白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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井山七冠、総理大臣顕彰

2016年06月10日 23時59分59秒 | 幽玄の間
皆様こんばんは。
この度、井山七冠が安倍晋三内閣総理大臣から顕彰を受ける事になりました
詳細はこちらをご覧ください。
大変名誉な賞で、これを機会に多くの方に囲碁の魅力を知って頂きたいですね。

さて、本日も予告通り幽玄の間中継棋譜を紹介していきます。



1局目は李世ドル九段(黒)対朴廷桓九段戦です。
李九段はアルファ碁との対戦を終えて以降、絶好調です。
この碁も順調に打ち進め、黒△となっては黒優勢と思われました。
地でリードしており、さらに左下の白にはAと切る狙いが残っています。





しかし、ここで白1、3と柔らかく包囲したのが好手でした。
何やら急に黒が苦しく見えてきました。





以下黒11までと進行、黒は左辺は捨てて右上の白に狙いを付けました。
白Aと上辺を取りに来れば黒Bで右上白と差し違えるつもりでしょう。





白は狙いを察知して黒をあっさり繋がらせ、白5と治まって無事収束しました。
この後黒Aの切りを決行されましたが、そこも鮮やかにサバいて勝負を決めました。
朴九段は現在世界ランキング2位、この対局の前には世界ランキング1位の柯潔九段を破っています。
絶好調の李九段相手に、流石の打ち回しでした。



世界戦の対局をもう1局ご紹介しましょう。
唐韋星九段(黒)対時越九段戦です。
中韓の棋士の打ち方は非常に実戦的で、基本から大きく外れる事がしばしばです。
私にも理解が難しいぐらいなので、アマの方の棋譜並べにはお勧めしません。
とはいえ、いつも難解な事をやっているわけではありません。
白△と打たれた場面はアマの方にはとても参考になるでしょう。
黒△が苦しくなりましたが、どうしますか?





取られたくないからと言って逃げるのは無理です。
石数が6対1の状況で堂々と戦ってはいけません。





かといって黒1などと打つのは白2でただ取られ。
捨てたと言うより見捨てた形です。
取られるにしてももう少し役立たせたい所です。





助けるのはダメ、捨てるのもダメ。
こういう状況はよくありますが、そういう時は中間の打ち方を考えて見ましょう。
実戦の黒1は正に中間の手、白の打ち方次第で助けるか捨てるか決めようとしています。





白1と受けてくれれば随分小さくなったので捨てます。
黒2以下が常用の手段で、左辺で楽にサバくことができます。





実戦は黒にサバかせないために白1でしたが、白を分断できる形になったので堂々と戦います。
黒12となると右側の白も弱く、戦い甲斐があります。
如何ですか?
困ったときは中間の打ち方を試してみましょう!



最後は許家元三段(黒)対王銘エン九段戦です。
左上の黒地を大きく囲い、地は黒がリードしました。
しかし白△が狙いの動き出しです。
黒、どう対応しますか?





黒1と出て行くのは、弱い白を逃がしてしまう事になります。
すると黒の弱い石だけが残り、左右絡み攻めに遭う展開が待っている事でしょう。





黒1と切りを見せました。
所謂モタレです。
下辺の白は強いので、白2とさらに強化させても問題ありません。
その間に一歩早く進出、前図との差をご確認ください。





実戦は白が違う受け方をしましたが、黒10までと進んで白3子が苦しい形になっています。
強い石にモタレる、これが基本です。





最後におまけの図です。
終局1手前、白△にはびっくり!
ただ取られに行くだけの手です。
人間は様々なミスをするもので、プロでもアタリに突っ込むレベルのミスが稀に起こります。
王九段もタイトル戦でシチョウを間違えた過去が・・・(笑)
しかしこの白△はそういう手ではありません。
ここに打ちたくなる事は絶対に無いので、実際に打ってしまう事もあり得ないはずです。
パソコンでの入力ミスだろうと思っていましたが、どうやらそうではない模様。
推理するに、秒を読まれて慌てて打った石が隣に移動してしまったのでしょうか。
勝敗に関係ないミスですが、ひょっとしたら歴史に残る棋譜になったかも
オチをつけて、本日の棋譜紹介を終わります。


明日は午後1時から永代塾囲碁サロンで指導碁を行います。
先月から棋譜取りサービスを始めました。
ご都合の合う方は是非お越しください。
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