白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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若手棋士、奮闘中!(棋譜紹介)

2016年10月20日 23時59分59秒 | 幽玄の間
皆様こんばんは。
まずはお知らせです。
10月23日(日)22日(土)に、有楽町囲碁センターにて指導碁を行います。
ご都合の合う方は、ぜひお越しください。

さて、本日は棋士の手合日です。
幽玄の間で中継された対局をご紹介しましょう。
本日登場するのは村松大樹六段(黒)と平田智也七段です。

村松六段は、気合良く仕掛けて行く棋風です。
緩んだ手を決して打たない印象があります。

平田七段は、地にからい模様派です。
まずしっかりと構えておいて、それから大きく広げて行くので、模様に入って来られて何もなくなるという事がありません。
アマチュアが真似しやすい棋風ではないでしょうか?

さて、それでは碁の紹介に入りましょう。



1図(実戦黒13)
黒△と詰めた場面です。
次にAの打ち込みがある事はよく知られていますね。
それを防ぐには、従来の感覚なら白Bでした。





2図(実戦白14~白18)
ところが、実戦は白1といきなりツケ、白5までと大きく構えました!
なるほど、白の姿はのびのびしていますね。
気持ちの良い打ち方です。





3図(実戦黒39)
その後、黒△と飛んだ場面です。
ここまでややこしいやり取りがありましたが、定石のようなものです。
そして現状は、左辺の黒と左下白の競り合いになっています。
ここで白番ですが、皆様ならどんな構想を描きますか?





4図(実戦白40~白46)
実戦は、白1~7まで、有無を言わせぬ押し切り!
何とも堂々とした打ちっぷりです。
左右を繋げて、左辺の黒は睨み殺しにする構えです。
こうなってみると、これまで打って来た石が皆光り輝いて来た印象です。





5図(変化図)
黒としては左辺の石を動きたいのですが、白6と抜かれると全く眼がありません。
周囲は真っ白、これから黒は延々と攻められる羽目になるでしょう。





6図(実戦黒47~黒55)
という訳で、黒は左下を捨てる事になりました。
黒5、9に回り、長期戦を目指しています(黒3は白Aと来た時のシチョウ当たり)。
とはいえ取れては大きく、平田七段がリードを奪いました。





7図(実戦白56~白62)
白1から隅を生きられると、外側の黒が心配です。
黒Aなどと開いておくのが常識的かもしれませんが、囲うだけの手なので、やや気が引けます。
後に白Bと打たれる嫌味も残ります。





8図(実戦黒63~65)
実戦は、黒1~3!
格好良い手が飛び出しました。
白に迫りながら形を整えようという、目一杯の手です。





9図(実戦白66~黒69)
白は中央を大事に受け、黒4までとなりました。
黒は一杯の形を作り、Aと切る狙いも残しています。
村松六段らしい、「石の張った」打ち回しでした。





10図(実戦白84~白92)
その後、右上で白1と下がった手には驚きました。
白Aと当て、黒Bと繋がせれば、それだけで生きている所なのです。
白9の手も、Cなどの広い所に向かうプロが大半だと思います。
平田七段、足が遅いのを承知で、これ以上なく手厚く打っています。
善悪は分かりませんが、これでやれるという、平田七段の自信を感じる打ち回しでした。





11図(実戦黒101~白102)
その後、黒1の踏み込みに、白2の強手で反撃!
黒Aと押さえれば白Bで、丸取りしてしまおうという事です。
黒、困ったように見えますが・・・。





12図(実戦黒103~黒111)
ここでなんと、黒1から動いて行きました!
村松六段、ずっと狙っていたのでしょう。
黒9に対して白Aと打たれると、一見黒ダメそうですが・・・。





13図(変化図)
白1には黒2の割り込みが成立します。
黒6と切り、この2子は取られませんし、黒△が働いて、黒Aからのシチョウも黒が良いです。
上手くできているものです。





14図(実戦白112~白116)
という訳で白1と割り込みを防ぎましたが、黒4でこちらが切れました。
白も5と切って、これは一体どうなっているのでしょうか?





15図(実戦)
そしてさらに物凄い事になります。
本当に、どうなっているのでしょうか・・・。
両者が必死に読む姿が目に浮かびます。





16図(実戦黒119~白132)
最終的には、こんな分かれになりました。
白は左下方面の黒を全滅させましたが、黒も上辺を大きく地にしました。
これは流石に、黒が得したのではないでしょうか?
非常に細かい碁になりました。

そして最後は、平田七段の半目勝ちとなりました。
ここまで激しく戦って、結果が半目差とは凄いですね。
両者目一杯に戦った好局だったと思います。

この一局は、名人戦最終予選の準決勝でした。
勝った平田七段は、あと1勝でリーグ復帰です。
近年、若手棋士の活躍が目立っていますね。
力の籠った碁も多いので、今後も積極的にご紹介していきます。