tamiのブログ

このブログ・・・妄想ー空想大好きな私が、勝手に楽しんで・・・勝手に文字にしています。ボロボロですが(笑)

かごのとり 16

2018-08-31 08:15:01 | かごのとり

久しぶりのラフな自分の服装に苦笑いだった・・・どれだけスーツで自分を締め付けていたかと笑うしかない。
早々に出た彼女は妹が眠る場所に向かった。

静かな空間・・・今まで過ごしていた喧騒さはない・・・本当の自然の中に浸れる事に笑み、花を手向けた。

『誕生日に来れなくてごめん・・・大丈夫だから心配しないでね・・・』
そう言いながら辺りの景色を楽しんだ。
薄れそうな妹の顔・・・笑みながら飾った写真を眺める彼女だった。

新たな誓いを立てる・・・
ずっと自分を作り近づいては何かを探すように調べていた・・・好みから行動範囲・・・あらゆるモノも取り合えずと集めた。

日を要して、やっと それぞれの場所が把握出来てきた。
顔見知りのはずの人達さえ、似てると最初に呟き驚くだけで違うと身内から否定されれば簡単に納得し今日まで来ていた。

本部長の動きに感謝する・・・軽く引き受けるが調べは詳細まで徹底する。
相手を知り初めて向き合うという彼だったから出来た事でもある。

不正も気にせずに頼まれた事だと引き受ける・・・大きく揺るがす事だけは防いでいた事に気付いた。
提出しながらコピーしていく・・・集まる数の多さに驚きながらも、いつかの為だと口は閉ざした。

当時の関係者は散らされて見つけても、その場に居ない・・・完全に散らした事でプロという粋に頼んだ気がした。

それでも見つからない人もいる・・・ようやく見つけた弁護士・・・兄弟が作った事務所で時々していた事を知った。

あまり表へ出ず裏方のような仕事に、当時の辛さは残っているのだろうと思えた。

聞きに行けない気もして、声さえかけれず様子見をしては迷いが生まれ・・・呼び覚ます怖さは同じなのだろうと諦めて帰る日々だった。


遠目から、今はと眺めていれば見知る人の姿に驚いた・・・普段とは違う出で立ち・・・通勤している車でもなかった。

急いで車から飛び降りた先に、あの弁護士がいた・・・慌て・・・驚き・・・引き返す姿に彼を拒否しているのだと思えた。

弁護士を止め話をしていたが、彼は弁護士を車に乗せて去っていった。

どんな繋がりかと考える・・・それでもフッと笑えた自分がいた。
どんなではない・・・自分への興味・・・そして自分を担当していた弁護士・・・それが絡むのだ。

確実に自分との何かの繋がりはあったのだと思えたが、それは何処とという思いが過った。

一つ線を引いていた・・・絶対の信頼は持つなと自分へ言い聞かせ仕事と割り切ってもきた・・・それで良かったのだと改めて思えた自分に余計に安堵したのだった。




私用だが付き合えとランチに連れ出される彼女は訝しげた。
個室の前にあった靴に・・・覚えがあった画像が甦った・・・彼は自分を試すのだと。


『お待たせしました』
すまなそうに呟く彼は中へと入り込んだ・・・始まる・・・そんな気がして、頑張れと自分へ言い聞かせる。
一呼吸おいて彼女も中へと入り込むのだった。

目に見える程に焦り、項垂れたようにもみえる人・・・自分を弁護した人は悲し気な顔で自分を見ていた事に気付く。

『あの・・・』
弁護士の態度は止めて欲しくて、取り合えず声にしてみれば 小さく謝り彼へ視線を戻した。
理由が知りたいと彼を眺め、目の前にいた人を眺めた。


不思議そうな顔で驚いた・・・これで本命かと諦めるだろうと思えたのに、初対面だという様子だったのだ。

繋がりはあると確信もしていたのに、自分が想像していた姿にならない彼女を見返した。

『本部長・・・席は外しますから、お二人で話されたら如何ですか?』
そう言った彼女だった事に弁護士が驚いていた・・・何だと様子を眺め、彼を見返し返事を待った。

『こちらは待原弁護士だ・・・』
紹介からかと驚くが、そうかと彼へ視線を向けて会釈した。

『 ・・・初めまして。幸坂の秘書をしております葉月と申します。
申し訳ありません、お見受けしておらず失礼致しました』
『 ・・・』『 ・・・』
二人の声もない様子に何だと眺めた彼女だった。

『業務に関係した相談で同行を?

・・・これはプライベートでしたか?社用でしたか?』
『 ・・・』
どちらも答えずに迷ったが、席は外そうと会釈する。

『どちらにしても私は必要ないかと。申し訳ありませんが休暇に戻らせて頂いても宜しいですか?』
『 ・・・』

『それと、私用の携帯で呼び出す事は拒否させて頂きます。
私にもプライベートはあり、予定がずれていますので・・・
本部長、宜しいですか?』

『 ・・・いい』
思わず呟いたのだろう彼に礼をした彼女は丁寧に弁護士へ挨拶をすると部屋から出たのだった。

本人だったかという声は微かにしたが、今はバレる訳にはいかないと早々に離れる彼女だった。



そのままに予定していた事で出掛けたが・・・何故、自分の居場所を知るのかと驚いた・・・それでも彼の場所から見えない・・・ならば挨拶しようと歩き始める彼女だった。

『尾行(笑)してましたか?』
ベンチで休んでいた幸坂・・・偶然だと不意に声をかけられ驚いたようだった。

『サクラちゃん?』
『あー会社の上司(笑)』
『へぇ(笑)。姉がお世話になってます・・・迷惑かけてませんか?』
『し、してない・・・と思いたい・・・』
小さくなる声に苦笑いをして彼は葉月の隣で笑っていた子へ笑みを浮かべた。

『してないよ(笑)。
それより買い物を一緒に来るなんて(笑)姉さん子なんだね』
『あー(笑)買って貰う約束だったんで・・・友達もいますから』
『そうか(笑)』

『(笑)では、失礼します』
『あぁ(笑)』
引き止められそうな気もした彼女は、ハルトを促して離れていった。

仲の良い関係だと後ろ姿を眺めていた・・・

『どんな関係?』
『(笑)上司と言ったわ』
『早瀬さんは?』
『何でソコが出てくる?』
『そんな関係じゃない?』
上司だと笑ってふざける彼女に、勘弁だと離せと笑うハルトだった。


下の階の店へ入り込んだ二人・・・そこは紳士服が揃う店だった事に驚いた。
弟が友達と言った相手と恥ずかしそうに店内に並ぶスーツを眺めていた。

シャツやネクタイを迷わずに選び出す彼女・・・それは嫌だという仕草はあれど選んでくれる恥ずかしさの顔に口を引いて眺めた。

試着室から出た二人・・・初めて着たのだろう姿に笑う彼女の笑みを眺めた。


『観察されてるな(笑)』
隣で品を眺めながら呟く人に、そうだと小さく呟く。

少し前にメールは入り居場所は教えていたが、既に知らせはあったのだろうハルトとタケルの態度に笑いながら選んでいた。

成人する二人の祝いに着るスーツを買いに来ていた彼女・・・アキは別の場所でデートをしていると聞いた。
早瀬は同僚と数点のシャツを買い店から出て行った。

迷う二人に呆れ眺めながらレジカウンター近くのソファーに座り待った。
色んなタイプを着込む・・・不思議と一時に着るだけのスーツ選びは女の子のようで面白いと眺める。

違うと笑いクビをふる・・・やっと様になる二人の姿にOKと立ち上がった。
礼をした二人は店を出た途端、彼女を荷物持ちにさせて離れていった。


謝りながら隣へ並びだし歩く事に笑った。
『本当に悪かった。俺の知る人だと思えた・・・いや、思い込んでた』
『 ・・・大事な人と』

『昔・・・真実を知りたくて探してた人に君は瓜二つだ・・・
恐らく名を替えてと思っていたが・・・突然目の前に現れて焦った』
『近い方ですか?』
『いーや、赤の他人だ・・・』
不意に声音が代わり、探す人との間柄は読めた気がした。

『納得のいかない事は多く探し調べても証拠は見つからず』
『本部長(笑)。それは私に話しても大丈夫な事でしたか?』
『 ・・・』
そうだったと会話を止めた葉月を眺め苦笑いをすると前へ向き直し歩いた。

『最後に確認したいが・・・』
『どれだけ似て・・・』
『すまない・・・より信用したいと勝手に・・・だから頼む、答えてくれ』
『 ・・・どうぞ』

『 ・・・命日・・・それは妹さんの・・・』
『 ・・・妹って・・・
そういえば面接の時にも聞かれましたね。同じ人なんですかね・・・でも本当に妹はいません。

事故で亡くなった両親の命日でした・・・自分を生きる事で精一杯だったので少し休みを頂き行ってきたんです』

『 ・・・』
『本当の両親です(笑)。履歴で知ってるでしょうが施設で育ちました・・・それでも預けられてて・・・大人になってみれば既に他界してましたけど』
『悪かった』
『いえ・・・
その、探している方は社員だったんですよね』

『調べた?』
『(笑)専務や服飾部門の係長まで・・・入社してから、確認するように観察されましたので・・・』
『本当に似てるんだ・・・』
『皆さんへ何をしたんですか?本部長へも』

『俺じゃない、あに・・・』
『 ・・・本部長と近い方だったんですか・・・会わないように気を付けますね(笑)』
『会えないさ・・・』
それは小さな囁きだった・・・

『(笑)気付いてると思うが口は閉じて知らぬを通してくれ』
『本部長?』
『詳細の理由だ・・・』
『 ・・・聞かずにいたら、接待がやり易く事を運ぶのに便利だと思ってました・・・今ので別の理由が沸きましたけど・・・』

『 ・・・』
『お金は必要なので、稼ぐ為に黙ります。巻き込まず・・・手早く・・・ご自分で纏めてくださいませ』
立ち止まり彼を見て呟いた。


二つのショップ袋を肩へかえた彼女を眺めながら、ミスした自分の言ってしまった言葉に苦笑いしかなかった。



驚きしかない・・・自分が殺したと言われた人の弟だった・・・
名前も全く違う・・・死んだ人との居場所さえ違った・・・探せなかった理由が目の前に落とされた事に驚くしか出来なかった。

それでも兄を殺した自分を、よく知らないふりをして観察してきたなと関心した。

仕事の上手さで簡単にこなす・・・相手を知る必要があると全てに詳細を集め瞬時に流れを作る腕があった。

本来は必要ない裏の数字がある書類さえ、違和感が残れば出せと・・・無ければ出来ないと小さく呟き集めていたのだ。

それを有効に使い契約へ持ち込む・・・言葉で濁し牽制する・・・言葉巧みな本部長だと驚いた事もあった。
その間の自分への関心・・・関係者が近くなる怖さが身に染みる・・・

酔った弾みの口の軽さは送迎で聞き出した・・・繋がる場所での接待はレコーダーをしかけた。

当然ながら当時の呟きからと・・・どれだけ似ていたかと声にすれば相手は濁すが、見えなくなると声に出た。
驚き、宥め納得し簡単に終わりは告げた事にムカついた。

最近は身内から言われたのだろう彼女が近づき始めた。
それでも刑務所へ行った事は一つも声になく、明らかに濁していく彼女だった。

怒りを押さえる事で精一杯だった・・・そんな自分も嫌だと、気持ちを切り替えるが・・・沸き起こる事にムカついた。

それを剥ぎ取る人が現れる・・・久しぶりという笑みで自分の気を忘れさせてくれる人だった。
バレたら困る今の自分なのに、振り払えない怖さは黙るしかなかった。

それでもいいと、わざわざ声にする・・・赤いランプが急速に回るのに、自分から払えなかった。

抱き寄せられた自分の落ち着きは不思議と気持ちは楽になり・・・それでも利用していると、そんな自分が嫌だった。

『泣くな・・・泣くなら自分家の風呂で泣けよ・・・辛いと声にしてみたらいい・・・嫌だと騒いで寝たらいい・・・

我慢しないでいい・・・誰も居ない場所を確認してから晒けだせばいい・・・
少し(笑)楽になると気付けよ・・・』

優しい声音が自分から涌き出るモノから離してくれる人だと思えた・・・
預ける事は出来ないと、彼から離れようとした手さえ優しく包まれた。

『近くなったよな・・・タケルから聞いた・・・アキ達まで調べ始めたらしい』
『ま、巻き込んでない?』
『今はな(笑)。いつかはバレる・・・
範囲が広いなら・・・絞れ・・・確実に出来る事を素早く進めろ・・・』

『何処まで知れた?離れた方がいいと思えないの?』
『(笑)辛さよりも愛しさが勝った・・・もしもの好きな仕事は声をかけてもある』
『嫌だ・・・』

『(笑)惚れた弱味は先で強くなれる自分を作ってる・・・関係ないと先へ行ける(笑)余裕でな』
『絶対に嫌だ・・・』

『待原というひ弱な弁護士(笑)、その人が やり直したいと動き始めた・・・だから余計に回りも煩くなった。
別人を通したか?今は本人探しと同時に、当時の証拠を探してると言ってたらしい』

『会った?』
『会わない(笑)同僚に頼んだ。俺が動き難くなるからな・・・
お前が諦めた事で深く隠されずに事は運んでた気もする(笑)、それは良かったのか悪かったのかだが・・・』

『裏の組織が交ざるから危険よ・・・』
『目星はついてる。以外と優秀な弁護士だが(笑)喋りは俺らが刑事だからか?』
『(笑)知らない・・・』

『(笑)自分でしないで分かるから、利用させて貰う(笑)気にすんな・・・』
はーと深い ため息をした彼女に笑み、優しく撫でた彼だった。


かごのとり 15

2018-08-30 08:05:35 | かごのとり

店に入れば、仲間と珈琲を飲んでいる姿があり、視線は重なり彼の笑みに苦笑いだった。

視線は寄越すなと祈るしかない・・・繋がりは今の微妙な目の前の人との関係に繋がる。
何より別で自分を観察する理由が気になった。

何かを知り、繋がりを確認しているような気もしてハヅキも誰だと記憶を手繰り寄せていた。

伸びない会話は時間の無駄と思え、早々に切り上げたのだが・・・彼からのメールに苦笑いだ。

-誰?服装からして面接か?・・・カフェでは怪しいぞ。気を付けろ-

フッと笑うと携帯をしまい新たな自宅へ向かうのだった。




採用の連絡に、密に調べた中で記憶を辿る・・・仕事用に準備したスーツ・・・頑張れと自分へ呟き、彼女は会社へ向かうのだった。

タグをかけ言われた会議室へ足を向ければ、指定された場所へ座り来るだろう誰かを待った。

その間に、目の前に出されていくモノを眺める・・・
『専用のモノだが、私用には使わずに・・・。説明するまで確認するように』

それは携帯やノートパソコン等、業務に使う為の数々だった。
知る人は持参したケースに納めていく事に驚いた・・・
中身を確認しながら、パッドのスイッチを入れた・・・

『社内の情報も多い。漏れたら始末書ではなく弁護士が必要になる。
自己責任で賄ってもらうので覚えておくように』
話ながら時計を眺めドアをあける・・・既に待っていたかのように入り込んだ。

長々とルールという話は続く・・・それでもパッドにもあるといい再確認だと声にしていた。
容姿まで確認されていく・・・自分の目の前に立つ人を眺めた。

『恐らく、君が一番ハードかもしれない。予備の着替えは常に社に持ち込んで置く事。
引き継ぎは、これからして貰うが・・・辛くなったら私へ連絡を』
そう言いながら携帯に入っている場面を出した・・・

『お世話になります』
『今は一人だが・・・もう一人探している所だ。それまでの補佐は付ける』
『普通は二人でですか?』

『社内と外と分かれる。が、本部長の言動に早めに慣れてくれたら助かる。
他の皆へ・・・秘書室待機者は全部を把握して貰う。重役へ着く者はプラス個人の流れも把握して欲しい。
動きは止めない事・・・暫く一人の秘書ですませている。
早く覚え素早く交代し担って貰う』

『それは何をしてる?』
携帯を操作していた彼女に声にした。
『すみません、私の やり易いよう直して分けました。
こちらは何処まで使っていいですか?』

『社内の流れを記す、何処で何の業務かも入ってもいる。
何処で誰がと、君の場合は本部長の動きで変わるからな・・・
調べて行くのも必要になる、増やしても君が分かるなら構わない』
『はい』

聞きながらも、本部長以外の重役の顔を確認していく彼女に驚いた。
今度は社屋の地図を出し観察するように眺めていた。

本当に自分用に扱う事に関心しながら眺め、他の秘書達も眺めるのだった。

激しいルール・・・絶対という確認まで聞く葉月に引き継ぐ彼は驚いた。

『すみません、絶対服従は自分のクビを締めそうなので(笑)』
『それでも(笑)本部長は動くから、見越した先は数多く考えて行動した方がいい』

『分かりました。順番は合っていますか?』
『それでいい(笑)。それと明後日から出張で・・・』
『それは、もう私が行くんですか?』

『室長が今回は変わるが・・・覚えるなら補佐として同行しといた方がいいと思う』
『出張先で待機する方は、いらっしゃらないと?』

『(笑)本部長のナビ扱い・・・食い込む事は嫌うんだ。だから同行となる』
驚き過ぎて声にもならなかった・・・
『それとね・・・女性は恥ずかしいだろうが・・・そのだね・・・何かと言うと・・・ん・・・・・』

『先ほど聞いて話してきました。外が多めの時は社内待機にして頂けると』
『本部長がするかは分からない・・・』
『申し訳ありませんが、生理現象でもありますし(笑)変わりに話して徹して頂けませんか?』

『 ・・・』
『同性なら話せますよね・・・無理ならクビ覚悟で最初に話します』
『 ・・・』
恥ずかしいのか、真っ赤な顔に驚き室長が入ってきても動けなかった。

『拒否したいと?』
『お願いします』
『クビと言われたら?』
『仕方ありませんが、諦めます・・・ですが待機へ回して頂けたら有り難いです。就活は面倒なので』
はっきり言う彼女に苦笑いをして、静かに出ていく室長を眺めた。

『あれは今、聞きに?』
『たぶん・・・』
『自分で話始めたのに照れますか・・・』
当たり前だと呟く人に笑み返した。

『本部長に認めて頂けたのは感謝しますが、それだけ動く場所で女を選んだなら納得はしてもらわないと働けませんよね(笑)』
『 ・・・』

『貴方が続けたら如何ですか?』
『(笑)足りないと毎日言われる日々に戻りたくない!』
静かに声にする・・・そう言い切った彼に笑み、続きをと確認しながら二人は話し合ったのだった。




自分のデスクは久しぶりだと、座り込み靴を脱ぎ捨て足を揉む・・・既に日は流れていた。

『(笑)お疲れさまです』
『お疲れさまです・・・(笑)』
ここで会話をする事はなく、隣にいるのに名を知らなかったと謝った。


『葉月!スカートは?』
突然現れ彼女へ呟く本部長に、室内の秘書達は驚きながら眺めた。
葉月は、いつの間にかパンツスーツへ切り替えていた事で聞いたのかと葉月へ視線も飛ぶ事に彼女は笑った。

『持ってたか?』
『理由をお願いします』
『会食に出ろ』
『花を咲かせるなら社内で見つけて、お連れ下さい』

『面倒だし』
『着替えも面倒です。その後へ響くので』
『向こうは同席だ・・・喋る』
話す人をと葉月を眺め室内を眺めていた。

『得意な方を知るなら、お願いして お連れします。教えて下さい』
『 ・・・』
居たかと戻っていく本部長の彼・・・その対応に驚き皆は葉月を眺めた。

『あ、常務のお嬢さま!』
『部屋に居ますが・・・』
その人を知る秘書が呟く・・・
『前に見合いをしたと聞いてますが・・・室長!お願い出来ませんか?』

会食の相手を知る室長を眺めながらも、下で靴を履き直し動ける準備をしていた。
手はパッドで何かを探しているようだった。

『本部長に』
許可を貰えと言う間に葉月は本部長室へ向かっていた。


『(笑)許可頂けました!ありがとう、ございまーす!』
丁寧な会釈・・・それから常務担当秘書へ頭を下げる葉月だった。

『お詫びに(笑)。先週、お探しのモノは取り置きを頼みました(笑)。
取りに行きましょうか?』
『マジ?』
『偶然(笑)。今週末にキャンセル予定でしたが・・・』

『どこ?』
『(笑)地図を送ります。私の名で』
『了解!(笑)連れます』
そう言うと、素早く出て行く秘書に微笑んだ。

メールのチェックをしながら話していた事を知る・・・あるもの全てを動かして確認していく。

『申し訳ありませんが・・・殆んどが確認中のモノです。繋げたままで、お願いしても宜しいでしょうか』
『貯まった?』
『はい。同時にプリントしてますが間に合いません』

『んー』
『ありがとうございます。先程の件は大丈夫です。午後からのモノは3件まで変更はありません』
『昨日の3番目は?』
『それは白のファイルで全て、左へ置きましたが・・・』

無いのかと驚き立ち上がるが、これかという呟きにホッとして机の上にある書類を分けていった。

その間に出された用紙を纏め振り分ける・・・専用なのだろうケースへ詰め込むと、持つべきモノを手にして出ていった。

戻れば白のファイルが入っていた・・・
『葉月、本部長の動きに合わせてるのか?』
『はい。部屋で変更しなから説明し提出しています。戻しも確認しながら自分が分かるように纏めて持ってきていますが・・・』

『わざわざ?』
『数が多く交ぜない為です。一気になさるので、一件ずつ行くより時間のロスは減りました』
ならいいと話ながら手を止めない彼女を眺め回りを確認していた。



慌ただしい日々は過ぎていく・・・
『本当に、ありがとうございます』
『命日じゃな(笑)』
纏めて貰えていない休みは両親の命日にと頼み込み申請して許可を貰えた事にホッとした。

不定期の休み・・・相手に合わせる事で急に休みを返上したと何かと取れなかった。
休み中の全てを室長へデータを転送する・・・それから頼むと会釈した葉月だった。


今日から居ないと葉月の机を眺めれば、普段は見ない綺麗な状態で・・・机の上は何もなかった事に苦笑いだった。

何より仕事で使う携帯までがあった・・・繋がれど音はない・・・着信はするが携帯は光るだけで消えた。

充電した状態・・・そこにバッテリーだろうモノまでがあり業務は完全に手放した事を知った。

めりはり・・・そのままに徹底した葉月の出来に室長はホッとした。
本部長は、他の重役から回される会食さえ引き受け繋ぐ。

その時間の 遣り繰りの対応に、秘書達は奔走する。
業種が違う場でも担当部下と同じような会話はされ、直轄の部下と思われている。

彼が本部長になり、別部所の本部長が辞めた頃・・・手は足りなくなり臨時で行かせた副社長。
難なく契約へ持ち込める事も増え、指示してみれば遣りこなす彼へ任せてみた。

本来ならずらりと並ぶ会議は、一人で報告し次の業務をつまんでいる事だけを呟く。
次の会議では纏まり契約したか間近だという報告を受ける事で上役は任せようという運びになった。

絡まりは防ぐ為に担当者としての秘書を置いたが、連携は隙間をみせ時々 それさえ自分でする事もあった。
ここ数年は何とか3人で出来るようになって今に至るのだが・・・

彼女が本部長へ着いてから、繋がりは濃く迷いは自分へ報告し時に報せてくる事に関心した。

返事は求めず、本来はという言葉で返せば次からは その言動になっていた。
重なる流れは簡単に、本部長に空ける時間さえ作り他へ回してもいた。

無理と回される指示にも、知る中味で堂々と本部長へ声にして意見まで聞く姿もあり 相性はいいと安堵した。

本来なら 出来の良すぎは上役から反感の目が向かう・・・自分の地位を揺るがす事にもなるが、次に本部長という職へ置ける者はいない事で昇格する事はなかった。

本人も気にせず、出来るならする・・・そういう人だった事で任せ、社長の信頼は厚いのだと思える言動もあった。

社の為に・・・出来る場所で出来る事は受ける・・・そんな言動の本部長を皆は尊敬し敬った。

上3つの位置は家族という輪がある・・・その下2つもだが、秘書が上手く回している為に出来の悪さは噂止まりで守った。

なぜなら社長からの指示があったからだ・・・それでも足を引くひねくれた存在もいて・・・着いた秘書の報告で、今まで凌いで来た事は会長と秘書室しか知らなかった。

個人で雇う秘書の動きも見張る・・・その報告に頭を痛める日々の会長もいた。

家族経営の難しさは知る会長なだけに、優秀な人材を確保したいと日々 時間が出来ると社内の散歩と動き回る・・・秘書室で選ばれた一人が会長秘書と回るという事になっていた。


秘書室の笑みに、嬉しそうに空いた席で室内を観察する会長の姿に皆は苦笑いだ。
人柄は知るだけに仕方ないと手は止めずにいた秘書達もいた。

『(笑)室長、この携帯は止まらないぞ』
『申し訳ありません(笑)、その者は休暇を頂いてます。
くれば違う者へ転送されているので、大丈夫です』

『鍵がかかってるな(笑)』
『それも私は知りません(笑)機密は出せませんし』
『携帯で(笑)そんな事も出来るんだな』
『(笑)はい。本部長秘書をしております』

『持たせないのか?』
『(笑)その状態で気も休めないと、置いて行ったかと・・・』
そうかと笑う会長に苦笑いをして、書類へ目を落とすのだった。

暇そうに引き出しを開ける会長に、隣にいた秘書が驚き眺めた・・・何よりソコには何も入っていない事に驚きは隠せなかった。

『(笑)隣で知らずか』
『はい・・・ですが待機している訳でもないので必要なモノを置かないのかと』
『そうか(笑)。事務関係はここだけで、他は何にも無いのも(笑)凄いな』

ですねと会長へ苦笑いをして笑むが、手が空いた室長が来て仕事へ戻った。

『優秀と聞いた(笑)、にしても菓子一つないぞ?』
『(笑)一番下を』
何だと引いてみれば、小袋の補助食と水のボトルが保管されたように鎮座していた事に口を引いた。

『時間を作り食べさせろ(笑)。真似て倒れたら敵わん・・・』
『はい(笑)。女性なので、十分に』
『ん?女だった?男じゃなく?』
『 ・・・』
『すまん(笑)。葉月という名しか聞いとらん・・・体力は落とすな』

『もちろんです(笑)』
『(笑)本部長は留守か?』
『いえ、出ています(笑)。専務から出た業務の仕上げを』
『 ・・・』
『先月の常務の件は?』
『 ・・・何とか収まったと聞いております』
『そうか・・・』

副社長秘書が会釈する・・・会長の苦笑いに新たな会釈・・・呼ばれていた事に笑い、仕方ないと部屋を後にしたのだった。

社長と違い副社長は、会長が社内に出る事を嫌う・・・理由を作り呼び戻すのだ・・・室長へ視線を飛ばして行く。

丁寧に会釈すれば、室長は次へと仕事に戻るのだった。


かごのとり 14

2018-08-29 09:34:38 | かごのとり

面接会場にいる人達の数に口を引く・・・わざわざ別室へ行かされる訳でもない。

広さはあるので大会議室・・・そう言えばいいのだろうか・・・端で数人が並ぶ場所へ呼ばれた人が出向く。

聞き入れば・・・似たような質問もあれば全く関係ない会話もされている。

多種に必要な会話・・・書類面接で希望部所は出していたからか、その場の為にか集中する質問はされていた。

完全に実力主義なのだろう・・・数人で面接されていたが、聞けば同じ場所の希望の人と分かる。
難関とまで呟きながら会場へ向かう人達の会話で、この会社の出来は知れた。

海外向けの部所・・・書類を眺めながら外国語も容易く質問され、難なく返せば次の質問と繰り返していた。

人をみるのか繰り返す中で戸惑った人への質問もする・・・少し代わった人・・・他の人よりも違う気がした。


自分の名が呼ばれる・・・近場に来て始めて、その場に呼ばれた人は同じ部所への希望を出していた事を知った。
名を確認されていく・・・直ぐに言語は変えられ質問へと移る。

「君の空白の時間は何を?」
「生活をメインに置き仕事をしていました」
「書いてないが?」
「こちらの面接には必要ないと思えたので」

「今回は?」
「生活が落ち着いたので、本来の仕事を始めようかと」
「その生活に問題が出来たら辞める?」
「事によります。ですが安定し揺らぎは大丈夫と来ましたので、集中する事は出来ます」

「言語はどう覚えた?」
「スキルは必要と思えたので」
「だから?」
「社会で・・・忙しい場所で学ぶ方と同じです・・・空いた時間を利用しました。
あえて云うなら使える場所へ出向き確認はしてきました。
答えになりましたか?」

「 ・・・異種だよね(笑)。言語を変えても動じずに答える度胸の良さはいいと思うよ」
「希望した場所なら必要と、昔・・・習いましたので」

『(笑)出来の確認は?』
隣にいた面接官が、程々にと会話を止めた・・・
『生活の中身はプライベートだしね(笑)、会社に属さずにきた理由・・・それが何かを知りたかっただけだ』

『葉月・・・サクラさんか・・・
前の会社に確認はしてみたが、破棄されててね(笑)』
『今は吸収されたと聞いてます』
『小さいからね(笑)飲み込まれる場所だったようだ・・・』

『事務もいけるそうだが・・・希望は秘書室の理由は?』
『その場が自分には向いていると思えたので希望しました』
端では別の面接官が質問をしていた・・・

「(笑)シャインのナナオさんとは、どんな関係?」
反対側にいた人が声にした・・・

「友人です・・・彼女もそう思って頂けているなら」
「いたよね・・・」
「気分転換に(笑)。そういえば、奥でト」
「ストップ(笑)」
「失礼致しました・・・理由を?」
苦笑いをしたが微かに促した人に静かに声にした。

「帳簿の手助けを・・・人の切替で忙しいと聞いたので(笑)参りました」
「どこまで出来る?」
「(笑)足りなければ学びます。どこまで必要かは知りませんので」

「腕がいいと?」
「仕事に支障が出れば自分の場所は消えます。今迄の事は必要と聞いて学んでおりましたので・・・
こちらで必要な条件は知りません・・・概要の範囲は大きいと」

「思ったか・・・」
「はい。業種の多さで、私が出来る場所へ配属はされると勝手に思いました・・・すみません」
彼女の言葉で、そうかと他の面接官達と話し合っていた。

『お前を知る・・・』
静かにやって来た人が、ジッと見据えながら呟いた。
立ち上がり会釈する・・・見返しながら静かに相手を眺めてから視線を下げた。

『失礼致しました・・・私の記憶にはございません・・・失礼ですが、どちらで・・・』
『むかしな・・・』
『私はミスをしていましたでしょうか・・・』

『いや、ハズキ・・・妹は?』
『 ・・・私にはおりませんが・・・』
少し見つめ、丁寧に声にした。
『 ・・・』
『どなたかと』

『調べていいか?』
『構いません・・・お渡ししたモノに偽りも御座いませんので・・・』
『専務・・・調査は済んでますよ?』
していたのかと、他の人達にまで驚いた顔で面接官達を見返していた。

『兄さん(笑)。間違われた事まで調べてるのに、念を押したいのか?』
『あの・・・その理由を・・・教えて頂けないでしょうか・・・』
申し訳なさげに聞いてくる女に驚いた・・・話し方も声音も違う・・・離れた場所から見て似ていると思えた。

近寄れば容姿は違っても見える・・・それでも声にして様子を探ろうと聞いたのだ。

同じ違和感から弟が調べていた事に驚いた・・・自分を離し別人だったと声にされ、改めて観察したが微かな違和感は取れなかった。

何より従姉妹のアンナさえ気付かずにいた姿・・・自分が声にして本当かと眺めていたが、違うと思ったのだろうホッとした顔で業務へ戻っていた。

「(笑)誰と間違われた?」
「すみません。知らないので、お聞きしましたが・・・
あれは教えて頂けないのでしょうか・・・・」
「(笑)な・・・」
フッと笑うと隣の人へ質問を始めた事に苦笑いしか出なかった。


会場から出た彼女は、駄目だったろうと思え次の対策を考えながら廊下を歩いた。
アキからの電話に笑う・・・

『どうだった?』
『駄目だった(笑)。ブランクは大きいかな・・・』
『バレた?』
『んー、誰かに似てるって(笑)そんな感じで言われたわ、教えてくれなかったけど』

『次(笑)探そ!』
『そーする(笑)。そこで暫く働かせてよ』
『いいの?』
『んー取り合えず働かないとね(笑)。家の家賃は払えません』

『(笑)近場にいるの?』
『ん(笑)。ま、暫くシェフとして雇ってよ(笑)何かの縁だしね!』
『(笑)尾行に気を付けて帰っといで』

『さんきゅ(笑)。無理だったら家賃払うから、そこで住まわせて』
アハハと笑うアキに、演技は上手いと声にして切った事に微笑んだ。

新たな電話・・・
『こら(笑)。学校は?』
『(笑)先生が休んでさ・・・明後日の休みに変更になった』
『先生の都合でか(笑)。仕方ない、店を手伝いな』

『いいけどさ・・・面接は?終わったの?』
『(笑)一応ね。取り合えず予定の勉強はしてからにしてよ・・・
あと、今週中に振り込まないと学校へ行けなくなるから早めに行ってきな』

『了解(笑)。父さんが大丈夫ってさ・・・黙るって意味でしょ?』
『(笑)聞いたのね。ありがとうって言っといて。時間出来たら連絡するからって』
『了解(笑)、じゃね!』
『(笑)ん・・・』
切れた電話に笑み、静かに歩き出したが・・・


『葉月さん(笑)』
名を呼び止められた彼女が振り向けば、プライベート方面へ質問をしてきた面接官だった事に苦笑いをして会釈した。

『時間を頂き(笑)ありがとうございました』
『決定は明後日に(笑)。それまでは他へ行かない方がいいと思う』
『はい』
『生活の意味は誰かを学校へ行かせてたから?』
『 ・・・』

『(笑)プライベートは却下?』
『申し訳ありません』
『そっか(笑)。構わないけどね』
含む物言いの多さに、この人の出来を知りたくなった。

どの立場だろうと考えながら眺める・・・見覚えのない容姿は、自分が居なくなってから配属された人なのだろうと思えた。

『今後の予定は?』
『 ・・・』
『少し、時間は作れる?』
『面接会場は・・・』
『(笑)大丈夫。交代してきたし・・・秘書室関係は終ったしね』

そう言いながらも、自分と行こうと促す人を眺め近いと離れながら歩く。
『ごめんごめん(笑)。近いって怒られてたんだよね、俺・・・』
スッと離れ社屋を後にした。


とはいえ隣にあるカフェだった事で、時間を有効に使う人柄だと観察をしている事に気づかれ 苦笑いしかない。

『(笑)それは習慣?』
『はい・・・申し訳ありません』
『君なら何処まで調べる?』
『出来るまでと当時は習いましたけど・・・』

『やり過ぎとか(笑)言われてない?』
『講習でも習いましたけど・・・そこまで気にする上司に会っても・・・』
『(笑)確かにいないね。自分に自惚れそうでね』
『 ・・・』

『(笑)ほら、出来るし』
自分へ指さし笑みながら呟く人を、何なんだと見返した。
『 ・・・』
何処まで演じるのだろうと思え、余計に身構え 目の前に居る人を眺めた。

『仇になりませんか?』
『 ・・・』
どうでるのかと気になり声にしてみたが、聞かれた事に驚いたのか言葉を繋がない彼を見た。

『 ・・・(笑)』
笑うだけの人へ見返すと、光るそれを持ち珈琲を取りに出た。
静かにテーブルへ出し、トレイを隣の席へ置く・・・

気付きの早い女だと驚く・・・自分の上司でもないのに、そのように扱う・・・全てに秘書のような言動だと感心した。

『同行と部屋と(笑)君なら何処を選ぶ?』
『はい?』
『入社出来たらの話(笑)』
『働かせて頂けるなら、どこでも構いませんが・・・
それに同行とはいえ、範囲も広いと想像は出来ません。何より大企業で仕事をした事もありませんので』

『重役のお世話係(笑)、ここなら・・・会食は外か室内。人によって一緒に食べさせる事もある。
中なら外の者との連絡とか確認、それに付随した・・・って(笑)連絡係ってやつかな』

『仕事中で食べるんですか・・・別で待機ではなく・・・』
『より(笑)近いよ』
『 ・・・』
そうかと眺めれば自分を見ながら笑む姿で・・・新たな観察かと苦笑いだった。

『俺?(笑)一応、去年から本部長として仕事はしてるけど?』
『自ら面接官を・・・
あれは、もしかして自分専属の秘書探しで?』

『 ・・・正解。人事部で調べた中でグループ分けしてる(笑)。君の回は重役専用・・・んー個人秘書?(笑)みたいな?』
『書類で分かりますか?』
『だから(笑)面接。そして顔合わせしたでしょ?』

『あーだから、それぞれに内容が・・・』
『ん?気になった?』
『他の皆さんも自分の予習の為に聞かれてますし・・・自分ならと考えるのでは?』
『だよねぇ(笑)』

『 ・・・軽いですね、隠さないと働けませんか?』
『 ・・・』
『クビ? 雇われてませんでした』
申し訳ないと謝りながら見返した。

『 ・・・』
『 ・・・立場が違います・・・
あの・・・私が呼ばれた理由を聞いても?』

『んー自分が楽か(笑)』
『(笑)信用に値しますか?』
『 ・・・』
『(笑)再確認して頂けたなら、私はこれで失礼致しますが・・・宜しいですか?』

『 ・・・いいけど、さっきから確認されてるけど君?』
流すように視線を向けて戻した人を見返す彼女の笑み・・・静かに会釈して出て行く彼女を眺めた。

電話だろう姿・・・一緒に居た人へ話ながら歩き、車で走り去っていった。
彼女を眺めれば、気にもせずに歩いていく後ろ姿だけだった。


かごのとり 13

2018-08-28 09:34:14 | かごのとり

<シャイン>


店の流れを掴んだ頃から、店内へ姿を出すようにした。

新人だと声には上がれど、奥専用と滅多に客へ出さないママ・・・それでもVIPという立場の人達には挨拶をするだけだった・・・

きめの細かい気遣いを体験すれば、少しの期待は小さな隙間を観察するに留めていた。

『ママが(笑)出さないので』
『(笑)あんなに綺麗で?』
『裏方専門(笑)。いいから私と飲みましょ(笑)』
店の子達は会話を外して話題を切り替えた・・・

あちこちで囁く日々を暫く作る事にもしていたのだった。


店内へ身を浸す・・・接待に使われる場所へもママのナナオが彼女を連れ出す。

色んな事に不自由なく受け答えする彼女だからか、好んでナナオへ連れてこいと声にする客が増えた。
聞かれた事も難なく答える度胸の良さはナナオも感心した。

『秘書並みに凄いな(笑)』
『仕事にした事もあるんですって(笑)。小さな会社らしいけど』

笑みながらナナオが呟く・・・場所を聞かれてもシャインと答える彼女に話は止まった。

どんな立場の人達にもナナオは連れ出し席へ交ぜる・・・理由を問われ見習いと濁す事も忘れなかった。

借金の返済と濁し、いつかは昼へ交ざると聞けば興味は沸くのか色んな質問は繰り返された。

あらゆる資格は取れている事を知れば自分の秘書を使い試す人達・・・言語さえ簡単に呟く彼女の腕の良さは感心しかない。

自分の秘書よりも優秀なのだと客は苦笑いし、気遣いの上手い人だと理解した秘書という立場の人達は静止して見習った。

バイトをと促され迎えに来た秘書と話し合う・・・
『専門用語は大丈夫でしたか?』
『(笑)忘れてるかも・・・旅行で言葉は忘れないようにはしてたけど・・・
これは仕事に繋がるんですよね?
会社へご迷惑はかけませんか?』

『 ・・・』
『違う目的も交じるなら、それは犯罪として持ち込みますけど?』
『 ・・・』
『仕事にベッドを使うなら、近い将来は足が揺れるのでしょうね・・・
ママに集金するよう言っとかなきゃ・・・』

『それっ』
『揺らいだらツケたモノは戻りませんもの・・・
信用も消えたなら返済して貰えずでしょ?』

『手が早い人で・・・それでも我が社には必要なんです・・・』
『初めて?』
『いえ、更新です・・・今は濁され・・・』

『目の前に餌を投げられてるのか・・・。
そんな人なら何処かでミスしてるのかもしれませんね、ソコを叩いては如何です?』
『今の時ではないと伏せています』

『そう・・・一気に下げたいって事は危ないの?』
『 ・・・』
静かに車を路肩へ停めた彼を眺めるハヅキだった。

『サクラさん・・・どちらへ浸りたいですか?』
『いつかは表へ出たいだけよ。今回のは先の手慣らし(笑)。自分の為に忘れないように受けただけよ』

『サクラさん・・・』
『夜に浸るつもりはない・・・必要に迫って店に来たけどね・・・』
『それはナナオママにも?』
『言ったわ。もうすぐ完済も出来るし・・・店は終わり(笑)』

『辞めさせられませんか?』
『今すぐ辞めても大丈夫よ?、余裕が出来た生活をしたくて働いてるから(笑)。
わざとに完済してないだけだもの』
自分の言葉に驚いた顔で見返す彼に微笑んだ。

『夜でなぜ本名を?』
『自分だからよ(笑)逃げも隠れもない・・・だけど名字は必要ないしね(笑)それだけで逃げる会社なら狭い場所に止まってたらいい。

腹が据わる大きな会社を探せばいい・・・(笑)それだけよ。
見つかれば浸り自分の力を注げる・・・昼に生きる自分が作られるだけよ』

『貴女へ一任する専務の意味が謀り知れず・・・秘書室は黙ってます』
『(笑)ミスったら私のせいに出来て自分の秘書だけで終わらせられるわね(笑)きっと』
『 ・・・』
やはりと項垂れる彼に微笑んだ。

『秘書に任せる上司は、その上から頭を蹴られるわね(笑)。知る人に告げ口して頑張ると伝えて』
『 ・・・』
『(笑)秘書なら誰が全うか知るのでしょ?先の為に繋いでおかないとね』

楽し気に事を運ぼうと考える彼女に驚いた・・・自分が働く会社でもないのに、ミスする怖さはないのかと眺めた。

確かにとも思え考えるように携帯を眺めると息を静かに吐ききり電話をかけたのだった。


待ち構えた人に会釈する・・・裏で繋ぐ手を切り離す・・・言葉巧みに話す彼女に負けじと声にもした。

『一泊と約束したぞ?』
『仕事はねじ曲げず(笑)正当にしたら、そちらは潤いませんか?
堂々と声に出来ませんか?』
『 ・・・』

『(笑)こちらも・・・準備していないと お思いですか?』
『そ、それ・・・は・・・』
『副社長達が話をしていたので(笑)』
『ん?』

『(笑)秘書は、どの場所にも入り込みます。まして私の今は別・・・その上の方の囁きも知ります(笑)。
今、ここから出たら秘書のこの方へ囁いても私には関係もない(笑)、そう思いませんか?』

静かにゆっくりと話す彼女を、考えながら眺め始めた事に秘書は気付いた。

交渉の上手さ・・・言葉の使い方に関心して聞き入った・・・足りない言葉さえ止めろと自分の膝へ手を乗せて止める彼女にも驚いた。

まるで自分が責任を持つと言いたげで驚くしかなかったのだった。




深々と礼をした彼に微笑んだ。
『今回の事もですけど(笑)巻き込まずにお願い出来ますか?』
『貴女の手柄となり入社出来そうな気がしますが・・・』

『(笑)いいの。まずは自分の今を綺麗にしなきゃ進めないと思う。
頑張った貴方が上司へ話を通せばいいだけよ(笑) 謀り事の始まりで先へ伸ばされたくない・・・』

丁寧に会釈した彼女・・・車を出せと促した彼女は歩道へ佇み自分へ笑み返した。

OLという姿の彼女・・・それだけの佇まいは自分と同じ本職の気もした・・・繋がった自分のクビ・・・それは彼女のお陰で免れた事に感謝しながら社へ向かうのだった。



小指ほどだろう繋がりを確認してしまったハヅキ・・・それでも自分の店を守る為の事だったと気付く。
仕方ないと街を彷徨きながら辺りを観察し眺めながら歩くのだった。

部屋に戻り眠っていたマリナを眺め考えた・・・変な方へ巻き込まれていく事は気づいた・・・全ての信用は不可能なのだと思え・・・それでも助けてくれた今を感謝し、深々と礼をした。


携帯が震え何だと眺めるハヅキ・・・笑みは溢れ声を聞き入った。
アキが呟く・・・直接声にもせすに大丈夫かと自分へ言葉を放る・・・返事は待たずに楽しかったからと暫く話をしてくれた事に感謝した。

『臨時採用枠が出来たから、申込んどいた・・・どうせなら乗り込んだら?
本当は嫌だけど・・・落としたくないけど・・・終わらせる事な可能なら行ってみな・・・』
『アキ・・・』
『(笑)サクラが出来る範囲でね・・・』
『ありがと(笑)』

その日までにと、シャインへ出向き表へ出ると声にした。
何度も謝る人に苦笑いをした・・・それでも微かな繋がりは早くも出来た事に感謝する。

ママは気付いていない・・・店の入り口で自分を観察し、スッと姿を表へ戻した人・・・その記憶は鮮明に思い出された。

自分かと確認は始まる・・・だからシャインから離れようと考えてもいた。
誰かを巻き込む怖さが自分を締め付ける気もした・・・

通帳の数字に暫くは大丈夫という金額は示された。
一人離れる為に行く・・・暫く佇み写真を眺め誓いを立てる。

あの頃に戻れない悲しさ・・・全てを置いて先へ繋げようと彼女は息を吐き前へと見据えたのだった。


かごのとり 12

2018-08-27 08:13:03 | かごのとり

※何となく・・・


久しぶりと素早く声にして、ハヅキはアキと店を始めた。
多種になる料理の数・・・タケルの腕は上がり楽し気な様子にアキを眺めた。

『繁盛してそうだね(笑)』
『ハルトまでするから少し若い子も集まりだした(笑)。まぁ塾帰りだから食べさせて帰してるけどねー』
楽しそうに呟くアキに笑み返すと、静かにハヅキへ呟く。

『呼び名はサクラにした・・・暫く居なかったしね(笑)。噂話もサクラに替えたから・・・本当に大丈夫なの?』
『(笑)名前から探されてもね・・・』
『今の所はないけど・・・アンナの身内から溢れるからね・・・』

『脅してる(笑)。一度聞いてきたから、仕事場で久しぶりだって(笑)叫んできた』
『 ・・・』
『(笑)身内にも黙るって』
どうだと笑うアキに苦笑いをしたのだった。

『サクラ(笑)』
叫びながら走りより抱きついたのはハルトだった事にハヅキが驚いた・・・

『(笑)いつの間に小さくなった?』
『なんか、嬉しくなった(笑)。いつまで?』
『ん?来週から・・・だから』
『そっか・・・宿題する』

彼女の声に寂しそうに呟いたハルトの頭にキスをした・・・チュッとした音に照れたハルトだったが、静かに端の席へ向かうと鞄から出し始めた。

『(笑)あれは動揺してるな・・・』
『照れじゃなくて?(笑)あんなに素直に言葉にしてたかな・・・』
『構って欲しい姉が戻った喜び?(笑)それが突然きた衝撃は驚くしかないでしょー』
アキが笑いながら言った・・・ハルトと目があう・・・

『俺、高校生だった・・・』
自分が無意識にしたのだと気づいたのだろう・・・自覚したように呟いた。

『(笑)大人なら誤解を招くね』
『マリナさんにしたじゃん・・・高校生だった?そんなに若かった?』
『若いわよ!』
聞いていたマリナがハルトへ叫ぶ。

『ん?キス貰ったじゃん・・・子供みたいな・・・』
『煩い!少し違うだけよ!悪い?』
ムッとしたマリナに、驚き過ぎたハルトはハヅキとマリナを見比べた。

『 ・・・へぇ』
それでも違うのだと呟く・・・アキからすれば、そこは精神年齢の話だろうにと苦笑いをする・・・


ふと大きな箱に野菜を詰め込んだ人が店へやって来た。
キッチンの奥へ入りこんでいく姿を眺める・・・

『サクラー(笑)。アキちゃんの彼氏候補だよ(笑)』
それを見たハルトが自分が居たテーブルへ連れていくと、そう言った。

『まだ候補なの?』
『知ってたの?』
『八百屋ってだけ・・・でも目は違ったからねー(笑)アキとくっつくと思ってたんだけどなー』
『一回、申し込まれて断ったらしいよ?』

『 ・・・誰から聞いた?』
『タケル・・・』
そうかとタケルへ視線を向ければ、二人にしようと静かに出てきた姿があった。
手招きするハヅキ・・・

『ハル・・・話したろ・・・』
『ごめん・・・』
『理由は番号?』
『 ・・・』
ハルトは何処まで知るかは知らないので、タケルだけを見て声にしてみた。

静かに頷くだけのタケルの苦笑いに、口を引いてハルトへ教えろと座らせた。


『(笑)それの予定は?』
バサッとエプロンを広げ自分へ着けながら二人へ聞くハヅキだった。

『初めまして(笑)サクラさん・・・でしたね』
『滅多に会いませんでしたね(笑)。アキがお世話になります』
『しっしてませんよ(笑)。お得意さんでしたから』

『個人的(笑)中味も売りますよ』
『ありがとうございます(笑)』
『 ・・・サクラ?』
『(笑)全部を話す。今の気持ちまでね・・・それから考えてけば?』
『聞いてます(笑)それでも・・・』

『(笑)強引でも、想いがあるなら押し倒してみたら?
アキなら許せるはずだから・・・』
『サクラ!』
慌てたように呟くアキに笑み返すと、野菜を眺め考えていく・・・まるでアキの声は聞かないと言いたげにだ。
話そうと少し離れたが・・・

『誰かの視線は集まるから(笑)上で話したら?
タケルも行かないし、ハルトも帰さないで働かせるし(笑)』
行けと手をふり、キッチンへ並ばせると何にしようと眺めるハヅキ・・・礼をした彼はアキに笑み連れ出したのだった。

店へ入り込む客に迷い身分証で確認して、未成年は離して座らせていたハヅキだった。
既に知る子達はタケルの呟きで話し、早々に食べさせると出した。

時間を守らせる事で笑うタケルは、料理を増やした。




敷地の半分を閉める・・・残る料理でもいい客だけは入り込める。

歩道は賑やかで、酔いの覚めない人達が行き来する・・・呆然と立ち止まり店を眺める人に気づき何だと眺めた。

驚いた顔・・・少しずつ口を引いて、声のない挨拶のように微笑むハヅキ・・・

『サクラー(笑)片付けてい?』
『オッケー(笑)。オーダー聞いて無ければ上がって』
『はーい(笑)』
ハルトの叫びに声にしたハヅキは、柵の向こうにいる人を眺めながら近寄った。
同じように歩き出す人・・・

『(笑)誰かを探しに?』
声にしたハヅキに苦笑いをする・・・同僚だろう人に笑み、先にと行かせた人・・・

『この道は時々しか・・・元気だった?』
『名前は?』
『嘉藤茜・・・』
『(笑)サクラと言います。久しぶりでした・・・血の気は引いてます?』
『(笑)とっく・・・身内の誤解が溶けたから出して貰えたわ』

『(笑)良かったですね・・・』
『繋がりは?』
『ん?』
『会えたら・・・謝りたかった(笑)』
『八つ当たりしてました?』

『(笑)気付いてたのね・・・身内に向けたいのに目の前にいた彼女が似てて、本当にムカついてた・・・居なくなって物凄く反省したわ』
『ここは(笑)彼女の店なの・・・
それから・・・皆が集まる店にもなってるから・・・』

『隠せないものね・・・隙間を狙って身に染み込ませられてる・・・』
『その息抜きに皆が飲みに来るんですよ(笑)』
『貴女の声は優しいのね(笑)。久しぶりに聞いてホッとしてるわ』

『来週から居ないので(笑)、その間に来て下さいね』
『街を出るの?』
『(笑)出稼ぎに・・・』
『落ちたの?辞めなさいよ・・・それは、もしかして あの?』
何だと知るのだろう彼女に笑み返した。

『あの人・・・(笑)スカウトしてましたもんね・・・』
『利用されて(笑)私も利用する予定です』
『確実に出なさいよ・・・繋がりはないと聞いてるわ。噂だけど・・・』
『ありがとう(笑)出稼ぎに利用するだけです。収穫したら出るので頑張ります』

『(笑)サクラさん。会えて良かったわ・・・ありがとう・・・』
笑みの優しさに口を引いて見つめたハヅキ・・・じゃぁと帰っていく後ろ姿に微笑む彼女だった。


『レジ待ちしてるぞ(笑)』
『サンキュ(笑)』
飲んでいた彼が呼びにきた・・・戻りながら誰だと眺めては声にしていた。
『世話になった人よ(笑)。それより飲み過ぎず早く帰りな。支払いは班長?』

『あー半分・・・残りは割り勘(笑)』
『やっすいらしいね(笑)。大変なわりに』
『なー(笑)。消えないだけ有り難い』

『(笑)ほら座りな』
手を引こうとした彼に笑み、グッと押し込んで座らせるとレジへ向かうハヅキだった。


カウンター横で勉強していた二人・・・その理由に気付いて笑うハヅキだった。

片付けていく・・・終わりだと早々に刑事という人達を店から出していく。

『休みだしな(笑)』
『嫁があっためるから早く帰りな(笑)』
『だよなー(笑)久しぶりだしなー。部下と飲める楽しさも味わいてーんだよなー』

『(笑)なら他の店で』
『ここだから(笑)嬉しんだろー』
『(笑)店じまいでーす』
それぞれに呟きながら清算していく人達と話しながら送り出していく。

『サクラちゃーん(笑)改名しても可愛い名前で助かりまーす(笑)
ついでにレンへ特別待遇して下さーい(笑)』
『一人でタクシーか(笑)贅沢ね』

『 ・・・』
『(笑)お泊まりでー』
煩いと最後まで言わさずに店から出すタケル達に笑いながら帰した。
それから完全に片し掃除をしてホッとする・・・


『サクラちゃーん(笑)。この人・・・寝ちゃって起きてくれなくて・・・』
『連れてかなかった?』
何処だと眺めれば、丁寧に奥のソファーに寝かされていた姿に呆れ眺めるハヅキだった。

上に上がれず迷いながら勉強をしていたハルト・・・それでも店じまいだと片していくハヅキ・・・入ると声にしてから自分の部屋に入れと促す彼女に笑みながら入っていった。

入り口を閉めきる・・・それからキッチンを囲い終了だとホッとした。
彼を眺める・・・

『家は?』
『ごめん(笑)、吐きそうで動けない』
『水は?』
『あー・・・』
『取り合えず階段は上がれそう?』
『ん?』
何だと辺りを眺め自分の状況を確認している姿に笑うハヅキだった。

『床に置け(笑)動けたら帰るから』
『だから上がれるか聞いたの(笑)。ここは無理・・・』
そうかと体へ力をこめた彼に笑み、肩をかして家へと入るのだった。

部屋のドアが開いていた事に苦笑いだ・・・ハルトも一緒に使っていた部屋に姿はなかった。

笑いながらベッドへ転がす・・・並んだベッドに驚きながらも、全身が解放された気がして手足も投げ出した。

『スーツは?』
着込んでいた姿に呟くハヅキ・・・ゆっくりと起き出したまでは良かったが・・・動けないのだろう苦笑いをする彼に笑った。

だろうなとタケルとハルトが笑いながら着替え用にとスエットを彼へ渡した。

『大人は自分で着れるよね(笑)サクラちゃんが手伝うだろうけど』
『おやすみ。サクラは襲うなよ!』
いいなと呟くと二人でタケルの部屋へ入ってしまった・・・

『あー(笑)襲われんだ・・・俺・・・』
『(笑)違う』
『いーや(笑)。サクラは!は、って言ったぞ?』
そう言いながら脱ぎ出していく彼を眺めるハヅキ・・・それでも、バランスは取れないのかベッドへ寝転び笑い出す彼もいた。

遠慮はないと服を脱がせていくハヅキの手に驚き、照れたように笑み諦めた早瀬・・・されるがままに脱ぎ・・・着せられたのだった。

『(笑)脱がしは上手いな』
『あー(笑)前にハルトを脱がした事あるし・・・汗で濡れてたから大変だった(笑)』
思い出しながら呟くハヅキに、理由を知りたい彼はジッと見つめていた。

『ん?』
何だと見返した彼女の手が止まる・・・話したげな彼を待ったが声は出ず、ズボンさえ脱がしていく事に焦りだした。

『風邪で動けなくて(笑)人形みたいで面白かったかな』
『あービックリした(笑)。ハルトを抱いたかと思った・・・』
早瀬の声に今度はハヅキが驚いた・・・寝ながらスエットの下を履きこむ自分を眺めていた彼女を何だと見返した。

『あー悪かった(笑)冗談は過ぎたな・・・・冗談だよな?』
その発想かと笑いに代えたハヅキは、構わずに部屋の電気を消すと自分の支度を始めた。

『その視線は嫌だ(笑)』
諦めたようにバスルームへ行った彼女・・・動くに動けない自分に後悔した・・・激しく期待は膨らむが、諦めた早瀬は睡魔に勝てずに眠り込んだのだった。

自宅ではない違和感で、早くも目覚めた自分に苦笑いだ。
自分にかけられていたタオルを避けた彼はベッドへ潜り込んだ。

小さな明かりで微かに彼女が見える・・・波打ち始めた自分の心臓を押さえる・・・黙れと叫ぶ・・・静まれと祈る。
それでも理由をつけながら彼女へ寄り添い腕を回して抱き寄せた。

『 ・・・・・(笑)どんな理由で?』
『(笑)酔った弾み?』
思わず呟いたが、抱いた心地好さに照れながら両手の中で味わうように彼女へ凭れた。

『子供を足で引いて座らせた姿を見て(笑)凄いと視線は外せなくなった。ちゃんと手加減した動きだったから余計に・・・』
『ん?』

『手荒だが(笑)ハヅキの中は温かいと知れて嬉しかったんだ・・・』
『 ・・・』
『そう(笑)思っただけだ・・・』
『 ・・・』
『(笑)本当に凄い』
『それは(笑)確認したくて触ってるわけ?』

そうだと笑う彼の手は所狭しと蠢いていた・・・背から上下し始めた手は脇腹を撫で巡らせながら腰やお腹まで、のんびりと駆け巡り出していた。

『適度が大事と鍛えたのか?』
『 ・・・』
『先を決めたからだろうけど・・・無理はするな・・・』
『どこまで・・・』
彼の知る範囲が知りたくて声にしたが・・・素早く笑み呟く彼だった。

『調べてない(笑)。全部、想像して・・・会話とか・・・流れを見て勝手に考えてた(笑)。
名前は名に代わって・・・サクラと言い始めたから・・・何となく・・・葉月サクラ(笑)頑張れ・・・』

『 ・・・サンキュ・・・それでも』
『分かってる・・・声にしない事は約束する・・・』
苦笑いだ・・・先へと繋げる間に予想した彼に声も出なかった。

『止めて寝なさい(笑)』
『 ・・・』
『(笑)早瀬さ・・・』
『早瀬レン(笑)。
岡埜ハヅキを知りたい・・・離れた時間を埋めとく為に俺には必要だ』

『必要じゃない・・・貴方は私を知らない・・・仕事に響く場所に私は居るの・・・だから 思いは捨てて・・・』
『 ・・・』
『先で出逢う可能性を残して・・・だから今は』

『ハヅキ・・・』
『大丈夫と自分に言い聞かせたら出来る・・・』
次々と声にする彼女から口を塞いだ・・・声にするなと・・・思いは消すなと祈った。

今なら間に合うと声にする・・・それでも離さない彼へ流れそうで焦るハヅキだった。

よそ見をしている場合ではないのだ・・・過去を調べ、過去を立ち切りたくて始めた。

事故と思っていた・・・妹は何故死んだのかと思い始めた・・・繋がる微かな理由が存在していた事を知った。

偶然の事故と思っていたのに、彼女を利用して連れ出されていた・・・置き去りにされた事で妹は死んだ。

運んだと思う彼女の言葉は真実だと確信していた言動・・・同じように口を閉ざした彼女・・・
発端は自分にある・・・偶然の出来事が全てだった・・・単に先を見越して準備した・・・食事と聞いて好みはと調べ始めた。

先輩の囁き・・・上司の言動・・・その業務の言動・・・全てに重ねたら合わさるピースは簡単に捨てられた。

考える余裕も消え次々と自分へふりかかる出来事に声も出せなくなった。

理由が知りたい・・・それだけで回りを巻き込む場所と知る・・・だから根回しも深く自分を押し殺してきた。


揺らぐ自分に今更ながら気づく・・・単に寄り添うだけの彼の優しさに揺らぐ・・・駄目だと思う自分を消す事で精一杯だった。

先へ向かう自分への褒美・・・そんな理由を自分で作り出す・・・優しく包み大事だという優しさに揺らぐ。

とっくに預けてしまった自分に気づく・・・囁くほどに小さく謝り、それでも自分をくれと求める彼だと知った。

最後だと彼へ触れる・・・悲し気に潤む目は奥で優しく自分に向けている事に気づいた。
溢れた涙さえ大丈夫と口付ける彼へ、今だけと委ねたハヅキだった。


不安は取れず熱さだけを感じた・・・何かに迷う彼女に気づくが、今は先へ向かう彼女を止められなかった。

それでも自分へ戻れと祈る・・・待つという言葉を彼女へ刻む・・・全ての約束は声に出来ない事を知るだけに言葉に出来ない数多くを胸にしまいこんだ。

話せる時がくるまでに、彼女を胸に抱く事で誓いたかった・・・預けた事で微かな希望は芽生える・・・今はそれでいいと彼女へ自分を刻んだ。

頑張れる先へ迷わずに走れと思う・・・何かをやり遂げる彼女へ励ますように触れた。
最後の別れではないと、それは気づけと願った彼もいた。