【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「シッコ」:高田馬場二丁目バス停付近の会話

2007-08-25 | ★池86系統(東池袋四丁目~渋谷駅)

お、スーツのAOKIだ。そろそろ、俺も新調するかな。
あら、いまのスーツじゃ体に合わなくなってきたの?
ちょっとな。
また太ったってことか・・・。
太ったなんて言うなよ。貫禄がついてきただけだ。
ものは言いようね。
なに、言ってるんだ。マイケル・ムーアの隣に並べば、俺なんかまだまだカマキリみたいなヤセぎすに見えるぜ。
比べる相手が間違ってると思うけど。
しかし、マイケル・ムーアも自分の病的な体質がようやく気になり始めたようで、今回取り上げたテーマは、アメリカの医療保険制度ときている。
アメリカには国が運営する健康保険がないなんて、アメリカ通の私も初めて知ったわ。
お前のどこがアメリカ通なんだ?
だって、アメリカの大統領の名前を言えるわよ。ブッシュでしょ。
じゃあ、その前の大統領は?
うーん。ブッシュマン?
だめだ、こりゃ。
それにしても「華氏911」に引き続きご出演のブッシュさん。いつ観ても、ほんとにツッコミやすい、いい顔つきしてるわよね。
だけど、今回は被害者側のインタビューばかりで加害者側の反応がほとんどなかったから、ちょっと緊張感に欠けてた。
「ボウリング・フォー・コロンバイン」で銃賛成派のチャールトン・ヘストンを取材したときの、彼のあわてぶり。ああいう、カメラの前に人間の本質が顔をのぞかせてしまうような、ドキドキするシーンがなかったってことでしょ。
ドキュメンタリーのおもしろさっていうのは、知らない事実を知ることにもあるけど、それ以上に、カメラを前にした人々が思いがけない人間の本質を見せてしまうところにあるんだよな。
日本映画でも「蟻の兵隊」なんていう映画には、戦争に反対していたはずの側の日本人が思わず憲兵のようになって中国人を問い詰めてしまうシーンがあったけど、ああいうことかな。
そうそう。でも、この映画のようにグアンタナモ刑務所に突撃取材したところで、誰も出てこないよな。
「シッコ」の中では、アメリカで唯一、無料で高度な医療を受けられるのがグアンタナモ刑務所だって言ってその前まで行くんだけど、中からは何の反応もない。それだけじゃ、物足りないわよね。
人間が出てこないんじゃあな。
それにしても、グアンタナモ刑務所って、なんかとってもぜいたくな暮らしができる刑務所に見えるんだけど、「グアンタナモ 僕達が見た真実」なんていう映画を観ると、逆にこの刑務所は悲惨極まりないところに見えて、いったいどっちがほんとなのかと思っちゃうわ。
どっちがほんとということもなく、ものごとはいろいろな側面から見なくちゃいけないってことなんじゃないか。
あなたも、たまにはまともなことを言うわね。たしかに、この映画を観ていると、フランスとかカナダとかキューバとか、医療保険制度が充実していてまるで天国のように見えるけど、じゃあ、何の問題も抱えていない国なのかっていうと、そんなはずないもんね。
日本だって、国民健康保険があるだけアメリカに比べりゃましだなと思うけど、じゃあ、問題ないのかっていうと、年金をはじめ、うんざりするくらい問題は山積みしている。
それを、こういう形で映画にできる人がいないってことだけなのよね。
入院費が払えない人をタクシーに乗せて路上に放り出す病院があるなんて、日本だったら大問題だろうに、アメリカはいったいどうなってるんだろうとは思うけどな。
実は将来の日本の姿だったりして。
やっぱり、病気にはかからないに限るな。
メタボリック予備軍が言ってもあまり説得力ないけどね。
うるさい。俺はやっぱり今までのスーツでがんばることにした。
そんなやせ我慢して、かえって体に悪いんじゃないの?
やせ我慢じゃない、太り我慢だ。


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高田馬場二丁目バス停



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