スパニッシュ・オデッセイ

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命に関わる発音 [ɾ] と [l]

2013-10-16 14:01:25 | スペイン語
  コーヒー豆を挽くのも、粉を挽くのもどちらもスペイン語では moler という動詞で表される。水力や風力を利用して粉を挽くところが molino で水車小屋や風車だったりする。英語では millで(風車の場合は特に windmill というが)、語源は同じらしい。英語の mil lはMill, Mills, Millerなどの姓にもなっているが、スペイン語では molino の女性形の Molina がありふれた姓の一つになっていることは前回述べた。
 臼歯を表す molar(スペイン語では muela という形が普通)も「臼」の字があるように食べ物を「砕く」歯である。
 話が唐突に変わるが、スペイン語の発音は日本人にはあまり難しくない。ただし、意外と難しいのが l の音である。スペイン語にも英語同様 r と l の区別がある。英語の r は巻舌音で、舌先が上の歯茎に接近するものの、接触はしない。ところが、スペイン語の r は日本語同様、接触して一度弾くのである。つまり、スペイン語の r は日本語と全く同じ「ラ行」音([ɾ])でよいことになる。
 一方、l で表される音は英語同様、舌先が上の歯茎にべったりとくっつく [l] の音である。これは日本人にも当然発音できる。ただ、ぼんやりしていると、べったりとくっつける時間が短くなり、つい舌先で弾いてしまう。そうなると[ɾ]の音になってしまうのである。
 英語の r で表される音は日本語と違いすぎるので、日本人はこの音の発音をかなり意識する。スペイン語の r は日本語と同じなので、全然意識しない。l の方は英語でもあまり発音を意識することはないだろうが、スペイン語でもあまり意識していないのではないだろうか。ここが盲点になり、スペイン語の r と l の発音の区別ができにくくなっているのではないだろうか。
 ポルトガル語もスペイン語同様 r と l の発音の区別があるが、スペイン語と逆になっている場合がある。
 例えば、スペイン語の plaza (広場、プラザ)はポルトガル語では praça になっている。 
 さて、スペイン語を習うとき、まずは挨拶を覚えるが、便利なあいさつに“hola”(英語の hello に相当)がある。スペイン語では h は読まないので、カタカナで書くと「オラ」である。日本人はこれを “hora”(時間、英語の hour に相当)と発音してしまいやすい。「ハロー」のつもりで「時間」と、挨拶しているわけである。しかし、これなどかわいいものである。
 歯痛で歯医者に行った時、自分から「奥歯が痛い」というときは、少々発音が悪くても、許してもらえるだろうが、医者の方から「どこか痛むか」と聞かれたときに、「奥歯(muela)」とだけ返答するような場合、[l] の発音が悪ければ、歯医者に殺されるかもしれない。[ɾ] で発音してしまうと、“muera”となる。これは動詞 morir(死ぬ)の丁寧な命令形である。「死ね」でなくても「死んでください」では、こちらの方が殺されかねない。殺されないまでも、歯医者さんのキーンという音のする機械で歯を思いっきり、グリグリされ、死ぬ思いをするかもしれない。 

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