漢字の音符

漢字の字形には発音を表す部分が含まれています。それが漢字音符です。漢字音符および漢字に関する本を取り上げます。

音符「尚ショウ」<台座に二つの供物がのる>と「賞ショウ」「償ショウ」「常ジョウ」「堂ドウ」「党トウ」「当トウ」

2022年07月23日 | 漢字の音符
 ショウ・ジョウ・なお 小部

解字 金文は、「冂形(つくえ・台座)+一印の供物が二つのっているさま+口(祭祀用の器)」の会意。机または台座の上に供物を供え下に祭祀用の器を置いたさまで、祭祀の様子を表している。篆文から、机上の二つの供物⇒小に変化し、さらに新字体は旧字の尙⇒尚となった。
 意味は、祭祀の対象を「たっとぶ・あがめる」、転義として「たかい」意がある。「なお」の意は仮借カシャ(当て字)である。
意味 (1)とうとぶ(尚ぶ)。たっとぶ(尚ぶ)。あがめる。「尚武ショウブ」(武をたっとぶ) (2)たかい。上品である。「高尚コウシュウ」 (3)なお(尚)。かつ。やはり。「尚早ショウソウ」(なお早すぎる)「尚更なおさら

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 祭祀の対象が「とうとい」(尚・堂・瞠・嘗)
 意味(2)の「たかい」(敞・廠)
 台座上に供物をのせる事から「上にのる・のせる」(賞・償・当・蟷・掌・趟・躺)
 「形声字」(常・党・裳・棠)
音の変化  ショウ:尚・敞・廠・嘗・賞・償・掌・裳  ジョウ:常  トウ:当・党・蟷・趟・躺・棠  ドウ:堂・瞠

とうとい
 ドウ  土部
解字 「土(土壇)+尚(とうとい)」の会意形声。土は土壇、堂は土壇のうえに築いた、とうとい神仏を祀る建物をいう。転じて、大きな建物などを指す。
意味 (1)神や仏をまつった建物。「御堂ミドウ」(仏像を安置したお堂)「金堂コンドウ」(本尊を安置する仏堂。堂内を金色にすることから)「経堂キョウドウ」 (2)大きな御殿。「殿堂デンドウ」「講堂コウドウ」 (3)立派なようす。「堂々」 (4)他人の母の敬称。「母堂ボドウ
 ドウ・みはる  目部
解字 「目(め)+堂(立派な御殿)」の会意形声。立派な御殿を目を大きく開けてみること。
意味 みはる(瞠る)。目を見張る。みつめる。「瞠目ドウモク」(目を見張る)
 ショウ・ジョウ・かつて・なめる  口部
解字 「旨(うまい)+尚(とうとい)」の会意形声。とうとい方(神)が味わうこと。
意味 (1)新しく収穫した穀物を神に供え味わっていただく祭り。「神嘗祭かんなめさい」(新穀を神に奉る伊勢神宮の祭り)「新嘗祭にいなめさい」(天皇が新穀を神にすすめ、またこれを食する祭り)「大嘗祭ダイジョウサイ」(天皇が即位の後、初めて行う新嘗祭) (2)なめる(嘗める)。あじわう。「嘗胆ショウタン」(苦い胆をなめること)「臥薪嘗胆ガシンショウタン」(目的を果たすため苦労を重ねること。臥薪は薪の上に寝る) (3)こころみる。ためす。「嘗試ショウシ」(ためしてみる) (4)<仮借カシャの用法> かつて(嘗て)。

たかい
 ショウ  攵部
解字 「攵(うつ)+尙(たかい)」の会意形声。堂などを造るため周辺の土地を平らにしてよくたたいて固め、周りより一段と高くしたひろい所をいう。
意味 たかい。土地が高く平ら。ひろい。見晴らしがいい。「敞閑ショウカン」(広々としてしずか)「広敞コウショウ」(ひろい)「高敞コウショウ」(たかくてひろい)
廠[厰] ショウ  广部
解字 「广(やね)+敞(たかくひろい)」の会意声。高くひろい土地に建つ大きな建物。壁のない広間や土間になった建物。厰は異体字。
意味 (1)おおや。ひろい建物。「工廠コウショウ」(工場。仕事場)「廠舎ショウシャ」(四方に囲いのない屋根だけある建物。特に軍隊が演習などで泊まる兵舎をいう) (2)うまや。馬を集めて飼う建物。「馬廠バショウ」(うまや)

上にのる・のせる
 ショウ・ほめる  貝部
解字 「貝(財貨)+尚(のせる)」の会意形声。財貨をのせてほうびとすること。
意味 (1)ほうび。たまもの。「賞状ショウジョウ」「賞金ショウキン」 (2)ほめる(賞める)。「賞賛ショウサン」「賞味ショウミ」(ほめて味わう) (3)めでる。「観賞カンショウ
 ショウ・つぐなう  イ部
解字 「イ(人)+賞(財貨をのせる)」の会意形声。人に財貨をのせて、つぐないをすること。
意味 つぐなう(償う)。あがなう。むくいる。「弁償ベンショウ」「賠償バイショウ」「償還ショウカン」(借りたものを返す)「償却ショウキャク」(つぐない返す)
[當] トウ・あたる・あてる  ツ部
解字 旧字は當で「田(土地)+尚(のせる)」の会意形声。田畑の売買をする際、その土地の値打ちに相当するもの(金額など)をのせること。相当する(当てる)意が原義。新字体は略字による。
意味 (1)あたる(当たる)。あてる(当てる)。「相当ソウトウ」 (2)わりあてる。「当番トウバン」 (3)あたりまえ。「当然トウゼン」 (4)この・その。「当面トウメン
 トウ  虫部
解字 「虫(むし)+當(当たる。向かい合う)」の会意形声。向かい合って当たってゆく虫でカマキリをいう。
意味 蟷螂トウロウに使われる字。蟷螂とはカマキリのこと。螂ロウは郎(若者)に通じる。蟷螂は、向かい合って当たってゆく若者に虫をつけ、勇気ある若者が虫になった形。螳螂トウロウとも書く。「蟷螂の斧おの」(中国の故事。斉国王の荘公が馬車で出かけると、道に一匹のカマキリがいて、逃げださず前足をふりあげて馬車に向かってきた。荘公はその勇気を賞して、わざわざ車の向きを変えさせたという。)
 ショウ・たなごころ  手部
解字 「手(て)+尚(上にのせる)」の会意形声。物をのせる手の部分である手のひらをいう。
意味 (1)てのひら。たなごころ(掌)。「掌中ショウチュウ」(手のひらの中)「合掌ガショウ」(手のひらを合わせる) (2)つかさどる。「掌握ショウアク」(掌中に握る)
 トウ  走部
解字 「走(足の動作)+尚(上にのせる)」の会意形声。足を上にあげ、こおどりすること。また、動作の回数を表す。
意味 (1)こおどりする。おどる。「趟泥歩トウデイホ」(泥水のなかをおどるように歩く。中国武術の型の一つ) (2)動作の回数を表す。「一趟イットウ」(一回)
 トウ  身部
解字 「身(からだ)+尚(上にのせる)」の会意形声。身体をベッドの上にのせて横たえること。
意味 (1)横になる。ねる。「躺椅トウイ」(寝椅子)「躺平トウヘイ」(身体をベットの上によこたえる。寝そべる。)「躺平主義トウへイシュギ」(寝そべり主義。最低限の生活に満足し寝そべって暮らす。現代中国の若者にみられる現象。躺平族とも)(2)死ぬ。

形声字
 ジョウ・つね・とこ  巾部
解字 「巾(ぬの)+尚(ジョウ)」の形声。ジョウという名の布で、古代(周代)の長さの単位で一丈六尺(16尺=3.6m。周代の1尺は22.5㎝)を常ジョウといった。一方、尋ジンは8尺(1.8m。周代の1尺は22.5㎝)をいうため、尋常というと8尺とその倍の16尺のことで、決まった長さの意。ここから常も一字で「いつもの・ふつう」の意味になった。
意味 (1)長さの単位。周代の尺度で16尺(3.6m)「尋常ジンジョウ」(尋は8尺、常は16尺。決まった長さ。普通。なみ。あたりまえ)「尋常小学校」(初等普通教育を施した旧制の小学校の名称。明治19~昭和16) (2)いつも。つね(常)。「常食ジョウショク」「常駐ジョウチュウ」 (3)ふつう。「通常ツウジョウ」「常温ジョウオン」 (4)いつまでも続く。とこ(常)。「常夏とこなつ」「常(とこ)しえ」
 ショウ・も  衣部
解字 「衣(ころも)+尚(=常の略体)」の会意形声。常の字の巾⇒衣に変えた異体字。長い衣の意だが、特に下の裾(すそ)が長い袴(はかま。腰から下にまとう衣)のたぐいを言う。
意味 (1)も(裳)。もすそ。したばかま。下半身にまとう衣服。「衣裳イショウ」(衣はここで上半身に着るものの意、裳は下半身に着るもの。すなわち衣服全体をいう)「裳階もこし」(仏塔、城郭などで、軒下の壁面に付いた庇状構造物。本来の屋根の下にもう一重屋根をかけたかたち) (2)「裳裳ショウショウ」(りっぱでさかんなさま。美しいさま)
[黨] トウ  儿部
解字 「儿(ひと)+尚(=常の略体)」の会意形声。常につながりのある人のなかま。旧字は黨で、「黒の旧字(すすで黒ずんだかまど)+尚(=常の略体)」の会意形声。炊事や飲食をともにする常につながりのある仲間の意。(辞典により説明がことなるため覚えるための解字です)
意味 (1)なかま。ともがら。「徒党トトウ」 (2)政治的な団体。「政党セイトウ」 (3)むらざと。むら。「郷党キョウトウ」(同郷の人々)
 トウ・ドウ  木部
解字 「木(き)+尚(トウ)」の形声。トウという名の木。バラ科ナシ属の落葉高木に当てる。
意味 (1)やまなし。からなし。こりんご。バラ科ナシ属の落葉高木。「甘棠カントウ」(ヤマナシあるいは小リンゴの類の木)「甘棠の愛」(周王朝の名臣・召伯が領地を巡察する際に、甘棠の木の下に座って住民の訴えや訴訟事を裁いた故事から、人民の善政に対する思慕が深いこと)「棠蔭トウイン」(①ヤマナシの木陰。②召伯の故事から、裁定すること) (2)「海棠カイドウ」とは、バラ科リンゴ属の落葉低木。薄紅色のきれいな花をつける。
<紫色は常用漢字>

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