現代児童文学

国内外の現代児童文学史や現代児童文学論についての考察や論文及び作品論や創作や参考文献を、できれば毎日記載します。

フェリーニのアマルコルド

2023-05-27 11:40:46 | 映画

 1973年公開の作品で、アカデミー賞外国語映画賞(史上最多の四度目の受賞です)を受賞しました。
 フェリーニの作品の中ではもっとも児童文学の世界に近い作品で、子ども時代(中学生ぐらいか?)の想い出をもとに作られています。
 海辺の田舎町を舞台に、綿毛の飛ぶ季節(春の訪れ)から翌年の綿毛が飛びはじまるまでの一年間が描かれています。
 頑固な父親や口やかましいけれど優しい母親などとの家族生活(ファシストによる父の拷問や母の死なども描かれています)、権威主義的な教師や牧師たち、ファシズムのイタリア席巻などを風刺的に描いていますが、フェリーニならでは猥雑なシーン(あこがれの年上の美女、誰とでも寝る若い女、超グラマーなタバコ屋の女主人など)もふんだんに盛り込まれています。
 こうしたある意味雑多な事象をフェリーニ独特のユーモアや皮肉をちりばめて描いていますが、それを圧倒的な映像美(冒頭とラストの綿毛の飛ぶシーン、春の訪れを告げる祭りの焚火、記録的な大雪によって一変した町の風景、雪の中を舞うクジャク、豪華なリゾートホテル、真夜中に沖を通るアメリカの豪華客船(町民総出で小舟に乗って迎えに行きます)、結婚式やパーティが行われる郊外の風景など)で、フェリーニ独特の世界が展開されます。
 1973年4月、大学の入学オリエンテーション前に、京橋の国立フィルムセンターで行われたイタリア映画祭で、初めてフェリーニの「道」を見て以来、都内のあちこちにあった名画座でそれまでのフェリーニ作品を片っ端から観ていたのですが、この作品以降は封切り時にリアルタイムで見られるようになりました。

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KADOKAWA / 角川書店
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トップガン マーヴェリック

2023-05-25 17:04:18 | 映画

 2022年公開のアメリカ映画です。

 1986年公開の映画、「トップガン」の主人公、マーヴェリックのその後を描いた作品です。

 36年後も、彼は現役のパイロットをしていて、テストパイロットとしてマッハ10の壁を突破して見せます。

 そうです。

 マーヴェリックは、海軍パイロットにおけるトム・クルーズなのです。

 還暦近くなっても、できるだけスタントは使わずに頑張り続けているトム・クルーズ以外に、この役をこなせる人はありません。

 ストーリー自体は、アメリカの仮想敵国に作られつつある核施設を、ウランが運び込まれる前にジェット戦闘機で急襲するという他愛のないものですが、ジェット戦闘機の操縦シーンなどは、さすがに36年前よりは進歩していて、迫力満点です。

 まあ、テーマパークのアトラクションのつもりで見れば、どんなに荒唐無稽(主人公も、かつての戦友の息子も、敵に撃墜されますが、ともに無傷で、相手の旧式ジェット戦闘機を奪って、空母に帰還します。その間、追跡してきた敵の最新鋭ジェット戦闘機と空中戦をしますが、二世代以上古いオンボロジェット戦闘機で見事に撃墜します)でも、腹は立ちません。

 

 

 

 

 

 

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小さな恋のメロディ

2023-05-23 10:14:19 | 映画

 少年少女(11歳ぐらいの設定と思われます)の瑞々しい恋を描いた、1971年のイギリス映画です。
 本国やアメリカでは不評でしたが、日本では大ヒットしました(1950年代の半ばから1960年代の初めごろに生まれた人ならば、ほとんどの人が見たことがあるんではないでしょうか?)。
 その理由としては、いくつかの事が考えられます。
 まず、主人公の男の子(撮影当時12歳だった人気子役(「華氏451」、「オリバー!」、「小さな目撃者」など)のマークレスター)と主人公の女の子(撮影当時11歳だった無名のトレーシー・ハイド)が、日本人好みの可愛らしさだったことがあげられます(二人ともぜんぜんすれていなくて、子どもらしい子どもでした)。
 次に、舞台になっているイギリスの学校(11歳から16歳ぐらいまで通う小中学校)の雰囲気が、当時の日本の中学校(公開当時の観客ではこの年代が一番多かったでしょう)よりも大人びて感じられて(ダンスパーティ、煙草、ミニスカートの制服、男女交際など)、魅力的に映ったものと思われます(私自身は公開当時、すでに高校二年生になったところでしたが、男子校だったので男女交際の感覚が中学生当時からストップしたまま(いやむしろ中学時代の女友だちとの関係が次第に薄れて、より飢餓感があったかもしれません)でしたので、中学生たちと同様に羨ましかったです)。
 また、子どもたちだけで二人の結婚式をあげて、止めさせに来た大人たち(教師たちとマーク・レスターのママ)と戦って勝利(失敗続きだった爆弾マニアの少年の爆弾がついに成功して、マーク・レスターのママのスポーツカーを爆破して大人たちを敗走させます)して、二人はトロッコで旅立つというファンタジックなストーリーが、いつも大人たちに抑圧されている日本の子どもたち(特に、当時(今もそうかもしれませんが)の中学生は、受験勉強や内申書で、教師たちにがんじがらめにされていました)にとって痛快でした(この映画の根本的な考えは「大人たちは信用できない」なので、出てくるほとんどの大人たちはかなり俗物的に誇張されていました)
 また、70年安保末期の高校紛争も、ほとんどが子どもたち側の敗北(私の通っている高校は私立の付属高校だったので、生徒側がかなりの勝利を収めて、制帽、制服、中間試験などが廃止になっていましたが)に終わっていましたので、その鬱屈感の解消にもなったかもしれません。
 個人的には、全編に、ビージーズ(「イン・ザ・モーニング」、「メロディ・フェア」「若葉のころ」、「ラヴ・サムバディ」など)やクロスビー・スティルス・ナッシュ&ヤング(「ティーチ・ユア・チルドレン」)などの、映画のシーンにピッタリの美しい曲が流れていたことも大きな魅力でした(「卒業」とサイモン&ガーファンクルと同様に、映画と音楽の融合の成功例の一つでしょう)。



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ふたりのロッテ

2023-05-21 09:57:37 | 映画

 1993年公開のドイツ映画です。

 1949年に出版されたエーリヒ・ケストナーの児童文学の古典「ふたりのロッテ」(その記事を参照してください)の比較的最近の映画化です。

 もともとこの作品は、戦時中に映画の脚本として書かれたということもあって、ケストナー作品の中では最もたびたび映画化されています。

 一番最初は出版された翌年の西ドイツ映画ですが、日本でもすぐに当時の人気子役だった美空ひばりの一人二役で映画化されています。

 同様に、アメリカの人気子役だったヘイリー・ミルズの一人二役による「罠にかかったパパとママ」という題名のディズニー映画も日本で封切られ、子供のころに見た記憶があります。

 さて、この映画では、実際に双子の子役がシャルロッテとルイーズを演じていて、二人の性格の違い(元気いっぱいのシャルロッテとおとなしい優等生のルイーズ)が非常に良く表現されていて、原作の雰囲気をうまく出しています。

 また、この映画では、以下の基本コンセプトだけを守って、後は現代の事情に合わせて自由にストーリーを展開したのが、かえって作品の精神を今の子供たちに伝えることに成功していると思います。

<両親が離婚したために離れ離れになっていた双子が、偶然サマーキャンプで再開して意気投合し、二人が入れ代わってそれぞれパパとママの元に戻り、二人の機知と策略によって、両親の関係を修復します>

 この映画でも、つねに子どもたちの側に立つケストナーの精神が、見事に継承されています。

 

 

 

 

 

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堀江敏幸「いつか王子駅で」

2023-05-16 13:26:44 | 参考文献

 2001年に「熊の敷石」で第124回芥川賞を受賞した作者の、初の長編作品です(それまでは短編集しか出していませんでした)。
 といっても、この作品も、一章から七章までは「書斎の競馬」という雑誌に掲載された連作短編で、八章から十一章までを追加したものなので、連作短編集的な味わいもあります。
 専門のフランス文学だけでなく日本文学にも造詣が深い作者は、昔ながらの「文士」的な雰囲気があり、若い(この作品を書いた時は三十代半ば)のに老成した印象を受けます。
 文章も擬古的で滋味があって、伝統的な文学ファンには魅力があることでしょう。
 出てくる人物は魅力がありますがすべて善人ばかりで、「なずな」の記事にも書きましたがユートピア小説の趣があります。
 作者の古風な(あるいはそれを装った)作品群は、時には鼻につくこともあるのですが、この作品には初めて読んだ時から児童文学に通ずるものを感じて、作者の中では一番好きな作品です。
 それは、主人公が家庭教師をしている中学生の女の子(その親が彼の住んでいる部屋の大家でもあるのですが)が非常によく書けていて、日本のどの児童文学作品に登場する女の子たちよりも生き生きと魅力的に描かれている点にあります。
 彼女は、主に後半の書き足された部分に出てくるので、この作品を長編として成立させているのは彼女を創造できたおかげだったかもしれません。
 この作品には、彼女の外に、主に前半活躍する主人公いきつけの小料理屋の女将も魅力的に描かれていて、主人公にとって対照的な二人のミューズになっています。
 この作品を好ましく思っているのには、個人的な理由もあります。
 まず、舞台になっている北区の「王子」は、私の育った足立区の「千住」と非常に近く、自転車でよく遊びにいっていました。
 また、曾祖母が住んでいたり、祖父が晩年に入院した病院があったりと、個人的になじみ深い場所でもあります。
 作品に頻出する都電荒川線も、学生時代に時々大学に通うのに使ったりしていて懐かしい路線です。
 もう一つの理由は競馬です。
 この作品が競馬関連の雑誌に連載されていたこともあり、タカエノカオリ(1974年の桜花賞馬で、前述した小料理屋「かおり」の名前の由来)を初めとして、ニットウチドリ(1973年の桜花賞馬)、テスコガビー(1975年の桜花賞(大差勝ち)とオークス(八馬身差勝ち)の二冠馬。当時は秋華賞はおろかエリザベス女王杯もない時代なので牝馬としてはパーフェクトな成績で、戦前のクリフジや最近のウォッカやアーモンドアイなどと並び称されるような最強の牝馬)、キタノカチドキ(1974年の皐月賞と菊花賞の二冠馬)、そして今では懐かしいフレーズになった「三強」(この三頭が一着から三着を占めた1977年の有馬記念は、史上最高のレースと言われています)のテンポイント(1977年春の天皇賞と有馬記念の勝ち馬)、トウショウボーイ(1976年の皐月賞と有馬記念、1977年の宝塚記念の勝ち馬)、グリーングラス(1976年の菊花賞と1978年春の天皇賞と1979年の有馬記念の勝ち馬)などの懐かしい馬名が頻出します。
 作者は私より十歳も若いのに、1970年代の競馬に精通しているので、私に限らず古い競馬ファンにはたまらない作品になっています。
 私が競馬に熱中していたのは、タニノムーティエ(1970年の皐月賞とダービーの二冠馬)のダービーからテンポイントの死(1978年1月22日の日経新春杯で小雪舞う中66.5キロという今では信じられないような過酷な負担重量(その後JRAではどんなハンデ戦でもこのような馬鹿げた負担重量にはしないようになりました)のために骨折し、JRAの総力を挙げての治療と子どもたちも含めた全国のファンの願いもむなしく3月5日に亡くなりました)までなので、この作品で取り上げられている名馬たちはまさにジャストフィットしています。
 それにしても、優駿(JRAの機関誌で今のように通俗化していませんでした)1978年2月号の表紙(毎年2月号の表紙は前年の年度代表馬の全身をとらえた写真でした)のテンポイントは、信じられないほど美しく、まさに神が舞い降りたようでした。

いつか王子駅で (新潮文庫)
クリエーター情報なし
新潮社
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ミッション:インポッシブル

2023-05-15 15:10:20 | 映画

 1996年のアメリカ映画です。

 トム・クルーズを主演にした人気テレビシリーズの映画化です。

 テレビシリーズは、心理の盲点を突くようなトリックが大評判で、長く続きました(日本でも放映されました)が、この映画はどちらかというとアクション映画で、そのため評価は賛否が分かれたようです。

 しかし、興行的には大成功し、シリーズ化されて続編が長い期間、作られ続けています(その記事を参照してください)。

 このシリーズの売りは、主人公のイーサン・ハントの超人的な活躍で、それを主演のトム・クルーズができるだけスタントやCGを使わずに演じていることでしょう。

 そういった意味では、テレビ・シリーズとは違った、娯楽アクション映画を一作目から目指していたものと思われます。

 ちなみに、トム・クルーズはプロデュースにも加わっているので、彼の意志が反映されたものかもしれません。

 

 

 

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ボディーガード

2023-05-14 10:17:12 | 映画

 1992年公開のアメリカ映画です。

 謎の脅迫者に狙われている歌手で俳優のスーパースターと、彼女のために雇われたボディーガードとの恋と別れを素晴らしい音楽をバックに描きます。

 スーパースター役のホイットニー・ヒューストンは、当時彼女自身がスーパースターだったせいか、意外と自然に演じています。

 ボディーガード役のケビン・コスナーは、かつてこの映画が企画されたときにこの役をやるはずだったスティーブ・マックイーンを意識していて、いつもよりクールでタフな雰囲気をだそうとしています。

 サスペンスとしては、犯人の設定に無理があっていまいちですが、全編に流れるホイットニーの歌声はさすがに魅力的です(サントラ盤は大ヒットしました)。

 

 

 

 

 

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恋に落ちたら…

2023-05-12 11:37:01 | 映画

 1993年公開のアメリカ映画です。

 臆病な刑事を主役にしたロマンティック・コメディです。

 ひょんなことからギャングのボスを助けた主人公は、お礼に彼が支配している美女を一週間提供されます。

 彼女は、兄弟の借金の肩代わりとして、ギャングのボスの命ずるまま、いろいろな男の所へ派遣されています。

 一週間の間に彼女と恋に落ちた刑事とボスの間でもめ事が起きますが、最後は意外とあっさりとボスが彼女を取り戻すのをあきらめ、刑事と彼女はハッピーエンドを迎えます。

 途中で起きる殺人事件などの伏線が回収されずに、やや拍子抜けな終わり方でしたが、主人公を演じたロバート・デ・ニーロやボス役のビル・マーレイはさすがの演技を見せています。

 

 

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ミッション:インポッシブル/フォールアウト

2023-05-09 11:41:41 | 映画

 トム・クルーズ主演の人気シリーズの第六作です。
 基本的には現在の映画の主流であるアクション映画なのですが、他の作品と大きく違う点はCGだけに頼らずに生身の俳優(特に主演のトム・クルーズ)のアクションにこだわっている点です。
 他の記事にも書きましたが、CGだけに頼った映画ではそれこそなんでもありで、どんなにすごいシーンでも「どうせCGだから」と少しもハラハラしないのですが、生身の俳優(もちろんスタントマンも含めて)の命がけの演技とCGをうまく合成すると、「どうやって撮影したのか?」と驚嘆させられるようなシーンを作ることができるようです。
 この映画では、私が高所恐怖症であることを差し引いても、思わず目を手で覆うようななスリルに富んだシーンがいくつもありました。
 それにしても、五十代も半ばを過ぎて、かつてのイケメン俳優(当時はまだハンサムと言う言葉が使われていました)のトム・クルーズの顔にも、隠しきれない年輪が感じられるのですが、相変わらず体を張ってがんばっている姿には感心させられました。
 このシリーズの第一作は1996年公開なのですが、今は日本に一つもなくなったドライブインシアター(屋外のスクリーンに映し出された映像を車の中から見て、音声はカーステレオで聴きます)のMOVIX多摩(京王相模原線の南大沢駅近くの、現在はアウトレットモールがある場所です。ちなみに同じ松竹系ですが、現在シネコンを展開しているMOVIXとは別会社だったそうです)で、妻や幼かった息子たちと一緒に見たことが懐かしく思い出されます。

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雑魚どもよ、大志を抱け!

2023-05-08 10:02:26 | 映画

 2023年公開の日本映画です。

 地方都市に暮らす小学六年生の男の子を主人公にして、彼の周辺の人物(家族、クラスメイト、他のクラスの不良たち、学校の教師など)を描いた群像劇です。

 友人たちの家庭崩壊(父親が暴力団員で暴力を振るわれていたり、母親が宗教にはまって家族を顧みなかったりなど、いろいろな家庭の子供が登場します)や家族の病気(主人公の母親は乳がんにかかっています)や転校する親友との別れなど、様々な問題を通して、主人公の成長が描かれています。

 戯画的に誇張されすぎている面(主人公たちの非行(?)の様子や、学校の教師たちや、主人公たちを陰で支配している中学生の番長の描き方など)もありますが、少年たちの日常が生き生きと描かれていて好感が持てました。

 少年たちを演じている子役たちが、小学生にしてはやや老けた感じがするので、設定を中学生にしても良かったかなとも思いました。

 

 

 

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