現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

飛ぶ教室

2024-04-01 16:51:11 | 映画

 2003年のドイツ映画です。

 1933年に書かれたエーリッヒ・ケストナーの児童文学の古典の映画化です。

 現代に合わせるための変更はなされていますが、驚くほど原作に忠実に作られています。

 子どものころからのケストナー・ファンである私にとっては、驚きとともに深い満足感を味合わせてくれました。

 重要な場面はほとんど原作通りに描かれていて、感動で涙があふれてくるのをとめられませんでした。

 原作との主な変更点は以下の通りです。

 主役をマルチン・ターラーではなく、ヨーニー(ヨナタン)・トロッツにしています。

 ヨーニーは詩人ではなく、作曲家にしています(代わりにマルチンを詩人にしています)。

 禁煙先生との交流の理由として、ヨーニーが拾った子犬を登場させています。

 ゼバスチアンを、クロイツカム先生の息子のルディと合体させています。

 クロイツカム先生を、校長にしています。

 敵対しているチームを、実業学校から同じ学校の帰宅生に変更しています。

 敵対チームに焼かれてしまったのを、成績表から楽譜に変更しています。

 主人公たち寄宿生を、合唱団のメンバーにしています。

 敵対チームのリーダーのエーガーラントを女の子にして、ヨーニーの相手役にしています。

 マルチンの家庭の問題を、父親の失業から両親の離婚に変更しています。

 かつて禁煙先生が姿を消した理由を、西ドイツ側への逃亡にしています(この作品の舞台は旧東ドイツになっています)。

 彼らが演じる「飛ぶ教室」の舞台を、劇でなくラップにしています。

 逆に、現代を舞台にしたのでは難しいと思われるシーンが映画化されていて驚いたのは以下の通りです。

 マッツ(マチアス)・ゼルプマンとヴァヴェルカとの決闘シーン。

 両軍の雪合戦。

 クロイツカムが、敵対チームの捕虜になるシーン。

 ウリーが校舎から飛び降りるシーン(ただし、持っていたのはこうもり傘ではなく、大きな風船に変更されています)。

 教室で、ウリーがかごに入れられて吊されるシーン。

 禁煙先生が暮らす禁煙車。

 最上級生のテオたちの社交ダンスシーン。

 全体として、ケストナーの精神である「つねに子どもたちの立場に立つ」ことが、この映画でも非常に良く受け継がれています。

 おそらく、ドイツでは、今でもケストナーや彼の作品が広く愛されているのでしょう。

 それを考えると、異国に住むケストナー・ファンとしては、とてもうれしくなります。

 

 

 

コメント
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする