白石勇一の囲碁日記

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天元戦、開幕迫る(棋譜紹介)

2016年10月19日 23時59分59秒 | 幽玄の間
皆様こんばんは。
10/21(金)から、第42期天元戦挑戦手合第1局が始まります。
現在名人戦王座戦が進行中ですが、井山裕太七冠への第3の刺客として登場するのが、一力遼七段です!

一力七段の特徴ですが、地が好き、模様が好き、といった言葉では表しにくいですね。
私が一言で言い表すなら、クレバーですね。
固定観念に囚われませんし、判断力が非常に優れているのです。
王座戦第1局と同日に行われた趙治勲名誉名人との対局が、それをよく表しているのではないでしょうか。
プロから見ても難解な内容ですが、ご紹介してみましょう。
なお、
この対局は幽玄の間にて中継されました。
昨日ご紹介した通り、過去の中継棋譜は幽玄の間ホームページ上でご覧頂けます。



1図(実戦白46)
最初に申し上げておきますが、今回の記事は、解説として見てしまうと物凄くいい加減です。
あくまでご紹介なので、お間違えの無いようにお願いします!(笑)

さて、本局は一力七段の黒番です。
白△と打った場面ですが、ここで大抵の方が打ちたい手があると思います。





2図(変化図)
黒1で、白1子をシチョウで取る事ができます。
黒△も助かるので、こう打ちたくなる方が多いでしょう。
しかし白2の打ち込みが強烈です!
ただ地を荒らす手ではなく、右下黒を攻める狙いを持っています。





3図(続・変化図)
右下黒が心配だからと黒1から繋がれば、右辺ががらがらに・・・。
そして白12のシチョウアタリを打たれ、左辺も苦しくなります。
黒13と抜いた利益はどうかと言えば、元々強かった黒一団をさらに強化しただけです。
黒はつまらない所に力を入れてしまいました。
実際にここまで黒悪い図にはならないでしょうが、大雑把に言えばこんなイメージです。





4図(実戦黒47~51)
という訳で、黒1の方が大事です。
白2を許しても、また他に回れます。
ここまでは、プロにとっては初級編の判断でした。

ところが実戦は、ここから黒3、5と仕掛けていきました!
白Aに黒Bと入る予定でしょうか。
それでやれるという読みがあるのでしょうね。

ツケからの三々は、プロの対局にはよくある手段です。
しかしこの配置では、なかなか気が付きません。
一力七段、鋭い所を見せました。





5図(実戦白52~黒55)
結局、白は隅を譲る事になりました。
黒としては地を得しながら、下辺全体を治まる事ができました。





6図(実戦白62)
白としては、先手を取って白△に回り、左上の黒を攻める作戦です。
黒はどう対応したものでしょうか?
周囲に白の石数が多い事を、意識しなければいけません。





7図(変化図)
黒1から正直に対応すべき場所ではありません。
一例として白10まで、黒はいかにも窮屈です。





8図(実戦黒63~黒69)
実戦は黒1、3とツケの連発から黒5、7と、軽やかな打ち回しを見せました!
黒△を取りたいならどうぞと言っています。
相手の勢力圏では正面から戦わないという、理に適った発想です。





9図(変化図)
もし白1のように取って来るなら、あっさり捨てて黒6などに向かう予定でしょう。
黒模様が広大になり、白が入って来たとしても、有利に戦えます。





10図(実戦白70~黒73)
実戦は白1でしたが、ここで一転して黒2、4と強い手を放ちました!
前図に比べて白が一路頑張ったので、そのラインで地にさせてはいけないという事ですね。
こういった所の線引きが抜群に上手いのが、一力七段です。
一見すると黒無理な戦いのようですが、黒△が戦いに役立つと読んでいます。





11図(実戦白90)
結果、黒は白△を切り離し、黒△との競り合いの形に持ち込みました。
さて、ここで一力七段、どう打ったでしょうか?
とりあえず、黒△を逃げる事を考えそうですが・・・。





12図(変化図)
黒1なら逃げられますが、白に対する迫力がありません。
一例として白12まで、白はゆとりのある姿です。
こうなると左上の黒が心配になりますし、守っているようでは右辺に入られてしまいそうです。





13図(実戦黒91~黒93)
実戦は、なんと黒1、3!
物凄い手が飛び出しました!
白に最大限に迫った手と言えるでしょう。
黒は傷だらけで、心配に見えますが・・・。





14図(変化図)
白1と取りに来れば、捨ててしまうつもりでしょう。
一例として黒12まで、右辺の黒地が広大になります。





15図(実戦白94~黒101)
という訳で、白も取りに行かず白1でしたが、そこで一転、黒2と助けました!
黒8までの図を12図と比べてみましょう。
黒にゆとりができ、白は窮屈になっていますね。
これなら黒も戦えます。
白は右辺に侵入する暇が無くなり、最終的に右辺は無事黒地になりました。

如何でしょうか?
碁は非常に難しかったですね。
実は私も全然分かっていません
ですが、一力七段の特徴を掴む役には立つかと思います。
戦うべきかかわすべきか、助けるべきか捨てるべきか、等々、そういった所の判断力が非常に優れているという事を感じて頂ければ十分でしょう。

個人的には、井山七冠と似たタイプだと感じています。
いずれ一力時代が来るかもしれません。
井山七冠としては、全力で叩きに行くでしょうね。
2人がどんな戦いをするのか、とても楽しみです。
皆様もぜひご覧ください!
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