孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ミャンマー  少数民族武装勢力と国軍の衝突・対立、抵抗市民勢力との共闘で内戦の危険性も

2021-04-01 21:59:46 | IT AI

 

(【4月1日 AFP】)

 

【国軍と少数民族武装勢力の衝突も激化】

抵抗運動に対する国軍の市民射殺をも厭わぬ強硬な鎮圧姿勢によって混乱を極めるミャンマー情勢に関しては、3月27日ブログ“ミャンマー 市民虐殺を強める国軍 恐怖で沈静化を目指す ロシア・中国、そして日本は?”で取り上げたばかりですが、ここにきて少数民族武装勢力を巻き込んだ「内戦」の危機が語られるようにもなっています。

 

*****「家にいたら爆弾が落ちてきた」空爆被害者が語った瞬間・・・ミャンマーで内戦勃発の懸念も****

ミャンマー東部で国軍による空爆により負傷した少数民族カレン族の住民が初めて取材に応じた。爆風で吹き飛ばされてタイに搬送されたカレン族の男性は、空爆を受けた直後に意識を失ったとFNNに語った。

 

「家にいたら飛行機から爆弾が落ちてきた」

3月27日午後8時頃、東部カイン州の自宅で家族と共にくつろいでいたソー・ジャー・ビーさん(48)は、ミャンマー国軍の空爆攻撃を受けて吹き飛ばされ、その場で意識を失った。

 

再び意識を取り戻した時には、すでにタイ国境近くまで運ばれていた。ソー・ジャー・ビーさんは肺に穴が開く重傷でミャンマー国内では治療困難と診断されたため、30日午前にタイ国内の病院に搬送された。

 

ミャンマー国軍は27日の夜以降、タイ国境に近いミャンマー東部カイン州で少数民族の武装組織KNU=「カレン民族同盟(KNU)」の支配地域を断続的に空爆した。

 

この空爆で7つの村が爆撃を受け、およそ1万人の住民が村から避難し、うち3千人がタイ国内に越境した。カレン平和支援ネットワークによると27日の空爆では3人が死亡、7人が負傷した。空爆はその後も断続的に行われ、死傷者はさらに増えたとみられている。

 

タイへの越境が認められた負傷者7人は30日午前、タイ・メーホンソン県内の病院に搬送された。(中略)

 

「空爆はやめてほしい」

FNNが訪れた病院には4人が入院。前述のソー・ジャー・ビーさんもその一人だ。我々は病院担当者の許可を得て、カレン語の通訳を通じて話を聞いた。

 

「現地では食べ物や薬が不足しています。生活用品やドライフードなど、避難の時に必要です。空爆はやめてほしい」

 

国軍の空爆で重傷を負ったソー・ジャー・ビーさんは、FNNの取材にこのように語った。

 

カレン族の一般市民には今も空爆を恐れて森の中で避難生活を続けている人が多くいる。ソー・ジャー・ビーさんは、ベッドに横たわりながらも、懸命にこうした人々への支援の必要性を訴えた。

 

今回のミャンマー国軍による空爆は、カレン民族同盟による国軍への攻撃に対する報復として行われた。空爆に先立ちカレン民族同盟は27日朝、国軍の拠点を襲撃し10人を殺害、別の8人を拘束したと表明していた。

 

国軍との衝突を繰り返してきた武装勢力

ミャンマーには少数民族の武装勢力が20以上存在し、1948年の独立以降、国軍と衝突を繰り返してきた。

 

今回空爆が行われたカイン州は近年、比較的平穏であったが、国軍のクーデター以降は状況が大きく変わってきている。カレン民族同盟は3月以降、ミャンマーの治安部隊からデモ隊を守るために武装要員を派遣するなどクーデターで実権を握った国軍への反発を強めている。

 

また、こうした動きはカイン州だけでなく他の地域でも起きている。北部カチン州では武装勢力・カチン独立軍(KIA)が国軍への攻勢を強めている。

 

別の3つの少数民族武装組織(アラカン軍(AA)、タアン民族解放軍(TNLA)、ミャンマー民族民主同盟軍(MNDAA)も国軍を非難する共同声明を発表した。国軍側も少数民族に対し強硬姿勢を取り始めている。

 

いまも治安部隊による激しいデモ弾圧が続き、犠牲者が増え続けているミャンマー。
加えて国軍と少数民族の武装勢力との衝突が更に広がれば、内戦勃発の引き金となる危険性をはらんでいる。

【4月1日 FNNプライムオンライン】

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ミャンマーには多数の少数民族が存在し、ミャンマーの国土の約3分の1が、20余りの武装勢力によって支配されていると推定されています。

 

これら少数民族は国境沿いの地域で資源の密貿易などの「利権」を有しており、独自の軍組織も有しています。

ミャンマー中央政府と少数民族の「和解」交渉というのも、この「利権」をどこまで少数民族に保証するのかという問題にも帰着します。

 

この少数民族との和解はスー・チー政権の大きな課題のひとつでしたが、国軍の強硬姿勢もあって、その交渉は停滞していました。

国軍はこれまでも、武力衝突も辞さないより強い姿勢で少数民族武装勢力に対峙してきました。

 

****【解説】ミャンマーの少数民族武装勢力****

国軍のクーデターによる混乱が続くミャンマーで、軍によるデモ弾圧に対し報復を警告するなど、国内の少数民族武力勢力に注目が集まっている。

 

ミャンマーは1948年、英国の植民地支配から独立。文化、民族、言語が異なる複雑な寄せ集め国家が誕生した。

 

シンクタンク「国際危機グループ」によると、ミャンマーの国土の約3分の1が、20余りの武装勢力によって支配されていると推定される。この大半が、国境沿いの地域だという。

 

主な武装勢力には、ワ州連合軍、カレン民族同盟、カチン独立軍、アラカン軍、タアン民族解放軍、ミャンマー民族民主同盟軍が含まれる。

 

長年軍事政権が続いた後、一時的に民政に移管したミャンマーでは2015年以降、10の武装勢力が政府と全国規模の停戦合意に署名した。

 

だが、北部カチン州やシャン州、西部ラカイン州など一部地域では戦闘が続き、民間人が巻き込まれることもあった。

 

中国の支援を受けるUWSA(ワ州連合軍)は、常時2万5000人の兵力を持ち、非国家武装組織としては世界大勢力の一つとなっている。

 

2月1日、国軍がクーデターを起こし、アウン・サン・スー・チー国家顧問を拘束すると、複数の武力勢力は直ちに軍を批判した。

 

ミャンマーで最も古い武装勢力KNU(カレン民族同盟)は、クーデターは国家に損害を与えると非難。一方、シャン州復興評議会は、国軍は「民主主義のあらゆる規範」に違反しており、信用できないと述べた。

 

さらに、TNLA、MNDAA、AAは3月30日、軍が弾圧を止めず、人々の殺害を続けるなら、抗議デモ参加者らと協力し反撃すると、報復を警告する共同声明を発表した。 【4月1日 AFP】

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【抵抗市民 少数民族武装勢力と共闘模索】

全人口の約3分の2を占めるビルマ族と少数民族の間には「溝」もありましたが、国軍の暴力にさらされる市民側も、従来から国軍とは敵対関係にもある少数民族武装勢力と共闘する道を取り始めています。

 

国軍に抵抗する民主派が「臨時政府」として組織したミャンマー連邦議会代表委員会(CRPH)は1日までに、国軍の政治関与を保障する現行憲法の廃止を一方的に宣言し、「暫定憲法」に当たる憲章を発表。

 

少数民族側が望む連邦制導入をうたった。大幅な自治権拡大を求め、国軍と敵対する少数民族武装勢力に秋波を送った形ともなっています。【4月1日 共同より】

 

*****民主派、憲法廃止宣言=「統一政府」目指す―ミャンマー*****

ミャンマーのアウン・サン・スー・チー氏が率いる国民民主連盟(NLD)の議員らでつくる「連邦議会代表委員会(CRPH)」は3月31日夜、軍事政権下の2008年に制定された憲法の廃止を宣言し、「統一政府」を樹立する計画を明らかにした。

 

クーデターで権力を掌握した国軍に対抗し、「正統な政府」として国際社会に支持を訴える考えとみられる。

 

国軍は2月1日のクーデター後、最高意思決定機関の「国家統治評議会」を設置。CRPHを「非合法組織」と位置付け、圧力を強めている。

 

「統一政府」立ち上げの動きに反発するのは必至で、弾圧を強化する恐れもある。

 

08年制定の憲法は、上下両院議席の4分の1を「軍人枠」と規定しているほか、国防相、内相、国境相の主要3閣僚の任命権を国軍総司令官に与えるなど、国軍の政治関与を認める内容となっている。また、国軍は憲法の規定を根拠にクーデターを正当化している。

 

CRPHは「暫定憲法」に当たる「連邦民主憲章」を制定。少数民族武装勢力にも連携を呼び掛けた。公務員に対しては、職場を放棄する「不服従運動」への参加を促し、4月1日以降も加わらない場合は「対応策を講じる」と警告した。

 

市民に対する国軍の弾圧は続いており、人権団体の政治犯支援協会によると、クーデターから3月末までの2カ月間で、死者は536人に達した。【4月1日 時事】 

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国軍の側も、新設された最高意志決定機関「行政評議会」メンバーの一人に西部ラカイン州の少数民族「アラカン族」出身者を起用するなど、少数民族の取り込みを図ってはいますが、長年の闘争の経緯がありますので、よほどの思い切った好条件を提示しない限りは国軍の少数民族取り込みは難しいでしょう。

 

実際問題として、少数民族への空爆の実施、多くの少数民族武装勢力の反国軍姿勢の表明など、その対立は深まっているのは冒頭記事のとおり。

 

【国連安保理は中国・ロシアの制裁反対で動けず ただし、中国系少数民族などもあって、中国にとっても問題は微妙】

国連安保理においても、国連のミャンマー特使は内戦の危険性を訴えましたが、例によって制裁などの強い措置に対する中国・ロシアの反対で、踏み込んだ対応は示すことができていません。

 

****国連安保理が緊急会合 ミャンマー国軍制裁に踏み込めず 特使は内戦警告*****

国連安全保障理事会は3月31日、国軍のクーデターによる混乱が続くミャンマー情勢を議論する緊急会合を非公開で開いた。

 

国連のブルゲナー事務総長特使(ミャンマー担当)は内戦や大虐殺が起きる可能性があるとして、安保理の断固たる行動を求めたが、国軍関係者への制裁など踏み込んだ対応には至らなかった。

 

国軍幹部らに対する制裁を求める米欧に対し、中国やロシアなどが慎重な姿勢を示したとみられる。中国の国連代表部によると、張軍国連大使は会合で「一方的な圧力や制裁など強制的手段の要求は状況を悪化させるだけだ」と訴えた。

 

終了後、会合を要請した英国のウッドワード国連大使は記者団に「われわれは次のステップに向けた協議を続けていく」と語り、弾圧を終わらせるために「あらゆる手段を検討しなければいけない」と強調した。

 

議長を務めた米国のトーマスグリーンフィールド国連大使は、同時に討議したソマリア情勢についてのみ記者団に説明した。

 

ミャンマー国軍幹部らへの制裁を始めている米国の議長国の任期は31日で終了し、4月1日からはベトナムに交代する。国連筋によると、ベトナムはインドなどとともに、国軍の暴力を強く非難した3月の議長声明の際に修正を要求した。今後の安保理の活動は停滞するとの懸念が出ている。【4月1日 産経】

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なお、ミャンマーの少数民族のなかにはコーカン族のように中国系民族(漢族)も存在し、これまでもミャンマーと中国の間で複雑な問題を起こしてきました。

 

また、ワ州連合軍のように中国の支援を受ける組織もあります。

 

今後、中国の影響力が強い勢力と国軍が衝突した場合の中国の対応も注目されます。

もとより、中国にすれば国軍の支援者とみなされることは、ミャンマー国内における反中国感情の高まり、中国の資産・権益に対するリスクなども存在し、不都合な面もあります。

 

【国軍 少数民族との停戦の提案も】

国軍の側も、これ以上少数民族武装勢力との衝突が拡大すると難しい立場に追い込まれますので、「停戦」を提案したようですが、先行きは不透明です。

 

*****ミャンマー軍、「停戦」を提案 国連安保理は情勢を協議****

 国連の安全保障理事会は3月31日、ミャンマー情勢について話し合う会合を開催した。一方、ミャンマー軍は「停戦」を宣言したものの、政府の治安や統治を混乱させる行動に対する対応は継続するとしている。

 

ミャンマー軍による停戦は武装した少数民族に対する行動を指しているようだ。ミャンマー軍が2月1日にクーデターによって実権を握って以来、少数民族との戦闘が激しさを増している。国営テレビMRTVが伝えた声明では、少数民族に対して和平を維持するよう呼びかけたほか、軍は4月1日から4月30日まで作戦を停止するとした。

 

しかし、こうした和平には政府の治安を乱す人たちは含まれていない。(後略)【4月1日 CNN】

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