世界の人々の 心の中にある 愛という言葉
それは日本人の 私の頭の中にある言葉
心の中にある 血の通った言葉ではなく
その愛という言葉の 本当の姿は何だろう
それは万人に 分け隔てなく 手を差し伸べる
菩薩の心 のようなものだろうか
その愛が 世界の人々の 心の中にある愛と
同じかどうか 分からぬけれど
その愛に 紛争の絶えぬ世界を
救う力は どれほどあることだろう
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世界の人々の 心の中にある 愛という言葉
それは日本人の 私の頭の中にある言葉
心の中にある 血の通った言葉ではなく
その愛という言葉の 本当の姿は何だろう
それは万人に 分け隔てなく 手を差し伸べる
菩薩の心 のようなものだろうか
その愛が 世界の人々の 心の中にある愛と
同じかどうか 分からぬけれど
その愛に 紛争の絶えぬ世界を
救う力は どれほどあることだろう
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時々 鍋を搔きまわす
すると 鍋の底から 暗く黒い具が顔を出す
その具の消えることのない汚れに 心が痛む
そして その具に火を通しては また 鍋の底に沈めていく
するとまた 鍋の底から 新たな暗く黒い具が顔を出す
時々 鍋を掻きまわしては
そんなことをくり返しながら
人間として 決して立派ではない私は
こうして生きていくしかないのだと
そう思いながら 時々鍋を掻きまわす
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死に絶えたように思える ウィルスが
土の中に じっと息をひそめ
ふとした拍子に 大気にまん延する
心の底深く沈んだ 暗いおもいが
ふとした拍子に 頭をもたげ 顔を出す
我が心はどうしようもなく かき乱される
どんなに悟りきった顔をして 生きたところで
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人はなぜ この世に生きるのだろう
こうして光の中に 大気の中に 風の中に 人々の中に
素直な心で
生きる喜びを 感じながら
人々と喜びを 悲しみを分かち合いながら
生きていく
それだけで生きることのすべてが 満たされる
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自然の中の
草木の ひとつひとつが
命のひみつについて 語っている
素直な気持ちで 耳を 心をすませば
その声が 聞こえてくる
普段気がつかない 時計の秒針の音が
聞こえてくるように
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老いては
誰も逃れることのできない
死へ 近づいていく
朝 ごく自然に 何事もなく
静かに 死んでいる
電池が 切れるように
そのように 死んでいけたなら
どんなに よいことか
そうあってほしいと
そう願いながら
老いていく
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収穫が終わった 秋の澄みわたった日
空はどこまでも青く
静謐な大気が 地をおおう
上空に群れていた蜻蛉は いつの間にか姿を消し
かすかな風に すすきとえのころ草の 穂がゆれる
熟成した葡萄酒のように
あたりに豊かな命が 満ちているのを感じる
迫りくる冬を 目の前にして
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小説も詩も 魂が求めるものの
表現方法であるとすれば
小説は ひとつの主題に向かって
外堀を埋めながら 核心部分に迫っていく
何百ページもの 文章を費やしながら
一方詩は 直接 核心部分に迫っていく
たった一ページの 濃縮された言葉によって
人生の 真実について
小説が 夜空に開く
大輪の 花火であるとすれば
詩は 夜空に一瞬 鮮烈に輝く
光のようなものに違いない
木々が 美しく色づき
秋が 深まっていく
自然は なぜ
これほどにも 美しくあるのだろう
それはきっと 神のもとに
これほどにも 美しくあるのだろう
そしてきっと 我々の
魂の 幸福のためにも
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息を止めて 潜水をする
暗い 海の中を
ずっと 向こうに
かすかに 光が見える
しかしそこまでは 息が続かない
やがて 誰もが
暗い海の底に 沈んでいく
人間としての 限界の中に
この世に 生きるとは
きっと こういうことに違いない
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たとえば 人類の天才的な頭脳
アインシュタインのような
宇宙の法則を 解明するような
人間の存在意義は
そういう頭脳のために あるのだろうか
人は 神であるはずもなく
また 神になることもできない
そこには自ずから 人間としての限界がある
宇宙にあまねく充満する 大いなる力
そして 光
その中に 生物としての人間が生きる
こうして 心臓の鼓動を感じながら
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心の中に
諸々の思いが うずまく
心の中の 塵あくたが
我が心を 苛む
夜も 眠れぬほどに
しかし 大いなる自然は 大地は
静かなる 光の中に
じっと たたずむばかりだ
何も こばむことなく
すべてを 受け入れながら
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