孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

トルコ  大統領制への国民投票で不信感を増幅させる欧州とトルコ 国内には強い“スルタン”を待望する声も

2017-04-26 23:17:16 | 中東情勢

(国民投票結果を喜ぶエルドアン大統領支持者ら【4月17日 Newsweek】)

トルコがペシュメルガを空爆 複雑なトルコ・クルド関係
トルコは3月末、シリア北部の「イスラム国(IS)」及びクルド人勢力(YPG)の排除を目的とした軍事作戦「ユーフラテスの盾」を終了したと発表していますが、同作戦終了後としては初めてのクルド人勢力への越境爆撃を再び実施しています。

****トルコ軍、イラクとシリアで越境空爆 「テロ準備」主張****
トルコ軍は25日、イラク北部とシリア北西部の地域を越境して空爆した。少数民族クルド人の分離独立を求める「クルディスタン労働者党」(PKK)によるトルコ国内のテロが、この地域で準備されていると主張している。

在英のNGO「シリア人権監視団」によると、この空爆により、シリア側で少なくとも18人が死亡した。AP通信などは、イラク側でも5人が死亡したと報じている。
 
トルコ軍によると、空爆は25日午前2時ごろ、イラク北部シンジャル山とシリア北西部の付近で実施された。この一帯が、テロリストや武器、爆薬などをトルコ国内に流入させるために使われているとしている。
 
同監視団によると、この空爆で、トルコがPKKの兄弟組織と認定しているクルド人武装組織「人民防衛隊」(YPG)のメンバー18人が死亡した。

シリア内戦で、米軍などの支援を受けるYPGは、同国北部で過激派組織「イスラム国」(IS)を打倒する作戦の主力になっているが、トルコは強く反発している。

また、AP通信などによると、イラク北部のクルディスタン地域政府の治安部隊ペシュメルガのメンバー5人もこの空爆で死亡した。
 
トルコでは11日に南東部ディヤルバクルで、地下に掘られたトンネルに仕掛けた爆薬で警察署を狙ったテロがあり、警察官を含めた3人が死亡した。このテロではPKKが犯行声明を出している。【4月25日 朝日】
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トルコ・エルドアン政権がシリア北部で勢力を拡大するクルド人勢力YPGをIS以上に敵視していること、そのYPGはアメリカのIS掃討作戦の主力を担っており、トルコとYPGの確執がアメリカに難しい調整を迫っていること(今のところはトルコの反対にもかかわらず、アメリカはYPGによるIS掃討を継続しています)などは、以前から取り上げている話です。

今回の空爆で興味深いのは、イラク北部のクルド自治政府(クルディスタン地域政府)の軍事部門ペシュメルガが攻撃対象となったことです。

同じクルド人勢力ではありますが、イラク北部のクルド自治政府はPKKよりはトルコ政府と良好な関係にあって、クルド側からトルコへの原油の輸出や、イラク北部でISと戦うペシュメルガに対するトルコによる教育訓練や後方支援も行われています。

詳細はわかりませんが、ペシュメルガの一部に、トルコが主張するようなPKKにつながるような動きがあったということでしょうか。組織的には疎遠とはいっても、同じクルド人勢力ですから、それも不思議ではありませんが。

“クルド自治政府は今回の空爆について「受け入れられない」と反発している”【4月25日 時事】とのことですが、ただ、これ以上トルコ政府との間でもめたくもないし、また、ペシュメルガとPKKの関係を認める訳にもいかないし・・・ということで、今回攻撃は“誤爆”であったという線で処理しようとしています。

実際“誤爆”だったのか、先述のようにペシュメルガとPKKの間に関与があったのか・・・そこらわかりませんが、トルコとクルド人勢力の複雑な関係を示す一例として興味がもたれるところです。

独裁化への批判で、国民投票は予想以上に“苦戦”】
そのトルコでは、今月16日に、注目された大統領権限拡大のための憲法改正案に対する国民投票が実施され、投票前の“接戦ながら賛成がわずかにリード”という世論調査を驚くほど忠実に反映した賛成51.41%、反対48.59%という結果となり、賛成が過半数を超えたために改正がほぼ決定しています。

大統領の新たな行政権限を定めた条項は、2019年に実施予定の大統領選以降に有効となり、議院内閣制から大統領が強い権限を持つ大統領制へ移行します。

エルドアン大統領の強力(強引?)な主導もあって、賛成多数はある程度予想されていたところではありますが、予想以上に苦戦したという評価もあります。

“苦戦”したのは、現在でも強権的との批判があるエルドアン大統領にさらに権限が集中することで、“独裁化”への強い警戒感が存在するためでもあります。特に、イスタンブールなど都市部では、そうした警戒からの反対票が多かったようです。

****民主化の先、独裁リスク トルコ大統領に権力集中****
・・・・エルドアン氏の政治家としての経歴は、国是である厳格な政教分離に基づく世俗主義を担う軍や司法機関との闘いの連続だった。

トルコでは親イスラムの政治勢力が台頭するたび、軍が介入し、民主的に選ばれた政権を交代させたり、親イスラム政党を解党に追い込んだりしてきた。
 
エルドアン氏らが設立した親イスラム政党・公正発展党(AKP)は2002年の総選挙で大勝して政権に就くと、高い経済成長率を実現。低所得者層向けの福祉政策やインフラ整備の充実をはかり、国民の支持をつかんだ。そうした国民の支持を背景に、AKPは軍の影響力をそぐことに取り組み、法改正を進めた。
 
だが、今回AKPが作成した憲法改正案は、議院内閣制を廃し、大統領に行政権を集中する制度設計で、「民主主義の基盤である三権分立を崩壊させ、独裁につながる」と批判される。
 
AKPがそうした批判を乗り越え、国民投票で賛成過半数を獲得した背景には、相次ぐテロ、そして昨夏の軍の一部によるクーデター未遂で、国民が「強い指導者」を欲した事情がある。エルドアン氏がクーデターを失敗に終わらせると、支持率は40%台から60%台に急上昇した。
 
その一方で、エルドアン氏とAKPは批判勢力を徹底的に封じ込めた。クーデターへの関与を疑われて10万人以上が拘束され、大量の軍人や公務員が職を追われた。メディアも100社以上が閉鎖を命じられ、200人以上の記者が逮捕された。締め付けは社会全体を萎縮させた。
 
エルドアン氏やAKPは国民投票のキャンペーンで「改憲に反対するのはテロリスト」とレッテルを貼り、メディアは反対派のキャンペーンをほとんど取り上げなかった。そもそも反対の論陣を張るはずの文化人や知識人の多くは拘束され、批判的なメディアは閉鎖されていた。【4月18日 朝日】
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今回の大統領制への移行は、三権分立とチェック・アンド・バランスよりも、政権転覆を企てる(軍部を含めた)外部勢力への対応のために大統領に権力を集中することを重視した措置と理解できます。

エルドアン大統領による、クーデター未遂事件後の反対派一掃の大規模粛清は現在も続いています。

****1千人を一斉拘束 トルコのクーデター未遂事件****
トルコで昨年7月に発生したクーデター未遂事件に関連し、治安当局は26日、米国に亡命中のイスラム教指導者ギュレン師を信奉する団体と関係のあるとみられる1009人を一斉に拘束した。拘束者の大部分は警察官という。政府はギュレン師をクーデターの「首謀者」とみている。
 
ソイル内相が地元メディアに明らかにした。報道によると、拘束命令の対象は3200人以上にのぼるという。クーデター未遂事件の後に非常事態宣言が出され、現在も続いている。

欧州評議会の報告書によれば、約4万人が拘束され、約15万人の公務員や軍人、裁判官、教師などが職を追われている。【4月26日 朝日】
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実際に7月のクーデター未遂事件に関わったか否かではなく、政権に批判的なギュレン派やクルド人勢力、野党勢力などとの関係が疑われる者はすべて排除するという様相を見せています。

「大統領制」自体は多くの国家が採用している制度ではありますが、こうした反対派の存在を許さないエルドアン大統領にさらに権限を集中させることへの不安・懸念がトルコ国内外に根強く存在します。

国民投票における「不正」疑惑 選挙委は異議申し立てを却下
国民投票に関しても、反対派の選挙前の活動が厳しく制約され、政権に有利な形で行われたという問題のほか、怪しげな不正行為があったとの指摘もありました。

****<トルコ国民投票>「不正動画」ネットで拡散 深まる不信感****
トルコで16日に実施された大統領権限拡大のための憲法改正案に対する国民投票で、予備の投票用紙に「不正に公印を押す男性」だとする動画がインターネット上で拡散され、注目を集めている。

最大都市イスタンブールなどでは「不正」を批判する若者らがデモ抗議。全欧安保協力機構(OSCE)などで作る選挙監視団は、反対派に関する「公平な報道がなされなかった」と指摘し、トルコ政府が猛反発するなど投票をめぐり不信感が深まっている。
 
動画は約30秒で、真偽は不明。男性の一人が次々と押印し、「とっとと終わらせて、行こう」との男性の声が入り、撮影者らしい女性の言葉が続く。「議長、私、あなたを撮っていますよ。あなたは押印のない投票用紙にスタンプを押して、有効(な投票用紙)にしようとしている。犯罪ですよ」。だが男性は黙って押印を続ける。
 
地元メディアによると、動画は首都アンカラの投票所で撮影された可能性が高い。投票所には各党の支持者が「監視役」として派遣される。女性の言う「議長」とは、そのトップとみられるという。
 
16日昼ごろにインターネットに投稿され、数十万回は視聴された。最大野党・共和人民党(CHP)は18日、公印を勝手に使い「有効」な投票用紙が作られたとして、高等選挙委員会に国民投票そのものの無効を訴えた。

ロイター通信によると、OSCE監視団メンバーの一人は、最大250万票が不正操作された疑いがあると指摘する。「押印」に絡むものが含まれるかは不明。(中略)

イスタンブールや首都アンカラ、イズミルなど大都市では、16日夜以降、数百人から1000人規模のデモが相次ぎ、一部は治安当局と衝突。イスタンブール中心部でカフェを営むサンジャクさん(38)もデモに参加した。「メディアで取り上げられるのは賛成派の意見ばかりで、反対派の声はほとんど聞かれなかった」と怒る。
 
トルコ政府は、政府に批判的なメディア幹部らを「テロリスト」などとして逮捕。今回の国民投票でも、反対派の主張はほとんど報じられず、欧州連合(EU)はトルコ政府に「透明性ある(事実関係の)調査」を求めた。エルドアン大統領は17日、「投票は西側諸国より民主的だった」と強く反論した。
 
一方、イスタンブールで最も保守的な地域の一つとされるファティ地区の商店街には「賛成票を投じた人は全品2割引き」などの「祝勝」ポスターが目についた。少数民族クルド系で服装店を営むムラト・ギュネシュさん(36)も賛成票を投じた。「若者がデモをやれるぐらい自由な社会ということだ」と語る。
 
治安当局は、政府に批判的なクルド系政党党首や国会議員を「テロリスト」として逮捕しているが、「理由がある。今の政権は交通機関をたくさん作り、生活を便利にしてくれた。クルド系政党は批判ばかりで、何もしてくれない」。
 
別の会社役員、ムスタファ・スナさん(68)は「デモをやっても結果は変わらないし、変えるべきではない。動画は偽造だ。政府がやることは正しい」と語った。【4月19日 毎日】
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動画の真贋はわかりませんが、仮に不正があったとしても、そうした批判にひるむようなエルドアン大統領ではありません。

****選挙委、異議申し立て却下=トルコ国民投票****
トルコの高等選挙委員会は19日、憲法改正への賛否を問う16日の国民投票をめぐり、同委に対して行われた投票無効の申し立てを却下した。トルコのメディアなどが伝えた。委員会メンバー11人のうち10人が無効に反対したという。
 
改憲反対派の中道左派野党・共和人民党やクルド系政党・国民民主主義党は、高等選挙委が投票開始後に公式スタンプの押されていない票も有効とすると規則を変更したことなどを問題視し、投票無効を訴えて異議申し立てをしていた。【4月20日 時事】
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増幅された欧州とトルコの不信感
上記【毎日】にもあるように、全欧安保協力機構(OSCE)などで作る選挙監視団が117日、公平な選挙報道がされなかったなどとして「欧州評議会の基準を満たしていない」と批判し、それを受けてEUは公正な選挙がされなかった疑いがあるとして、トルコ政府に「透明性ある調査」を求めています。

こうした欧州からの批判に、エルドアン大統領は選挙前からの欧州批判をさらに強めています。

****<トルコ>監視団「最大250万票操作」 大統領は反論**** 
トルコのエルドアン大統領は17日、首都アンカラでの演説で、欧州批判を展開した。
16日の国民投票に対する欧州側の「不正があった」との批判に対し「身の程を知れ」などと激しく反論。欧州連合(EU)加盟交渉の打ち切りも辞さない構えを示した。(中略)

さらにEU加盟交渉が進まない現状に不満をあらわにし、「EUは我々を玄関先で待たせてきた」と非難。交渉継続の是非を問う国民投票の実施も示唆した。加えてEUが加盟条件としている「死刑制度廃止」についても言及。

トルコは2002年に廃止したが、「復活させる法案が提案されれば承認する。復活の是非を問う国民投票を実施してもいい」と語った。制度が復活すれば、トルコのEU加盟は事実上消滅することになる。
 
トルコと欧州は国民投票前から対立してきた。トルコの閣僚らが欧州在住のトルコ人有権者に向けに「賛成」の支持拡大を図る集会を開こうとしたところ、ドイツやオランダなどの当局が拒否。エルドアン氏が「ナチスの残党」「ファシストの振る舞い」などと各国を非難し、欧州が反発していた。【4月18日 毎日】
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欧州側のトルコ不信も強く、欧州評議会の議員会議は25日、トルコの民主主義の状態について「深刻な懸念」を示し、監視を強化する決議を採択しました。

当然にエルドアン大統領は「決議は完全に政治的なもの」と激しく反発しています。その上で、停滞するEU加盟交渉の打ち切りを問う国民投票を実施する可能性について改めて言及しています。

****EU加盟交渉難航は宗教が一因、断念もあり得る=トルコ大統領****
トルコのエルドアン大統領は25日、ロイターの取材に応じ、トルコの欧州連合(EU)加盟交渉が長引いている背景にはイスラム教への嫌悪感があるとし、加盟を断念する用意もあると語った。

欧州評議会議員会議はこれに先立ち、昨年のクーデター未遂を受けてトルコ政府が反政府勢力を弾圧している状況を巡り、トルコを人権問題の監視対象とした。エルドアン大統領はこの決定を「完全に政治的だ」と批判した。

トルコでは大統領権限を強化する憲法改正の是非を問う国民投票が今月行われ、賛成が過半数を占めた。国民投票の前には、ドイツとオランダがトルコ閣僚による自国での改憲支持集会の開催を阻止したのに対し、エルドアン大統領が両国をナチスになぞらえて批判するなど、トルコとEU加盟国の関係は一段と悪化している。

エルドアン大統領はインタビューで、破壊されたモスクの写真などを見せながら、「欧州では、イスラム嫌いの度合いが極めて深刻になっている。EUはトルコに対する門戸を閉ざしつつあるが、トルコは誰に対しても門戸を閉じようとしていない」と発言。

「EU側が誠意をもって行動しない場合、われわれは出口を見つける必要がある。なぜ、これ以上待たなければならないのか。(トルコが欧州共同体に加盟する意思を示した1963年のアンカラ協定から)54年間協議を続けている」と語った。

大統領はまた、必要な場合は、英国のようにEU加盟の是非を問う国民投票を実施する可能性があると明らかにした。

今週はトルコのEU加盟にとって重要な会議が予定されている。26日にはEU議員による協議、28日には加盟国外相による協議が予定されている。

エルドアン大統領は、協議の行方を注視しているとし、トルコにはなお交渉を継続する意思があると表明。「EU側の要求に応じる用意があるが、トルコはまだ入り口に立たされたままだ」と語った。

大統領はさらに、「EUにはトルコのような異なる信仰を象徴する国が必要だが、EU加盟国はそれを認識していないようだ。彼らはイスラム教徒の国を(EUに)受け入れることがとても難しいと考えている」と述べた。【4月26日 ロイター】
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欧州側に、宗教的にも異質で、政治的にも西欧的価値観からますます遠ざかるトルコをEUに迎え入れる気がないのは事実でしょう。ただ、難民問題でトルコが防波堤になっている現実から、トルコと完全に決別することもできません。

気性が激しいエルドアン大統領が「トルコにはなお交渉を継続する意思がある」としていることの方が不思議なぐらいですが、トルコとしても欧州・EUと完全に決別できない経済的な事情もあるのでしょう。

国内には強い指導力を持った“スルタン”を求める声も
エルドアン大統領の“独裁化”への批判・懸念は多方面にありますが、トルコ国内おいて過半数の国民から支持されているのも事実です。

****現代のスルタン求めた トルコ・エルドアン氏、対欧州・低所得者対策に支持****
・・・・改憲反対派は独裁化を警告したが、多様な人々に支持されている。(中略)
 
国民投票で投票者の7割以上が賛成票を投じた中部コンヤ。同地のAKP支部に所属するキャーミル・キルジさん(25)は、「エルドアン氏は誰にも邪魔されずトルコを引っ張っていける。トルコは先進国と張り合える」と語る。
 
キルジさんは、オスマントルコ帝国(1299~1922)に学ぶべきだと訴える。「反イスラムの欧州はトルコを弱い国のままにしようとしている。トルコの大統領はスルタン(オスマントルコ時代の君主)のような強い指導力で対抗すべきだ」
 
トルコでは、05年に始まった欧州連合(EU)への加盟交渉が進展しないことへの不満、欧州への難民・移民流入問題でシリア難民を押しつけられた不満が鬱積(うっせき)している。欧州への対決姿勢を示すエルドアン氏は、そうした不満の受け皿になっている。
 
身近な生活環境の改善からエルドアン氏を支持する人も多い。同氏が生まれ育ったイスタンブール・カスムパシャ地区。地方から出稼ぎに来た貧困層が住み着いた同地区は、AKP政権前はゴミ回収車は来ず、通りはゴミだらけ。公立病院はいつも長蛇の列。だが、同氏が03年から11年間首相を務めたAKP政権下、ゴミ収集車は1日3回巡回するようになり、病院の列も短くなった。
 
長年同地区に住む運転手オルハン・ネシェさん(50)は「エルドアン氏のおかげで、私たち低所得者も人間としての価値を認められた」と感謝する。
 
世俗派を自認する人々にも、AKPの「成果」を肯定的に評価する人がいる。イスタンブールの高校で哲学を教えるディララ・アヤズさん(27)は「AKPは様々な社会階層、民族から支持され、トルコの政治は多元性を増した」。
 
AKPとエルドアン氏が支持される理由について、トルコのシンクタンク、経済外交政策センターのシナン・ユルゲン会長は「エルドアン氏に親近感を感じる人々の多くは、AKP政権前の世俗派政権では疎外されていると感じていた。疎外感を取り払った同氏に感謝している」と分析する。【4月24日 朝日】
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フランス大統領選挙  「エリート対大衆」の構図に持ち込みたいルペン氏 マクロン氏に求められる“圧勝”

2017-04-25 23:14:04 | 欧州情勢

(仏大統領選、第1回投票における県別の得票率首位の候補者を示した図。【4月25日 AFP】
黄色がマクロン候補が制した県、灰色がルペン候補が制した県 右上の小さな図は前回2012年選挙で、ピンクがオランド氏、水色がサルコジ氏)

マクロン候補:シナリオどおりの展開に「はしゃぎすぎ」?】
フランス大統領選挙第1回投票は、最近では“珍しい”ほどに事前の世論調査とほぼ等しい結果となりました。
周知のようにEUを重視する中道系独立候補のマクロン前経済相が24%で首位、反EU・反移民の極右政党「国民戦線(FN)」のマリーヌ・ルペンが21.3%で第2位ということで、この両者が勝ち抜けています。

マクロン候補としては、第1回投票を首位でクリアし、国民に根強い抵抗感がある極右ルペン氏を相手に、反極右戦線を展開して2週間後の決選投票に臨むという、狙いどおりのシナリオです。

実際、敗退した右派野党・共和党のフィヨン元首相、左派与党・社会党のアモン前教育相、更にはオランド大統領が「反ルペン」の立場からマクロン支持を表明、経済界もマクロン支持となっています。

仏イプソスが公表した世論調査によると、決選投票に進んだ場合のマクロンの勝率は62%で、ルペンの38%を大きくリードしています。

そんなこんなで、マクロン候補もちょっと気も緩むところがあるのかも。

****マクロン氏が大はしゃぎ? 決選投票決定後に有名店で宴会 「成金候補」と批判****
フランス大統領選で23日に決選投票進出を決めたマクロン前経済相が同日夜、パリの有名レストランで支援者を集めて宴会をしたことから、「はしゃぎすぎ」とひんしゅくを買った。
 
この店は画家のピカソやモディリアニらが集った老舗。赤いビロード張りの椅子が置かれた豪華な内装で観光客にも人気がある。

マクロン氏は23日、投票結果を受けて演説した後、妻と店に向かい、経済学者や芸能人ら支援者約50人と24日未明まで歓談した。

その様子がテレビで生中継され、共に決選投票に進むルペン陣営の幹部から「まるでもう勝ったかのよう」と皮肉を浴びた。決戦投票に向けた世論調査では62%がマクロン氏を支持している。
 
フランスでは、サルコジ前大統領が2007年の大統領選の勝利後、パリの有名レストランで宴会を開いて「成金大統領」と批判を浴びた。

元投資銀行の行員のマクロン氏は「またも成金候補か」とやゆされ、陣営は24日、「そんなに高い店ではない」と沈静化に懸命となった。【4月25日 産経】
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なお、このレストランは“ステーキと付け合わせのポテトの値段は28ユーロ(約3350円)”【4月25日 AFP】だそうで、確かに「そんなに高い店ではない」のかも。

既成政治への不満を背景に「エリート対大衆」という構図で攻めるルペン候補
マクロン候補優勢の“楽観論”がある一方で、“独紙フランクフルター・アルゲマイネは第1回投票で左右の極端な候補の得票が計4割超に上ったことを受け、ルペン氏の大統領当選阻止で「仏国民がまとまれるか」と不安視している。”【4月24日 産経】といった慎重論もあります。

特に、19.6%を獲得した急進左派・左翼党のメランション共同党首は、決選投票では支持者各自の判断にゆだねるとしており、反EUという点でも、反既成政治という点でも、また経済政策でも、極右ルペン氏に近いものがある極左メランション支持層がどのような判断をするかは不透明です。

メランション支持層には、アメリカ大統領選挙におけるサンダース候補支持層が示したクリントン候補への抵抗感と似たようなものがあるように思われます。

当然に、保守層の一部もルペン候補に流れますので、メランション支持層の動向如何では、事前予想とは違う数字もでる可能性があります。

第1回投票は、アメリカ大統領選挙でリベラル色の強い東海岸・西海岸の大都市でクリントン候補が圧倒したものの、失業者の多いラストベルトに代表されるような既成政治への不満を抱える大都市以外の広範な地域でトランプ候補が勝利したのと非常に似通った結果を示しています。

****<仏大統領選>高失業率地域ルペン氏支持 大都市マクロン氏****
フランス大統領選で決選投票に進む中道・独立系のエマニュエル・マクロン前経済相(39)と極右・国民戦線のマリーヌ・ルペン前党首(48)。

第1回投票の得票率の分布からは、失業率の高い北部と南部の一帯を制したルペン氏に対し、マクロン氏はパリなど大票田の大都市を中心に、現与党の社会党が従来強い中部から西部にかけて支持を広げたことが特徴として浮かぶ。
 
仏内務省の発表によると、仏本土の全95県のうちルペン氏の得票率が最も高かったのは北部エーヌ県で約35.6%。次点のマクロン氏をダブルスコアで引き離した。

同県を含む北部の工業地帯は炭鉱業などで栄えたが斜陽化。都市部と比べて移民の割合は必ずしも高くないが、高失業率に直面する地域だ。

ルペン氏は同様に失業率が高い南部の地中海沿いの地域でも支持を広げ、地元メディアによれば高失業率上位10県のうち9県を押さえた。
 
一方、マクロン氏は約34.8%を獲得して首都パリを制したが、ルペン氏のパリでの得票率は5番目で約5%にとどまった。

またマクロン氏は社会党のオランド大統領を選出した前回大統領選(2012年)で同党が制した中部から西部にかけてのほぼ全域を制し、左派の切り崩しに成功したことを裏付けた。
 
今回、共和党のフランソワ・フィヨン元首相(63)が首位を獲得した県は本土で5県にとどまり、社会党のブノワ・アモン前教育相(49)はゼロ。保革2大勢力の衰退が浮き彫りとなった。【4月25日 毎日】
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冒頭に示した地図で見ると、“分断”の様相は一目瞭然です。
前回選挙との比較では、保守層の地盤をルペン氏が、社会党の地盤をマクロン氏が制したことがわかります。

ルペン氏としては、こうした「分断」を背景に、「エリートによる既成政治」批判という線で今後攻めてくると思われ、その戦略は保守層や極左メランション支持層の切り崩しにおいて相当に有効でしょう。

****<仏大統領選>「エリートと対決」ルペン氏、大衆側を強調*****
「フランスを自分の思いのままにしたい高慢なエリートから解放する時がきた。私は大衆の候補者だ」。フランス大統領選で決選投票進出を決めた極右・国民戦線(FN)のルペン党首は23日夜(日本時間24日未明)、地盤の北部エナンボーモンで支持者を前に「勝利宣言」した。

30代で政権中枢入りを果たした中道・独立系のマクロン前経済相との決選投票に向けて、「エリートとの対決」という構図を強調した。(中略)

ギリシャ移民の2世だというブリジット・ベランジェさん(58)は「差別主義者との批判は間違っている。フランスに秩序をもたらすただ一人のクリーンな候補だ」。左派・共産党支持からFN支持に転じたという男性(42)は「これまで国民は左派・右派どちらにも政権を託したが、良い方向に進まなかった。何かを変えることができる候補者はもう彼女しかいない」と語った。
 
またアントワーヌさん(20)は「経済政策が近い急進左派メランション氏の支持者の一部はルペン支持に回る」と述べ、決選投票に期待感を示した。
 
かつて炭鉱の街として栄えたエナンボーモンを含む一帯では1990年代にかけて閉山が相次ぎ経済は低迷。左派市長の汚職を機に2014年の地方選以降、FNが市政を担い、FN幹部も兼任するブリオワ市長は住民税減税や警察官増員を実施し、高い支持率を誇る。

市長は会場で報道陣に「我々は郊外や工業地帯で絶対的な支持を得た。決選投票はエリート対大衆の闘い」だと強調。第1回投票で敗れ、マクロン氏支持を表明した中道右派フィヨン氏の支持層切り崩しの必要性を訴えた。【4月24日 毎日】
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ルペン氏は「私は大衆の候補者だ」ということを、一時的に国民戦線党首を辞任することでアピールする戦略に出ています。

****党首業務を一時休止=「国民全体を結集」―極右ルペン氏・仏大統領選****
フランス大統領選の決選投票に進出した極右政党・国民戦線(FN)のルペン党首(48)は24日の地元テレビで、大統領選に専念するため同党の党首業務を大統領選終了まで一時休止すると発表した。
 
ルペン氏は「今夜から私はFNの党首ではない。国民全体の結集を望む大統領選の候補だ」と述べた。仏メディアによると、この間は別の同党幹部が暫定党首を務めるとみられる。【4月25日 時事】 
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党首の座から決選投票までの2週間降りたからといって、何が変わるものでもありませんが、そこはイメージの問題ということでしょう。

マクロン候補:「右でも左でもない」新たな政治実現のためには決選投票を圧勝し、議会を掌握することが必要
マクロン候補は、大統領として改革を実行するためには決選投票を大差で制することが求められていますが、有名レストランではしゃいでいると、こうした「エリートによる既成政治」批判に足をすくわれることにもなりかねません。

****マクロン氏、改革実行へ圧勝必須 下院選への基盤固め鍵に****
・・・・アナリストは、決選投票でマクロン氏の得票率が60%を割り込めば、分断されたフランス社会に対して経済改革を実行できると確信させることは難しいと指摘する。

そうなった場合、6週間後の6月に控える国民議会選で「前進」が過半数を獲得することは困難になる可能性がある。(中略)

調査会社ビアボイスのフランソワ・ミケマルティ氏は「見かけほど単純ではない。新たな選挙戦がスタートする」と述べ、「ルペン氏は、グローバル化時代を行くエリートとしてのマクロン氏と大衆の候補としての自身との対決という枠に当てはめて決選投票を戦うだろう」と指摘。「大当たりになり得る攻撃をルペン氏は用意している」と語った。

「持てる者」と「持たざる者」の分断から、仏労働者の職と権利を守ることができるのはルペン氏だけだという同氏のメッセージへの支持が拡大してきたフランスでは、主要政党からの支持がマクロン氏に不利に働く可能性もある。

ルペン氏は23日、「オランド大統領の後継者から変革が期待できないのは明白だ」と述べ、マクロン氏を衰える権力層の候補だと一蹴した。

ビアボイスのミケマルティ氏は「マクロン氏はより攻撃的なアプローチをとる必要がある」と指摘する。

この点についてマクロン氏は23日の演説でこう述べている。「今夜からの課題は、誰かに対する反対から投票するのではなく、30年以上にわたってフランスの問題に対処できなかったシステムから完全に決別することだ」──。【4月24日 ロイター】
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とにもかくにも、大統領の一歩手前まで上り詰めたマクロン候補の実績・政治姿勢については、以下のようにも。
(高校生のときのフランス語教師だった24歳年上の人妻との結婚・・・というエピソードは、3月13日ブログ“フランス大統領選挙 左右両サイドの偏り・混乱のなかで大きく空いた真ん中を走るマクロン前経済相”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20170313で取り上げました)

****マクロン氏、規制緩和と弱者配慮のバランス政策を主張 EU重視で対露では強硬****
政党基盤も選挙経験もない若手候補が左右両派を中心とした政界の構図に独自の戦いを挑み、大統領へあと一歩に迫った。「左右の溝を超える」。マクロン氏が目指すのは経済改革を進めると同時に弱者も配慮する“バランス”型。欧州連合(EU)も重視する。
 
1977年、仏北部生まれ。エリート養成校「国立行政学院」(ENA)を卒業後、投資銀行勤務を経て2012年、大統領府入りした。14年から約2年間の経済相時代に長距離バス路線の自由化、日曜営業拡大など「マクロン法」と呼ばれる規制緩和を断行した。
 
オランド大統領の人気が低迷する中、昨年4月、独自の政治運動「前進」を立ち上げると、8月には政権を離れ、出馬を決めた。
 
「束縛もなく、弱者も守られる社会」を掲げる。経済政策では法人減税や週35時間労働制の運用柔軟化などで企業の競争力向上を図り、公務員12万人削減などによる支出削減で財政再建に努める一方、500億ユーロ(約6兆円)の投資も計画し、セーフティーネットの拡充にもあてる。
 
EUについては「欧州の戦略なしに成功できない」と明確に支持。ユーロ圏予算創設のほか、EUの防衛協力強化、エネルギーなど単一市場創設を掲げる。
 
警官の1万人増員などで治安を強化する一方、社会の「多様性」も重視し、貧困地区住民を雇用する企業への補助も設け、移民の社会統合を促す。外交ではルペン氏と対照的にロシアへの厳しい姿勢を堅持する。【4月24日 産経】
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先走った話にもなりますが、仮にマクロン候補がめでたく大統領に就任できたとしても、目指す「左右の溝を超える」「経済改革を進めると同時に弱者も配慮する“バランス”型」政治を実現できるかに関しては、議会を掌握できるかという、もうひとつの大きな壁があります。

****焦点:マクロン氏、改革実行へ圧勝必須 下院選への基盤固め鍵に****
・・・・アナリストは決選投票でのマクロン氏の勝利を見越し、同氏が政策実行に必要な政治勢力を結集できるかどうかに関心を向けている。

マクロン氏は国民議会選で577の全選挙区で候補者を擁立するとしているが、他党の党員でも見解を共有する者は歓迎する考えを示している。

既に50人程度の社会党議員がマクロン氏の政治運動に加わっており、中には大物議員の名も見受けられるが、決選投票で多くの票を集めれば集めるほど、同調者は増えるだろう。

マクロン氏は連立政権の樹立を避けられない可能性があるが、アナリストや投資家にとっては、形態にかかわらず、マクロン政権が労働関連規制の緩和など国民の反対が必至の政策を実行できるかどうかが問題だ。

JPモルガン・チェースのラファエル・ブルンアケレ氏は、マクロン氏が下院で過半数を確保するのは非常に困難との見方を示し、「一部の改革を軸に党派を超えた連立形成を目指すことが予想される」と述べた。

マクロン氏は、この1年で専門家の予想を覆してきたように、国民議会選でも過半数を獲得すると言明した。【4月24日 ロイター】
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議会で主導権を握るためには、自己のアイデンティティを明確にする必要があります。

****仏大統領選、中道マクロンの「右でも左でもない」苦悩****
・・・・「前進!」は全選挙区に候補者を立てる予定であり、単独で過半数を得られるとマクロンは主張する。だが、そこには大きな課題がある。

世間にとって「前進!」のアイデンティティーは、「何者か」というより「何者ではないか」だ。

「前進!」のアルノー・ルロワ副代表は、「極右ではない」と自分たちを定義する。「(私たちは)フランスの民主主義にとって、ルペンに滅ぼされる前の最後のチャンスだ」

そのような主張は、大統領選の決選投票では「ルペン阻止」の票を集められるかもしれないが、総選挙のメッセージとしては弱い。(後略)【4月24日 Newsweek】
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単に「極右ではない」存在から、「30年以上にわたってフランスの問題に対処できなかったシステムから完全に決別」した「右でも左でもない」新たな政治を主導する存在に脱却できるかが、“マクロン大統領”にとって重要なカギになります。非常に先走った話ではありますが・・・・。
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コンゴ  中央カサイ州で暴力が横行 住民100万人以上が避難 政府高官・大統領の責任

2017-04-24 22:28:05 | アフリカ

(コンゴ 国連装甲車両のパトロールを見つめる住民 【3月29日 ISLAM Times】

政府軍・民兵組織による暴力が横行
アフリカ中央部に位置する資源大国コンゴ民主共和国(旧ザイール)における、豊富な資源の利権をめぐる紛争が絶えない“資源の呪い”とも言うべき状況については、2月21日ブログ“コンゴ 東部で続く混乱 映画「ランボー」のような政府軍による民間人虐殺?”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20170221でも取り上げました。

そのときは、絶えない非人道的暴力・殺戮の一例として、ナンデ人の民兵組織がフツ人の村を襲撃し住民25人を殺害したとされる事件、政府軍兵士らが非武装の民間人50~100人を射殺している様子を映したとする動画が公開されたこと・・・・などを紹介しました。

そしてコンゴでは、カビラ大統領が任期切れを過ぎても“居座り”を続けています。

武装組織・政府軍入り乱れての悲惨な暴力に関する報道は、その後も続いています。被害者は国連関係者にも及んでいます。

****コンゴで警察官42人殺害、国連専門家も遺体で発見****
<在任期間を過ぎても大統領の座に居座り続けるカビラと反対勢力の対立は、国連専門家も巻き込む最悪の事態に>

コンゴ(旧ザイール)中部の中央カサイ州で24日、警察官と地方武装勢力が衝突し、警察官42人が斬首された。与野党勢力の衝突が続く現地でも、最悪のケースと見られる。

当局によると、殺された警察官たちは同州の中心都市ツィカパからカサイ州カナンガへ移動していた。今は亡き部族長カムウィナ・ンサプに忠誠を誓う民兵組織が襲撃したとき、命が助かったのは、地元の言語であるツィルバ語を話した6人だけだった。同日、フランソワ・カランバ同州知事の話としてAP通信が伝えた。

コンゴでは、ジョゼフ・カビラ大統領が任期切れを無視して権力の座に居座った昨年末以来、与野党の紛争が激化している。

ンサプは昨年6月に、自らを公式に国家元首として認知させる運動を開始。これに呼応する蜂起が相次ぎ、政府はこの地域から撤退を余儀なくされた。

2カ月後、ンサプが治安部隊に殺害されると、その支持者が警察や対立する組織と衝突。BBCニュースによれば、両組織とも民間人を残虐したと相手を非難している。

国際機関は、今月初めに国連人権理事会のチームが発見した集団墓地から推測し、コンゴ治安部隊によって民間人が約99人殺害されたと報告した。

また、ンサプの民兵組織が、近隣に位置する南東部ロマミ州で子どもを含む、少なくとも30人を処刑したことを非難した。

さらに今月21日、国連の専門家組織のメンバーのアメリカ人とスウェーデン人が現地人通訳とともに拉致され、27日に全員が遺体で見つかった。スウェーデン人のメンバーは首が切断されていたという。【3月30日 Newsweek】
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政府軍と地方武装勢力が、ともに住民を殺しまくっているような状況のように思えますが、混乱が拡大しているカサイ州だけでも100万人以上の住民が避難を余儀なくされています。

****紛争下のコンゴ、中央カサイの避難民100万人以上に 国連****
アフリカ中部コンゴ民主共和国の中央カサイ州で、政府側のコンゴ民主共和国軍(FARDC)と部族勢力側の民兵組織の激しい衝突により、これまでの8か月間で住民100万人以上が避難を余儀なくされている。国連(UN)関係者が21日、明らかにした。
 
同州では昨年8月、ジョゼフ・カビラ大統領に対する武力闘争を続ける部族勢力のカムウィナ・ンサプ首長(別名ジャンピエール・ムパンデ)が政府軍に殺害されたことを機に衝突が始まった。
 
国連人道問題調整室(OCHA)のイボン・エドモウ氏がAFPに語ったところによると、OCHAに登録された中央カサイの避難民数は4月1日時点で109万人に上る。

この他にも北キブ州や南キブ州などの紛争地域でも200万人が避難を強いられているという。
 
国連の報告によれば、カサイ地域では40か所から埋められた多数の遺体が見つかったほか、現地情勢を調査していた外国人の国連専門家2人が拉致されてから16日後に土中から遺体となって発見されている。【4月23日 AFP】
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簡単に“100万人以上”と言いますが、とんでもない数字です。アフリカだから誰も注目しませんが・・・・。

ICCで裁かれる武装組織幹部 背後の国家・政府高官の責任は?】
コンゴでは、上記のカサイ州の武装勢力だけでなく、多くの武装勢力が活動しています。
やや古い記録にはなりますが、イギリス内務省イギリス国境局が2012年3月に公表している文書(http://www.moj.go.jp/content/000123638.pdf)では、以下のような組織があげられています。

・ルワンダ解放民主軍(FDLR)
・神の抵抗軍 (LRA)
・マイ・マイ・シェカのような市民グループの集団をベースとしたマイ・マイ軍(地域ベースの民兵グループ)
・コンゴの自由と独立のための愛国者同盟 (APCLS)
・コンゴ愛国抵抗連合 (PARECO)
・Allied Democratic Forces/National Army for the Liberation of Uganga (ADF/NALU)
・Forces Réublicaines Fééalistes (FRF)
・Front de Réistance Patriotique d’Ituri (FRPI)
・Front Populaire pour la Justice au Congo (FPJC)
・Mouvement de libéation indéendante des allié (MLIA)

比較的よく名前を目にする“悪名高い”組織もありますが、個人的には知らない組織もたくさんあります。
その後も多くの組織が生まれていると思われます。

上記リストにあげられているFRPI(コンゴ愛国的抵抗戦線 名前だけはりっぱです)の幹部の一人は、国際刑事裁判所(ICC)によって裁かれています。

****ICC、コンゴの武装勢力元幹部に賠償金支払い命令 各被害者に250ドル****
国際刑事裁判所(ICC)は24日、コンゴのイトゥリ地方の村を2003年に襲撃した武装勢力コンゴ愛国的抵抗戦線(FRPI)の元幹部ジェルマン・カタンガ被告に対し、被害者297人に「象徴的な意味合い」として1人につき250ドル(約2万8000円)を支払うよう命じる判決を言い渡した。
 
また同裁判所は個人および集団双方に対する、推計370万ドル(約4億1000万円)に上る物的、および精神面、身体面での被害の推定額のうち、カタンガ被告に100万ドル(約1億1000万円)の賠償責任を認めた。

だが一方で裁判長は、別の裁判のためコンゴの首都キンシャサで収監されているカタンガ被告が、金もなく「困窮」しており、家や財産がないとし、「象徴的な意味合いでカタンガ被告の犠牲者に支払われる250ドルは、犯罪全体を埋め合わせるものではないと認めた。
 
イトゥリ地方にある村ボゴロで2003年2月に起きた襲撃事件により、ICCはカタンガ被告に戦争犯罪および人道に対する罪で有罪判決を下し、2014年に禁錮12年の刑を言い渡していた。
 
カタンガ被告は、約200人が射殺、あるいは鉈(なた)で殺された襲撃事件で、配下の民兵に武器を供給したとされる。【3月24日 AFP】
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細かい話にはなりますが、武器提供による犯罪への「寄与」が有罪とされましたが、FRPI兵士による強姦、性奴隷制、子ども兵士の使用については、カタンガ被告に刑事責任があるとの合理的疑いを超えることは示されていない(つまり、犯罪の「実行」については無罪)と判断されています。

国際刑事裁判所(ICC)については、訴追対象が上記事例のようなアフリカばかりに偏っているとのアフリカ諸国からの批判があります。

また、前出リストにもある「神の抵抗軍」などは、国連主導で指導者の投降寸前まで行きながらも、ICCの訴追があることが障害となって実現しなかった・・・ということもあります。

そうしたことを別にしても、組織指導者・幹部個々人の責任もさることながら、背後で組織に資金・武器を提供してきた国家・政府高官の責任はどうなるのか・・・という問題もあります。

*****国際刑事裁判所:コンゴの反政府勢力指導者に有罪判決*****
・・・・1999年から2005年のイトゥリ紛争では、すべての地元武装勢力が、コンゴ国内や隣国ルワンダ、ウガンダの軍と政府高官から大量の支援を受けていた。

紛争は州内にある金などの鉱山資源の支配権をめぐるものだった。これら軍・政府高官はコンゴの武装勢力に対し、国際人道法違反を広範に行っていることが十分示唆されていたにもかかわらず、支援を行っていた。

地元民兵組織に外部から支援が行われているとの懸念は、コンゴ東部に関し頻繁に持ちあがる。最近では2012年から13年の北キヴ州で、ルワンダ軍高官が反政府武装勢力M23(3月23日運動)への援助を行った事例がある。

ICC検察官事務所は現在までにコンゴでの犯罪について6人に逮捕状を出している。うち4人はイトゥリ州の武装勢力司令官だ。(中略)

「ICC検察官事務所は、コンゴでの捜査と容疑者選択の質を上げる必要がある」と、マティオリ=ゼルトゥネル・ディレクターは述べた。「法による正義が確実になされるために、検察官は、地元民兵に武器と資金を提供したコンゴ、ルワンダ、ウガンダの高官に焦点を絞るべきだ。」(後略)【2014年3月7日 ヒューマン・ライツ・ウォッチ】
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【“居座る”だけでなく、不正に私腹を肥やすカビラ大統領
“地元民兵に武器と資金を提供したコンゴ、ルワンダ、ウガンダの高官”の責任という点では、このような事態を招いたコンゴのジョセフ・カビラ大統領の責任も問われるべきですが、任期切れを過ぎても“居座り”を続けていることは、従前ブログでも取り上げてきたところです。

“居座る”だけでなく、不正に私腹を肥やしているとも指摘されています。

****世界一高価で血に濡れたコンゴの「紛争パスポート****
<先進国よりはるかに高額のパスポート発行手数料の一部は、任期が切れても大統領の座に居座るカビラ大統領の懐を肥やすために使われている可能性がある>

パスポート発行手数料が185ドル(約2万円)――一人当たりの年平均所得が456ドルのコンゴ(旧 ザイール)では手が出ない金額だ。アメリカやイギリスでも100ドル前後のものが、なぜこんなに高いのか。もちろん、そこにはウラがある。

ロイター通信の調査によると、パスポート発行料の大半は、アラブ首長国連邦(UAE)など海外に拠点を構える会社に流れていた。コンゴのジョセフ・カビラ大統領が所有する会社とみられている。

2015年11月、コンゴ政府はベルギーのセムレックス社に生体認証技術を使った新しいパスポートを発注。新しいパスポートの発行手数料は、それまでの100ドルから185ドルに跳ね上がった。世界でも有数の、高価なパスポートだ。

ロイターによれば、185ドルのうちコンゴ政府に納められたのはわずか65ドル。残り120ドルのうち12ドルは首都キンシャサにあるパスポートの管理会社に、48ドルはセムレックスに、60ドルはマキー・マコロ・ワンゴイという人物が所有し、湾岸諸国に拠点を置くLRPSという会社に支払われる。

セムレックス、LRPS、カビラ大統領のいずれも、ロイターの調査に回答せず、セムレックスからは本誌の電話にも返事がない。

企業記録によると、ワンゴイはカビラの親族と共にいくつかの会社の株主になっている。このうち2社でワンゴイはマコロ・ワンガイ・カビラの名前を使っており、2016年12月のブルームバーグの調査で、カビラ大統領の姉妹と判明した。

このことが発覚すると、コンゴの主要野党は、4月7日にカビラが指名したブルーノ・チバラ首相に対し、パスポート代金の使途を明らかにするよう要求した。「チバラはまず身の潔白を証明すべき。話はそれからだ」と、野党連合の指導者、フェリックス・チセケディは言った。

権力の座に居座る大統領
カビラは2016年、憲法が規定する2期の在任制限を迎えたが、予定されていた総選挙の実施を拒否し、政権の座に居座った。以来コンゴでは反政府武装勢力と政府軍の間で衝突や犠牲が相次いでいる。

4月初めにも、コンゴ中部の中央カサイ州で集団墓地が見つかっている。国連幹部の話によると、集団墓地の数は全部で23に及ぶ。中央カサイ州とその周辺では昨年、カビラ大統領に反発する武装勢力が政府軍と衝突し、国連によると400人以上が死亡した。

カビラ政権は有権者登録名簿の更新が終わる2017年末までには選挙を実施するとしているが、準備に進捗がないことから再び与野党の緊張が高まっている。【4月24日 Newsweek】
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アメリカ・トランプ政権 コンゴPKO縮小要求
政府軍・武装組織による暴力・レイプ・殺戮は絶えず、大統領は不法に居座っている、選挙も実施されるか怪しい・・・というコンゴの状況ですが、「アメリカ第一」を掲げるトランプ政権はコンゴへの国連の関与を“縮小”するように求めています。

****コンゴPKO縮小=米が規模見直し要求―国連安保理****
国連安全保障理事会は31日、この日任期切れを迎えるコンゴ(旧ザイール)の国連平和維持活動(PKO)部隊について、規模を縮小した上で来年3月末まで活動期間を延長する決議を全会一致で採択した。兵力の定数は1万9815人から1万6215人に削減される。
 
ロイター通信によると、米国は1万5000人に縮小するよう求めていたが、妥協した。コンゴのPKO部隊として現地に展開している兵力は1万7000人を下回っており、実際の削減数は500人程度にとどまる。【4月1日 時事】
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国連PKOが有効に機能していないというのは各地で見られることではありますが、「PKOを縮小して、かわりにどうするのか?」という代替案なしに、単に縮小というのでは、混乱のもとに置かれた現地住民(そういう紛争地では、往々にして政府軍も暴力の原因となっています)は何を頼ればいいのでしょうか?
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ロシア  北朝鮮問題への関与を強め、その存在をアピール

2017-04-23 22:03:02 | ロシア

(ロシア極東主要都市ウラジオストクと北朝鮮北東部の羅先(ラソン)特別市の羅津港を月6回のペースで往復することになる万景峰(マンギョンボン)号【4月19日 日経】)

平静を強調する北朝鮮 日米合同訓練で圧力 中国は「米韓両軍が38度線を越えれば軍事介入」】
注目の北朝鮮情勢については、北朝鮮を訪問していた韓国系米国人の男性が北朝鮮当局に拘束されたといった話もありますが、金正恩朝鮮労働党委員長が空軍の養豚場を視察したり、核実験施設でのバレーボールの様子を見せたり、ピョンヤンからは綱引きに興じる様子が報じられたリ・・・と、あまり緊張を高めない方向の情報が発信されているように見えます。

****北朝鮮 キム委員長が養豚場視察 兵士の待遇改善アピール****
北朝鮮の国営メディアは、キム・ジョンウン(金正恩)朝鮮労働党委員長が空軍の養豚場を視察したと伝え、25日の朝鮮人民軍の創設記念日を前に、兵士の待遇改善に努めているとアピールしました。

一方、「周辺国でわれわれを威嚇する発言が飛び出している」とも伝え、北朝鮮への制裁を着実に履行する姿勢を示す、中国を暗に非難したものと受け止められています。(後略)【4月23日 NHK】
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また、“故金日成(キムイルソン)国家主席の生誕105周年を祝った15日、朝鮮労働党が平壌で大宴会を催していた。幹部が豪華料理に舌鼓を打ち、米朝間の高まる緊張を感じさせない雰囲気だった”【4月23日 朝日】とも。

こうした平静を強調するかのような姿勢は、全面戦争を避けたい思惑とも考えられますが、“21日のKBS(韓国放送公社)によると、北朝鮮が最近、豊渓里核実験場付近の住民を避難させる状況が観測されたという”【4月22日 中央日報日本語版】といった情報もありますので、25日の朝鮮人民軍の創設記念日に向けて6回目の核実験が行われる可能性も高い・・・とも。

一方のアメリカは、その航路がアメリカ国内外に波紋を広げた空母カール・ビンソンをユルユルと東シナ海に向けて航行させていますが、現在はまだフィリピン沖のようです。

その空母カール・ビンソンに日本の海上自衛隊護衛艦が合流して合同訓練をしながら朝鮮半島方面に向かうようです。

****米空母と護衛艦が合流 共同訓練始まる 東シナ海北上へ****
北朝鮮の軍の創設記念日を25日に控える中、朝鮮半島周辺に向け航行しているアメリカの空母と、海上自衛隊の護衛艦2隻がフィリピン沖の太平洋で合流し、23日から共同訓練を始めました。防衛省関係者によりますと、訓練は数日間の予定で、今後、東シナ海に入り、北上する方向で調整しているということです。(後略)【4月23日 NHK】
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北朝鮮を過度に刺激しないように配慮しつつも、無謀な行為に走らないように強い圧力をかける・・・といったところでしょうか。

中国は、北朝鮮への今年いっぱいの石炭輸出停止などで、金正恩委員長からは“誰かに踊らされて経済制裁に執着”と揶揄されつつも、アメリカ・トランプ大統領の“絶対的な信頼”を得ているようですが、アメリカの軍事行動は強く警戒しています。

****北朝鮮情勢】中国紙が対北軍事介入論 米韓が軍事侵攻なら 難民流入、親米政権樹立阻止を念頭か****
中国共産党機関紙、人民日報系の環球時報は22日付の社説で、「中国は武力によって朝鮮半島の現状を変えることには反対する」と強調、米韓両軍が北朝鮮に軍事進攻した場合は中国も軍事介入すべきだと主張した。
 
同紙は、核・ミサイル開発を継続する北朝鮮に対し、米国が関連施設を空爆するなど「外科手術式攻撃」を選択するような場合には、中国は「外交手段で抵抗すべきで軍事介入する必要はない」と指摘。
 
しかし「米韓両軍が38度線を越えて北朝鮮に侵攻」し北朝鮮の政権転覆を目指す場合は、「中国はすぐに必要な軍事介入を行うべきだ」と主張した。同紙の「軍事介入」が何を意味するかは不明だ。
 
中国では朝鮮半島有事の際、中朝国境に押し寄せる可能性が高い大量の難民対策のため、「国境付近に緩衝地帯を設けて難民の流入をコントロールすべきだ」(軍事評論家の馬鼎盛氏)との意見は多い。
 
また、韓国による朝鮮半島統一や、北朝鮮に親米政権が樹立されるような事態は、中国として避けたいのが本音でもある。最近、中国人民解放軍の元上級大佐が「中国軍部隊を北朝鮮に派遣し、駐留させるべきだ」と論文で主張し、反響を呼んだ。
 
環球時報は今月に入り、北朝鮮が核実験に踏み切れば「原油の輸出規制」を行うよう主張するなど、対北強硬論を唱えてきた。習近平政権内の一部の声を反映しているとの見方もある。【4月22日 産経】
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かつて北朝鮮建国を主導したロシア ここにきて関与を強める
こうした、北朝鮮をめぐるアメリカ、中国、日本などの動きのなかにあって、“忘れてもらっては困る”とばかりに最近関与を強めているのが、もうひとつの関係国ロシアです。

ソ連時代からのロシアと北朝鮮の関係については以下のように。

*****プーチン大統領が北朝鮮に接近~米中露の微妙で危険な駆け引き****
ソ連時代には北朝鮮とは密接な軍事協力をしてきた。そもそも朝鮮民主主義人民共和国、つまり北朝鮮の建国はソ連が主導したものだ。

第二次世界大戦の後に、ソ連は朝鮮半島の北半分を占領し、ソ連軍抗日パルチザンの金日成氏を送り込んで、北朝鮮を作り上げた。

朝鮮戦争では朝鮮半島の覇権をめぐってアメリカと戦った。

冷戦時代には、ソ連は北朝鮮と軍事同盟を結び、北朝鮮の兵器の多くはソ連時代の中古品であった。それをベースに北朝鮮の軍事兵器が出来ていると言っていい状態であった。

しかし冷戦の終わりは状況を一変させた。ソ連の後のロシア連邦と大韓民国、つまり韓国は1990年に国交を結び、それからはロシアは北朝鮮からほぼ手を引き、韓国との関係を重視するようになった。

ソ連崩壊後、軍事協力は事実上停止していた。2001年にロシアと北朝鮮は「防衛産業及び軍備分野における協力協定」と「2001年軍事協力協定」の二つの協定を結んだ。それもほぼ実質的なものにはならず、やっと最近になってこの軍事協力が具体化しつつある。

プーチン大統領と金正恩氏との関係は良いとは思えないが、プーチン大統領にとって北朝鮮は対アメリカ関係、対中国関係から重要性を増しつつある。

北朝鮮の核実験やミサイル発射で国連が経済制裁を加える決議をしても、抜け道を作り、北朝鮮を支えてきたのは中国だけでなく、ロシアもだ。国境を超えてロシア領に北朝鮮の労働者が送り込まれ、外貨を稼いできたと言われる。(後略)【4月20日 児玉克哉氏 Yahoo!ニュース】
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ロシア・プーチン政権の北朝鮮支援姿勢を示すのが、万景峰(マンギョンボン)号による北朝鮮との定期航路の新設です。アメリカ主導の北朝鮮制裁網に穴を開ける形にもなっています。

****ロシア、北朝鮮支援公然と 万景峰号で新航路*****
ロシアのプーチン政権が北朝鮮への支援姿勢を強めている。今月には日本への入港が禁止されている貨客船、万景峰(マンギョンボン)号による北朝鮮との定期航路の新設を決定。北朝鮮への制裁網の抜け穴づくりを辞さない方針を示した。米国との外交カードにする思惑も透ける。(中略)
 
朝鮮半島への影響力拡大を狙うプーチン政権は近年、ソ連時代からの友好国である北朝鮮との経済関係を重視してきた。羅先では羅津港の埠頭の長期使用権を獲得。電力などのエネルギー輸出や北朝鮮の鉱山開発の取り組みも進む。
 
ただ、同国の核問題を巡って米朝が緊迫する時期にあえて制裁網に穴を開ける形で経済協力を加速させるのは「米国にロシアの重要性を思い知らせる狙いがある」(欧州外交筋)との見方が多い。

プーチン大統領はシリア問題などでロシアに厳しい姿勢を見せるトランプ米大統領に反発を強める。トランプ氏は核問題の解決に向けた北朝鮮への強い圧力を中国に求めているが、ロシアの協力がなければ制裁網は弱まりかねない。【4月19日 日経】
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国連安保理においても、アメリカ主導の報道機関向け北朝鮮非難声明に関し、ロシアがこれを阻止するという展開も見られました。

****北朝鮮非難声明、ロシアが阻止=核実験停止要求、中国は同意―国連安保理****
国連安全保障理事会は19日、北朝鮮による16日(現地時間)の弾道ミサイル発射を安保理決議への「違反」として強く非難し、さらなる核実験を実施しないよう求める米主導の報道機関向け声明について調整したが、ロシアが発表を阻止した。安保理外交筋が明らかにした。
 
報道機関向け声明の発表には理事国全15カ国の同意が必要で、過去にも中国やロシアの反対で発表が見送られた例がある。今回の声明案は核実験停止を求める文言を新たに追加。中国は内容を容認していた。AFP通信によると、ロシアは対話による解決の必要性を盛り込むことを求めていた。
 
トランプ米政権の発足以降、安保理は北朝鮮によるミサイル発射を非難する報道機関向け声明を4回発表しているが、阻止されたのは今回が初めて。シリア・イドリブ県での化学兵器使用疑惑や米国のシリア攻撃による米ロ関係悪化がロシアの動きに影響を与えた可能性もある。(後略)【4月20日 時事】 
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ロシアの反対は、「対話による解決」という従来の表現がないことが理由でしたが、アメリカがロシア主張どおり修正する形で決着しています。

*****北朝鮮非難声明、安保理が一転発表 ロシア反発に米譲歩****
国連安全保障理事会は20日、北朝鮮による16日のミサイル発射を「強く非難」する報道声明を発表した。
 
声明を作成した米国は19日に「ロシアの反対で発表できなくなった」と説明したが、これにロシアが反発。ロシアのイリチェフ国連大使代理は20日、「米国は我々が阻止したと言ったが、阻止していないと伝えた」と記者団に打ち明けた。

米国は一転、ロシアが求めていた「対話を通じた」北朝鮮問題の解決という表現を盛り込み合意した。
 
報道声明は北朝鮮に「即時に」挑発行為を停止するよう要求し、核実験を「これ以上しないよう求める」と明記、従来より表現を強めた。

米国は北朝鮮の友好国である中国と調整し、早期の発表を目指していた。だがロシアが「対話による解決」という従来の表現がないことを理由に反対。19日に米英はロシア1カ国の反対で発表できないと記者団に説明していた。【4月21日 日経】
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この問題に関しては、ロシアの反対・阻止云々もさることながら、アメリカが「対話による解決」という文言を落とした理由、更に、それを一転して従来同様に戻したことも気になります。

国際的な声明は、その一言一句に至るまで注意が払わわれるものでしょうが、あえて「対話による解決」という文言を落としたということは、素人考え的には「軍事的解決」の可能性を強くアピールしたということになります。
ただ、それをすぐに引っ込めたというのは・・・・。

国連を軽視しているトランプ大統領としては、声明の文言などどうでもいい、どうせやるときは国連の意向にかかわらず、アメリカ独自の判断でやるのだから・・・といった話でしょうか。

あるいは、「軍事的解決」の可能性を出したり引っ込めたりして北朝鮮をけん制するという方針でしょうか?

ロシアの方は、化学兵器使用疑惑でのシリア爆撃で、アメリカ・トランプ大統領に強く警告された形にもなっています。
北朝鮮問題への関与強化は、「このまま黙っていると、この先ずっとアメリカの風下に立つことになってしまう」・・・という懸念でしょうか。

なんだか、ヤクザの抗争のようでもありますが、軍事力をちらつかせる「大国」と、「怖がられてなんぼ」のヤクザは似た者同士でもあります。

日本は今月下旬にロシアで行われる日ロ首脳会談で、ロシアに対し、北朝鮮問題での“責任ある建設的な対応”を求めていく方針とか。【4月23日 NHKより】

特異な政治家が揃った“かなり危険な状況”】
****プーチン大統領が北朝鮮に接近~米中露の微妙で危険な駆け引き*****
トランプ大統領は、中国に圧力をかけながら、中国ができないならアメリカが軍事力を使ってでも問題を解決すると公言している。

4月13日のトランプ大統領のツイッターだ。「I have great confidence that China will properly deal with North Korea. If they are unable to do so, the U.S., with its allies, will! U.S.A.」(中国が北朝鮮を適切に管理できると信じている。しかしもし中国ができなければ、同盟国とともにアメリカがやる。)

中国を持ち上げているようにみえるが、中国にチャンスを与え、できなければ堂々とアメリカが武力行使をするという脅しだ。アメリカが武力行使をしても中国は文句をいうな、という牽制といえる。

ちなみに同盟国とともに、とあるが、これはまず第一に日本のことだろう。日本は大変な役割を期待されているのだ。

ロシア・プーチン大統領はこうしたアメリカのやり方に真っ向から反対する可能性が高い。状況がさらに緊迫すれば、ロシアは、経済援助だけでなく、軍事援助にも踏み切るかも知れない。

急に朝鮮半島がきな臭くなった。トランプ大統領、プーチン大統領、金正恩最高指導者という特異な政治家が揃った。いざという時、習近平国家主席はトランプ側につくのか、プーチン側につくのか。

泥沼に入って欲しくないが、着地点が見えない。妥協を容易にしないトップが集まった。かなり危険な状況で、注視が必要だ。【前出4月20日 児玉克哉氏 Yahoo!ニュース】
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ロシアに関しては、こうした存在感をアピールする外交政策よりは、去る3月26日にモスクワはじめロシア国内の主要都市で繰り広げられた「反汚職デモ」と、その背景といった国内情勢の方が興味深いものがありますが、長くなるのでまた別機会に。
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インドネシア  宗教攻撃の標的となった華人・キリスト教徒のジャカルタ特別州知事、再選ならず

2017-04-22 23:15:59 | 東南アジア

(敗戦の弁を述べるアホック氏【4月20日 じゃかるた新聞】)

シャリア適用のアチェ州での“公開むち打ち刑”】
これまでもときおり取り上げてきたように、インドネシア・スマトラ島北部に位置するアチェ州は、比較的寛容と言われてきたインドネシアのイスラム教のなかにあっては、厳格なイスラムの教えが重視される地域です。

そのアチェ州は、長年の独立運動の鎮静化を目指すインドネシア政府との2001年の合意によって一定の自治権を認められ、シャリア(イスラム法)を導入しています。

そのシャリア、イスラムの教えに反した男女交際の当事者が、刑罰として“公開むち打ち刑”にされるというニュースをしばしば目にします。

日本や欧米的価値観からすると、その罪状も、また“公開むち打ち刑”ということも、違和感を感じるところが多々あり、ニュースにも取り上げられるのでしょう。

最近は特に頻繁に目にしますが、頻度が増えているのでしょうか?単なる偶然でしょうか?

“女性に近接し公開むち打ち刑、執行中に男性卒倒 インドネシア”【2月27日 AFP】
“イスラム法のむち打ち刑、初めて仏教徒に執行 インドネシア”【3月11日 AFP】
“インドネシアでむち打ち刑、配偶者以外と至近距離で時を過ごした罪で”【3月20日 AFP】

上記の“初めて仏教徒に執行”とか、下記記事の“同性愛行為をむち打ち刑の対象にする”“宗教を問わず外国人にも適用される”といったことからすると、シャリア適用の厳格化・範囲拡大が進行しているように見えます。

****同性愛にむち打ち条例 インドネシア・アチェ州 ****
インドネシア・スマトラ島のアチェ州議会は27日、イスラム法(シャリア)に基づいて、同性愛行為をむち打ち刑の対象にする条例を全会一致で可決した。同州内では、宗教を問わず外国人にも適用されるという。
 
アチェ州はインドネシアの中で最も早くイスラム教が普及したとされ、同国で唯一、シャリアの施行が認められている。一部地域では、女性がバイクの後部座席にまたがって乗ることは「シャリアに反する」と禁止する規則が導入されるなど、厳格化の兆しが出ている。
 
条例によると、同性愛行為が確認されれば公開の場で最高100回のむち打ちが科される可能性がある。むち打ちの代わりに、純金を納付する刑や禁錮刑が科されることもあり得るという。【2014年9月28日 日経】
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ただし、“以前はむち打ち刑の対象になるのはイスラム教徒の住人だけだったが、2015年にアチェ州法が見直され、シャリアに違反した非イスラム教徒は、国の法制度とシャリアのどちらの下で裁かれるかを選べるようになった。”【3月11日 AFP】ということで、非イスラム教徒にシャリアが強制されるという訳ではないようです。

“むち打ち刑”というのはどのくらいの痛さなのか?・・・といった、素朴な疑問を感じるところですが、“受刑後に治療が必要になるほど強くは打たない”ということで、肉体的苦痛よりも、公衆の面前で執行される精神的苦痛が重視されているようです。

****婚前のキスは「反イスラム」 大学生ら8人公開むち打ち****
インドネシア北西部バンダアチェで18日、イスラムの教えに反する男女交際をしたとして宗教裁判で有罪になった男女4人ずつが公開むち打ち刑に処され、市民約200人が見物に集まった。人格を無視した処罰には批判も出ている。
 
同国は人口の9割がイスラム教徒で大半は穏健派。だが、バンダアチェのあるアチェ州は同国で唯一、イスラム法に基づく刑罰が条例で2014年に定められ、宗教警察が結婚前の男女交際や女性の服装、同性愛を取り締まっている。
 
公開むち打ち刑について宗教警察関係者は「受刑後に治療が必要になるほど強くは打たない。恥ずかしいことをしたと認識させるのが狙い」と説明する。
 
この日の受刑者は19〜28歳の大学生ら。キスや性交渉をしているところを逮捕されたとされる。モスクの壇上で1人ずつ、押収した下着などの証拠品が示され、細長い竹のむちを各自20〜28回、背中に受けた。
 
受刑者の無職男性(21)は終了後、「相手女性とは元々結婚を決めていた。むちの痛みより、心の苦しみの方が大きい」と話した。【4月18日 朝日】
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宗教冒瀆罪に問われた華人ジャカルタ知事
アチェ州に限らず、インドネシア全体でみたとき、宗教間・宗派間の多様性を認めない“宗教的不寛容”が強まっているという話は、2016年11月13日ブログ“インドネシア 華人ジャカルタ知事の発言にイスラム強硬派が大規模抗議デモ 宗教的価値観の差”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20161113でも取り上げました。

そのときも取り上げたように、宗教的不寛容拡大の端的に示す事例が、少数派の中華系キリスト教徒でもあるジャカルタ特別州知事バスキ・チャハヤ・プルナマ氏(通称アホック)が再選を目指す選挙運動中の発言がイスラムを侮辱したとして訴えられた事件です。

イスラム保守派による大規模な抗議デモも行われ、ジョコ大統領が収拾に動く一幕もありました。

アチェ州とは異なり、首都ジャカルタはこれまで宗教的には多様性が認められる寛容な地域とされてきました。

事件は、昨年9月、アホック氏が集会で「ユダヤ教徒とキリスト教徒を仲間としてはならない」とするイスラム教の聖典「コーラン」の一節(第5章第51節)に触れて、「コーランの一節に惑わされているから、あなたたちは私に投票できない」と述べた。これが「コーラン、イスラム教徒を侮辱した」としてイスラム保守派の強い批判と反発を招き、宗教冒瀆罪で訴追されたものです。

この問題は、単に宗教的な問題ではなく、アホック氏がジョコ大統領の盟友であることもあって、ジャカルタ特別州知事選挙の動向、更にはジョコ政権への揺さぶりを意識した政治的動きでもあることは、これまでも取り上げてきました。

宗教攻撃の標的となり、決選投票で敗北
そうした宗教的問題、政治的側面の両面から注目されていた知事選挙ですが、アホック氏は第1回投票では首位にたったものの過半数は得られず、決選投票では敗退する結果となりました。やはり、イスラム侮辱問題が大きく響いたようです。

****イスラム「侮辱」のジャカルタ知事、敗北 大統領の盟友****
インドネシアのジャカルタ特別州知事選の決選投票が19日あり、新顔で元教育文化相のアニス・バスウェダン氏(47)が各種調査の集計で当選確実となった。現職のバスキ・チャハヤ・プルナマ氏(50)を盟友とするジョコ大統領の政権運営にも影響が出る可能性が出てきた。
 
少数派の中華系キリスト教徒のバスキ氏は昨年9月にイスラム教を冒瀆(ぼうとく)する発言をしたとして公判中。国民の9割を占めるイスラム教徒の支持を失った形だ。選挙戦を通じてイスラム保守強硬派が発言力を強め、「穏健イスラム」という同国の評判も揺らいでいる。
 
選管の公式発表は5月上旬の見通し。一方で、信頼度が高いとされる複数の民間調査機関によるサンプル集計結果によると、得票率はイスラム教徒のアニス氏が55〜58%、バスキ氏は41〜45%で大差がつき、バスキ氏は記者会見を開いて敗北宣言した。知事選は3人が立候補。2月の1回目投票で過半数の得票者がおらず、上位のバスキ、アニス両氏による決選投票となった。新知事の任期は10月から5年間。
 
敗れたバスキ氏は、前知事だったジョコ氏が2014年10月に大統領に就任したことに伴い、副知事から選挙を経ずに昇格。街路の美化や汚職撲滅などに取り組んで支持は高かったが、イスラム教を侮辱したとも取れる内容の昨年9月の発言が「致命傷」となった。
 
イスラム強硬派は、数十万人規模の抗議集会を相次いで首都中心部で開催。バスキ氏は強硬派団体に宗教冒瀆罪で刑事告発された。選挙戦でも、非イスラム教徒を指導者に選ばないよう訴える声が反バスキ派から高まった。
 
アニス氏の当選はジョコ氏にとっても打撃だ。アニス氏を推したのは、14年の大統領選で接戦の末に敗れた、野党指導者プラボウォ氏。19年の次期大統領選をにらんで、アニス氏が中央政府に反発する動きを見せる可能性もある。

ジョコ氏は19日、「誰が勝っても、結果は受け入れねばならない」と述べた。【4月19日 朝日】
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宗教に選挙・政治が絡むことで、イスラム急進派の宗教攻撃が先鋭化したようです。

****ジャカルタ知事選 宗教か多様性か****
■イスラム急進派の宗教攻撃
現職知事として住宅不足問題、交通渋滞解消、洪水問題などで実績を残してきたアホック知事だが、選挙期間中の不用意な発言が「イスラム教徒を冒涜している」とイスラム急進派が噛みついたことで、圧倒的な優勢が一転した。

イスラム急進派によるインドネシアのそしてジャカルタ特別州の圧倒的多数を占めるイスラム教徒の宗教的琴線に訴える戦略が次第にアニス候補への支持を拡大する事態となった。

「宗教冒涜罪」容疑で裁判の被告となったアホック知事に対し、伝統的なイスラム教徒の衣装で政治活動が禁じられているイスラム教寺院「モスク」を中心に運動を展開したアニス候補。

インドネシアでも最も成熟し、民主主義を理解しているとされるジャカルタっ子も「イスラム教の教えでは非イスラムの指導者には従えない」「非イスラム支持者への攻撃は強要される」「アホック支持者の女性への暴行は許される」などという扇情的、独善的な急進派によると思われる言説が駆け巡り、自らの宗教意識を再認識した有権者がアニス候補に票を投じたといわれている。

事実、アホック知事支持を表明したイスラム教徒の葬儀が地域のモスクに拒否されるという憂慮すべき事態も発生した。

こうした事態を重視したジョコ・ウィドド大統領、ユスフ・カラ副大統領、そして首都の治安を守る治安組織のトップなどが相次いで「宗教を選挙の争点にするべきではない」「候補者の宗教、人種、出身地は選挙とは無関係」などと宗教の選挙争点化の火消しに躍起とならざるをえない事態を招いた。(後略)【4月21日 大塚智彦氏 Japna In-depth】
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裁判の方でも、アホック氏は“禁錮1年(執行猶予2年)”を求刑されています。

****イスラム教「侮辱」のジャカルタ知事に求刑1年****
イスラム教を侮辱した宗教冒涜罪で在宅起訴されたジャカルタ特別州のバスキ知事に対する論告求刑公判が20日、ジャカルタの裁判所であり、検察側は禁錮1年(執行猶予2年)を求刑した。
 
ロイター通信によると、バスキ氏への大規模抗議デモを行ってきたイスラム強硬派数百人は裁判所前で「求刑は十分でない」と批判した。バスキ氏は19日に投開票された知事選で敗北し、10月に知事を退任する。【4月20日 産経】
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選挙戦での傷を癒す両候補、ジョコ大統領
アホック、アニス両候補とも選挙後は、選挙戦を通じた宗教的緊張の高まり、社会の分断を収拾する方向での発言を行っています。

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大勢判明後に会見したアニス候補は「選挙期間は終わった、アホック候補とはお互いの違いを強調するのではなく、全州民とともに団結する時が来た」と両候補支持派の協力と和解を訴えた。

一方のアホック知事も「アニス候補当選おめでとう、選挙のことは忘れて同じジャカルタ州の住民として協力しよう。これも神の思し召しによる選択。私は残る半年の任期、課題に取り組みたい」と述べた。

両候補が同じように会見で「選挙期間から脱却して団結、協力を」と訴えた背景には、今回の選挙で示された両陣営の溝の深さ、選挙戦での傷を癒すことの重要性への認識、憂慮があった。【前出4月21日 大塚智彦氏 Japna In-depth】
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ジョコ大統領も同趣旨の発言で、国民統合を求めています。

****インドネシア大統領、国民の統合呼び掛け ジャカルタ決選投票で****
インドネシアのジャカルタ特別州で19日、知事選の決選投票が行われた。キリスト教徒の現職とイスラム教徒の候補の決選投票となり、宗教的な緊張が高まる中、インドネシアのジョコ大統領は国民の統合を呼び掛けた。

決選投票を巡っては、ジャカルタ・ポスト紙が今週、同国史上で「最も汚く、最も分極化して対立した」と表現したが、警察によると、19日午前、投票はスムーズに行われた。

ジョコ氏は、ジャカルタ中心部の投票所で投票した後に声明を発表。「政治的な違いは、私たちの統合を壊すべきではない。誰が選ばれようと、受け入れなければならない」と述べた。(後略)【4月19日 ロイター】
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政治的には大統領選の代理戦
政治的には、ジョコ大統領の与党が大統領の盟友アホック氏を支持。一方、2014年の大統領選でジョコ氏に敗れ、次回の大統領選に出馬する可能性もある元軍高官のプラボウォ・スビアント氏はアニス氏を支持しました。

****大統領選の代理戦争の様相****
19日夕方に記者会見したアニス候補の横にはグリンドラ党のプラボウォ党首の姿があり、アニス候補より雄弁に勝利宣言を行った。会場に詰めかけた支援者からは「いよー、プラボウォ次期大統領」との声がかかる一幕も。

プラボウォ党首は1998年に崩壊するまで実に32年間、独裁政権を維持したスハルト元大統領の元女婿で国軍出身のビジネスマン。現職のジョコ・ウィドド大統領とは前回の大統領選を争ったライバルでもある。

アホック知事はジョコ大統領が所属する与党「闘争民主党(PDIP)」の支持を受けており、今回の知事選は前回2014年の大統領選と同じ対立構図であり、さらに2019年の次回大統領選の前哨戦と早くから位置付けられていた。

プラボウォ党首は早い時期から次期大統領選への出馬を匂わせており、今回自らが支援したアニス候補が首都での知事選で勝利をおさめたことを追い風にして大統領選に向けた今後本格的な根回し、運動を展開することが予想される。

一方のジョコ大統領陣営は、PDIPの党首でもあるメガワティ前大統領を中心にジョコ大統領に今回涙を飲んだアホック知事を副大統領候補としてペアを組ませる道を模索することも十分考えられるという。

インドネシアでは過去に女性大統領は誕生しているが、非イスラム教徒の大統領はまだ就任したことがない。
アホック知事は非イスラム、中国系インドネシア人の「代表格」で、地方首長から国レベルの指導者を目指すことでインドネシアが掲げる「多様性の中の統一」「寛容と団結」のシンボルとして今後も台風の目であり続けるだろう。【前出4月21日 大塚智彦氏 Japna In-depth】
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“イスラム侮辱”の批判を浴びているアホック氏を副大統領候補とすることは、政治的には非常に大きなリスクを伴うように思えます。盟友であるジョコ大統領はともかく、メガワティ前大統領など党指導部が敢えてそんな危険なことをするでしょうか?

実現すれば“「多様性の中の統一」「寛容と団結」のシンボル”ともなりますが、どうでしょうか・・・?
実現して、高まる“宗教的不寛容”の歯止めとなることを期待しますが。
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フランス  23日の大統領選挙直前のテロ事件 ルペン候補のソフト化路線は信用できるのか?

2017-04-21 20:21:19 | 欧州情勢


(接戦の上位を走る中道系独立候補のマクロン前経済相(上)と極右政党・国民戦線(FN)のルペン党首(下)
【4月21日 ロイター】)

【“異例の展開”で“異例の接戦”】
極右・ルペン候補の高い支持率もあって、今後の欧州・EU、ひいては世界情勢に大きく影響するフランス大統領選挙(あさって23日)が、二大政党候補がいずれも低迷する“異例の展開”、最終盤にきても主要候補が激しくせりあう“異例の接戦”になっていることは、連日の報道のとおりです。

****4候補、異例の接戦=23日第1回投票―仏大統領選****
フランス大統領選の第1回投票が23日、実施される。中道系独立候補のマクロン前経済相(39)と極右政党・国民戦線(FN)のルペン党首(48)がややリードし、右派野党・共和党のフィヨン元首相(63)と急進左派・左翼党のメランション元共同党首(65)が僅差で追う展開。主要4候補が最終盤まで「異例の接戦」(仏メディア)を続けている。
 
大統領選には計11候補が出馬した。まだ投票先を決めていない有権者は4分の1程度に上るとされ、結果は予断を許さない。第1回投票ではいずれの候補も過半の票を得られない見込みで、上位2人による決選投票が5月7日に実施される公算が大きい。
 
仏BFMテレビが主要6社の世論調査を独自に総合した結果によると、20日時点でマクロン氏が25%の支持を得て首位に立ち、ルペン氏が22%、フィヨン、メランション両氏がいずれも19%となった。別の調査では各候補の差がさらに狭まっているケースもある。【4月21日 時事】 
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独走していたマリーヌ・ルペン氏を、左右の混乱・不振を背景に中道支持を集める形でマクロン前経済相が追い上げ、しばらくはこの“2強”状態でしたが、終盤にきて両者ともやや失速、右派のフィヨン元首相、急進左派のメランション氏がその差をつめる展開となっています。

ただ、あと2,3日を残すだけという段階で、上記のような支持率ということは、ルペン、マクロン両候補がなんとか逃げ切るのでは・・・とも思われますが、選挙はふたを開けてみないと・・・という話もあります。

市場が懸念する“悪魔のシナリオ”「ボルケーノ(火山)リスク」】
極右ルペン候補が決選投票に進むであろうことは、以前から想定されていましたが、だれが決選投票で相手になるのか・・・が注目されてきました。

父親時代の文字通りの反ユダヤ極右から脱皮したソフトなイメージとともに、反移民・反EUの姿勢をアピールすることで高い支持率を得ているルペン候補ではありますが、やはり排他的“極右”イメージはぬぐい切れず、またEUやユーロからの離脱への不安もありますので、決選投票での勝利は難しい・・・というのが、従前からの一般的見方です。

ただ、そうは言っても、ひょっとするとトランプ現象のようなことがフランスでも起こるかも・・・という懸念(あるいは期待)も、ここ数か月囁かれているところです。

現段階で一番確率が高いのは、“ルペン対マクロン”の決選投票でマクロン氏が圧勝して、39歳の若い大統領誕生・・・というシナリオで、二大政党の基盤をもたないマクロン氏への不安はありますが、そういう結果になれば、ドイツなどの欧州諸国や市場関係者は、「まあこれなら・・・」と安堵するでしょう。

逆に、ドイツや市場関係者が恐れるのは、接戦状態の第1回投票の結果、決選投票でルペン氏とメランション氏が相対するという「悪夢」のシナリオで、市場には「ボルケーノ(火山)リスク」が広がっているとも言われています。

最上位層の所得税率を90%に引き上げることを掲げ、EU離脱にも前向きな考えを示す急進左派メランション氏ですが、市場関係者やエコノミストの間では、「EUやユーロ圏離脱はメランション氏にとって『プランB』だが、ルペン氏には事実上『プランA』だ」とし、やはりルペン氏のリスクが依然最も高いとも見られているようです。【4月21日 ロイター“仏大統領選、市場は極左候補より「ルペンリスク」警戒”より】

もっとも、極右ルペン対極左メランションの決選投票となると、保守層はむしろルペン氏へ親近感を感じるのでは・・・とも思え、“ルペン大統領”誕生の可能性も高まります。

気が気ではないドイツも異例の干渉
本来は他国の選挙へは干渉しないのがルールですが、ひとり矢面に立ち形でEUを牽引してきたドイツは、フランスの選挙動向が気が気ではないようです。

****仏大統領選】「ポピュリスト阻止を」 独で“介入”相次ぐ****
フランス大統領選第1回投票が23日に迫り、ドイツでは極右政党、国民戦線(FN)のルペン党首ら、反欧州連合(EU)を掲げる大衆迎合主義(ポピュリズム)的な候補の当選阻止を訴える要人の発言が目立ってきた。

大統領選は欧州の将来を左右するだけに、上位4候補の混戦が深まる中、募る危機感が異例の“介入”に走らせている。
 
シュタインマイヤー独大統領は14日、仏独メディアで「偉大なフランスの将来を約束する誘惑に耳を貸すな」と仏国民に訴え、「国家主義的ポピュリスト」の勝利に懸念を表明した。念頭にあるのはルペン氏だ。
 
ショイブレ独財務相はさらに険しい。12日のイベントでは急進左派系候補のメランション氏の支持率急上昇を受け、同氏とルペン氏による決選投票となれば、「フランス共和国の理性はなくなる」と言い切った。(中略)

ショイブレ氏は「私ならマクロン氏に投じる」とも踏み込んだ。身内の架空雇用疑惑を抱えるフィヨン氏が民主主義の根幹であるメディアや司法を批判する姿勢に疑問を持つためだ。メルケル首相の態度は不明だが、フィヨン氏だけでなく3月にはマクロン氏とも会談し、地ならしを始めた。
 
独側としてはこれまで相対的に影響力が突出し、批判の矢面になってきたとの思いも強く、仏側が改革などで国力を回復し、再びEU推進の両輪となることを望む。

ただ、政治経験が日浅いマクロン氏にも「フランスの国内問題を解決できるのか確証が持てない」(独専門家)と不安は根強い。【4月18日 産経】
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討論番組の生放送中のテロ 影響は?】
そうした選挙戦最終盤にきて発生したパリ・シャンゼリゼでの発砲テロは、大統領選の全11候補が順にインタビューに応じる討論番組の生放送中に発生、各候補の治安対策に改めて注目が集まっており、今後の選挙戦への影響も指摘されています。

****<パリ警官銃撃>仏大統領選にも波紋 2陣営、運動中止****
パリで20日に起きた警察官の射殺事件は、目前に迫るフランス大統領選に備えて敷かれた厳戒態勢下で起きた。事件を受け、21日の選挙運動の中止を決めた候補者もおり、大統領選に影響を与えている。
 
大統領選は23日に第1回投票が行われる。事件を受けて、大統領選に出馬する極右政党・国民戦線のルペン党首と中道・右派候補の共和党のフィヨン元首相は21日に予定していた選挙運動を中止すると発表した。
 
各候補者が掲げる治安対策などに注目が集まり、投票行動に影響する可能性もある。(後略)【4月21日 毎日】
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“各候補はこれまでも、警官の増員や情報当局の再編・強化といった対策を掲げていた。だが首都パリでも随一の繁華街で起きた事件が、より強い対策、より強い大統領を求める動きにつながる可能性がある。”【4月21日 朝日】

テロ発生で一番支持率が高まるのは、反移民を主張してきたルペン候補でしょう。(その主張が正しいというわけではありませんが、テロへの不安感を高める国民感情にアピールしやすい面があります)

****ルペン氏が最後の大規模集会、他候補を強く非難 仏大統領選****
大統領選挙の第1回投票を週末に控えたフランスで19日、極右政党「国民戦線(FN)」のマリーヌ・ルペン党首が選挙戦最後の大規模な集会を行い、イスラム過激思想に影響されたテロから目を背けているなどとして他候補を強く非難した。
 
集会は、前日に襲撃を計画した疑いで男2人が逮捕されたマルセイユで開かれた。支持者およそ5000人を前に演説したルペン氏は、「選挙活動開始以降、一貫してイスラム過激思想に触発された恐ろしいテロリズムを非難してきた」と訴え、「対立候補は誰もこの話題を論じようとしない」と批判した。
 
ルペン氏は、他候補らが「この問題についてだんまりを決め込み、もみ消し、ごみを掃いてカーペットの下に隠すかのように遠ざけようとした」と指摘。

さらに、「他候補らが沈黙するのは恥を感じているからだ。脅威を減らすための措置を講じず、このような災いを悪化させる状況すら生み出した政府の一員もしくは指導者だったことの恥だ」と非難した。(後略)【4月20日 AFP】
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ただ、事件が比較的小規模に終わったことで、選挙情勢をひっくり返すようなところまでは至らないのでは・・・とも思われます。

ルペン候補の「父も切り捨てた」ソフト化路線 しかし、党指導部には依然として・・・・
ルペン氏はEU資金の不正流用疑惑の渦中にあって、欧州議員としての免責特権停止を巡る聴聞会が大統領選決選投票の直前に実施される可能性があるとも言われています。

ただ、やはり資金スキャンダルで大きく勢いをそがれたフィヨン前元首相などと違って、アメリカのトランプ大統領同様に、この種のスキャンダルでが支持者にほとんど影響しないという特徴があります。

マリーヌ・ルペン氏がは12011年、父の後継者として2代目党首となって以降、「脱・悪魔化」と呼ばれるイメージ戦略で、“父親をも切り捨てる”形で「異端」政党から大衆政党への脱皮を図るソフト化路線をとってきました。
現在の彼女の高支持率は、そうした路線の成功の証です。

“モヒカン頭でこわもてのネオナチを集会から締め出し、側近に元高級官僚を起用。地方選で候補の半数を女性にした。ユダヤ人団体に「私たちを恐れないで」と訴え、父親を党指導部から追放した。「われわれは右でも左でもない」と訴え、保革二大政党制を打ち破る新勢力だとアピールした。”【4月20日 産経 “国民戦線党首マリーヌ・ルペン 大衆政党へ「父も切り捨てた」”】

しかし、その“体質”というか、彼女を支える党指導部には旧来の“極右”的傾向が残っているとも指摘されています。

****極右ルペンの脱悪魔化は本物か****
<ファシズムとの決別を訴えて支持を拡大してきたルペンの国民戦線だが、党指導部には今も危険な面々が巣くう>

フランスの極右政党・国民戦線の党首で、大統領選候補のマリーヌ・ルペン(48)党首と、同党創設者である父親のジャンマリ。2人は今や言葉も交わさない険悪な仲のはずだった。

だが今年1月、非公開で行われた脱税疑惑をめぐる調停の場に、父娘は一緒に現れた。税務当局は、パリ西郊の高級住宅地モントルトゥーなどに一家が所有する不動産について、資産評価額を過少申告したと主張。これが事実なら、ルペンは巨額の税金の支払いを迫られ、金銭スキャンダルに見舞われるだけでなく、懲役刑を科されることにもなりかねない。

危機に陥ったルペンを擁護したのは、ほかでもないジャンマリだ。2人はモントルトゥーの地所と邸宅を共同で所有。ジャンマリは自身と娘の側の証人として、資産価値は当局の主張よりはるかに低いと述べた。その日、父娘は「礼儀正しく抱擁し合った」という。

国民戦線についてルペンが口にする主張と、激しく食い違う出来事だ。11年に自身が父親から党首の座を引き継いだのを機に、国民戦線は「脱悪魔化」を始めたと、ルペンは好んで語る。世代交代によって、反ユダヤ主義的で親ファシストの政党から生まれ変わった、と。

ところが4月上旬、そのルペンが問題発言をした。第二次大戦中、ナチス占領下のフランスで起きた仏警察によるユダヤ人一斉検挙事件について、「フランスに責任はない」と語ったのだ。つまり、国民戦線は何も変わっていないのではないか?

国民戦線は72年に、ジャンマリと極右ナショナリスト組織「新秩序」のメンバーによって結成された。支持者となったのは旧体制を懐かしむ人々やカトリック原理主義者、白人労働者層やスキンヘッドの人々だ。90年代に入る頃には、極左の反ユダヤ主義者も支持層に加わった。

ジャンマリはホロコースト(ユダヤ人大虐殺)を否定する発言を繰り返し、人種差別的主張を激化させていったが、当時の支持者にとってはそれも許容範囲内だった。その一方でルペンは側近として、父親の扇動的な言動が支持層の拡大を妨げるさまを目の当たりにしていた。

顧問はヒトラーに心酔
ジャンマリは02年の大統領選第1回投票で予想外の2位につけ、フランス社会に衝撃を与えた。だが決選投票では、得票率82%のジャック・シラクに大差で敗れてしまう。

父親の失敗に学んだルペンは党首就任以来、反ユダヤ主義やネオナチとの決別路線を歩んできた。ユダヤ人差別的な発言をした党関係者を解雇してみせることもあり、15年には問題発言を繰り返した父親の党員資格を停止する大胆な行動に出た。

父親時代の自由市場寄りで小さな政府志向の政策も、10年ほど前からは保護主義的かつポピュリスト的な「経済ナショナリズム」路線に転換させている。イスラム教徒や移民に対しては強硬だが、反ユダヤ的発言はこれまで口にしたことがなく、同性愛者を嫌悪したジャンマリに倣うこともなかった。

こうした努力は実を結んでいるようだ。大統領選では、中道派無所属のエマニュエル・マクロン前経済相と支持率首位を争い、決選投票へ勝ち進むのはほぼ確実とみられている。

しかし4月23日に大統領選第1回投票が迫るなか、国民戦線のもう1つの顔が浮かび上がってきた。党指導部には、ヒトラー崇拝者や極右ナショナリストがひしめき、ルペンが大統領に選ばれた暁には政権幹部となるはずの側近にもそうした面々がいるという。

「ルペンに投票するつもりの有権者は、彼女が『自由の身』でないことを知るべきだ」と語るのは国民戦線の元幹部エメリック・ショプラード。彼は、ジャーナリストのマリーヌ・テュルシとマティアス・デスタルがルペンと国民戦線の内幕を調査した著書『マリーヌは何もかも承知だ』の取材にも応じている。

3月に刊行された同書や最近のメディア報道が注視しているのは、ルペンの古参の顧問フレデリック・シャティヨンだ。

週刊紙カナール・アンシェネの記事によれば、ルペンの大学時代からの友人であるシャティヨンはヒトラーに心酔。アルジェリア戦争記念式典でナチス式の敬礼をしたとして情報当局に目を付けられたことがあり、ヒトラーの誕生日を祝う仮装パーティーも主催している。

シリアのバシャル・アサド大統領周辺と商取引をしていることでも知られる。昨年流出したパナマ文書では、総額31万8000ドル以上のマネーロンダリング(資金洗浄)疑惑に関連する人物として名前が挙がった。

シャティヨンは12年の選挙の際、国民戦線のために不正な資金集めをした容疑で訴追され、党の活動に携わることを禁じられている。だが3月に報じられたところによれば、今もルペンの選挙対策チームの一員として報酬を受け取っているという。

国民戦線の元幹部らによると、シャティヨンはルペンに財務やコミュニケーション、外交政策に関する助言も行っている。シリア問題をめぐって、介入に反対するロシアや中国をルペンが称賛したのは、シャティヨンの見方に従った結果とされる。

シャティヨンは、国民戦線の資金調達の牽引役も担ってきた。とはいえその手法は問題含みで、複数の不正行為の容疑で捜査の対象になっている。

党内の派閥争いの行方は
注目の人物はほかにもいる。国民戦線の外郭団体ジャンヌの財務責任者で、イル・ド・フランス地方議会議員のアクセル・ルストー(彼も不正資金疑惑で起訴された)と、ルペンの最高顧問フィリップ・ペナンクだ。

2人はシャティヨンと同じく、過激な反イスラエル的主張のせいで解散を命じられた極右ナショナリスト団体の出身。ベルギーのファシスト政治家でナチス武装親衛隊員だった故レオン・ドグレルを崇拝し、生前に彼の元を訪れたこともある。

国民戦線内部で力を増す極右主義者の派閥は、比較的穏健派のフロリアン・フィリポ副党首が率いるグループや、ルペンの姪で保守派カトリックのマリオン・マレシャルルペンの一派と勢力争いを繰り広げている。

ショプラードによれば、シャティヨンらが影響力を持つのは「財務を牛耳っているから」。ルペンは彼らをかばい、その言動が党を再び「悪魔化」しているにもかかわらず、手を切ることを拒んでいるという。

ルペンの手腕で国民戦線のイメージは変化してきたかもしれない。だが、実態はどうか。有権者の多くは懐疑的な見方を拭えないと、国民戦線やその支持層の構図に詳しい歴史学者バレリー・イグネは指摘する。

フランス国外のメディアは、グローバリゼーションや主流政党に怒る左派や、就職難にあえぐ若年層が国民戦線支持に転じている点に目を取られがち。だが同党の支持者の大半を占めるのは今も、ジャンマリ時代の主張に共感する人々だ。

有権者の過半数は国民戦線を過激な極右と見なしているためルペンは大統領選で敗北すると、イグネは予測する。「フランス国民は愚かではない」

実際、世論調査によれば、ルペンは決選投票でマクロンに敗れる見込みだ。ただし得票率の差は、父親とシラクが対決したときよりもずっと縮まるだろう。

ルペンに必ず投票すると回答する有権者は、マクロンの場合よりも多い。愚かでないフランス国民の間にも、国民戦線が脱悪魔化したと信じる人はいる。【4月25日号 Newsweek日本語版】
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一方のマクロン候補に関しては、話が長くなるので、もし決選投票進むことになったら、その時点でまた。
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ベネズエラ  大規模反政府デモで広がる混乱 強引な延命で国際的孤立を深めるマドゥロ政権

2017-04-20 22:29:34 | ラテンアメリカ

(ベネズエラ・カラカスで行われたマドゥロ大統領に抗議する大規模な行進(2017年4月19日撮影)【4月20日 AFP】)

19日デモで2名、4月では7名が犠牲
南米ベネズエラ・マドゥロ政権の無理な価格統制やバラマキ、そして主要輸出品である原油の価格下落による経済破綻(物価上昇、食料・日用品・医薬品の品不足、通貨下落、財政逼迫)、また、そうした状況への国民不満を押さえつけての強権的な居座りについては、これまでもしばしば取り上げてきたところです。

2016年12月16日“ベネズエラ 崖っぷちのマドゥロ大統領 紙幣切り替えで経済混乱”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20161216
2016年9月22日“ベネズエラ  大統領罷免の国民投票を越年し体制延命を画策 マドゥロ政権から距離を置く国際社会”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20160922など

民主主義本来のルールからすれば、とっくに政権交代が起きているべき状況ですが、マドゥロ大統領は国民の罷免要求も強引な手法で封じ込めています。

出口をふさがれた国民の不満は大規模反政府デモという形で噴き出していますが、マドゥロ大統領は故チャベス前大統領が1999年に開始した左派の「ボリバル革命」を擁護するよう軍隊に命令を下してデモへの対抗姿勢を明らかにしています。

19日のデモでは、投石するデモ隊に機動隊が催涙弾で応酬するなどの混乱の中で、何者かの発砲により2名が死亡。今月に入ってからでは7名の犠牲者を出す混乱状態に至っています。

****<ベネズエラ>複数の都市で大規模反政府デモ 数万人が参加****
AP通信は南米ベネズエラの複数の都市で19日、数万人が参加する大規模な反政府デモが起きたと報じた。

治安部隊が催涙ガスで鎮圧したが、騒乱に巻き込まれた市民2人が銃撃され死亡した。デモ参加者の死者は今月に入って7人となり、マドゥロ政権の強権化に拍車が掛かっている。
 
政権寄りの最高裁が3月末、野党が過半数を占める議会の機能を停止すると警告したのを契機に、国内では政権の独裁に抗議するデモが散発。19日は独立記念日の祝日で、野党がデモへの参加を国民に呼びかけていた。
 
一方、政府は首都カラカス市街地の地下鉄駅を封鎖し、デモ隊の結集を妨げた。デモ隊は移動した先の高速道路などで治安部隊と衝突し、催涙弾と石が飛び交う事態に発展。死亡した市民2人に誰が発砲したかは明らかになっていない。
 
ベネズエラのメディアによると、マドゥロ大統領はカラカスでの支持者集会で演説し、反政府デモを「テロ行為」と糾弾した。
 
産油国のベネズエラでは近年、原油価格の暴落に伴い外貨収入が激減した影響で、従来輸入に頼ってきた医薬品や食品の不足が深刻化。マドゥロ氏の支持率は20%まで下落し、早期退陣を求める世論が高まっている。
 
延命を図る政権は、与党の敗色が濃厚だった昨年12月の州知事・議会選を延期したうえ、今月7日には次期大統領選の野党有力候補であるカプリレス・ミランダ州知事の立候補資格も剥奪。

こうした強引な手法に周辺国政府は懸念を表明しているが、マドゥロ氏は内政干渉だと突っぱねて態度を硬化させており、混乱が収拾する見通しは立っていない。【4月20日 毎日】
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発砲の状況については、以下のようにも報じられており、治安部隊というより、政府支持者の関与が推測されます。

“目撃者によると、カラカスでは武装した政府支持者が反政府集会に近づき発砲した際、サッカーをしに自宅を出た男子学生(18)が頭部に銃撃を受けた。治安当局者3人はこの学生が搬送先のクリニックで死亡したと述べた。またサン・クリストバルでも、親族や目撃者によると、大学生の女性が射殺された。”【4月20日 ロイター】

また、人権団体によれば、19日のデモで400人以上が拘束されたとのことです。

議会からの立法権剥奪 野党指導者の政治活動禁止
政権への国民不満は今に始まった話ではなく、すでに2015年の総選挙では野党連合が与党に圧勝し、マドゥロ大統領は議会は対立を続けてきました。

これに対し、上記記事にもあるように、マドゥロ政権に近い最高裁は3月末、立法権を今後は最高裁が行使するとの判断を示しました。

さすがに、このような民主主義ルールを無視した“無法”は断念を余儀なくされています。

****<ベネズエラ>大統領、進む強権化 「立法権剥奪」は断念****
南米ベネズエラのマドゥロ政権が強権色を強めている。

野党が過半数を占める議会の機能を停止させ、立法権を最高裁に移そうとした動きは周辺国の批判を浴びて断念した。

だが国内には専制を防ぐ手段がほとんど残されておらず、マドゥロ大統領の任期が切れる2019年1月まで現状が続くことを、周辺国は懸念している。
 
「マドゥロはクーデターを謀った。これはまさに独裁だ」。ロイター通信によると、議会のボルヘス議長は3月30日、記者会見で大統領を糾弾すると、その場で最高裁の決定書のコピーを破り捨てた。
最高裁はその前日、議会が反政権的な態度を改めない場合、立法権を剥奪するとしていた。

野党議員の呼びかけに応じて31日には首都カラカスなど数都市で反政府デモが実施されたが、いずれも小規模で治安当局に即座に抑え込まれた。【4月2日 毎日】
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また、野党指導者のエンリケ・カプリレス氏の政治活動を15年間禁止するとの措置も。

****野党指導者の政治活動禁止命令か ベネズエラ****
南米ベネズエラで野党指導者のエンリケ・カプリレス氏は7日、政府から15年間の政治活動を禁止するよう命じられたと発表した。

カプリレス氏は過去2回、左派政権への対抗を訴え大統領選に出馬。2013年の選挙ではマドゥロ大統領に僅差で敗れた。経済が破綻状態にあるベネズエラは政府が野党勢力の締め付けを強めている。
 
カプリレス氏が自身のツイッターで明らかにした。ベネズエラ政府は公式見解を発表していないが、事実であれば18年に予定される大統領選への出馬を防ぐ目的とみられる。
 
マドゥロ大統領は、影響下にある最高裁を通じて野党が多数派を占める議会の機能を制限するなど、独裁色を強めている。カプリレス氏は反政府デモを主催するなど、野党勢力の象徴となっていた。【4月9日 日経】
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今回19日の大規模反政府デモは、こうしたマドゥロ政権な強引な弾圧・居座りへの国民批判として実施されたものです。

中南米でも孤立 今後のカギとなる中国の支援
マドゥロ政権の強引な延命には、中南米の周辺国からも強い批判が出ており、ベネズエラは孤立を深めています。

****米州機構、緊急会合でベネズエラに国会権限の完全回復求める****
米国や中南米諸国が加盟する米州機構(OAS)は3日、緊急会合を開いて国会の権限を一時的に停止したベネズエラへの対応を協議し、国会に完全な権限を回復することなどを求める決議を採択した。

民主統治の完全な回復に向け、マドゥロ大統領に対する地域の圧力が強まる中、OASのベネズエラ代表は会議を「クーデター」と非難し、席を蹴って会議場を後にした。

常設理事会の緊急会合は、マドゥロ政権下での民主制崩壊への懸念から、米国を含む20カ国の求めで開催された。

ベネズエラ最高裁は1日、国内外から非難の声が上がる中、野党が多数派を占める国会の権限を事実上停止した決定を取り消した。

OASのアルマグロ事務総長は会合で、ベネズエラをOASから追放するよう求めた。そうなれば、マドゥロ大統領の孤立はさらに深まることになる。

また、OAS加盟国は圧力手段として、ベネズエラに個別に制裁を科すことができる。

3日の会合はいったんキャンセルされたが、マドゥロ大統領に近い議長国ボリビアの反対にもかかわらず、ホンジュラスを議長国として午後に協議を開始した。

ベネズエラ代表は「会合の開催は不法だ。われわれはこれを拒否し、全世界に訴える。OASで起きていることはクーデターだ」と述べた。

会合では、ベネズエラに対し、国会の権限を完全に回復し、憲法に基づく法の支配と民主主義の実践による民主制の回復を求める決議が採択された。【4月4日 ロイター】
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孤立し、経済的苦境にあるベネズエラを支えているのが中国です。

****中国がベネズエラへの支援を続けるワケ****
いずれマドゥーロ政権は交代するので、中国はベネズエラへの支援を止めたほうが賢明であると、ベネズエラEl Nacional紙のダニエル・ロドリゲス氏が、2月15日付ニューヨーク・タイムズ紙で述べています。その要旨は次の通りです。
 
昨年、ベネズエラは、資産売却や輸入削減等、数々の犠牲を払って100億ドルに及ぶ国債等の利払いを行い、デフォルトを回避した。

しかし、それだけでは十分ではなく、中国の資金的支援が不可欠である。マドゥーロの政策が国際的孤立と人道的危機を招きながら、また、中国への石油による債務返済が滞るなかで、なぜ、中国は忍耐強くマドゥーロを支援し続けるのであろうか。
 
ベネズエラは、2001年に中国の「戦略的開発パートナー」となり、2014年には「包括的戦略パートナー」に格上げされた。

それ以来、中国は石油による返済を条件に600億ドルの融資を行い、600件以上の投資プロジェクトに出資している。

その見返りとして、中国企業はベネズエラ市場で優遇され、利益の上がるインフラ投資コンセッションを獲得している。中国からベネズエラへの輸出は、1999年の1億ドルから2014年には57億ドルに増加した。
 
中国がグローバルな役割を拡大しようとした際、ベネズエラとの同盟は、この地域に関与するための重要な足がかりを提供するものであった。

ベネズエラと同国の石油支援に依存する域内国の支援を得て、中国は素早く地域の主要なプレイヤーに成り上がり、米国を排除した金融機関や新たなパートナーシップを急増させ、台湾を制してOASのオブザーバー・ステイタスを獲得した。
 
原油価格の下落を受けて、ベネズエラの寛大な石油政策は過去のものとなったが、2014年に、中国が40億ドルの石油関係借款を供与し、翌年マドゥーロの訪中の際に多くの投資プロジェクトが発表されて以来、中国は、ベネズエラに恒常的に資金協力を行っている。
最近では国有石油会社に22億ドルの融資枠を提供し、食料や医薬品の配給のための数千台の車両を提供した。

反政府指導者は、政権が交代した場合、この借金はいったいどうなるのかとして中国に対し憤慨している。反政府派は、貸付条件が公表されずに承認された融資協定は無効であると主張している。
 
問題は単に債務だけではなく、反政府派が政権を取れば中国はベネズエラ市場やインフラ・プロジェクトから締め出されるリスクがある。それは、中国がカダフィに肩入れしたリビアで実際に起ったことである。ベネズエラでも、昨年12月の略奪騒動では中国人が経営する店がターゲットとなった。
 
今や中国がベネズエラを見捨てる時である。今日、マドゥーロを支持しているのは15%に過ぎないが、中国の支援がある限りマドゥーロ政権は生きながらえ、ベネズエラの苦しみは続く。

これを変えるためには、マドゥーロ支持派と折り合うことが不可能にならないよう、反対派が一致して妥協的なメッセージを送ること、そして、中国が腐敗した無能な政権を見放すことであろう。【3月20日 WEDGE】
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【WEDGE】は、上記ダニエル・ロドリゲス氏の主張に対し、以下のように論評しています。

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記事は、中国にマドゥーロ政権を見捨てるように呼びかけていますが、このままでは、2018年の大統領選挙で果たしてスムーズな政権交代が起こるのかも怪しいです。

トランプがTPPを廃棄し、メキシコと事を構える状況の中で、中南米では、中国は、「棚ぼた」的な勝利者であり、むしろ、この時とばかり同地域における影響力拡大に乗り出しています。

27億ドルの新たな投資案件
ベネズエラについては、石油価格が持ち直せば同国の利用価値は依然として大きく、中国は、つい最近、2月14日のハイレベル協議ではベネズエラ石油用の精油所の建設を含む22件、27億ドルの投資案件を約束しました。(後略)
【同上】
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ただ、昨今の状況を見れば、マドゥロ政権が極めて不安定な状況に追い込まれていることは明らかであり、債権国・中国もそのあたりのリスクを注視していることと思われます。

中国との契約は「借金の返済を原油で支払う」ということになっており、原油価格が下落すると債務返済に当てる原油量が膨らみます。

“インフレ率が800%に達し慢性的なドル不足状態にあるベネズエラ政府は、原油生産を続けるのに必要な契約の一部支払いができなくなっている。これにより原油生産量は過去13年で最低水準に落ち込んでおり、中国政府は「融資の返済としての輸入(未返済金額は約200億ドル)が滞るのではないか」と気が気でない。

このような状況を前にして、中国政府はベネズエラとの戦略的パートナーシップという方針を転換しつつある。(後略)”【12月16日 藤 和彦氏“歴史的減産合意でも産油国を待ち受ける「茨の道」” JB Press】


今後の中国の対応が、マドゥロ政権存続のカギとなっていますが、中国はベネズエラ国内の反政府運動の行方を見極めながら対応していくと思われます。

その国内の反政府運動については、野党側は今日20日にもデモ実施を呼び掛けていましたが、どうなったのでしょうか・・・・。
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“さまよう”アメリカの原子力空母「カール・ビンソン」 「実は北朝鮮に向かっていなかった」

2017-04-19 22:59:55 | アメリカ

(空母カール・ビンソン打撃群は先週末、インド洋にいたことが分かった(今月14日に撮影された打撃群)【4月19日 BBC】)

北朝鮮ミサイル失敗は「意図的」?】
北朝鮮をめぐる情勢は、先制攻撃、斬首作戦、報復攻撃・・・・等々、物騒な話が飛び交う緊張状態にありますが、実際、もし有事となると日本にとっても、在日米軍基地への攻撃、在韓邦人の帰国・救出、混乱拡大による半島からの大量の難民、後方支援する日本への直接報復・・・等々、深刻な事態を惹起します。

そうしたなかで、懸念されていた金日成(キム・イルソン)主席の生誕105年の記念日である4月15日は、軍事パレードで新型ミサイル等を誇示しつつも、ピョンヤンからはことさらのように祝賀ムードが発信され、北朝鮮兵士にも緊張感は見られない状況が報じられています。

翌日の16日にはミサイルが発射されたものの、失敗に終わっており、今までのところはなんとか・・・というところです。今後、核実験が強行されれば、また緊張が高まりますが。

16日のミサイル発射失敗については、発射したことで北朝鮮の“顔もたち”、失敗したことでアメリカも特に行動しない、アメリカが問題視しなければ中国も平静を保つ・・・ということで、結果的には“丸く収まる”形にもなりました。

そうしたことから「意図的な失敗」といった穿った見方もあるようですが、どうでしょうか・・・?

****北ミサイル】米を過度に刺激しないよう「意図的な失敗」の見方も 新浦から発射は再び不成功****
北朝鮮が今月5日に続き、16日にも同じ咸鏡南道(ハムギョンナムド)新浦(シンポ)付近から弾道ミサイルを発射した。前回は約60キロ飛び日本海に落下。今回は発射直後に爆発し失敗した。(中略)
 
今月の2回の発射失敗について、警戒する米軍がサイバー攻撃で妨害したのではないかなどとの憶測が出ている。一方で、米国を過度に刺激しないように「意図的な失敗」との見方もある。
 
北朝鮮は15日に金日成(キム・イルソン)主席の生誕105年の記念日を迎え、軍事パレードで大陸間弾道ミサイル(ICBM)とみられる新型ミサイルや「北極星2」を誇示した。その直後の失敗は極めて不自然なためだ。
 
また、北東部の咸鏡南道、豊渓里(プンゲリ)では核実験の兆候が見られ、北朝鮮自らが最高指導部(金正恩=ジョンウン=朝鮮労働党委員長)の決断次第で核実験を行うと断言している。しかし北朝鮮は核実験に依然踏み切れていない。
 
背景にうかがえるのは米国による圧力だ。6日にシリアを攻撃した米国は原子力空母を朝鮮半島周辺に向かわせ、核実験を強行した場合の先制攻撃の可能性をちらつかせている。米国の圧力を、金正恩政権は脅威に感じているとみられる。
 
一方で、パレードで軍事力を見せつけ、ペンス米副大統領の訪韓に合わせ米国を牽制(けんせい)するかのようにミサイルを発射した。北朝鮮は言葉やミサイル発射で米国を挑発し、瀬戸際外交を続ける。

米朝間でエスカレートする圧力と挑発の連鎖の中、暴発する可能性もあり中国の動向も注目される。【4月16日 産経】
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もし本当に「意図的な失敗」ということであれば、北朝鮮には随分頭がいい作戦立案者がおり、何よりも、国際社会が注目する中であえて失敗してみせることを金正恩委員長が選択したということであれば、恐るべき卓越した指導者ということにもなります。

逆に言えば、“そんなことはないんじゃないか・・・?”とも思えます。

朝鮮半島有事に反応する日本・中国 自制を求める韓国
記事にあるように、アメリカ・トランプ大統領が原子力空母「カール・ビンソン」を朝鮮半島に差し向けたということで、日本を含めた世界の緊張は高まりました。

日本・安倍政権は当然のごとく、朝鮮半島有事に備えた発言を繰り返すにのに対し、“ソウルが火の海になりかねい”とも思われる韓国は、日本の反応に反発するという、ねじれた奇妙な構図ともなっています。

****安倍首相、誤解を招き得る言及は自制すべきだ」 難民流入の対処策に韓国外務省 メディアは「慰安婦像の腹いせ****
安倍晋三首相が朝鮮半島有事の際に予想される日本への難民流入の対処策を検討していることを明らかにしたことに対し、韓国外務省報道官は18日の定例会見で「仮想の状況を前提とし、誤解を招き、平和と安定に否定的な影響を及ぼし得る言及は自制すべきだ」と不快感を示した。
 
韓国人記者の質問に答えたもので、韓国メディアからは「外交的に相当な問題発言だと思うが、憂慮や遺憾の表明をしたのか」といった質問も出ていた。
 
韓国では、北朝鮮情勢をめぐり日本が警戒していることに対し、「日本が危機をあおっている」との批判がメディアなどで相次いでいる。18日付の朝鮮日報は社説で「緊張をあおるような低水準の稚拙な言動といわざるを得ない」「慰安婦像に対する感情的な腹いせにしか聞こえない」と曲解し、日本側の危機意識を理解しようとしていない。
 
北朝鮮と直接軍事的に対峙(たいじ)しているはずの韓国では、なぜか現実的な危機感がほとんど感じられない。【4月18日 産経】
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****日本が朝鮮半島有事の自衛隊派遣に言及、韓国やロシアから批判的な声*****
2017年4月19日、環球時報によると、稲田朋美防衛相が朝鮮半島有事の際に自衛隊派遣の可能性に言及したことについて、海外メディアから批判的な声が上がっている。

稲田防衛相は18日の衆議院安全保障委員会で「仮に朝鮮半島で邦人などの退避が必要な事態に至り、民間定期便での出国が困難となった場合は、自衛隊法に基づく在外邦人の保護措置、輸送の実施を検討する」と語った。また、北朝鮮の発射したミサイルが日本の領海内に落下した際、「武力攻撃切迫事態」に認定して自衛隊への防衛出動の発令を可能とすることを日本政府が検討しているという。


記事によると、これについて韓国KBSテレビは「最近、日本政府は朝鮮半島問題において過度に緊張ムードを広めている。日本国内における朝鮮半島問題への関心が高まり続ける中、最新の世論調査では安倍晋三首相の支持率が下げ止まり、回復したことが明らかになった。安倍首相は北朝鮮が長期的な脅威であると強調し続けることで、日本の軍備強化の目的を得るとともに、憲法第9条の改正ムードを作ろうとさえしている」との見方を示しているという。

また、ロシア紙Utro Rossiiも18日、「もし日本が本当に自衛隊を朝鮮半島に派遣するようなことがあれば、第2次世界大戦終結後初の『軍事侵略の発動』になる。朝鮮半島情勢は日本により大きな軍事的欲望をもたらしている。昨年自衛隊の国外での軍事行動を認める法案を可決し、現在また北朝鮮への攻撃の用意があることを明かした。朝鮮半島の緊張が激化するなかで、日本の挙動は非常に危険なシグナルだ」と報じているという。【4月19日 Record China】
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日本の反応、韓国の反応、どちらが・・・という話は今回はパスします。後述のように、別の問題がありますので。

緊張に反応しているのは日本だけではないようです。中国も有事を想定した反応を示したとも報じられています。

****中国、中朝国境で「緊急24時間態勢」 放射性物質など拡散に対応、半島有事を想定か****
北朝鮮の金日成主席生誕105年の記念日(15日)を前に、中国当局が中朝国境に近い東北部で、放射性物質や化学物質の拡散を想定した緊急の24時間即応態勢を敷いていたことがわかった。

6回目の核実験に踏み切る構えをみせる北朝鮮に対して米国が軍事圧力を強める中、朝鮮半島有事への強い危機感を中国側が抱いていた実態が浮かんだ。

北朝鮮と国境を接する遼寧省内の地方政府が14日付で、北朝鮮の核問題に関する「緊急通知」を関係部局に出していた。通知は、北朝鮮で放射性物質や化学物質による「突発事件」が発生した場合に「わが国の環境安全と公衆の健康に影響や損害が生じる可能性がある」と指摘。上級部門の指示により即日、地方政府全体が「緊急待命状態」に入ることが明示された。(後略)【4月17日 産経】
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万一、北朝鮮の核施設や化学兵器施設が米軍に攻撃された場合、その被害は隣接する中国に及びます。(アメリカの軍事行動が制約されるひとつの理由でもあります)

実際は反対の方向へ向かっていた原子力空母「カール・ビンソン」 伝達ミス? 攪乱戦術?】
上記のように関係国は“万一”の有事に反応したのですが、緊張を高める重要な要因ともなった米海軍の原子力空母「カール・ビンソン」は、実は朝鮮半島には向かっていなかった・・・ということが明らかになっています。

****空母カール・ビンソン北上していなかった。大幅に遅れて朝鮮半島へ****
アメリカ政府当局は4月8日、アメリカの原子力空母「カール・ビンソン」を中心に編成した空母打撃群が北朝鮮付近の海域へ向かっていると説明していたが、実際は反対の方向へ向かっていたことがわかった。ニューヨークタイムズと軍事専門サイト「ディフェンス・ニュース」が報じた。

アメリカと北朝鮮の緊張が高まる中、アメリカ太平洋軍は4月8日「空母カール・ビンソン打撃群は本日シンガポールを出発し、西太平洋北部に向かう」と発表した。その時アメリカ当局はロイター通信に対し、朝鮮半島への空母派遣は金正恩政権に軍事力を誇示するものだと述べた。

その翌日、H・R・マクマスター補佐官(国家安全保障担当)は、「慎重に」軍事力を示すために空母をシンガポールから朝鮮半島に針路変更させたとFOXニュースに語った。

新しい針路を発表してからわずか数日後、ドナルド・トランプ大統領は4月12日、FOXニュースに「我々は非常に強力な艦隊を送り込んでいる。空母よりはるかに強力な潜水艦もある」と強調した。

「我々には世界最強の部隊がいる。そしてこう言おう。『彼は間違っている』」と、トランプ氏は金正恩・朝鮮労働党委員長について言及した。

しかしディフェンス・ニュースは18日、アメリカ海軍が公開した写真から空母は15日に朝鮮半島から3500マイル(5632km)離れたインドネシアのスンダ海峡を通過していたと指摘。空母が朝鮮半島に向かっているとアメリカ当局が発表していた頃、実際には北朝鮮から遠ざかっていたと、ニューヨークタイムズが18日に確認した。

その後空母は針路変更したが、当初の予定よりも大幅に遅れて到着する見込みだ。

CNNのジム・アコスタ氏は、ある政府関係者が通信の行き違いによる混乱を批判したとツイートした。ホワイトハウスはコメントの求めに対し、すぐには応じなかった。【4月19日 The Huffington Post】
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トランプ大統領、マクマスター補佐官(国家安全保障担当)、マティス米国防長官、スパイサー米大統領報道官などが重ねて朝鮮半島に原子力空母「カール・ビンソン」が向かっていることをアピールしていたにもかかわらず、そのとき実際は反対方向に航行していた・・・・「なんのこっちゃ???」という話です。

トランプ大統領の事実に基づかない怪しい発言、朝令暮改する発言は毎度のことではありますが、これは“戦争”にも拘わる重大なことで、周辺国が敏感に反応している問題だけに、事実関係を説明してもらいたいものです。

“BBCのスティーブン・エバンズ特派員は、朝鮮半島に向かっていなかったのは、北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長を威嚇するのための意図的な嘘だったのか、それとも計画が変更されたのか、あるいは単純に意思伝達がうまくいかなかったのか、理由は不明だと語った。”【4月19日 BBC】

****米空母「実は北朝鮮に向かっていなかった」判明までの経緯*****
・・・・CNNは、国防総省とホワイトハウスの間に連絡ミスがあったとの見方を伝えている。これだけ緊迫した状況下で本当にミスだったのか。ドナルド・トランプ大統領が得意とする「ディール(交渉)」の一環で流した錯乱情報なのか。日本や韓国の当局者は知らされていたのか――。(中略)

「実際には朝鮮半島に向かっていなかった」と米メディアが報じ始める。カール・ビンソンはインド洋でオーストラリアとの合同演習を終え、現在は「指令どおり、西太平洋に向かっている」と米太平洋軍が説明。

ホワイトハウス当局者はニューヨーク・タイムズに「国防総省からの助言を当てにしてきた」と釈明。太平洋軍によるタイミングの悪い初期の発表や、マティス国防長官による説明ミスなどが積み重なって、朝鮮半島へ向けて航行中との誤ったストーリーが広がったのだという。

謎はまだ多いが、おそらくはトランプ政権内での伝達ミスに、メディアによる過熱報道が加わって、誤まった情報が拡散していったのではないか。ただ問題は、朝鮮半島危機が終わっていないことだ。

今ごろは北朝鮮当局者も「空母がまだ到着していないこと」を知っているはず。これから事態はどう動くのか。カール・ビンソンは今月中には朝鮮半島近海に入るとみられている。【4月19日 Newsweek】
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詳細はわかりませんが、“伝達ミス”だとしたら、こんな重大な問題でとんでもない話です。ありえないことにも思えますが、ミスというのは後から考えれば“ありえない”ことばかりです。

トランプ流の情報攪乱戦術だとしたら、日本政府はどの時点で知らされたのでしょうか?知った上での有事関連発言でしょうか?こんなことを繰り返していたら、“同盟国の国民”もアメリカの言動を信頼できなくなります。

韓国の反応の“鈍さ”あるいは“冷静さ”は、アメリカから知らされていたからでしょうか?

トランプ大統領「韓国は中国の一部」】
その韓国に関して、トランプ大統領から(韓国にすれば)“ありえない”発言も。

****トランプ氏の「韓国は中国の一部」発言に反発=韓国政府****
トランプ米大統領が中国の習近平国家主席と首脳会談で交わした対話の内容を伝え、「韓国は中国の一部」と発言し、波紋が広がっていることについて、韓国の外交部当局者は「一考の価値もない」と強く反発した。

同当局者は「報道内容が事実かどうかと関係なく、数千年間の韓中関係の歴史で韓国が中国の一部ではなかったことは、国際社会が認める明白な歴史的事実であり、誰も否認できない」と強調した。

トランプ大統領は米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)とのインタビューで、「習主席が(6〜7日の米中首脳会談で)中国と朝鮮半島の歴史について話した。数千年の歴史と数多くの戦争について。韓国は実は中国の一部だった」と述べた。

習首席が実際に会談でトランプ大統領に述べたのか、トランプ大統領が誤解し、誇張して表現したのか、通訳ミスなのかは確認できていない。【4月19日 ソウル聯合ニュース】
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本来ならば“「一考の価値もない」と強く反発”ぐらいでは済まない問題発言です。

一方、中国・習近平主席に関しては、トランプ大統領は極めて高い評価を示しています。

****トランプ米大統領、中国「為替操作国」見送りは「態度軟化ではない****
2017年4月19日、米ボイス・オブ・アメリカの中国語ニュースサイトによると、トランプ米大統領はFOXニュースが18日放映したインタビューで、中国を制裁対象となる「為替操作国」に認定しなかったことについて「中国への態度が軟化した」との指摘を否定した。

トランプ大統領は、「習近平(シー・ジンピン)国家主席は北朝鮮の核脅威を大きな問題だと把握し、現在それに対処している。中国が深刻な問題に取り組んでいる最中に、為替操作を持ち出して彼らを殴るとでもいうのか」とし、「ドナルド・トランプが中国に対する姿勢を変えていると言っているのは数だけの偽メディアだ」と語った。

また、中国税関当局が北朝鮮からの石炭貨物を送り返すよう中国国内商社に命じたことについて「習氏はとても入念に取り組んでいる。北朝鮮からの石炭貨物がたくさん送り返された」とし、「中国が米国のためにあれほど前向きな立場を取るのを目にしたのは誰もいない」とも語った。【4月19日 Record China】
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アメリカのためにかつてないほど前向きに取り組んでくれる中国・習近平政権に、中国の一部である韓国および東アジアはまかせる・・・というのが、トランプ大統領の頭の中でしょうか。
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台湾、日本、中国、そして韓国 その微妙で複雑な心情

2017-04-18 21:18:34 | 東アジア

(八田與一像と墓【ウィキペディア】
像設置を固辞していた八田本人の意向を汲み、一般的な威圧姿勢の立像ではなく、工事中に見かけられた八田が困難に一人熟考し苦悩する様子を模し、碑文や台座は無く地面に直接設置されそうです。)

地元の有志によって守られてきた八田與一像
台湾南部・台南市で日本統治時代の技師、八田與一像の頭部が切り取られた事件については周知のところです。

*****八田 與一****
・・・・1918年(大正7年)、八田は台湾南部の嘉南平野の調査を行った。嘉義・台南両庁域も同平野の区域に入るほど、嘉南平野は台湾の中では広い面積を持っていたが、灌漑設備が不十分であるためにこの地域にある15万ヘクタールほどある田畑は常に旱魃の危険にさらされていた。

そこで八田は民政長官下村海南の一任の下、官田渓の水をせき止め、さらに隧道を建設して曽文渓から水を引き込んでダムを建設する計画を上司に提出し、さらに精査したうえで国会に提出され、認められた。

事業は受益者が「官田渓埤圳組合(のち嘉南大圳組合)」を結成して施行し、半額を国費で賄うこととなった。このため八田は国家公務員の立場を進んで捨て、この組合付き技師となり、1920年(大正9年)から1930年(昭和5年)まで、完成に至るまで工事を指揮した。

そして総工費5,400万円を要した工事は、満水面積1000ha、有効貯水量1億5,000万m3の大貯水池・烏山頭ダムとして完成し、また水路も嘉南平野一帯に16,000kmにわたって細かくはりめぐらされた。この水利設備全体が嘉南大圳(かなんたいしゅう)と呼ばれている。(中略)

日本よりも、八田が実際に業績をあげた台湾での知名度のほうが高い。特に高齢者を中心に八田の業績を評価する人物が多く、烏山頭ダムでは八田の命日である5月8日には慰霊祭が行われている。

また、現在烏山頭ダム傍にある八田の銅像は、ダムの完成後の1931年(昭和6年)に作られたものである。住民の民意と周囲意見で出来上がったユニークな銅像は、像設置を固辞していた八田本人の意向を汲み、一般的な威圧姿勢の立像を諦め、工事中に見かけられた八田が困難に一人熟考し苦悩する様子を模し、郷里加賀出身の彫刻家都賀
田勇馬に制作を依頼し碑文や台座は無く地面に直接設置された。

その後、国家総動員法に基づく金属類回収令の施行時や、中華民国の蒋介石時代に、大日本帝国の残した建築物や顕彰碑の破壊がなされた際も、地元の有志によって守られ、銅像は隠され続け、1981年(昭和56年)1月1日に、再びダムを見下ろす元の場所に設置された。

今では、台座上に修まる銅像の経過や、八田が顕彰される背景、業績もさることながら、土木作業員の労働環境を適切なものにするため尽力したこと、危険な現場にも進んで足を踏み入れたこと、事故の慰霊事業では日本人も台湾人も分け隔てなく行ったことなど、八田の人柄によるところも大きく、エピソードも多く残されている。

中学生向け教科書『認識台湾 歴史篇』に八田の業績が詳しく紹介されている。(後略)【ウィキペディア】
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数年前、母が戦前に台南・嘉義に住んでいたことがあって、その方面を旅行した際に初めて八田氏の名前を知りました。

日本統治にもかかわらず、現在の台湾が日本に非常に好意的感情を有していることは多くの報道で知られるところですが、そうしたことも八田與一のような人物の地道な功績があってのことでしょう。

日本に対しては厳しい姿勢も見せた国民党・馬英九前総統も八田氏の慰霊祭に参加し、八田氏がダム建設時に住んでいた宿舎跡地を復元・整備して「八田與一記念公園」を建設することを表明し、2011年に完成しています。【ウィキペディアより】

今回の切断事件は非常に痛ましいことではありますが、台湾の一部に日本統治を否定しようという考えがあるのは極めて自然な話で、また犯人とされる元台北市議の男は“任期中、市幹部を殴り起訴された。また、2016年には急進的な台湾独立派の団体の敷地に放火し逮捕、起訴されている”【4月18日 産経】とのことで、やや特異な性格でもあるようですから、この事件をもってどうこうという話もないかと思います。

台南市政府からは、八田氏の命日である5月8日までに銅像を修復する意向が示されています。

今回事件を機に、日本と台湾の絆が再確認されれば、それはそれでよし・・・というところでしょうか。

相思相愛の台湾・日本関係に複雑な感情を抱く中国
台湾が日本に対し好意的なことは、多くの報道に示されていますが、中国もそのあたりは認識しています。
台湾人が最も好きな国に関するアンケートで、日本は2位で、1位ではなかったことを驚いているほどです。

****台湾人の好きな国、1位シンガポール、2位日本=中国ネット驚き****
2017年3月22日、シンガポール華字紙・聯合早報によると、台湾民意基金会による調査で、台湾人が最も好きな国は1位がシンガポールで、日本は2位だった。

この調査では、台湾の隣国と世界の主要国、合わせて12カ国についてその好感度を尋ねた。その結果、最も好感度が高かったのはシンガポールで87.1%、次いで日本の83.9%、カナダの83%、欧州連合(EU)の78.7%、オーストラリアの78.6%と続いた。

一方、反感を持つ国では、1位が北朝鮮で81.6%、次いでフィリピンの57.3%、中国の47.4%、韓国の41.7%、ロシアの33.9%と続いた。

報道によると、台湾人が好感、反感を持つ基準となっているのは、民主や豊かさ、社会の平等性、環境保護などの国の発展レベル、文化と血縁の相似性、敵意を感じるか否かだという。

これに対し、中国のネットユーザーから「まあその通りだな。日本は台湾のお父さんだし。でもなぜお父さんが2位なんだ?」「日本が1位なはずだろ。それに一番嫌いなのが中国ではないとは意外だ」と、この結果に驚くユーザーが少なくなかった。

また、「台湾を取り戻したら、台湾独立派をシンガポールに引き取ってもらおう」「実際のところ、香港も含めた東アジア全体で最も嫌われているのが中国だ」などのコメントもあった。いずれにしても、中国の好感度が低いということは中国のネットユーザーも自覚しているようである。【3月22日 Record China】
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先述のように、日本統治に関する否定的な考えが影響する面もあるでしょうから、日本への好感度に一定の限界があり、シンガポールを下回るというのは、これも自然な話でしょう。

歴史認識で日本と対立する中国からすれば、どうして台湾は日本に対して・・・という感はあるでしょうが、“日本は台湾のお父さん”というのも面白い表現です。初めて目にしました。

“お父さん”云々はともかく、日本人も台湾に対しては“自分の家のような”親近感を強く感じるようです。

****訪台日本人数、昨年は189万人=「台湾は自分の家のよう****
2017年3月23日、中国メディアの観察者網は日本メディアの報道を引用し、昨年の訪台日本人数が189万人を超えたと伝えた。

記事は、多くの日本人が台湾旅行に行った理由について分析した日本メディアの記事を紹介。「台湾は日本人にとって自分の家のような場所」とのタイトルで、台北や台南では多くの店の看板が中国語と日本語で表記されており、日本料理店も多く、台湾人は日本人に対してとても親切であるため、日本人にとってどこか懐かしく親近感があると伝えた。

また、基礎的な日本語を話せる台湾人も多く、街には日本のアニメやゲームがあふれていて、日本文化を至る所に見ることができるため、沖縄の方がよっぽど外国のような感じがするほどだと紹介した。

記事はまた、実際に台湾旅行へ行った日本人女性が、「台湾には日本人がすでに失った人情味がある。1人旅をしていても孤独を感じることはないが、東京では全く逆だ」と話したことを紹介した。

この日本メディアの記事について、台湾の各メディアも好意的に報道。記事はそのことを皮肉り「台湾メディアが興奮して報道した」と伝えた。

これに対し、中国のネットユーザーから「もともと日本の植民地だったところが、いまでは花園になったんだな」「人情味だって?台湾に行って宗主国としての感覚を味わっているだけだ」など批判的なコメントが寄せられた。

また、「台湾に対して一国二制度を採用したら、面倒なことになりそうだ」との意見や、「沖縄人と台湾人は住む場所を取り換えたらどうだ?沖縄は日本から独立したがっているようだから」との主張もあった。【3月24日 Record China】
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台湾を何としても取り戻したい中国からすれば、あろうことか台湾と日本が互いに好意的な現状というのは、なんとも複雑なところでしょう。微妙な三角関係です。韓国まで含めれば、複雑な四角関係でしょうか。

台湾側の日本への親近感を伝える最近の報道としては、下記のようなものも。

****日本時代の駅舎再建=開設101年、人気スポットに-台湾****
台湾の台北市で日本統治時代の1916(大正5)年に日本人の設計で建てられ、約30年前に解体・撤去された「新北投駅」の駅舎が、当時の駅近くに再建された。独特の和洋折衷様式が目を引き、一般公開から1カ月もたたないうちに、早くも人気スポットになっている。
 
台北北部の北投地区は温泉地として日本統治初期から開かれ、日露戦争の負傷兵が北投温泉で療養した記録も残っている。台湾総督府は温泉利用者の利便を図るため、16年に鉄道を延伸して「新北投乗降場」を開設。後に「新北投駅」と名称変更したが、ひのき造りの駅舎は80年代末の地下鉄開通時に解体された。
 
駅舎は長年、地元のシンボルとして親しまれ、住民の社交場としての役割も果たした。近くに住む魏子良さん(73)は「住民にとって駅舎は特別な存在だった」と懐かしむ。

2003年ごろから住民間で駅舎再建の機運が高まり、13年に駅舎が保存展示されていた南部の彰化県からの移築作業に着手。新たな材料も使って修復・再建を進め、地下鉄の新北投駅前の公園内に今年、完成した。
 
駅舎開設から101年となる今月1日から一般公開が始まり、2週間で約5万人が訪れた。管理する台北市文化基金会の呉峻毅さん(48)は「来年は汽車、レール、ホームも設置する計画。日本の方もたくさん見に来てほしい」と期待している。入場は無料で、駅舎内には関連資料・写真などが展示されている。【4月16日 時事】
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頑なに“日本的なもの”を排除したい韓国の“桜起源論争”】
中国もそうですが、中国以上に日本への対抗意識が強い面もある韓国などでは、とてもありえない話です。
韓国は、“日本的なもの”の抹消に躍起になっている感もあります。

そのひとつが、桜の起源に関する議論。
日本人からすれば、重要なのはその美しさと、日本の文化・社会との深いかかわりであり、どこ起源であろうが大した問題ではないように思えます。(もともと、日本文化の多くは大陸・朝鮮由来のものですから、そこにこだわっても仕方がないところがあります)

しかし、いまや韓国でも多くの人がその美しさに魅了されている桜が“日本のもの”というのは、韓国にとっては受け入れがたいものがあるようです。

****韓国が桜の「起源」に固執する理由****
韓国の桜の季節は日本の東北地方と同じ時期、東京よりは1、2週間ほど遅れてやってくる。桜の時期になると毎年繰り返して話題に上げるのが、日本-韓国間の「原産地」論争だ。

そうはいっても日本側での反応は薄い、というよりはさほど関心がないように見受けられる。
これに対し、韓国側では、韓国=原産地説を否定でもしようものなら、まるで顔に泥を塗られでもしたかのように、ヒステリックで感情的な反応を示す。桜の「原産地」だということへの執着は日本人の比ではない。この執着心はどこから生まれたのだろうか?
 
実は、桜の原産地が韓国だという主張は1950年代にも存在した。しかし、初期には一部による主張にとどまり、大部分の韓国人にとって桜は日本の花であり、日本を象徴する花だと考えられていた。

それは、1945年に第二次世界大戦が終わり、日本統治から解放された韓国のあちらこちらで、韓国人の手によって桜の木が伐採されたことが何よりもはっきりと証明している。「桜=日本のもの」という認識があったからこそ、日本に対する反感を桜に向け、怒りをぶつけたのだ。
 
また、戦後にも春になると喜んで「花見」に出かける韓国人たちの姿を見咎めて、問題提起をするような新聞記事も90年代までは何度も書かれている。日本文化である花見を楽しむ姿は目に余るという理由だ。
 
美しい花をみて、それを楽しむという行動が批判を浴びなければならない理由はなんだろうか? 所属する国家が違い、民族が違ったとしても、美しいものをみて美しいと思い、それを愛でたいと思うのは人間の「本能」とでもいうべきものだ。
 
終戦直後の韓国には、こういった本能的な喜びを素直に受け止めることすら罪悪視されるほどに強烈な反日感情が充満していた。

美しいものをみても「敵の文化と象徴を愛でてはならない」と、美しいと感じる感情は強迫観念にも似た罪悪感のもとに押さえつけられなければならなかったのである。
 
だが、この罪悪感はいつまでも韓国人の本能を抑え続けることができなかった。何処何処の桜が美しく咲き誇っていると話題になれば、人々は吸いつけられるかのように桜を見に出かける。近年では全国各地の自治体が観光客を誘致しようと観光地化を推し進め、競うように桜の名所と宣伝し始めた。

このような風潮に対して、「韓国の花もいろいろあるのに何で日本の花?」、「日本文化の真似だ」といった懸念の声があがったことは言うまでもない。
 
これに対し、これらの懸念をきれいに払拭してくれる主張が登場したのだ。それこそが「桜の原産地は韓国である」という主張だ。

つまり、日本の象徴であり、日本の花だとして知られていた花は実は韓国原産である、という主張は、桜を好み、愛する韓国人達を罪悪感から救い、強迫観念から解放してくれたのだ。今や自制する必要はなく、日本の目を気にする必要もない「名分」を得たのである。(後略)【4月13日 WEDGE】
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上記【WEDGE】は続けて、仮に韓国原産であったとしても、韓国には昔は桜を愛でて楽しみ、あるいは生活の中に利用するような文化や情緒は無かったという事実、また、現在、韓国で咲いている桜の多くは戦後、在日韓国人達によって贈られた、「日本産」の桜であるということを指摘しています。

そのうえで、以下のように。

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少し話が飛ぶが、壬辰倭乱つまり、豊臣秀吉による朝鮮出兵の際に、朝鮮の陶工が数多く日本に捕虜として連行された。

しかし、彼らのうちの相当数は終戦後、韓国側の捕虜と交換に半島に帰れることになったのだが、朝鮮へ帰国を拒否し、日本に残り陶工として根をおろした。

商人や職人を蔑視する朝鮮とは異なり、日本では技術と努力に対し正当な評価が受けられたためだという。
 
私は、毎年春になれば、韓国が桜の原産地論争を持ち出すのを見るたびに、この陶工たちの話を思い出す。

「原産地」や「起源」よりも、その対象を認め、評価し、愛してきたのかということの方が、よほど重要な問題に思えてならないからだ。

植物のDNA検査の結果を持ち出して「所属」を主張することで、一体何が得られるというのだろうか?【4月13日 WEDGE】
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いたって正論です。個人的にも同感です。

まあ、しかしながら、そうであったとしても“日本的なもの”を受け入れがたく感じる韓国の心情、何がそのように頑なにさせているのかということにも思いをめぐらす必要もあろうかとは思います。

台湾の関連で、最近の独立志向の話、中国・アメリカとの関係などにも触れるつもりでしたが、今日はパスして、また別機会に。
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ソマリア  干ばつとテロで深まる飢餓の危機

2017-04-17 21:48:45 | アフリカ

(飢餓に人生を翻弄される少女、ゼイナブさん(本文参照)は左から2番目。ソマリアのドーロで4月3日撮影(2017年 ロイター/Zohra Bensemra)【4月17日 ロイター】)

【26万人が死亡した2011年の大干ばつの再現か?】
東アフリカのソマリアで、干ばつとテロ・戦乱によって深刻な飢餓が進行していることは、これまでも取り上げてきました。(3月18日ブログ“ 飢餓と戦乱のソマリア・イエメン 逃げ惑う人々を襲う更なる悲劇 門戸を閉ざす国際社会”http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20170318など)

****<ソマリア>干ばつ深刻化…イスラム過激派、伸長も****
国連のグテレス事務総長は7日、干ばつの影響が深刻化しているアフリカ東部のソマリアを訪れ、国際社会の支援がなければイスラム過激派の伸長を招くと警告した。
 
ロイター通信によると、グテレス氏は「テロと戦うには、根本的原因に対処しなければならない」と指摘。ソマリアのような国に平和と安定をもたらすことこそ「豊かな国が自分たちを守る一番の方法だ」と述べた。
 
ソマリアでは人口の半数近い620万人が食糧不足に陥り、国連は8億2500万ドル(約940億円)の緊急支援を呼びかけている。グテレス氏は「豊かな国に気前の良さを求めているのではない。自らの利益になると訴えている」と語った。
 
ソマリアのアブドラヒ大統領は、今後2カ月のうちに雨が降らなければ「26万人が死亡した2011年の大干ばつと同様の人道危機が起きる」と述べ、早急な支援を求めた。
 
ソマリアではイスラム過激派アルシャバブによるテロが頻発し、テロと干ばつの二重苦に見舞われている。
 
国連児童基金(ユニセフ)によると、イエメン、ナイジェリア、ソマリア、南スーダンの中東・アフリカ4カ国で、子供約140万人が深刻な栄養失調で年内に死亡する危険にさらされている。【3月8日 毎日】
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40日ほど前の記事で、“今後2カ月のうちに雨が降らなければ・・・・”とのことですが、その後事態が改善したという話は聞きません。ふたたび飢饉の瀬戸際にあると思われます。

欧米社会のテロと違って殆どニュースにもなりませんが、イスラム過激派「アルシャバブ」によるテロも相変わらず頻発しています。

****首都で2日連続自爆、13人死亡=過激派、大統領に反発-ソマリア****
ソマリアの首都モガディシオで9、10の両日、連続で自爆テロが発生し、少なくとも13人が死亡した。

国防省近くで9日に起きた自爆テロでは、少なくとも10人が死亡。軍高官は「爆発物を満載した小型バスが民間のバスに衝突して爆発した。軍の車列に突っ込もうとしていたようだ」と語った。
10日は首都南部の軍基地内に侵入を試みた容疑者が自爆、少なくとも兵士3人が死亡した。
 
どちらのテロもイスラム過激派「アルシャバーブ」が犯行声明を出し、9日の自爆については「参謀長は首の皮1枚で助かったようだ」と主張、6日に就任したばかりの新参謀長の車列を狙った犯行だったことを認めた。この車列の軍高官らは全員無事で、代わりに民間人7人、治安部隊員3人が犠牲になった。
 
2月に大統領選に勝利したアブドラヒ大統領は6日の記者会見で、アルシャバーブに宣戦布告する一方、60日以内に降伏した者には恩赦を与えると発表した。

反発したアルシャバーブはその日、地雷で19人、翌7日も砲撃で3人を殺害した。【4月10日 時事】
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【「ライオンに食べられた方がまだいい」・・・ある少女の自由と夢を奪う飢餓の現実
下記は、そんなソマリアで生きる一人の少女とその家族の話です。
少女は家族を飢餓から救うために、本人の意思に反して、結婚支度金を得る目的での結婚を迫られます。

おそらくソマリアでは、ごく“ありふれた”話でしょう。

****ソマリアの少女、飢える一族救うため失った自由と****
4月10日、干ばつに襲われたソマリア南部の村で、アブディル・フセインさんが家族を飢餓から救うために残された最後のチャンスは、14歳の娘ゼイナブさん(写真、左から2番目)の美貌だった。

年配の男性が昨年、ゼイナブさんとの結婚支度金として1000ドル(約110万円)を渡すと申し出た。エチオピア国境に近いドーロの街に親族もろとも引っ越すには十分な金額だ。ドーロでは、国際支援機関が壊滅的な干ばつから逃れてきた各世帯に食料と水を供給している。

だが、ゼイナブさんは結婚を拒んだ。
「死んだ方がまし。茂みに駆け込んでライオンに食べられた方がまだいい」と黒い瞳を持つ細身の少女は、高く柔らかい声で語った。

「そうすれば、私たちはここに留まって餓死し、動物たちに骨まで食い尽くされることになる」と彼女の母親は言い返した。

10代の少女とその母親が交わした会話は、2年に及ぶ干ばつを経て、ソマリアの家族たちが突きつけられている典型的な選択だ。

「アフリカの角」に位置するソマリア全域で、作物は枯れ、白骨化した家畜の死体が散乱している。
この災害は、アフリカから中東にわたって2000万人の住民を脅かしている飢餓と暴力の一部にすぎない。

国連によればソマリアの人口1200万人の半数以上が支援を必要としている。2011年にも似たような干ばつが発生し、何年も続く内戦によって状況がさらに深刻化したため、26万人が命を落とすという世界的にも大規模な飢饉が発生した。現在この国は、ふたたび飢饉状態の瀬戸際まで追いやられている。

犠牲者は今のところ数百人程度だが、3─5月も降水量が改善しなければ、その数は急増するだろう。見通しは楽観を許さない。

米国のトランプ大統領が国際援助予算の削減をちらつかせるなかで、国連は、ソマリア、ナイジェリア、イエメン、南スーダンの4カ国における干ばつと紛争により、第2次世界大戦以降で最大となる人類の集団災害が現実化しつつあると指摘する。

オブライエン国連事務次長(人道問題担当)は3月、安全保障理事会に対して、「私たちは歴史の臨界点に立っている」と述べた。「国連が創設されて以来、最大の人道的危機に直面しているのだ」

国連は7月までに44億ドルの資金を必要としているとオブライエン事務次長は語る。だが、これまでに国連が受領したのは5億9000万ドルに過ぎない。

<辛い選択>
統計数値には表われないが、家族たちは日々、生き残るために胸を締め付けられるような選択を余儀なくされている。

フセインさんは、ゼイナブさんの自由を、彼女の姉妹の生命のために売り渡した。
「とても辛い気持ちだ」とフセインさんはロイターに語った。棒とボロ布、ビニールシートでできた粗末なテントには、彼女と14人の親族が身を寄せ合っている。「あの子の夢を終わらせてしまった。しかし結婚支度金がなかったら、私たちは全員死んでいたはずだ」

ゼイナブさんの手は染料の色に染まり、10代の子供らしく、自分でした落書きの跡がある。ぴったりとしたスカーフを頭に巻き、一番下にラインストーンで装飾を施したズボンの上に、長い淡褐色のスカートを履いている。内に秘めるのは鉄のように強固な意志だ。彼女は英語の教師になりたがっている。学校を卒業したいと思っている。彼女は結婚などしたくないのだ。

「私が求めているのは、こんな状況ではない」と彼女は言う。2歳の甥は裸で砂の上に横たわり、その弟である赤ん坊が弱々しく泣いている。

ゼイナブさんの夢の引き換えとなったのは、20人の姪や甥たちの命だ。彼らの母親はゼイナブさんの3人の姉で、若くして結婚したが、いずれも夫に死別するか離婚している。他にも、心配事でやつれた兄や、すきっ歯の妹、それに中年にさしかかった両親がいる。

かつて一家は牛やヤギを飼い、3頭のロバを馬車につないで移動手段として使っていた。だが家畜たちは死んでしまい、彼らがこの状況から逃れるための唯一の希望はゼイナブさん自身となってしまった。

1ヶ月にわたって彼女は結婚を拒否し、ふさぎ込み、部屋に閉じ込めておくことを家族が忘れたときには逃げ出した。だが結局、家族のあまりの困窮ぶりに、彼女の気持ちは折れた。

「娘に強制したいとは思わなかった」と母親は憂鬱そうに言う。心労のために額には皺が刻まれ、娘は硬い表情のまま隣に座っていた。「ストレスで眠れなかった。あまりにも目が疲れていて、針に糸を通すこともできなかった」

支度金を受け取り、祝福を受けて結婚は成立した。ゼイナブさんは3日間、婚家に留まった後、そこを逃げ出した。

家族が自動車を借りて40キロ離れたドーロに移ったとき、ゼイナブさんも同行した。彼女は地元の学校に入学した。簾(すだれ)で壁を作り波形の鉄板で屋根をふいた教室には、教師が10人、生徒は約500人いた。
夫は後を追ってきた。

「彼は、自分を拒むなら金を取り戻さなければならない。さもなければ力ずくで彼女を取り戻す、と言った」とザイナブさんは静かに語る。「金を返せ、さもなければ夫としてお前のそばにいる、というメッセージを彼は私に送ってきた」

家族には支度金の一部でさえ返済することはできない。彼らのわずかな財産は、シミの付いた発泡素材のマットレスが2枚、調理用の鍋が3つ、その場しのぎのテントを覆うオレンジの防水シート、たったそれだけだ。他には何も売るものはない。

そこで、ゼイナブさんの英語の教師であるAbdiweli Mohammed Hersiさんが仲介役を買って出た。干ばつのために学業を諦める生徒を彼は何百人も見てきた。

<結末>
Hersiさんはゼイナブさんを地元の支援団体のもとに連れて行き、彼女をイタリアの支援団体に紹介した。欧州連合(EU)の資金提供者と一緒に視察に訪れていた地域コーディネーターは、介入を決意した。

「この少女のために何かしなければならない」。祈祷への呼び掛けが屋根を通して聞こえてくるなか、説明を聞くために集まった同僚たちのために茶を注ぎながら、Deka Warsameさんはそう語った。「さもなければ、毎晩レイプが行われることになってしまう」

彼女のスタッフは献金を募り、支度金の返済に足りるだけの現金を集めた。そしてゼイナブさんに、支援団体が両家の男性会合で仲裁を行うと語った。彼女の夫が証人の前で離婚を認めるならば、彼は支度金を取り戻すことができる。

それを聞いて、うつむいていたゼイナブさんは、さっと顔を上げ、 「私は自由の身になるの」と尋ねた。【4月17日 ロイター】
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上記の少女の場合は、救いの手も差し伸べられたようですが、ほとんどのケースではそうした“救い”もありません。

ターキッシュ・エアラインズ(旧「トルコ航空」)の試み
国内あるいは同じような国における災害・事故・テロなどには過敏なほどに反応する欧米・日本の社会ですが、飢餓と戦乱で生きるすべを失ったアフリカの小国の現状には、ほとんど関心を示さないのが現実です。

長年の援助疲れもあるでしょうし、「自国第一」の風潮の蔓延もあるでしょう。何より、そうした悲惨な国が多すぎ、感覚がマヒしてしまっていることもあります。「ああ、またね・・・・」

そうした反応が鈍い国際社会にあって、数少ない“支援”に関する話題が。

****ターキッシュ・エアラインズ、ソマリアに貨物専用機で人道支援物資を輸送****
ターキッシュ・エアラインズは2017年4月5日(水)、食糧危機に直面するソマリアへの支援物資輸送機の要請に応じ、イスタンブール/モガディシュ間で人道支援物資を搭載した貨物機を運航しました。

Twitterで著名なジェローム・ジャー氏がソマリアへ定期便を運航するターキッシュ・エアラインズに対し、ソマリア食糧支援の輸送機を要請する動画を投稿し、世界中から大きな反響を呼び、ハリウッド俳優らも巻き込んだ拡散につながりました。

ターキッシュ・エアラインズもこの行動に対し、6カ月にわたるソマリアへの人道支援物資、計200トンの輸送を支援すると発表しました。

この支援発表から間もなく、100万米ドル達成を目標とした寄付金集めが始まり、22時間で104カ国、16,000件の寄付が寄せられ、目標を達成したのち、15日目には125カ国、80,000件の寄付、調達額は240万ドルとなりました。

4月4日(火)夜にターキッシュ・エアラインズのA330-200貨物専用機がイスタンブールを出発、ソマリアへタンパク質強化乳児用粉ミルク65トンを輸送しました。

モガディシュでは、現地NGOの代表、フォウシヤ・アビイカー・ヌル厚生大臣、モハメド・アブデュラヒ・サラド輸送・民間航空大臣など政府高官などに出迎えられました。

同社はソマリアと世界を結ぶ唯一の民間航空会社として、その社会的責任は大きいとして、引き続き協力していくと述べています。【4月12日 Fly Team】
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国内人権状態に関して欧州・EU諸国からはとかくの批判もあるトルコですが(憲法改正承認で今後の“独裁”傾向への懸念もあります)、現実問題として多数のシリア難民を国内に受け入れ、近隣の同じイスラム社会へのこうした支援活動も行われているようです。

トラウマから解放された?アメリカ
一方、アメリカ・トランプ政権もソマリアへのアクションを起こしていますが、こちらは人道支援ではなく軍隊の派遣です。

もちろん、長期的には、戦乱を収束させることがソマリア社会復興の大前提となります。

****<米軍>ヘリ撃墜事件以来、ソマリアに通常部隊派遣へ****
AP通信は14日、米軍がアフリカ東部ソマリアに通常部隊を派遣すると報じた。通常部隊の派遣は、1993年に起きた米軍ヘリ撃墜事件をきっかけに全面撤退して以来となる。
 
約40人からなる部隊が派遣され、イスラム過激派アルシャバブの掃討作戦を展開するソマリア軍に対し訓練を実施する。これまで米軍の支援は、小規模の軍事顧問団などの派遣を除けば、無人機による空爆やミサイル攻撃に限られていた。
 
米軍は93年に首都モガディシオでヘリを撃墜され、市民が米兵の遺体を引きずり回した事件を受けてソマリアから撤退を余儀なくされた因縁がある。
 
米国防総省は先月、トランプ大統領が米軍によるアルシャバブへの空爆強化を承認したと発表していた。【4月15日 毎日】
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1992年当時、ソマリア戦乱は現在以上の混乱状態・無政府状態にありました。
その惨状にジョージ・H・W・ブッシュ米大統領は退陣を間近に控えた92年末、国連安全保障理事会の決議に基づき、米軍主導の多国籍軍ソマリア統一機動軍(UNITAF)を派遣しました。

****ソマリアの惨状を世界が見捨てた訳****
内戦激化で大量の難民が生まれ飢餓も慢性化しているが、米軍も国連も助けにこない

1992年当時のソマリアは最悪の状況だった。内戦で無政府状態が続き、武装集団が国連の援助物資を略奪。全土で180万人が飢えに苦しんでいた。
 
そこへ登場するのが、米軍主導の多国籍軍だ。インド洋には援助物資を積んだ米軍の輸送艦隊が現れ、空からは米軍の攻撃ヘリが物資を運ぶトラックを援護。武装勢力の動きを監視するために米軍の偵察機が首都モガディシオ上空を日夜旋回した。(後略)【2009年11月25日 Newsweek】
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しかし、【毎日】記事にあるように、93年に米軍ヘリ「ブラックホーク」が撃墜され、市民が米兵の遺体を引きずり回すという事件が起きます。

以来、アメリカはそして国際社会はソマリアから手を引き、ソマリアは破たん国家の道を歩むことになりました。

その後、状況の変化はいろいろあったものの、アメリカはソマリアに関しては93年の事件が“トラウマ”になっており、なかなか関与しようとはしない・・・とも言われてきました。

二十数年を経て、ようやく“トラウマ”も薄れてきたのでしょうか。

もっとも、今回の派兵は40人規模ということで、できることは極めて限定的です。
「自国第一」を掲げ、海外への援助も削減しようとしているトランプ政権には、あまり大きな期待もできません。

シリア攻撃を決心させたともいわれる2枚の写真でトランプ大統領の心に人道支援に対する共感が大きく芽生えた・・・という話なら別ですが、そういうこともないでしょう。
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