鬼平や竹鶴~私のお気に入り~

60代前半のオヤジがお気に入りを書いています。

お気に入りその1153~虫眼とアニ眼

2015-12-30 12:07:25 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、「虫眼とアニ眼」です。

今年最後のブログ更新は、養老孟司と宮崎駿の対談集「虫眼とアニ眼」について書きます。
2002年の発行ですが、最近読んだ人からも「面白かった!」という書き込みが多かったので読みました。
また大好きな宮崎駿のイラストがたっぷり掲載されている!という情報も選ぶ理由になりました。

AMAZONの内容紹介を引用します。
=====
「虫眼」の人、 解剖学者養老孟司と「アニ眼」の人、アニメーション作家宮崎駿との3度にわたる対談集。
「虫眼」とは、虫の身体の見逃してしまうくらい微小な特徴を目ざとく見つけ、それに感動できるセンスを持っている人のことである。宮崎は、その「虫眼」こそ、養老の自由な発想の源だと指摘する。
2人は、『もののけ姫』や『千と千尋の神隠し』などの宮崎作品や自然と人間とのかかわりあい、そして若者や子どもをめぐる現状についてざっくばらんに語りあっていて、とっつきにくい話題も身近なことのように感じられる。
冒頭で「養老さんと話してぼくが思ったこと」と題して宮崎が描き下ろしている、22ページにも及ぶカラー漫画が、濃密で刺激的だ。
ここでは、老若男女の誰もが「隠された自分の感覚や能力を発見できる」町の創設を、「養老天命反転地」をデザインした荒川修作とともに提唱している。
とくに、保育園や幼稚園を中心にして町づくりがなされているところが、子どもたちに関心を注いで映画作りをしてきた宮崎らしい発想である。
巻末には、養老の「見えない時代を生き抜く―― 宮崎アニメ私論」が収められている。宮崎との対談を受けての、日本人や日本文化の「都市化・脳化」にたいする警告が強く発せられている。
宮崎と養老は、格別に親しい間柄ではないという。
しかしお互いに一目置いているのが行間からうかがえる。
その距離のとりかたが、2人のやりとりに適度な緊張感を与えている。(文月 達)
=====
小さな虫の動きも逃さず捉えて感動できる「虫眼の人」養老孟司と、日本を代表する「アニメ(眼)の人」宮崎駿が、宮崎作品を通して自然と人間のことを考え、若者や子供への思いを語る。
自分を好きになろう、人間を好きになろう、自然と生きるものすべてを好きになろうという前向きで感動的な言葉の数々は、時代に流されがちな私たちの胸に真摯に響く。
カラーイラスト多数掲載。
=====

冒頭のカラーイラストのページでは、宮崎駿が新たな視点による都市計画を提案しています。
200戸ほどのコミュニティは、自動車が街中までは入れず、中心部に広場があります。
その辺りには子どもたちが家に帰りたくなくなるほど楽しい保育園があります。
子どもたちの自主性に任せ、ナイフや火を使い、木に登るなど冒険し放題。
多少の怪我はつきものとして放っておきます。
アップダウンが豊富で自然に囲まれたコミュニティが、宮崎駿の理想なのですね。

目が慣れて驚くほど虫を見つけることができる目を「虫眼」と言うそうです。
山菜を採りに行ったときに、はじめはなかなか見つけられないけれども、目が慣れてくると次々見つけられます。
これは「山菜眼」といえそうです。

目玉とビデオカメラの違いの話も面白かったです。
養老さんの話。
視界の中に左右に並んだ対象物があり、目玉を左から右に移動させても背景は移動しない。
ところがビデオカメラの場合、カメラの向きを移動すると背景も移動する。
これは脳が映像を修正しているから。
宮崎さんの話。
(その点について深く考えたことは無いが)イメージ通りに映像化できないことは多くある。

達人同士って深いところでつながっているのですね。

あとがきを養老さんが書いています。
宮崎アニメについて書いてほしいと編集者から要望されたそうですが、ハナから書けないと断言しています。
その理由として、芸術作品を言葉で語りつくすことができる訳がなく、できないからこそ芸術なのだと述べています。
開き直りともとれますが、実に納得できる言葉です。

今年も一年間いろいろな本を読みました。
オーテス・ケイリ著「真珠湾収容所の捕虜たち」、上橋菜穂子著「獣の奏者」「鹿の王」などは素晴らしかったです。
その中で今年のマイベストを挙げるなら、やはり久しぶりに読み返した鬼平犯科帳シリーズでした。
渡る世間の教科書をあらためて堪能しました。

来年もまたこれは!という本との出会いを楽しみにしています。


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お気に入りその1152~洋酒伝来

2015-12-28 12:26:51 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、「洋酒伝来」です。

藤本義一著「洋酒伝来」が届きました。
本書は著者がサントリー社内報に連載した記事をまとめたものであり、ウイスキーのウンチク本の一冊として購入しました。
届いてびっくり、ずいぶん立派な本です。
外箱と内箱に入っています。
奥付には1968年8月発行、第34番/800部。
見返しには、エッセイスト矢口純宛ての署名。
あとがきには、本書発行に尽力した方々の中に矢口氏の名がありました。
サントリーに入社し、10年間にわたり洋酒伝来に関する話をかき集め社内報に連載し、区切りとして出版したことが語られていました。
著者の生年は1933年、ということは本書を発行したのは35歳のとき。
サントリーが取りまとめて発行した訳ではなく、よくもこんな豪華な本を自力で発行できたものです。
しかも序文は東大名誉教授。
そこには「洋酒伝来に関してまとめた書物はこれまで存在せず初の快挙である」と称賛の言葉がつづられていました。

ワイン・ウオッカ・ウイスキーなどの洋酒が、日本を訪れた外国人により持ち込まれたことが、文献にわずかに残されています。
わずか数行の記述を探すのにどれだけの文献に目を通したことでしょう。
参考文献の欄に紹介された冊数の10倍を超えるのではないでしょうか?

さて、久しぶりのうんちく本。
今後は晩酌のおともにしましょう。
とびきり面白い話がありましたら、後日ご紹介します。

ただし・・・。
前回紹介した「松本清張短編総集」といい今回の「洋酒伝来」といい、ページ数が多いので、いつご紹介できるやら・・・。



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お気に入りその1151~松本清張

2015-12-26 12:47:16 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、松本清張です。

松本清張が亡くなってから20年以上過ぎていますが、今でも作品はドラマ化され続けています。
数年前に制作された田村正和主演の「球形の荒野」や、ビートたけし主演の「点と線」などは絶品でした。
特に「球形の荒野」は、日本の終戦工作を成し遂げるために自らの存在を消した外交官が家族と再会するという設定にとても感動したのを覚えています。
また昨年能登を旅したときに、名所「ヤセの断崖」に立ち寄るのに合わせて「ゼロの焦点」を読んだことも記憶に新しいです。

先日、「松本清張は長編よりも短編にこそ真髄がある!」と主張する人の文章を目にしました。
調べてみると、清張ファンの宮部みゆきが「傑作短篇コレクション」を上中下巻で出す熱の入れようであることを知りました。
短編にはどんな作品があるのかな、と思い調べると、デビュー作「西郷札」、芥川賞受賞作「或る『小倉日記』伝」などは有名ですし、最近ドラマになった「地方紙を買う女」「一年半待て」「張込み」「顔」も短編が原作であることを知りました。
「清張の短編」に俄然興味がわいてきました。

そこで、どれか短編集でも読もうと思って選んでいる内に行き当たったのが、今回紹介する「松本清張短編総集」です。
デビューから10年間に発表した短編の内、著者のお気に入りを集めたものです。

届いてみると全部で1000ページを超えており、まるで辞典のようです。
その上、ページが上下二段になっていて、とても一気に読みきる自信がありません。
取りあえず名作だけを先に読もうと思います。
選択基準を宮部みゆきの「傑作短篇コレクション」と重複している作品、として付け合せをしてみました。
総集に収録されているのは43作品。
宮部みゆきの「傑作短篇コレクション」に収録されているのは37作品。
その2冊で重複しているのは10作品。
短編10作品なら何とかなりそうです。
その作品とは次の通り。

 西郷札 / 或る「小倉日記」伝 / 火の記憶 / 地方紙を買う女 / 一年半待て
 捜査圏外の条件 / 真贋の森 / 巻頭句の女 / 空白の意匠 / 鴉

お正月休みに読もうと思いますが、どうなることやら・・・。
感想は改めて書きます。

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お気に入りその1150~月神

2015-12-24 12:44:17 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、「月神」です。

最近、お気に入りの作家のサイン本を続けざまに蒐集し、読書とサイン鑑賞を楽しんでいます。
最近入手したのは次の5冊。
 
・吉村昭 「冷たい夏、暑い夏」
・新田次郎 「凍った霧の夜に」
・原田マハ 「生きるぼくら」
・松本清張 「松本清張短編総集」
・葉室麟 「月神」

この内、4名はまさに「字は人なり」でした。
例外は葉室氏。
マジックペンで書いたサインの素人っぽいこと。
字があまりお上手でない上、崩さずに書いているからでしょうか。
ただ大きく丁寧に書いて落款を押しているところは、き真面目な人柄を連想させます。

それにしても今回、葉室氏の作品「月神」に巡り会えたことは幸運でした。
著者が北海道月形町について書いているとは知らなかったものですから。

AMAZONの内容紹介を引用します。
=====
明治13年、福岡藩士出身の月形潔は、集治監建設の団長として横浜港から汽船で北海道へと向かった。
その旅のさなか、亡き従兄弟の月形洗蔵を想った。
尊皇攘夷派の中心となり、福岡藩を尊攘派として立ち上がらせようとしていた洗蔵。
だが、藩主・黒田長溥は、尊攘派の台頭を苦々しく思っていた。
志を同じくする者たちとともに闘う洗蔵だったが、維新の直前に刑死した。
維新の後、福岡藩出身者に与えられるのは、政治の本流とは関わりのない瑣末な仕事ばかり。
時は過ぎ、自分は今、新政府の命令によって動いている。
尊敬していた洗蔵が、今の自分を見たらどう思うのか?
激動の明治維新の中で国を思い、信念をかけて戦った武士たちを描く、傑作歴史小説!
=====

札幌から北に向かうとそれほどかからずに月形町に着きます。
そこの旧樺戸集治監本庁舎は昨年見学してきました。
建物や展示物は、吉村昭著「赤い人」に描かれた過酷な監獄をよく伝えていました。

また月形町付近の国道275号線の脇には土饅頭らしきものがあちこちに見受けられます。
「赤い人」の内容通りなら、囚人たちが道路作りに力尽きて葬られた跡ということになります。
車を降りてそれを確かめに行く勇気がありませんので定かではありませんが・・・。

本書で一番印象的だったのは、月形洗蔵が坂本竜馬に先立ち、犬猿の仲だった薩摩と長州を和解させていたこと!
驚きの史実です。
竜馬が成し遂げた薩長同盟は、洗蔵がお膳立てしたものだったのですね。
ただし洗蔵は、同盟が結ばれ尊王攘夷を成し遂げられる直前に刑死します。
生前「月形一族は夜明けに向かう道を照らす月だ」というシーンがあります。
「日の出とともに消えゆく月」の定めそのものの生涯でした。
時流を読んでいたはずの福岡藩主・黒田長溥が生家・薩摩と歩調を合わせる気持ちが無かったことが残念です。

後半の月形潔が主人公の章は期待が高すぎたせいか少々残念でした。
名作「赤い人」とかぶり過ぎていたためでしょうか?
脱獄の名人、五寸釘の寅吉を脇役に据えたのは良いアイデアだったと思いますが、逆にもっとシンプルに「月形一族の定め」に添わせて潔の人生を描いた方が良かった気もしました。
潔は過労がたたり、病気を理由に辞職した後、46歳の若さで亡くなっています。
北海道開拓に命を懸けた男の生涯をあらためて学び、感謝の念で一杯になりました。



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お気に入りその1149~フェルメール②

2015-12-21 12:11:26 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、フェルメール②です。

「フェルメール光の王国展 in SAPPORO」の予習として読み始めた朽木ゆり子著「フェルメール全点踏破の旅」をようやく読み終えました。
漱石の「それから」と並行で読んだため、とても時間がかかりました。

AMAZONの内容紹介を引用します。
=====
日本でもゴッホと並ぶ人気を持つ十七世紀オランダの画家、ヨハネス・フェルメール。
その作品は世界中でわずか三十数点である。
その数の少なさ故に、欧米各都市の美術館に散在するフェルメール全作品を訪ねる至福の旅が成立する。
しかもフェルメールは、年齢・性別を超えて広く受け入れられる魅力をたたえながら、一方で贋作騒動、盗難劇、ナチスの略奪の過去など、知的好奇心を強くそそる背景を持つ。
『盗まれたフェルメール』の著者でニューヨーク在住のジャーナリストが、全点踏破の野望を抱いて旅に出る。
=====

37点全てを紹介していますが、贋作や他人の作品ではないかと思ったものもありました。
そんな作品に対して、著者は次のように書いています。
・「聖プラクセデス」「フルートを持つ女」を除く35点が真作という見方が主流。
 つまりこの2点は贋作か他人の作品である可能性が高いということでしょう。
・真作だから名作だとは限らない。
 フェルメールが病気などで力が衰えてから描いた作品もあるのではないか、とのことです。

なるほど・・・。
本人が描いているにもかかわらず技術レベルが低い作品もある、というのは考えもしませんでした。

ここで好きな作品を挙げようと思いましたが、8点までしか絞れませんでした。
・真珠の耳飾の少女(青いターバンの少女)
・牛乳を注ぐ女
・デルフトの眺望
・青衣の女
・天文学者
・地理学者
・天秤を持つ女
・窓辺で手紙を読む女

どれも眺めていて見飽きない素晴らしい作品ばかり。
展覧会で実寸を細部まで鑑賞することを楽しみにしています。

ちなみにモデルが明らかに同一人物と思われる作品が複数組ありますが、それには特定のモデルがいないそうです。
てっきりモデルがいると思っていたので、とても驚きました。。
これは「トローニー」というそうで、当時の風俗画のひとつの形(技法・流行)だそうです。

もうひとつ、へーっと思った話があります。
当時は宗教革命により宗教画が下火となり、風俗画が多く描かれたそうです。
著者はフェルメールのことを無宗教かと思うほどだ、と書いています。
宗教色がほぼ無いことと、技術が高いことが、フェルメールが日本人に人気がある理由かもしれません。

著者は2004年12月から翌1月までの3週間弱で34点を鑑賞したそうです。
欧米の都市を旅しながらの鑑賞旅行は、誰もが羨む贅沢な体験です。
読みながら著者と一緒に旅をしている感覚にとらわれる素敵な一冊でした。
「全点踏破の旅」を立案した編集者、各地で協力したスタッフたちに拍手!
フェルメールにご興味があれば、ご一読をおすすめします。

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お気に入りその1148~それから②

2015-12-18 12:31:02 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、「それから」②です。

以前に酔った勢いで購入した夏目漱石の「それから」をようやく読み終えました。
春陽堂が1919年(大正8年)に発行した縮刷版第8刷(箱付)。
96年も前の発行だけあって、①印刷が不鮮明、②旧字体、③ほとんど振り仮名無しの三重苦で読書は難航しました。
読めない漢字に出くわした場合は辞書を引かず、前後の流れから類推して半ば強引に読み進めました。
解釈に疑問が残る箇所は1か所や2か所ではありません。
こんなに苦労するなら、鮮明な文字に振り仮名が振っている最新版を読めば良かったのですが、何事も経験と思い意地を通しました。

ちなみに今年初めて「それから」を読んだという方は私以外にも多くいるのではないでしょうか?
その理由は、今年4月1日から朝日新聞が「それから」を連載したからです。
それではなぜ朝日新聞が「それから」を連載したのでしょうか?
「それから」は106年前の1909年(明治42年)6月から10月まで朝日新聞に連載した新聞小説だったそう。
つまり今回の連載はそれの再連載。
年数が中途半端ですが、「三四郎」に続いての連載とのことですので、漱石三部作のどれかの周年企画なのでしょう。

本書はあまりに有名ですが、念のためAMAZONの内容紹介を引用します。
=====
明治期の文学者、夏目漱石の長編小説。
「三四郎」の後に書かれ、次の「門」とあわせて三部作とされる。
漱石自身の予告によれば、「三四郎」には大学生の事を描(かい)たが、此(この)小説にはそれから先の事を書いたからそれからである。
主人公の代助は三十歳を過ぎても親からの仕送りを受けて優雅に暮らしている知識人「高等遊民」である。
かつて親友に譲った三千代と再会して、人妻である彼女との愛を貫く決心をする。
愛を代償に社会から葬られる夫婦はどうなるのか。
=====

さて読後の感想です。
物語の大半は代助の優雅な生活をだらだらと描いています。
良いご身分でうらやましい限り。
このパートでは明治の社会風俗を知ることができてとても興味深かったです。
ところが最後の最後になって急転直下、代助が人妻・八千代の略奪を宣言したために友を失い、親からも勘当されます。
そして三千代と自立した生活をおくるために、「職業を捜してくる」といって街に出かけるところで物語は終わります。
つまりはいつまでも学生気分が抜けないボンボンが、親も友人も頼れない状況になり、ついに働く気になったというストーリー。
そのきっかけが不倫であり、当時の社会風俗上、決して許されるものではない大事件だったということ。
正直にいって、だから何なの?という内容です。
現代のような不倫が蔓延している社会に毒されているために、鈍感になっているのでしょうか?
確かに不倫をしただけで社会から抹殺されるとしたら、恐ろしくてできないですよね。
・・・名作を読んでこの程度の感想とは我ながら情けない、トホホ・・・。
96年前に出版された小説本を読み通すことに力を使い果たした、ということでご勘弁ください。

最後に、面白いと思ったエピソードをいくつか書きます。
・主人公の叔父が維新の動乱期に暗殺されていること。
 維新の動乱を親の世代が経験しているのに、こののんびり具合、読んでいて不思議な世情です。
・主人公がウイスキーを飲んでいること。
 ウイスキー派として身近に感じました。
 ウイスキーのことを当時は「ヰスキー」と表記したのですね。
・本書の奥付に直押しされた検印には「夏目」の文字。
 3年前に著者が亡くなっているので、著作権者である奥さんの印鑑でしょう。
・著者名には「夏目金之助」の文字。
 当時、奥付には本名を表示したということでしょうか?
 調べてみました。
 奥付の著者名は、明治末期から大正末期までの期間に過渡的に本名から雅号(ペンネーム)に移り変わっていったそうです。



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お気に入りその1147~新田次郎

2015-12-16 12:46:46 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、新田次郎です。

先日、新田次郎著「凍った霧の夜に」(1972年発行)が届きました。
若い頃に愛読した著者のサインを鑑賞したかったからです。

本書を購入するか否かを決めるため、内容を確認しました。
AMAZONには内容紹介文がなかったので、あちこち探したら「山の本棚」というHPに紹介文が載っていました。
=====
「凍った霧の夜に」「地獄への滑降」などの山岳小説の他、ミステリー物や不思議な話を集めた短編集。
=====

後に文庫化されなかったところをみると、評価されていなさそうです。
確かに著者のミステリーや不思議な話といっても食指が動きません。
でも山岳小説が収録されているのなら、と購入を決めました。
届いてみると、次の8篇が収録されていました。

凍った霧の夜に/地獄への滑降/終章の詩人/天国案内人/ネオンが消える/呪われた墓地/あなたはなんなのよ/彼岸花

これらの感想は読後あらためて書くことにします。

今回は楽しみにしていた著者60歳のサインについて書きます。
写真の通り、流れるようでいながらしっかりまとまっています。
元・気象台職員らしい理系の文字であり、気力の充実した文字だと思います。
これもまさに「字は人なり」。
自分を磨き、自身の字を磨きたいと改めて思いました。

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お気に入りその1146~奇跡の2000マイル

2015-12-14 12:49:14 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回はそれほどお気に入りではないのですが、映画DVD「奇跡の2000マイル」をご紹介します。

TUTAYAで薦めていたので観ました。

まずはストーリーを知らない方のために「映画.com」の解説を引用します。
=====
ラクダと愛犬とともにオーストラリア砂漠3000キロをたった1人で踏破した女性の実話を、「アリス・イン・ワンタ?ーラント?」のミア・ワシコウスカ主演で映画化したロードムービー。
思い通りにいかない人生に変化を求め、ひとり都会から砂埃か?舞うオーストラリア中央部の町アリス・スフ?リンク?スにやってきた女性ロヒ?ン。
彼女か?この土地に訪れた目的は、砂漠地帯を踏破しイント?洋を目指す旅に出ることだった。
ハ?フ?て?働きなか?らラクタ?の調教を学ひ?、旅の準備を整えたロヒ?ンは、4頭のラクタ?、愛犬とともに町から旅へと出発する。
1日あたり約32キロのヘ?ースで歩き、7カ月という日数をかけて達成したその旅の過程で、ロビンはさまざまな出会いや経験を体験することとなる。
=====

(以下、ネタバレ)

映画は特にこれといった目的なしにただ海をめざす旅を描いています。

ナショナルジオグラフの資金援助を得ているとはいえ、同誌のカメラマンが数10日に一度撮影に寄るだけ。
孤独な旅です。
考える時間はたくさんあります。
彼女は人生を振り返ります。
父が経営する牧場の倒産、母の自殺、愛犬の安楽死。
彼女は親戚の家に引き取られて育ちました。
その後の彼女の人生は語られませんが、それほど幸せではなかったようです。

砂漠のど真ん中でラクダを見失って絶望し、人生を伴にしてきた愛犬を失って喪失感に打ちひしがれます。

ラストはラクダとともに海に足を入れるところで終わります。

淡々とした映画。
特に何を訴えることもなく終わりました。

こういう観念的な映画は苦手です。
ただすべてをリセットしたくなったときに、こういう映画を観たくなるのかな、と思います。
心の疲労がたまっている方におすすめの映画なのでしょう。








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お気に入りその1145~最近のTV番組

2015-12-11 12:21:05 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、最近のTV番組です。

最近お気に入りのTV番組は「ブラタモリ」と「ファミリーヒストリー」です。
夫婦でへー、ホーと言いながら楽しんでいます。

「ブラタモリ」はタモリさんが全国あちこちをブラブラして、面白い話を掘り起こしています。
福岡、鎌倉、富士山、函館、小樽、どれも面白かったです。
特にタモリさんが鉄道と地質に詳しいことと、高いところが苦手なことを楽しんでいます。
先日はわが町、札幌の「目からウロコ」の話を楽しみました。
一人目の案内人は博物館学芸員。
地質に詳しいタモリさんと扇状地の端に湧き出る水源を歩きました。
それが北大構内に流れる川の水源だったことは驚きでした。
二人目の案内人はタウン誌編集者。
ススキノのど真ん中に遊郭の跡が今も残っていることを紹介していました。
札幌に生まれて半世紀を過ぎましたが、知らない事ってあるもんですね。
ちなみにご当地だけあって、2人の案内人はどちらも少々関わりのある人でした。

次は「ファミリーヒストリー」。
「人に歴史あり」と言いますが、ご先祖をたどると興味深い話がどんどん出てくるものですね。
先日は中川翔子でした。
番組HP文を引用します。
=====
「ファミリーヒストリー~近代化に賭けた先祖お台場建設とクラークの教え」
「しょこたん」こと中川翔子さん。
5代前の先祖は、幕末、お台場建設に関わった人物。
勝海舟と共に仕事をしていたことが分かった。

その後、北海道開拓のために、道路建設に携わった。
そして4代前の高祖父は、あのクラーク博士の愛弟子で、札幌農学校の第一期生だった。
サケのふ化事業に成功し、その後、石油事業に転じた人物。
近代化に賭けた歳月が浮かび上がる。
翔子さんは、先祖たちの偉業を初めて知り、驚いてばかりだった。
=====

今年リニューアルオープンした「サケのふるさと千歳水族館」。
9月に行ってきました。
そこのある(サケ捕獲用)インディアン水車は昔から有名でしたが、中川翔子のご先祖が始めたものだと知ったのは数年前でした。
その人物が、クラーク博士から「ボーイズ・ビー・アンビシャス」と声を掛けられた一期生だったとは驚きでした。
また函館札幌間という北海道の大動脈の道路建設を仕切ったのが5代前のご先祖というのも驚きでした。
中川翔子には、ずいぶんと偉大なご先祖がいるものです。
しかもその2人が2人とも、北海道に縁のあるとは・・・。
これまでも「しょこたん」の独特なキャラクターに好意を持っていましたが、今後は北海道の、そして札幌の恩人の子孫として応援したいと思います。

以上2つの番組はこれからも目が離せません。

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お気に入りその1144~新種の冒険

2015-12-09 12:28:43 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、「新種の冒険」です。

漱石の大正8年発行「それから」を悪戦苦闘しながらようやく半分読み終わったところ。
そしてフェルメール展に向けた予習として読んでいる朽木ゆり子著「フェルメール全点踏破の旅」は1/3ほどのところ。
ほとんど複数の本を並行して読まないのですが、今回はついに3冊目が登場しました。
それがQ・ウィーラー著「新種の冒険 ~びっくり生きもの100種の図鑑」。

今回3冊目を読むことにした理由は、いつも本選びの参考にしているBOOKasahi.comの書評がとても魅力的だったから。
まんまと朝日新聞さんの術中にはまってしまいました。

少し長くなりますが、BOOKasahi.comの書評をご紹介します。
=====
今どき、新種なんかそうそう見つかるもんかと思っていたらさにあらず。
毎年なんと1万8000種が報告されている。
地球上にはいまだ名前のついていない生物は1千万種もいるという。
過去10年で発見された20万種の中から、2人の科学者がヘンテコな容姿のもの、ありえないサイズのものなど、10項目100種を選んで紹介するおもしろ生物図鑑である。
でっかい耳をぱたぱたさせて泳ぐ、その名もダンボオクトパス。
どう見ても泥の塊、しかも大きさが12センチもある単細胞生物。
キミたち、本当に生き物か、とツッコミたくなる。
変な名前の項が面白い。
探すのが難しい獲物をなんなく見つけ出すアリは「グーグル」、真空でも死なないタフなクマムシは、あの強い女、マドンナの名がつく。
ダジャレで命名する人、学会の憎いケンカ相手の名前の後に「肛門」とくっつけて学名にしちゃう人。
学者たちの悪ノリぶりも涙が出るほどオカシイ。
驚いたり笑ったりするうち、彼らのとんでもない風貌、暮らしぶりは、何としてでも生き抜こうとしてきた進化の結果なのだと気づく。生命のすごいパワーに感嘆。
=====

へぇー、そんな面白そうな本があるんだ、と思い「本」をクリックするとAMAZONにひとっ飛び。
AMAZONの内容紹介も実に興味をそそりましたので引用します。
=====
今世紀になって発見された最も珍しい生物100種を、米国の生物種探査国際研究所が選定。
体色を変えて身を守る美しいタツノオトシゴや、幅1センチほどの極小蘭など、へんな生き物の生態を貴重な写真とともに紹介する。
驚きの姿を楽しめる。
=====
地中に潜らない巨大ミミズ、大きな耳で泳ぐタコ、六重塔のようなキノコなど―
ほんの少し前まで、世界中の研究者たちも知らなかった驚きの真実がここに!
=====
【目次】
第1章 ものすごく美しい新種
第2章 へんてこな見た目をした新種
第3章 とっても小さい新種
第4章 記録的大きさの新種
第5章 化石になってるけど新種
第6章 絶滅が危ぶまれる新種
第7章 できれば出会いたくない新種
第8章 過酷な環境で生きる新種
第9章 何かに見間違えそうな新種
第10章 おもしろい名前がついた新種
=====

どうです?
面白そうでしょう?

今はまだ本が届いたばかりで、まえがきに目を通し、パラパラと写真と本文を斜め読みしただけ。
左ページが写真、右ページが解説、というシンプルな構成。
大正8年の旧仮名遣いに苦戦している小説本と、美術解説本を読むことに疲れた時、気分転換に打ってつけな本です。
読み切ることを急がず、のんびり読みたいと思います。


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