雲は完璧な姿だと思う。。

いつの日か、愛する誰かが「アイツはこんな事考えて生きていたのか、、」と見つけてもらえたら。そんな思いで書き記してます。

火消しのG野

2012-09-22 00:56:47 | 感謝
大阪、阪急梅田駅のほど近く。
少し古びた雑居ビルの高層階......恐らく5、6階でしょうか......
そこにあるアーリーアメリカン調にデザインされた少し広めのバー。
20代の若い人達を中心に人気があって、
カウンターもテーブルも今日も多くの人で賑わっています。
ガヤガヤ......ワイワイ......ガヤガヤ......

そこに、不意に、

カウンター奥のキッチン方面から大きな火の手が上がります!

ボワワワーーっ!!!メラメラメラーー!



「きゃーー!か、火事ぃーーーっ!!」
「に、逃げろーーー!!火事だーーーーーっ!!」
「わんんんきゅあの#$%%$$%&*+!!?!!」



誰が発したかわからないその声をキッカケに、
お店はちょっとしたパニック状態。
火の手はますます強まり、煙もモクモク......と、
ドンドンと!広がり、
店内を覆い尽くそうと迫ってきます。



「エレベーター!」
「非常口!!」
「階段はこっちだー!!」



怒声が飛び交い、
沢山の人たちが店内からビルの外へと逃げ、惑います。
そんな中、
店内で飲んでいた一人の男性客からこんな声が発せられ、
フロアーに響き渡りました。



「おおーーっ!!ここは任せろーーっ!!
火消しのG野の出番やーーーーっ!!
おりゃーーっ!
みんな出口はこっちやー!
身を屈めて出ていけーー!早く!
ココは任せろーーーーーーーーーーーーーーーー!!」



......それがG野さん。



この時は
「駆け付けた消防士さんにもG野さんが指示を出していた姿を見た、、」
という人もいました。
おそらくコレも間違いのない話でしょう。
この時から数か月。
ついたあだ名が......



「火消しのG野」



G野さんの体はとても大きく。
常にレスラーのように鍛えられています。
昔は大阪、ミナミの繁華街で上下真っ白のスーツを着込み、
アブナイディスコの「セキュリティ」もしていたようなツワモノ。



阪神大震災の時、被災地西宮にあったG野さんの自宅は半壊。
G野さんは身内の安全を確認すると、その後、
近所の家々の瓦礫を掻き分け、掻き分け、
どかして、どかして......多くの人を助けていました。
水もパンも大阪から毎日のように運んで
近所の人達に分け与えていました。



少し落ち着いた頃、同様に被災して、
それぞれ苦労していた僕達が集まって色々な話をしていた時に、
G野さんは一言、僕にこう言いました。



「あんな、UZMET。男は体鍛えとかなあかんで。
いざという時役に立たん」



G野さんはいわゆる「イベンター」という業種で、興業屋さん。
コワーイ修羅場の数々もタフにくぐり抜けて来た男。
歴史ある大きな会社に勤めていて、
今はACPC(全国コンサートプロモーターズ協会)の
理事も務める偉い方。

新入社員で社会人一年目。
突然の大阪赴任を言い渡されて、仕事も土地も、
まさに右も左もわからなかった僕に、働く会社は全く違えど、
僕の担当するアーティストやライブ、イベントなどを通して
会社の壁を越え、
色々なことを取り払った中で教えてくれた大先輩。
いつも怒鳴られ、蹴飛ばされながらも、
もう二十年のお付き合いをさせてもらっている恩人です。
互いに業界も変わらず、二人とも東京で働くようになった今でも、
その関係は変わらずに続いています。



今日、そのG野さんに食事に誘われました。
なかなか互いのスケジュールが合わなくて、
本当に久しぶりにお会いしたのですが、
相変わらずのとても厳しい教え!?
こんな所ではとても書けないような話!?
などで盛り上がりました。
そして......



「UZMETさ、
ちょっと最近お前に勧めたいことがあんねん。マジで。」

「? なんすか? それ!?」

「あのな、俺も50超えたやろ。
子供も二人、もう大学も行かせて自立させたし......」

「。。。」

「でな、新しく始めたことあんねん。
今すっげーはまっててな。
それとにかくオモロイねん。それ。
それ勧めたいんやけど......おまえも一緒にやらへんか?」

「???なんですか?それ?」

「ボクシング」

「うぇぇぇぇーーーっ!?
ご、50超えてやることっすかーーっ!?」

「アホ言われるから誰にも言わず、
ズーッとだまってたんや!あほ!」

「うぇぇぇぇーーー!?
アホやーーー!!アホすぎるーー!」



まぁ、これ以上は長くなるのでココでは記しませんが。
とにかく
「ボクシングや!!」
と、そうのたまわっておりました。
50にして右のコブシをいくつか潰していて。
何やら左肩の靭帯も痛めていました......アホや!(><)

実はボクシングは昔少しかじっていて、こんなことがあって......
などと、僕は話しつつ、
そのありがたいお誘いは「一旦保留」させてもらいましたが、
たぶん、G野さんの真意はそんなところにはまったく無くて......
言いたかったことはきっとこういうことです。



「おまえ最近元気か!?大丈夫か?
お前はいつも何かを真剣にやってなあかん人間や。
つーか、人はみんなそうや。
生きている限りそうや。
どんだけ年取ろうが何かやれるうちは何かやらなあかん。
そこ大丈夫か?
わかってるか?ん?
ちゃんと頑張ってやっていることあるやろな?ん?
大丈夫か?」



わかってますよ。G野さん。
僕はあなたに仕事のイロハを教わったのですから。
わかってます。



G野さんは明日も伊豆、
下田で某大物アーティストのライブイベントがあるらしく。
準備のため、出張荷物を持ってそのまま下田に出かけていきました。
きっと忙しい中、時間を作って食事に誘ってくれたのだと思います。
別れ際、それぞれ反対方面に向かう地下鉄のホームで握手を交わし、
僕はこう言いました。



「色々頑張ってますから、、大丈夫っす!
今日はありがとうございました!」



大きな男、G野さんはニコッと笑って、
片手を上げながら反対ホームに消えていきました。



G野さんと見る仕事の風景は大体いつもこんな感じ。。


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