【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「ゴモラ」

2011-11-25 | ★橋63系統(小滝橋車庫前~新橋駅)


この朽ち果てた軍艦みたいな建物は何?
イタリアで未来の住宅として建てられたアパートのなれの果てらしいわよ。
日本でいえば、長崎の軍艦島みたいなもんかな。
でも、まだ人が住んでいるらしいからね。
まるで人類の繁栄の残骸みたいな絶望的に暗い存在感。混沌とした空虚さが圧倒的な迫力で迫ってくる。
ほとんど、この異様な建物が主人公みたいな映画よね。
日本映画でいえば、「へヴンズストーリー」に出てきた、北海道の荒廃したアパート群みたいな匂いがする。
ここを舞台に繰り広げられるのは、ドラッグの売買、産業廃棄物の不法処理、海外不動産への投資などに手を染めるイタリアの犯罪組織「ガモッラ」の実態を描いた強烈極まりないドラマ。
ドラマって言ったって、実在する組織の冷酷非情な行いの一部始終を冷徹な視線で描くから、誰にも感情移入できない。
マッテオ・ガローネ監督の演出があくまで対象を突き放しているから、観客は背中におぞましさを覚えるしかない。
情けないほどあっけなく殺される少年たち。
ある意味、ブラジルの少年ギャングたちの生態を描いた「シティ・オブ・ゴッド」のイタリア版のような非情さ。
この映画に比べれば、同じイタリア出身マフィアのアメリカでの暗躍を描いた、かつての「ゴッドファーザー」でさえ、なんと牧歌的で、詩情豊かなこと。
もう、そういう時代じゃないってことね。
いつか日本もあちこちで、こういう死臭漂う廃墟のような建物が増えるのかな。
もうとっくに増えているわ。