【映画がはねたら、都バスに乗って】

映画が終わったら都バスにゆられ、2人で交わすたわいのないお喋り。それがささやかな贅沢ってもんです。(文責:ジョー)

「長江哀歌」:学習院女子大前バス停付近の会話

2007-08-29 | ★池86系統(東池袋四丁目~渋谷駅)

北京オリンピックが近いから、日本のOLYMPICも改装してるのかしら。
関係ないだろ。
そもそもオリンピックとOLYMPICって関係あるのかしら。
関係ないだろ。
あなたと私は関係あるのかしら。
関係ないだろ。
やっぱりね。薄々気づいてたけどね・・・。
って、なんの話だ?誘導尋問なんかしている場合か。オリンピックばかりじゃなく、中国が国威発揚のために世界一のダムをつくろうとしているこのときに。
それこそ、関係ないんじゃない?
何を言ってるんだ、世界一だぞ、世界一。
でも、私たちは関係ないでしょ。
いやいや、そのために廃墟になるビル群の姿を見てみろ。圧倒されるぞ。
たしかに、中国映画の「長江哀歌」とか観るとそれは感じるけど。
だろ?まるで戦争で破壊されたような、あの異様な建物が立ち並ぶ風景。
悠久の揚子江をせきとめてできる、世界一のダム、三峡ダムの建設現場が舞台の映画なんだけど、延々と写される揚子江よりも、水に沈む町の殺伐とした風景に目を奪われるのは間違いないわね。
そんな町へ、別れた妻を探しにきた男と、夫を探しにきた女の話なんだけど、二つの話が直接交わるわけでもなく、ドラマチックな風景とは対照的に、物語としてはたいしてドラマチックなことも起きず、淡々と話が進む。
そうそう、話のリズムは揚子江のように悠々と流れるのに、背景となる町は変貌著しいというのが、なんとも不釣り合いな組み合わせで、不思議な映画になったわ。
中国の現状を反映しているのかもな。急激な近代化とそれに対応できない人々・・・。
ダムの底に沈む町って、日本で考えると、人里離れた寒村のイメージなんだけど、この映画に登場するのは、高層ビルがいくつも並び立つ都会なのよね。
一説には、ダムのために140万人が移住するというからな。さすが中国はスケールが違う。
それにしても、揚子江沿いに、もう人も住んでいないような灰色の廃墟となったマンションが立ち並ぶ風景は、この世のものとも思えない。
Jホラーの舞台にでもなりそうだよな。
「JUON中国篇」とかね。
近代化というのがこういう、ありえないような風景を生み出すのかと思うと、感慨深いものがある。
ある意味、中国の苦悩が見えるような映画だったわ。
物語としてではなく、むしろ、絵としてな。
今度のオリンピックも、これだけ苦労している国で開かれるオリンピックなんだから、絶対成功してほしいわね。
それは、関係ないだろ。
あなたと私は関係あるのかしら。
関係ないだろ・・・って、何度言わせるんだ。


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学習院女子大学前バス停



ふたりが乗ったのは、都バス<池86系統>
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