【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「天然コケッコー」:東京音楽大学前バス停付近の会話

2007-08-13 | ★池86系統(東池袋四丁目~渋谷駅)

ギター教室の案内板なんて、さすがに音大前だな。
そういえば、私が若い頃はギターがほしくてほしくてしょうがなかったなあ。
ああ、中学生とか高校生の頃はギターを弾くやつが憧れの的だった。
それに引き換え「天然コケッコー」の女の子なんて、青いパーカーがほしくてしょうがないだけなんだから、かわいいもんよね。
小中合わせて6人しか生徒がいないド田舎の学校の女子中学生を夏帆が等身大で実に伸び伸びと演じていた。
学校では一番年上なんだけど、同級生が誰もいないんで、小1から中1までの下級生の面倒を一人でみている。
彼女の言動がほとんど天然ボケなんだけど、周囲がのどかな田舎だし、他の子どもたちも似たようなものだから、何をやってもほほえましい。
そんな田舎に東京から同い年の男の子が引っ越してきたことからあれやこれやの騒ぎが起こる。
騒ぎっていったって、近くの橋に幽霊が出るとか、スイカを顔に塗ると美肌になるとか、バレンタインのチョコレートをどうするかとか、のんびりしたもんだ。
小さなエピソードの積み重ねで、事件らしい事件も起こらないんだけど、それであれだけ豊かな映画ができあがるんだから驚くわ。
夏帆演じる女の子と引っ越してきた男の子が仲良くなるんだけど、それだって仲良くなる以上のこともない。
「愛が感じられないんだよなあ」とか言ってね。あのシーンも小さなエピソードのひとつに過ぎないようなところなんだけど、結構意味深なことばよね。夏空を行く雲を眺めているような気分になる映画なのに、大事なところは結構ちゃんと地に足がついている。
合計7人しか生徒がいない学校で、行きも一緒、帰りも一緒、放課後も一緒。小1の女の子から中学生まで、7人の子どもたちがつるんでダラダラと歩くシーンがやたらすばらしい。人が歩くだけのシーンをどう見せるかで監督の技量が試されるが、これを見ると山下敦弘がいかに才能のある監督かわかる。
でも、山下監督の「リンダリンダリンダ」はたしかにおもしろかったけど、「松ヶ根乱射事件」はあまりおもしろくなかったな。
しかし、ダラダラ感は出ていた。高校生のダラダラ感を描いたのが「リンダリンダリンダ」なら田舎のダラダラ感を描いたのが「松ヶ根乱射事件」。「天然コケッコー」は両者をたして2で割ってカキ氷のシロップをかけたような映画だけど、さらに磨きがかかった。今までの作品はダラダラ感が過ぎて映画自体がダラダラした部分があったのも否めないが、今回は映画自体は全然ダラダラしていなかった。大林宣彦の「なごり雪」で大学生の男女4人がダラダラと歩くだけのシーンにやたら感動したことを思い出す。
妙な連想ね。私は、ラッセ・ハルストレムの「やかまし村のこどもたち」を思い出したわ。スェーデンの片田舎の子どもたちの話で、やっぱり小さなエピソードの積み重ねなんだけど、映像も美しく、とても豊かな映画になっていた。
監督も脚本家もそれは意識していたらしいけどな。
「耳に手をあてるとゴーゴーと山の音がする」なんてエピソードたまんないわ。豊穣は瑣末なことにあり、って名言、ほんとね。
誰の名言だ?
わかんない。
なんだ、お前も天然ボケか?それで結局ギターは手に入ったのか。
いまだに「禁じられら遊び」しか弾けないけどね。


ブログランキング参加中。クリックをぜひひとつ。

東京音楽大学前バス停



ふたりが乗ったのは、都バス<池86系統>
東池袋四丁目⇒東池袋一丁目⇒池袋駅東口⇒南池袋三丁目⇒東京音楽大学前⇒千登世橋⇒学習院下⇒高田馬場二丁目⇒学習院女子大前⇒都立障害者センター前⇒新宿コズミックセンター前⇒大久保通り⇒東新宿駅前⇒日清食品前⇒新宿伊勢丹前⇒新宿四丁目⇒千駄ヶ谷五丁目⇒北参道⇒千駄ヶ谷小学校前⇒神宮前一丁目⇒表参道⇒神宮前六丁目⇒宮下公園⇒渋谷駅西口⇒渋谷駅東口