鬼平や竹鶴~私のお気に入り~

60代前半のオヤジがお気に入りを書いています。

お気に入りその1448~葉室麟

2017-11-29 12:19:24 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、葉室麟です。

葉室麟の「風の軍師 黒田官兵衛」。
借りてきたため、急いで読みました。
葉室作品は、相変わらずリズムよく読めます。

AMAZONの内容紹介を引用します。
=====
あす吹く風は、どこからどこへ。
黒田官兵衛、ジョアン、細川ガラシャ、織田秀信――
伴天連追放令下、「かなわぬ夢」と「かなえてはならない夢」のはざまで生きた人々の思い。
キリシタン受難の時代を、気鋭がダイナミックに描く。
秀吉の懐刀・黒田官兵衛、キリスト教の教義を官兵衛に教えた日本人修道士・ジョアン、キリシタンの象徴的存在・細川ガラシャと、その侍女いと、キリシタンの天下人と望まれた岐阜中納言織田秀信らは、次々と追放や殉教という運命に翻弄されていった。
伴天連追放令下、キリシタンが次第に生きにくくなる時代を描く。
=====

物語には、村上水軍の長・村上武吉の末っ子が登場します。
ベストセラー「村上海賊の娘」に登場したあの末っ子でしょうか?
「村上海賊の娘」で主人公の姫と同じくらい急成長し、逞しくなっていった男のことを思い出しました。

本書では、村上水軍は秀吉の支配下に落ちており、末っ子は黒田官兵衛の懐刀となっています。
明智光秀をそそのかして暴君・信長を亡き者にしたのと同様、天下取り後急速に暴君と化してしまった秀吉を亡き者にするため、秀吉に恨みを持つ村上の力を借りようとします。
すべてはキリシタンが安心して暮らせる国を作るため。

日本の歴史の裏側に数々の策略あり、というところ。
策略や謀略はあまり好きでないのですが、軍師が主人公なので、仕方がありません。

著者は郷土の有名人を書きたかったのでしょうが、読んでいてつまらなかったです。
いつもの背筋の伸びるような尊敬する生き様をした主人公ではないから。
著者のレパートリーにはこういうのもあるということでしょう。
いい勉強になりました。
次は内容を確認して読むことにします。

といっても次はもう準備済み。
「乾山晩愁」です。
これはどちらかな?
楽しみでもあり、心配でもあります。






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お気に入りその1447~本の補修

2017-11-27 12:13:20 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、本の補修です。

「フィルムルックス 補修補強テープ ペーパーエイド 2cm×10m 00120」
かなり傷んだ本を補修するために購入しました。

AMAZONの製品紹介を引用します。
=====
・【本体サイズ】2cm×10m
?【仕様】紙製で透明度が高く黄変等の経年変化に強い
?【サイズ】2cm×10m/テープ厚:23ミクロン
?【粘着剤】無酸性水溶性糊(アシッドフリー)
?【使用用途】ページの文字のある部分の破れ箇所の補修に、資料の折り山の補強など
?【タイプ】フィルムプラストPのお手頃サイズ
=====
 ※もっと詳しい説明もありますので、ご興味のある方はAMAZONで検索してください。

さて使った感想です。
箱のカッターが使いづらいというコメントが多かったですが、私には使いやすかったです。
そして超薄のため、張った個所を確認するには、斜めにして光の反射を利用しなくてはなりませんでした。
粘着力も申し分ありません。
うっかり紙に触れた部分は、そっとはがそうとしても紙の表面がはがれたほどです。
強度はそれほど期待しないでほしい、という説明ですが、一般的な書籍に使われている紙よりかなり破れにくいと思います。

先日購入した「昆虫採集」という本はカバーだけがかなり傷んでいました。
破れて縮れた部分を伸ばして裏面からペーパーエイドを張って平らにしたり、ちぎれそうになっていた折り返し部の裏面に張って強度を増したりしました。
あっという間に補修完了。
初めてにしては、仕上がりに十分満足しています。
貴重な古書の現状をこれで維持できそうです。

この製品を知る前は、和紙と糊を使って補修しようと思っていましたが、ペーパーエイドを使って正解でした。

次はどれを補修しようかな?
本棚には100年以上前の本もありますが、傷み方が少ないものばかり。
10mの内、9.5mは残っています。
当分使い切れないでしょうから、乾燥しないようにジップロックに入れて保管することにします。

と、書き終えようと思いましたが、実はこれまで見て見ぬふりをしてきた補修の必要な本が手元にあります。
お気に入りの仕掛け絵本「恐竜時代」です。
破れて動かない部分が数個所あります。
どれも込み入った奥の方で破れています。
これまで自信が無くて手を出しませんでした。
もしかしたらペーパーエイドなら直せるかも・・・。
相手が厚紙で、しかも動くので、さすがに苦戦するかな?
反面、これでだめならもう自分では直せないと諦めもつきます。
挑戦する価値はあります。

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お気に入りその1446~本棚整理

2017-11-24 12:16:26 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、本棚整理です。

もう読まないであろう本は「古書店行き」の専用スペースに横積みし、グラグラしだしたら持っていきます。
先日も「みをつくし料理帖」全10巻、「黒革の手帖」「琥珀の夢」などの上下巻が大きく影響してグラグラしだしたので、古書店に持って行きました。
家に戻る途中で考えました。
今日は時間にゆとりがあるので、一般書用の古書店だけでなく、専門書用の古書店にも行こう!
以前から本棚で大きく場所を占めている画集等の中にはもう鑑賞しないであろう本が何冊もあることを気にしていたのです。
思い立ったら吉日。
早速、あれこれ集めて持って行きました。
荒俣宏の「黄金の鳥」、メーリアン物の洋書など、大きくて重たいため、ボストンバッグに入れて何度も右手と左手に持ち替えながらようやく運びました。
買い取り計算をしている間、どうか買取できないと返されないように、と祈っていました。
幸い古い新書2冊だけを返されただけで済みました。

これで本棚に余裕ができた!といいたいところですが家に戻って本棚を見たら、さほど変わっていなくてがっかりしました。
本棚に本をタテに並べ、その手前のスペースに本を横積みにしているため、奥の本のタイトルが読めない状況は、ほとんど改善していません。
もっともっと整理しなくては・・・。

そういえば絵本も大きく場所を占めています。
もう読まないであろう絵本は古書店に持って行くことで、子供たちの目に触れるチャンスが広がります。
ピックアップして「古書店行き」の専用スペースに置くことにしましょう。

書きながら、そういえばあの本もこの本ももう読まないな、と目に浮かんできます。
今回一緒に持って行けば良かったのに・・・。
とりあえず気が付いたら「古書店行き」の専用スペースに置く!
これを繰り返すことで本棚整理を進めたいと思います。
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お気に入りその1445~ビジネスバッグ

2017-11-22 12:22:02 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、ビジネスバッグです。

先日、わずか数年しか使っていないビジネスバッグを買い替えました。
手痛い出費でした・・・。

新しいバッグの仕様は、お気に入りだった前のバッグと同じ。
・木手ハンドル
・42cm幅
・ダレスバッグ
・日本製
・表面仕上レザー

違うのは木手ハンドルの素材。
前のはサクラで色合いがとても気に入っていましたが、見つからなかったためブナで我慢しました。

買い替えの理由は、ハンドルとバッグのつなぎ部分に難があり、使っている内にバッグの上端が破れ、ハンドル自体にも深い傷がつくからでした。
なぜ傷むのかを調べるてみると、使い方ではなく設計が悪いことに気付きました。
補修材料をそろえて直してみましたが、今度はその材料のせいで別の場所に傷がつく・・・。
いわゆるイタチゴッコ。
加速度的にみすぼらしくなり、妻からも買い替えた方がいいよ、とあっさり言われ、ついに観念し、買い替えることにしたのです。
木手ハンドルが使い込むほどにいい味を出してくれると期待していただけに実に残念でした。

新しいバッグは、ハンドル部分の設計に注目し、まわりに傷をつけないことを確認してから購入しました。
決して安い買い物ではありません。
今度こそ「木手ハンドルが使い込むほどにいい味を出してくれる」ことを期待しています。

「日本製」だから安心、と頭から信じていたけれど、そうではないことを学びました。
いくら丁寧に仕上げていても、設計者が気づかない設計ミスがあると長くは使えません。
現在、同じ構造のバッグが無いということは、メーカーはミスに気付いて改良したのでしょう。
今後は、これまで以上に細心の注意を払って設計して欲しいと願います。

ちなみに買い替えた後、近所の大型書店の雑貨コーナーでビジネスバッグをチェックしました。
すると木手ハンドルがサクラのバッグがありました。
あらら・・・。
ただ値段がAMAZONより1万円高い・・・。
財布の事情を考えると、例えこのバッグの存在を知っていたとしても安い方を選んだだろう、と考え、内心ホッとしました。

お気に入りのこのバッグ。
これまで、いつもお洒落な社長さんや、たまにご一緒する馬主さんからお褒めの言葉をいただいたことがあります。
これまでお酒と本にばかりお小遣いをつぎ込んできましたが、いい年をしてみすぼらしく見えないように、身の回りの品はきちんとしたものを少しずつそろえていこうと思います。


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お気に入りその1444~山本周五郎

2017-11-20 12:23:52 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、山本周五郎です。

北海道で有名な芸人・日高晤郎。
彼の「ひとり語りの会」で聴いた山本周五郎の「松風の門」は絶品でした。
いつか山本周五郎を読もうと思っていました。
先日行きつけの古書店で作品を探したところ、ほとんどありません。
初めて読むので代表作がいいと思い、お目当ては「楠の木は残った」「赤ひげ療養譚」「さぶ」だったのですが・・・。
ということでまたまたAMAZON頼み。
取りあえず「赤ひげ療養所」「さぶ」の2冊を注文しました。

カスタマーレビューによると著者は人情ものの名手とのこと。
「ひとり語り」を思い出し納得。

まずは「赤ひげ療養譚」から読みました。
AMAZONの内容紹介を引用します。
=====
幕府の御番医という栄達の道を歩むべく長崎遊学から戻った保本登は、小石川養生所の“赤ひげ”とよばれる医長新出去定に呼び出され、医員見習い勤務を命ぜられる。
貧しく蒙昧な最下層の男女の中に埋もれる現実への幻滅から、登は尽く赤ひげに反抗するが、その一見乱暴な言動の底に脈打つ強靱な精神に次第に惹かれてゆく。
傷ついた若き医生と師との魂のふれあいを描く快作。
=====

本を手に取ると「赤ひげ」というキーワードから、なぜか三船敏郎と加山雄三の顔が浮かびました。
調べてみると黒澤明監督が映画化しており、その時のW主演が彼らだそう。
きっと子どもの頃に見て覚えていたのでしょう。
ヒヨコの刷りこみ効果を身をもって知った気分です。

読み始めてすぐに「おや、想像していたのと違う」と感じました。
何事にも反抗的な保本登、乱暴な言動の新出去定のかみ合わない掛け合いは、読んでいても気まずかったです。
文章表現も一種投げやりに感じます。
その雰囲気は中盤まで続きました。
世の矛盾に悩み苦しむ赤ひげ。
「おれはお人よしの年寄ではない」と独り言をいいつつも、人道に劣る行いはできません。
そんな人間性に惹かれていく保本。

後半に登場した、一家心中で生き残った女房の言葉も印象的でした。
生きているときは、つらい暮らしを誰も助けてくれなかったのに、死のうとするとどうして寄ってたかって助けるのか?
生き残ったってまたつらい暮らしが続くだけなのに。

赤ひげや女房はつらい現実に直面します。
解決の糸口は見つかりません。
それでも人は生きて行かなくてはならない・・・。
人はなぜ生きるのか?
根元的な問いを突き付けられます。

人々を取り巻く厳しい現実を間近に見ることで、保本の精神は幅と深みを増していきます。
やがて彼を裏切った許嫁を憐み、許す心が芽生えます。
救いの少ない作品の中で彼の精神的な成長はとても貴重です。
読み終わって判りました。
保本は若き日の赤ひげなのですね。
彼の、いや彼らの苦労が少しでも報われるよう祈らずにはいられませんでした。

山本周五郎の作品って、簡単に「人情もの」と括ることができない味わい深い作品なのですね。
同時購入の「さぶ」も近いうちに読もうと思います。

ちなみに今放送中のNHKドラマ「赤ひげ」を観てみました。
周りから仏様のように思われている労咳の大工が登場する回でした。
船越英一郎の赤ひげは当然として、鶴見辰吾の大工は意外でした。
観ていると案外と様になっていてます。
改めて彼の芸達者ぶりに驚かされました。
ドラマは主人公・保本をいじられキャラにすることで、原作より明るく仕上げており、現代風のドラマでした。
これはこれで良しでしょう。



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お気に入りその1443~横山光夫・番外編

2017-11-17 12:24:22 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、横山光夫・番外編です。

先日、横山光夫の著作の3冊目「昆虫採集」を読んだと書きました。
今回は番外編として、「昆虫採集」が到着するまでの間、彼の著書が本当に3冊しかないのかを改めてインターネットで調べたときのことを書きます。

その中で横山氏の未発表原稿の一部がネット上に紹介されていることを知りました。
彼のファンとしては、第4の著書を発見したくらいうれしかったです。

それは「横山光夫氏の未発表原稿 『箕面・能勢・六甲昆虫採集案内』の紹介」と題した記事です。
「やどりが」という日本鱗翅学会の第2会報に掲載された記事。
冒頭に、横山氏が1957年に60歳で心臓疾患のため早逝されたとあります。
道理で「日本の蝶」(1957年発行)以降の著作が見つからないはず。
残念な事実を受け入れることにしました。

この記事は12ページにわたり、横山氏の原文を多く引用しています。
少ないながらも、詩情あふれる文章に新たにひたることができ、とても幸せでした。
記事をプリントアウトして他の著作とともに大切に保存することにします。

さてこの記事によると「やどりが」への原稿掲載は、昭和元年(1926年)から昭和20年代まで続いたそうです。
引用された原文の中でも「序文」が目を引きます。
その内容が「原色日本蝶類図鑑」の序文と実によく似ているのです。
戦争から解放されて、野菜畑が花畑に戻る、という記述。
ご存知の方には懐かしい文章でしょう。
記事の投稿者は、昭和元年に著者が「戦争から解放され」たと書いたのは時期からみて第一次世界大戦のことではないか、と書いています。
なるほど、この序文は太平洋戦争以前に書かれたもの。
日清戦争、日露戦争、第一次世界大戦と、向かうところ敵なしの日本が、無謀にも大国・アメリカに戦いを挑むまでにどんどん軍国化していた、あの時代に書かれた文章なのです。
そんな時代にあって、昆虫採集をする心のゆとりの大切さを冷静に訴えています。
敗戦後に反省を込めて書いた「原色日本蝶類図鑑」の序文よりも重みを感じました。
胆の据わった人だったことを知り、ますますファンになりました。

ここからは紹介された原文からお気に入りの文章を引用します。

=====

戦争は心と物との貧困と、窮乏の中に、彩も潤も自然へのあこがれも忘れさせていった。
公園さえも芋とカボチャの葉っぱにおおわれて空腹の表情を象徴し、歌も忘れた少年たちは、冷たい学園の窓に長い冬の生活を繰り返した・・・。
(中略)
趣味は心の香りである。
自然の中に融け入って、そよ風の梢を仰ぎ、名も知らぬ花にも心を寄せ、心なき虫の姿にも親しみを覚えつつ心の生活を潤い健康の悦びを感謝したい。
(中略)
1925年5月30日
=====
野べの花も山の彩りも、歓喜に満ちあふれ、花に戯れ梢に乱舞する蝶の姿さえ、詩であり歌であり昆虫に親しむ人々の幻想の世界である。
=====
“美術”と言う文字と言葉がやっと60年の近代に生まれた如く、大自然の中に求めるこの学究的な趣味もまた更にうら若く新鮮なものの一つである。
=====

紹介されていた原文には、他にも気に入った文章がありましたが、これ以上は省略します。
ご興味がある方は、ご自身で検索して紹介文全文をお読みください。
さて原文以外の部分にも興味深いものがありました。
記事の要約メモです。
=====
原稿No.9~11の「採集の歴史」
箕面で採集した外国人ルイス氏やザイツ氏のこと
=====

ここに出てきたザイツって世界で一番美しい昆虫図鑑をつくったあのザイツのことかな?
ザイツは昆虫学者であるとともにドイツで医師をやっていたはず。
日本にまで来るとは思えないのですが・・・。

ネットは便利ですね。
調べるとすぐに答えが出ました。
1891年にザイツがまさにそこ、箕面で採集活動をしていたのです。
今まで別々に鑑賞していたお気に入りの図鑑同士に関わりがあったとは・・・。
図鑑好きにはたまらない、うれしい発見でした。

ああ、これを書いていると欲が出てきました。
やっぱり掲載原稿の全文を読みたいなあ。
あちこち探したけれど、今のところ発見できません。
著作をさがしたときのように、年数をかけて探すとしましょう。




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お気に入りその1442~横山光夫

2017-11-15 12:16:10 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、横山光夫です。

横山光夫の文学の香り高いロマンあふれる文章が大好きです。
今では図鑑の解説文に著者の個人的な思い入れが入っているなんてありえません。
でもそういう図鑑の存在価値を、昆虫好きなら理解していただけるはず。
次代の昆虫好きを養成するのは、正確無比な図鑑より、実はこういう図鑑です。
最近流行りの「ときめく○○図鑑」は、横山氏の図鑑の延長線上にあると思います。
「原色日本蝶類図鑑」にすっかりハマったため、もっと彼の文章に触れたい、と思って他の著作2冊を探しました。

 =====
 「原色日本蝶類図鑑」
   1954年刊、保育社の原色図鑑第1巻
 「昆虫採集 ~ 採集から標本まで」
   1956年刊、保育社のハンドブック
 「日本の蝶」
   1957年刊、保育社の原色小図鑑第1巻
 =====

数年前に「日本の蝶」を手に入れ、「原色日本蝶類図鑑」と違った文章に触れることができ、とてもうれしかったです。
最後の1冊「昆虫採集」はあちこと探しましたが、なかなか見つかりませんでした。

あれから3年、ようやく見つかりました。
注文し、届くのを待つ時間の長かったこと。
本が届いてからの心の声は次の通り。

 ドキドキしつつ開封。
 表紙カバーがずいぶん傷んでいるな。
 発行から60年以上経っているのだから仕方ないか。
 あれ? 「横山光夫 編集」って書いているぞ。
 「著者」ではないの?
 ということは、横山氏とそれ以外の人の文章が入り混じっているということか。
 いささかショック。
 しかし、かつて増補改訂版「原色日本蝶類図鑑」の解説文を読み、
 横山氏の文章を見つけ出すことに喜びを得たときと同じ。
 よーし、やるぞ!

という訳で、腕まくりして読み始めました。
話を進める都合上、本書にない「もくじ」を作ってみました。

 昆虫の写真 1-8
 春 9-19 
 夏 20-37 
 秋 38-41 
 冬 42-43 
 標本の作り方 44-56
 (無題) 57-58
 採集 59-62
 標本 62-64
 飼育 64-66
 採集の道しるべ 67-97
 昆虫と人生 98
 昆虫手帳 99-101
 全国の昆虫分布 102-103
 昆虫と趣味のゆくえ 104

いたるところで横山氏と別の人の文章が入り混じっています。
まとめて楽しめるのは、春・夏・秋・冬の各章の冒頭部分。
あとは昆虫と人生、昆虫と趣味のゆくえ辺りでしょうか。

一部をご紹介します。
=====

地上の星のそれのように、見わたす限り野も山も「緑のしとね」におおわれ、七つの色もとりどりの花に色どられます。
自然のうるわしい環境のなかに、植物も昆虫と共にあでやかにわが世の春をうたっています。
冬の眠りからめざめた「蝶の踊子」たちは、明るい陽光の中に新しい生活の営みをはじめます。(以下略)
=====

昆虫のファミリアにとって「夏」は待望の訪れである。
春のウグイスもハルゼミの調べも、いつか衰えて青衣に装う山も林も、幽谷のホトトギスの雄叫びに季節は溌剌として移り変わっていきます。(以下略)
=====

高原の空に雲のたなびく色にも秋の気配を感じ、山の道標の草むらに早や虫の鳴く音も聞かれます。(以下略)
=====

ひと夜の木枯らしに落葉して、冬の鳥がこずえの実をついばむのも、ひとしお冬の寂しさをそえます。(以下略)
=====
英国ではやや日本とその行き方をことにして、かつて少年の時代昆虫などには何の関心も持たなかった年老いた将軍や、銀行家、政界を引退した大政治家(チャーチル英首相なども)また老学者といった人達で、昆虫を趣味とする人びとが多いといわれます。
=====
「自然の鑑賞」をかね「趣味の行楽」として、ながく虫たちと親しみを共にされることを念願いたします。
=====

「わが世の春」「ひとしお」など、これまで何度も目にした単語があります。
いかにも横山氏の文章を読んでいる、と実感できる個所です。
他にも「かくて山小屋の灯は虫談に夜のふけるのも知らないほどです。」など、らしさあふれる文章があちこちにありましたが省略します。
あー、横山節に浸った浸った。
読むことができて本当に良かった!
現代にもこういう研究者がいてくれたらいいのに。

なお本書はカバーの状態がとても悪いので、和紙テープで補修し、長く楽しみたいと思います。




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お気に入りその1441~原田マハ最新作

2017-11-13 12:53:48 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、原田マハ最新作です。

原田マハの最新作「たゆたえども沈まず」。

AMAZONの内容紹介を引用します。
=====
誰も知らない、ゴッホの真実。
天才画家フィンセント・ファン・ゴッホと、商才溢れる日本人画商・林忠正。
二人の出会いが、〈世界を変える一枚〉を生んだ。
1886年、栄華を極めたパリの美術界に、流暢なフランス語で浮世絵を売りさばく一人の日本人がいた。
彼の名は、林忠正。
その頃、売れない画家のフィンセント・ファン・ゴッホは、放浪の末、パリにいる画商の弟・テオの家に転がり込んでいた。
兄の才能を信じ献身的に支え続けるテオ。
そんな二人の前に忠正が現れ、大きく運命が動き出すーー。
『楽園のカンヴァス』『暗幕のゲルニカ』の著者によるアート小説の最高傑作、誕生!
=====

ゴッホがなぜ浮世絵を模写するほどにハマったのかがよーく判るアート小説でした。
感想を書く前に、どうせ発行するならもっと早く出してよ!と一言文句を言わせてもらいます。

本書の発行日は10月末。
同じころ始まる東京の「ゴッホ展~巡りゆく日本の夢」に行こうと思っている人にとっては、ジャストなタイミングですね。
しかし、それに先立って開催された札幌会場に行った人にとっては後の祭り、というタイミング。
札幌会場に行った者としては、本書を読んでから観に行きたかったなぁ、と残念な気持ちでいっぱいです。

恨み言を書いてスッキリ。
ここからが本書の感想。

本書の冒頭で、ゴッホ展で観た「ファンゴッホの寝室」が、元は松方コレクションだったことを知りました。
フランス国内に保管していたため、日本の敗戦とともに没収されました。
交渉の末、多くの作品は取り戻すことができましたが、「ベッド」を含む数点は取り戻せなかったそう。
個人所有のものまで没収するとは、なんて理不尽。
もともと戦争自体が理不尽のかたまりですから仕方ないか・・・。
「ファンゴッホの寝室」は有名な作品というだけでなく、日本で観ることができるまでの経緯を知った上で鑑賞したかったです。

19世紀末、フランスでのジャポニズムの流行と印象派の登場。
その時代の日本人画商と印象派の画家たちの日の出の勢いを肌で感じることができました。
急激に変化する時代に乗り遅れつつ登場したゴッホ。
精神を病み田舎町で治療の途中に耳を切り、その後自殺したことは有名です。
さらに彼を支え続けた弟テオがその半年後に亡くなったことも。

本書では、ゴッホの絵が評価され売れるようになる過程は一切描いていません。
ただテオの妻ヨーがゴッホの絵を愛したことを繰り返し書いているだけです。
詳しくは書きませんが、その後、絵がどうなったのかを予感させる、余韻あるエンディング。
とても気に入りました。
欲を言えばもう少し先まで少し書いて欲しかったけれど、確かにここで終えるのがお洒落な終わり方です。

それにしても耳を根こそぎ切り落としたのかと思っていたら小指の頭ほどを切り落としただけだったのですね。
さすがは元キュレーター。
耳寄り情報を散りばめています。

著者の他のアート小説と同様、本書には作品名がたくさん出てきます。
どんな絵か判らないものが大半です。
作品名と作品をつなぐサブ資料があったらいいな、と思いながら読みました。
『楽園のカンヴァス』のときは、登場する作品をネット上に紹介している方がいて助かりましたが、今回は見つけることができませんでした。
自分でやればいいのに、と思う方がいるでしょうが、物語に浸っているときに、検索などという作業はしたくないので、あくまで他力本願に徹します。

さて最後に、宣伝文句のように「楽園のカンヴァス」「暗幕のゲルニカ」を超える最高傑作だったと言えるのか?
その答えはNOです。
確かに素晴らしい作品でしたが、私としては、「暗幕のゲルニカ」「ジヴェルニーの食卓」「楽園のカンヴァス」「たゆたえども沈まず」の順を付けます。
ただし僅差であることを付け加えます。
次の作品がとても楽しみです。





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お気に入りその1440~エヴァンゲリオン

2017-11-10 12:30:31 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、「エヴァンゲリオン」です。

むかし息子が観ていた「新世紀エヴァンゲリオン」。
名作らしいので読んでみようと思い立ちコミック全巻セットを購入しました。
届いてからかなり日にちが経ってしまいました。
読みたい本が次から次へと登場するため、なかなか順番が来ません。
そこで先日、ベッドに入ってから少しずつ読めば良いだろうと思い、第1巻を読みました。
主人公の少年が、理由を知らされないまま人類滅亡の危機を背負って立つことになり、父が作り上げたエヴァンゲリオン初号機に乗り込み、謎の敵・使徒と戦うことになります。
主人公同様、読者も多くの謎に包まれたスタート。
第1巻を読み終えて眠ることにしましたが、ジェットコースタームービー並みの急展開とバトルシーンの連続で興奮してなかなか寝付けません。
エヴァンはベッドで読むものではありませんね。
あきらめて休日の一日を使って全14巻を一気読みしました。

さすがに名作として名を残しているだけのことがあります。
近未来の独自世界を見事に描いたスケールの大きな作品で、とても読み応えがありました。
人類補完計画を裏で進める謎の組織とそれを利用しようとする主人公の父。
使徒とエヴァンの正体。
登場人物たちの生い立ちと相関図。
謎が解けていく過程をワクワクしながら読むことができました。
また美少女や年上の美女が多く登場し、少年たちはそれを楽しみにして読んだことでしょうね。
登場人物のすべてが死ぬ、というのも斬新な設定でした。

ただ人類の運命を左右している割には、舞台は第3新東京市だけ、登場人物もほとんど日本人だけ。
アメリカやフランスでもエヴァンを製造しているという情報以外、大国の影が感じられない。
また環境の変化で四季が無くなり、一年中夏というのが最後に紹介されている。
これらの設定は実にもったいないです。

また人と人の間の壁を根こそぎ取り払うこと(=人類を一度絶滅させること)よりも、壁を徐々に無くす努力をすること(=人類を絶滅させないこと)を選択した主人公。
主人公を含めた多くの人々が蘇り、エヴァン起動以前の時間から社会がリ・スタートします。
悲惨だった戦いの反省なくして、地球環境の再生はなく、人類の未来に期待が持てません。
この辺りの安易な終わらせ方は残念でした。

マンガとアニメでは結末が違っているそうです。
アニメの方にははっきりした結末がない、と誰かが書いていました。
他に映画版もあります。
それらに対する感想を読みましたが、あまり良い印象がありません。
これ以上深入りしないで退散しようと思います。


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お気に入りその1439~平山郁夫

2017-11-08 12:10:22 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、平山郁夫です。

古い画文集「楼蘭紀行 平山郁夫画集」を鑑賞しました。
シルクロードの有名な遺跡・楼蘭を描いた作品に短いエッセイが添えられています。
エッセイを読んで知ったのは、楼蘭が画家のライフワークの最終地点だったことです。

画家は中学生の時に広島で被ばくしています。
その影響か、青年期に白血球が激減する病気にかかり、一時は死を覚悟します。
その時期に、仏教に傾倒し、玄奘三蔵を尊敬するようになります。
回復後は、玄奘三蔵がたどった旅を追体験することをライフワークとします。
インドと中国の間を何度も旅して、絵を描き、一本の道にしようとします。
その中でどうしてもたどり着けずあきらめかけたのが楼蘭。
とにかく人が住んでいるところから遠過ぎるのです。
一度目の訪問は、ジープで隊列を組み挑戦しますが、フロントガラスを叩き割る激しい突風に撤退を余儀なくされ、滞在時間は1時間を切ったそうです。
本書では、楼蘭に向かう最終手段として、ヘリで訪問したと書かれています。
費用や手続きは、個人では到底無理。
新聞社にスポンサーになってもらってようやく実現しました。
砂漠の真っただ中、夜はマイナス10度を下回り、南極探検隊の装備でも寒かったそう。
ある日は、寝ていられずたき火の前で夜明けを待ちます。

かつての繁栄が嘘のように茶色一色の世界。
岩山とほとんど区別がつかないかつての仏塔。
立木は枯れ果て、住宅跡も面影がわずかばかりあるだけ。
画家にとって魅力的な景色とは言い難く、ライフワークでなければ決して訪れなかったことでしょう。
今回画家のおかげで、楼蘭の景色、自然環境などを知ることができました。
学術調査隊の訪問だけでは、決して知ることがなかったでしょう。

画家が苦労して描いた作品群は、素材が決して美しくないため、注目されることはないでしょう。
それは、これまでも、そしてこれからも変わらないことでしょう。
でもこの画文集は、玄奘三蔵の旅の追体験、というライフワークを完成させた終着点として、画家に大きな満足をもたらしたことでしょう。
そう思うとなぜか私まで満ち足りた気分になりました。


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