孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

アメリカ・ミシガン州 水道水汚染で非常事態宣言

2016-01-17 20:40:24 | アフリカ

(積雪の中、住民に配られるボトル水 【1月17日 Greatnews http://www.greatnews.top/環境/52798819.html】)

住民約10万人にボトル水配布
水道水の安全性に関する話題。また環境問題が深刻化している中国か・・・と思いきや、アメリカ・ミシガン州の出来事です。

*****米ミシガン州で汚染水問題、オバマ大統領が非常事態宣言*****
バラク・オバマ米大統領は16日、ミシガン州に非常事態を宣言し、汚染水による影響がでている地域を公的資金で支援することを発表した。ホワイトハウスが明らかにした。

人口約10万人のミシガン州フリントでは、経費節約に端を発する水源の切り替えで、現在供給されている水道水が鉛に汚染されていることが明らかになり、州当局は大規模な健康危機への対処を迫られている。

問題が発生し始めたのは、市当局が経費削減のため、デトロイトから水を購入するのを止め、フリント川の水を利用するようになった2014年4月。

住民は水が原因で気分が悪くなるなどの体調不良を訴えていたが、州当局は悪臭のする水による健康被害の危険性を数か月間無視していた。

米国自由人権協会(ACLU)と天然資源保護協議会による訴状によれば、ミシガン州の環境当局は、フリントの浄水場では州と政府の水質安全基準を満たす水を供給できないにもかかわらず、フリント川の水を利用することを許可していたという。

市当局がフリント川の水を供給し始めてからすぐに、住民からは水道水の濁りや悪臭の他に、吐き気や発疹、抜け毛を訴える声が上がっていた。【1月17日 AFP】
********************

ミシガン州フリントという都市は、デトロイトの北西約100キロのフリント川に沿った都市で、自動車産業衰退とともに財政状況が悪化し、全米危険な都市ランキングにランクアップされる治安が極めて悪い都市としても有名です。

“GMの発祥地であり、長年同社の工場が市経済を支えるという典型的な企業城下町であったが、親会社の経営不振により、市内工場を閉鎖。その結果、大量の人口流出とともに市街地の急激な衰退、著しい犯罪率増加を招くこととなった。今日では全米で特に危険な都市の一つに数えられるまで悪化している。2011年の1000人当たりの暴力犯罪率は23.4%で、全米で最も危険な都市とFBIにより発表された。”【ウィキペディア】

そうした苦しい財政事情から、デトロイトから水を購入するのを止め、フリント川の水を利用するようにしたところ、この水質が腐食性で、水道管を溶かし、水道水に鉛が混入する事態となったものです。

昨年10月の検査により、飲料水と子供たちの血液に鉛の含量が増加していることが明らかになっています。

現在は、水源をまたデトロイトに戻していますが、すでに水道管が腐食しているため、安全性が確保できない状態が続いており、州兵や現地警察、ボランティアなどを動員して住民へのボトル水配布が行われています。

この問題では、州当局の安全管理の在り方、隠蔽体質が厳しく批判されています。

****オバマ大統領が緊急事態宣言:ミシガン州フリントの水質汚染 ****
・・・・2014年に、財政がひっ迫していたフリント市では、デトロイトのヒューロン湖から水を引く代わりに、近郊のフリント川から取水処理するシステムに切り替え、1900万ドルのコスト節減を図りました。 

その直後から水がまずい、色がついている、臭いと住民から苦情が寄せられ始めました。腐食性の水が古い水道パイプから鉛を飲料水にしみ出させていたのです。

こうしてクリント市の飲料水は汚染されましたが、より拙いことに、当局者は1年もの間この事実を公表しなかったのです。

この飲用に適しない水道水により、2015年にはレジオネラ菌汚染が起こり、少なくとも87件が健康被害を報告、うち10人が死亡するという事件も起きています。

非常事態宣言
現在ミシガン州・フリント市では、安全宣言が出されるまでは住民は水道水を飲むことができないため、水の配布要員として州兵らが現地入りしたことが報じられています。

昨年10月に緊急事態宣言が発動されて以来、現地警察とボランティアにより、積雪10 cmの中、約30,000世帯(99,000人の住民)1件1件にボトル水の配布が行われています。 

事態発覚後、飲料水の供給システムは以前のものに戻されているのですが、水道管自体がすでに鉛に汚染されており、今後の安全な水道水供給の見通しは立っていないということです。

そのため解決には相当の時間と経費が掛かると見られ、住民らは怒りを露わにしています。

この一件で先月、水道水管理局の責任者は辞任に追い込まれ、問題を放置した市長も市民の非難を浴びています。 

鉛の摂取は特に子どもへの影響が大きく、行動障害や学習障害などの健康問題を引き起こす恐れがあるとされています。小児科医は「5年から15年といった長期にわたる経過観察が必要だ」と語っています。

当初市側では、水道水供給システムの切り替えにより年間400万ドル(約4.7億円)のコスト削減を見込んでいたと報告されていますが、それよりも遥かに甚大な住民の健康被害を招いてしまったようです。

危険な水道水
フリント市は先週金曜日に、「当市は連邦飲料水安全法を全面的に遵守していますが、水道水を飲むのは危険です。」という公式の勧告を発表しました。

“法を順守しているのに水が飲めない”理由を知るためには、まずフリント市が昨年、水源をデトロイトのヒューロン湖から、フリント川に切り替えたことが発端だということを知らなければなりません。それ以降、水道水の鉛レベルが倍増したのです。

ミシガン州の保健福祉局は「鉛レベルは全く問題ない程度」と否定しており、レベルの上昇は季節的な要素が原因で、水源とはまったく関係ないと主張しています。

しかし困ったことに、問題は水道水だけではないのです。

バージニア工科大学の研究者が発見したところによると、問題の根源は、フリント川には湖や他の水源よりも多くの堆積物が含まれているということにあるのです。これは、鉛のろ過以上に堆積物の本格的な浄化処理が必要ということなのです。 

こうした腐食性の水が水道管やパイプに触れ、配管がひどく腐食してしまうのです。

その結果、多量の鉛が家庭の蛇口から水道水とともに流れ出ることになり、端的に言えば、毒性レベルの鉛がこの地域の15,000世帯の水道水に滲出している計算になりました。 

この地域でまだ幾つか操業しているゼネラルモーターズの工場では、フリント川が市の主要水源となってから半年後には、水道水が不自然に腐食性を持っている事に気付き、この水の使用を中止していました。

そしてようやく、市側も水道水が危険であると認識したのです。 

先週ハーレー医療センターは、ある特定の地域では特に、子供達の血液から異常に高い値の鉛が検出されたと公表しました。

子供達が鉛中毒に陥ると、学習障害から内臓障害まで、“不可逆的”な健康被害に陥る可能性があります。記憶障害やIQ低下は、鉛中毒関連の症例の中でも顕著な障害です。そして“不可逆的”とは、生涯にわたって治ることは見込めないということなのです。 

成人についても、発作、腎臓障害、流産などが増加し、健康被害が次々と報告され始めています。そしてこれらも、生涯完治することはないのです。

医師達は現在妊婦、老人、子供に対しては、今後もフリント市の水道水を飲まないように厳重に警告しており、ジェネシー郡(フリント市が郡庁所在地)のフリント市近隣の市にも、健康被害の恐れがあるとの警告を発令しました。【1月17日 Greatnews http://www.greatnews.top/環境/52798819.html
*********************

****毒を盛られた民主主義:選挙で選ばれない役人が節約のためフリント市の飲料水を汚染****
ミシガン州フリント市では、いま起きている危機的な水質汚染をめぐり、リック・スナイダー州知事の逮捕を要求する住民が増加しつつあります。

飲料水の鉛汚染について連邦検察局が捜査を開始したことを知ったスナイダー知事は、6日、フリント市に非常事態を宣言しました。

この有害物質による水質汚染が始まったのは、スナイダー知事に指名された選挙によらない非常事態管理者が財政を節約するため、市の水源を長年汚染されていたフリント川に切り替えてからのことです。

鉛中毒は、記憶障害や発達障障害などの生涯にわたる健康被害をたらします。

フリント川を調査し続けているバージニア工科大学の研究員によると、市が1日100ドル程度の費用で水質処理を向上させていれば、この問題を回避できたはずでした。

7日にフリント市長が発表したところでは、いまや市の水インフラを修復するには15億ドルもの費用がかかる恐れがあります。この問題に関して細かく取材しているアメリカ自由人権協会ミシガン支部の調査報道記者カート・グイエッテに話を聞きます。

州と連邦が隠ぺいする中 研究員と住民がフリント市水質汚染をあばく
フリント市の住民は 1年以上にわたり水質に関して苦情を申し立てていましたが、州政府は彼らの訴えを聞き入れませんでした。

昨年2月の水質検査で憂慮すべきレベルの鉛が検出されましたが、住民には、何の危険もないと説明されました。

同月に、ミゲル・デル・トラルというEPA(米国環境保護庁)職員が鉛汚染について警告するメールをミシガン州環境省に送りましたが、何の措置も施されませんでした。
彼は4月にEPAにもメールを送りました。

7月にはスナイダー州知事の首席補佐官デニス・マッチモアが、フリント住民は「私たちにだまされている」と認めるメールを保健衛生職員に送っていました。

「スナイダー州知事は逮捕されるべき」フリント市住民が水質汚染の裁きを要求
ミシガン州フリントでは、州政府が危機的な水質汚染の進行を隠ぺいしてきたことに抗議の声が大きくなっています。

映画監督のマイケル・ムーアは自身のウェブサイトでリック・スナイダー州知事の即時退陣を要求する嘆願書に署名するようファンに呼びかけています。

州知事宛の公開状で、「あなたは私の住むミシガン州フリントの子供たちの、一部ではなく全員に毒を盛ったに等しい。この罪により、刑務所へ行かなければならない」と彼は書いています。
フリント民主主義連盟のコーディネーターのナイラ・シャリフに話をききます。【1月8日 Democracy Now! http://democracynow.jp/dailynews/2016-01-08
*******************

温暖化で重要性を増す水資源 干ばつが続くアメリカ西部は・・・
アメリカの一都市におけるローカルな話題ではありますが、人間は水なしでは数日ともたないこと、水不足は農業・工業に決定的なダメージを与えること、そして今後、地球温暖化が進行とともに世界的に水が不足するであろうことを考えると、水をめぐる問題は非常に重要かつグローバルな問題です。

すでにアメリカでは、2015年8月25日ブログ「温暖化 アメリカ西部が「メガ干ばつ」へ ロシア・シベリアでは永久凍土融解でメタン放出」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20150825)や、2015年5月18日ブログ「アメリカ・カリフォルニア 深刻化する水不足 もし来年も雨が降らなかったら・・・・」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20150518)で取り上げたように、4年にわたって干ばつが続いています。

昨年夏にはカリフォルニア州知事は緊急事態を宣言し、同州全域で25%削減を目指す史上初の節水令を発しています。

おそらく、この干ばつ現象は一旦はおさまるのでしょう。しかし、忘れた頃に再び・・という事態を繰り返すのでしょう。

人間は忘れやすい生き物ですから、「のど元過ぎれば・・・」ということで、根源的な対策はなかなかとられません。

今世紀末には極めて深刻な状況に至るとの予測もあります。
水資源の高値での売買はもちろん、場合によっては奪いあいから衝突もありえます。
水資源を確保できない地域では生活ができなくなります。

****アメリカに迫り来る未曽有の「メガ干ばつ****
今世紀後半に米南西部と大平原地域を、過去1000年で最悪の干ばつが襲うとの衝撃の研究が

この数年、カリフォルニア州を含む米西部は記録的な干ばつに襲われ、水不足と農作物の不作に悩まされている。

NASA(米航空宇宙局)は「州内の水源に残された水はあと1年分」と警告。同州産のオレンジやアーモンドの価格は既に高騰し、州政府は4月、州内全域を対象に25%の節水を義務付ける初の行政命令を出した。

しかし新たな研究によると、真の危機が訪れるのはこれからだ。米西部には、より「乾燥した未来」がやって来る。

今年2月、NASAとコーネル大学、コロンビア大学の研究チームが発表した論文によれば、米南西部と大平原地域には過去1000年で最悪の干ばっが迫っているという。そうした「メガ干ばつ」はおそらく今世紀後半に起こり、10~数十年続く可能性もあるとのことだ。

「われわれの研究によれば、北米大陸西部の自然界と人類は、現代史上の経験をはるかに超えた乾燥状態に見舞われるだろう。それに適応するのは、極めて困難かもしれない」と、研究チームは論文で記している。

そうなれば、人々の暮らしが今以上に過酷になることは避けられない。まず、水不足で食料生産が打撃を被るだろう。そして最も手ごわい問題は、飲み水の確保。既に米西部では、飲み水不足に陥っている地域がある。

「再生不可能な資源である地下水の枯渇が幅広い地域で進んでいる。これまでは地下水を活用することにより、自然に繰り返される干ばつの影響を和らげられていた」と、研究チームは指摘している。(後略)【2015年8月25日号 Newsweek日本版】
*******************

これまでアメリカ西部は、地球が地下に蓄えたきた水を人工的に汲み上げることで、“砂漠の中の都市ラスベガス”のような現代文明を築いてきましたが、その水が枯渇し、新たな降雨も期待できないとなると・・・。

そんな不幸な近未来を考えてしまうのは、今読んでいる小説「神の水」(パオロ・バチガルピ 著)のせいでもあります。

*******************
近未来アメリカ、地球温暖化による慢性的な水不足が続くなか、巨大な環境完全都市に閉じこもる一部の富裕層が、命に直結する水供給をコントロールし、人々の生活をも支配していた。

米西部では最後のライフラインとなったコロラド川の水利権をめぐって、ネバダ、アリゾナ、カリフォルニアといった諸州の対立が激化、一触即発の状態にあった。

敏腕水工作員(ウォーターナイフ)のアンヘルは、ラスベガスの有力者であるケースの命を受け、水利権をめぐる闇へと足を踏み入れていく…。【amazon.co.jp】
******************

すでにテキサス州は放棄され、住民は難民と化していますが、隣接各州は州主権のもとで州境を封鎖。民間武装勢力を利用して越境者を実力で阻止。越境の手引きをする業者も暗躍。その犠牲になる難民も。
アリゾナ州も唯一の水源の確保が困難となっており、人々は一杯の水を求めて列をなすなかで、一部特権階層は・・・といった近未来SFです。

(特権階層のひとつにアメリカに進出した中国資本があって、ドルと同時に中国元が流通しているという設定も面白いものがあります。)

欧州に押し寄せる難民問題、あるいはラテンアメリカとアメリカの関係をアメリカ国内に置き換え、温暖化問題を組み合わせた環境設定のエンターテイメントではありますが、妙にリアルな感もあるのが怖いところです。

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 台湾総統選挙  野党・民進... | トップ | タイ「深南部」の紛争 「戦... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

アフリカ」カテゴリの最新記事