それでよい

雨降りです。
このところ何かと忙しくて録画しておいたテレビ番組も見られませんでした。
今日、NHK Eテレ『 100分de 名著』を、コーヒーをいただきながら見ました。
私の好きな詩人石垣りんさんの詩が紹介されていたのです。


　　「表札」
　　　　　　　　石垣りん

　　自分の住むところには
　　自分で表札を出すにかぎる。

　　自分の寝泊まりする場所に
　　他人がかけてくれる表札は
　　いつもろくなことはない。

　　病院へ入院したら
　　病室の名札には石垣りん様と
　　様が付いた。

　　旅館に泊まっても
　　部屋の外に名前は出ないが
　　やがて焼き場の鑵にはいると
　　とじた扉の上に
　　石垣りん殿と札が下がるだろう
　　そのとき私がこばめるか？

　　様も
　　殿も
　　付いてはいけない、

　　自分の住む所には
　　自分の手で表札をかけるに限る。

　　精神の在り場所も
　　ハタから表札をかけられてはならない　
　　石垣りん
　　それでよい。

私の精神のありかも、今与えられている私自身の名前でいい。
表札などかけなくていい。
そのことを改めて確認しました。

そんなことを近くに住む長女に話しましたら、
「お母さん、今、なーんにも肩書など持っていないんじゃない」
そう言って笑っていました。
まことにその通り。
〈生かされている〉自分が、
ここにいるだけ。
ここに在るだけ。