Bravo! オペラ & クラシック音楽

オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

5/4(土・祝)ラ・フォル・ジュルネ〈第2日〉小林沙羅/デュメイ/ホールAにサプライズで佐渡裕登場!!

2013年05月06日 22時27分14秒 | クラシックコンサート
ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 2013(「熱狂の日」音楽祭 2013)
~パリ、至福の時/L'heure exquise~


2013年5月4日(土・祝)東京国際フォーラム

 「ラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポン 2013」の第2日。今日は6公演を聴く予定だ。今年の開催では日本人の有力な出演者が少なく、「どうしても聴きたい」と思う公演が少なかったのも確かだ。今日はその「どうしても聴きたい」公演のひとつ、ソプラノの小林沙羅さんの出演が1枠だけある。その辺りに期待を込めて、朝一番のコンサートから、純に追っていくと…。

■公演番号241 10:00~10:45 ホールC S席 1階 3列 30番 3,000円
チェロ: 宮田 大
指 揮: イブ・ウィンシー
管弦楽: 香港シンフォニエッタ
【曲目】
ラヴェル: クープランの墓
フォーレ: エレジー 作品24(チェロとオーケストラのための)
サン=サーンス: チェロ協奏曲 第1番 イ短調 作品33
《アンコール》
 サン=サーンス: 白鳥(チェロ・ソロ)

 最近は若手チェリストの中で圧倒的な存在感を示している宮田大さんが「ラ・フォル・ジュルネ」に登場するとすうことであれば、聴きに行かずにはいられない。サン=サーンスの「チェロ協奏曲第1番」は、チェロ協奏曲の中ではポピュラーな方だと思うが、かといってそう頻繁に聴くこともない曲なので、楽しみである。香港シンフォニエッタはもちろん初めて聴くものだし、指揮者のイブ・ウィンシーさんは同オーケストラの音楽監督で、けっこう若い女性であった。今回はかなり多彩にプログラムに出演する。実力派のようだ。
 宮田さんのチェロは超絶技巧もさらりとこなし、その表現にも一層の磨きがかかっているようだ。深みのある音色は決して暗いイメージではなく、明快でスッキリしている。楽器がよく歌っていた。アンコールで弾いた「白鳥」は無伴奏のソロ。それでも表情豊かな演奏にBravo!!

■公演番号272 13:25~14:10 よみうりホール S席 2階 F列 37番 2,500円
ギター: 村治佳織
【曲目】
ショパン/タレガ編: ノクターン 第2番 作品9-2
ショパン/タレガ編: 前奏曲 第15番 作品28-15「雨だれ」
ドビュッシー: 亜麻色の髪の乙女(「前奏曲集 第1巻」より)
ソル: ギター・ソナタ 第1番 ニ長調 作品14「グラン・ソロ」
グラナドス: ゴヤのマハ
トローバ:「カスティーリャ組曲」より
ロドリーゴ: へネラリーファのほとり
《アンコール》
 禁じられた遊び

 2階席まであり1100名収容できるよみうりホールで、ギターのリサイタル。当然、マイクを立ててPAを入れていたが、それでも音量を控え目にしていたので、かなりロー・テンションの印象であった。ショパンの2曲は誰でも知っているような名曲だけに、ギターでの演奏は音が薄く感じてしまう。弦が6本しかないから、和声の表現に限界があるのだろう。ドビュッシーも同じ印象であった。演奏についても、こんなものかなァと、あまり印象に残ることがなかった。逆に後半のスペインものの方がギターの特性が十分に活かされる曲なので、ぐっと力感が増して聞こえた。アンコールの「禁じられた遊び」は若い頃ギターでよく弾いていたので、懐かしかった。

■公演番号264 15:00~15:45 G409 指定席 1列 4番 2,500円
ソプラノ: 小林沙羅
ギター: 荘村清志*
【曲目】
グラナドス: 歌曲集『トナディージャス』より「トララとつま弾いて」
ファリャ:7つのスペイン民謡
     1.ムーア人の衣装
     2.ムルシア地方のセギディーリャ
     3.アストゥリアス地方の歌
     4.ホタ
     5.ナナ
     6.歌
     7.ボーロ
アルベニス:『スペイン組曲 第1集』より「カディス」(ギター・ソロ)*
アルベニス:『性格的小品集 作品92』より「朱色の塔」(ギター・ソロ)*
ロドリーゴ:4つの愛のマドリガル
     1.何で洗いましょう
     2.君ゆえに死ぬ思い
     3.恋はどちらから
     4.ポプラの林に行ってきた

 今回の「ラ・フォル・ジュルネ」で一番聴きたかったのがこの小林沙羅さんのリサイタル。ご承知のように、沙羅さんは昨年来大活躍中で、2012年11月のソフィア国立歌劇場来日公演の『ジャンニ・スキッキ』のラウレッタ12月に紀尾井ホールでリサイタル、年が明けて「NHKニューイヤーオペラコンサート」に出演東京交響楽団の定期で千住明さんのオペラ『万葉集』、2月には三枝成彰さんのオペラ『KAMIKAZE-神風-』、3月にはフルートのマティアス・シュルツさんとのデュオ・リサイタル、その他たくさんの演奏会に出演している。私が沙羅さんの歌唱を初めて聴いたのは、実は2010年の「ラ・フォル・ジュルネ」なのである。
 さて今日の演奏は、ギターの荘村清志さんの伴奏というカタチで、スペインの歌曲を揃えた。私たちが日頃聴く機会の少ないものだから、演奏の前に沙羅さん自身の翻訳による歌詞の朗読があった。これにより、歌の内容が概ね理解できたので、素晴らしい配慮であった。
 偶然だが、今日歌われたファリャの「7つのスペイン民謡」は、ヴァイオリン用に編曲された「スペイン民謡組曲(全6曲)」を今年3回も聴いている。川久保賜紀さんのヴァイオリンと村治香織さんのギターによるデュオで1月に印西市文化ホール(千葉県)2月にフィリアホールで、3月には松山冴花さんのヴァイオリンと津田裕也さんのピアノによるデュオで聴いたのである。今日はその原点版の「民謡」である。皆さん大好きなアーティストなので、嬉しい偶然に感謝したい。
 とはいうものの馴染みのないスペインの歌曲であるから、イメージが豊かに湧いてくるというわけでもない。今日は沙羅さん流のスペイン歌曲ということで、相変わらずちょっと芯のある澄んだ美声である。1曲毎に表情が変わり、歌の世界に入っていく姿勢が、瑞々しく豊かな表現力となって表れていたといえる。どんどん新しい音楽に挑戦し、それを熱心に勉強して創り上げていく努力が伝わってくる、とても清々しいリサイタルであった。沙羅さんBrava!!
 終演後には楽屋口でファンの方々と歓談する一幕も。少しお話しして写真を撮らせていただいた。



■公演番号265 16:30~17:15 G409 指定席 2列 33番 2,000円
ピアノ: 野原みどり
【曲目】
ラヴェル: 前奏曲
ラヴェル: 水の戯れ
フォーレ: 夜想曲 第5番 変ロ長調 作品37
フォーレ: 夜想曲 第6番 変ニ長調 作品63
フランク: 前奏曲、コラールとフーガ

 野原みどりさんは1年半ほど前にリサイタルを聴いたことがある。ラヴェルはともかくとして、フォーレやフランクのピアノ曲はまったく不得意な分野なので、どうなることかと思いつつ、小部屋でのピアノ・リサイタルは濃密なサロン的な演奏が聴けるので、チケットを取っておいたものである。狭い部屋なのでガンガン弾かないところがサロン的という素人っぽい意味である。上手(かみて)側の席だったので、音もダイレクトで素晴らしい響きであった。
 フォーレとフランクは、私にとっては作品的につかみ所がなく、よく分からないのでボンヤリ聴いていただけだが、フランス音楽特有の色彩感、旋律と和声が渾然一体となった、多数の光が目まぐるしく交差するような、ビジュアル的な音が素敵である。キラキラする音の流れに身を任せ…というような気持ちで聴いていた。

■公演番号215 19:00~19:45 ホールA A席 2階 16列 84番 1,500円(1日パスポート券)
指 揮: フェイサル・カルイ
ピアノ: 小山実稚恵
管弦楽: ラムルー管弦楽団
【曲目】
ラヴェル: 亡き王女のためのパヴァーヌ
ラヴェル: ピアノ協奏曲 ト長調
ラヴェル: ラ・ヴァルス
《アンコール》
 ラヴェル: ボレロ(指揮: 佐渡 裕)

 ラムルー管弦楽団はパリを拠点とする民営のオーケストラで、1881年の創立だという。何と今日演奏されるラヴェルの「ピアノ協奏曲 ト長調」や「ラ・ヴァルス」、他にもドビュッシーの「海」などを世界初演してきた名門オーケストラなのである。現在の音楽監督は今日の指揮者のフェイサル・カルイさんだが、1993年から2010年までは佐渡裕さんが務めていたことでも知られる。
 というわけで、小山実稚恵さんのラヴェルのピアノ協奏曲を聴くつもりで気軽にチケットを取っておいた公演だが、曲目を見れば本家本元の演奏ということになる。道理で上手いはずだ。ところが、会場がホールAなので音響も何もどうでも良いかなどと思ってしまい、1階の比較的良いS席を取っておいたのに、友人に頼まれて1日パスポート券(2階の中段のA席)と交換してしまったのである。後で悔しがった次第。
 「亡き王女のためのパヴァーヌ」は元のピアノ曲も有名だが、管弦楽版は比較的単純な曲なので、まあ普通の演奏だ。「ピアノ協奏曲 ト長調」は、小山さんのビアノがキラキラ…といっても2階からでは大型スクリーンを見ているだけで、音はあまりよくは聞こえてこない。むしろオーケストラの明るい色彩感が出色であった。演奏全体は伸びやかで輝かしいものだった。まあ、そういう曲なので。
 ピアノを片付けて、最後は「ラ・ヴァルス」。冒頭の低弦の部分などはほとんど聞こえない。だが主題のワルツが登場すると、どうだろう、これぞフランス音楽というカラフルな音。優雅なウィーン風ワルツを模しながらも、強烈な不協和音が不安感を呼び起こす。たくさんの絵の具を混ぜすぎて濁ってしまったような不協和音を、美しく聴かせる辺りはなかなか心憎いものである。なるほど、ご本家の「ラ・ヴァルス」とはこういう曲だったのか。これはBravoな演奏だ(と思う。…何しろ2階の中段なので…)。
 拍手が鳴り止まず、またオーケストラのメンバーも席を立たないのでアンコールがあるのかな、と思っていたら、ステージにルネ・マルタンさんが登場、トークを始めた。ラムルー管弦楽団は日本と深いつながりがある、それは佐渡裕さんの働きによるものである、云々。オーケストラのメンバーも追加されてフルサイズに拡大された。スネアドラムを持った人がステージ中央に陣取ったから、これはもう「ボレロ」しかない。マルタンさんいわく「サプライズをご用意しました。佐渡裕さんの登場です!!」おぉ! というわけで、アンコールは佐渡裕さんの指揮で「ボレロ」。これが最高に盛り上がった。またラムルー管の上手いこと。それぞれの楽器が、まさに異なる色の絵の具のように、次々と新しい色を出してくる。最後の全合奏の爆発的な音圧と満艦飾を混ぜ合わせたような色彩感には圧倒させられた。これもBravo!! 間違いなし。

■公演番号227 21:15~22:00 ホールB7 S席 12列 29番 2,500円
ヴァイオリン: オーギュスタン・デュメイ
ピアノ: 児玉 桃
【曲目】
ドビュッシー: ヴァイオリン・ソナタ
フランク: ヴァイオリン・ソナタ イ長調

 時刻は午後9時を過ぎ、普段ならコンサートが終わる時間帯、本日最後の公演は、大御所、オーギュスタン・デュメイさんのヴァイオリン・リサイタルである。デュメイさんは過去に聴いたことはあるが、「ラ・フォル・ジュルネ」では過去にも来日されているが、チケットが取れなかったため、今回やっと聴くことができた。ピアノは児玉桃さんである。この組み合わせもなかなか良い。
 ドビュッシーもフランクも、さすがに本場物という感じで、フランス人らしいエレガントさとヒラメキに満ちた演奏である。その音色は時には深く、時には軽やかで、豊潤ではあるが軽妙でもある。決して派手な演奏ではなく、芯の強さは男性的ではあるが、全体はあくまで繊細な印象が強い。音楽に対する立ち位置が柔軟に感じられ、曲想に応じて豊かな表情を見せる。これがエスプリというものか。何とも素敵な演奏であった。

  *  *  *  *  *

 これにて今日の公演はすべて終了。もう午後10時である。6公演ということは、普通のコンサート3回分くらいの分量である。オーケストラあり、ギター・リサイタルあり、ソプラノ・リサイタルあり、ピアノ・リサイタルあり、ヴァイオリン・リサイタルありと、バラエティに富んだ1日であった。このように多種多様なコンサートを一度に聴くことができるのは、やはり「ラ・フォル・ジュルネ」の魅力である。今回は2日連続で打ち止めとし、明日の最終日はお休みにすることにした。出演者の皆さん、も、スタッフの皆さんも、来場等され皆さんも、お疲れ様でした。

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盛り上がりましたね (shun)
2014-07-04 01:00:34
215聴きました。私も2階席だったので、音響的には(特にピアノは)不満が残りましたが、最後に佐渡さんの登場で大盛り上がりでしたね。楽しめました。
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