猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

鬼と獣

2023-02-25 22:22:56 | 日記
2022年の韓国映画「鬼と獣」。

犯罪組織・ペクジョン派の殺し屋ドゥヒョン(チョ・ドンヒョク)は「鬼」
と呼ばれて恐れられる一方で、妻と娘を心から愛していた。ある日、ドゥ
ヒョンは弟分ヨンミン(イ・ワン)が犯した殺人罪を被って逮捕される。模
範囚として刑期を務め上げたドゥヒョンは、出所後は裏社会から足を洗っ
て真面目に働き、妻と娘を遠くから見守っていた。一方、ヨンミンはドゥ
ヒョンへのうしろめたさを抱えながらも、組織のトップにのし上がってい
たが、ドゥヒョンの出所を知って動揺する。

かつて固い絆で結ばれた男たちが血で血を洗う抗争へと突き進んでいく姿
を描いたアクション・サスペンス。裏社会で暗躍する組織ペクジョン派に
は鬼と呼ばれる殺し屋ドゥヒョンがいた。誰もが恐れる殺し屋としての姿
とは裏腹に、妻と娘を愛してやまなかった。ある日、組織のトップの命令
で、できて間もない事務所をドゥヒョンを「兄貴」と呼ぶヨンミンと襲撃
し、2人で全滅させて逃走した。警察はこの事件も「鬼」が犯人と推定し
捜査を始め、ヨンミンの行った殺人でドゥヒョンが逮捕されてしまう。
ヨンミンは刑務所に何度か面会に訪れるが、ドゥヒョンは拒否し、ヨンミ
ンは彼が怒っていると思う一方、ヨンミンは裏社会の力を借りてのし上が
っていく。数年後ドゥヒョンは出所し、前科者を雇ってくれる会社で働き
始めるが、行方知れずの妻子のことを思って悩んでいた。ドゥヒョンは逮
捕の際に知り合ったチョ刑事に妻子を捜してくれるよう頼むが、その見返
りとしてヨンミンの会社を捜査するのを手伝ってくれと言う。しかしドゥ
ヒョンはもう足を洗ったからできないと断る。それでもチョ刑事は妻子の
住所をこっそりと調べてくれた。
ドゥヒョンは妻の経営する美容院を訪れ、明るい少女に育った娘を見てホ
ッとする。ドゥヒョンが娘に近づいたことを知った妻は、娘を思うならも
う会わないで欲しいと言う。それでももう1度娘に会いたかったドゥヒョ
ンは、娘の学校帰りを待ち伏せし、腕時計をプレゼントする。妻も自分の
美容院でドゥヒョンの髪をカットし、2人の間のわだかまりは消える。妻
はドゥヒョンが逮捕された後渡米して再婚したが、娘にはアメリカも再婚
相手も合わずに、戻ってきたのだという。
ドゥヒョンのアクションシーンは最初の方だけでしばらくないのだが、後
半でまた堪能できる。さすが韓国映画というか、血みどろシーンが多い。
この映画の登場人物でとにかく憎たらしいのがヨンミンの娘。ドゥヒョン
の娘と同級生なのだが、ワガママで意地悪で傲慢でいじめグループのリー
ダー格だ。ヨンミンが溺愛して好き放題に育てたためにああなったのだろ
う。ドゥヒョンの娘はいじめをやめさせるような正義感のある子になって
いた。ヨンミンの娘のような子が大人になってナッツ姫みたいになるんだ
ろうなあと思った。
後半のアクションシーンはなかなかすごい。チョ・ドンヒョクとイ・ワン
のイケメン対決という感じ。何というか全体的な雰囲気が香港ノワールの
名作「男たちの挽歌」に似ている。影響を受けたのかリスペクトなのか。
まあ「男たちの挽歌」にはとても敵わないが、割とおもしろかった。


我が家のニャンズ

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天上の花

2023-02-21 22:07:01 | 日記
2022年の日本映画「天上の花」を観に行った。

萩原朔太郎(吹越満)を師と仰ぐ青年・三好達治(東出昌大)は、朔太郎の
末妹・慶子(入山法子)に思いを寄せるが、貧乏書生と言われ拒絶されて
しまう。10数年後、慶子が夫と死別したことを知った達治は、妻・智
恵子(関谷奈津美)と離縁して彼女と結婚。太平洋戦争の真っただ中、達
治と慶子は越前三国でひっそりと新婚生活を送り始めるが、潔癖な人生
観を持つ達治は、奔放な慶子に対する一途な愛と憎しみを制御できなく
なっていく。

萩原朔太郎の娘・萩原葉子の小説「天上の花 三好達治抄」を映画化。
昭和の初め頃、萩原朔太郎の弟子とも言える三好達治は、詩はまだ売れ
ておらず、フランス語の翻訳で何とか生計を立てていた。ある時達治は
朔太郎の末妹の慶子に一目惚れをする。朔太郎の妹4人は皆美人と評判
だったが、慶子は姉たちとは違って華やかなタイプの美人だったがわが
ままで、23歳にして2度の離婚を経験していた。達治は慶子に求婚する
が叶わず、慶子は詩人・佐藤惣之助と結婚、達治も佐藤智恵子と結婚し
2児を設けた。
1930年頃から達治の詩集は人気が出始める。妻子と慎ましく暮らして
いたが、慶子の3人目の夫が死去したことにより達治は再び慶子へ交際
を求める。やがて達治は智恵子と離婚し、慶子と三国で同棲を始める。
達治が慶子と初めて会った時、朔太郎は慶子のことを「さもしくてわが
ままだ」と言っていたので、朔太郎は慶子のことがあまり好きではなか
ったのかもしれない。妹の本質を見抜いていたのだろう。それでも達治
は「でも美しいです」と言う。
物語の中で慶子はよく美しいとかきれいとか言われていたが、私は慶子
を(というか慶子役の入山法子を)美人だとは思わなかった。洋画でも邦
画でも美女役が美女でなかったらがっかりする。それ以来達治の慶子に
対する16年にも亘る片思いが始まる。慶子は23歳の若さで2度も結婚、
離婚を経験しており、更に3度目の結婚もしているので、少し男性に対
してだらしないタイプなのではないかと思った。そういう女性を16年
間思い続けた達治は良く言えば純粋、悪く言えば女性の趣味が悪い気が
する。
不良っぽい(ワルっぽい)男性に惹かれる女性もいるように、慶子のよう
に奔放でワガママな女性に惹かれる男性もいるのかもしれない。しかし
達治と慶子の同棲生活はうまくいかなかった。達治が慶子に手を上げる
ようになるのだ。慶子だけでなく達治もまたワガママだった。芸術家と
いうのはそういうものかもしれないが。達治は慶子に対して愛と憎しみ
を感じ、次第に感情を制御できなくなっていき、DVがひどくなってい
く。結局幸せにはなれないタイプの2人だったのだろう。
萩原朔太郎や三好達治は名前くらいでよく知らないのだが、こういう人
たちだったんだなあ、ということがわかって興味深かった。東出昌大は
長身なので着物がよく似合うと思う。漫画家の浦沢直樹がちょい役で特
別出演しており、本業以外にも色々する人だけど、俳優までやるんだ、
と思った。



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レベル・サーティーン

2023-02-17 21:38:32 | 日記
2006年のタイ映画「レベル・サーティーン」。

セールスマンのプチット(クリサダ・スコソル・クラップ)は、ライバルに
顧客を奪われ、母親からは弟の学費を要求され、会社から突然クビを言い
渡されてしまい、借金を抱えて破産寸前になる。そんな時何者かから電話
がかかってきて、13のゲームに参加してクリアすれば、3億円の賞金が獲
得できる権利を得たと言われる。初めはいたずらかと思ったプチットだっ
たが、ゲームをクリアするたびに口座に少しずつ金が振り込まれるのを確
認し、ゲームを続けることにする。

闇のネットゲームに参加した青年が、過酷な試練によって人間性を失って
いく姿を描いたサスペンス。はっきり言って気持ちの悪い映画だが、割と
おもしろかった。タイ映画は何作か観ているが、オカルトものが多いので、
こういう奇妙なサスペンスは初めてだった。楽器セールスマンのプチット
はとことん不運が続き、破産寸前にまで追い込まれていた。そこへ携帯電
話に着信があり、13のゲームをクリアすれば最終的に3億円の賞金が口座
が振り込まれると言う。電話の相手はプチットが今金に困っていることだ
けでなく、出身大学や専攻など、何もかも知っていた。
プチットは友人の誰かのいたずらだろうと思うが、最初のゲーム「そこに
ある新聞紙でハエを殺すこと」で、やってみると実際に口座にいくらかの
金が振り込まれており、驚く。電話の相手はゲームを続けるかどうかを聞
き、プチットは続けることにする。ゲーム2、ゲーム3、とクリアする度
に金は振り込まれた。ただし、「①ゲームを失敗する、②自分からゲー
ムをやめると言う、③ゲームの主催者を探ろうとする」のいずれかを行
った場合は今まで振り込まれた賞金は全部引き出されると言う。
何ともエグいゲームばかりで、私ならゲーム2でもう無理である。プチッ
トは借金を抱えているので必死にゲームを続けるが、日本円で3億という
のはタイではどのくらいなのだろう。私は10億と言われてもできない。
異常なゲームをさせられる度に、プチットの精神は参っていく。そしてこ
のゲームを見ている人たちがたくさんいるであろうことに気づく。いわば
視聴者参加型のリアリティ・ゲームなのだ。ゲームの異常さはどんどん増
していく。
各地で変な暴力事件が起きていることで警察は捜査を始めるが、プチット
の元同僚女性はプチットが犯人だと気づき、そして命令によってさせられ
ているであろうことにも気づき、何とかしてプチットを止めようとする。
すると携帯に電話がかかってきて、そこにある日本刀で元同僚女性か彼女
の犬かどちらかを殺せと言われる。プチットは仕方なく彼女の飼い犬を殺
す(動物が犠牲になるシーンって嫌だな)。とにかく精神的に来る映画だっ
た。ラストもあれではプチットが気の毒すぎる。よくこんな映画作ろうと
思ったなあ。




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すべてうまくいきますように

2023-02-13 22:08:43 | 日記
2021年のフランス映画「すべてうまくいきますように」を観に行った。

芸術や美食を好み、ユーモアと好奇心にあふれ、何より生きることを愛
していた85歳の父・アンドレ(アンドレ・デュソリエ)が脳卒中で倒れ
る。体の自由が利かなくなったという現実を受け入れられず、安楽死を
願う。そして人生を終わらせるのを手伝って欲しいと長女のエマニュエ
ル(ソフィー・マルソー)に頼んだのだ。エマニュエルは妹のパスカル
(ジェラルディン・ぺラス)と、父の気が変わることを望みながらも、ス
イスの合法的に安楽死を支援する協会とコンタクトをとる。

フランソワ・オゾン監督作品。安楽死(尊厳死)という重いテーマを扱い
ながらも、どこかユーモラスな雰囲気で観られるのはフランス映画なら
ではかもしれない。勝手気ままに生きてきたエマニュエルとパスカル姉
妹の父・アンドレが脳卒中で倒れる。一命はとりとめたが、アンドレは
体の自由が利かなくなってしまう。エマニュエルとパスカルは毎日のよ
うに見舞いに行くが、やがてアンドレはエマニュエルに「終わらせて欲
しい」と言い、エマニュエルはショックを受ける。
安楽死がフランスでは認められておらず、スイスでは可能であるとは知
らなかった。エマニュエルはパスカルと相談し、合法的に安楽死ができ
るところをネットで調べる。するとスイスの協会が見つかり、詳しい話
を聞く。スイスのベルンで行われるため、協会から救急車で迎えに行く
のだと言う。費用は1万ユーロ。これって結局裕福でない人は自然に死
ぬのを待つしかない訳で、結局何でもお金なんだな、という皮肉さも感
じた。
エマニュエルはスイスの協会と連絡を取り続けるが、一方でアンドレは
リハビリが功を奏し日に日に回復していく。孫の演奏会やレストランへ
出かけ、生きる喜びを取り戻したかに見えた。だが、父はまるで楽しい
旅行の日を決めるかのように、娘たちにその日を告げる。娘たちは戸惑
い葛藤しながらも、父と真正面から向き合おうとする。
大ファンのソフィー・マルソー目当てで観に行った映画だが、考えさせ
られるなかなかいい映画だった。体の自由が利かず、意識もはっきりし
ない状態なら尊厳死を考えるのもわかるが、アンドレはだいぶ回復して
きており、外出したりレストランで食事を楽しんだりしているので、そ
んな何が何でも死ななくてもいいんじゃないか、と思った。何故そんな
に死にたがるのか。自然に死ぬのが嫌なのか。姉妹もそう考えるのだが、
頑固者のアンドレを説得できるはずもない。
姉妹は父と長い間別居しているが何故か離婚していない母(シャーロット
・ランプリング)を連れてくるが、母は夫をちらっと見て「まだ死にそう
にないわね」と言う。それがおかしかった。夫婦のことは夫婦にしかわ
からないというのはこういうことをいうのだろう。ソフィー・マルソー
がかなり年とっていてびっくりしたが、青いセーター姿はかわいかった。
やはりこの人はいくつになってもかわいい。ラストシーンは印象的だっ
た。


良かったらこちらもどうぞ。フランソワ・オゾン監督作品です。
海をみる
ぼくを葬(おく)る
17歳



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いぬやしき

2023-02-09 21:57:24 | 日記
2018年の日本映画「いぬやしき」。

会社や家族から疎外されている、定年を目前に控えた初老のサラリーマン・
犬屋敷壱郎(木梨憲武)。医者から末期がんによる余命宣告を受け、虚無感に
襲われた犬屋敷は公園で謎の事故に巻き込まれ、機械の体に生まれ変わる。
犬屋敷と同じ事故に遭った高校生の獅子神皓(佐藤健)も犬屋敷と同様に人間
を超越した力を手に入れていた。自分に背く人々を傷つけるためにその力を
行使する獅子神。獅子神によって傷つけられた人たちを救うためにその力を
使う犬屋敷。強大な力を手に入れた2人の男たちのそれぞれの思いが激しく
交錯していく。

奥浩哉氏の漫画を実写映画化したアクション・サスペンス。定年間近のうだ
つのあがらないサラリーマン・犬屋敷壱郎は、会社でも邪魔者扱いされ、や
っと一戸建ての家を購入したのに妻子は小さいだの日当たりが悪いだのと文
句ばかり。ある夜犬の散歩で公園に行った犬屋敷は、強い光に包まれ、何か
の事故が起きる。近くには高校生の獅子神皓(ひろ)もいた。そして2人は自
分たちの体がサイボーグ化していることを知る。その後犬屋敷は死にかけて
いる鳩を両手で持つと、鳩は元気になり飛んでいったのを見て、自分には治
癒能力があるのだと知る。
一方獅子神は気にくわない相手を簡単に殺し、殺す能力があるのだと知る。
恐らくは宇宙から来た知的生命体によって機械の体に生まれ変わった犬屋敷
と獅子神は、その特殊な能力をそれぞれ別の方向へと使うようになる。犬屋
敷は余命のことを家族に話そうとするが、悲しんでもらえないのでは、とい
う思いから話しそびれる。彼は病院で脳腫瘍でもうすぐ命が終わろうとして
いる少年を救い、人を救うことに生き甲斐を見出すようになる。しかし獅子
神はゲームのように殺戮を続けていた。
原作は未読だがなかなかおもしろかった。宇宙人が何故犬屋敷と獅子神にそ
のような能力と機械の体を与えたのかはわからないが、漫画を読めばわかる
のだろうか。「善」に生きようとする犬屋敷と「悪」に生きようとする獅子
神。獅子神は母親や親友には優しいが、無関係の人間は平気で殺すという二
面性を持っている。やがて警察の捜査であちこちで起きている謎の殺人事件
の容疑者として獅子神が浮上し、獅子神は顔も公表して全国に指名手配され
てしまう。
犬屋敷は獅子神に「もうやめるんだ」と言うが、獅子神は「あんたには家族
がいるって言うけど、家族はあんたに何かしてくれたのか?」と問う。犬屋
敷の思いはもちろんわかるが、獅子神の気持ちにも少し同情したくなるとこ
ろはある。そして2人は機械の体で激しくぶつかり合う。確かにアクション
・サスペンスだが、全体的に切ない感じがした。これは原作を読む方がおも
しろいかもしれない。機会があれば読んでみたい。それにしても犬屋敷なん
て名字をよく思いつくものだ。うだつのあがらないサラリーマンという設定
に木梨憲武がはまり役だった。




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