かぶれの世界(新)

写真付きで日記や趣味を書くならgooブログ

レッドラインの向こう側

2017-08-20 11:31:47 | ニュース
北朝鮮が立て続けにミサイル実験を実施した時、北米大陸に到達するICBM(大陸間弾道ミサイル)の実験はレッドラインを越えることになると多くの専門家は予測した。だが、トランプ大統領は何がレッドラインか明示せず曖昧なままにした。そして、その後北朝鮮は“ICBM実験”を行ったが両国は非難し合っただけだった。

レッドラインとは「越えてはならない一線」の意味し、その一線を越えると国家間では外交交渉から一段高いレベルの経済制裁や武力行使が実行されることがある。ローマ時代のシーザーにとってルビコン川がある意味その一線だった。その一線を明らかにしなかったトランプ大統領は賢い判断をしたと思う。だが、国内政治ではトランプ大統領は既にレッドラインを越えて向こう側にいると思う。

バージニア州シャーロットビルでの人種差別主義者・白人優越主義者と反対派デモ隊との騒乱で、トランプ大統領は両サイドに暴力行使の責任があると公言して全米から批判を浴びた。与党共和党や経済界・軍まで米国の屋台骨から大統領発言への異例の非難だ。非難しなければ彼等が非難されるテストだと思ったからだ。

私が90年代半ばに仕事で米国に赴任した時、最も注意したのは「人種差別」と「女性蔑視」と取られるような振る舞いを絶対にしないことだ。それは合衆国憲法より更に一段上の国是の様に私は受け取っていた。当時はこの件で間違いを犯さないことを、纏めてPC(Politically Correct)といわれ神経を使っていた。議長はchairmanとはいわずChairpersonだった。最初は滑稽で違和感があったが言葉使いに気を付けた。

日本人スタッフが会議で女性マネージャの判断の誤りを徹底的に追及して泣かせたのは、女性差別だと人事が報告して来たことがある。又、同じ部署で机を隔てた距離の女性同僚への連絡をいつもメールでしか行うのは差別だとか、黒人女性現場労働者の昇給が白人男性より遅いのは差別だとか、どう処理すべきか困ったことがある。

こんな些末な経験からでも米国で差別(Segregation)に対してはとても敏感な言葉で、そう指摘された方は重大なダメージを受けるというのが私の実体験で血となり身となった米国の遺伝子的ルールだ。驚いたことにトランプ大統領にはそういう遺伝子を受け継いでないことだ。東西両岸と南部では遺伝子が違うかもしれないが。

私の理解は多くの米国人はその遺伝子を受け継いでおり、彼等はトランプ大統領の人種差別を容認するかのような発言はレッドラインを越えたと見做したということだ。それは与野党・軍・経営者であるかどうかを問わない。彼等はレッドラインのこちら側におり、トランプ大統領は向こう側にいるからだ。■
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする