今回のお気に入りは、M8です。
「首都感染」に続いて高嶋哲夫の「M8」を読みました。
AMAZONの内容紹介を引用します。
=====
東京をマグニチュード8の直下型大地震が襲う!!
若手研究者・瀬戸口が東京直下型大地震を予知。
阪神大震災を同じく体験した三人の同級生たちそれぞれの葛藤を軸に、首都大地震を最新の研究を反映して完全シミュレーションした書き下ろし力作!
=====
科学データに基づきその道の専門家が推測した未来の歴史がそこにあります。
もし今、東京でマグニチュード8の直下型地震が発生したらどうなるのかを丁寧に描いています。
驚いたのは地震学のこと。
他の学問と違い予測することが仕事であり、勇気をもって予測しても、それが外れると立場を追われるという恐ろしい学問なのですね。
本書では10年前に立場を追われた学者と、地震予知に全精力をつぎ込む若き研究者が、東京直下地震が数日以内に発生することを予知します。
それを信じた東京都知事がパニックにならない程度の絶妙のさじ加減で采配を振るう場面は、なかなか見事なものです。
政治家が白でも黒でもない判断をする場面というのは、自らのためではなく、世のために行うものだと再認識しました。
まさに名奉行の三方一両損。
関係各位の痛手を最小化する知恵を出すのが政治家の役目なのです。
本書では消防や警察、自衛隊などの災害対応の様子や、いろいろな立場の被災者の心情が克明に描かれています。
特に後手後手にまわり厳しい判断を求められながらも頑張り続ける消防さんをはじめとする方々の姿に、現在コロナウイルス感染症と闘い続けている医療機関や介護施設の方々の姿が重なって見えました。
現実世界では政府は地震予知を諦め、30年以内の発生確率を発表するだけになりました。
本書のように数日もしくは数時間という単位で地震を予測することは、最新科学をもってしても不可能だということでしょう。
残念なことですが受け入れなくてはなりません。
ただ発災後の行政や市民の様子を本書から学び、仮想体験として記憶にとどめることは大切だと思います。
ここ札幌でも最大震度7の地震が発生することを想定して災害対策マニュアルが作られていますが、心のどこかで震度5以上の地震なんて来ないとみんなが思っていたはず。
しかし2年前に市内で震度6弱の地震が発生し、私自身も震度5強を体験しました。
いつか来るかもしれない震度7を想像し、日ごろから準備をするには、本書の読書経験は震度5強の経験と同じくらいの衝撃がありました。
月日と共に薄れる地震直後の気持ちを蘇らせる力が本書にはあります。
本書で知った未来の歴史を元に今一度、自助・共助・公助を具体的に考え直したいと思います。
そして著者の他の本も読もうと思います。
最後に著者か出版社に一言。
ガスタンクに冷却液を投下して爆発を防ぎ、直後に殉職した消防ヘリのパイロットが登場する場面がありますが、このガスタンクはLPGタンクではなくLNGタンクの誤りです。
これだけ見事な災害シミュレーション小説は今後もいろいろな立場の人々に読み継がれていくことでしょうから、早めに訂正した方が世のためになると思います。
「首都感染」に続いて高嶋哲夫の「M8」を読みました。
AMAZONの内容紹介を引用します。
=====
東京をマグニチュード8の直下型大地震が襲う!!
若手研究者・瀬戸口が東京直下型大地震を予知。
阪神大震災を同じく体験した三人の同級生たちそれぞれの葛藤を軸に、首都大地震を最新の研究を反映して完全シミュレーションした書き下ろし力作!
=====
科学データに基づきその道の専門家が推測した未来の歴史がそこにあります。
もし今、東京でマグニチュード8の直下型地震が発生したらどうなるのかを丁寧に描いています。
驚いたのは地震学のこと。
他の学問と違い予測することが仕事であり、勇気をもって予測しても、それが外れると立場を追われるという恐ろしい学問なのですね。
本書では10年前に立場を追われた学者と、地震予知に全精力をつぎ込む若き研究者が、東京直下地震が数日以内に発生することを予知します。
それを信じた東京都知事がパニックにならない程度の絶妙のさじ加減で采配を振るう場面は、なかなか見事なものです。
政治家が白でも黒でもない判断をする場面というのは、自らのためではなく、世のために行うものだと再認識しました。
まさに名奉行の三方一両損。
関係各位の痛手を最小化する知恵を出すのが政治家の役目なのです。
本書では消防や警察、自衛隊などの災害対応の様子や、いろいろな立場の被災者の心情が克明に描かれています。
特に後手後手にまわり厳しい判断を求められながらも頑張り続ける消防さんをはじめとする方々の姿に、現在コロナウイルス感染症と闘い続けている医療機関や介護施設の方々の姿が重なって見えました。
現実世界では政府は地震予知を諦め、30年以内の発生確率を発表するだけになりました。
本書のように数日もしくは数時間という単位で地震を予測することは、最新科学をもってしても不可能だということでしょう。
残念なことですが受け入れなくてはなりません。
ただ発災後の行政や市民の様子を本書から学び、仮想体験として記憶にとどめることは大切だと思います。
ここ札幌でも最大震度7の地震が発生することを想定して災害対策マニュアルが作られていますが、心のどこかで震度5以上の地震なんて来ないとみんなが思っていたはず。
しかし2年前に市内で震度6弱の地震が発生し、私自身も震度5強を体験しました。
いつか来るかもしれない震度7を想像し、日ごろから準備をするには、本書の読書経験は震度5強の経験と同じくらいの衝撃がありました。
月日と共に薄れる地震直後の気持ちを蘇らせる力が本書にはあります。
本書で知った未来の歴史を元に今一度、自助・共助・公助を具体的に考え直したいと思います。
そして著者の他の本も読もうと思います。
最後に著者か出版社に一言。
ガスタンクに冷却液を投下して爆発を防ぎ、直後に殉職した消防ヘリのパイロットが登場する場面がありますが、このガスタンクはLPGタンクではなくLNGタンクの誤りです。
これだけ見事な災害シミュレーション小説は今後もいろいろな立場の人々に読み継がれていくことでしょうから、早めに訂正した方が世のためになると思います。