専門家だった。同センターのソロビヨフ主席研究員は11日放映のテレビインタビューで事故について「放射性物質を使った熱・電力源、つまり小型原子炉の開発に取り組んでいる」と説明した。(8/13/2019 共同通信)


⬜︎ロシア軍施設で爆発事故 核関連の疑惑
ロシア北部の海軍実験場で8日に爆発が起き、周辺で一時放射線量が上昇した事故で、ロシア国営原子力企業ロスアトムは10日、同社職員5人が死亡したと明らかにした。ロスアトムの関与が判明したことで、原子力関連の事故である可能性が出てきた。米専門家は、ロシアが開発中の原子力巡航ミサイルの実験中だったという見方を示している。実験場は北部アルハンゲリスク州の集落ニョノクサ近く。国防省は8日、ジェットエンジンが爆発し6人が死傷したと発表していた。しかしロスアトムは10日「同位元素を使用した燃料エンジン装置の実験中」の事故だと発表。事故が核燃料と関連している可能性を公式に認めたと受け止められている。

近隣のセベロドビンスク市は8日に一時的な放射線量の上昇が記録されたと発表したが、国防省、ロスアトムはともにこの点には触れていない。独立系ニュースサイト「メドゥーザ」によると、爆発により数人が被ばくしモスクワに搬送されたとの情報がある。近くの海域で1カ月間船舶の航行が禁止されたという。米国の核問題専門家ジェフリー・ルイス氏はツイッターで、衛星写真の分析から爆発事故当時、近くの海域に放射性物質を運搬する特殊船舶が存在していたと指摘。発射装置の形態などから、ロシア軍が超長射程の原子力巡航ミサイル「ブレベスニク」の実験を行っていたとの見方を示した。ブレベスニクは、米国のミサイル防衛網を突破する目的でロシアが開発、配備を急ぐ新型兵器の一つ。(8/11/2019 共同通信)