鬼平や竹鶴~私のお気に入り~

60代前半のオヤジがお気に入りを書いています。

お気に入りその1836~鬼平犯科帳パート108

2019-09-30 12:02:50 | 鬼平
今回のお気に入りは、鬼平犯科帳パート108です。

大のお気に入りの鬼平犯科帳。
今回は第3巻です。

「麻布ねずみ坂」
盗賊改メ同心・山田は妻の薬代として借りた5両が返せず苦しんでいます。
それを察した平蔵は5両をそっと手渡し、山田は大泣きするシーンがあります。
こういう上司だからこそ、配下の者たちは命がけの働きをしてくれるのでしょう。
この作品には、白子の菊右衛門という大坂の香具師の元締が登場します。
今回の件で平蔵は菊右衛門にきつく意見します。
「約定に背く者を消すことに口を挟まないが、間に立つ者には信頼のおけるものを置くべき」
筋の通った意見に対し、菊右衛門も筋を通して応えます。
学ぶところの多い作品でした。

「盗法秘伝」
志ん朝の朗読CDで一番好きな作品です。
ドライブのおともに何度聴いたことでしょう。
一行一行読むごとに志ん朝の軽妙な語り口が蘇ります。
ひとりばたらきの老盗の弟子としてスカウトされた平蔵の小気味よい活躍が魅力的。
「お目当て細見」を取り上げ「おやじ、引退するのは早いに越したことはないぞ」と一言言いつけて立ち去ります。
筋を通すきれいな盗みをはたらいてきた老盗への引退勧告とは、なんとも粋な計らいです。
こういう格好良いセリフを言ってみたいものです。

「兇剣」
平蔵の勘ばたらきがこの時ばかりははたらきませんでした。
まさに絶体絶命の瞬間に左馬之助が登場し九死に一生を得ます。
平蔵の命を救うことができた喜びを照れ隠しで「命の恩人」「命の恩人」と繰り返す左馬之助のカワイイこと。

「駿州・宇津谷峠」
左馬之助が幼馴染のことで悩みつつも平蔵に相談できずにいる様を見かねて、平蔵は傷が癒えたにもかかわらず、体を支えてくれるよう頼みます。
互いの心の内を知る忠吾がその姿に涙するシーンは実に感動的でした。

「むかしの男」
平蔵の留守中、妻・久栄が“むかしの男”に呼び出されます。
女は初めての男を忘れられない、と自信たっぷりの男。
あなたなど夫に比べればちり芥も同然、と言い切り、取り付く島もない女。
ロマンを追う男と現実を見る女の違いがここで明白にされます。
気を付けようっと。

巻末の「あとがきに代えて」は、池波正太郎自身による実録・長谷川平蔵伝。
以前にも盗賊改メについて書いたことがあり、それがきっかけになったと書いてあります。
その作品も読んでみたいです。


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お気に入りその1835~ワイルドライフ・アート

2019-09-27 12:40:45 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、ワイルドライフ・アートです。

先日、絵画に「ワイルドライフ・アート」というジャンルがあることを知りました。
「野生動物の生態画」と言うだけでは足りない、博物画として正確で、かつ生命力あふれる芸術性の高い絵画のことです。

古い図鑑の図版に見られる“手業の光る博物画”が好きで、これまで数多く鑑賞してきました。
カラー写真がなかった時代に、生物の様子を正確に伝えるために描かれた美しい絵画の数々。
その多くは、調査航海の報告書として描かれ、その後は図鑑の図版として描かれました。
博物画として正確なだけでなく、その生物の美しい色彩、奇想天外な形状などが芸術性高く描かれました。
当時の書籍はとても高価でしたが、メーリアンの「スリナム産昆虫変態図譜」のように貴族たちの間でベストセラーになったものもありました。

その末裔として、現在でも植物や昆虫、鳥だけでなく魚や哺乳類などいろいろな生物を細密に描く画家たちがいます。
彼らの作品は図鑑や絵本、画集で鑑賞することができます。
ただし図版や挿絵として描かれているため、一幅の絵画として鑑賞するために描かれた作品はあまり多くありません。

今回出会った「ワイルドライフ・アート」は鑑賞するための絵画です。
生命力あふれる芸術性の高さと科学的正確さ細密さをあわせもった見事な作品です。

一冊目は、2005年に3冊セットで発行された田中豊美の「画集 日本の野生動物」です。
日本の野生動物を正確かつダイナミックに描いています。
絵画として完成された作品だけでなくスケッチ、下絵なども豊富に収録されています。
これまで昆虫や鳥、魚などを上手に描く画家は多かったですが、獣を上手に描く画家は少ないと感じていました。
田中豊美氏がこれまで見てきた中でトップクラスに上手い画家であることは間違いありません。
大画面に大きく描かれた動物たちの動きや表情は見応え十分です。

二冊目は、1995年にサントリーミュージアム「天保山」で開催された 「ワイルドライフ・アート展~カナダの大自然からのメッセージ~」の図録です。
こちらは野生動物が生き生きと描かれていることは当然として、背景である自然の美しさに魅了されました。
これは写実絵画です。
ホキ美術館の図録で目にした野田弘志の作品に通じる美しく力強い自然の風景が描かれています。
自然の一部として動物が描かれること、動物と風景の一体感、それこそが大自然。
そう実感させられる素敵な作品群でした。

田中氏は動物たちの生き生きとした力強さを描き、ワイルドライフ・アート展図録の画家たちは動物と風景が一体化した大自然を描きました。
もし自室に作品を飾るとしたら後者を選びます。

二冊の発行から20年前後経ちました。
いろいろ調べていますが「ワイルドライフ・アート」に関する最近の情報が少ないことが気がかりです。
田中氏の記事に「この仕事は絶滅危惧種」とあったのも気になります。
「ワイルドライフ・アート」というジャンルが才能ある後継者に引き継がれていることを願いつつ今後も追いかけていきたいと思います。

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お気に入りその1834~鬼平犯科帳パート107

2019-09-25 12:14:11 | 鬼平
今回のお気に入りは、鬼平犯科帳パート107です。

大のお気に入りの鬼平犯科帳。
今回は第2巻です。

「蛇の眼」
鬼平犯科帳では、平蔵の第六感を“勘ばたらき”と呼び、しばしば事件解決のきっかけになります。
本作の時点ではまだ“勘ばたらき”という言葉は登場しませんが、間一髪で凶賊に一泡吹かせたのはまさに“勘ばたらき”あってこそでした。
蛇(くちなわ)の平十郎は、第1巻で鬼平を亡き者にするため刺客を放ち、しくじった時点で江戸を離れるべきでした。
懲りずに数千両を狙いますが、またしても平蔵に阻止され、火あぶりの刑に処せられます。
相性が悪いとか運が向いていないと気づいたときは、きっぱり諦める勇気も必要なのだという教訓話として読むこともできます。
江戸市中の凶賊どもは震え上がったことでしょう。

「谷中・いろは茶屋」
茶屋の女に入れ込んで金を使い果たしたが、女に気に入られたためタダで通うことになった男が登場します。
情けないけれど憎めない女好きの男、それが木村忠吾です。
これから平蔵の下で「うさぎ、うさぎ」とかわいがられ、少しずつ成長していく男の初登場。
腕に自信がないために、尾行し、見張り、応援を待つことしかできませんでしたが、おかげで名のある凶賊一味を一網打尽にする手柄をあげます。
家をこっそり抜け出して女の下に向かっている途中、偶然事件に遭遇しただけであることを正直にお頭に白状する辺りが、長官(おかしら)からすると見どころがあるのでしょう。
“真面目&仕事一筋”でなくても鬼の平蔵から評価されることはひとつの学びです。
また「人というものは良いことをしながら悪いこともする、そういう生き物さ」という名言が飛び出した回でもあります。

「女掏摸お富」
テレビシリーズでは坂口良子が演じていました。
二度とスリができないように刀を振るうテレビ版より、お縄にする原作の方がお富の先々を考えると良かったと思います。

「妖盗葵小僧」
夫の前で妻を、父の前で娘を犯すことで快感を得る葵小僧。
心中まで出た悲惨なこの事件は、葵小僧を取り調べせずに処刑することで幕を引きました。
上役や世間の非難を一身に浴びながら、被害者たちを守った平蔵の姿に感動しました。
保身よりも弱い者を守る方を選ぶ美しい人になりたいです。

「お雪の乳房」
今でも「生娘はいいな」とにやける忠吾の声が耳に残っている気がします。
本を読んだだけなのに・・・。
この作品は「谷中・いろは茶屋」と同じ巻に入っていたのですね。
どちらもいかにも忠吾という作品。
さらに後の作品では、望み通り生娘を嫁にもらいますが、後家さんにも手を出し、旅先では遊郭に入り浸ります。
女好きの王道を突き進む忠吾がちょっぴりうらやましいのは私だけでしょうか?

「埋蔵金千両」
自分の死期が近いと思い、埋蔵金の在りかを女に言ってしまった元・盗賊が主人公。
自分の病が気の病であることを知ると、弱った体にむち打ち埋蔵場所に向かいます。
すでに掘り出された後であることを知り、その場で息を引き取ります。
真剣なのは本人だけのドタバタ喜劇です。
ここまで極端でないにしろ、誰しもこういう立場になったことがあるのではないでしょうか。
第三者の目線を持ち、冷静に対処したいものです。

やっぱり鬼平には学びがあります。
第3巻が楽しみです。
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お気に入りその1833~エンドゲーム

2019-09-23 06:59:15 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、エンドゲームです。

待ちに待った「アベンジャーズ エンドゲーム」のDVDが届きました。
前作「アベンジャーズ インフィニティ・ウォー」でヒーロー軍団はコテンパンにやられました。
圧倒的な力の差に絶望を感じたものです。
そしてその続編の「アベンジャーズ エンドゲーム」での大逆転を期待していました。
「エンドゲーム」の予告編的な「キャプテン・マーベル」では、巨大宇宙戦艦を沈めるほどの圧倒的パワーを誇る助っ人がチームに加わることになり、その期待は大いに高まりました。

(以下ネタバレ注意!)

ただ相手(サノス)は全宇宙の半分の生命を消し去る力(インフィニティ・ストーン)を手に入れています。
ヒーロー軍団が多少パワーアップしただけでは到底敵いませんし、失われた者たちも戻ってきません。
そこで出てくるのが手垢の付いたアイデアである「タイムマシン」。
サノスが力を手に入れる前に、先に力を手に入れようという計画です。
天才科学者トニー・スタークスが不可能と断じますが、アントマンが量子サイズにまで小さくなることでそれが可能になるという科学をバカにした展開が続きます。
さらに手垢の付いた展開なのは、各チームが手分けしてそれぞれ担当するストーンを回収すること。
半分あきれながらその後の展開を眺めていました。

この後、目を見張るシーンが飛び出します。
過去のサノスがヒーローチームの行動の意味に気づくのです。
未来の自分が計画通り力を手にし、全宇宙の半分の生命を消し去ることで宇宙の安定を保つことに成功したことを知ります。
そして計画遂行後に残ったヒーローチームが過去にさかのぼり、自分の計画を妨害しにきていることも気づきます。
サノスは計画を改めます。
半分の生命を残すから計画の妨害が起こるのだ。
真の宇宙の安定を実現するためには全宇宙の生命をすべて消し去らなくてはならない!
・・・何という恐ろしい考えでしょう。
世界征服とか地球人を根絶やしにして地球を乗っ取ろうという悪党とは真逆の理想主義者の考えることの方が絶望的で恐ろしい。
背筋が凍る瞬間でした。
この後、ヒーローチームの活躍でサノスの計画は阻止され、消し去られた生命は戻ります。
ヒーローの何人かはこの戦いで命を失い、その悲しみの中で映画は終わります。
多くの人々は、正義が勝利し平和が戻ったことに安どして映画を見終えたことでしょう。

私はというと、理想主義者サノスの、
「真の宇宙の安定を実現するためには全宇宙の生命をすべて消し去らなくてはならない!」
という新たな理想に対する恐怖に震えたまま。

久しぶりに恐ろしい映画を観ました。
敵が強く悪いほどヒーローが輝くことはわかりますが、今回の敵は別。
「宇宙の安定を願い、理想を追う者」を敵に回したことで、今回ヒーローは輝いたのでしょうか?
大いに疑問です。
まるで禅問答のような映画でした。

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お気に入りその1832~竹内まりや

2019-09-20 12:32:27 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、竹内まりやです。

竹内まりやのデビュー40周年を記念したニューアルバム「Turntable」を聴いています。
といってもアルバムが3枚もあるので、実はまだ何度も聴いていません。
現状での浅ーい感想を書きます。

Amazonの商品紹介があまりに長いのでごく一部を引用します。
=====
40周年記念企画の目玉ともいえるアルバム、モア・ベスト&レアリティーズ&カバーズ「Turntable」がついに発売決定!
【Disc1 (More Expressions)】
ベスト・アルバム「Expressions」に入らなかった楽曲を11枚のオリジナル・アルバムから厳選収録!
NHK「竹内まりや Music & Life ~40年をめぐる旅~」でも歌唱した「いのちの歌」を含む、新たなモア・ベスト!
【Disc2 (Mariya's Rarities)】
Abema TV ドラマ「1ページの恋」主題歌「ミラクル・ラブ」を含む、アルバム未収録のカップリング曲やレア音源満載!
岡田有希子への提供曲「ファースト・デイト」「恋、はじめまして」「憧れ」などの初セルフ・カバー音源も遂に収録!
【Disc3 (Premium Covers)】
山下達郎「サンデー・ソングブック」でお馴染みの名物コーナー「まりやの課外(クラブ)活動」が待望の初CD化! (洋楽クラシックス、ジャズスタンダード、フレンチポップス、etc…)
ディズニー映画「ダンボ」日本版エンド・ソング「ベイビー・マイン」の英語ヴァージョンや、山下達郎とのデュエット・ソングもさらに収録!
=====

Disc.1は、「Expressions」に入らなかった17曲を収録。
40年目の今年、新たに「Expressions」のメンバーとして選ばれた曲たちです。
「Expressions Disk.4」としてDisk.1~3に続けて聴くと良いかも。
聴き覚えのある曲ばかりなのでしっくり耳に馴染みます。
収録曲を聴きながら、曲ごとの本人のコメントを読むのは楽しいですね。
これはアルバムを買った人だけの特権です。

Disc.2は、自身のデビュー曲、アルバム未収録曲、アイドルへの提供曲のセルフカバー等を収録。
聴いたことのない曲が多く、耳に馴染むには少し時間がかかりそうです。
考えてみるとアルバム収録曲以外って聴いたことがありませんでした。
ここからお気に入りの一曲が出現する可能性は大です。
期待しています!

Disc.3は、ポップス・ジャズなど洋楽オンリー。
山下達郎「サンデー・ソングブック」をほとんど聴いたことがないので知りませんでしたが、「まりやの課外(クラブ)活動」という名物コーナーでこういうのを歌っていたのですね。
今回まとめて聴くことができて良かったです。
こちらも耳に馴染むにはもう少し時間がかかりそうです。
ちなみに「ガラスの部屋」は「ヒロシです・・・」のBGM。
冊子には同名の映画を観たときに挿入曲に惹かれたと書かかれていました。
決してヒロシが好きだからではありません。
「フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン」は映画「ラスト・カウボーイ」で好きになった曲。
いろいろな人が歌っていますが、本家フランク・シナトラ以上のは聴いたことがありません。
まりやさんのはシナトラ以上とはいいませんが、繰り返し聴きたくなるオシャレな仕上がりが気に入りました。

Disc.2とDisc.3は耳新しい曲が多いため、繰り返し聴いて、新・お気に入り曲を確立したいと思います。

また公式HPで公開されている広末涼子のショートムービー3部作は贅沢な作品でした。
「Turntable」をキーワードにして、別れた男女の再開を描いています。
セリフに竹内まりやの歌詞が織り込まれているらしいのですが、ほとんど気づきませんでした。
それだけ脂ののった広末の演技に見とれていたということでしょうか?
いつ公開が終わるもしれませんので、まだ観ていない方はお早めにどうぞ!

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お気に入りその1831~鬼平犯科帳パート106

2019-09-18 12:26:18 | 鬼平
今回のお気に入りは、鬼平犯科帳パート106、全巻読みスタートです。

還暦を目前にして、年々体力・気力の衰えを感じている今日この頃。
“そのうちに”とか“いつかは”などと言っている内に老いてゆくばかり。
振り返れば、無駄に時間を過ごしてきたと後悔・・・。
少しでも体力・気力のある内にやりたいことをやっておこうと思い、先日は一念発起してニッカウヰスキーの「マイウイスキー作り(上級編)」に参加申し込みをしました。
ホテル代や交通費を合わせると3万円ほどの出費ですが、夢にまで見たウイスキー作りの上級編を体験できる上、自分の手で樽詰めしたシングルカスクウイスキーを10年後に味わうことができるのです。
たとえ10年後に生きていなくても、10年後までの夢を見させてもらうだけで十分価値があります。

そして今回、3度目の「鬼平犯科帳」全25巻読みをスタートしました。
大のお気に入りである「鬼平犯科帳」。
先日も知り合いに勧めたばかり。
往復10時間の移動中に読んでくれたかな?
そういう私ですが、これまで時々お気に入りの作品を拾い読みすることはあっても、全巻を読み返すことがなかなかできずにいました。
他にも読みたい本がたくさんあり、併読が苦手なもので。
でも今回、マイウイスキーの時と同じ理由で一念発起し、3度目の全巻読みをスタートしました。

第一巻の収録作品は8篇。
久しぶりに手に取り目次を見ただけでワクワクしました。
だって早くも2作目「本所・桜屋敷」で岸井左馬之助と相模の彦十が、続く3作目「血頭の丹兵衛」で小房の粂八が登場するはずですから。
後に固いきずなで結ばれることになる者たちの初登場シーンですから、その人となりが丁寧に描かれています。
なぜ平蔵がその者を気に入り、信頼するに至ったのかを改めておさらいするのが楽しみです。

第一巻にカバーを付け、目次を見ただけで、こんな思いに浸っていました。
そして実際に読み始めると、まさに肌に合う文章が、心の機微に触れる言葉が、次から次へと・・・。
ああ、面白い。

例えば「血頭の丹兵衛」。
平蔵が盗賊の忘れ形見を養女として引き取ったことを聞き、薄幸の幼少時代を過ごした粂八には平蔵を尊敬する心が芽生えます。
そして若い頃から尊敬していた丹兵衛の堕落した姿を目の当たりにします。
この作品は何度も読みましたが、二人の対比により、粂八の心の動きが実によく見える名作です。

「本所・桜屋敷」では岸井左馬之助の愚直なまでの純粋さに接して平蔵と共に感動を覚えるとともに、「女という生き物には、過去も未来もなく、ただ今があるだけ」という名言に接し、改めて勉強になりました。

それに対比されるのが「老盗の夢」です。
こちらでは本格の盗賊として尊敬される蓑火のお頭が若い女に狂ったため仲間割れの内に果てるまでが描かれており、「男という生き物」についても勉強させていただきました。

「暗剣白梅香」「むかしの女」も魅力的な作品でした。
平蔵の冴えわたる剣技、若い頃の無鉄砲ぶりなど多彩な物語が紡がれます。
強いだけでも、厳しいだけでもない平蔵の懐の深さが、読み進むごとに沁みました。
特に“むかしの女”が突如目の前に現れたときの他の男たちの反応に比べ、平蔵の対応の素晴らしさときたら・・・。
数十万円入りの財布を渡しながら、いつでも役宅に来るようにと声をかけて別れます。
こういう男になりたいものです。

男とは、女とは、人とは、上司とは。
すべて本書で学ぶことができます。
まさにさだまさしが言う通り「鬼平犯科帳以外は読まなくてよい」くらい。
第2巻以降も楽しみです。




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お気に入りその1830~富良野小旅行

2019-09-16 08:18:54 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、富良野小旅行です。

遠乗りが苦手な私を息子が小旅行に連れて行ってくれました。
妻と義母を含めた4人で富良野・美瑛方面の小旅行です。

まずは富良野で早めの昼食。
有名な「くまげら」でご飯大盛り、肉大盛りの豪華和牛ローストビーフ丼を堪能しました。
柔らかい肉と甘い油、わさび醤油のハーモニーが絶品でした。

フラノマルシェで買い物の後、美瑛へ。
楽しみしていた四季彩の丘は山々に雲がかかっていてちょっぴり残念でした。
妻の希望で美瑛神社に寄りご朱印をもらいました。
高い空の下、丘に木が並ぶ、いかにも美瑛らしいカラフルなご朱印でした。
女性がたくさん訪れていたのが印象的でした。
あとで調べると、北海道三大パワースポットのひとつであり、恋愛成就のご利益もあるそう。
ナルホド。

札幌への帰路についた道すがら「〇〇の木」と名付けられた有名な木があちこちにあり、記念撮影をする人が多かったです。

芦別を走っている途中、三段の滝を見学。
写真は観光協会のものを引用させてもらいましたが、実際は雨のあとだったのでもっと水量が多く、水が濁っていて迫力満点でした。

初秋の富良野・美瑛を満喫し、満足の一日でした。
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お気に入りその1829~骨の旅

2019-09-13 12:26:47 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、骨の旅です。

おすすめの絵本の中に「ながいながい骨の旅」というのがありました。
AMAZONのレビューに「ぜひ後世まで読み継がれてほしい」とあり、即購入。
名作絵本「せいめいのれきし」のような内容かなと勝手に想像し、期待して読みました。

AMAZONの内容紹介を引用します。
=====
●日本子どもの本研究会「第2回作品賞」受賞!
●絵本学会2018年「BOOK END」が選ぶ「次世代に残したい絵本(国内絵本)」!
●2019年度児童福祉文化賞受賞!
「骨の旅」をたどりなおしていくことは、私たちと、たくさんの生きものたちとのつながりを、みつけなおす旅でもあるのです。
どんなことにも「はじまり」というものがあります。
「はじまり」があるから「いま」がある。
「遠いところ」や、「はるかな時」のことを考えるのは、「いま」とか「ここ」とか「じぶん」とか、そういうものを知りたいからだと思ってきました。
この絵本は「科学絵本」と呼ばれる分野に入るかと思います。
でも、私がほんとうに伝えたかったことは「知識」ではありません。
願ったことは、「いま」「じぶん」が「ここ」にいることが、どれほどかけがえのないことなのか、それを感じてほしいということでした。
人間同士だけではなく、あらゆる生き物がつながりあっている、その「つながり」に対する感覚や想像力こそが、これから最も大切なことだと思えてなりません。
「骨の旅」とは、私たち自身の、そして、私たちとたくさんの生き物たちとのつながりを見つけなおす旅でもあるのです。
(著者コメント)
=====
私たちは、体の中に海をもって生きています。
私たちのとおい祖先は、海の中で生まれました。
海を出て、陸上で生きるようになったいまも、私たちは故郷の海を必要としています。
体の中の“骨”は、そのために大切な役割をはたしているのです。
=====

著者の松田素子さんは「月刊MOE」の創刊メンバーだそう。
本書では、子ども心を知り尽くしたサイエンスライターとしての力をいかんなく発揮しています。
地球の歴史、生命の進化、骨の役割などを学びつつ、子どもたちは自分の骨が海とつながっていることを実感することになります。

本書により骨の役割のひとつに、心臓の動きを滑らかにする働きがあるカルシウムを体内に備蓄する役目があることを知りました。
また子どものころは多くの骨に骨髄があり造血活動をしていますが、大人になると脊椎や骨盤など一部の骨でしか造血活動をしなくなることも知りました。
どちらも本書を読むまで全く知りませんでした。

そしてそんな小ネタより大切なのは、体の中に海を持つ私たちはあらゆる生き物とつながっていることや、だからこそ海の環境を守らなくてはならないことをメッセージとして伝えていることです。
きっと子どもたちの胸に深く刻まれることでしょう。

さすがは「月刊MOE」の創刊メンバーです。
名作「せいねいのれきし」とは一味違う、子どもたちにとって大切な絵本をつくってくれてありがとう、とお礼を言いたいです。



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お気に入りその1828~愛なき世界

2019-09-11 12:51:06 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、「愛なき世界」です。

2019年本屋大賞にノミネートされた10冊の中に、三浦しをんの作品を発見。
久しぶりに読むことにしました。

AMZONの内容紹介を引用します。
=====
恋のライバルが人間だとは限らない!
洋食屋の青年・藤丸が慕うのは〝植物〟の研究に一途な大学院生・本村さん。
殺し屋のごとき風貌の教授やイモを愛する老教授、サボテンを栽培しまくる「緑の手」をもつ同級生など、個性の強い大学の仲間たちがひしめき合い、植物と人間たちが豊かに交差する――
本村さんに恋をして、どんどん植物の世界に分け入る藤丸青年。
小さな生きものたちの姿に、人間の心の不思議もあふれ出し……
風変りな理系の人々とお料理男子が紡ぐ、美味しくて温かな青春小説。
=====
恋のライバルは草でした(マジ)。
洋食屋の見習い・藤丸陽太は、植物学研究者をめざす本村紗英に恋をした。
しかし本村は、三度の飯よりシロイヌナズナ(葉っぱ)の研究が好き。
見た目が殺し屋のような教授、イモに惚れ込む老教授、サボテンを巨大化させる後輩男子など、愛おしい変わり者たちに支えられ、地道な研究に情熱を燃やす日々…
人生のすべてを植物に捧げる本村に、藤丸は恋の光合成を起こせるのか!?
道端の草も人間も、必死に生きている。
世界の隅っこが輝きだす傑作長篇。
=====

面白い紹介文です。
これを書いた担当者は、きっと作品自体の面白さにテンションが上がったのでしょう。

著者は「風変わりな○○系の人々」を描くのが上手です。
筆頭は「舟を編む」。
あれは“文系”の人々でした。
国語辞典編纂を目指し言葉集めに奔走する、まさに“世界の隅っこが輝く”物語でした。

また「神去なあなあ日常」「神去なあなあ夜話」は“林業系”の人々。
都会から来た青年が林業に魅了されていく様は、読者の心をも巻き込みました。

そして「風が強く吹いている」は、まさに“体育会系”の人々でした。

ひとつのものに熱中する人たちって、どこか変わり者で愛おしいところが共通しています。
そういう意味で本書は、これまでの代表作と肩を並べる名作の香りがしました。

さて読後の感想です。
著者の文章が肌に合うことはすでに経験済みなので、分厚さはまったく気になりませんでした。
ただ持っている手がだるくなるため、その分厚さを再認識せざるをえません。
未読の方には、キンドルか文庫本で読むことをお勧めします。

ストーリーでは藤丸くんと本村さんの恋の行方が当然気になりますが、生命科学に身をささげる理系女子・本村さんの科学的思索にも魅力を感じました。
例えば次のような思索です。
=====
生命の誕生から現在までの進化の道のりには、膨大な数の偶然が重なっている。
もしもう一度、全く同じ条件で生命を誕生させても、現在と同じに進化する確率はほぼゼロだろう。
=====
人間のように“愛”などという不確かなものに生殖を任せるのはいかがなものか。
植物のように“愛”を介さずとも生殖を行うことの方が確実に子孫を残せる。
=====

そんな本村さんですから藤丸くんの告白に一度はノーと答えますが、その後、植物に対する感動ポイントがことごとく同じであることを知るにつれ、徐々に心が変化していきます。
さらに研究上の悩みを相談すると、料理に例えて実に明快な回答をくれるため、頼りにするようになります。
それなのに2度目の告白には即「ごめんなさい」。
植物がライバルとは・・・かわいそう過ぎです。

それにしても本村さんが行っているシロイヌナズナの遺伝子研究は読んでいるだけで疲れます。
4種類の遺伝形質を掛け合わせて観察するため、1200もの微小な種子をロックウールに植えて育てます。
気の遠くなるような単純作業。
突然異様な声を発してしまう本村さんの気持ちがよーく判ります。
だからこそ初期設定の間違いに気づき絶望したときにはかける言葉がありませんでした。
そんな彼女を絶望の淵から救済した研究仲間たちと藤丸くん。
さらに「結果の判り切った研究なんて面白くない」「わずかに可能性がある研究だからこそ面白い」「毎日毎日観察し続けてきた者だけが持つ直観を信じるのだ」という言葉で、彼女の希望と熱意を見事に蘇らせた教授。
研究者の世界って意外と魅力的です。

ナルホド「舟を編む」と同じだ。
まさに“世界の隅っこが輝く”素敵な物語が展開しています。
学者って面白くて大好きだからこそ寝食を忘れてでも研究を続けるのだ、ということを改めて理解しました。
そしてそれが本村さんの“愛の形”である、という藤丸くんの言葉に大いに納得しました。

本書は「舟を編む」「風が強く吹いている」のような大きな成果をあげずに終わったため、盛り上がりに欠けています。
その点が「2019年本屋大賞ノミネート」で終わった理由でしょう。
読者ウケを狙うなら、本村さんの実験結果から生命の秘密が明らかにされ、世界から注目される、という設定もあったはず。
私は逆に、そういう安易な道に走らず、自然体を通す著者の感性が好きです。
次回作も期待しています。





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お気に入りその1827~ワンピース

2019-09-09 12:54:21 | 鬼平・竹鶴以外のお気に入り
今回のお気に入りは、ワンピースです。

少年ジャンプに連載中のワンピースがお気に入りです。
ワンピースは世界中にたくさんのファンがいることで知られています。
還暦間近のおっさんがファンだっていいですよね。
今年は90巻以上にもなる全巻を一気にそろえて、まとめ読みしました。

物語では感動的なエピソードとともに仲間が増えていきます。
ロビン救出のときも感動的でしたが、一番はナミのときです。
「助けて」「当たり前だ」の場面は目に焼き付いています。
そして時には仲間との別れも。
サニー号との別れのシーンは悲しすぎて二度と読みたくないほどです。

今回、数多ある名場面の中から復刻原画を入手して鑑賞したくなり、あちこちチェックしました。
希望する「麦わらの一味が勢ぞろいした、威勢の良いシーン」がなかなか見つかりません。
唯一あったのは「魚人島編」の一コマです。
一番のお気に入りシーンではありませんが、とりあえずこれに決めました。

新・魚人海賊団が人間たちに復讐するため、国王軍にまで牙をむきました。
窮地に立たされた魚人島を救うために立ち上がったのは「麦わらの一味」。
人間、しかも海賊たちに恐れと憎しみを抱く魚人たちに対して、ルフィが一言。
「敵か・・・味方か? そんな事、お前らが勝手に決めろ!」
麦わらの一味は自由を愛する海賊であり、決して正義の味方やヒーローではありません。
ただ虐げられている人々を見ると放っておけないのでした。

まさに「ワンピース」の世界観が一コマで表現されている名シーンです。
このお気に入りの1枚をしばらく部屋に飾ります。


コメント
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