猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

ロフト.

2022-07-27 22:08:02 | 日記
2008年のベルギー映画「ロフト.」。

建築家のビンセント(フィリップ・ペータース)とその友人の精神科医クリス
(ケーン・デ・ボーウ)、ルク(ブルーノ・ヴァンデン・ブルーク)、マルニク
ス(ケーン・デ・グラーヴェ)、クリスの弟のフィリップ(マティアス・スー
ナールツ)は、妻や恋人に隠れて新築マンションの最上階にある豪華なロフ
トルームを情事部屋として共有していた。ある日、ルクが部屋に入ると、ベ
ッドに手錠をかけられ血まみれで死んでいる女がいた。慌てて部屋に集まっ
た5人の男たちは、互いのアリバイを探りながら犯人捜しを始める。

ベルギーで大ヒットしたミステリー映画。5人の男たちが共有していた秘密
の情事部屋で発見された女性の全裸死体を巡って、互いに疑心暗鬼になりな
がらも犯人を捜そうとする様子を描いている。情事部屋って、「男ってやつ
は…」と言いたくなるが、おもしろかった。物語は男たちがそれぞれ警察で
事情聴取を受けているシーンから始まる。女性刑事は呆れている。ロフトル
ームを設計したのは建築家のビンセントである。部屋の鍵は5人だけが持っ
ており、複製のできない特殊な鍵なので、女性を殺した犯人は彼らの中の誰
かに限られるのだ。
刑事たちは1人1人を取り調べていくが、全員が怪しく思える。夫婦関係が
冷え切っている者もいれば仲がいい者もいるし、フィリップは結婚したばか
りと色々だ。時系列が行ったり来たりで、死体のそばで5人で話し合ってい
るシーンとそれ以外のシーンが交互に描かれるが、わかり辛くはない。5人
のキャラクター設定もおもしろく、同じようなシーンを繰り返しているので
何だか退屈しそうに見えて意外に退屈しない映画だ。1人特にゲスな男がい
て、観ていて「コイツは…」と呆れるというか。
血まみれの全裸死体が誰なのか、なかなか明かされない。全員知らないと言
っているが、誰かは知っている者がおり、殺した者がいるのだ。男たちの腹
の探り合いがおもしろい。死体の女性が誰なのか判明してからはおもしろさ
を増していく。ただ男性も女性も登場人物が多いので、人間関係が少し混乱
気味にはなった。5人の男たちも本当に最低な奴、そうでもない人、基本的
には悪い人ではない人と色々わかってきて、興味深い。でも悪い人ではない
のにどうして不倫するのだろうというシンプルな疑問はあるのだが。
事件の真相を私はあることを考えていたのだが、全然違っていた。そして最
後はちょっと悲しい。こういうふうに決着するんだなあ…そもそもこの人た
ちが浮気しなければ起こらなかった事件なのに、と思った。中には愛妻家の
人もいるのに、情事部屋に参加するとは。男の性なのだろうか。




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ケース39

2022-07-23 22:34:00 | 日記
2009年のアメリカ・カナダ合作映画「ケース39」。

児童福祉局でソーシャルワーカーとして働くエミリー・ジェンキンス(レネー・
ゼルウィガー)は38件の案件を抱えていて多忙だったが、新たに39件目の案件
を割り振られ、リリーことリリス・サリヴァン(ジョデル・フェルランド)という
10歳の少女を担当することになる。ある日サリヴァン夫妻がリリーを殺そうと
する事態が発生し、夫妻は逮捕され、エミリーは里親が見つかるまでの間リリー
を預かることになる。するとやがて、エミリーの周囲で不審死が続出。一連の事
件はリリーの仕業だとエミリーは気づく。

エスター」みたいな映画かなと思ったのだが、だいぶ違っていた。児童福祉局
のソーシャルワーカーであるエミリーは、両親からDVを受けていると思われる
少女・リリーを担当することになる。面接をすると、両親の様子は確かに変だっ
た。エミリーは「怖いことがあったら連絡して」と言って、自分の電話番号を書
いたメモをリリーにこっそりと渡す。ある夜リリーから電話がかかり、エミリー
は急いで駆け付けるが、両親はオーブンにリリーを閉じ込めて焼き殺そうとして
いた。エミリーはリリーを必死に助け出し、両親は逮捕されるが精神病院に収容
される。
リリーはエミリーに懐き、一緒に暮らしたいと言い出し、エミリーは里親が見つ
かるまでの間ならとリリーを引き取る。リリーは子供たちばかりのグループカウ
ンセリングを受けていたが、ある日一緒にカウンセリングを受けている少年が両
親を惨殺するという事件が起きる。おとなしい少年の犯行とは思えなかったが、
少年が電話がかかってきて両親を殺せと言われたと言う。その電話はエミリーの
家からかけられていたことがわかるが、もちろんエミリーはかけておらず、リリ
ーもかけていないと主張する。しかし少年は電話はリリーからだったと言い、エ
ミリーはリリーに不審なものを感じる。
リリーが無邪気でかわいい様子の時と、不気味な様子の時があって怖い。子供を
使ったホラー映画は大体怖いことが多いと思う。「子供は無垢な存在」という前
提があるので、そうでない時とのギャップが怖いのだ。少年が両親を殺害した事
件に始まり、カウンセラーの男性や刑事やリリーの両親が異常な死に方をする。
一連の事件はリリーの仕業だと思うようになるエミリーだが、気づくのがちょっ
と早いのではないかと思った。そんなにすぐリリーを疑うものだろうか。被害者
たちは皆電話を受けてから発狂したり、幻覚を見て自滅したりしている。エミリ
ーは精神病院でリリーの父親と面会した時、「リリーを殺すしかない。俺たちは
10年も耐えたんだ」と言われる。
カウンセラーが死ぬ際、大量の蜂が出てきてゾッとした。幻覚なのだが、耳や鼻
や口から蜂が出てきて、背中も蜂がびっしりである。虫が嫌いな人は注意しなけ
ればならない(私もだが)。リリーの両親はよく10年も耐えられたものだと思う。
普通とっくに気がおかしくなってしまいそうだ。ラストはあんなに簡単でいいの
かな?と思った。エミリーは何か罪に問われてしまうのではないかと気になった。
ところでレネー・ゼルウィガーはあまりホラー映画に向かないと思うのだが。顔
立ちのせいだろうか。「エスター」とどちらが怖いかと言われると、怖さの種類
が全然違うので比べにくいが、本作もなかなか怖くておもしろかった。


ノエルでぶい。

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ピエロがお前を嘲笑う

2022-07-18 22:06:09 | 日記
2014年のドイツ映画「ピエロがお前を嘲笑う」。

数々のハッキング事件を起こした上、殺人容疑までかけられている天才ハッカー
の青年・ベンヤミン(トム・シリング)が警察に出頭する。ベンヤミンは捜査官の
ハンネ(トリーヌ・ディルホム)にこれまでの経緯を語る。彼の話によると、世界
をハッキングすることを夢見る野心家のマックス(エリアス・ムバレク)に才能を
買われ、その仲間のシュテファン(ヴォータン・ヴィルケ・メーリング)やパウル
(アントニオ・モノー・Jr.)と共にハッキングチーム"CLAY"を結成。だがその行
動は、ヨーロッパ警察ユーロポールや他のハッカーチームの関心を引く結果とな
った。更にベンヤミンが盗んだ情報によって殺人事件を引き起こしてしまい、今
度は自分が狙われていると告白する。ハンネはベンヤミンの供述に基づいて捜査
を始めるが、証言の内容と食い違う点が次々と明らかになってくる。

犯罪サスペンス。あるアメリカ映画に似ているのだが、そのタイトルを書くとネ
タバレになってしまうので、書かないでおく。そのアメリカ映画はラストでどん
でん返しがあるのだが、本作はどんでん返しが2度あり、痛快な感じ。大学では
変人扱いされ友達もなく、好きな女子学生にも相手にされないベンヤミンは、実
は天才ハッカーだった。彼女が欲しがっている大学の試験問題を盗むために大学
のサーバーに侵入するが、あっけなく逮捕される。初犯のため社会奉仕活動を命
じられるが、そこで知り合ったマックスに才能を見込まれ、マックスの仲間のシ
ュテファンとパウルを紹介され、"CLAY"というチームを組む。カリスマ的な存
在のマックスにベンヤミンは憧れる。
CLAYはドイツ経済界の管理システムをハッキングし始めるが、それは危険な世
界へ足を踏み入れることとなり、彼らは警察とマフィアの両方から追われるよう
になる。主人公のベンヤミンを始めとするCLAYのメンバーが個性的でおもしろ
い。映像もスタイリッシュだ。私はハッキングとかさっぱりわからないが、ハッ
キングに関する映画をいくつか観たことがあって、よくわからないままでも結構
おもしろい。それらの映画はやはりキャストの演技がいいのだと思う。ベンヤミ
ン役のトム・シリングも演技がとてもうまい。大学では見下されているベンヤミ
ンが実は天才ハッカーだなんて小気味いいではないか。
ベンヤミンは警察に出頭するが、捜査官のハンネはとても優秀な人で、ベンヤミ
ンの証言内容に矛盾点を見つけていく。ベンヤミンとハンネの知恵比べのようだ。
ハンネはベンヤミンの生い立ちを調べていくうちに、ある事実を知る。そこでま
ず1回目の驚き。あ~そうだったのか!と納得する。そしてラストシーンでもう
1度驚かされる。えええー!という感じである。とても手の込んだ物語で、脚本
がよくできていると思った。えっ、最後はあの人まで加わるの?と思った。犯罪
映画なのだが、なんとなくベンヤミンたちを応援してしまいたくなる気になって
くるから不思議。ハンネの全てを悟ったような表情も良かったし、おもしろかっ
た。




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ハイヒールを履いた女

2022-07-13 22:23:39 | 日記
2012年のイギリス・ドイツ・フランス合作映画「ハイヒールを履いた女」。

かつて結婚に失敗した独身女性アンナ(シャーロット・ランプリング)は、娘に
勧められて参加したお見合いパーティーでジョージ(ラルフ・ブラウン)という
男性に出会う。すっかり意気投合した2人はジョージの自宅マンションで一夜
を過ごすが、翌朝、ジョージは死体となって発見される。事件を捜査するため
現場を訪れた刑事バーニー(ガブリエル・バーン)は、そこですれ違ったアンナ
のことが気になり、尾行を始める。

サスペンス・ミステリー。夫と離婚したアンナは、娘と孫娘と一緒に暮らして
いた。娘も離婚したのか未婚の母であるようだ。アンナはある夜娘に勧められ
てお見合いパーティーに参加する。そこでジョージという男性と仲良くなり、
彼のマンションについて行く。しかし翌日ジョージは頭部を強打され死んでい
るのを発見される。通報を受けた刑事のバーニーが現場に駆け付けるが、そこ
でアンナとすれ違う。アンナはエレベーターに忘れた傘を取りに来ており、バ
ーニーとちょっと言葉を交すが、バーニーにはアンナの印象が強く残る。アン
ナは電話ボックスから誰かに電話をかけていた。バーニーはアンナの車のナン
バーから身元を調べる。
ジョージを殺したのはアンナなのか?というのが物語の肝心な部分なのだが、
謎めいたシーンが多くておもしろかった。アンナは娘に「お見合いパーティー
はどうだった?」と聞かれ、失敗だったと答える。それでもアンナは何度かパ
ーティーに行く。こういう中高年向けのお見合いパーティーってあるんだな、
と思った。ジョージの事件を捜査しているバーニーは、アンナに対して怪しい
という思いだけではなく、心惹かれてもいた。そして自らお見合いパーティー
に参加し、アンナに声をかける。アンナは1度バーニーに会っていることを覚
えていなかった。アンナにますます興味を持ったバーニーは単独行動が多くな
り、仲間の刑事たちから不審がられる。
アンナが何度も電話ボックスを利用するシーンが印象的だ。もう携帯電話があ
る時代だが、アンナは持っていないようだ。大抵は自宅に電話をかけ、仕事に
行っている娘に留守電メッセージを残しているようである。アンナが犯人なの
かはなかなかわからないが、ある謎は割と早いうちにわかる。あ~そういうこ
とだったのね、という感じ。それだけでもアンナがとても孤独な女性なのだと
推察できる。それはあまりにも痛ましく悲しい出来事だった。前半のアンナの
あるセリフが伏線になっていて、後でそういうことかと気づかされる。
この映画の時のシャーロット・ランプリングは多分60代半ばくらいだが、美
脚でハイヒールを履いた立ち姿がきれいだった。この人は影のある女性の役が
本当によく似合う。それに本作では主演だが、ちょっとしか登場しない脇役の
時でも強い印象を残すのだ。性格が悪い役の時でも同様で、画面を牛耳ったよ
うになるのがすごい。ラストでバーニーにしがみついて叫びのような泣き声を
あげるのが痛々しい。




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ベイビー・ブローカー

2022-07-09 22:32:48 | 日記
2022年の韓国映画「ベイビー・ブローカー」を観に行った。

古びたクリーニング店を営みながらも借金に追われるサンヒョン(ソン・ガンホ)
と、赤ちゃんポストのある施設で働く児童養護施設出身のドンス(カン・ドンウ
ォン)には、「ベイビー・ブローカー」という裏稼業があった。ある晩、2人は
若い女ソヨン(イ・ジウン)が赤ちゃんポストに預けた赤ん坊をこっそりと連れ去
る。しかし、翌日思い直して戻ってきたソヨンが、赤ん坊がいないことに気づい
て警察に通報しようとしたため、2人は仕方なく赤ちゃんを連れ出したことを白
状する。「赤ちゃんを育ててくれる家族を見つけようとしていた」という言い訳
に呆れるソヨンだが、成り行きから彼らと共に養父母探しの旅に出ることになる。
一方、サンヒョンとドンスを現行犯逮捕するため刑事のスジン(ぺ・ドゥナ)とイ
(イ・ジュヨン)は尾行を続ける。

是枝裕和監督による韓国映画。第75回カンヌ国際映画祭でソン・ガンホが韓国
人俳優初の男優賞を受賞し、またエキュメニカル審査員賞も受賞した。赤ちゃん
ポストって韓国にもあるんだなあ、というのが最初の印象だ。クリーニング屋の
サンヒョンと、赤ちゃんポストがある教会の施設で働くドンスは、ベイビー・ブ
ローカーを裏稼業としていた。子供を欲しがっている夫婦に違法で赤ちゃんを売
るのだ。ある雨の晩、ソヨンという若い女がポストの前に赤ちゃんを置いていき、
サンヒョンとドンスを追っていた刑事のスジンはあのままでは子供が死んでしま
うと思い、ポストの中に入れた。
その後1晩街をうろついたソヨンは、思い直してポストに戻るが、子供はいなか
った。警察へ電話をかけようとしているところにサンヒョンとドンスが現れ、ブ
ローカーであることを白状せざるを得なくなった。そして養父母を見つけるため
にサンヒョンとドンスとソヨンはオンボロのバンで旅をすることになる。これは
ロードムービーという感じだ。ドンスは自分も母親に捨てられ、児童養護施設で
育ったため、赤ん坊を捨てたソヨンのことを嫌っており、2人は度々口論になる。
彼らを尾行する刑事のスジンは「捨てるなら産むな」とつぶやく。
「産むのをやめること」と「産んで捨てること」はどちらが罪深いのだろう。私
は後者だと思うのだが、堕胎を法律で禁止している国もあるし、難しい問題なの
かもしれない。3人は偽の養父母希望者(転売しようとしている)に引っ掛かりそ
うになったりしながら、旅を続ける。途中でドンスが立ち寄った自分の出身の児
童養護施設から少年が脱走し、バンに忍び込んでおり、話を全部聞かれていたた
め少年も連れていく羽目になってしまう。そして4人での旅になる。赤ん坊も入
れれば5人だが。
ドンスとソヨンは和解するが、ソヨンは手放すつもりのためか赤ん坊の世話をし
ようとしない。大体ソヨンは生活のために売春婦をしていたのに、何故産んだの
だろう。妊娠中は仕事にならなくて困るだろうに。更に子供の父親を殺してもい
るのだ(厳密には傷害致死)。刑事が言った「捨てるなら産むな」という言葉が重
く感じられる。映画自体は割とコミカルなシーンも多く、テーマの割に暗くはな
い。是枝監督の代表作の1つである「誰も知らない」のような痛ましさはなく、
緩い感じ。キャストの演技は皆素晴らしいのだが、そんなにおもしろいとは思わ
なかった。ソヨンがずっと嫌いだった。赤ん坊を捨てたくせに態度が大きいし生
意気だし。それにしても是枝監督はどうして韓国映画として作ったのだろう。日
本映画ではダメだったのかな。私はカン・ドンウォンが見られたのでいいけど。




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