猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

オデッセイ

2023-06-29 20:45:35 | 日記
2015年のアメリカ映画「オデッセイ」。

6人の宇宙飛行士が宇宙船ヘルメス号に乗り、火星での調査を行うこと
になるが、宇宙飛行士の1人、マーク・ワトニー(マット・デイモン)が
大砂嵐に巻き込まれ行方不明になる。助けようとしたメリッサ船長(ジ
ェシカ・チャスティン)も救助活動を断念し、クルーの命を優先させる
ため、死亡したと推測されたマークを置いて探査船を発進させ、火星を
去ってしまう。しかし奇跡的に死を免れていたマークは、酸素は少なく、
水もも通信手段もなく、食料は31日分という絶望的環境で、4年後に次
の探査船がやってくるまで生き延びようと、あらゆる手段を尽くしてい
く。

アンディ・ウィアーの小説「火星の人」をリドリー・スコット監督が映
画化したSFサバイバル。火星に調査に行った6人のクルーだったが、突
然の嵐に巻き込まれ、宇宙飛行士のマークは死亡したと皆に思われ、地
球に戻ってしまうが、マークは負傷していたものの生きていた。次の火
星探査機が来るのは4年後の予定で、マークはそれまで何とか生き延び
ようとする。食料は31日分あるとはいえ、それはクルー6人分の量なの
で、マークはごく少しずつ食べなければならなかった。
地球ではマークの死が報告され、NASAは国民に発表した。不慮の事故
とはいえマークを見捨てたという思いは、メリッサ船長や他のクルーた
ちの心に重くのしかかかっていた。マークは植物学者でもあり、じゃが
いもの栽培を始める。水素に酸素を加えて燃やし、水も確保する。やが
てじゃがいもは育ち、マークは喜ぶ。マークが言った「植物学者をなめ
るなよ」という言葉は笑える。マークは元々冗談が好きでユーモアがあ
って明るい性格なのだ。でなければこんな火星に1人きりというサバイ
バルはできなかったと思う。
NASAではマークの葬儀も執り行われるが、マークは火星探査機の残骸
をいじって、地球に自分の生存を伝えることに成功する。NASAは驚き、
マークと交信を始める。NASAは世界中から科学者を集結しマークの救
出を計画する。そしてクルーたちも救出ミッションを敢行しようとして
いた。しかし、NASAのテディ・サンダース長官(ジェフ・ダニエルズ)
はマーク1人の救出に他のクルーたちの命が危険にさらされることに対
して慎重だった。それでもクルーたちはマークを火星に置き去りにした
ことに心を痛めていたので、救出したいという気持ちを強める。
劇中マット・デイモンが激やせしてびっくりしたのだが、毎日じゃがい
もを少しずつしか食べていなかったら、やせるだろう。生存不可能かと
思われた絶望と孤独の中で、希望を失わないマークの姿は素晴らしかっ
た。マークは独り言でもよく冗談を言っていた。その前向きな性格が奇
跡を起こしたのだろう。終盤はとても感動的だった。ラストシーンも良
かったし、何よりマット・デイモンの演技が見事としか言いようがなか
った。


良かったらこちらもどうぞ。リドリー・スコット監督作品です。
グラディエーター


6月は私の誕生月なので、ケーキを食べましたア・ラ・カンパーニュ
のタルトです

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極道統一

2023-06-24 10:11:10 | 日記
2022年の中国・香港合作映画「極道統一」。

1997年、香港は返還を前に英政府、香港政府、黒社会それぞれの思惑
が渦巻き、大混乱に陥っていた。そんな中、黒社会のボスであるチョン
(サイモン・ヤム)は刑期を終えて戻ってきた側近ロク(リッチー・レン)
に重要な任務を託す。しかし実はロクは麻薬取引を調査する香港警察の
潜入捜査官だった。上流社会や警察組織とつながりながら、仁義なきポ
ジション争いが繰り広げられる黒社会で、ロクは暴力と汚職を撲滅する
ためにある決断をする。

返還前夜の香港を舞台に、黒社会に潜入した捜査官の戦いと葛藤を描い
た任侠ドラマ。黒社会のボス・チョンは引退して新しいボスを立てよう
としており、新ボスの座を狙う部下たちの間ではいさかいが起きていた。
チョンは皆から信頼されており、部下たちのこともかわいがっていたが、
年齢のことを考え、新しいボスを投票で決めようとしていた。そこへ3
年の刑期を終えて側近のロクが出所してくる。チョンはロクに重要な任
務を託すが、しかしロクの正体は、麻薬取引の真相を暴くため潜り込ん
だ潜入捜査官だった。
ロクは仁義と正義の間で選択を迫られるが、やがて自分以外にも内通者
がいるのではないかと疑い始める。中国・香港合作映画とはいえ舞台が
香港でメインキャストも香港俳優で、セリフも広東語なので香港映画と
いう感じ。香港映画といえばやっぱりアクションだ。カーアクションが
すごいし、炎に包まれた建物の2階から飛び降りたり、火のついた車を
走らせたり、迫力がある。近年のジャッキー・チェンの映画などと違っ
てちょっと古い感じがするのがまたいい。
香港の返還前って実際にああいうふうに混乱していたんだろうな、と思
う。イギリス政府、香港政府、警察、黒社会、上流階級が入り乱れてい
るし、人間関係もちょっとわかりづらい。もちろんよく観ていればわか
るのだが。残酷なシーンもあるにはあるが、R指定がついていないので
そうでもない。紳士然としていたあのイギリス人があんな曲者だったと
は…。他にもあいつはああいう奴だったのね、という意外性があってお
もしろい。黒社会の仁義とは私にはもちろんわからないが、黒社会で真
面目に生きている(変な表現だが)人々にとっては重要なのだろう。
主演のサイモン・ヤムはお久しぶりな感じ。この人は昔多くの香港映画
で刑事役をしていて、「香港1刑事役が似合う俳優」と言われていた。
本作ではヤクザのボス役だった。香港映画界の重鎮サモ・ハンもちょい
役で出ている。1986年の名作香港映画「男たちの挽歌」の主題曲であ
る、レスリー・チャンの「當年情」が挿入歌やエンディング曲として使
われており、感激した。いい曲だなあ。本作のサム・ウォン監督は「男
たちの挽歌」みたいな映画を作りたかったのかな。


薄暗くて見にくいですがベルとノエルです

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トム・アット・ザ・ファーム

2023-06-17 22:01:03 | 日記
2013年のカナダ・フランス合作映画「トム・アット・ザ・ファーム」。

モントリオールの広告代理店で働くトム(グザヴィエ・ドラン)は、交
通事故で死んだ恋人のギョームの葬儀に出席するために、ギョームの
実家である農場に向かう。そこには、ギョームの母親アガット(リズ・
ロワ)と、ギョームの兄フランシス(ピエール=イヴ・カルディナル)
が2人で暮らしていた。トムは到着してすぐ、ギョームが生前、母親
にはゲイの恋人である自分の存在を隠していたばかりか、サラ(エヴ
リーヌ・ブロシュ)というガールフレンドがいると嘘をついていたこ
とを知りショックを受ける。更にトムはフランシスから、ギョームの
単なる友人であると母親には嘘をつき続けることを強要される。

カナダの劇作家ミシェル・マルク・ブシャールによる戯曲をグザヴィ
エ・ドランが映画化したサイコ・サスペンスであり人間ドラマでもあ
る。トムはゲイの恋人のギョームが交通事故で死に、葬儀に参列する
ためにギョームの実家のあるケベックの田舎町を訪れる。実家はギョ
ームの母親と兄で農場を営んでいた。母親アガットはトムを歓迎する
が、彼女は「サラはどうして来てくれないのかしら」と不満を口にし、
トムには何のことかわからない。ギョームは自分がゲイであることを
母親に隠し、サラというガールフレンドがいると嘘をついていたのだ
った。トムは事情を知っているフランシスからただの友達だというこ
とにしろと強要される。
葬儀の時、トムはギョームの一家が町の人々から疎外されているよう
な何とも言えない雰囲気を感じる。トムはフランシスから弔辞を述べ
ろと言われるが、良い弔辞が思い浮かばなかったトムは弔辞の代わり
に音楽を流し、後でフランシスに殴られる。フランシスは高圧的で暴
力的な男だった。けれどもトムはフランシスにギョームの面影を感じ、
帰らずに農場へとどまる。アガットはトムにとても優しく接し、トム
は悩んだ末サラに来るように連絡する。ギョームの恋人としてやって
きたサラにアガットは喜び、4人は楽しい時間を過ごす。
肝心のギョームは全く登場せず、俳優もキャスティングされていない。
ギョームの一家に不審なものを感じたサラはトムに一緒に帰ろうと言
うが、トムは帰ろうとしない。トムがフランシスに対して嫌悪感を抱
きながらも帰ろうとしないのは何故なのか。ストックホルム症候群の
ようなものなのだろうか、と思った。トムはフランシスの匂いや声に
ギョームを重ね、どこか惹かれてもいる。それがトムを引き止めてい
るのかもしれない。
トムはバーに行った時、バーテンダーに「フランシスは出禁だ」と言
われる。理由を聞くが「酒の1杯じゃ教えられないな」と言われ、も
う1杯注文する。昔ある男がギョームをゲイじゃないかとからかった
時、フランシスが激昂してその男の口を耳元まで裂いたのだと聞かさ
れ、トムは驚く。男にはひどい傷痕が残ったのだという。フランシス
はサイコパスなのではないだろうか。あまりにも暴力的すぎる。そん
な話を聞かされても帰ろうとしないトムの心情はどういうものだった
のか、私にはよくわからなかった。
ラスト近くでトムがガソリンスタンドで働いている男の口から耳まで
ひどい傷痕があるのを見るシーンが印象的。あの男はフランシスに人
生を滅茶苦茶にされたのだ。おもしろかったのだが、私にはよくわか
らないところもあった。でもドランの脚本や演出は優れていると思っ
た。ドランらしい映画と言えるのかもしれない。ネットのレビューに
「ラストシーンでフランシスが着ているジャケットに『U.S.A.』と
書かれているところや、エンディング曲の歌詞にアメリカ批判を感じ
た」と書いている人がいたのだが、私にはそこまで感じ取れなかった。


良かったらこちらもどうぞ。グザヴィエ・ドラン監督作品です。
胸騒ぎの恋人
わたしはロランス
Mommy/マミー
たかが世界の終わり
ジョン・F・ドノヴァンの死と生
マティアス&マキシム


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SEOBOK /ソボク

2023-06-12 20:26:03 | 日記
2021年の韓国映画「SEOBOK /ソボク」。

余命宣告を受けた元情報局員の男ミン・ギホン(コン・ユ)は、国家の極秘
プロジェクトによって誕生した人類初のクローン、ソボク(パク・ボゴム)
の護衛を命じられる。ところが任務開始早々、何者かの襲撃を受ける。何
とか生き延びた2人だったが、人類に永遠の命をもたらす可能性を秘めた
ソボクの存在を狙い、その後も様々な勢力が襲ってくる。危機的な状況の
中で逃避行を繰り広げるギホンとソボクは、衝突を繰り返しながらも徐々
に心を通わせていく。

クローン人間をテーマにしたSFサスペンス・アクション。脳腫瘍により
余命宣告を受け、死の恐怖と向き合う元情報局員ギホンは、国の極秘プロ
ジェクトによって誕生した人類初のクローン「ソボク」を護衛する任務に
就く。最初は気乗りしなかったギホンだが、ソボクの骨髄ではiPS細胞が
常に作られており、病気で死ぬことはないこと、また、人間の病気を治癒
させる力があると聞かされたギホンは、臨床実験を受けさせてやろうとい
う言葉にすがるい思いで仕事を承諾する。
ところが任務早々に何者かの襲撃を受け、からくも逃げ延びたギホンとソ
ボクだったが、その後も次々と命を狙われる。永遠の命を持っている可能
性のあるソボクは人類にとって救いにも災いにもなり得るのだった。しか
し車で移動中、ソボクが突然血を吐き、ギホンは研究所に電話をする。ソ
ボクは一般の人間の倍のスピードで成長するため、24時間に1回抑制剤を
打たねばならず、研究所に戻るよう言われる。ソボクが抑制剤を打たれて
いる様子を見てギホンは「残酷すぎませんか」と言うが、研究員は「残酷
?あれは人間じゃありませんよ」と答え、研究者ってこんなものなのだろ
うかと思った。
研究所の中で生まれ育ち、外の世界を知らないソボクとギホンは何かと衝
突する時もあったが、少しずつ気持ちを通じ合わせていく。やがてソボク
はギホンのことを「兄さん」と呼ぶようになり、「僕は死ぬ訳にはいかな
い。でないと兄さんが助からない」と思いやりを見せる。ソボクは見た目
20代前半くらいなので、ギホンと一緒にいると兄弟のようだ。そしてギ
ホンは脳腫瘍による激しい頭痛に悩まされていた。ギホンが「腹が減って
ないか」と聞き、ソボクが「減ってます」と答えるのを観て、「クローン
人間ってお腹空くんだ」と思った。
初めて食べたカップ麺がとてもおいしくて、ソボクが続けて5個くらい食
べてしまうシーンは笑えた。ギホンは「もうやめておけ」と注意する。そ
して2人はいろんな勢力(アメリカの軍隊だったり韓国の軍隊だったり)に
襲撃され続けるが、何とソボクはサイコキネシス(念動力)まで使え、敵を
返り討ちにしてしまう。ギホンは銃で対処するが、コン・ユのようなハン
サムな人が銃を構えた姿ってどうしてあんなにかっこいいのだろう。ソボ
クが言った「死ぬってずっと眠るということですか」や、「死ぬのは怖い
です。でも死なないのも怖いです」というセリフが印象的だった。SFサ
スペンス・アクションだが、悲しい物語だった。



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PIG/ピッグ

2023-06-07 22:03:40 | 日記
2021年のアメリカ映画「PIG/ピッグ」。

オレゴンの森の奥深くで1人孤独に暮らす男ロビン・フェルド(ロブ/
ニコラス・ケイジ)はトリュフ狩りをする忠実なブタと住んでいた。
ロブはトリュフバイヤーの青年アミール(アレックス・ウルフ)と希少
で高価なトリュフを売買し、わずかな物資で生計を立てていたが、あ
る夜何者かに襲われ、大切なブタが強奪されてしまう。ロブはブタを
奪還するためにポートランドの街まで下り、アミールと共に手掛かり
を捜す。ロブはブタの行方を辿る中、故郷でもあるポートランドで自
身の過去と向き合うことになる。

ニコラス・ケイジが愛するブタを盗まれ、捜しに行く男を演じた人間
ドラマ。伸びっ放しのボサボサ頭と顔全体を覆ったヒゲのため、パッ
と見ではニコラス・ケイジとはわからない。ロブはオレゴンの森の奥
の小屋で、1匹のブタと一緒に暮らしていた。このブタは優秀なトリ
ュフ・ハンターで、質の良いトリュフをよく見つけ出していた。ある
日小屋の近くに車が近づき、ロブが様子を見に行くと、何者かに暴行
を受けてブタが誘拐されてしまう。ロブは若いトリュフバイヤーのア
ミールと共に、彼のつてを頼ってブタの行方を追う。
ロブはアミール経由で犯人のジャンキー集団の情報を得ることができ
たが、彼らの元に辿り着いた時には既にブタはポートランドに運び出
されていた。ロブはアミールと共にポートランドへ向かうが、ロブが
ポートランドに詳しいことにアミールは驚く。ロブは「昔住んでいた
んだ」と言う。ロブはポートランドで知り合いから知り合いへと渡り
歩き、「俺のブタが盗まれた。行方を知らないか」と尋ねる。つまり
ロブが「俺のブタを返せ」と捜し回る物語で、少し退屈な感じもした
が、最後まで観るといい映画だった。
ロブが昔ポートランドという都会に住んでいたのに、何故今は森の奥
で世捨て人のような暮らしをしているのかは、途中からわかってくる。
そしてアミールにはあまり仲の良くない父親がおり、父親は実業家で
街の権力者である。アミールが食事をしながらロブに自分の子供の時
の話をするシーンがあるが、それが切ない。アミールの両親はよく2
人でディナーを食べに行ったが、帰宅する時はいつもケンカをしてい
た。それがある店に行った時だけは2人ともとても機嫌が良くて、そ
の日のメニューの話を後々よくしていた。しかし母親は自殺した、と
話す。
けれども後半で、母親は実は自殺を図ったが死んではおらず、長年植
物状態であることがわかる。アミールが母親の病室の扉の外から母親
に話しかけるシーンは悲しい。やがてアミールの両親のこととロブの
意外なつながりがわかるのである。ロブもアミールもアミールの父親
もずっと悲しい思いを抱えながら生きてきた。そしてロブが盗まれた
ブタに執着するのは「愛」があるからである。ロブは「あいつがいな
くても自分でトリュフを採ることはできる。だけど俺はあいつを愛し
ているんだ」と言う。人がペットの犬や猫を愛しているように、ロブ
はブタを愛しているのだ。大切なブタなのだ。
ニコラス・ケイジは近年借金のために出演作を選んでいられないと言
われているが、この映画は良かったし、やっぱり演技がうまいと思う。
悲しいが感動的な映画だった。


星乃珈琲のパンケーキを食べました。おいしゅうございました





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