鬼平や竹鶴~私のお気に入り~

60代前半のオヤジがお気に入りを書いています。

お気に入りその2227~日本に住んでいる世界のひと

2023-04-28 12:40:24 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、「日本に住んでいる世界のひと」です。

新聞で紹介されて読むことにしました。
内容紹介を引用します。
=====
来日した理由はさまざま。
暮らしぶりも十人十色。
一人ひとりのストーリーを通して見えてくる普段の生活、そして難民問題、地球温暖化、ジェノサイド、民主化運動、差別の歴史など。
アイスランド、南アフリカ、スペイン、バルバドス、メキシコ、中国、イタリア、ミャンマー、セネガル、モルディブ、韓国、エストニア、フィリンピン、アルメニア、東ティモール、北マケドニア、アメリカ、中国・内モンゴル自治区、コンゴ民主共和国… 18組20人の話を聞いて文と絵にした記録。
=====

冒頭に次のようなことが書かれていました。

統計では日本には270万人以上の外国人が暮らしている。
その他にも帰化した元外国人、難民申請中の人、不法入国者などがいる。

80年近く戦争が無く、陸続きの隣国が無く、宗教や人種の紛争が無く、経済的に豊かな国、日本。
国民が平和ボケしてしまうのはやむを得ないかもしれません。
新聞やテレビだけではわからない外国の生の情報が伝わる本でした。

北マケドニア
・隣国ギリシャからマケドニアと名乗ることに長年抗議され、
 ついに北マケドニアに改名した。
・国民のほとんどが4つの政党のどれかの党員になっている。政治に熱心
 なのではなく、政治の恩恵を受けたいがための行動なのが残念。

フィリピン
・出稼ぎで家族にたくさん送金するため倹約生活を続けている。
・1000万人が毎年平均30万円を送金しており、国家財政の10%を占めている。
・子どもが産まれると子どもを親に預けて出稼ぎを続け、子どもをひとり立ち
 させることに誇りを持っている。

モルディブ
・サンゴ礁の1000を超える島からなる国。
・無人島がたくさんあり、ごみを処理する島など専門の用途に使われている。
・温暖化による海面上昇で砂浜が断崖となり、居住地を守るため、防護壁の
 建設が進められている。
・海面上昇による井戸水の塩化も大きな問題で、雨水を貯めるタンクの設置が
 進められている。

ここまでわずか3人の話を読んだだけで世界の今が垣間見えます。
普通に暮らす人々の言葉だから気持ちが伝わります。
早く続きを読みたい、もっと世界の真実を知りたいという気持ちでページをめくりました。

中国
・ふたつの中国の問題は日本にもある。
 横浜中華街の中国人は帰化していない人が多く、中国共産党か
 台湾の国民党のどちらを支持するかで対立した。
 中国人学校は中国共産党支持者で抑えられたため、国民党支持者は
 子弟のために新たな学校を建てた。

アイスランド
・人口はわずか35万人。
 複数の仕事を持っているのが当たり前の上、外国語も複数習得する
 人が多い。
 WBCで日本と戦ったチェコのチームを思い出す。

韓国
・女性は読み書きができない方が幸せ、という時代を過ごしてきたため
 いまだに読み書きができないお婆ちゃんたちがたくさんいる。

内モンゴル自治区
・モンゴル人は大国の都合で分断されている。
 ロシア寄りのモンゴル国と中国寄りの内モンゴル自治区。
 祖国が分断しているため、日本にいるモンゴル人たちも分断している。
 横浜中華街の話みたい。
 きっと世界はこういう例に溢れているのだろう。

アルメニア
・アララトというブランデーが有名。
 しかしノアの箱舟が漂着したというアララト山は隣国トルコにある。
・100年ほど前にアルメニアはトルコの侵攻を受けて大虐殺が行われ、
 国民350万人の内250万人が虐殺されたそう。
 現在は300万人近くまで人口が戻ってきている。
 それにしても国民の7割が虐殺されたとは・・・。
 知らないにもほどがある、と自分に対し怒りさえ覚えた。
 本書には詳しい経緯が書かれていないので別に調べたい。

東ティモール
・21世紀最初の独立国
 いろいろな国の支配下に置かれ、ようやく独立を勝ち取った。
 隣国インドネシアからの独立紛争の中、12歳でゲリラに参加したのが
 この回に登場する男性。
 今は広島弁を話すただのおっさんというのにほっとした。

ミャンマー
・国民に民主主義というものの存在を知らせないために
 テレビは毎日2時間、ニュースを流すだけだった。
 そのニュースもおそらくは国民を洗脳するための内容だっただろう。
 支配層の子どもたちは海外で教育を受け、支配体制は変わらない。
 アウンサン・スーチーは立ち上がったが、力で押しつぶされた。
 力の支配とはこういう仕組みだったのかと思い知らされた。
・役人の賄賂要求に応えないため必要な書類がそろわず、ビザ取得に
 時間がかかった。
 その間、保険に加入できなかったため、出産に100万円もかかった。
 ビザが取得できたのは娘さんが5歳になってからだった。

セネガル
・アフリカにも相撲があることを知った。
 セネガル相撲といい、両手か両膝、または背中が地面に着いたら負け
 というルール。
 強者は尊敬され高収入を得る。

エストニア
・多くの外国語を操る人が語る日本語の興味深い表現。
 「お疲れ様」
 つらいのにポジティブな表現で、外国語に翻訳できない。

コンゴ
・地下資源などの天然資源の宝庫なので支配者は外国に権益を与えて
 私腹を肥やしている。
・大きなパイナップルができるがその栽培権さえ外国に与え
 国民が栽培できないようにしている。
・国民を暴力で支配し、刃向かう者は徹底的に弾圧される。
 日本で難民申請中の男性は、両親と甥っ子を殺されたが
 難民認定率が1%以下の日本では認定されない。

以上のような理不尽な話がたくさん出てきます。
反政府運動に参加したため、拷問され精神を破壊された人や、内臓をすべて売られた人までいるそうです。
彼らの国が酷い状況だというだけでなく、それを知った上で何もしない日本という国も酷いことを思い知らされました。
命からがら逃げてきた人々を受け入れることは、人として最低限やるべきことだと思います。

他にもメキシコ、アメリカ、南アフリカなどの人も登場しましたが省略します。
著者はもっとたくさんの多くの人のお話をうかがったそうです。
本書を読むだけで知見が広がります。
続編制作の気持ちがある様なので期待しています。








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お気に入りその2226~北海道の蝶と蛾

2023-04-26 12:45:53 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、「北海道の蝶と蛾」です。

札幌では観測史上最速で桜が咲きました。
もう少しで蝶や蛾が舞いはじめることでしょう。
今回ご紹介するのは2015年に北海道新聞社が発行した蝶と蛾の図鑑です。

内容紹介を引用します。
=====
見て楽しく、使って役立つ実用図鑑の決定版。
3216種を収録。
道内で見られる蝶と蛾を網羅した画期的な一冊。
=====
北海道で目にする蝶や蛾(鱗翅目)3200種余りを網羅。
オールカラーで色、模様、形の違いを分かりやすく編集。
種の特徴、他種との区別点は引き出し線で簡潔に紹介。
巻末には過去に北海道で記録された鱗翅目の総目録付き。
=====

以前、ブドウの木につく毛虫について調べたときに、蛾の図鑑が少ないことに気づきました。
誰しも美しい蝶の方が好きなのは分かりますが、蛾の方が圧倒的に種類が多いのに不思議に思っていました。
日本には蝶と蛾を合わせて3500種いて、そのうち蝶は250種にすぎないそうです。
きっと北海道でも同じような割合でしょう。
以上のことから蝶なら比較的簡単に種類を特定できますが、蛾は難しいことが判ります。
わが家のように近所に防風林があるとたくさんの蛾を目にしますが、なかなか種類の特定ができません。
そんなときに本書が役に立つことでしょう。
カスタマーレビューでは複数の方が、本書に掲載された写真は小さい上、標本のため実際のとまり方と違い、種類の特定には向いていないと指摘しています。
でも、手軽に持ち歩けるサイズであればこそ、さっき見かけた蛾を調べようという気になるものです。
そもそも本格的な大図鑑は〇万円もするので気軽に買えるものではありません。
本書でさえ普段使いの図鑑としては上限ぎりぎりです。
これ以上を望むのは無理と思います。

本書に収録された蝶と蛾は3216種です。
内訳は蝶138種、小蛾類1575種、大蛾類1503種。
一通り目を通しましたが見覚えのある種は1割もいたでしょうか?

一直線のラインがとても印象的だった蛾はウスベニスジヒメシャク(またはその近縁種)だったことがわかったことは収穫でした。
またまるでTの字の形に見える不思議な形をした蛾がヨモギトリバ(またはその近縁種)だったこともわかりました。
ただしこちらの蛾は標本写真が前翅と後翅を広げた状態のため、最初は判りませんでした。
壁にとまったTの字の姿をインターネットで見つけ、その後本書と照らし合わせました。
これにはカスタマーレビューの指摘が参考になりましたし、全種を網羅している図鑑だからこそ「この中に必ずいるはず」と確信を持って探したことが功を奏しました。

これからも珍しい蝶や蛾を見かけては何度も図鑑を広げることでしょう。
ただいくつか難点があると感じました。
紙が薄いため2枚一緒にめくりがちなこと、持ち歩くには重いこと、白い蝶や蛾に陰をつけていないため輪郭が見えづらいことなどです。
カスタマーレビューでの指摘もそうですが、この価格で全種掲載なのですから改善は難しいでしょうね。
逆に著者や出版社に対し、頼りになる図鑑を出していただいたことに感謝を申し上げます。

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お気に入りその2225~牧野富太郎

2023-04-24 12:44:17 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、牧野富太郎です。

朝ドラの主役になると関連本がたくさん出るのでうれしいです。
その一冊、別冊太陽「牧野富太郎 雑草という草はない」を読みました。
本屋さんでパラパラと内容を確認し、博士の手による彩色された植物画が何ページも載っていたので購入を決めました。

内容紹介を引用します。
=====
小学校中退でありながら独学を続け、多数の新種を発見し命名した牧野富太郎。
「日本植物学の父」と言われるその生涯を、美しい植物画や標本とともに紹介する決定版!
草木を友に、花を恋人に。情熱だけを頼りに、まっすぐに生きた94年の生涯──。
【目次】
◎巻頭エッセイ
 幼き魂を抱いたもの 朝井まかて
◎牧野富太郎の庭
 高知県立牧野植物園
 練馬区立牧野記念庭園
◎総天然色マキノ植物画博覧会
◎わたしは草木の精である──植物博士の人生図鑑 解説=田中純子
 少年期 天然の教場に学ぶ
 青年期 大志を抱いて上京
 壮年期 波乱万丈の研究生活
 晩年期 わたしは草木の精である
◎博士の意思を継いで百余年 牧野植物同好会
◎東京都立大学 牧野標本館 わたしのハァバリウム
◎牧野が認めた江戸の植物画家 関根雲停
◎富太郎写真館
◎標本作りの苦労(牧野鶴代)
◎インタビュー
 「草を褥に木の根を枕……」 牧野一?
◎エッセイ
 科学的精神に支えられ 大場秀章
 粋人伝説「蝶タイ姿の生涯草木少年」 坂崎重盛
 牧野をめぐる旅から 竹内一
=====

これまでは図鑑ばかりでエッセイや伝記を読んでこなかったので、本書はとても新鮮でした。
博士の生涯をしっかり知ることができましたし、明るくひょうきんな面があったことも知ることができました。
晩年の言葉「私は草木の精である」のあとに「へへへ」と付いていたことも知り、思わず頬が緩みました。
全国に素人植物観察会が根付いたのは、博士のそういう可愛らしい面が大きく影響したのでしょう。
また写真が豊富な別冊太陽だけあって、博士の妻・娘・孫の写真や、牧野図に描かれた植物たちの実物写真なども載っており、へーとかほーとか言いながらじっくり見ることができました。
東京都立大学牧野標本館の教授のコメントが面白かったです。
博士が遺した50万点にも及ぶ植物標本は素人が作ったものも含まれます。
それらを今はDNA鑑定しているそう。
100年前の植物と現在の植物のDNAを比較するすることはとても有意義なことで、牧野博士本人はこのような研究に使われるとは考えてもいなかったことでしょうと書かれていました。
それを考えると今から100年後は科学がさらに発達し、現在では考えられないような研究に標本が使われるかもしれません。
この膨大な標本を後世にしっかり伝えて欲しいものです。
牧野博士が生涯をかけた研究が現代だけでなく100年後も何かしらの成果につながるものかもしれないと思うと、壮大なロマンを感じずにはいられません。
牧野博士は土佐が輩出したもう一人の偉人・坂本龍馬同様にスケールの大きな方でした。










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お気に入りその2224~自転車用ヘルメット

2023-04-22 12:51:03 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、自転車用ヘルメットです。

自転車用ヘルメットをいただきました。
4月が誕生日同士、妻からの誕生プレゼントです。
以前から妻は自転車用ヘルメットを使っていましたが、義務化のタイミングで今回、自分が気に入っている国産メーカー品を選んでくれました。
試着ではヘルメットの軽さに驚き、後頭部のダイヤルを回すとバンドが締まりジャストフィットすることにまた驚き。
空気穴だらけで蒸れない、丈夫で格好良いヘルメットです。
高価なのできっと他にもいろいろ優れた点があるのでしょうがこれ以上はわかりません。

考えてみると昨年は一度も遠乗りをしませんでした。
もともとアウトドア派ではないため、年齢が進むごとに筋肉が落ちるのは気になっていました。
運動不足解消は有酸素運動の自転車が一番。
学生時代は130kmの距離を自転車で帰省したものですが、今は半分でもくたくたです。

数年前に、目を病みメガネで視力矯正ができなくなったため、車や自転車に乗ることや山菜採りから離れました。
術後は視力が回復し、どれも無理のない程度ならできるようになったはずなのに、インドア派のクセが抜けず今日まできました。

妻からは、歩いたり自転車に乗ったりしようと誘われます。
誘われている内が花。
今年はヘルメットで颯爽と遠乗りに出かけるとしましょう。

ちなみにヘルメットのメーカーと品名はオージーケーカブト レッツァ2というそう。
すぐに忘れるのでここに記録しておきます。

このヘルメットで実際に走った感想は後日書こうと思います。






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お気に入りその2223~真狩の厚揚げ

2023-04-20 12:40:35 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、真狩の厚揚げです。

真狩豆腐工房の厚揚げが美味しくて大のお気に入りです。
冬を見越して昨年秋に買いだめしましたが、とうに食べ尽くしてしまいました。
その後はスーパーで似たような厚揚げを見かけては食べましたがあれほど満足するものはありませんでした。

今年は雪解けが一気に進み、北海道各地で桜の開花の最速記録が出ました。
そこで満を持して厚揚げを買いに行ってきました。
往復250km、途中にトンネルや峠があっても安心して走ることができました。

ただ残念ながら楽しみにしていた厚揚げはまだ食べていません。
妻が身内4家族に分けた後、さっさと冷凍してしまったのです。
それには理由が・・・。

その日のスタートは小樽かま栄からでした。
9時の開店に合わせて到着し、作りたてのかまぼこをこちらも身内の分も含めて購入。
それからニセコの道の駅で限定酒「特別純米酒 蔵人衆 1800ml」などを購入し、豆腐工房に向かい、厚揚げをクーラーボックスいっぱいに購入しました。
その帰り道、ニッカウヰスキー余市工場の売店に寄って、蒸溜所限定のウイスキーを3種類購入しました。
 ①余市蒸溜所限定ブレンドウイスキー
 ②ピュアモルトブラック
 ③ピュアモルトレッド
②③は蒸溜所限定とはいえ復活していたのがうれしかったです。

厚揚げが口に入らなかったのはここで予定外の出来事があったからです。
売店側駐車場から出てすぐのところに鹿肉バーガーを売っているお店ができていました。
ちょうどお腹が空いていたのですぐに買いました。
1個1200円は高いけれど、普通のハンバーガーの2倍くらいのボリュームがあり、しかも元々お肉屋さんだけあって厳選した鹿肉を使っているため実に美味しい!
値段の値があるごちそうでした。

その日は1時を過ぎてからボリュームたっぷりのハンバーガーを食べたため、夜になってもお腹がすかず、かま栄のかまぼこを肴に二人で日本酒を飲んで終了となったのでした。

ということで厚揚げは後日の楽しみということになりました。
今週と来週は家で食事できない日が多いため、厚揚げはなかなか口に入りそうにありません。
早くあのパリッサクッの美味しさを味わいたいものです。




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お気に入りその2222~超圧縮 地球生物全史②

2023-04-18 12:58:47 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、「超圧縮 地球生物全史」2です。

生命史の後半です。
小惑星の落下により恐竜が絶滅し、いよいよ哺乳類の時代を迎えます。
次は巨大哺乳類の話と思ったら、体の部位の進化についてのお話からスタートしました。
アゴは口とエラ穴の間に合った軟骨が変化したものだそうです。
また鼓膜は陸に上がった生物のエラ穴が膜でおおわれたものだそう。
ナルホド。
耳はもともとエラ穴が変化したものだから、今も鼻や口とつながっているのだと判りました。
気圧差で耳がつまったようになったときに、唾を飲むと直るのはそれが理由だったのですね。
ちなみに耳がつまったときに鼻をつまんでいきむのは危険だそうです。
一気にたくさんの空気を送ると鼓膜が破れることがあるので、決してやってはいけません。
みなさん、気を付けましょう。

続いて類人猿や二足歩行について書かれていました。
最新の技術を駆使しても美しく歩くロボットが完成できずにいる現実を例にして、ヒトのバランス感覚は肉体と脳、神経の高度な発達が成し遂げたと高く評価しています。
二足歩行により空いた手で投石などをして肉食獣の獲物を横取りする事までできるようになり、肉や骨髄という高栄養の食料を摂取することでさらなる脳の発達を促しヒトへの進化したというストーリーはとても納得できるものでした。

さらに地球の気候変動について興味深く読みました。
南極大陸が超大陸から分離し、地球の南端に位置すると、周囲を一周する海流が生まれました。
それにより熱帯や温帯で温められた海水の流入が遮断され、南極大陸の寒冷化が進みました。
氷河が形成され、それが次々海に流れ込むため南極海の低温化も進みました。
また北極海は複数の大陸が北極に集合するように移動したため陸に囲まれた海となり、温かい海流の流入が遮断され、寒冷化が進み氷山が形成されました。
こうして全地球的に温暖だった気候が、熱帯・温帯・寒帯とはっきり分かれたそうです。
この他、地球の公転軌道が10万年周期で変わったり、地軸の傾きが4万年単位で変わったり、太陽に対する地軸の傾斜向きが2万年単位で変わったりすることが地球の気候変動に影響しているそうです。
実にいろいろな理由で地球の気候が変化し続けることを知りました。

終盤は人類の進化について。
インドネシアのフローレス島で発見されたフローレス原人の話が書かれていました。
この島で小さくなったのは原人だけでなくゾウもそうだったことを知りました。

そして最後は生物の未来について。
3000万年後、南極大陸は北へと移動しています。
地球環境は大きく変わっており、大きめの哺乳類は絶滅しています。
爬虫類も同じでカメやワニは絶滅し、トカゲとヘビがわずかに生き残っています。
海中ではサメが元気よく泳いでいます。
ただしこれはあくまで著者の予測する未来。
ちなみに人類はそのはるか前の6000年後でさえ絶滅しています。
自分たちの未来ですから気になります。
もっと詳しく書いてくれないかなと思いつつ読みました。
ただ本書は「超圧縮版」ですからそうはいきません。
「超圧縮版」らしいまとめ方をしていました。
現在人類は地球上の植物の1/4を消費するするほど大きな影響力を持っていますが、繁栄期間が地質年代としてはごくわずか。
そのため2億年先の誰かが地層の痕跡を見ても人類の存在が判らないかもしれないそうです。
地球生命史としてはそんな程度の存在なのですね。

もうひとつ書いていたのは、ちょっとした偶然で一部の生物が生き残り、その他は絶滅するという歴史がこれまで延々と繰り返されてきたという事実です。
人類も例外ではなく、あっという間に絶滅する可能性があるというのです。
説得力あり過ぎ!

面白かったのは社会性昆虫と植物が一体化する進化を遂げるという話。
ただその後は地上の環境悪化により地下に活路を見出しますが、やがて絶滅するそう。
最後に残る生物は、地中深くで鉱物を食べるウイルスとウイルスを食べる線虫、そして深海の噴出孔の生物群だけ。
それでさえ徐々に消え、地球の生物は絶滅するそうです。
地球自体のダイナミックな活動が止まり、太陽が赤色巨星となって地上が焼かれ海が蒸発してしまっては仕方ありません。

こうして地球生命史は終わりとなります。
星にも寿命があるのだから生物が永遠に進化し続けることがないのは当然と言えば当然。
「地球生物盛衰記」と名付けても良さそうな実に壮大な物語でした。

本書はかなり厚いので手を出しづらいですが、うしろ1/4は注釈ですし、読みやすいので生き物好きにはおすすめです。






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お気に入りその2221~たくさんのふしぎ

2023-04-12 12:50:15 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、たくさんのふしぎです。

たくさんのふしぎ最新刊は「種から布をつくる」です。
内容紹介を引用します。
=====
「理想の布をつくりたい」
白井仁さんは布を作るためのすべての作業を自分で行う、日本では数少ない布の染織家です。
素材のワタを畑で育てるところからはじまり、手作業での糸つむぎ、家のまわりの草木を使った糸染め、機織り・・・・・・完成にはなんと1年もかかります。
手作業から生まれる美しい布ができるまでを紹介します。
=====

ワタの種類は何十種類もあるそうです。
著者は日本の気候に合ったワタを栽培しています。
種を植え、手入れをして収穫。
種採り器での種採り作業には長い時間がかかるそうです。
ワタは軽いだけに収穫重量の多くが種の重さだとか。
手作業での糸つむぎは、糸車の回転数を調整することで、欲しい糸の強度に仕上げます。
草木を使って糸の染色と定着の作業を行い、いよいよ機織りです。
機織り機の操作は熟練を要し、簡単には布はできません。
あらかじめ設計した色の順に縦糸を配置し、そこに設計した順番で横糸を一本ずつ通して織っていきます。
13mの反物を織り上げるのに、1日50㎝ずつ織っても26日かかるそうです。
色の間違いが許されない上、力加減も重要です。
とても気楽にできる作業ではありません。
こうしてようやく布が出来上がります。
つむいだ糸にムラがあったり、糸の時と布になった時で色の感じが違ったりで、思っていた布ができないこともあるそうです。

種を植えてから布が完成するまで1年もかかるそう。
分業や機械化が当たり前の時代に著者はどうしてこんな面倒なことをするのでしょうか?
著者は小さいことから裁縫好きで、服飾デザインを専門に勉強しますが、布作りの楽しさに目覚めて今の道に入ったそうです。
ワタづくりから機織りまですべての行程を学び、その全てを自分の手で行うことが楽しくて仕方が無いのだそうです。
出来あがった布の半分は自分や家族のために使います。
奥さんの着物、子どものよだれ掛けなどが紹介されていましたが実に愛情たっぷりの逸品です。

著者のように自分が一番楽しいことを見つけ、それをやり続けることは苦労が多く、とても大変なことです。
大昔から人類が分業でしてきたことを改めて一人で実践し続ける先にはどんな未来が見えてくるのでしょうか?
まだお若い著者がベテランになって見えた世界をぜひ教えて欲しいです。
それまで著者のお名前を憶えておきたいと思います。


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お気に入りその2220~超圧縮 地球生物全史

2023-04-10 12:54:48 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、「超圧縮 地球生物全史」です。

面白そうな本が目に留まりました。
内容紹介を読むと最近読んだ「深海学」や「あなたの体は9割が細菌」にどこか近いものを感じます。
その2冊は最新の科学的知見が次々出てくるため、内容がとても興味深いにもかかわらずなかなか読み進まなかったのを思い出しました。
本書は400ページもあるのでその2冊以上に読むのに時間がかかるかもしれません。
面白そうでも分厚い本は敬遠しがちです。

いつもならここで内容紹介を引用するところですが、長いので文末に置きます。

本書は太陽が誕生し、地球が誕生するところから始まります。
そして生命が誕生します。
環境に合った多様な生物が次々と現れます。
その後何度か大陸移動による火山活動を主な原因として生命の大量絶滅が起こりますが、生き残った少数の生物たちにより命は引き継がれていきます。
生命史は目の前で繰り広げられるが如くリアルに書かれてます。
最新の知見で未解明の箇所については著者の推測を交えて書かれています。

本文と注釈の両方にしおりを入れて、往復しながらの読書ですが、知らない生物の名前が山ほど出てくるため、なかなか理解が進みません。
できれば紹介されている全ての生物の絵や簡単な解説を添えて欲しかったです。
ただそんなことをしたらページ数と値段が2倍に跳ね上がり、ここまで普及しなかったことでしょうね。

著者はもしかしたら恐竜好きなのかな?と思うほど、恐竜の身体機能の優位性を熱く語っていました。
・脚が真下に位置することと重心を腰に置いたことで二足歩行が可能になり、両手が使えるようになった
・小型恐竜は体温を保つため羽毛が厚くなり、さらに身を守るため樹上生活が多くなったことから滑空能力や飛行能力を得た
・哺乳類よりも呼吸効率の高い気嚢システムを持っていた

ちなみに滑空の件で、猫の身体能力について書かれていたことで驚いたのでご紹介します。
「高層ビル症候群」というものです。
マンハッタンでは猫が高層ビルから落下する事故が多いのですが、32階から落ちてもアゴと胸をケガするだけで済むことがあるそうです。
空中で脱力姿勢をとることで空気抵抗が高まり、9階以上では終端速度に達し、それ以上落下速度が上がらない為、大怪我をせずに済むのだそう。
その生存率が90%というのも驚きです。
また8階までは高さが増すごとにケガする箇所も増えるそうです。
高いところに登る習性があるから落下への対応が備わっているとはいえ桁違いの身体能力だと思いませんか?
なおネットで調べたら高所落下症候群という名前で載っていました。
ご興味のある方は追加で調べてみてはいかがですか?

ここまでで前半終了です。
後半は哺乳類が登場するはず。
楽しみにしています。

なお本書を読んでいてひとつ気になったのは著者は動物に重きを置いており、植物や菌類が軽く書かれているように感じたことです。
例えば石炭紀が終わった理由が、菌類の進化で植物を分解する能力を獲得したためであることを書き添えると良かったと思います。

最後に内容紹介を引用します。
=====
☆絶賛の書評続々! 売れてます!3万5000部突破!!
【書評、メディア情報】
☆「読売新聞 2022/11/13」「本よみうり堂」にて書評掲載。「とんでもないスケールの本が出た。タイムマシンに乗って、地球上の生物の全歴史を一気に観光旅行した気分になれる。(中略)生命の誕生から5回の大量絶滅を経て我々ホモ・サピエンスが誕生するまでの流れは、奇跡と感動の連続で、本当に「読み終わりたくない」と思わせる数少ない本であった。」西成活裕氏(東京大学教授)
☆「プレジデント2022年11/4号」『新刊書評』にて紹介。「もし一度でも生命が途切れていれば、評者も読者もここに存在しない。こうした長い歴史を「超圧縮」したきわめて面白い読み物が出た。」(京都大学名誉教授・鎌田浩毅氏)
☆「WIRED.jp」「年末年始に読みたい、2023年のパラダイムシフトに備える10冊:WIRED BOOK GUIDE」にて紹介。「まるで千夜一夜のように果てしなく繰り広げられるサイエンス最前線の物語に、最後まで息がつけない。」(本と人をつなぐ「読書室」主宰・三砂慶明氏)
☆「産経新聞2022/12/25」「令和4年 私の3冊」にて紹介。「まるで地球の過去と未来を見てきたような文学的な表現が光る。」(サイエンスライター・川口敦子氏)
☆「週刊新潮 2022/10/20」にて紹介。「悠久のドラマに夢中になり、地球生物どうなるんだ!?と一気読みしてしまった。」(ライター・篠原知存氏)

☆王立協会科学図書賞(royal society science book prize 2022)受賞作☆
ジャレド・ダイアモンド(『銃・病原菌・鉄』著者)超絶賛!!
「著者は万華鏡のように変化する生命のあり方をエキサイティングに描きだす。全人類が楽しめる本だ!」
「地球の誕生」から「サピエンスの終末」まで。全歴史を一冊に凝縮!
地球誕生から何十億年もの間、この星はあまりにも過酷だった。
激しく波立つ海、火山の噴火、大気の絶えまない変化。
生命はあらゆる困難に直面しながら絶滅と進化を繰り返した。
ホモ・サピエンスの拡散に至るまで生命はしぶとく生き続けてきた。
本書はその奇跡の物語を描き出す。
生命38億年の歴史を超圧縮したサイエンス書!
=====


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お気に入りその2219~週刊少年ジャンプ創刊30周年記念原画集

2023-04-07 12:28:22 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、週刊少年ジャンプ創刊30周年記念原画集です。

先日鑑賞した「安彦良和 アニメーション原画集 機動戦士ガンダム」に味を占めて「週刊少年ジャンプ創刊30周年記念原画集」を鑑賞しました。

本書は今から四半世紀前の1998年に開催された「週刊少年ジャンプ展」で会場限定販売されたものです。
1968年から1998年に連載された代表的なマンガのカラー原画が掲載されています。
制作サイドのコメントで、原画を忠実に再現した、とあるとおり、発行から25年経った今でも美しい状態で鑑賞することができました。
熱いファンに対し恥ずかしくない仕上りで届けようとした制作スタッフの心意気を感じました。

本書にはたくさんの有名作品が登場します。
こち亀、ジョジョ、マキバオー、遊戯王、ぬーべー、キン肉マンなど書ききれない程です。
その中で私のお気に入りは、
=====
ワンピース
スラムダンク
ドラゴンボール/Dr.スランプアラレちゃん
幽遊白書/ハンター×ハンター
聖戦士星矢/リングにかけろ
封神演義
北斗の拳/花の慶次
魁!!男塾
るろうに剣心
=====
です。
ただしこれはあくまで1998年までの作品に限ってです。
それ以降に連載された作品にもお気に入りはたくさんあります。
例えば1999年連載開始だけでも、ヒカルの碁、テニスの王子様、NARUTOがあります。
少し遅れて登場したBREACHやトリコもお気に入り。

とにかくお気に入りだらけ。

それにしても25年も前の記念誌に「ワンピース」が連載されていることに驚きました。
本書によれば、当時ルフィーの仲間はまだゾロとナミだけですが、シャンクスと赤髪海賊団もしっかり登場しています。
あの頃は“海賊王”なんて夢物語でしたが、今は手が届くところまで来ています。
どんな結末を迎えるのか楽しみにしています。

お気に入りのいくつかはコミックで揃っています。
また読みたくなってきました。

本書は中古市場でたくさん出回っています。
週刊少年ジャンプの愛読者はご覧になられることをお勧めします。



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お気に入りその2218~荒俣宏本1

2023-04-05 12:24:47 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、荒俣宏本1です。

科学とアートが融合した博物画がお気に入りです。
荒俣宏氏により博物画の魅力を教えられ、氏の著作をこれまで何冊鑑賞したことでしょうか。
氏の代表シリーズには「ファンタスティック12」「世界大博物図鑑」「花の王国」などがあります。
カラー写真やビデオが無かった時代に科学者と画家が協力して作製した博物画がたっぷり掲載されており、現在でもその美術的価値が高く評価されています。
荒俣氏が価値を認め、世に出した3つのシリーズはいずれも好評を博し、後年いずれも復刊しました。
「ファンタスティック12」は1990年に全12巻が刊行され、その9年後に文庫本サイズの「アラマタ図像館」シリーズとして復刊しました。
「世界大博物図鑑」は1980~90年代に全7巻が刊行され、2年前に縮刷版の普及版が復刊しました。
「花の王国」も同じころ4巻が刊行され、今年新装版として復刊しました。

ということで各シリーズから未読の巻を1冊ずつ購入し鑑賞することにしました。
久しぶりに美しい博物画の世界に浸ることができました。
科学とアートの融合ってやっぱり素晴らしいですね。
今回はその第一弾、「ファンタスティック12」の一冊を鑑賞した感想を書きます。

〇ファンタスティック12 エジプト大遺跡

ナポレオンが科学者や画家を大勢引き連れてエジプト入りし、正確かつ美しい博物図を制作させたことで有名な「エジプト記」。
そのほとんどは、ナポレオン軍がエジプトに攻め入り、イギリス軍に包囲されて撤退するまでの数か月間に下絵が制作され、帰国後に清書されたもののようです。
これまで新書版の洋書や文庫本の「アラマタ図像館」で鑑賞してきましたが、本来はエレファントサイズという特大版で制作された図版ですので、できるだけ大きなサイズで鑑賞し直したくなり、先日「ファンタスティック12」の「エジプト大遺跡」を購入し、改めてじっくりと鑑賞しました。
あの博物画が大きくそして美しく再現されています。
そして博物画の鑑賞を邪魔しないように、短い解説が添えられています。
この美しい彩色は空想で描かれたものなのかとか、この立派な宮殿は元はどんなだったかを遺跡から空想したものなのかとか、当時はスフィンクスが半分くらい埋まっていたのかなど、洋書では判らなかったことがしっかり解説されていました。
もうとにかく博物画の細密で美しいことといったら感動的です。
そのレベルの博物画が次から次へと続くのです。
限られた日数で準備したとは思えない、まさに博物誌の最高傑作です。
カラー写真やビデオが無かった時代だからこそ科学者や画家たちは危険を顧みず努力したことが伝わります。
本書もお気に入りの一冊となりました。
こういう場合、いつもならシリーズ本を次、また次と鑑賞していくのですが、本シリーズは別。
これまで鑑賞したのは「昆虫の劇場」だけでした。
例えば「怪物誌」「民族博覧会」「極楽の魚たち」「解剖の美学」など個人的に美しいと思えない図版が掲載されている巻が多いためです。
このシリーズの次は・・・無さそうです。




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