赤子が この世に生まれる
綿々と続く 人の歴史の中に
人の子として この世に生まれる
赤子の寝顔の 奥深くに
声にはならない 魂というものが
すでに 何もかも分かっているような
そんな風に 感じられるのだ
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頭脳明晰な批評家の妻が 癌に侵される
そして 余命を宣告される
日頃 抹香臭いお経を毛嫌いする彼が
通りかかった地蔵に 手を合わせる
藁にもすがる思いで
どんなに 強がって生きたところで
人間とは弱いもの
どうしようもなく
大波に翻弄される 小舟のように
そう自覚して 一心に手を合わせる
人間とは こういうものなのだ
どんなに 矛盾に満ちていようとも
それでも心臓は あたたかく鼓動しているのだ
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人が 知的に物事を語ったところで
その言葉に どれほどの力があるものか
その言葉は 精巧な時計の歯車のように
実際の力となって
秒針を 動かすことができるのだろうか
空転することなく
そうであれば 秒針の音が
魂にまで 響いてくるはずではないだろうか
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すべての人が 感動するもの
それは 究極的に同じものではないか
だから 人と人の心は通いあうことができる
信頼することができる
そんな風に 人はこの世に生きている
そのように思う
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