【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「マネーボール」

2011-11-16 | ★橋63系統(小滝橋車庫前~新橋駅)


アメリカ映画もまだまだ捨てたもんじゃないねえ。
お金がなくて大物を補強できない貧乏球団が、データを元にした補強を行って勝利する。オークランド・アスレチックスを統率するGMの実話。
まず、プロ野球っていう題材がベースボールの国アメリカらしい。
スポーツにデータとか確率とか持ってくるところがさらに、数字で割り切るアメリカらしい。
年棒がどうとかお金の話だっていうのがさらにさらに、マネーの国アメリカらしい。
一度挫折した男のリベンジの話だっていうのがさらにさらにさらに、チャンスの国アメリカらしい。
離婚して手放した娘との親子関係の話をからめてくるのがさらにさらにさらにさらに、家庭ドラマの好きなアメリカらしい。
球団名が実名で登場するっていうのがさらにさらにさらにさらにさらに、開けっぴろげなアメリカらしい。
まだ現役の人物の映画をつくってしまうっていうのがさらにさらにさらにさらにさらにさらに、身もふたもないアメリカらしい。
それらの要素のいいとこどりをして、ハッタリを効かすところはハッタリを効かせ、盛り上げるところは盛りあげ、シンプルにするところは徹底的にシンプルにするところが、さらにさらに・・・ああ、あと何回さらにって言えばいいの!
プロのアメリカ映画ってことだ。
いったいどこまでが実話でどこからが尾ひれなのかわからないし、世の中そんな単純じゃないだろうと思うけど、映画をおもしろくするためならそんなの知ったこっちゃないっていう姿勢がいい。
そんな簡単に弱小チームが強くなるわけないのにわかりやすく1シーズンの話にまとめちゃうとか、そんな簡単にトレードが成立するわけないのに乱暴な力技で見せ場にしちゃうとか、娘の存在で観客の心をくすぐるとか、意外な人物が意外な方法でヒーローになっちゃうとか、プロの企みがそこかしこに効いている。
ブラッド・ピットもおかしな役柄を散々こなしてきたけど、こういう正統派の映画で正統派の俳優に回帰したって感じ。
プロの技を堪能しよう。