白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

幽玄の間

2016年05月19日 23時59分59秒 | 幽玄の間
皆様こんばんは。
昨日は第1回13路盤プロアマトーナメントをご紹介しましたが、支援金額が物凄い勢いで伸びているようです。
1日で15万円ぐらい増えたでしょうか?
この勢いなら次のステップも見えてきました。
新たにご支援くださった方々、ありがとうございます!

さて、木曜日は棋士の対局日ですが私は対局がなかったので他の棋士の対局をご紹介しましょう。
日本棋院ネット対局幽玄の間では毎週多数の対局が中継されています。
本日はその中から選んた3局の名場面をご覧頂きます。



棋聖戦Bリーグ、趙善津九段(黒)対秋山次郎九段の対局です。
白△と打たれた場面、放っておくと白A、黒B、白Cで取られてしまいます。
一方で白Dと打たれると左上の黒大石も危険です。
この危機にどう対処しますか?





黒1を一本打って黒3・・・一見するとこれで間に合っているようですが、そうではありません。
白4、6で参ってしまいます。
黒Aには白Bです。





では黒1としっかり取るのはどうかというと、白2と切られます。
大石の眼を作るには黒3、5しかありませんが、白6と打たれてAとBが見合いになってしまいます。





実戦は黒1でした!
当ブログの問題でも度々出てくるように、1線には妙手が潜んでいることが多いのです。
もし白2と追及してきても、黒3と手抜きして大丈夫です。
白4には黒5で攻め合い黒勝ちです。





実戦は白2と引き上げましたが、黒3と綱渡りに成功して危機を脱しました。




2局目は阿含桐山杯最終予選、片岡聡九段(黒)対山本賢太郎五段です。
白1と入って黒△を攻めようとしてきました。
黒はどう対応しますか?





黒1は堂々の戦い方ですが無理です。
周囲に白石が多く、上方では白A~Dの切断を狙われています。




実戦は黒1とボウシしました。
相手の石数の多いところなので正面からの戦いを避けました。
もし白2と来れば黒3、黒5と上下から利かします。
もし黒7までとなれば黒地との差し引きで白地は全く増えておらず、黒がサバいた図です。




実戦は捨てさせないぞと白1ですが、それならばと黒2と堂々とした形を作りました。
黒△間で線がつながって戦える形になっています。
相手の出方次第で捨てるも良し、助けるも良しというサバキのお手本でした。




最後は若手の対局を取り上げます。
田中伸幸二段(黒)対大西竜平初段です。
田中二段は25歳、昨年はNHK杯に出場するなど活躍しています。
大西初段は16歳、昨年入段したばかりですが最近の初段は強いです。
本局も冴えた打ち回しを見せてくれました。

黒△と打たれた場面です。
白4子が攻められていますが、どう対応しますか?





白1、3と守り一方の打ち方は最悪です。
黒2、4と相手の石が固まっていく一方で白石はいつまでも安定しません。





黒石にも薄みがあるので、反撃を考えたい所です。
しかしすぐに2、4とやっていくのは黒10までとなって隅を取られ、失敗です。





実戦は白1と格好良いツケ!
所謂モタレで、下方に働きかけながら実は上方を狙っています。





黒2、4と来れば自然に白2と傷を守ることが出来ます。
今度は白5、7が成立、白11となって立派なサバキ形です。





実戦は黒もその図は避け、違った進行となりました。
それでも白は出切りを敢行しています。




その後手順が進んで、白△までとなりました。
最初の図のように一方的に攻められるのではなく、黒石に食いついてのサバキです。
溌剌とした石運びでした。


囲碁の上達法にプロの棋譜を並べるというものがあります。
しかし、漠然と数字と座標を追うだけでは効果はありません。
プロがなぜその手を打ったかを皆様なりに考えてみてください。
そこで「なるほど!」と感心・感動することが上達の秘訣です。
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