猫のひたい

杏子の映画日記
☆基本ネタバレはしません☆

ブレット・トレイン

2023-01-28 22:28:45 | 日記
2022年のアメリカ映画「ブレット・トレイン」。

いつも事件に巻き込まれてしまう世界1運の悪い殺し屋・レディバグ
(ブラッド・ピット)。そんな彼が新たに請けたミッションは、東京発
の超高速列車でブリーフケースを盗んで次の駅で降りるという簡単な
仕事のはずだった。盗みは成功したものの、身に覚えのない9人の殺
し屋たちに列車内で次々と命を狙われ、降りるタイミングを完全に見
失ってしまう。レディバグは疾走する車内で襲いかかってくる彼らと
訳もわからぬまま死闘を繰り広げる中、次第に殺し屋たちとの過去の
因縁が浮かび上がってくる。

伊坂幸太郎氏の小説「マリアビートル」をハリウッドで映画化したア
クション・コメディ・サスペンス。東京で、殺し屋の木村(アンドリ
ュー・小路)は、何者かに幼い息子をビルの屋上から突き落とされ、
意識不明の重体にさせられてしまう。そして見舞いにやって来た父の
エルダー(真田広之)に復讐する旨を伝える。一方、殺し屋のレディバ
グは東京発京都行の高速列車内であるブリーフケースを盗むよう謎の
女性から指令を受ける。ブリーフケースを奪って降りるだけの簡単な
任務のはずだったが、疾走する車内で次々に殺し屋たちと遭遇してし
まう。
スピーディー、スリリングな物語で愉快痛快といった感じ。原作は未
読なので違いはわからないが、日本人役を外国人が演じているといっ
たところだろう(ちなみに木村役のアンドリュー・小路は日英ハーフ)。
でも「シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション」同様に
特に違和感はない。世界1運の悪い殺し屋・レディバグは今回もとん
でもない事件に巻き込まれてしまう。列車に乗っている殺し屋は自分
だけかと思っていたら、他に9人も乗っていたのだ。そしてその9人
は何故かレディバグの命を狙ってくる。レディバグは闘うのに大忙し
になってしまう。そして自分が狙われる理由がわからない。
殺し屋たちが個性的でおもしろい。特に黒人の殺し屋・レモン(ブラ
イアン・タイリー・ヘンリー)と白人のミカン(アーロン・テイラー
=ジョンソン)のコンビがいい。もちろんレモンとミカンというのは
殺し屋のコードネームだが、この2人は子供の頃から仲が良く、その
絆は深い。レモンが「きかんしゃトーマス」の大ファンだというのも
笑える。彼の人生哲学は「きかんしゃトーマス」なのだ。訳もわから
ず命を狙われていたレディバグだったが、次第にその理由がわかって
くる。
ドタバタ・コメディという感じで、B級映画のような雰囲気もあるの
だが、おもしろかった。でもこれはもうブラッド・ピットを見る映画。
ちょっと抜けててお人好しでツイてないレディバグが魅力的。終盤で
ブラッド・ピットが髪を結ぶシーンがあるのだが、やっぱりこの人は
長髪が似合うな、と思った。彼が何度か口にする「どうもアリガト」
というセリフもかわいい。真田広之が日本刀で闘うシーンもかっこよ
かった。最初の方で東京駅が登場するが、東京駅ってこんなにキラキ
ラしてたっけ?と思ったのだが、実際はコロナ禍のため日本での撮影
ができず、アメリカの特設スタジオで撮影したとのこと。納得。日本
語のセリフも文字もたくさん出てきたし、楽しい映画だった。


やっぱりベルは寒がり。




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シティーハンター THE MOVIE 史上最香のミッション

2023-01-24 22:15:24 | 日記
2018年のフランス映画「シティーハンター THE MOVIE 史上最香の
ミッション」。

私立探偵やボディガードを請け負う凄腕のスナイパー、通称「シティー
ハンター」ことニッキー・ラーソン(リョウ/フィリップ・ラショー)は、
相棒のローラ・マルコーニ(カオリ/エロディ・フォンタン)と共に日々
様々な依頼を請け負っていた。そんな2人の元にある日、その香りをか
いだ者を虜にする「キューピッドの香水」の奪回という危険な任務が持
ち込まれる。香水が悪用されれば世界は危機に陥ることは必至で、48
時間というタイムリミットの中、2人は香水を取り戻すために奔走する。

北条司氏の漫画「シティーハンター」をフランスで実写映画化。フィリ
ップ・ラショー監督・脚本・主演。フランスでも「シティーハンター」
が人気があるとは知らなかった。本作はフランスでも大ヒットしたそう
だ。フィリップ・ラショーは小学生の頃から「シティーハンター」の大
ファンで、北条氏の事務所へ映画化の企画書と直筆の手紙を送り、北条
氏に気に入られ、今度は脚本を書き上げて来日して直談判し、快諾され
たのだという。すごい行動力。外国映画で「シティーハンター」?と思
ったが、これがとてもおもしろかった。
ニッキー・ラーソン(リョウ)は表沙汰には解決できない様々な依頼を請
け負う何でも屋、通称「シティーハンター」として知られている。並外
れた身体能力と射撃の腕を持っているが、無類の女好きという欠点を抱
えており、美女に鼻の下を伸ばしては相棒のローラ(カオリ)に制裁を加
えられていた。ある日、ニッキーはその香りをかいだ者を魅了する「キ
ューピッドの香水」を警護する依頼を受ける。依頼者が男性だったこと
にがっかりするニッキーだったが、ローラと共に真面目に話を聞く。し
かし、何者かに一瞬の隙を突かれ香水の入ったカバンを奪われてしまっ
た。ニッキーとローラは、香水の効果が永遠に消えなくなる48時間後
までに香水の奪還を強いられることになる。
DVDのジャケット写真が原作そっくり。リョウの髪型や水色のジャケ
ットに赤いシャツ、ポーズまで似せていて笑える。物語の冒頭で、病院
の患者にモッコリー氏という人が登場したのには笑った。原作同様下ネ
タが満載なのだが、それがカラッとした笑いで、フィリップ・ラショー
の原作へのリスペクトや愛を感じさせられる。アメリカ映画じゃこうは
いかなかっただろうなあ、と思う。何だかフランスとアメリカの土壌の
違いを感じる。
映画はテンポが良くスピーディーで、コメディだけどなかなかスリリン
グ。香水のせいでローラを好きになる青年がいるのだが、彼がとてもお
もしろかった。三枚目の役なのによく見ると結構イケメンで、しかも帽
子の中には秘密がある。とにかく悪役含めどのキャラクターにも味があ
って魅力的。繰り返すがこれはアメリカ映画ではなくフランス映画でフ
ランスの俳優たちだから成功したのだと思う。銃から発射される鴨(多
分)たちもかわいくておもしろかった。「シティーハンター」の海外実
写版は1993年に香港でジャッキー・チェン主演で作られているが、あ
ちらは何と言うか一応「シティーハンター」の名を借りてはいるものの
完全にジャッキー映画だった。ジャッキーだから観られたけど、本作は
本当におもしろくて良かった。




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とべない風船

2023-01-20 22:01:23 | 日記
2022年の日本映画「とべない風船」を観に行った。

陽光あふれる瀬戸内海の小さな島。数年前の豪雨災害で妻子を失って
以来、自ら孤立している漁師の憲二(東出昌大)は、疎遠にしていた父
の繁三(小林薫)に会うために来島した凛子(三浦透子)と出会う。凛子
もまた、夢だった教師の仕事で挫折を味わい、進むべき道を失ってい
た。最初はお互いに心を閉ざしていた2人だったが、温かくてお節介
な島の人々に見守られ、少しずつ打ち解けていく。

傷ついた心の癒しと再生を描いた人間ドラマ。瀬戸内海の島で漁師を
している憲二は、数年前の豪雨災害の時、妻が「お父さんが心配だか
ら様子を見に行く」と言って息子と一緒に車で出かけ、そのまま2人
とも死んでしまったことをずっと後悔していた。自分が止めていれば、
という思いに苛まれていたのだ。それ以来無口で自ら孤立した存在に
なっていた。島には昔教師をしていたため皆から「先生」と呼ばれて
いる繁三がおり、その娘の凛子がやってきた。
その日憲二は繁三の家へ行き、黙って魚が入ったビニール袋を差し出
す。繁三は礼を言い、憲二は黙って去っていく。凛子は「この辺りで
はあんな風に勝手に人の家に入るのが普通なの?」と驚く。凛子は父
と同じく教師をしていたが、生徒の親とのトラブルでうつ状態になり、
退職していた。その後派遣の仕事をしていたが契約が切れ、繁三に会
いに来たのだった。仏壇には母の写真がある。今でも教職に復帰しな
いかという誘いの電話があり、凛子は迷っていた。
特に重大な出来事はないのだが(なくもないが)、淡々と物語は進んで
いく。凛子は初め憲二のことを怖いと思っていたが、繁三から妻子を
亡くしたことを聞いたり、何度か接したりするうちにささやかな交流
が生まれる。憲二は妻の父から「2人も殺したくせに」などと言われ
て嫌われているが、義父もまた辛かったのだろう。すっかり不愛想に
なった憲二を漁師仲間や島の人々は見捨てはしない。憲二は何故か子
供たちからもなつかれており、「憲二」と呼び捨てにされている。あ
の無口で不愛想な憲二に子供たちがなついているのは不思議でおもし
ろい。
無精ひげを生やして髪もボサボサの東出昌大の佇まいがいい。一生立
ち直ることはできないであろう悲しみを抱えた孤独な男をよく体現し
ていると思った。母を亡くし、教師の夢も破れて道をさまよっている
凛子と憲二の、家族でもなく恋人同士でもない交流がいい。これで恋
愛関係になったら安易すぎるので、そうならなくて良かったと思った。
凛子役の三浦透子は「ドライブ・マイ・カー」で一躍有名になった人
だが、あのブスッとした表情は素なのだろうか。「ドライブ・マイ・
カー」の時はそういう役だったが、どうも素のようだ。ラストシーン
の東出昌大の横顔が良かった。




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真犯人

2023-01-16 22:02:43 | 日記
2019年の韓国映画「真犯人」。

ある晩、ヨンフン(ソン・セビョク)の妻・ユジョン(ハン・スヨン)が殺害され、
ユジョンと不倫関係にあったとされるヨンフンの親友・ジュンソン(オ・ミン
ソク)が逮捕される。それから半年、廃人同様の生活を送っていたヨンフンの
元に、ジュンソンの妻・ダヨン(ユソン)が訪れ、夫の無実を証明したいと言う。
彼女は、夫は不倫をするような男ではなく、そのことはヨンフンもよくわかっ
ているはずだと訴える。最初は彼女を疎ましく思ったヨンフンだったが、真実
を明らかにすることを決意。そして、サンミン(チャン・ヒョクジン)という男
の存在に辿り着くが、彼の口から思いもよらない真実を知ることになる。

ミステリー映画。観ていて誰のことも信じられなくなる、なかなかおもしろい
作品だった。ヨンフンの妻が刺殺され、発見したのはヨンフンである。近くに
住んでいるヨンフンの親友・ジュンソンは、ヨンフン宅のマンションの前にパ
トカーが何台も停まっているのを見て心配になり、警官に止められるのをかき
分けながらヨンフンの部屋へ行くが、そこではヨンフンが茫然自失となってい
た。ジュンソンはヨンフンを抱きしめる。しかしその後、ジュンソンはヨンフ
ンの妻の殺害容疑で逮捕されてしまう。2人は不倫関係にあったと言うのだ。
ジュンソンの髪の毛がユジョンの口に付着していたことが決め手となったのだ
った。
ヨンフンはそれから立ち直れず、廃人のようになってホテル暮らしをしていた。
ある日ダヨンがヨンフンの元を訪ねてきて、夫の無実を証明するために協力し
て欲しいと言う。「夫は不倫をするような人じゃない。ユジョンも不倫するよ
うな女性じゃないでしょ?」と必死に訴えるが、ヨンフンはダヨンを追い出し
てしまう。ダヨンが夫のために一生懸命なのはわかるが、この人ちょっとヒス
テリックでうるさいと思った。ダヨンは夫が逮捕されたことで近所の人たちか
ら白い目で見られ、幼稚園に通う娘もいじめを受けるようになり、もう必死な
のだった。
ヨンフンはマンションの部屋を片付けてくれと家主に言われ、仕方なく自宅に
戻って掃除をするが、部屋の中を見てある違和感を覚える。本当にジュンソン
が犯人なのだろうか?という疑問が沸き上がる。そんな時再びダヨンが訪ねて
きて、夫は犯人ではないと訴える。ヨンフンは真相解明のためにダヨンと手を
組むことにする。そして何度か自宅の周辺をうろついていたサンミンという男
に行き当たる。
物語のメイン登場人物は、冒頭で殺されたヨンフンの妻を除くとヨンフン、ヨ
ンフンの親友で逮捕されたジュンソン、ジュンソンの妻・ダヨン、謎の男・サ
ンミンの4人である。この4人を中心に物語は展開し、時系列も行ったり来た
りする。彼らのうち誰が本当のことを言っているのか、誰が嘘を言っているの
か。彼らは疑心暗鬼になるが、観ているこちらも同様である。そしてとにかく
ダヨンがキーキーとうるさい。気持ちはわかるがもう少し落ち着いて、と言い
たくなる。割とおもしろかったが、ラストはモヤモヤが残った。ヨンフンはそ
れでいいの?どうして何も言わないの?と思った。ラストの続きを観てみたい。
そしてどうでもいいがヨンフン役のソン・セビョクが萩原聖人に似ていた。




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アンテベラム

2023-01-11 21:44:17 | 日記
2020年のアメリカ映画「アンテベラム」。

南北戦争前夜のアメリカ南部。ある綿花工場では黒人奴隷たちが過酷な
労働を強いられ、虐待されていた。奴隷の女性エデン(ジャネール・モ
ネイ)は、ある悲劇をきっかけに仲間と共に脱走計画を立てる。一方、
現代のアメリカ。人気作家で社会学者でもあるヴェロニカ(ジャネール
・モネイ/2役)は新しい本の出版記念イベントに参加すべく、ニューオ
リンズを訪れていた。友人たちとのディナーの後、ヴェロニカは愛する
家族の元へ帰ろうとするが、その途中、ヴェロニカは誰もが予想しなか
った事態に巻き込まれる。

異色のサスペンス・ミステリー。アメリカ南部、ある綿花工場では黒人
奴隷たちが白人の主人たちの監視下で過酷な労働を強いられていた。奴
隷の1人である女性・エデンは、仲間の悲惨な死をきっかけに別の仲間
と共に脱走計画を立てる。一方、現代のアメリカ。作家で社会学者でも
あるヴェロニカは、優しい夫と幼い娘と幸せに暮らしていた。ある日ニ
ューオリンズでの講演会を成功させ、友人たちとのディナーを楽しんだ
直後、何者かによって拉致されてしまう。
物語は現代と過去が交錯しながら進んでいく。南北戦争前夜のアメリカ
南部の綿花工場では、「白人の主人たちに話しかけられない限り、黒人
奴隷は言葉を発してはならない」というルールが存在していた。ある日
奴隷のイーライ(トンガイ・キリサ)は妻と共に農場から脱走を図ったが、
主人たちに見つかってしまう。彼に対する罰として、主人たちはイーラ
イの目の前で妻を殺害した。また、主人たちは2人の脱走を手助けした
エデンに対してひどい暴行を加えた。
白人の主人たちによる黒人奴隷への虐待がひどく、実際にこういうこと
が行われていたのだと思うと、痛ましいとしか言えない。私はエデンは
ヴェロニカの前世なのかと思いながら観ていたが、後半になって驚くべ
きことがわかる。え、どういうこと?と思うが、だんだんからくりがわ
かってくる。そのアイデアや演出が秀逸だと思った。後になって考える
と伏線がいくつかあったなと思う。奴隷制度は廃止されても、黒人差別
はなくなっていないということだ。とにかく脚本だとても良くできてい
ると思った。予備知識なしで観て欲しい映画。



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