年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。
(5月7日 制憲議会の前で実施された憲法制定を支持する集会 27日の期限が近付き、どういう形で落ち着くのか、混迷の度を深めています。 “flickr”より By kguragai http://www.flickr.com/photos/kguragai/7159237492/ )
【新憲法制定に向けて高まる機運 】
ネパールでは、武装闘争を続けていた共産党毛沢東主義派(毛派)が停戦に合意し、王制を廃止し、毛派を含めた諸政党間で新体制づくりが行われていますが、毛派と他政党の対立などから新憲法制定ができない迷走状態が続いています。
しかし、“ネパールで1996年から約10年間、武装闘争を繰り広げた共産党毛沢東主義派(毛派)の旧ゲリラ兵士が今月、和平から6年を経て国軍の指揮下に入った。最大の政治的懸案が解決したことで、2008年の王制廃止後の国のあり方を決める新憲法制定へ、機運が高まっている。”【4月23日 朝日】ということで、長年の政治混乱の原因ともなっていた毛派兵士の国軍統合問題が一応決着し、いよいよ新憲法制定に向けたステップに入った・・・ということを、4月25日ブログ「ネパール 毛派兵士の国軍統合問題が解決、今後は新憲法制定論議へ」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20120425 )で取り上げました。
憲法制定を議論する制憲議会はこれまで4回期限延長を行ってきましたが、その期限も今月27日で切れます。
このタイムリミットを前に、5月3日には与野党4会派による大連立政権の樹立が合意されました。
****ネパール、大連立政権樹立で合意 ****
ネパールで2008年の王制廃止後の新憲法をつくる制憲議会の任期満了が今月27日に迫る中、与野党4会派は3日夜、大連立政権の樹立で合意した。新政権は憲法案承認に必要な3分の2以上の議席を占め、4年を費やした新たな国の枠組みづくりにようやく完成の道筋が見えてきた。
合意に先立ち、議会内第1党・共産党毛沢東主義派(毛派)幹部のバタライ首相が率いる内閣は、バタライ氏を除くすべての閣僚が辞任した。
合意したのは毛派と、議会内第2党のネパール会議派、第3党の統一共産党の両野党など。
合意によると、2日以内にバタライ氏を首相とする大連立政権をいったん樹立。27日の期限に向け、憲法制定の見通しが立った段階でバタライ氏は辞任し、ネパール会議派に首相ポストを移譲する。同党が率いる新たな大連立政権が憲法を公布し、1年以内に総選挙を実施する。【5月4日 朝日】
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更に、15日には、毛派など主要4会派は、新憲法で大統領を直接選挙で選ぶことと全国を11連邦州に分けることで合意しました。
大統領は議会解散権を持たないとされ、大統領制を主張する毛派と議院内閣制を訴えるネパール会議派が歩み寄った形ですが、大統領と首相の権力分掌については決まっていないとも報じられていました。
****ネパール新憲法、大枠決定 主要4会派が合意 ****
ネパールで2008年の王制廃止後の新憲法をつくる制憲議会の主要4会派は15日、最大の懸案だった連邦制の枠組みについて11州の設置で合意した。
14日には統治制度に関しても一致しており、主な論点すべてで合意が図られた。27日の議会任期満了までの憲法制定に向け大きく前進した。
合意したのは、共産党毛沢東主義派(毛派)、ネパール会議派、統一共産党、統一民主マデシ戦線(UDMF)で憲法案の最終承認に必要な3分の2以上の議席を占める。憲法案の枠組みについては当初今月上旬に一致を図る予定で、日程がずれ込んだ形だが、4会派は15日、制憲議会任期内の憲法公布も再確認した。
連邦制に関しては州の数では合意したものの、細かな境界や州名の検討は新憲法制定後に先延ばしした。
また、統治制度は直接選挙の大統領と国会が選出する首相とで行政権を分担するシステムの導入で一致したが、権限の配分までは決まらなかった。
連邦制に関する合意に対してはUDMF内部や先住民族などの全国組織から反対の声が上がっており、民族組織は抗議活動やゼネストを計画。憲法公布に向け、国内が混乱するおそれがある。(ニューデリー=五十嵐誠)【5月17日 朝日】
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【少数民族の反対で再び迷走 】
ここまではなんとか漕ぎつけたのですが、上記記事の最後にあるように、11州を設置するという連邦制について、少数民族などから強い反対があり、再び迷走を始めています。
「各民族が州を持つべきだ」とする少数民族は3日間のゼネストを22日まで行っています。
****ネパール:憲法制定で政治混乱 国民同士の対立深刻化 ****
立憲君主制から共和制へ移行したネパールで、08年の王制廃止以降、最大の懸案の憲法制定を巡り、政治混乱が広がっている。
制憲議会の主要4政党の議論に不満を訴える少数民族が22日までの3日間、全国でゼネストを繰り広げたため、首都カトマンズなどで市民生活がマヒ状態に陥った。23日にはこれに反対する都市生活者の大規模なデモが首都であり、国民同士の対立が深刻化している。
政府は22日、今月27日で切れる憲法制定を議論する制憲議会の期限を3カ月延長する法案を議会に提出した。期限延長は5度目となり、最高裁は認めない姿勢を示している。期限の27日までに憲法を制定することは絶望的で、政治的な危機が広がる恐れがある。
憲法制定の議論で最大の問題は、連邦制のあり方だ。主要4政党は今月初め、11州に分ける案に大筋合意していたが、国民の7割を占める100以上の少数民族が「各民族が州を持つべきだ」と主張し、ゼネストとデモを展開した。
ストの呼びかけを無視する店舗やタクシーなどが次々と襲撃されたため、カトマンズなどでは、スト期間中、全ての商店がシャッターを下ろし、一般車の通行もできない異常事態となった。デモに参加したタル民族のカムレシ・チョードリーさん(29)は「我々少数民族に土地と財産、安心できる生活権をくれというのが要求だ。これが確保されない限り憲法制定は認めない」と話した。
こうした少数民族の動きについて、英字紙「リプブリカ」のコスモス・ビショカルマ編集長(45)は「これまで社会の隅に追いやられていた少数民族たちが初めて政治的に覚醒したためだ」とみる。
一方、議会第1党のネパール共産党毛沢東主義派(毛派)が、憲法制定後の議会選で影響力を維持するため、少数民族をあおっているとの見方も強い。毛派は武力闘争を展開していた90年代から「少数民族の解放」を訴えていたからだ。
だが、毛派幹部のキムラル・デブコタ議員(46)は「すでに少数民族は我々が制御できない状態だ」と語る。第2党・ネパール会議派の幹部で議員のラム・マハト元外相(61)は「今後、無政府状態になる恐れがある。出口なしだ」と語った。
制憲議会は08年に発足し、10年までに憲法を制定する予定だった。議会内の内紛で首相の辞任・就任を繰り返し、憲法制定期限も4度延長してきた。【5月24日 毎日】
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27日の期限内に新たな合意を図るのは困難と判断した主要4会派は22日、議会の任期を3カ月延長することを決めました。
しかし制憲議会の5度目の延長に対し、最高裁は24日、政府の任期延長動議を暫定憲法違反とし、差し止める命令を出しました。とにかく大枠でもいいから、まとまるところで一旦憲法を作れ・・・という指示です。
これを受けて、主要3政党の共産党毛沢東主義派、ネパール会議派、統一共産党などから成る連立政権は、期限内の憲法公布を目指すことになりました。
しかし、複数民族を含む11の州を主張するネパール会議派、統一共産党と、1民族1州を主張する毛派や少数民族側の対立は厳しく、どうなるのか・・・よくわかりません。
【ネパールの民族事情 】
“国民の7割を占める100以上の少数民族”とのことですが、各民族ごとに州を作ると膨大な数の州ができそうです。居住地が混在しているエリアはどうするのでしょうか?
そもそも、7割が少数民族ということでは、多数派は3割しかないということになり、“多数派”とも言えないようにも思えます。
ウィキペディアによれば、ネパールの最大かつ支配的民族として、ネパール語を母語とする「パルバテ・ヒンドゥー」があげられています。
“パルバテ・ヒンドゥー(Parbate Hindu, Parvate Hindu)はネパールの最大かつ支配的民族。ネパールの人口のほぼ半分を占める。山地のヒンドゥー教徒という意味。インド・イラン語派に属するネパール語を母語とする。シャハ王家もこの民族集団に属す。
インドとは違ったカースト体系を持つ。最大の民族であるにもかかわらず、ネパールではあまりこの言葉は用いられず、国勢調査ではカーストに分けて統計を取っている。
「バフン(丘陵ブラーマン)」(バラモンに相当)、「チェトリ」(クシャトリアに相当)、「カミ」(不可触賎民の一部)など、上位カーストと下位カーストのみあり、ヴァイシャ、シュードラ(中位カースト)に相当するものが存在しないのが特徴である。”【ウィキペディア】
3割の多数派というのは、この「パルバテ・ヒンドゥー」のうち、「バフン(丘陵ブラーマン)」や、「チェトリ」など支配的なカーストの合計でしょうか?
ネパールの国土は、北部の山岳地帯からカトマンズなどの丘陵地帯を経て、インド国境・南部の平野部に至る地形構造をしています。
この平野部には「マデシ」と呼ばれる、北インドの影響を強く受け、共通語としてヒンドゥー語を話す人々が暮らしています。
“マデシとは、タライ、またはテライともいわれるインド国境地帯に東西に細長く広がる肥沃な平原地帯(マデス)に住む人々のことである。現在の行政区画にはない。この細長い地域は文化的に北インドの影響が強く、丘陵地帯に住むネパール人の主流派パルバテ・ヒンドゥーから差別を受けてきた。このため、近年、「マデシ人権フォーラム」などの団体が中心になって、マデシ自治区を設け、高度な自治を実現するように、バンダ(ゼネラル・ストライキ)・チャッカジャム(交通妨害)などの激しい抗議活動を行ってきた。2008年の制憲議会選挙ではマデシ系のいくつかの政党が目覚しい議席数を獲得している。”【ウィキペディア】
上記のように08年選挙で大きな議席を獲得し、副大統領は「マデシ人権フォーラム」から、大統領はマデシ出身のネパール会議派から選出されるというように、ネパール政界でははもはや無視できない、キャスティングボードを握る政治勢力となっています。
更に、この南部の平野部には、マデシより更に古い先住民族「タルー」も存在します。
多くの「タルー」が北部からの移住者に土地を奪われ、債務を負い実質的には奴隷同様に一生働かされる農奴(カマイヤ)となっている問題もあります。
ネパールの民族事情はよく知りませんが、今回の11州の連邦制への反対は、これまで社会的に抑圧されてきた「マデシ」や、「タルー」などの先住民族が中心となっているようです。
日本から見ると「ネパール人」としてひとくくりに見てしまいますが、複雑な民族事情で「ネパール人」というアイデンティティーがまだ確立していないようにも見えます。
憲法制定は、そうした「ネパール人」のアイデンティティーを形成していくものでもある訳ですが、その入り口でアイデンティティーの欠如から立ち往生している感があります。
(23日カイロ 投票所の前で列をなして開場を待つ女性有権者 “flickr”より By rassdphoto http://www.flickr.com/photos/79169928@N07/7256651004/ )
【混戦の有力4候補 】
「アラブの春」でムバラク政権が崩壊したエジプトでは、23,24日に初の自由な大統領選挙がおこなわれました。
事前の報道では、有力候補は、アムル・ムーサ前アラブ連盟事務局長(75)、アフマド・シャフィク元首相(70)の世俗派と、穏健派イスラム原理主義組織ムスリム同胞団傘下の自由公正党のムハンマド・モルシ党首(60)、元同胞団幹部のアブドルメナム・アブルフトゥーハ氏(60)のイスラム勢の4名とされています。
ただ、後述のように、左派のハムディン・サバヒ氏の名前があがるなど、この種の報道がどこまで現状を反映しているかは、よくわかりません。
ムーサ前アラブ連盟事務局長は、ムバラク政権で外相を務め、イスラエルへの強硬姿勢から人気を高めました。
しかし、「ムバラク前大統領に人気を危険視された」(元エジプト外務省幹部)から、外相を外され、アラブ連盟事務局長就任に祭り上げられています。
昨年1月に反政権デモが起きると早々とこれを支持し、大統領選への立候補の表明も早い段階から行っています。
“「貧困対策を最優先する」「安全保障評議会をつくり、閣僚と軍の高官で軍事・外交政策を協議する」と打ち出し、貧困層や、内外政の急激な変化を懸念する軍部と国際社会への「全方位外交」を欠かさない。
同胞団のシャーティル氏や、ムバラク氏の側近だったスレイマン前副大統領らの有力候補が選挙管理委員会の審査で失格になるなか、「妥協先」として注目され、世論調査では首位だ。半面、「旧政権の残党」「八方美人」との批判もある”【4月29日 朝日】
シャフィク元首相は、ムバラク政権最後の首相です。元空軍司令官のシャフィク氏は「軍との人脈のない文民を大統領に据えてもうまくいかない。私ならスムーズな変化を促せる」と、軍との関係をアピールしています。
このため、革命後の治安の悪化に不満を募らせる市民や、イスラム勢力の伸長を嫌うキリスト教徒の一部などの支持を集めていますが、「軍部の手先」との見方も根強くあります。
モルシ党首は、総選挙でその底力を見せたムスリム同胞団の公認候補です。
最強の支持基盤を有していますが、 “(当初、大統領選挙に候補を擁立しないとしていた)同胞団は3月、「軍が国民の意思に反した統治を続けているため」と副団長シャーティル氏の擁立を発表。全権を握る軍最高評議会との対決姿勢を強めた。だが、ムバラク政権下で政治犯として投獄歴があったことから同氏は立候補資格を失い、代わりにムルシ氏が立った”【同上】ということで、選挙戦への出遅れに加え、同胞団にとってムルシ氏が「意中の候補」ではなかったことと、同胞団が「大統領選に候補を擁立しない」とする方針を転換したことが影響して選挙戦序盤では伸び悩みました。また、議会と大統領の両方を同胞団が抑えることへの警戒感もあります。
ただ、同胞団という強力な支持基盤がありますので、終盤、激しい追い上げを見せているとも。
アブルフトゥーハ氏は同胞団幹部でしたが、“候補を擁立しない”という方針に反して立候補を表明、同胞団を除名されています。
同氏は、女性やキリスト教徒の権利擁護を主張するなどリベラルな姿勢を見せ、「イスラム主義者と世俗派をつなぐ」とアピールしています。
その一方で、同胞団より厳格なイスラム主義を標榜する「光の党」も、同党候補のアブイスマイル氏が「母親が米国との二重国籍」だったとして候補失格となったためアブルフトゥーハ氏支持を表明しており、リベラル派とイスラム強硬派の相乗りという形になっています。
暫定統治する軍最高評議会は特定候補を支援しない方針ですが、“軍が歴代政権下で与えられてきた予算面などでの特権温存を狙っており、これに否定的な同胞団候補の勝利を嫌う。シャフィク氏や外相経験もあるムーサ氏を水面下で支援する可能性がある。”【4月30日 時事】とも報じられています。
過半数を得る候補がいない場合、上位2候補が6月16、17日の決選投票に進みます。
“決選投票までに新憲法を制定、7月1日に新大統領に権限を移譲し、民政移管を完了させる”という日程を軍は示しています。【4月30日 時事より】
****ムバラク政権崩壊後初のエジプト大統領選、開票進む ****
エジプトで24日に投票が締め切られたムバラク政権崩壊後初の大統領選挙は25日、票の集計が進んでいる。選挙では、国の安定かホスニ・ムバラク前大統領を失脚させた民衆蜂起の理念かのどちらを優先させるかが争点となった。
過去の大統領選挙では常に同じ人物が勝利する、いわゆる「出来レース」だったため、今回の選挙のように勝利の行方がわからないまま結果を待つという経験は、エジプト国民にとって新鮮なものとなった。
5000万人超の有権者たちは、12人の候補者の中から1票を投じることができた。2011年の民衆蜂起前の選挙で見られた暴力や不正とも、ほぼ無縁だった。
投票は前日夕刻に締め切られたが、その数時間後にはエジプト内で大きな影響力を持つイスラム原理主義組織「ムスリム同胞団」が、同胞団のモハメド・モルシ候補がリードしているとの声明を発表し、勝利に自信を見せた。ムスリム同胞団は、エジプト全土に広がる強固な組織網を駆使して、全国1万3000か所中236か所の投票所で(独自の)票集計を行った。
同日、ヒラリー・クリントン米国務長官は、エジプトで「歴史的」な大統領選挙が実施されたことに祝意を示し、米国は新たに誕生する政権と協力していく用意があると語った。
エジプトの選挙管理委員会によると、23、24両日に行われた大統領選の投票率は50%前後で、中には有権者が数時間も列に並ぶ投票所もあったという。
25日には、国内各投票所の集票結果が徐々に明らかになる見込みだが、公式の結果発表は27日に予定されている。【5月25日 AFP】
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【モルシ氏とシャフィク元首相の決選投票 ?】
有力4候補の混戦から誰が抜け出すのかは、報道によっても様々で、集計結果が出ないとわかりません。
ムスリム同胞団は、独自集計で“同胞団のモルシ候補が得票率30%でトップに立ち、シャフィク元首相が同22%で2位につけている”と発表しています。
また、リベラルな有権者の支持を最終盤に固めた左派のハムディン・サバヒ氏(57)がシャフィク氏を猛追して2位争いをしているとも地元紙は報じています。【5月25日 毎日より】
公式結果発表は29日の予定です。
日本の選挙では、事前の世論調査でほぼ結果が予測されていますし、投票日の出口調査で当落がすぐに判明し、開票率0%で当確がだされます。
それに比べれば、投票結果が予測できない争いというのは、選挙らしい選挙とも言えます。
【「もし前政権の人間が勝てば、すぐにタハリール広場でデモだ !」】
一方、激しい選挙戦の結果、選挙後の混乱も懸念されています。
世俗派が勝利すれば、軍部とのつながり、旧体制存続への批判が高まりそうです。
****エジプト、深まる対立 大統領選投票開始 民主化で混乱 ****
昨年2月のムバラク前政権崩壊後、初となるエジプト大統領選が23日、始まった。同国史上初めて、複数候補による民主的な選挙での指導者誕生に期待がかかる半面、有権者の中には「本当に公平な選挙になるのか」と疑問の声も。選挙戦を通じ、体制支持派とイスラム勢力との対立も深まっており、新大統領選出後も混乱が続く可能性がある。
◆負ければデモ
「もし前政権の人間が勝てば、すぐに(首都カイロ中心部の)タハリール広場でデモだ!」
エジプト最大のイスラム原理主義組織ムスリム同胞団に属するアブドルラフマン・ムハンマドさん(28)はこの日、朝から長蛇の列ができたカイロの下町サイエダ・ザイナブの投票所で順番を待ちながら、早くもこう“宣言”した。
政府系紙の世論調査によれば、13人が出馬した今回の選挙ではアムル・ムーサ元外相(75)とアハマド・シャフィク元首相(70)の世俗主義派2人が他候補をリード。これを同胞団傘下、自由公正党のムハンマド・モルシー党首(60)と同胞団元幹部のアブドルムネイム・アブールフトゥーフ氏(60)のイスラム系2人が追いかける展開だ。
ムーサ氏とシャフィク氏の優勢が伝えられる背景には、政変後の経済混乱が長期化する中、国民の間で「変革」より「安定」を求める心理が強まっているとの事情があるとみられる。
しかし、モルシー氏らの支持者の目には、こうした調査結果も「当局の操作」と映る。暫定統治を担う軍最高評議会に代表される体制側にとっては、前政権の高官だったムーサ氏やシャフィク氏の方が、自分たちの権益を守る上で都合が良いとみられているためだ。
◆民政移管、約束
前政権下のエジプトでは選挙不正が常態化していただけに、公正な大統領選が実現することへの有権者の期待は大きい。
軍部も今回の選挙を民主化に向けた重要なステップと位置づけ、新大統領選出後の速やかな民政移管を約束している。
ただ、このところ軍部との対立が強まる同胞団や、「旧体制打破」を掲げる民主化グループの当局不信は根深く、ムーサ氏やシャフィク氏が当選した場合、不正の証拠の有無にかかわりなく、大規模な抗議行動が起きる懸念は拭えない。(後略)【5月24日 産経】
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イスラム主義候補が勝利した場合、イスラム主義が前面に出てくることへの警戒もあります。
今朝のTV報道でも、すでに議会でイスラム主義政党が多数派となったことで、女性の権利を制限する方向の法案がいくつも出されていることが伝えられていました。
同胞団のモルシ候補は「イスラム法によれば、女性は指導者にふさわしくない」という主旨の発言を公然と行っています。
「アラブの春」の結果、世俗主義的なムバラク前政権より女性の権利が制約されることになる・・・ということもあり得ます。
【「彼らがほとんど競わなかったことがひとつある。政策だ 」】
日本の選挙でも、政策は殆んど語られず、ひたすら候補者の名前が連呼されるという現象が見られますが、エジプトでも政策が論じられることはあまりないようです。
****投票先は、神の思し召し〈カオスの深淵 〉 *****
中東の独裁政権が次々に倒れた「アラブの春」。エジプトでは革命後初の歴史的な議会選挙に多くの政党と候補者が名乗りを上げた。
しかし、彼らがほとんど競わなかったことがひとつある。政策だ。
「地中海の真珠」とたたえられる北部の古都アレクサンドリア。観光客を魅了してきたこの街でいま目立つのは、議会選後も残るイスラム系政党の選挙ポスターだ。あごひげを蓄え、祈りで額を地面に何度もこすりつけてできた「たこ」を強調する顔のアップが、黄土色のビル壁を埋める。
約30年続いたムバラク政権を倒したのは若者たち中心のデモだった。だが1月に確定した議会選の結果は、世俗派の若者たちが苦戦し、イスラム系政党が議席の約7割を占めた。
問われたのは宗教への帰属意識だった。
「政策はムバラク時代から変える必要はない」。第1党になった自由公正党の政策担当、ヌサイバ・アシュラフさん(30)はそう言い切った。担当者がこうなのだから、選挙戦は政策ではなく「エジプトに善を」の抽象的な訴えで乗り切った。
より復古的な「光の党」は、かつて「法は人ではなく神がつくる」と議会制民主主義を否定していた。革命にも冷ややかだったが、第2党に躍進。広報担当のユスリ・ハミドさん(52)は勝因を「神が望んだから」と答えた。
世俗派によると、宗教政党はモスクで「神」の名の下に候補者を推し、投票日には有権者をバスで投票所に運び、パソコンで名簿を調べながら投票漏れを防いだ、という。
「妻も親戚も、イスラム教徒だからって同じ党に投票していた」。世俗派を応援するバドラディン・アッバスさん(55)は嘆く。海岸沿いでカフェを経営するが、客はいない。エジプトは革命後も、治安の悪化や、観光客の減少による景気低迷に悩む。
「議会に神様の仕事はないはずだ」。カイロの薬剤師、モアズ・アブドルカリームさん(28)は言う。世俗派の政党をつくって候補6人を擁立。国民皆保険などの政策を掲げたが、全員落選した。
一方、光の党を支持する水道会社勤務のハサン・アリさん(43)は「政策なんて関係ない。神が示したことに従う。それが大事なのだ」。
独裁後の新しい道を自ら選ぶ選挙ではなかったか。カイロ・アメリカン大のサイード・サデク教授は言う。「独裁体制は、人々を無知のままにするのが都合が良かった。今回わかったのは、選挙も同じだったということだ」
政策への賛否ではなく、帰属意識で投票する人たち。それは、民主化したばかりのエジプトだけの現象だろうか。【4月25日 朝日】
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本来は、エジプトの経済状況は悪化しており、その対策が問われるべきなのですが、そういった選挙情勢にはないようです。
****給油に行列・政変後ゼロ成長…エジプト、疲弊する経済 ****
23日に大統領選の投票が始まるエジプトで、昨年の政変後の混乱で落ち込んだ経済の立て直しが急務だ。
だが貧困層は物資の入手にも困り、国際支援は宙に浮いたままだ。通貨暴落の懸念も消えない。
民主化を経て、初の自由な直接選挙で誕生する新大統領は重い課題を背負う。
ピラミッドのあるカイロ近郊ギザ。ガソリンスタンドには早朝から、車やミニバスの列ができていた。補助金で1リットル0.9エジプトポンド(約12円)に抑えられた最安ガソリン「オクタン80」の順番待ちだ。
「今日は2時間待った。2カ月前には8時間待ったこともある。仕事にならない」。ミニバス運転手イスラム・マクディさん(25)は嘆いた。
10軒探して「80」の在庫があったのは3軒。それもすぐに売り切れる。次に安い「90」を使うと、月1400ポンド(約1万8200円)の手取りの半分以上が飛ぶ。
住宅街の路上に「80」と書かれたポリタンクがあった。「80」を扱う「闇市場」の目印だ。奥の路地に小型のタンク車が見えた。売値は1リットルが1.5エジプトポンド(約20円)。
昨年のムバラク政権崩壊後に入手が難しくなったのはガソリンだけではない。家庭用ガスボンベやパンにも行列ができる。いずれも補助金で安値に抑えられている。
エジプト経済研究所のマグダ・カンディル所長は「外貨準備高不足で輸入が滞る懸念が広がり、転売を狙った買い占めがこの数カ月間で一段と広がった」と指摘する。警察が横流しや密売を取り締まることもなくなった。
「パンや治安の問題を100日間で解決する」(ムスリム同胞団幹部のムルシ氏)、「治安回復は就任24時間以内だ」(元首相のシャフィーク氏)など、大統領選の有力候補は、生活向上や公共秩序の回復を競うように唱える。ただ、解決は簡単ではない。
ムバラク政権が進めた国営企業の民営化などの開放政策は貧富の格差を広げたものの、経済成長率はここ数年4〜7%で推移していた。それが政変後、ほぼゼロに失速した。
観光収入は激減、対内直接投資はマイナスに落ち込み、外貨準備高は政変前から半減した。中央銀行が支えきれなくなってエジプトポンドが急落すれば、生活必需品を含む輸入品の価格が急騰し、社会不安を引き起こしかねない。
頼みの綱は、国際通貨基金(IMF)と交渉中の32億ドル(約2500億円)の融資だ。世界銀行や欧米などから融資を得る呼び水となる。だが、系列政党が議会第1党となったムスリム同胞団は、軍最高評議会が全権を握る現在の状況での決定に難色を示し、決着は先送りされた。
融資で急場はしのげても、いずれ政府歳出の2割近くを占める石油補助金の改革に手をつけざるを得ないとの見方が大勢だ。だが、選挙戦で大統領候補が「痛み」を口にする場面は見られない。外交筋の間では「ムバラク前大統領ですら反発が怖くてできなかったのに、新大統領にできるのか」との声も漏れる。【5月23日 朝日】
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(ギリシャの港湾都市パトラ 当局によって撤去された不法移民居住地から毛布などを拾い出す不法移民 彼らの多くはアフガニスタンからで、イタリア行きのフェリーに忍びこめる機会を窺っていると言われています。
しかし、仮にイタリアに行けても、職も食べ物もないのはギリシャと同じです。あるのは更に厳しい不法移民取り締まりだけです。“flickr”より By MORTEZA26 http://www.flickr.com/photos/50396650@N05/4629027140/ )
【現実の問題となったユーロ離脱 】
再選挙となったギリシャでは、“ユーロ離脱”が現実的問題となってきたことを受けて、世論もこれまでの財政緊縮策反対一辺倒から、ユーロ離脱を不安視する慎重論も増加し、両者拮抗した状態となっているようです。
****ギリシャ再選挙:ユーロ離脱に不安…世論調査 ****
ギリシャ再選挙(6月17日投開票)の序盤戦は、財政緊縮策を巡って、先の総選挙で第2党となった反対派の急進左派連合の支持率が高止まりし、第1党で推進派の中道右派・新民主主義党が勢いを持ち直す互角の戦いになっている。ユーロ圏離脱への不安から、反対派離れも起きており、1カ月間の選挙戦は「ミスを犯した側が負ける」(政治アナリスト)緊迫した情勢が続きそうだ。
再選挙公示の19日前後に地元メディア・調査機関が伝えた各世論調査では、6日実施の総選挙終盤戦から選挙後にかけて支持率を急増させた急進左派は、再選挙が確定したころから伸びが鈍った。代わりに、旧与党の新民主に、離れた支持者の一部が戻る傾向が表れている。
公表された7種類の世論調査で最も高い支持率を得た党は、急進左派が3調査、新民主が4調査と真っ二つに分かれた。1位と2位は多くが約1〜3ポイント差の大接戦だ。【5月24日 毎日】
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【ネオナチ極右政党の台頭 】
先の総選挙では緊縮策反対派の急進左派連合が第2党に躍進して、再選挙で政権獲得に至るかどうかが注目されている訳ですが、前回総選挙では移民排斥を掲げる極右政党「黄金の夜明け」が7%の得票率で、初の議席(21議席)を獲得したことも注目されました。
“同党は93年設立。ナチス・ドイツの総統ヒトラーの思想の影響を受け、ギリシャ人の人種的優位を信じる「ネオナチ」団体だ。全国に約1万2000人の党員がいるとされる。
ミハロリアコス党首(55)は、債務危機に陥ったギリシャを支援した欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)を「国際的な金貸し」と切り捨て、同国が受け入れた緊縮策の破棄を主張。ユーロ圏を離脱し、ユーロ導入前のギリシャ通貨「ドラクマ」の復活、銀行国有化などを叫んでいる”【5月1日 時事】
総選挙の勝利会見の際には、報道陣に党首への敬意を表して起立するよう求め、反論した記者に退場を促したり、17日の初議会では、ミハロリアコス党首を先頭に軍隊行進のような立ち居振る舞いで議場に入ったなど、摩擦を起こしています。
また、同党支持者による移民排斥の暴力事件も起きています。
****ギリシャ:暴力事件が相次ぐ ****
総選挙のやり直しで国内対立が激化しているギリシャで、暴力事件が相次いでいる。西部の港町パトラで22日、6日の総選挙で初めて国会に議席を獲得した極右政党「黄金の夜明け」の支持者ら約300人と警官隊が衝突し、双方で計15人が負傷、5人が逮捕された。
衝突は先週末、30歳のギリシャ人男性が、アフガニスタンからの移民3人組にナイフで襲われて死亡した事件がきっかけとなった。不法移民による治安悪化に苦しむ住民と、移民排斥を強硬に主張する同党支持者らが、アフガン移民が住みついている地元の古い倉庫跡に、集団で抗議に押し掛けた。覆面姿でギリシャ国旗を振りながら叫ぶ若者らが投石や放火を始め、警官隊も催涙ガス弾で対抗する騒動となった。
一方、先の総選挙で議席に届かなかった右派小党・国民正統派運動の候補者が23日、見知らぬ男たちに襲撃された。けがはなかった。候補者は同日朝、財政緊縮策推進を呼び掛ける新民主主義党に移籍すると発表したばかり。犯人たちは「移籍にいくら支払われたのか知ってるぞ」と言って殴りかかったという。【5月24日 毎日】
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【「これは我が国だけではなくて欧州全体の問題だ 」】
こうした極右政党の台頭、社会不安の増大の背景には、アジア・アフリカから“欧州の玄関”ギリシャに大量の不法移民が押し寄せている現実があります。
****ギリシャへ押し寄せる不法移民 アジアからアフリカから ****
2大政党が過半数割れの歴史的大敗を喫し、排外主義的な極右政党が躍進したギリシャの総選挙。その一因となったのは、欧州の一角であるギリシャに向けて押し寄せる大量の不法移民の存在である。
■経済危機でも「先進国」
ギリシャ北東部、トルコとの国境の町オレスティアダのはずれ。7、8人の男が立ちつくしていた。
片言の英語を話すリーダー格は「ユーセフ。31歳」と名乗った。バングラデシュ・ダッカ出身。アラブ首長国連邦のドバイまで空路。その後、オマーンを経て、イラン、トルコと陸路で来たという。この日午前4時ごろ、トルコとの国境を歩いて越えた。
レジ袋に着替えを入れて持っている者が少しいるが、多くは手荷物もない。所持金は1人50ユーロほど。「アテネに行く。仕事を探す」。胸に両手を当て、顔いっぱいに笑顔を広げた。
国境近くの村でカフェを営むユアニス・パルシスさん(75)は言った。
「毎朝やって来るよ。川を渡っているからみんなびしょぬれで疲れ切っていて。かわいそうなものだ」
移民を見かけることが増えたのはここ2、3年だという。「戦争のせいだろう。パキスタンやソマリアなどの人が多いようだ」
当局にとってはもちろん、頭の痛い問題だ。
ギリシャ国家警察の広報担当は「アフリカ、南アジア、中近東。三つの地域からの移民が、海から陸から押し寄せてくる。これは我が国だけではなくて欧州全体の問題だ」と話す。
昨年ギリシャで拘束された不法移民は約10万人。国籍は111に上った。5万5千人いる警官のうち1万5千人が不法移民対策に専従するが、流入は1日に100〜300人とされる。
トルコとの国境は約230キロ。ギリシャ紙によると、昨年10〜12月に欧州全域に入ってきた不法移民3万人のうち、75%はここを越えてきた人々。国境線の大半は海や川で隔てられているが、粗末なゴムボートで渡ってくる者が絶えない。海での取り締まりを強化したら、オレスティアダ近くに約12キロの距離だけある陸続きの場所を歩いてくる移民が激増した。
欧州の政府債務危機の震源地であるギリシャだが、移民にとっては豊かな「先進国」であり、欧州の玄関だ。警察当局によると、70万人の不法移民と100万人の外国人住民が暮らす。人口の2割近くにあたる。
■極右台頭、襲撃事件も
「国境に地雷を埋め、不法移民が入ってこられないようにする。トルコ系住民にも母国に帰ってもらう」
アテネ郊外。スキンヘッドの男性が語気を強めると、支持者は叫んだ。
「ギリシャはギリシャ人のものだ!」
極右政党「黄金の夜明け」のゲルメニス氏(34)は「やっと国民が目覚め、私たちの主張を現実の問題と認識するようになった」と話す。「アレクサンドロス大王を生んだ、偉大な古代ギリシャの誇りを取り戻せるのは我々だけだ」
同党は総選挙で21議席を得た。「仕事を奪い、犯罪が増える」として移民排斥を唱え、「ギリシャ人のため」と貧困層対象の食糧配給などに力を入れた。支持層は、移民が多く住む都市郊外の住民。約10%の票を得た選挙区もある。
同党が勢力を広げる裏で不穏な事態も起きている。
地元記者によると、同党のメンバーを名乗る男たちが、造船工場の経営者に外国人労働者を解雇してギリシャ人を雇うよう求め、拒否されるとその工場の外国人労働者を襲撃する事件などが起きているという。
移民の収容施設の建設を巡って、予定地周辺で治安悪化を心配した反対運動も生じる。「福祉予算が削られる中で、移民に多額の税金を費やすことには、国民の合意が得られない」と国家警察の広報担当は話す。
収容施設が不足しているため、不法移民たちは取り調べを受けた後、国外退去を命じられて施設から出される。だが、多くはそのまま欧州にとどまる。
トルコ国境地帯では、ギリシャ警察の車両とともに緑色の車両が巡回していた。各国の国境警備の連携を深めるため、欧州連合(EU)の機関であるフロンテックス(欧州対外国境管理協力機関)が派遣した他国の警官だ。国境警備はEU頼みになりつつある。
「シェンゲン協定に加盟すれば、いまギリシャが苦労しているのと同じ問題に必ず向き合わなければならない」とルーマニアから派遣されたミハラケさん(32)は語った。
国境は、通貨とともに国の独立を示す存在だ。だが欧州の内側で、もはやそれは半ば溶けている。
もしギリシャがシェンゲン協定やユーロから脱退すれば、不法移民は大幅に減るだろう。しかし、それは、ギリシャが欧州から追い出され、移民を送り出す側となることにほかならない。【5月23日 朝日】
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ギリシャの人口は約1100万人ですから、“70万人の不法移民と100万人の外国人住民”というのは膨大な数です。
移民の急増が、経済的・文化的摩擦や治安悪化の問題を引き起こすことは事実です。
ただ、豊かさを求める人々に対し、先に豊かになった国が門戸を閉ざしたり、排斥することが“あるべき姿”か・・・と言えば、そうでもないように思えます。
日本の場合には、将来的人口減少・高齢化社会に対応する社会活力維持という問題も絡みます。
暴力的対応は許されないことは言うまでもないですが、ギリシャだけでなく欧州全体で、移民問題全体への賢明な対策が求められています。受入れ側の叡智と良識、そして品格も問われる問題です。
(黄海では、昨年12月12日、韓国排他的経済水域(EEZ)で韓国海洋警察の係官が違法操業中の中国漁船員にガラス片で切り付けられ、1人が死亡、1人が負傷する事件もありました。“flixkr”より By DTN News http://www.flickr.com/photos/dtnnews/6498220923/ )
もちろん韓国国内では中国への激しい抗議行動はありましたが、激高しやすい対日関係に比べると、随分と穏やかにすんだ感もします。 本論とは関係ありませんが、このあたりが日本からすると不可解なところでもあります。)
【南シナ海では中比両国が禁漁措置 】
南シナ海のスカボロー礁近海での中国とフィリピンの艦船による“にらみ合い”は、相変わらず続いていますが、両国が同海域での“禁漁措置”を発表する形で、とりあえずの休戦に持ち込まれる動きも出ています。
****フィリピンと中国、それぞれ南シナ海に禁漁令 にらみ合い解消へ布石か ****
フィリピンは16日、中国と領有権を争っている南シナ海のスカボロー礁(中国名:黄岩島)近海域について、2か月間の禁漁措置を発表した。これに先だって中国も、同日から8月1日まで同海域を含めた南シナ海の広域を禁漁とすると発表しているが、フィリピン政府は中国側の禁漁措置は無効だと主張している。
スカボロー礁近海では、前月10日に中国漁船を拿捕しようとしたフィリピン船舶を中国の監視船が妨害して以降、両国の船舶がにらみ合いを続けている。フィリピン当局によると現在、同海域には中国の監視船2隻と漁船10隻、フィリピン艦船2隻と漁船1隻がいる。
フィリピン漁業水産資源局(BFAR)は、禁漁措置は同海域で漁を行う漁船が多すぎるとの報告に基づくものだと説明した。
一方の中国側も、水産資源の乱獲を禁漁の理由としているが、専門家らは両国の禁漁令について対面を保ちつつ問題海域から船舶を引き上げるためのものと分析している。
禁漁措置の発表に先立ってフィリピンのベニグノ・アキノ大統領は、中国の禁漁措置に従う義務はフィリピンにはなく、自国の規定にのみ従うと表明していた。
フィリピン海軍の海図によれば、スカボロー礁はフィリピン・ルソン島から約230キロ沖合にあり、一方の中国本土からは約1200キロ離れている。フィリピン政府はスカボロー礁を自国の排他的経済水域(EEZ)内だと主張しているが、中国はスカボロー礁や他アジア諸国の近海を含む南シナ海の大部分の領有権を主張している。【5月17日 AFP】
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相手側の“禁漁措置”を根拠のないものと批判するのは当然で、中国の禁漁措置にはフィリピンだけでなくベトナムも抗議の意を表明しています。
そうした表向きの対応は別にして、お互いが艦船を引く結果になれば、それはそれで・・・といったところですが、逆に中国が監視船を増派しているとの報道もあり、どういうふうに決着するのかよくわかりません。
****「中国が監視船増派」=南シナ海問題で比が抗議 ****
南シナ海のスカボロー礁(中国名・黄岩島)の領有権をめぐり、中国とフィリピンの船舶がにらみ合いを続けている問題で、フィリピン外務省は23日、中国がスカボロー礁周辺に監視船を増派したとして抗議した。
フィリピン外務省は声明で、スカボロー礁周辺の中国海洋監視船が21日夜の時点で5隻に増え、中国漁船16隻も確認されたと指摘した。これまで中国監視船は3隻だった。【5月23日 時事】
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【フィリピンを支援しつつも深い入りは避けたいアメリカ 】
戦闘機も、ミサイル搭載の艦艇も持たないフィリピンの後ろ盾はアメリカです。
****比、権益維持へ米に接近 ****
4月22日、南シナ海に面するフィリピン・パラワン島で行われた米比合同軍事演習の記者会見。「南シナ海は米比相互防衛条約の範囲内なのか」との質問に対し、フィリピン国軍のサバン西部方面軍司令官は「条約に基づき両国は、どちらかが侵略されれば対応する」と述べ、南シナ海で有事の際には米軍が関与するとの見方を示した。横に並んだ米海兵隊のティーセン中将も「司令官の見解は正しい」とうなずいた。
30日にはワシントンで両国の外務、国防担当閣僚による初の「2+2」会談があった。パネッタ米国防長官は、南シナ海を監視する米国の偵察衛星の情報を24時間態勢でフィリピン側に提供すると約束した。
極東最大の米軍基地だったクラーク、スービック両基地を1991年に返還させたフィリピンは、昨年3月に南シナ海のリード礁で自国の資源探査船が中国軍艦に妨害された事件を機に、軍事面で米国に再び急接近している。
戦闘機も、ミサイル搭載の艦艇も持たないフィリピン軍は、中国軍に対しては丸腰同然だ。米軍機や艦船への補給場所の提供を広げることで、南シナ海の自国の権益を守ってもらうことを目指している。
一方、中国は、米比合同軍事演習と同じ頃、黄海でロシアとの合同軍事演習を実施。「フィリピンの一方的な動きは度を超しつつある」(外交筋)と、対米接近に対して警戒感を強めている。【5月9日 朝日】
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ただ、“アジア重視”を掲げているアメリカとしても、領有権そのものについては中立的な立場を崩していないなど、南シナ海での争いへの深い入りは避けたい本音も窺われます。
中国は、フィリピンから輸入されるバナナの検疫を強化する形で圧力をかけるなどしていますが、先日のTVニュースでは、フィリピンに滞在する中国人観光客がゼロになったとのことです。中国政府の意を受けた旅行会社がフィリピン向けのツアーを中止しているようで、さすがにこのあたりは徹底しています。
“対中関係の冷え込みにより、フィリピンではホテル、レストランなどの観光業が大打撃を被っており、現地で働く人々は政府の反中感情に反発している”【5月13日 Record China】との報道もあります。
【中国ネット上で噴出する北朝鮮への反感 】
今日取り上げたかったのは、同じ漁業問題に起因する対立でも、南シナ海の話ではなく、実は黄海の話です。
黄海では、5月8日、北朝鮮が境界線を越えて不法操業したとして中国漁船を拿捕する事件がありました。
事件そのものは、拘束されていた中国漁船3隻と乗組員29人が21日、拘束から13日ぶりに中国・大連の港に戻り、一応終結しています。
しかし、北朝鮮側が漁船と乗組員返還の条件として100万元(約1250万円)前後を要求し、「支払わない場合は船と乗組員を処分する」などと警告していたこと、漁船の船主が「乗組員らは拘束中、毎日のように殴られ、監視員に私語を禁じられた。家畜のように扱われた」と語ったことなどから、中国国内では北朝鮮に対する批判・不満が増大しているそうです。
****中国で反北朝鮮世論高まる 漁船拿捕事件受け ****
中国漁船が北朝鮮に拿捕(だほ)され、約2週間後に解放された事件を機に、中国で「反北」世論が急速に広がっている。
黄海で操業中の中国漁船3隻は今月8日、中朝の境界線を越えたとして北朝鮮の船に拿捕されたが、拘束されていた乗組員28人は21日、拘束から13日ぶりに中国・大連港に戻った。
拘束中に北朝鮮の軍人から暴行や非人間的な扱いを受けたとする乗組員の証言が報じられたこともあり、中国のネット上では北朝鮮への反感が噴出している。
中国版ツイッター(短文投稿サイト)「微博」では、「一切の北朝鮮機関と協力しないようにしよう。取引もやめよう。北朝鮮レストランを排斥しよう」と訴える書き込みが広がっている。
あるネットユーザーは「北朝鮮政府が外貨稼ぎのために経営している北朝鮮レストランを排斥すべきだ。だが、韓国人や朝鮮族の経営する店が被害を受けるようなことがあってはいけない」と書き込んだ。
また別のネットユーザーは「先週、北朝鮮レストランである客が金正恩(キム・ジョンウン)のことを口にしたら、従業員に取り囲まれ、謝罪を求められた。客が公安(警察)に通報し、外交当局に報告がいき、ようやく解決した」と紹介し、中国人の反北感情をあおった。
一部の中国人は、経済援助を含め中国から少なくない支援を受けている北朝鮮が、自国の漁船を拿捕したという事実に憤り、北朝鮮に対する一切の人道支援を中断すべきだと主張している。
中国のネット上でこれほど反北世論が強まるのは、北朝鮮が中国など国際社会の自制要請を振り切って2度目の核実験を強行した2009年以来、初めてと指摘される。
中国人の非難は、事を荒立てずに済ませようとした自国の政府にも向けられている。漁船の乗組員が10日以上も正体不明の勢力に拘束されていたにもかかわらず、北朝鮮に一度も正式に抗議できなかったのは屈辱的だとの意見が、ネット上で飛び交っている。
こうした世論を意識したかのように、中国の政府や国営メディアは、漁船の拿捕が中朝友好関係に基づき円満に解決したとする一方で、北朝鮮に問うべきことがあれば問うとの姿勢を暗に強調している。
事件後、明確な言及を控えていた中国外務省の洪磊報道官は22日の会見で「外務省は事件を注視しており、平壌、北京で北朝鮮と密接に連絡を取ってきた。中国の漁船管轄部門が、詳細を調査中だ」と述べた。
ただ中国共産党機関紙、人民日報系の「環球時報」は前日の1面で、乗組員の帰国を伝えながら、中国と北朝鮮が今回の事件について正式な言及を自制している状況は、両国間の意思疎通が円滑なことを示すものだと報じた。【5月23日 聯合ニュース】
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【「血の友誼 」】
朝鮮動乱の際、義勇兵を送った中国と北朝鮮とは「血の友誼」といわれる密接な関係にあるとされてはいますが、核開発や長距離ミサイル発射実験などで中国の制止に従わない北朝鮮に、中国側は苛立ちを募らせているとも言われています。
一方、ことあるごとに改革・開放政策の実施などを迫る中国を、故金正日総書記はひどく嫌っていたとも言われています。
ただ、そうであっても、北朝鮮にとって中国は食糧・エネルギー援助などで不可欠な存在ですし、中国にとっても朝鮮半島における親中国政権の存続は至上命題でもあります。
そうした関係で、実際のところ中国と北朝鮮がどういう関係にあるのかよくわかりませんが、“黄海の中朝境界線付近では、中国漁船と北朝鮮船とのトラブルが多発している。今回は、漁船の船主が15日、ネット上で事件を公開したことから、外交問題に発展。金正恩第1書記の中国訪問など懸案を抱える北朝鮮は、中国内で北朝鮮に対する反感が高まることを恐れ、解決を図ったとみられる”【5月21日 読売】とのことです。
中国世論にすれば、中国が支えてやっているのに・・・といった感情でしょうし、北朝鮮側すれば、そうした高飛車な物言いは神経を逆なでするところでもあるでしょう。
「血の友誼」の両国が揉めるぐらいですから、中国とフィリピン、あるいは尖閣諸島で中国と日本が揉めるのも、大騒ぎするほどのこともない、ごく当たり前のことなのでしょう。
それにしても、中国漁船か南シナ海でも黄海でも、あちこちに出没して問題を引き起こしていますが、統制が得意な中国当局はこれを管理する考えはないのでしょうか。
中国漁船の活動が盛んなのは、中国国内での水産物需要が急拡大しており、魚はいくらでも売れる状況で、違法操業による多少の罰金ぐらい支払っても十分に採算が合うという国内事情もあるようです。
(4月26日、ベオグラード セルビア進歩党の選挙集会に参加した、ニコリッチ党首のポスターを掲げる支持者 “”より By www.pierremorel.net http://www.flickr.com/photos/pierremorel/6973026158/ )
【「ムラディッチ被告はボスニアの民族浄化をたくらみ・・・ 」】
ボスニア・ヘルツェゴビナ内戦当時のセルビア人武装勢力司令官で、戦犯として国際法廷に起訴されたラトコ・ムラディッチ被告(70)の裁判が5月16日、オランダ・ハーグの国連旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷(ICTY)で始まりました。
****ムラディッチ被告の公判開始、旧ユーゴ国際戦犯法廷 ****
・・・・ムラディッチ被告は民族浄化や第2次世界大戦後としては欧州最悪の大量虐殺などの残虐行為を指揮したとして起訴されている。Dermot Groome検察官は冒頭陳述で「ムラディッチ被告はボスニアの民族浄化をたくらみ、犯罪行為を実行した」と述べた。
同被告は、1992〜95年まで続いた内戦でのジェノサイド(大量虐殺)や戦争犯罪、人道に対する罪など11件の罪で起訴された。内戦では10万人が殺害され、220万人が家を失った。
同被告は裁判官が法廷に入ってくると、皮肉を込めて拍手で迎えた。Groome検察官は「検察当局は、いずれの犯罪においても、被告が確かに関与した証拠を提示する」と加えた。
同被告は前年6月に開かれた審理で、無罪を主張した。【5月17日 AFP】
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ムラディッチ被告が責任を問われている“民族浄化”のひとつに、ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争中の1995年にイスラム教徒の男性約8000人が殺害されたスレブレニツァ虐殺事件があります。
当時、スレブレニツァには周辺地域から戦火を逃れてイスラム教徒ボシュニャク人が集まっていました。
国連はこの地域を安全地帯に指定し、200人の武装したオランダ軍の国際連合平和維持活動隊も駐留していました。しかし、武力に勝るスレブレニツァを包囲したセルビア人勢力の圧力に屈する形で、ボシュニャク人男性8000人がセルビア人勢力に引き渡され、そのほとんどが組織的、計画的に、順次殺害されていったと言われています。
TVニュースで見ると、検察側の罪状説明の際に、ムラディッチ被告は嘲るような冷笑を見せていました。
昨年5月に拘束されたときは、随分やつれた様子で、“脳卒中に見舞われ、右手がほぼマヒ状態で、心臓病も患っている”とのことでしたが、法廷での同被告は健康を回復したように見えました。
【セルビア人は戦犯引き渡しを求めるEUの要求を恐喝と見ている 】
ムラディッチ被告は、セルビアの民族主義的なサイドからすれば“英雄”であり、同被告がながく潜伏できたのもセルビア国内の多くの支持者の存在があるとされていました。
しかし、内戦敗北からの復興をEU加盟に託すセルビアに対し、EU側は同被告の身柄引き渡しを条件としていたこともあって、EU加盟を推進する親西欧派のタディッチ大統領のもとで、同被告の拘束・引き渡しが実現しました。
****戦犯ムラディッチ拘束に怒るセルビア人 ****
ボスニア内戦でムスリム虐殺を指揮したムラディッチだが、セルビア人は彼を英雄視する
旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷から戦争犯罪などの罪で起訴され、逃亡していたセルビア人武装勢力指導者ラトコ・ムラディッチが拘束された。このニュースを受けて、セルビアの首都ベオグラードの中心部では若者が集まり、ムラディッチの拘束に怒りの声を上げた。
ボスニア内戦の終結から15年以上、NATO(北大西洋条約機構)軍による空爆でコソボ紛争が終結してから10年以上が経つが、バルカン半島の緊迫はまだ続いている。
ムラディッチの拘束に対する市民の反応から、多くのセルビア人がまだ内戦の傷を抱えていること、そしてEU(欧州連合)加盟のために戦犯を引き渡すという条件に疑念を持っていることがうかがえる。
EU統合セルビア事務所のミリカ・デレビッチ所長によると、現在EU加盟を望んでいるセルビア国民は57%で、02年以来最低の割合だ。
セルビア人は戦犯引き渡しを求めるEUの要求を恐喝と見ている。
さらに国外旅行をするセルビア人が増えるにつれて、実際に見るEUが政治家が喧伝するような「バラ色の社会」とは異なると実感し始めた。
ムラディッチ拘束を受けて、セルビア語のネット上には怒りの声も書き込まれている。「セルビアは何も得られない」「セルビア人はこれから、特にボスニアで大きな圧力にさらされるだろう」
(中略)
ベオグラードでも街の中心部で若者のグループが愛国的な歌を歌うなどの現象がみられたため、セルビア警察は組織的な集会を禁止し、警備を強化した。
ある世論調査によれば、セルビア人の51%がムラディッチの身柄引き渡しに反対だった。フェースブックのセルビア国防相のページには、あるユーザーが「まるで自分が拘束されたようだ」と書き込んだ。「われわれは誰しも神の前では小さな存在だ」【11年5月27日 Newsweek】
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【EU加盟路線への転向は「選挙向けの演出に過ぎない 」】
そのセルビアでは、大統領選の決選投票が20日行われ、野党の民族派、セルビア進歩党のトミスラブ・ニコリッチ党首(60)が与党の親欧米派、民主党を率いるボリス・タディッチ前大統領(54)を抑えて勝利しました。
****セルビア大統領選:ニコリッチ氏当選確実 コソボなど警戒 ****
セルビア大統領選で野党の民族派、セルビア進歩党のニコリッチ党首が初当選を確実にした。欧州統合路線の継承を約束するが、極右政党出身で欧米と対立してきた「過去」を持つだけに、隣国コソボや欧州諸国からは懐疑的な見方も出ている。
20日深夜段階でニコリッチ氏の得票率は50.21%。3選を目指した親欧米派、民主党のタディッチ前大統領は46.77%だった。
タディッチ氏は、90年代の紛争で戦った近隣国との和解を推進。大物戦犯の逮捕や、セルビアから独立したコソボとの直接対話の実現などを通じ、今年3月にEU加盟候補国の地位を獲得していた。
だが、欧州債務危機のあおりで国民生活が打撃を被る中、選挙の関心事は経済の再生や汚職体質の是正に向いた。地元観測筋は「00年の民主化から10年余。生活の向上などで国民が期待したほどの成果が上がらなかったことへの不満が表れた」とみる。
ニコリッチ氏は08年に極右政党を離脱。EU加盟路線へ切り替えたが、多くの専門家は「選挙向けの演出に過ぎない」と見る。
コソボのセリミ副外相はロイター通信に、ニコリッチ氏が近隣国で戦争犯罪を行ったセルビア部隊の組織化に関与したとして懸念を表明。
スウェーデンのビルト外相はツイッターで「ニコリッチ氏が率いるセルビアは、欧州統合や近隣協調に向け信頼を醸成しなければならない」と指摘した。【5月21日 毎日】
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ニコリッチ氏勝利の背景には、記事に指摘されるように“選挙の関心事は(EU加盟問題よりは)経済の再生や汚職体質の是正に向いた”ことがあるようです。
最近のEU・ユーロ圏の混乱が、EU加盟に対する期待感を損なっていることもあろうかと思われます。
また、事前の世論調査ではタディッチ氏が大幅にリードしていたとのことで、民族派のニコリッチ氏勝利に、かつての“セルビアの英雄”ムラディッチ被告の公判開始が影響した面はないのでしょうか?
【コソボのセルビア系住民問題が更に厄介なことになるのでは・・・ 】
ニコリッチ氏は、旧ユーゴスラビア紛争を巡る国連の戦争犯罪法廷の裁判中に死去したミロシェビッチ元大統領の下で閣僚を務めるなど、反欧米の民族派として知られていますが、4年前に極右政党を脱退し、「セルビア進歩党」を立ち上げてからは欧米との協調路線に転換したとされています。
ただ、勝利宣言でも「セルビアは今後もEU統合への道を歩むが、コソボは守り抜く」と述べ、EUとの加盟交渉は進める一方、コソボの独立を認める考えはないことを改めて強調しています。
EUへの加盟には、戦犯引き渡しと並んで、EUが後ろ盾となっているコソボとの関係改善が条件となっていることから、「EU統合への道を歩むが、コソボは守り抜く」というのは “加盟しない”と言うのと同義です。実際、「EUが(セルビアからの)コソボ独立の承認を加盟条件にするなら加盟しない」と公言しているそうです。
コソボに強硬な姿勢をとるニコリッチ大統領が就任することで、セルビアのEU加盟に向けた交渉に遅れが出るものとみられています。【5月21日 NHK、毎日より】
また、コソボでは、少数派となったセルビア系住民がコソボ政府への反発を強め、セルビア本国には“見捨てられた”と失望を抱いていますが、民族主義的なニコリッチ氏が今後コソボにこれまで以上に関与を強めると、ただでさえ厄介なセルビア系住民問題が更にこじれる可能性もあります。
5月8日ブログ「コソボのセルビア系住民に残された道は・・・」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20120508 )
また、セルビア国内においては、先の総選挙でニコリッチ党首の進歩党が第1党に躍進したものの過半数に届かず、連立協議が注目されていましたが、大統領選挙では敗れたタディッチ氏率いる親欧米派与党・民主党を軸とする連立が合意されたと報じられています。
****セルビア:連立政権維持で合意 躍進の進歩党は野党に ****
セルビア議会選で第2党となった親欧米派与党、民主党は9日、第3党につけたセルビア社会党と連立政権の維持で合意したと発表した。他の少数政党を加え、過半数の獲得を目指す。首位に躍進した民族派野党、セルビア進歩党は野党にとどまる見通しとなった。
政党別の獲得議席は進歩党73、民主党67、社会党44の順。社会党は、民主党のタディッチ前大統領と進歩党のニコリッチ党首による20日の大統領選決選投票でも、タディッチ氏への支援を明確にした。大統領選の第1回投票ではタディッチ氏が小差でリードした。【5月9日 毎日】
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大統領選挙でのニコリッチ氏勝利・タディッチ氏敗北でもこの連立合意が変わらなければ、大統領と議会・内閣のねじれ現象も生じるように思えますが・・・。
いろいろ厄介な問題を生じそうなニコリッチ氏勝利です。
セルビア国民の内戦の傷を癒すためには、民族主義的な自己主張も有効なのでしょうが、副作用には注意が必要です。
(1989年5月19日の早朝、天安門広場でハンストを続ける学生に、涙を流しながら「学生諸君、我々はもっと早く来るべきだった。皆さんに申し訳ない」と拡声器を手にして話す趙紫陽。その隣で正面を向いているのが、当時中央弁公室主任の温家宝。改革派の胡耀邦に師事し、趙紫陽失脚後もしぶとく生き残った温家宝首相ですが、その首相任期最後にあたり政治改革に力を入れているとも・・・。ただ、壁は厚そうにですが。)
【アモイ事件:中央幹部の関与は封印されるのか 】
中国建国以来最大の汚職事件とされる「アモイ事件」で、カナダから強制送還された主犯格の頼昌星被告(53)に無期懲役刑が言い渡されました。
アモイ事件(遠華密輸事件)については、11年7月24日ブログ「中国 「アモイ事件」主犯中国送還に見る国内権力闘争の一端」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20110724 )でも取り上げたように、1996年から1999年にかけて、頼昌星を総裁とする遠華電子有限公司という貿易会社が、約800億元とも言われる関税を脱税したとされている事件です。
主犯の頼昌星氏は、地元政府、税関、公安当局高官、軍人らに高額の賄賂を贈りながら中央政府幹部まで買収し、人民解放軍の艦船に密輸船を保護・先導させて堂々と石油、たばこ、自動車など、巨額の物資を海外から密輸していたとされていますが、その実態は明らかではありません。
江沢民前国家主席側近の関与も噂されていますが、当時の江沢民政権は、政権中枢を揺るがしかねない事態を避けるため、政権中枢の関与は執行猶予付き死刑判決を受けた李紀周・元公安次官以外は公表されないまま封印されたとも言われています。
頼昌星氏が中国へ送還され裁判にかけられることになった背景には、権力中枢におけるで江沢民率いる上海閥の影響力低下があるとも、また、頼昌星氏を中国国内に置くことで、胡錦濤派が頼氏の供述をカードとして使い、党大会人事などで上海閥の動きを牽制することができる・・・といった、党中央における権力闘争絡みの観点が指摘されてもいます。
****収賄10人超に死刑、贈賄側は無期 中国最大の汚職事件 ****
中国建国以来最大の汚職とされる「アモイ事件」で、福建省アモイ市中級人民法院(地裁)は18日、主犯格の頼昌星被告(53)に無期懲役刑を言い渡した。収賄側の官僚ら10人以上に死刑判決が出ている。中国共産党の最高指導部の親族の関与が取りざたされる事件の全容はなお未解明だ。
頼被告は貿易会社「アモイ遠華集団」の元社長。密輸と贈賄の二つの罪で有罪となった。
国営新華社通信によると被告は、1991年からアモイや香港などにネットワークをつくり、95年から99年の間に自動車や石油製品、たばこなどを密輸入した。判決は密輸額273億元(約3400億円)、脱税額約140億元(約1750億円)と認定した。
頼被告には、地元だけでなく中央政府の幹部らの後ろ盾があったとされる。判決は、国の幹部ら64人に不動産、車などを含めて約3900万元(約5億円)相当の金品を贈ったとした。
収賄側の当時の公安省次官やアモイ市副市長、アモイ税関長ら少なくとも10人には死刑判決が出て一部は執行された。密輸にからむ量刑の見直しもあり、頼被告は無期懲役だった。
■党幹部側と親密関係
アモイ事件の処理のあり方は、中国最高指導部の権力闘争に影響を与える可能性があるとして注目されてきた。
なかでも、共産党の序列4位の賈慶林(チア・チンリン)全国政治協商会議主席の妻は、頼被告と密接な関係があったとされた。妻は当時、福建省の国有貿易企業の首脳で、頼被告自身が、香港誌「亜洲週刊」などに親密だったと明らかにしている。
賈氏は、江沢民前国家主席の引きで最高指導部に入った人物だ。頼被告は、賈氏本人との関係については「贈り物をしたことはある」としつつも、「協力を求めたことはない」としていた。
とはいえ、頼被告が密輸や脱税に手を染めていた時期に賈氏は福建省トップの党委書記を務めていた。習近平(シー・チンピン)国家副主席や賀国強(ホー・クオチアン)中央規律検査委書記も、同じような時期に福建で要職にあった。
頼被告は99年にカナダに渡り、拷問や死刑の危険があるとして保護を求めた。「逃亡生活」は12年に及んだ。
香港紙明報によると、江前国家主席は01年に頼被告の引き渡しを求めた際、死刑にしないとカナダ首相に語ったという。07年には中央規律委幹部も死刑にしないと明言。11年5月には武器などを除く一般物資の密輸での死刑が廃止され、直後に頼被告は中国に強制送還された。【5月19日 朝日】
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事件当時の福建省では、記事にある共産党の序列4位の賈慶林氏が93〜96年に省党委書記の地位にありました。
また、次期国家主席の習近平氏も、95〜02年に省党委副書記を務めています。
共産党の序列8位の賀国強氏も、96〜99年にやはり省党委副書記を務めています。
これだけ大掛かりな事件に、当時の福建省指導部が全く関与していなかったというのは、どうでしょうか・・・。
【権力闘争の“カード”に利用か 】
しかし、おそらく共産党支配体制を揺るがしかねない党中央幹部の関与が表に出ることはないのでしょう。
仮に、何らかの関与が取り調べ段階で判明したら、それは権力闘争における“カード”として利用されるのでしょう。コップの中で争いはしても、コップそのものを壊す共産党幹部はいない・・・とも言われています。
今秋の指導部交代を控え、最近、重慶市トップの薄熙来氏失脚を巡る騒動や、詐欺罪などで死刑判決が確定していた中国南東部の浙江省の女性実業家、呉英被告に対し、最高人民法院(最高裁)が刑執行直前に審理を高裁に差し戻すとの決定(事件当時の浙江省トップは習近平氏)など、党中央の権力闘争へ影響しそうな事案が続いています。
総じて、江沢民氏や習近平氏に対し、胡錦濤氏の勢力が有利な“カード”を手にする展開のようにも思えますが、部外者には窺い知れないものがあるのかも。
つい先日も、江沢民氏に近いとされ、薄熙来氏を擁護したとも言われる、共産党序列9位の周永康政治局常務委員(治安担当)の名前が今秋の共産党大会に出席する河北省の代表者名簿に載っていないということで、「落選」か・・・とも報じられましたが、結局“新疆ウイグル自治区の代表に満票で当選したことが分かった”とのことでした。北朝鮮ほどではないですが、中国の党内部の権力闘争はよくわかりません。
【「みんなで分けよう。しょせん国の金だから 」】
そうした権力闘争に関する部分はよくわかりませんが、共産党支配体制にあって、地方末端から中央幹部に至るまで、腐敗が横行している状況はよくわかります。
四川、陝西、甘粛の3省で死者6万9千人、行方不明者1万8千人を出し、500万人が家を失った四川大地震(08年5月)からの復興においても、行政による不正、汚職、むだ遣いが指摘されています。
****スピード復興、不正の温床 中国・四川大地震から4年 ****
中国の四川大地震から4年。中国政府は被災地に巨額の支援を注ぎこみ、公共施設や住宅のスピード再建を成し遂げたと誇る。だが、復興資金を巡る行政のむだ遣いや汚職も徐々に表面化。偽りの災害指定を受け、地方政府が補助金をだまし取った疑惑も浮上している。
■補助金狙い 被害でっち上げ
四川省成都市から車で2時間半、山あいに田畑が連なる射洪県。甚大な被害を受けた地区の一つとして、2009年に「重大被災地区(重災区)」の指定を受けた。震源から約180キロ。地震の揺れは震度4程度だった。
「近所で倒れた建物はない。重災区なんてうそです」。同県明星鎮の農民、陳永高さん(54)たちはそう告発する。
重災区に指定されると、倒壊家屋1戸につき1万6千〜2万3千元(約20万〜29万円)が国から再建補助金として支給される。これを狙った虚偽の申請だったとの訴えだ。
陳さんたちの調べによると、県政府がまとめた補助金の申請一覧には、ゼロのはずの倒壊家屋が192戸と記されていた。補助金は計400万元(約5千万円)に上るが、住民の多くは受け取っていない。名前が勝手に使われて地震被害が申請されていた。
地元捜査当局が動き、不正は次々に明るみに出た。
「あなたには4千元をあげるから、残りの1万5千元をみんなで分けよう。しょせん国の金だから」。不正申告した補助金1万9千元(約24万円)の山分けを地元幹部から誘われたという住民の証言が、捜査当局の調書に残る。
全国から集まった義援金や、重災区の被災者全員に配られるはずの1日10元(約125円)の生活補助費もどこかに消えていた。申請書には地震前年に死亡した人の名前も使われていた。地元幹部2人が汚職容疑で逮捕された。
ところが、そこで捜査は突然中止された。他の地区で起きた同様の疑惑はうやむやのまま。捜査当局者は「上から命令があった」と住民に伝えたという。
虚偽申請の疑惑は、明星鎮にとどまらず、県ぐるみの疑いに拡大している。
同県の大于鎮。広大な田畑が地震の年、農民の反対をよそに工業団地用の更地になった。被害のない農民の住宅が倒壊家屋として申請されたのだ。
住民には国の補助金平均2万元(約25万円)が渡されたのみ。「開発業者と県政府は、地震を利用して我々を追い出した」と黄遠倫さん(53)は訴える。
同県内で倒壊や重大な被害を受けた住宅は1万7227戸とされ、支払われた補助金は2億4千万元(約30億円)に達する。
県政府の担当者は、各鎮の申請書類に基づいて倒壊家屋を認定したと主張。「すべて見たわけではないが、絶対に倒れている。補助金も確実に住民に渡った」と朝日新聞に話した。(中略)
震災地の地元政府幹部の汚職疑惑も相次いでいる。
四川省政府は昨年3月までに幹部559人を取り調べた。地震で多くの死者が出た綿陽市では昨年5月、廖明副市長が解任された。自宅から1億元(約12億5千万円)を超す現金や骨董(こっとう)品が見つかり、都市計画事業との関連が疑われている。同省広元市や楽山市でも災害復興にあたった副市長がすでに解任されている。【5月15日 朝日】
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この種の、中国における地方行政の腐敗は、常に、いろんな問題で指摘されるところです。
よくわからないのは、そうした地方の腐敗・横暴をどうして党中央がコントロールできないのか、あるいは、中央も何らかの形で関与しているのか・・・というあたりです。
【地元当局などが年間約1千万元かけ、部外者の排除を託す 】
「盲目の人権活動家」陳光誠氏と妻、2人の子供はニューヨークに到着しました。
陳光誠氏の出国にあたり、早い幕引きを図りたい中国当局はアメリカとの関係にも配慮して、異例の対応を示していますが、陳氏の母親・親族への圧力は続いているとも報じられています。
****「帰れ」取材車囲み蹴る 中国・陳氏軟禁の村ルポ ****
中国の「盲目の人権活動家」陳光誠氏と妻、2人の子供がニューヨークに到着した20日、記者は陳氏が自宅軟禁されていた山東省東師古村へ向かった。
一人っ子政策のもとでの当局の中絶強要を告発した陳氏や妻は、2010年から多数の監視役の男たちに自宅や村を取り囲まれ、暴力もふるわれた。同村には今も陳氏の母親や親族が住んでおり、会って話を聞きたいと思った。
20日朝、記者が同村がある臨沂市の空港に到着すると、3人の男女に指さされ、「安全検査」と書かれた制服を着た職員に呼び止められた。飛行機の搭乗券で名前を確認された。その後、記者の車は黒い車にずっと後をつけられた。
空港から北西へ約70キロ。幹線道路から東師古村に入る細い道の入り口まで来ると、麦わら帽子や野球帽をかぶった男6人が立っているのが見えた。
細い道を入ろうとすると、車が男たちに取り囲まれ、「今すぐ帰れ」と怒鳴られた。用件や身分を尋ねられることもなく、外に出ようとすると、4人がかりで車の左右を蹴られた。
やっと車から外に出ると男たちは一斉に突進してきた。服を両手でつかまれ、「お前は招かざる客だ」。何者かと聞いても、「村人だ」と言うのみだ。胸を何度も突かれ、腕も引っ張られた。そして、頭から車の中に放り込まれ、ドアを閉められた。
車を発進させ、逃げようとする際、窓から体を乗り出し、夢中でシャッターを押した。
こうした監視役の男たちの存在は、陳氏や親族に対する村内での不当な対応が外部に漏れることを防ぐため、部外者が村内に入り込まないようにするものとみられるが、はっきりしたことは分からない。
これまでも多くの外国人記者や支援者が陳氏の自宅を訪ねようとして、監視役たちに阻まれ、時には暴行を受けてきた。陳氏が出国しても、状況は何も変わっていないようだ。
陳氏を山東省から救出した支援者の何培蓉氏によると、監視役は別の村から1日100元(約1250円)で雇われ、約120人がシフト制で勤務。地元当局などが年間約1千万元(約1億2500万円)かけ、部外者の排除を託すなどしているのだという。
米政府系のラジオ局ボイス・オブ・アメリカによると、陳氏の母親は今年78歳。心臓などに疾病があるという。陳氏は「母親は以前、具合の悪いときに病院に行くことも許されなかった」と語っていた。
また、陳氏のおい、陳克貴氏は故意殺人容疑で逮捕されたまま、動静は不明だ。克貴氏の母親も一時連行されたとの情報がある。
朝日新聞は20日、村にいる陳氏の複数の親族に電話をしたが、つながらなかった。【5月21日】
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【法律に優先する権力の意向 】
日本的感覚からすれば“無法”としか思えない地元当局の対応は、どういう法的根拠があるのか?
おそらく、法律より権力の意向が優先する社会なのでしょう。(中国憲法では共産党が憲法の上位に位置ずけられているそうですから、そもそも法治主義が存在していないとも言えます)
こうした地方の事態を中央が知らない訳はありませんが、中央はどのように判断、あるいは関与しているのか?
政治改革に言及することが多い温家宝首相のもとで、リベラルな知識人や官僚たちが、“共産党が憲法に従う”という一文を党規約・憲法に加えるべきかを検討している・・・とも報じられています。【5月23日号 Newsweek日本版】
日本では当たり前のようなことも、中国共産党の論理に照らすと全く違った判断ともなるのでしょう。
ただ、こうした地方行政の腐敗・横暴の横行が続き、中央もそれに関与しておりコントロールできないというのであれば、やがて共産党支配という“コップ”にも大きなひびが入るのではないでしょうか。
(4月21日 メコン川流域5カ国首脳を東京に迎えて開かれた、日本・メコン地域諸国首脳会議でのインラック首相 晩餐会後、コイに餌をやっているところのようです。むさくるしいオジサン政治家の中ではその存在が際立ちます。隣の野田首相が好色なジジイに見えてしまいます。(失礼) “flickr”より By DTN News http://www.flickr.com/photos/dtnnews/7098849281/ )
【満足度69% 】
タクシン元首相支持派と反タクシン派の間で確執が続くタイでは、昨年7月の総選挙でタクシン元首相の妹であるインラック氏がその初々しさもあって「インラック旋風」を巻き起こし、タクシン派のタイ貢献党が勝利しました。そして、8月には、インラック氏がタイ初の女性首相となりました。
就任直後に襲ったタイ大洪水ではその指導力に疑問の声も出ていたインラック首相ですが、その個人的人気はまだ衰えていないようです。
タイ国立開発行政研究院(NIDA)が、4月18日に発表した世論調査結果(有効回答数1,245名)によると、今年1〜3月のインラック首相の仕事に対する満足度は、68.5%と高率だったそうです。
地域別には、バンコク首都圏59.8%、中部69.2%、北部79.9%、東北部78.6%、南部54.8%となっており、さすがにタクシン派の“地盤”である東北部・北部では非常に高い数字になっています。
【物価上昇・作物価格低迷で国民に不満も 】
しかし、タイ事情に詳しい方のサイトなどを見ると、最近の物価上昇で政権への批判が高まってもいるようです。
先日は、野党や一般消費者団体から、急激な物価上昇により一般庶民が苦しんでいるという陳情を受けたインラック首相が市場などを視察した後、「一部の食材以外では目立った価格高騰は見られなかった」との発言を行ったということで、「金持ち首相には庶民の感覚がわからない」との批判を招いていることが報じられているそうです。首相側は、真意を伝えていないと反論していますが。【「ウチャラポーンの日記」(http://plaza.rakuten.co.jp/veryberry23/diary/201205100000 )より】
また、物価上昇と作物価格の低迷によって、その東北部農民の間にも現政権への不満が広がっているとの報告もあります。
****現政権に支持基盤である東北部赤シャツサポート層が不満 ****
商品作物市況の低迷の一方で、物価がじわじわ上がってきている。
東北部の農民を中心とする赤シャツ支持層のタイ貢献党離れが一部始まっているようだ。
タイ東北部サコン・ナコーン近郊の村では主要産品タピオカの価格が下落しているが、「前民主党政権の時は、保障価格キロ3バーツでどこでも売れたが、現政権では、保障価格キロ1.95バーツでは、一部の割当量しか売れない」と、耕作者は嘆いている。
また、「なぜ、プー(かに。インラックの愛称)首相は、助けに来てくれないのか」という声も聞かれるという。
政府は、いま黄シャツ隊グループとの和解努力に忙しいが、村民の生活を見るのが第一だろうと、不満を募らせている。
タピオカだけでなく、コメやゴムをはじめ、農作物で市況の低迷しているものが多い。政府の市況底上げ努力は成功していない。
一方で、燃料価格、子供の通学バスの価格、食品価格は、賃金アップもあり、上がってきている。【5月14日 チェンマイUpdate (http://uccih.exblog.jp/15863935/ ) 】
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【“政敵”訪問と赤シャツ隊の不満 】
“政府は、いま黄シャツ隊グループとの和解努力に忙しいが・・・”ともありますが、タクシン派と反タクシン派に分断された国民感情を統合していくこと自体は、インラック政権に課された最大の責務ではあります。
先月、インラック首相は、タクシン元首相を追い落とした「クーデターの黒幕」と言われる、反タクシン派の中心人物のプレム枢密院議長を訪問しています。
****タイ首相、兄の政敵を訪問 和解への地ならし ? ****
タイのインラック首相は26日、プミポン国王の側近のプレム枢密院議長をバンコク市内の自宅に訪ねた。議長は、首相の兄で、亡命生活を送るタクシン元首相が「クーデターの黒幕」と名指しした政敵。タクシン氏が帰国の意欲を高める中で和解への地ならしではないかとの見方が出ている。
面会はタイ正月のあいさつとされ、副首相3人も同席した。途中からは2人きりで話をしたものの、内容は明らかになっていない。
タクシン氏の帰国に向けては、国王の恩赦や恩赦を可能にする法律の制定などが模索されており、その意向が強く働くプレム氏との和解が欠かせないとされている。【4月27日 朝日】
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“国民和解”というよりは、“タクシン復帰”が直接の狙いではあるようですが、結果として“和解”ともなるのでしょう。
ただ、タクシン支持派の「赤シャツ隊」にとっては不倶戴天の敵でもあるプレム枢密院議長との和解がすんなり受け入れられるでしょうか?
約90名の死者まで出したバンコク都心部占拠の終結から2年、タクシン派内部にも不満が鬱積しているようです。
****タイ:タクシン派3万人が首都で集会 ****
タイのタクシン元首相派「反独裁民主戦線」(UDD)によるバンコク都心部占拠の終結から2年を迎えた19日、UDDは都心部で3万人を超える大規模集会を開いた。
会場はUDDのトレードマークである赤シャツを着た支持者で埋まった。「同志の死を無駄にしない」と書かれた横断幕が掲げられ、治安部隊との衝突で死亡した犠牲者の追悼式が行われた。
タイは昨年7月の総選挙でタクシン派が与党に返り咲き、タクシン氏の妹のインラック首相が誕生した。
ただ、占拠デモを武力鎮圧した軍の責任追及は進まず、UDD内でもインラック政権への不満が高まりつつある。
バンコク近郊のノンタブリ県から集会に参加した男性(46)は「首相は野党側との和解を進めようとしているが、軍の責任追及が先だ」と話した。
10年のデモでは、治安部隊との衝突で日本人カメラマン、村本博之さん(当時43歳)を含む約90人が死亡した。【5月19日 毎日】
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“和解”に向けたインラック首相の舵取りは非常に難しいものがあります。
【深南部で続く対立の構図 】
冒頭で取り上げたインラック首相の仕事ぶりへの評価については、問題別にみると、その満足度は「麻薬・犯罪対策」67.9%、「経済・雇用対策」48.8%、「汚職対策」29.1%、「政治和解策とデモ対策」28.6%、「深南部3県のテロ対策」20.9%となっています。
「政治和解策とデモ対策」も厳しい評価(タクシン派・反タクシン派、どちらサイドの不満を表すものか、その内容はよくわかりません)ですが、それ以上に低い評価がなされているのが「深南部3県のテロ対策」です。
これまでも何回か取り上げてきたように、タイが抱える大きな課題は、上述のタクシン派・反タクシン派の確執と、もうひとつは“深南部”と呼ばれるイスラム系住民が多い南部地域における宗教対立です。
最近の情勢については、4月2日ブログ「タイ深南部、止まぬテロ 繁華街で連続爆弾テロ」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20120402 )でも取り上げました。
そのタイ深南部における、少し変わった側面からの記事がありました。
****サッカーが架け橋になるタイ南部、仏教系とイスラム系和解への道 ****
仏教国タイの中でイスラム系が多数派を占める南部では、イスラム系過激派による仏教徒系住民への攻撃が多発するなど不穏な情勢が続いている。
こうした中、サッカーに対する情熱を共有することで和平につなげようという草の根の努力が実を結びつつある。
サッカーのタイ2部リーグに属するパタニFCの練習用グラウンドでは、選手たちがパスと同じくらいの速さで冗談を交わしながら、ボールを蹴っている。世界のどこのサッカークラブでも普通に見られる光景だ。だが、ここパッターニは、これが普通ではない特殊な環境にある。
パタニFCの本拠地は、イスラム系反政府勢力の活動の激震地にあるのだ。ここでは仏教系、イスラム系を問わず住民を狙った爆弾攻撃や銃撃が日常化しており、2004年以降これまでに5000人以上が犠牲となっている。
ピッチ外では暴力が繰り広げられているが、パタニFCの選手たちにとって、最も大事なことはゴールを決めることだ。
イスラム系のサマエル・サマ選手は「イスラム教徒だとか、仏教徒だとか、クリスチャンだとかは関係ない。ぼくらは皆、友人同士だ」と語る。
解決不可能とも思われる南部でのイスラム系勢力との対立にタイ政府が手をこまねいている間、地元では和平への歩みが始まっていた。
サッカーはタイ人の間でムエタイに次ぐ人気を誇るスポーツだ。しかも南部でのサッカー人気は熱狂的で、普段は分裂しがちな仏教系とイスラム系の住民たちが混ざり合う、極めて貴重な機会を提供している。「パタニの人々は、どんなに遠くに住んでいようが、(反政府勢力による)爆弾攻撃があろうが、必ずサッカーの試合を見にやってくるんだ」と、タイ北部出身で仏教徒のPisanurak Uthakang選手は話す。
■対立の構図から抜け出すために
前年に就任したインラック・シナワット首相は選挙運動中、政情不安が続く南部のヤラ、パタニ、ナラティワート3県に自治権の拡大を約束していた。
だが1年近くを経ても約束は果たされず、3県では2005年以来、非常事態宣言が出されたままだ。証拠がなくとも容疑者を30日間拘束できる非常事態宣言に、地元の人々は深い不満を抱いている。
イスラム教徒が多数派の地域であるにもかかわらず、知事や軍幹部らは地域外から任命されて来た仏教徒が多いことにも、地元のイスラム系住民たちは怒りを募らせる。タイ政府はイスラム系武装勢力との和解を試みてきたが、対立から抜け出す道筋は見出せずにいる。
インラック首相は4月下旬、南部の宗教指導者たちおよび軍高官らと会い、地域の緊張緩和のために教育と小規模事業、そしてスポーツに資金を注入すると約束したが、平和運動家たちは信用していない。「平和のための南部女性連合」を率いるHuda Longdewaaさんは「最も大きな問題は戒厳令下で軍の兵士が大量にいることです」と訴える。
■モスク訪れる兵士たち
しかし政府が苦悩する一方で、地元による和平に向けた努力は軌道に乗りつつある。
パタニ県のバングマ村では、兵士たちが1か月前から毎週、モスクを訪れ、村のイスラム教指導者と共に宗教間の対立について話し合ったり、イスラム教の基本や方言のヤウィ語を習う試みが続けられている。今では地元経済の問題に関する認識も共有し、高齢者へ医薬品を配布する活動も行っている。
地元のイスラム教指導者は「イスラム教をよく知らなかった彼らが地域の伝統を学びに来て、イスラム教を理解しようとしてくれている」と述べ、試みを歓迎した。【5月18日 AFP】
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サッカー選手間の協調も、一部兵士の取り組みも、喜ばしいことではありますが、自治権の拡大の約束、非常事態宣言の取り扱い、知事や軍幹部の任命の問題・・・など、根幹的なところでは対策が進んでいないようです。
兄タクシン元首相の帰国・復帰という十字架を背負いつつ国政に取り組むインラック首相に、タクシン派・反タクシン派の間の“国民和解”という難題に加えて、深南部での仏教徒・イスラム教徒の“国民和解”を期待することはあまりにも酷ではありますが、立場上どうしても取り組んでもらわねばならない課題です。
(シリア国境のキリス郊外の難民キャンプ コンテナが並び“Container City”とも呼ばれています。
本文【5月18日 毎日】にある“仮設住宅”というのは、このコンテナ群のことでしょうか。
“粗末なテント村”という難民キャンプのイメージより、はるかに快適そうなのは間違いありません。
“flickr”より By FreedomHouse2 http://www.flickr.com/photos/syriafreedom2/6951694634/ )
【医療・食事は無料 生活費も支給 】
近年とみに中東地域での存在感を強めており、「アラブの春」ではイスラム民主主義のモデル国とも見られているトルコですが、反体制派への武力弾圧を強めるシリアのアサド政権を強く批判し、ひいてはシリアと友好関係にあるイランとも対立を強めていることは周知のところです。
****イラン:トルコとの関係悪化 アサド政権への対応めぐり ****
友好関係にあった中東の2大国イランとトルコが、反体制派への武力弾圧を強めるシリアのアサド政権への対応を巡って対立し、両国間の亀裂が広がっている。トルコは、核開発問題で対立するイランと米欧諸国の間で仲介役を務め、今月13日にトルコでの核協議開催が決まりかけていたが、アサド政権批判を強めるトルコに対してイランが反発。イランが会場変更を求める事態に発展している。
トルコのイスタンブールで1日に開かれたシリア反体制派の支援国会合には米欧やアラブ諸国が多数参加。アサド政権への圧力を確認する場となった。これにシリア政府を支援するイランが反発。ラリジャニ国会議長は3日、「(イランと敵対する)イスラエル支持者ばかりの会合だ」と、トルコを暗に批判。関係悪化を象徴した。【4月7日 毎日】
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シリアの北に隣接するトルコは、2万5000人にも及ぶシリアからの難民を受け入れています。
“難民”キャンプというと、粗末なテントが立ち並ぶ悲惨な光景をイメージしますが、下記記事が伝えるトルコのシリア難民キャンプの様子は、それとは相当に違っており驚きました。
****シリア:難民「家、食料より国がほしい」トルコのキャンプ ****
「ほしいのは、家でも食料でもない。国だ」。アサド政権の武力弾圧から逃れてきたシリア人男性が訴えた。隣国トルコ南部キリスの難民キャンプ。「停戦」中のはずの古里では戦闘が続き、犠牲者は後を絶たない。「政権が倒れるまで帰らない」。地雷原を抜け脱出した父親がつぶやく。故国への渇望と、暴力への恐怖のはざまで、難民たちは生きていた。
トルコ政府の許可を得て14日に訪れたキャンプには2000戸の仮設住宅が整然と並び、約1万500人のシリア人が暮らす。学校、病院やモスク(イスラム礼拝所)、品ぞろえ豊富なスーパーもある。難民のほとんどがシリア北部イドリブ県のイスラム教スンニ派だ。アサド大統領の出身母体で支配層の少数派アラウィ派はいないという。
昨年6月に出国した教員のマフムード・ムーサさん(41)は、家族4人で21平方メートルの仮設住宅で暮らす。2部屋でトイレやシャワーもある。電気、水道、医療費、3度の食事も無料だ。トルコ政府は各家族に月400ドル(約3万2000円)の生活費まで支給する。
住宅の屋根には各自が購入した衛星放送のアンテナも目立つ。ムーサさんは「ここでは一日中いつでもお湯が使える。停電や燃料不足のシリアでの生活よりいいぐらいだ」と笑顔を見せた。
キャンプの出入りは原則自由でシリア側との行き来も可能。だが、目と鼻の先の国境の向こうでは、当局の弾圧や政府軍と離反兵士らの衝突が続く。15日には国連停戦監視団までイドリブで戦闘に巻き込まれた。負傷者はなかったが移動車両が損傷し、反体制派に一時保護されたという。
反体制団体「シリア人権観測所」によると民間人の死者は16日だけで約40人。昨年3月の騒乱本格化以降では推計1万人超。簡単に帰れる場所ではない。
「家より、食べ物より、本当にほしいのは祖国なんです」。ムーサさんの声に、望郷の思いがにじんだ。
シリア北部アレッポ近郊の菓子店経営、マフムード・ハンザルさん(31)。家族7人で政府軍の検問所を迂回(うかい)し、国境の地雷原を歩いて13日にキリスについた。「アサド政権が倒れるまで帰らない」と疲れ切った様子だ。
トルコ外務省によると、国内7カ所のキャンプで約2万2500人のシリア人が生活する。難民はレバノン、ヨルダン、イラクにも流れており、国連機関によると全体で約7万人に達している。
アサド大統領は16日、友好国ロシアのテレビで「混とんの種をまいている」と外国の「介入」を批判。反体制派を「テロリスト」と切って捨てた。
シリアに対しては欧米やサウジアラビアなどの一部アラブ諸国が民主政権への移行を要求する一方、ロシアや中国、イランが「シリア人同士の話し合いによる事態解決」を主張してアサド政権を支援。中東の民主化運動「アラブの春」の影響で始まったシリア騒乱は、開始から14カ月を経ても出口が見えない。【5月18日 毎日】
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仮設住宅に学校・病院、医療・食事は無料、生活費まで支給・・・驚くほどの厚遇です。
「停電や燃料不足のシリアでの生活よりいいぐらいだ」というのは正直な感想でしょう。
もちろん、1日も早く故郷に戻りたいという難民の思いは強いのでしょうが。
【自由シリア軍を庇護下に置くとともに、勝手な行動を取らぬよう監視 】
シリア難民だけでなく、アサド政権打倒を目指す離反兵らの武装組織「自由シリア軍」もトルコ領内に拠点を置いて活動しています。
****袋小路の打倒アサド武闘路線 自由シリア軍拠点ルポ ****
シリアのアサド政権打倒を目指す離反兵らの武装組織「自由シリア軍」がトルコ南部に置く拠点に2日入った。取材に応じた幹部は国際社会の武器支援を訴え、不利に傾く戦況に焦りの色を濃くしていた。
ただ、反体制派の在外代表組織「シリア国民評議会(SNC)」と同様、同軍も国内反体制派との連携を欠く上、主導権争いが顕在化。武装闘争路線は袋小路に入り込んでいる。
政権側の攻撃を逃れた約1万7千人が避難しているトルコの南部アンタクヤ。その郊外に点在するシリア人キャンプの一つ、アパイデンには、自由シリア軍の指導部や、一部の戦闘員とその家族らが暮らすテントが立ち並んでいた。
作戦基地だというこのキャンプの門では、警備のトルコ兵が人の出入りに目を光らせる。アサド政権を強く批判しつつも国境付近での戦闘激化は避けたいトルコには、自由シリア軍を庇護(ひご)下に置くとともに、勝手な行動を取らぬよう監視する目的があるとみられる。
「いま必要なのは、対戦車砲や携行式の地対空ミサイルだ」。会議用のプレハブ小屋で会見した自由シリア軍ナンバー2のクルディ大佐は、こう力を込めた。
同軍は、3月に西部ホムスの拠点を政権側に制圧されて以降、各地で撤退を続け苦戦を強いられている。
もともと同軍は「少数部隊が各自で自由に活動する」(別の幹部)ネットワーク型組織の性格が強く、指揮系統は確立されていない。装備も脆弱(ぜいじゃく)なため、現在は戦車やヘリで攻勢を強める政権側によって各個撃破されているといい、大佐の言葉には焦りがにじむ。
カタールなど湾岸アラブ諸国が武器供与を主張してはいるが、イラクなど周辺国には、それらが国際テロ組織アルカーイダ系勢力に流出することへの懸念が強い。アナン前国連事務総長が暴力停止に向けた調停努力を続ける中、指導部が望む武器を質・量ともにそろえるのは難しいといえる。
組織運営の問題も多い。2月に、政権軍からの離反では最高位のムスタファ・シェイフ准将一派が独自の組織を結成。その後、自由シリア軍と統合で合意したものの、権限配分でクルディ大佐ら同軍指導部と対立している。さらに最近では欧州在住の退役軍人らが新組織「シリア国民軍」を設立し、一本化どころか分裂が加速しかねない状況だ。
キャンプでは、子供を肩車する父親の姿も見えた。国内に潜入することが多い戦闘員らにとっては、つかの間の休息の場でもある。激しい戦闘が続く北部イドリブ出身の戦闘員は「十分な武器があれば政権軍をたたきつぶす」と息巻いた。
しかし、今月1日、有志国の「シリアの友人」会合で「全シリア人の正統な代表」に承認されたSNCでも、主導権争いは収束していない。戦闘員らは士気の高さに胸を張ったが、反体制派につきまとう内紛体質は、米欧などに武器供与をためらわせ、求心力低下につながる可能性もある。【4月3日 産経】
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さすがに武装組織の拠点ですから、“仮設住宅が整然と・・・”ではなく、テントが立ち並ぶ状況のようです。
【思惑に反して長期化する事態に苦慮しているのでは 】
「自由シリア軍」や「シリア国民評議会(SNC)」など、反政府組織側の内部対立の問題はさておき、印象深いのは、トルコが随分と反政府側に肩入れしていることです。
アサド大統領の辞任を要求するトルコは、11年11月30日、武力弾圧を続けるシリアのアサド政権に対する経済制裁措置を決定しています。
また、トルコのダウトオール外相は、11年11月29日、“仮にシリア政府の国民に対する弾圧が続けば、トルコとしては如何なるシナリオにも対応する用意がある。我々は軍事介入が必要とならないことを願う。”と、事態の進展次第では軍事介入する可能性もあることをも示唆しています。
外相は更に、弾圧による難民が急増すれば、彼らのために緩衝地帯を創設する可能性があることにも言及しています。
エルドアン首相も3月、緩衝地帯に言及していますが、いろんな状況を考慮せねばならず、選択の余地は大きいとも発言しています。
アサド政権の力が及ばない「緩衝地帯」をシリア北部に設けることについては、反政府組織側も緩衝地帯を軍事作戦の拠点とし、アサド政権打倒の足掛かりにしたいと期待しています。
しかし、緩衝地帯設置にはトルコ軍の軍事的介入の必要性が予想されます。
アサド政権との全面対決ともなるこうした措置の実現については、トルコ政府も慎重とならざるを得ないと思われます。
武器援助も、内戦を激化させるという容易ではありません。
トルコとしては、シリア問題で立ち位置を鮮明にして解決への道筋をリードすることで、この地域でのトルコの存在感を更に高めたい思惑があったと思われます。
しかし、1日に1000人にも及ぶほど難民が急増【3月15日 AFP】する一方で、一向に弾圧を停止しないアサド政権の頑なな姿勢から解決の道は見えず、長期化する事態への対応に苦慮している・・・というのが、今の状況ではないでしょうか。
(昨年8月19日 スー・チーさんと会談したテイン・セイン大統領 急速な民主化の進展を牽引してきた大統領の健康状態が懸念されています。 “flickr”より By freeyouth99 http://www.flickr.com/photos/68877352@N08/6257935168/ )
【心臓発作か、疲労か ?】
ミャンマーでは、長年自宅軟禁が続いていた民主化運動指導者スー・チーさんの国政参加に代表される民主化の過程にありますが、保守派の抵抗もあるなかで、誰も予想しなかったこれほど急速な“民主化”の流れを牽引してきたのは政権トップのテイン・セイン大統領だと言えます。
そのテイン・セイン大統領が心臓の発作で倒れたというニュースが報じられています。
かねてより健康問題を抱えていると言われていただけに、その容態、もし政務が困難になった場合の“民主化”への影響が心配されます。
****ミャンマー大統領が心臓発作で入院 民主化と変革 停滞の恐れ ****
ミャンマー政府筋によると、テイン・セイン大統領(67)が17日朝、心臓発作のため倒れ、首都ネピドーの病院に搬送された。ミャンマーの民主化と変革の行方は、テイン・セイン大統領の健康状態にもかかっており、容体が懸念されている。
詳しい容体は不明。政府筋はペースメーカーが十分に機能せず、一時、意識を失ったとしている。このため午前中の閣議を開催できなかった。容体次第ではシンガポールの病院に搬送される可能性もあるという。
大統領は昨年3月の就任以前から心臓を患い、ペースメーカーを使用している。就任に消極的だったとされるのも、健康状態が理由だった。検診と治療のため時折、シンガポールを訪れてもいる。
大統領顧問のココ・フライン氏は、テイン・セイン大統領は2015年の総選挙に出馬せず、1期(5年)で職を辞するとしている。大統領は連邦議会で選出されるが、次期大統領候補の筆頭にあげられるのが、国民代表院(下院)議長のトラ・シュエ・マン氏。ただ、テイン・セイン大統領の健康が悪化し、職務をまっとうできなくなった場合、後継をめぐり混乱する可能性がある。
保守・強硬派の代表格、ティハ・トゥラ・ティン・アウン・ミン・ウー副大統領はすでに辞表を提出しており、副大統領の後任を選ぶ臨時議会が、今月末にも招集されるとみられる。
副大統領の後任候補としても、トラ・シュエ・マン氏の名前が浮上するが、テイン・セイン大統領と距離を置いているとされ、民主化と変革にどこまで取り組むかは不透明だ。
同氏が副大統領職に就いた場合、大統領は下院議長の後任に、最大野党・国民民主連盟(NLD)のアウン・サン・スー・チー党首を起用する意向もあったとされる。
大統領の健康悪化に伴い、人事をめぐる対立が広がり、民主化と変革が停滞する恐れがある。【5月18日 産経】
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大統領周辺は「疲労がたまっただけ」と、事態の鎮静化を図っています。
政情の混乱に繋がりかねない政治家の健康問題が秘密にされたり、逆に誇張されたりというのは、ミャンマーに限らずどこの国でも同じですが、ミャンマー民主化の置かれている状況を考えると、軽い症状であって欲しいと願うばかりです。
****ミャンマー:テインセイン大統領「疲労で安静 」 ****
米政府系放送「ボイス・オブ・アメリカ」(VOA)は17日、ミャンマーのテインセイン大統領(67)が最大都市ヤンゴンの自宅でめまいを訴えて倒れた、と報じた。
一部で心臓発作で入院中との情報も流れたが、大統領顧問の一人は18日、毎日新聞の取材に「疲労がたまっただけで、現在は自宅で安静にしている」と否定した。
大統領は以前から心臓疾患を抱え、ペースメーカーを使用している。【5月18日 毎日】
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【人事刷新の動き “スー・チー議長”案も 】
次期大統領を狙っているとされ、副大統領の後任としても名前があがっている国民代表院(下院)議長のトラ・シュエ・マン氏は、軍事政権時代は陸海空統合参謀長としてタンシュエ議長を支える立場にあり、序列的にはテイン・セイン大統領よりも上にいた人物です。
トラ・シュエ・マン下院議長は、大統領とは対立することも多かったとも言われていますが、民主化に対する姿勢・考え方がどのようなものなのかはわかりません。
昨年10月、ノルウェー外務副大臣との会談で、「政治犯釈放は近い時期に行う。スー・チー女史も現政府と協力できる機会もあると思われる。そのときは喜んで迎えたい」と語っています。【ミャンマーデイリーニュース 11年10月11日より】
また、昨年11月、補欠選挙で(スー・チーさんが率いる)NLDのメンバーが国家議員になったら政府の方針は変わるかとの問いに、次のように答えています。
「NLDのメンバーが国会議員になれば我々は歓迎します。しかし政府の方針は変わらない。NLDのメンバーが入ればよりよい仕事が出来ると思います」【ミャンマーデイリーニュース 11年11月29日より】
すでに辞表を提出している保守・強硬派の代表格、ミン・ウー副大統領に併せて、保守・強硬派の閣僚を入れ替えるテイン・セイン大統領の意向も報じられています。
健康問題次第では、そのあたりの人事にも影響してきます。
“トラ・シュエ・マン下院議長が副大統領職に就いた場合、大統領は下院議長の後任に、最大野党・国民民主連盟(NLD)のアウン・サン・スー・チー党首を起用する意向もあった”ということですが、スー・チーさんは、政権運営に入ることなく、一議員として政府の行動を監視したいとしているとのことです。
ただ、“スー・チー議長”というのも、興味をそそられる構想ですし、スー・チーさんが指導力を発揮するうえでも悪くないかも・・・という感もします。
【アメリカ 経済制裁緩和 】
そのスー・チーさんは、欧米諸国による経済制裁解除については、早急な解除は政権側に誤ったシグナルを与えるとして慎重な姿勢を見せてきましたが、一時停止には賛成の意向を明らかにしています。
****ミャンマー制裁停止に賛成=ただし慎重対応を―スー・チー氏 ****
ミャンマーの最大野党・国民民主連盟(NLD)のアウン・サン・スー・チー氏は15日、ワシントン市内で開催されたイベントにヤンゴンからビデオ会議形式で参加し、対ミャンマー制裁の一時停止には賛成すると述べた。
AFP通信によると、スー・チーさんは制裁を全面解除ではなく、一時停止にすることで、民主化プロセス継続を促す強力なメッセージになると指摘。「米国の人々が正しい措置だと思うなら、制裁停止に反対しないが、慎重さを求めたい」と述べた。【5月16日 時事】
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アメリカ・オバマ大統領は17日、今月20日に制裁期限が切れるのを受け、ミャンマーの民主化や人権状況に依然懸念があるとして、制裁の1年延長を決めて議会に通告しました。
こうして制裁の枠組みは維持する一方で、ミャンマー外相と会談したクリントン国務長官は17日、経済制裁の一時停止など制裁緩和措置を発表しています。
****ミャンマー経済制裁を停止=新大使にミッチェル特別代表―米 ****
クリントン米国務長官は17日、ミャンマーの民主化努力を評価し、同国への投資禁止などの経済制裁を停止すると発表した。
米国を初めて公式訪問したミャンマーのワナ・マウン・ルウィン外相と会談後、国務省での共同記者会見で明らかにした。
また、オバマ大統領も声明を出し、米・ミャンマー関係における「新たな一章の始まり」と歓迎。1990年に外交関係を格下げして以降、空席になっていた駐ミャンマー大使にミッチェル・ミャンマー担当特別代表・政策調整官を指名したと述べた。
制裁が停止されるのは、米企業・個人による新規投資と金融サービスの提供で、武器禁輸は継続される。また、改革を妨害する勢力や、少数民族地域などでの人権侵害に関与する人物が制裁停止の恩恵を受けないよう、米政府は特定の団体・個人に標的を絞った制裁を科す方針だ。【5月18日 時事】
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話は最初に戻りますが、こうした“民主化”“制裁解除”の流れが加速するなかで、テイン・セイン大統領の健康状態が気がかりです。
(13日発表された世論調査では、ユーロ圏残留支持が78%、連立政権協議について「各党が協力すべきだ」が72%、「再選挙すべきだ」が22%でしたが、結局は再選挙へ。結果次第ではユーロ圏残留も危うくなります。
“flickr”より By Global News Pointer http://www.flickr.com/photos/58594229@N07/7187196400/ )
【威勢のいいスローガンになびく大衆政治(ポピュリズム )】
周知のように、EUなどからの支援を受ける条件としての財政緊縮策を行ってきた与党の二大政党が先の総選挙で大敗したギリシャでは、パプリアス大統領が15日、組閣に向けた最後の調停のため主要政党の党首らと会談しましたが物別れに終わり、総選挙後9日間続けられた政権樹立への試みがすべて失敗、再選挙が行われることになりました。
再選挙は6月17日に行われることで各党が合意、選挙管理内閣の暫定首相に、行政事件の最上級審となる国家評議会のトップであるピクラメノス氏がパプリアス大統領によって任命されています。
世論調査に基づく推計では、緊縮策に反対して先の総選挙で第2党に躍進した急進左派連合が再選挙では更に議席を増やして第1党となる勢いであるとも報じられています。
****ギリシャ再選挙 連立調停失敗、反緊縮派に勢い ****
・・・・最近の世論調査による推計では、急進左派連合に独立ギリシャ人党、民主左派を加えると議席が過半数に達し、反緊縮派だけで政権樹立も可能となる計算だ。だが、反緊縮派が政権を取れば、欧州連合(EU)などによる金融支援の枠組み自体が崩壊し、ギリシャ財政が破綻する恐れもある。【5月16日 産経】
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5月11日ブログ「ギリシャ 「挙国一致多党連立政権」か、再選挙か ユーロ離脱も現実味を増すなかでの正念場」(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20120511 )では、“キャスティング・ボードを握っているのは急進左派連合(SYRIZA)のアレクシス・ツィプラス党首のように見えます”と書きましたが、最後の最後では混乱の引き金を引きかねない再選挙を避ける組閣に向けた妥協が成立するのでは・・・という思いがありました。しかし、総選挙勝利に興奮する急進左派連合の勢いを止めることはできなかったようです。
****ギリシャ:混乱の中、ポピュリズム政党が台頭 ****
総選挙後の混乱が続くギリシャ政界では、38年間続いた2大政党制が終わる興奮と、支持政党を失った有権者が威勢のいいスローガンになびく大衆政治(ポピュリズム)政党の台頭が同時進行で起きている。
「平和的な革命が起き、歴史の新しいページが開かれた。ギリシャから欧州に反緊縮策のうねりを広げる」
政局の台風の目となった急進左派連合(SYRIZA)のチプラス党首(37)は、選挙後の勝利演説やパプリアス大統領との会談などで、繰り返し「我々が勝利者だ」という大仰な熱弁を振るった。メディアでは「英雄気取りの思い上がった態度」と批判も出た。
元々は共産党から分裂した左派小集団が04年、選挙対策で寄り集まった。過去3回の総選挙は得票率3〜5%台。今回選挙戦では、単純化した公約と、男は全員ネクタイを外し、小会合で語りかける親しみやすいスタイルで、緊縮策推進の旧2大政党から離れた支持者をかき集めた。
第2党とはいえ、得票率はわずか17%弱。それでも「勝利者」と酔いしれるのは、40年近く合計70%超の得票率を続けてきた旧2大政党の一つを降し、もう一つに2ポイント差まで迫ったからだ。
ギリシャ政界の特殊事情が、外からは想像しにくい興奮を生み、「勢いを失う前に再選挙で一気に勝負をつけよう」という強気を後押ししている。同党は本気で組閣もせず、再選挙にらみのパフォーマンスに終始した。
寄せ集め左派政党の習いで、内輪もめは絶えない。党を指導するのは軍政時代に投獄経験もある旧世代の左派闘士たち。チプラス氏は4年前、世代交代の象徴として33歳で党首を禅譲された。同党が政権を取れば、首相になる可能性もあるが、行政・外交・経済の実務経験は皆無だ。しかし、この手腕未知数の政党に、大衆はますます傾斜しつつある。(中略)
再選挙では、SYRIZAの勝利と旧2大政党の埋没が予想されている。SYRIZAの緊縮策「廃止」は、「自分たちが債務を検査し直し、欧州連合(EU)と合意を結び直す」という内容。具体的な修正点は不明で、ND、PASOKの「改正・再交渉」との違いも分からず、EUが取り合うはずもないが、怒りと高揚と落胆が渦巻くギリシャで、そうした指摘に耳を貸す空気はない。【5月13日 毎日】
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【現実味を増すギリシャの“ユーロ離脱 ”】
急進左派連合の主張するような“緊縮策「廃止」”を実行すれば、ドイツ国内に見られるようなギリシャの放漫財政批判などをなんとか抑えながらかろうじて実現していたギリシャ救済策は不可能になる公算が大きいように見えます。“EUと合意を結び直す”というのは非現実的です。
そうなると、ギリシャ財政破綻、デフォルト、ひいてはユーロ離脱という最悪のシナリオが現実のものとなってきます。
ギリシャを取り巻く空気にも、ギリシャのユーロ離脱を現実的選択肢としてとらえるような変化が見られます。
****ユーロ崩壊への終末シナリオ ****
そのシナリオが現実になる可能性については、誰も触れようとしてこなかった。ちょっと口にしただけでも、ユーロ圏の崩壊と破滅を想像させるほど恐ろしい未来図だったからだ。
だがこの数日で、ギリシャがユーロ圏から離脱する危険性は、無視できないほど現実味を帯びるようになってきた。タブー視されてきたこの話題は今、ヨーロッパの財政閣僚たちの間で避けては通れない問題になっている。
「ギリシャがユーロを去った場合の代償は非常に大きなものになる」と、ドイツのウォルフガング・ショイブレ財務相は14日、ユーロ加盟国との会談に先立って語った。ギリシャの離脱を現実的な選択肢として公に語るようになった中央銀行の総裁も複数いる。
いつも慎重な姿勢を崩さないジョゼ・マヌエル・バローゾ欧州委員会委員長も、ギリシャについて厳しい警告を発した。「クラブのメンバーがクラブのルールを尊重しないなら、クラブに留まるべきではない」と、先週イタリアのテレビ局に語っている。
EU本部では、恐れるべきはギリシャ離脱だけではないと、ささやかれている。ギリシャが抜けることによってもたらされる混乱は、ポルトガルやアイルランド、スペインなどに急速に拡大し、共通通貨ユーロの崩壊とヨーロッパ経済の破綻につながり得るからだ。
これはもはやヨーロッパだけの懸念事項ではない。数々の問題を抱えているとはいえ、ユーロ圏は13兆6000億ドル規模を誇る世界第2位の経済圏だ。その崩壊は、リーマンショックとは比べものにならないほどの大災害を世界経済にもたらすだろう。(後略)【5月16日 Newsweek】
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EUのバローゾ委員長は、ギリシャに「ユーロ圏に残ってほしい」と訴えていますが、逆に言えば、状況次第では“離脱”が現実のものとなるということでしょう。
***ギリシャ:EU委員長声明「ユーロ圏に残って 」 ****
ギリシャが再選挙を決めたことについて、欧州連合(EU、加盟27カ国)のバローゾ委員長は16日、現在の救済策が最も困難が少なく、他の選択肢が大多数の市民により大きな痛みをもたらすと、ギリシャ国民に理解を求める声明を発表した。ギリシャに「ユーロ圏に残ってほしい」としたうえで「それはギリシャ国民次第だ」と再選挙での慎重な行動を求めた。
委員長は「ギリシャの民主的な決定を尊重する」と前置きしたうえで、救済策は「緊縮策だけでなく成長を促す方策も入っている」と述べた。ギリシャ国民が、他のユーロ圏諸国のことも考慮に入れ、「どんな結果を招くかを十分理解したうえで決定することが重要だ」と呼びかけた。【5月17日 毎日】
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フランスのオランド新大統領はベルリンを訪れてドイツのメルケル首相と初めて会談しましたが、再選挙が決まったギリシャに対し、両首脳も「ユーロ圏にとどまることを望む」と表明しています。
市場には“ギリシャは3月、いったん債務不履行(デフォルト)になり、金融機関がもつギリシャ国債は減っている。金融システム全体に与える影響は以前より小さくなっており、「離脱しても大混乱が起きるとは考えにくい」(野村証券の木内登英氏)”【5月11日 朝日】といった声も出てきています。
【ユーロ離脱が引き起こす混乱 】
もしギリシャがユーロから離脱した場合、どうなるのか?
****ギリシャ通貨暴落 超インフレ *****
「反緊縮財政」の世論を受けてギリシャの再選挙が決まり、ギリシャのユーロ離脱が現実味を帯びてきた。もし離脱して旧通貨「ドラクマ」が復活したら、ギリシャ経済はどうなるのか。その影響は欧州諸国や世界経済にどう広がっていくのか。
金融市場が休みの週末、ギリシャ政府が突如として銀行預金を封鎖し、2001年末まで流通していた旧通貨「ドラクマ」復活を宣言する――。「ユーロ離脱の日」は、こうして始まる可能性が高い。事前に離脱日を公表すると、ユーロを引き出そうと預金者が銀行に殺到し、取り付け騒ぎが起きてしまうからだ。
信用を失ったギリシャ政府が発行するドラクマの価値は、為替市場で暴落することが避けられない。1ユーロあたりのドラクマの価値が下がれば、同じ1ユーロの借金を返すのにも多額のドラクマが必要になり、借金が実質的に増える。政府はお金を返せなくなり、「確実に債務不履行(デフォルト)に陥る」(日本政策投資銀行の田中賢治氏)。
通貨の暴落によって、国内では急激な物価上昇(インフレ)が進む。輸入品を中心に生活必需品の値段が上がる。仏金融大手BNPパリバは、離脱後の最初の1年のインフレ率は40〜50%に達し、国内総生産(GDP)は20%下がると試算する。
通貨危機に陥った国は当初は混乱するものの、通貨安で輸出が有利になり、後に経済が回復することもある。ただ、「ギリシャにはそもそも輸出できる産業が乏しい」(丸紅経済研究所の美甘哲秀所長)。
混乱が長引けば、海外からの客足が遠のき、ギリシャの基幹産業である観光業は衰退。外国企業も投資を控える。経済はますます縮小し、八方ふさがりとなる可能性がある。【5月17日 朝日】
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対応を誤ると、破滅的なハイパーインフレーションの危険もあります。
もちろん、混乱はギリシャだけにとどまりません。
****南欧諸国 ドミノの恐れ ****
ギリシャがユーロを離脱すれば、周辺国や世界経済への悪影響も避けられそうにない。ドラクマの暴落などにより、他国の政府や銀行がギリシャに貸しているお金が焦げ付き、損失が発生するからだ。
フランスの経営大学、IESEGの調査担当エリック・ドー氏の試算では、独仏両政府の損失は1560億ユーロ(15兆6千億円)、両国の金融機関の損失は240億ユーロ(2兆4千億円)に達するという。
さらに深刻なのは、似たような財政不安を抱える南欧諸国への波及だ。金融市場では、スペイン、イタリアなどもギリシャと同じ道をたどるのではないか、という連想が生まれる。緊縮策に耐えられずに続々と離脱していく「ユーロ崩壊」のシナリオだ。
スペインやイタリアの借金も焦げ付き、その国債を大量に抱える金融機関は深刻な経営危機に陥りかねない。これらの国々の経済規模はギリシャとは桁違いに大きく、危機に備えて欧州連合(EU)や国際通貨基金(IMF)が用意しているお金では、支えきれなくなる。「世界経済は08年秋のリーマン・ショック以上の壊滅的な打撃を受ける」(外資系金融機関)
日本経済への影響も深刻だ。ユーロが売られてさらに円高が進むほか、中国など新興国経済も失速し、輸出が減る。大和総研によると、ギリシャ離脱が南欧諸国に波及すれば、日本のGDPを4.1%押し下げるという。【同上】
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【怒りの投票ではなく、理性の投票を 】
こうした混乱に転落しかねない崖っぷちにいることについて、ギリシャ国民の認識が少し甘いのではないか・・・という感もします。
もっとも、ギリシャ国内銀行からの預金引き出し額が7億ユーロ(約710億円)に上るなど、国民にはユーロ離脱への不安ともとれる動きが出ていることも報じらています。
「総選挙では急進左派に投票した。一番勢いを感じたし、政治を変えてくれる、反緊縮策で立ち上がってくれると期待した。再選挙は仕方ない。今度は国民も頭を冷やして考える。怒りの投票ではなく、理性の投票となるからいいことだ。自分も次はどこに入れるか迷っている。何が一番いいのか分からなくなった」(アテネ 55歳 主婦)【5月16日 毎日】というのが、ギリシャ国民の気持ちでしょう。
“ユーロ離脱”を現実の問題としてとらえ、“怒りの投票ではなく、理性の投票”が再選挙でなされれば、再選挙の意義は大きかったということになるでしょう。
逆に、“ユーロ離脱”に突き進むような結果を選択するのであれば、その後の混乱は自業自得ということでしょう。もっとも、巻き込まれる欧州・世界各国はそれではすまない・・・ということもあるのですが。