白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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隅の死活

2016年05月12日 23時59分59秒 | 問題集
皆様こんばんは。
本日は問題を出題します。
問題はしばらく先になるような事を言っておいてなんですが、以前の対局を振り返っていたら良さそうな形があったので・・・(笑)



片岡聡九段との対局で白番です。
黒△となった場面、ノータイムなら打つ手は決まっています。




白1、3と頭を出しておけばごく自然です。
しかしここで考えてしまったので、別の道を選んでしまいました。




実戦は白1、3と隅に根拠を求めました。
黒4の封鎖が見えていますが白5を急ぎたかったというのが大きな理由です。
その他にも様々な事情があったのですが、やはり問題でした。
さて、私のミスはさておき皆さんにはこの白の死活を考えて頂きたいと思います。
現状は外側の黒が不完全で取りには行けませんが・・・




このように外の弱点がなくなると大変です。
さて、ここで問題です。
黒先、どうなりますか?
こちらで実際に石を置いて研究できます。





黒1の飛び込みが目に付くでしょうが、踏み込み不足です。
黒7までとなり、白Aと取ってコウになります。




黒1のサルスベリが好手です。
ヨセで多用される手ですが、地を減らす事と眼のスペースを狭めるのはほぼ同義です。
死活でも活躍する手筋です。




白1に対しては黒2、4の一歩一歩が好手です。
これで白は二眼作るスペースがありません。




ということで白は生きてはいない形ですが、実戦では黒1とすぐに取りに行くことはできません。
白10までと黒をダメヅマリにして・・・




白12のようになって黒の外勢が崩壊します。
今は大丈夫ということで白は実戦の道を選びましたが、やはり石が生きていないというのは大きな負債です。
終始この周辺の利き筋を意識して打つことになり、苦労しました。




その後、このような状況になって不安が現実のものになりました。
一線に下がりが来たこともあり、次に黒Aと打たれると無条件で取られます。




ところが黒も間違えました。
黒1が余計な交換で、これでは白を無条件で取れません。
さて、ここで問題第二弾です。
白先でどのような手がありますか?
こちらで石を置いて研究できます。





白1と打つのは、黒2で渡っています。
一線の下がりが利いています。




白1と渡りを止めるのは、黒2以下で白攻め合い負けです。




白1の「2の1」は死活の急所で、プロの第一勘でもあります。
しかし黒2を一つ打っておくのが上手く、黒4で渡ってしまいます。




正解はこちら側の「2の1」でした。
理由を説明するのは難しいのですが、こちら側から行くのはプロの盲点に入る手なのです。
現実にはこれで黒の渡りと攻め合い狙いの両方に対応できています。




黒1と白の粘りを消そうとすれば、白2と打ちます。
黒3と打っても渡れなくなっています。




実戦は黒1でしたが、白2、4で粘っています。
コウを争いながら白Aと打ってようやく黒を当たりにできるので一手ヨセコウ、少し不利な形ですが元々無条件で死んでいた所です。
これで逆転しましたが、この後ミスのお返しをして再逆転を許したのは残念でした。


隅というのは死活問題の宝庫です。
皆さんの対局にも沢山現れているはずですが、実戦では気付かず素通りしてしまっているケースが多々あると思います。
隅の死活に強くなると、確実に勝率アップにつながりますよ!