杏子の映画生活

新作映画からTV放送まで、記憶の引き出しへようこそ☆ネタバレ注意。趣旨に合ったTB可、コメント不可。

後宮の烏5

2022年01月24日 | 

白川紺子(著) 集英社文庫

高峻は寿雪を救い出すため、もっとも険しい道を選び、進んでいく。この秋、宮中は慶事に沸いた。同じ頃、先の騒動の影響で夜明宮は、ひっそりと静まり返っていた……。烏妃はひとりで在るもの。先代、烏妃の戒めが、寿雪の胸を刺す。だが寿雪は、抱えたものを守り通すため、突きつけられた烏妃としての切ない運命に対峙することを決めて――。

 

第一話 笑う女

夜明宮を訪れた飛燕宮の古株侍女に頼みを押し付けられた寿雪が、へき邪を施すためにやってきた鵲巣宮で、長勺松娘(ちょうしゃくしょうじょう)という侍女にうっかり声を掛けてしまったことから、彼女の夢に夜毎現れる赤い顔の女と化粧箱の関係を調べることになります。蟄居中の寿雪は表立っては動けないので、温螢の機転で冬官の千里の名を借りて共に調査を進めると、長勺氏の祖先に起きた哀しい出来事が判明します。赤い顔の女は子孫である松娘に危険が迫っていることを教えているのではと推測した寿雪が、急いで松娘を呼び出し会いにいったたその時、飛燕宮の屋根が崩落します。寿雪は松娘の命の恩人なのに、この恩知らず娘は、寿雪が屋根を落としたのだと誤解して怖がり逃げてしまうのです。全くもう! 少し前まで崇拝の対象だったのが、一転恐ろしい存在に変わっていくきっかけの出来事になったようです。

「4」で晩霞の懐妊が明かされましたが、同時期に燕夫人黄英も・・まさかのW懐妊って 外戚の勢力のバランスまで考えての同時懐妊を目論む高峻の政治力というか、皇帝業への真面目過ぎる責任感とか、色々見えてきますね。生まれてくる子たちの性別はこの段階ではわかりませんが、ひとまず「お勤め」を終えてホッとしているなどは、妃たちへの愛情からの行為ではないとこの時点では、妃たちの懐妊について何ら嫉妬の感情は起きない寿雪。むしろ高峻と負の感情を共有する令狐之季に嫉妬しています。

 

第二話 黒い塩

高峻は前王朝の遺臣の羊舌慈恵(ようぜつじけい)を宮中に取り立てることを決めます。使者に立った令狐之季(れいこしき)ですが、初めはきっぱり断られてしまいます。ところが慈恵は、高峻から贈られた燕の木彫りを見て考えを変え、寿雪が彼の娘の瑛(えい)が何故死んだのか解き明かしてくれたら出仕すると条件を出します。高峻は寿雪の出生の秘密を敢えて慈恵にだけわかる謎掛けをしたのでした。羊舌氏は杼王朝よりも前から宮中に出仕をしている一族で、欒王朝とも深い繋がりがありました。高峻は慈恵を政治的な面だけではなく、寿雪を守る後ろ盾にしたかったようです。

瑛のことを調べる中で、恋人を殺された瑛が命と引き換えに殺した相手を呪詛して死んだことがわかります。黒い塩とは藻塩のことで、神儀や呪詛に用いられるらしい。 もちろん慈恵は真相を知っていて寿雪を試したのね。出仕した慈恵に、高峻は寿雪を烏漣娘娘から解放して自由にし後宮から出して国外に亡命させようとしていると打ち明け、寿雪を守って欲しいと言います。既に友情以上の感情を抱いていると思える彼ですが、寿雪のためにと辛い選択を敢えてするのね。

 

第三話 烏妃の首飾り

寿雪を烏漣娘娘から解放するための調べを進める中で、過去に香薔の結界を破ろうとした烏妃・序寧(じょねい)がいたことが判明します。しかし失敗して彼女は死んでいました。彼女の遺品の序氏に伝わる首飾りから、解決の手がかりが見えてくるお話です。新月の苦しみに耐えきれず烏妃は総じて早死にしているということで、これまで136人の烏妃がいたという 彼女たちの墓の話がチラッと出ますが、第四話への伏線にもなっていたとは 序寧の招魂が何故か出来なかったため、手助けをしたという巫術師・五生を招魂した寿雪は、彼の裏切りにより計画が失敗したのだと知ります。しかし、序寧が烏漣娘娘の半身のありかを首飾りの伝説をもとに推測していたのではないかということもわかったのでした。

高峻は寿雪に、自由になったら霄を出て阿開(あけ)の国に行けと言います。「罪人でもないのに国を出ろというなら、それは檻が変わっただけではないか」と怒る寿雪を前に、苛立ちを見せる高峻。怒りや苛立ちの理由も心の底で気付いている二人なのね

 

第四話 破界

白雷が協力を申し出てきます。でも彼は隠娘を喰わない代わりに杼の血をひく寿雪を巫女に欲しい、烏を欺き殺したいと目論む鼈の神の命で動いていたのですが

何も知らない花娘が、寿雪のために後宮の妃たちを集めて催したお茶会の場面は、色とりどりの着物と美味しそうなスイーツの描写が楽しいです。束の間の安らぎですね 

夜明宮を訪れた高峻は「そなたは私の半身なのだ」と告げます。寿雪が自由に生きるためには国を出なければなりませんが、それは高峻との別離を意味します。頭ではわかっていても、心が受け入れ難いのです。でも、高峻の言葉に、寿雪のわだかまりが溶けていきます。

ともあれ、役者が揃い、香薔の封印を解く儀式が行われます。順調に進み、寿雪の手で封印が破られたかと思った次の瞬間、更なる香薔の禁術が襲い掛かります。塚から甦った夥しい歴代の烏妃たちが寿雪に迫ってきたのです。禁術により囚われていたため三話で序寧の招魂が出来なかったのですね。大量のゾンビの群れの中に麗娘を見つけ絶望を覚える寿雪でしたが、麗娘は寿雪が封印を解くことを予期していて、この禁術の呪詛返しをしていました。麗娘は死ぬより苦しい新月の夜を長年にわたって耐えながら生き延び、寿雪を慈しみ惜しみない愛情を注いだ女性です。二人の間の強い絆が寿雪を守ったと言える感動シーンです。寿雪は骨となった麗娘をかき抱いて地に伏せ泣き叫びます。

ところが、全て終わったように見えたあと、雷鳴が響き豪雨となります。それが止んだ時、寿雪の髪は雨に洗い流され銀色に輝き、その瞳は・・・烏 解放されたのは烏妃ではなく烏??「烏妃は何も望んではならぬ。望みは苦しみを生み、苦しみは烏妃の中に眠る化け物を呼び覚ましてしまう」と言った麗娘の言葉がここに現実となったのでしょうか?

隠娘と衣斯哈が出会うのももうすぐかな?霄国の中だけで進んできた物語の世界もまたまた広がっていきそうですね。

この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 後宮の烏 4 | トップ | ハリー・ポッターと呪いの子 ... »
最新の画像もっと見る

」カテゴリの最新記事