指田文夫の「さすらい日乗」

さすらいはアントニオーニの映画『さすらい』で、日乗は永井荷風の『断腸亭日乗』です 日本でただ一人の大衆文化評論家です

牧紀子がきちんと演技していた

2019年10月06日 | 映画
昨日は、全国小津安二郎ネットワークの上映研究会だった。
まず、清水宏監督作品2本。
1929年の『森の鍛冶屋』、主演は名優井上正夫で村の鍛冶屋で、意地悪な村長に苛められる一家の話だが、気が付くと眠っていて目が覚めると終り。
本来は、10巻のものがわずか4巻しかないのだから仕方なし。
次の『不壊の白珠』は、菊池寛原作のメロドラマで、姉八雲恵美子と妹及川道子の、高田稔をめぐる三角関係。
行動的な及川と、大人しい八雲の対立で、1929年当時の東京の風俗も出てくる。
これも10分くらい短くて検閲によるものだそうで、先端的風俗が問題にされたのだろうか。
菊池寛のこうした女性が主人公の小説は、彼でなく、秘書で愛人だった女性が書いたものだそうで、時代的であり、トレンディー・ドラマでもあろう。
最後は、小津作品に出た三上真一郎主演の1962年の『私たちの結婚』、監督篠田正浩だが、あまり篠田らしくなく伝統の大船の庶民映画である。
舞台は、羽田の海苔漁師の東野英二郎と沢村貞子夫妻、娘が二人で牧紀子と倍賞千恵子、二人は川崎のいすゞ自動車の工場で働いている。
東野の海苔漁は、海の汚染と埋立ですでにダメで、最後は廃業するに至る。
いすゞの工場はすでになく、対岸の羽田空港と連結した「殿町再開発」をする予定だが、まだ進んでいないようだ。
工員、ここでは職工と言われている、の三上と牧紀子が知り合うが、そこにかつて闇屋として物を売りに来ていた木村功が、繊維問屋のセールスマンとして現れ、彼に急になびいてしまう。
「貧乏はもう嫌なの!」、この台詞は、篠田のデビュー作で、牧紀子主演の『恋の片道切符』でも出てきたはずだ。

         

牧紀子は、松竹でも最上の美人でスタイルも良かったが、台詞に問題があったのだが、ここではきちんと演技していて、驚いた。
彼女は、松竹ではダメで、最後は小林旭の『女の警察』に出ていて、元パトロンだった加藤嘉から「カッパ締めの女なので、探してくれ」と言われる女を演じていた。
このカッパ締めとは何かとずっと疑問だったが、所謂「みみず千匹」のことのようだ。
最後は、牧紀子は木村功と、倍賞千恵子は三上真一郎と結婚することを示唆して終わる。

この羽田の海苔作りは、海中に網を張って海苔を作っていたが、昔は笹竹を刺して海苔作りを行っていた。
大森にはこの「海苔ヒビ」を貸す人がいて、かの池田大作会長の家は、海苔ヒビを貸すのが家業だったそうだ。

終了後は、近くの中華料理屋で懇親会。



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