鬼平や竹鶴~私のお気に入り~

60代前半のオヤジがお気に入りを書いています。

お気に入りその975~闇に香る嘘

2014-11-08 12:36:24 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、「闇に香る嘘」です。

第60回江戸川乱歩賞受賞作品にふさわしい作品と高く評価されていることを知り読むことにしました。
読み始めて思い出したのですが、推理小説っていつもなかなか読み進みません。
少しの空き時間があっても手が出ず、さて読むか!という気合が必要なのです。
理由を考えてみると、推理小説の多くが殺人などの事件性を持った事象を解決するという筋立てになっていることが大きな原因のようです。
物語全体が暗く不安な空気に支配されており、私の気持ちもつられて沈みます。
さあ、謎を解き明かすぞ!という意気込みを感じる推理小説マニアのようには行きません。

特に今回の「闇に香る嘘」はその傾向が強い作品でした。
人間の感覚の85%を支配するといわれる視覚を失い、積極的な訓練を怠ってきた主人公。
まわりで起きていることを把握できない不安に満ちています。
中国の残留日本人孤児である兄は本物か?
その疑問が浮かび上がったところにもうひとり、兄を名乗る男からの電話が・・・。
気を重くしながらも何とか読み続けました。

ところが謎が次々解けていく最後の辺りは実に爽快でした。
家族との絆が蘇り、周囲を含めきっと明るい希望が待っているであろうという終わり方。
そうです。
読書はこの読後感を味わいたくて続けているのです。
満足満足。

点字俳句の謎解きや冒頭部に硬い表現が続くことなど、一部に違和感もありましたが、推理を満喫できる佳作であることは間違いありませんでした。

推理小説もたまにはいいね!と思って読み終えたことはきっと次につながることでしょう。



コメント
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