白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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この手なんの手

2016年05月08日 23時59分59秒 | 対局
皆様こんばんは。
本日は読者の方のご質問にお答えしたいと思います。



昨日の解説に出てきた白△はどういう意味ですか?というご質問でした。
確かに序盤では基本的に2線や1線に打つ手は良い手ではありません。
しかし、以前にも解説しましたが石の根拠に関わる手は2線であっても重要です。
また、コスミの形に対してはカドが急所になります。
この白△はその急所に当たってもいます。




黒1と足を伸ばすのが一つの形ですが、白4~8といった手で切断する事ができます。
急所の下がりが効いています。




もし下がりがないと、黒はすっきり繋がることができます。




というのが黒石に対する効果ですが、自陣の守りという面でも非常に重要です。
白1のような手も良い所ですが、黒2から4のノゾキを利かされるのが嫌な所です。




その後白6までと勢いが良さそうですが、黒7が厳しい手です。




黒3と渡ってしまうと黒は眼ができて安心、一方白は白4と守っておかなければいけません。
悠々黒5の大場に先行されてしまいます。
これでは攻めの効果が挙がったとは言えません。




白2と渡りを止めても、左辺に食い込みながら簡単に生きてしまいます。
白6に対して今度は黒7と一手備えておき、中央白の薄みを狙います。
白としてはさほど地がない上に薄いので、嬉しい展開ではありません。


2線の下がりはプロの対局でもしばしば現れますが、攻めと守りを兼ねた手です。
プロが序盤で2線に打っていたら「地が欲しいんだな」ではなく、「根拠の要点なんだな」とご理解ください。


明日からは第71期本因坊戦七番勝負第1局が行われます。
今井山七冠を倒せる可能性が最も高い棋士は高尾九段だと思います。
井山七冠としては最初にして最大の試練となるでしょう。
日本棋院ネット対局幽玄の間で中継されますので、ぜひご覧ください!

一方私は有楽町で指導碁です。
お時間のある方はぜひご来場ください。