tamiのブログ

このブログ・・・妄想ー空想大好きな私が、勝手に楽しんで・・・勝手に文字にしています。ボロボロですが(笑)

雫 17

2019-01-31 20:43:18 | 雫 ーしずくー

『雨女だな(笑)』
『まさか出掛けに降りだしてココまでって(笑)、それでも祝いの雨かもしんねーぞ?』
ようやく戻れた家の中で寛ぐ二人の会話だった。




帰る準備をしながらも、二人は車を建物の前に寄せ準備をした。
月野が荷物を取りに中へと戻っていった。

霧雨のように舞う本当に小さな粒が、どこへ落ちると迷うように動いているようで それを眺めながら皆を待った。

スッと現れた一人の男がいた事に気づき視線を向けた。
『リンの叔父にあたります・・・
この先・・・本当に雨の中へ入れない日が続くなら、一度ココへ戻して頂く』
『絶対?』

『リンは・・・出される事が多く・・・雨と長く離れた場合、本当にどうなるか分かりません・・・』
『雫という人は?』

『ココから遠く離れた事はありません・・・ですが雨がない場所では体が弱っていきました・・・
自ら雨の中へ入った場合は止める事なく置いて下さい・・・』

『なら・・・弱る前に戻し、また連れ出すが・・・』
『本人が望むなら・・・
それから、自分から力を使わずにすむ生活を頼みたい・・・』

『(笑)・・・リンの性格を知ってて言う・・・言いますか?(笑)自分から雨の中へ入るのに・・・
ま、それでも俺が見たなら止めるが・・・』
『どんな状態かは(笑)知るのですね』

『無意識(笑)・・・そうじゃないなら止めてく事にします』
『(笑)助かります』
『 ・・・力が消えたら・・・リンも消えるんですか?本当に消え去る?』

『 ・・・雫と生き方が違うので、本当に誰も知りません・・・
その覚悟を持っていけないなら・・・どうぞリンを返して下さい・・・』

『抱いてい?』
『 ・・・』
驚いて声を失った叔父に苦笑いをしながら視線を外した。

『ガキって分かる・・・最初は本当に手も出したいと思わなかった。
何だかな・・・いつもと違う事は気付けた・・・』
『試したいと・・・』

『(笑)試さない。それはリンが大事で・・・そばに置きたいだけだ』
『(笑)それで何故、聞きました?』
言い返されて苦笑いしかない・・・少し考え自分はと男へ話始める比嘉だった。

『使い果たして消えるなら・・・使わせないが、暫く仕事をすると言った・・・・先の事は今の自分が何とかしてれば、回避も出来る。

その場で起きても同じ・・・だから力のあるリンは必要でもないが・・・普通の・・・リンは俺には必要だと思えた。
・・・それは全部・・・いつか・・・手を出しそうで・・・』

『 ・・・全てはリン自身が決めて来ました(笑)幼い頃から・・・・
迷うなら、二人で話してみたらどうです?』
『 ・・・』

『愛したなら尚更・・・預かる子供としてではなく・・・共に先へ生きたい人として・・・触れたいと思う理由(笑)お探し下さい・・・』
『 ・・・理由か』
そう呟きながら考え始めた比嘉だった。


荷物を転がす音に気づいた比嘉は、帰ると言おうと 自分と話していた人を眺めたが・・・既に姿はなかった事に苦笑いしかなかった。

リンの叔父・・・大事に裏で守り育てた人なのだろうと思えたが・・・今更だが失礼な事を言ったとヤバいと焦る比嘉だった。

自分が口にした言葉に苦笑いだった・・・思わず・・・それだけで口にしたが、本当に申し訳ないと思え 謝るように静かに会釈し頭をさげた。


トランクへしまう月野・・・項垂れたままに車へ寄り掛かる比嘉の前にリンが佇んだ。

『構わないから自分の先へ行きなさい(笑)。君が大丈夫なら・・・』
『ん?』
『これは、何の事?』
『俺に?そう言えって?』
そうだと頷くリンを近くへ引き寄せ、腰を抱いて彼女に笑み返した。

『お前が出来る事を出来るまでしとけ・・・それがリンの生きていく先なら構わない・・・』
『 ・・・何を話したの?』

『(笑)大人の話・・・』
『 ・・・』
『(笑)俺は俺らしく・・・迷うな』
『何の事かも知らないのに?
・・・もう少し子供にも分かるような言葉で教えてくれない?』

『(笑)少しずつ教えてやる』
『 ・・・』
不思議そうに見返すリンに笑いながら彼女を引き寄せれば額が触れる。

『私の何を(笑)探りたいの?』
『(笑)全部』
『 ・・・』
押さえられている自分の首にある手を離そうとするリンが可笑しくて笑う比嘉もいた。

『ハル、じゃれつくな(笑)。帰るぞ』
『ん(笑)』
苦笑いをした比嘉はリンと後部席へ入り込んだのだった。



雨の中、車の窓をあけて凭れたリン・・・風と一緒に顔へ受け止めるように眺めていた。
優しく頭を撫でる比嘉の手に笑み、そのままに眠り始めたリンだった。


見覚えのある場所で目覚めた自分・・・動かされても眠っていた事に気付けば可笑しくて笑う彼女がいた。

寝返りをする・・・温かな布団だと眺め・・・目の前に彼がいた事に驚いた。

『(笑)あったまったか・・・』
『ん・・・(笑)ありがとう・・・』
ならいいと照れた笑みで返されたリン・・・比嘉はそのまま眠りへ入り込むように目を閉じた。

穏やかな笑みの彼の優しさに、ふと手を伸ばす・・・そして自分が何も着ていない事に気づいた。

驚き・・・叫びそうな自分の口を押さえ・・緊張しながらも静かに寝返りをした。
出るに出れない状態・・・何でも何度も頭の中で考える・・・まずは服だと探し始めるリンだった。

フッと溢れた笑いは背中の方でした・・・そうだろう、比嘉が脱がせた事は知る・・・それでも恥ずかしくて服だと辺りを眺めた。

スッと自分へ触れる手が前へ伸ばされてくる・・・驚かせないように・・・そんな感じと分かるが、既に遅くドキドキした音は自分から激しく鳴り響いた。

お腹を通り過ぎ下側にある腰へ滑り込んだ彼の手は自分を簡単に捕まえ引き寄せられた。

彼の身へ触れた事も分かる熱さは余計に恥ずかしくなった・・・祈るように指を絡め自分の前で抱き込む。
その手を包むように彼の手が重なった。

『(笑)冷たい雨は駄目だ・・・冷える前に諦めて戻れ・・・』
いいなという彼の声に小さく頷くリンもいた・・・

『はなっ・・・』
『 ・・・(笑)はな?』
『は・・・』
『体が冷えたからだろ(笑)。一番早くあったまる・・・前にもしたぞ?』
『だっ、だけど・・・』
震えた声音に笑む比嘉は彼女の肩へキスをした。

『んーごめん(笑)。その時を思い出したから抱いてる・・・』
『駄目なんだってば・・・』
『消したいと思わないのか?』

彼の言葉に驚いて比嘉の顔を見たくて振り向けば、優しい笑みの顔だった・・・片手が離れたが頬へと場所をかえた比嘉・・・優しい笑みは近付き口付けられた。

驚いて彼の目を見る・・・触れた唇が微笑んだ・・・

『何があっても自分は出来ると思え(笑)本当に出来ると知ってるだろ』
『 ・・・』
『(笑)前は本当に無意識にキスしてた・・・だけどリンは雨の中へ入ったし力は使えてたろ?』
『 ・・・』

『(笑)これも知らなかったですますか?』
驚きながら彼の声を聞いていた・・・答えようとしたが彼の唇で塞がれ声を出せなくなった。

彼の優しい笑み・・・見守るような笑み・・・前と変わらない笑み・・・それが自分へ向けている笑み・・・
『大丈夫だ(笑)』

声音まで優しく自分へくれる事が嬉しくて・・・不思議と自分へも笑みが溢れてくる気がした。
笑みの近さに照れれば、それは同じなのか照れた笑みのようだった。

離そうとした手が捕まり彼の手で連れ行かれた。
抱けと言うのか、彼へ回した状態に比嘉を見返した。

張り付かせた彼に驚く・・・
『えっと・・・ね・・・』
妙な違和感に彼を見ながら呟くが・・・

『我慢させてる・・・(笑)』
『ごめんなさい・・・私は・・・もしかしたら・・・えっと・・・子供で・・・』
『今はしない(笑)。だから我慢してると言ったろ・・・ほっとけよ・・・』

『 ・・・手・・・おしりの手・・・離し・・・』
『離したらリンを抱く手が始まるからだ(笑)』
『これが我慢なの?』
苦笑いしながら笑みで返事をした比嘉に微笑んだリンだった。

『気になる・・・』
『(笑)・・・・・外したら俺が(笑)ヤバい・・・』
『 ・・・誰かいるなら呼ぶ?』
『リンは皆に(笑)体を見せんのか?』
『 ・・・』
だよなと笑う彼女へ優しく口付け始める比嘉だった。

深く絡み付き逃げる彼女を追う・・・あがる息の熱さを出させながら彼女を見つめ温かさに浸る比嘉だった・・・

深く眠りだした彼女に笑み・・・我慢出来ずに彼女に触れ忍ばせた唇を止め額を預けた・・・
リンの歳は十代だったと思いが過り・・・暫く仕事をすると言った声が甦った。

眠り込んだリンだった・・・彼女の意思を無視し始めそうな自分・・・舌で味わうように触れたい衝動は無理やり引き剥がした。

何処までも自分の中へ連れ込みたい思いに気付けば、リンを愛した自分なのだと自覚した気がした。

自分の思いだけを無理やり捩じ込む気もした・・・それが今、自分がしている事かと苦笑いだった。

本当に無意識に触れている・・・自分の唇が触れている・・・止められそうにない・・・今は止められるのに、そう考え始めれば触れていた唇があった。

リンの腰を捕まえていた自分の手が温まる・・・気付いたリンの手が重なった事を知った。
潤ませた彼女の瞳が揺れる・・・泣きそうな悲し気な目でもない事は気付けた。

吸い込まれそうな彼の目を見つめる・・・嫌でもない触れに気付いた・・・我慢といった彼の声が聞こえ・・・苦しそうな潤む目・・・自分へ触れる笑みの交じり・・・

『えっちな目をしてるよ(笑)我慢って言ってたのに・・・』
照れた笑みで声にせずに頷く比嘉に
笑み返した。
静かに浸り始めた比嘉に微笑んだリンもいた・・・

『比嘉さんの』
『ハルでいい』
『 ・・・』
『ハル。呼び捨てろ』
『ハル・・・手を止めて・・・』

『(笑)大丈夫だ・・・自分を信じろ』
少しずつ・・・彼の声が響く・・・分かったと言いたくて小さく頷く自分にも照れたのだった。


目覚めれば朝だった事に驚いた・・・眩しくて布団を被るリンだった。
『ん?これなに?』
驚いて自分の手や足を見ながら呟いた・・・体へもあった事で余計に自分を観察し始めた。

何だろうと考える・・・何より雨音がする事に気づくと、着替えを探し着込むと庭へ出た。

不思議と、あの場所から出た自分が不安だった・・・だから雨に触れたくて身を置いた。

懐かしくて昔を思い起こす・・・
あの場所で微笑む二人の姿があった・・・優しく笑みかけてくれる二人・・・それが嬉しくて微笑んだ。

フッと笑う・・・振り向けば自分を捕まえようとした比嘉の驚いた顔があった。

『気配?気配を読んだのか?』
『(笑)私を指差して笑ってたから・・・二人の視線は私じゃなかったけど』
『 ・・・』
口を引いた比嘉が苦笑いをしてリンの腕を掴んだ。

中へ戻れと歩き出すが・・・その手を掴み彼を眺めた。
『 ・・・』
『教会に行くの?ストライプのネクタイをした人がいる?』

『 ・・・兄貴に・・・呼ばれ・・・た・・・からな・・・』
『 ・・・』
遠くを見るように視線が飛んでいったリン・・・掴む手は両手になった頃、視線は自分へ戻ったようにみえた。

『これから行く準備をするから、先に声を・・・行ってくると・・・だけ・・・』
『その人が銃で撃つ・・・』
『誰を?』
『2人・・・3・・・4・・・何でフウカも?』

『いや?ボスだけのはずだ・・・が・・・。行かないとヤバい・・・話もあるが挨拶もする・・・欠席は出来ない』
『月野さんから比嘉さんと吾川さん・・・驚いて車から飛び出てきたフウカが走って来て・・・撃たれた・・・』

『まだ、撃たれてない。
そのストライプのネクタイをしたヤツがするのか?』
そうだと頷くリンを眺め抱き締めた。

『防ぐ手は考える・・・上の呼び出しは絶対だから行かなきゃならない』
『でも・・・』
『ここにフウカを連れてきて貰う・・・それから出向く・・・撃たれても掠り傷にしとく・・・
行かないフウカの変更で、見たモノが変わるのか?』

『聞いた事はないけど・・・行かなかったら消えるから・・・』
『リンを置いて死なない。
それより見れたな(笑)ちゃんと・・・』
『 ・・・』

『(笑)意識を飛ばさなきゃ、ふかーく感じれたのにな(笑)残念だろ』
顔が熱くなった・・・恥ずかしくてうつ向けば頭へキスをした比嘉が抱き上げ部屋へと連れ行かれたリンだった。



静かな空間に楽し気な声は響いていた。
マリアの声・・・そしてフウカの声だった。
弾む話に笑みを浮かべ・・・リビングへ出たのだった。


夕飯をすませた後も楽しい会話は続く・・・フウカの笑みにホッとしたのだが、どうしても気になり庭へ出る扉をあけるリンがいた。

静かに踏み出す・・・既に空は夜へ変わっていたが、止まない雨は降っていた。

ポツッと可愛い音が始まる・・・その音に笑みを浮かべるリンが、もっとと足を前へ踏み出した・・・が、不意に身を引かれ抱き込まれた事に驚いた。

『大丈夫だった。見なくていい・・・』
微かな匂いに本当に擦り傷は出来た事を知った。
それでも自分のそばに来た彼にホッとしたリンは体の向きを変えて比嘉を抱き締めた。

それに驚いた比嘉は室内で見ていた月野へ視線を飛ばす・・・同じように驚いた顔だったが、口を引き笑うとマリアを促し迎えに来ていたボスにフウカと帰れと見送ったのだった。


『 ・・・今は大丈夫かと見なくていい(笑)、最初のが一番で防ぐ努力はしてきた・・・だから大丈夫と安心して寝とけ。寝れないなら遊んでろ(笑)』

大丈夫と優しく背を撫でた比嘉の呟き、分かったと頷くリンに笑みを浮かべた。



雫 16

2019-01-29 23:36:44 | 雫 ーしずくー

宥めるジャインの声に苦笑いをして、フロアにいた人達を眺めた。
出る準備をしてきていたジャインの荷物を目にし、ソコにいる人達を眺めながら 静かに息をはいた。


『終わりと告げられた事をお忘れですか?』
『フォーザ様・・・あなたも本当に』
『私にあったのは借りたモノだけです・・・それを返上し今に至ります。

自分で作れた場所でもなく、ひたすら手にしていたのに・・・皆さんはまだ足りませんか・・・』

『本当に・・・』
『全て消滅されました・・・残るはオーナーが持つこの場だけです。
貸して頂いてから今日まで来れました・・・だから出るのですよ?』
『フォーザ様・・・何とか主に』

『 ・・・消えゆきそうな主へ無理強いさせるおつもりですか?』
『 ・・・?』
『余計に使わせた償いは誰がしますか?』
『ここを売れば・・・』

『ここはオーナーのモノ・・・雫会は敷地を借りていただけでした。
使用料を払い今日まで来たんです・・・数日後には全て出されます・・・訴えられる前に出た方が宜しいのでは?』
『そんなはず・・・』

『持ち主はいっさい知りません・・・主が終わりと感謝し契約を終えましたので・・・皆さんもお帰り下さい』
『警備員は・・・』
『本来の少人数でオーナーが契約をし直したと聞いております』

『出される?』
『はい』
『ならばリン様へ』
『無駄です・・・僅かに残るモノは、じきに消えると聞いておりますから』

『より近い者がそばにいるからでは?』
『止めようもありません・・・何事も動じず、自分の見た事だけを信じる方のようで・・・』
『リン様も消えると?』

『はい・・・確実に。
お嬢様へより力を持たせたと・・・だから前回は受け継がれたのだと思いましたが・・・』
『ズルくないですか?』

『黙れ! ・・・彼女が変わりに担っていたんだぞ? 彼女なら、全てへ与えるからと昔、聞いた事があるくらい・・・真っ直ぐだった』

『同じ考えなら・・・持たされたままでしたでしょうに・・・』
『 ・・・』
『だから、謝りの為に今回は招待客を多く招いたのです・・・
今日中に出て頂けませんか?』
ざわつく皆に呆れ・・・声にも出したくないと思えた。


コツコツという足音がした・・・それは誰かと期待を込めて、何処からか近付く足音へ耳を澄ませ始めた。

ハァとため息が出る・・・フォーザは何故来たのかと項垂れた・・・その姿に余計にリンだろうと他の人達は期待を膨らませ静かに待った。

『リン様!』
それぞれの呟き・・・遥か向こうから二人だけの警護をつけたリンが歩いて来たのだ。

『リンか?』
別の場所からリンを呼び止める声がした・・・誰かと探す人達・・・警護者が歩みを止めようとしたが、彼らを止め 離したのはリン自身だった事に驚いた。

比嘉がリンを迷わず抱き止めた・・・互いに笑う顔にどんな関係だと眺める。
笑みのままに比嘉は楽し気にリンへ口付けた・・・

駄目だと叫ぶ人達・・・驚いて動けない警護者・・・止めようと慌て走り出したフォーザとジャインもいた・・・
比嘉の腕へ触れていたリンの手は力が抜けたように落ち・・・フォーザとジャインが驚き立ち止まった。

崩れ落ちるリンの姿に比嘉は慌てながら抱き止めたが・・・・その間も罵声を浴びる比嘉は、その人達を見返しながら叫んだ。

『煩い!リンはもらってくぞ!力は必要ねぇ!』
『 ・・・』
『フォーザ!何で気を失った?』
だれた手に焦りフォーザへ呟く・・・それでも驚いているフォーザの声は出なかった。

『 ・・・』
『フォーザ!倒れたぞ!』
『貴方のせいです!お嬢様を運びなさい!』
警護者達が慌てリンを抱き上げた。後を追う比嘉が引き止められ押さえられ・・・諦めた彼は従ったが彼女の行った先を眺め項垂れるジャインを眺めた。

叫ばれハッとしたフォーザが比嘉へ睨んだ・・・慌てるように叫んだフォーザの焦りに余計にジャインが力尽きたように床へ座り込んだ。

『最後の手が消えた・・・僅かな力が・・・お前のせいで・・・』
これは本当なのかと、消え行く事に力が抜けそうな気もした。

『ん?だから倒れたのか?』
『触れたら駄目だった・・・それは力を奪う行為だ・・・
力ある者に、その対象と触れたら消えると聞いた。
それは昔からだ・・・だから大事にと守ってきたのに・・・お前が・・・』

『どうせ消えるなら、がっかりしなきゃいいだろ・・・
どうせ主ってのが力ある限りしてくんだろ?』

『いつかは消えるんだ・・・身へ触れたら・・・肉体は消え去る・・・知れず終わりを告げる行為だ・・・』
『ならリンの力は消えたから連れ帰ってもいいよな(笑)本当の最後まで』

『それをしたくて、しましたか?』
『力じゃなくてリン本人がいいからだ(笑)。やっと会えたから思わず(笑)』

照れたように笑う比嘉に呆れ眺めるフォーザ・・・それでも心配だと見返した。

ジャインが項垂れる・・・呆然としたのはジャインだけではなかった。
フォーザの焦り・・・ジャインの呟きで余計に思考まで停止したように佇んだ。

『ハル(笑)。・・・・・何があった?』
不思議そうに声をかけながらやって来たのは月野だった。
『リンに会ったぞ(笑)』
『ん?明日会えるんじゃなかったのか?』

『暇だから散歩に出たら、ここで会った・・・』
『何があった?この人達の様子が変だぞ?』
『あー・・・・・』
苦笑いをして月野を見返す比嘉の様子を眺め、回りの人達を眺めた。

『ジャインさん?』
『お嬢様の力を消されてしまいました・・・』
『はい?』
『 ・・・』
『ハル?』

『キス・・・しただけだ・・・・思わず・・・(笑)嬉しくて・・・』
急に照れたように笑う比嘉を見返したが、言葉に驚いた。
『こっ子供に?』
『うっせーよ・・・だから思わずって言ったろ!』

二人の大声・・・その話で驚き身動きも声さえ出せなかった人達もいた。
『それで何でジャインさん達がこーなるんだよ・・・』
『し、知らねーよ・・・し過ぎて倒れたから・・・か?』
『はぁ?』

『それは驚き過ぎだろ(笑)。ま、力は消えたらしいし連れて帰ろうぜ』
『 ・・・帰るって?』
さぁと彼女を連れて行った方へ月野を押しながら歩く比嘉だった。

僅かに響く二人の会話だ・・・
『キスしただけで力が無くなったのか?本当に?』
『マジで倒れた(笑)。フォーザに怒られっかな・・・
雫は終ったと聞いたし(笑)いいよな』

『ハル・・・』
『ヤバいか?』
『 ・・・』
『ねー力は出せねーよ(笑)、諦めんだろ使えるヤツはいねーみたいだしな』

『 ・・・(笑)嬉しそうだな』
『狙う目的は消えたからな、来たら俺らの場所を荒らす敵だ(笑)俺が消してやるさ』
『殺すなよ(笑)』
『バレねーようにやる(笑)任せとけ』

静かな場所だけに二人の会話は響く・・・本当に知らない行為だった事で余計に驚いた。


『無駄ですか・・・』
『本物なら・・・だ。
明日、分かるさ・・・明日はフウカが出ていく・・・記憶までないそうだ。

だから顔見知りという態度はするな・・・引き取り、預かってくれる人へ任せろ。お嬢様が挨拶に見えるはずだ・・・確かめたいなら会うといい』

『ジャイン様は?』
『ここを出る・・・』
『どちらへ?』
『田舎へ一度帰る・・・
さて・・・何が自分に出来るやら・・・』

話ながら鞄を手にしたジャイン・・・一人呟きながら寂しそうに出て行ってしまった。


いまだ信じられないと、帰るに帰れない人達はいた・・・それでも諦め帰る準備をしようと戻る者・・・肩を落としながらそれぞれの為に離れたのだった。



翌日・・・
『(笑)おじいちゃん。帰ろー!』
それは楽し気に手を繋ぎ早くと笑うフウカに驚いた。
『フウカ!』
子供の声だと振り向くフウカ・・・

『(笑)私のお友達?』
『ここで会ってな(笑)』
『そっか(笑)。遊んでくれてありがと(笑)またいつか会えるといいね!』
『 ・・・うん』

『じゃまたね(笑)』
『 ・・・』
前のフウカじゃないとトキネが驚き、自分の声もでなかった・・・走り戻っていくフウカを誰かが呼び止めた。

『(笑)お姉さん・・・』
『楽しそうだね(笑)』
『嬉しいのよ(笑)。それより、こっちのお姉さんは(笑)だぁれ?』

言われたリンが自分かと笑み返した・・・フウカと視線を合わせて微笑んだ。
ギュッとフウカを抱き締めたリンの姿だった・・・

『お姉さんともまた会える?』
そうだねという頷くリンに笑み、不思議そうに手を振ると吾川達を見送った。

『元気で!』
思わずだろう叫び・・・嘘だという回りの雰囲気・・・自分の声に驚いたリン・・・呆然とした彼女の回りも静かに押し黙るように佇んでいた。

『はーい(笑)、元気になるよー』
バイバイと嬉しそうに手をふったフウカは車へ乗り込んだ。

驚いたままに手で口を塞ぎフォーザを眺めるリンだった・・・
『いい声してんな(笑)』
背から抱き込んだ比嘉は回りを気にせずに車の方へ視線を飛ばした。

『自分の名前(笑)言ってみ?』
『リン・・・』
『見送りだな(笑)。これは別れの雨じゃねーよな・・・』
空を眺めた比嘉が呟いた。

『たぶん・・・』
『記憶はあるか?』
『 ・・・なんの・・・』
『いっか(笑)、試しで出てみっか・・・消えてろよ・・・』
『な、何を・・・』

『フウカが消えたなら、お前もだろ(笑)』
外へ連れ出した比嘉・・・それは少しずつ雨は降りだす・・・その間も服は濡れ出してきていた・・・

佇んだまま見上げた比嘉の視線を辿るようにリンもまた見上げた・・・
暫く待ったように笑みを浮かべた比嘉は静かに彼女から離れる・・・ずぶ濡れの状態になった頃・・・

『何が見えた?』
比嘉が声をかけた・・・
『何が?』
そう呟くリンの腕を掴むと屋根のある場所へと戻った比嘉だった。

慌てたように月野はタオルを探し持って走ってきた・・・

『何してる?』
『私?』
『そ(笑)何しに?』
『 ・・・会い・・・に・・・』
『誰にだよ(笑)』
『 ・・・』

『(笑)待たせたな。俺に会いに来たんだろ。濡れてんぞ?』
『なんで・・・何を・・・そういえば・・・』
『ん(笑)帰る準備しよーぜ』
『 ・・・』
驚いた顔のリンだった事に、回りの皆も驚き固まった・・・その中の一人が呟く・・・

『何が見れましたか?』
『 ・・・どなた?』
『何を・・・見たんです!』
焦りながら叫ぶように声にして聞いてきた人にリンは驚き見返した。

『何って・・・空を・・・雨の中へ行って・・・か』
彼が見たからと言おうとして、返事は返された・・・

『それだけ?本当にそれだけですか!』
叫ぶように言った人に驚いたリンは押し黙って見返した。
本当に誰も知らない人達だった事で、リンは何だと皆を見ていた。

『何の事を?何を見たら良かったんですか?』
その人達の態度に驚き、それでも静かに穏やかな声で話したリンに 皆の声は失ったように黙って彼女を眺めていた。

『俺だけ見とけって(笑)。そこは ほっとけよ・・・』
そう言うと手を繋ぎ部屋へと戻される自分に可笑しくて笑うのだった。


『あの人達は?』
『ここの客(笑)』
『何が言いたかったの?』
『可愛い声だって誉めたかったんだろ』

『普通に話したのに?変だった?』
『いや?(笑)。それよりマリアは?』
エレベーターのドアはしまり上がっていくのだった・・・



部屋へ押し込まれてもリンの違和感は取れず比嘉を眺める・・・ 何なんだという笑みで見返すリンに比嘉は可笑しくて笑った。

月野さえ芝居だと思っていたが、リンの様子で違ったのだと思えば 今度は比嘉を見返した。

『何だよ(笑)』
『フォーザとの話はコレだったのか?』
『まーな(笑)、リンの普通は(笑)呆けっぱなしだな・・・』

『キスしたら駄目なのに・・・』
『驚いて見る気もなかったろ(笑)』
『思い出したから・・・その理由を考えてたし・・・』

『(笑)力が消えたと皆は思ったぞ?それにだ・・・(笑)記憶も消えてると思われた気がする・・・』
それは本当に楽し気に呟く比嘉は、驚き立ち尽くしたリンの手を引いて自分の膝へ抱き止めた。

『雫と話がすんでんなら一緒に帰るぞ(笑)。あの家に帰ろうぜ』
『 ・・・』
『昨日(笑)倒れたろ・・・本当に力は消えたとか?』
『試してないから・・・話せるかもと聞いてたし・・・本当に出たから驚いて・・・』

『(笑)話せてたよな・・・』
『声に出来るって聞いてたから・・・』
『ん?』
本当かと彼女を見返し考えこむ比嘉の姿に月野が苦笑いをしながら眺めた。

『いつから声は出してないんだ?』
『 ・・・フウカより小さい頃・・・最初は本当に出せなかったし。
声にしていい日はあったから、その日に1つだけ(笑)聞いたりした事はあった』

『 ・・・』
『俺と会った頃も話せたのか?』
『だから・・・声にしても駄目って聞いてたから・・・掟に従えって・・・
本当に出たし、自分の声を初めて聞いた気がして本当に驚いた・・・』
そう言いなからも驚き呟くリンだった事に比嘉も驚いていた。

『で?帰るよな・・・』
『暫くお手伝いするから・・・』
『誰のだよ・・・』
『主・・・』
『雨の中へはいんのか?』
そうだと頷くリンを見返す・・・

『使えるのか?本当に残ってた?』
『ん?ハル・・・』
驚いたように比嘉へ話し出した月野が言った。

『なんだ?』
『さっきのは芝居だったんじゃ・・・』
『(笑)無理だろ。リンと会ってねーし・・・』
『リンは本当に雨の中へ入ったのに、見えなかったのか?』

『はい・・・連れ出されてる間から、自分にされた事に驚いて・・・理由は何だったか気にもなってたし・・・』
『あとは?』
『何の事を話してるのか気になって・・・何だろって考えてたから・・・』

『下に居た人達は誰だった?関係者じゃなかったのか?』
『言葉はそうだったけど、会った事もなくて・・・本当に関係者かは・・・』
知らないというリンに驚いた・・・

『普通はリンに会えない場所にいる人達だったらしい(笑)。フォーザから聞いてた。
何かな(笑)予測して近い人達は隠れて観察してたらしいぞ?』

『それを知ったから話を繋げてただけか?リンの反応を見ながら?』
『いや? 数人が俺を見て隠れたから、リンに復讐すんのかって(笑)ムカついて・・・な・・・』

『あー(笑)キスまでしたのか』
それでと納得したように呟く月野に笑う比嘉だった。



雫 15

2019-01-29 08:30:15 | 雫 ーしずくー

静かなノック音がする・・・マリアがドアをあけた・・・通常よりも多い警護者に苦笑いをしたフォーザは部屋へと招いた。

『失礼致します・・・』
代表だろう長が声にする。
『それは本当に決心したって事?』
抱かれた子供の姿で思わず聞く・・・
『はい・・・代わりにと・・・
そして詳細を話し頼めと・・・』

『それは・・・』
『お二人からと聞いておりますが、我らは会っておらず・・・
お嬢様の携帯へ連絡が入りました』
『で?リンは?』
『 ・・・』
呼び捨てる人に驚いてフォーザを眺めた。

『私から・・・ソコへ寝かせ戻って構いません』
『これを・・・』
手渡されたのはリンの携帯だった・・・それを読み深くため息をしたフォーザ・・・何だと奪う比嘉だったが、取り戻すべく動いた人を止めて安心させ部屋から出した。

『全フロア空けましたが、全員で警護にあたります。何かあれば申し付けて下さい』
『(笑)ありがとう』

『 ・・・フォーザ様ですよね?』
『幸田チーム長・・・(笑)誰と思って話してたわけ?』
『あー(笑)失礼致しました・・・
了解を貰えたら待つと伝言です』

『分かりました(笑)了解・・・』
『(笑)失礼致しました・・・』
全員がフォーザへ向き直し会釈すると持ち場なのだろう配置に付き始めるのだった。


偶然かは知らないが暇だと顔を覗かせに来ていた吾川・・・このタイミングでかと苦笑いしかない。
本当に最終的に預ける事に決めた二人に口を引き言葉を思い出していた。

『寝てるのは、あの子だろ・・・』
『はい』
比嘉が部屋を覗きながら呟く・・・
『で?携帯の意味は?』

-最後のフォーザの仕事です。
そして頼みたい・・・詳細は貴女から。
そばで生きて・・・-


『比嘉さんへではなく・・・今は吾川様へ・・・お話があります・・・』
『わしか?』
『はい・・・
あの子をお願いしたく・・・頼めと申し使っておりました・・・』

『 ・・・』
驚いた吾川・・・それでもと眠るフウカのそばへ向かう・・・

『わしの場所を知るか?』
『はい・・・それでも頼みたいのだと思えます。本来の・・・子供という生活を、フウカに させたいのだと思います』

『代わりに抱いて愛でろと(笑)・・・』
『既に力はありません・・・そして記憶も一切・・・
ゼロから・・・初めて欲しいのかも知れません・・・』

『いつから知った?』
『知りません・・・相手が誰かも聞いていませんでした。
私が聞いたのは、大事にされ愛された中で生きていける場所へ連れ出したいと・・・それは候補という子達で・・・』

『親は?』
『フウカだけは・・・リンと同じで、誰一人いません・・・
話せる頃には養母さえいなかったと聞いています・・・それならと思えたのかもしれませんが・・・』

『(笑)老い先は短いぞ?』
『長生きなさいませ(笑)・・・
そして私を時々呼んで頂けますでしょうか・・・様子を主へ伝えたく・・・』
『心配してるしな(笑)』
『はい(笑)』

『大事に育てると伝えてくれ(笑)。大丈夫とな・・・染まらせず(笑)外さずに可愛いと一緒に笑って行こう・・・』
『(笑)ありがとうございます・・・』

『(笑)俺は?』
『ありません。先に吾川様が(笑)お帰りの際は会えると思うので・・・』
『ん?リンは出されないのか?』
『(笑)・・・安心したいとフウカとお会いするはずなので・・・恐らく・・・その時に・・・・』

『 ・・・・(笑)おっけ!』
『 ・・・はい?』
『いーや(笑)』
『 ・・・ハル!変な気を起こすなよ・・・連れ出したらヤバいと思え!』
『大丈夫だ(笑)』


バフッとベットへ寝そべった比嘉・・・その弾みで驚いたフウカが何だと起きた。

笑みながら眺める比嘉に、可笑しいのか笑うフウカにもフォーザは驚いた。

『(笑)お前は誰だ・・・』
『 ・・・(笑)分かんない』
『(笑)何で笑う?』
『おじさんが笑ってるから(笑)』

ケラケラと笑いながら比嘉に答えるフウカ・・・今まで見たようなフウカの姿とは別人のようだった。

『 ・・・』
『ん?どした?』
『 ・・・自分の・・・名前・・・』
『(笑)なんだよ。お前はフウカだろ。吾川フウカ(笑)俺はお前の兄貴だ。
あっちのジジイが、お前の(笑)ジイだ・・・』

『おじさんが』
『(笑)お兄さんと呼べ』
『 ・・・(笑)おじちゃんじゃん』
『歳が離れたんだよ!(笑)じいさんって言ってみろ』

『(笑)おじいちゃんは本当に私の?おじいちゃんなの?』
『そうだ(笑)。ずっと病気してたから記憶がなかったのか?』
『んー病院?』
『違う(笑)、久しぶりだから皆で旅行に来てたんだぞ?』

『そっか(笑)。お姉さんはママ?』
『そいつはコウスケの女だ(笑)。お前のママじゃないが、お前の世話もしてるんだ』

『居なかった?っけ?』
『寂しいのかよ(笑)』
『そーでもない(笑)。おじ・・・』
『チッ!』
『(笑)お兄さんが楽しそうだから違う気がする』

『そうそう笑わせねーぞ(笑)』
『なんで?』
『疲れんだよ』
『ケチだねぇ(笑)お兄さんなのに・・・』
『うっせぇ(笑)』

『言葉が変だよ?うっせぇって何?』
『 ・・・』
『それは大人だけで話すので覚える必要はないの(笑)。
さ、部屋に戻って過ごしませ』

『ここじゃないの?』
『(笑)ここは、お兄さんの部屋で・・・フウカさんとお祖父様は隣です。おじさんも一緒だからたくさん遊んで貰ったらどうですか?』

『(笑)分かった。お姉さんは?』
『 ・・・(笑)お仕事がありました。後で会いましょう』
『うん(笑)』

飛び起きたフウカは比嘉の手に触れ見返すと、静かにベッドから降りて伸ばされた祖父の手と繋いだ。

『あったかい手だね(笑)』
ジッと繋いだ手を眺めたフウカの呟きに笑み返す吾川・・・
『フウカが大好きだからな(笑)あっためておいた』
『(笑)嬉しい!』
そういうと笑いながら手を引くフウカに苦笑いだった。



『ありがとうございます(笑)。どう言えば良いのか迷っていました』
『(笑)敬語はそろそろ止めてくれ』
『がっ頑張ります』
『 ・・・それはそうと(笑)、マリアはどーなる?』

『 ・・・聞いてませんでした』
『誰に聞く?』
『だれ・・・誰でしょう・・・』
戸惑いながら呟くマリア・・・月野の肩をトントンと叩いた比嘉は自分の寝室へ行ってしまった。


『一緒に出るか?』
『それは迷惑も・・・』
『俺は気にはしないが(笑)、リンが来たなら来るのか?』
『出れるのかも・・・』
『知らない?』

『終わらせる事しか聞いておらず・・・』
『マリアは終わったら、どうしようと思ってた?』
『ここに残り、お世話を・・・』
『(笑)誰の?』
『 ・・・』

『(笑)終われば皆はバラバラに離れるんだろ?
残る者は少ないはずだ・・・出れない主を近場で助ける人がいたなら・・・マリア(笑)それは君の役目でもない』

違うかと眺める月野に確かにと思えたマリアは力なくベッドの端へ座り込んだ。

『(笑)自分の先を見なかったのか?』
『自然と使う事のみで・・・殆んどは自分からは・・・
それでも本当に必要な時はリンを見ていたので・・・』

『本当に姉妹でもない?』
『違います・・・私の親は近い・・・従姉妹といえば・・・』
分かるかと呟くマリアに笑み返した・・・

『あの・・・』
『ん?』
『さっきの・・・比嘉様の言葉が気になります・・・本当に連れ出す気でしょうか・・・』
『駄目だったか?』

『今はまだ止めた方が・・・それより一つずつクリアしていったら・・・』
『 ・・・マリアは(笑)力があって助かってたのか?』
『 ・・・私には苦痛でした・・・
親戚の先が見え・・・友達や友達の兄弟の先・・・見えたり見えなかったり・・・怖かった・・・』

『いつも?そんなに雨が降る場所だったか?』
『 ・・・霧雨・・・です。そして降るというのは濡れる位・・・それが普通でした。雨があがるのは一日位・・・その中で常に見る事もなく・・・』

『緊急という時か?』
そうだと頷くマリアを優しく抱き締めた。
驚いて身を固めたマリアに苦笑いをして彼女を見つめた。

『ハルに言われて余計に意識した自分が変だ(笑)、だけど捨て置きたくもない・・・珍しさでもない(笑)
こーしたかっただけだ・・・』
笑みの優しさに、マリアはホッとした笑みで月野を見返した。

『(笑)本当に出されるなら一緒に出ないか?』
『 ・・・』
『(笑)リンが気になるなら、連れ出すまでだ・・・ハルならしそうだろ(笑)・・・』
確かにと思えたマリアの笑みに、思わずだろう月野がキスをした。

『あー・・・・わるい(笑)。それでもドアを閉めてないコウスケが悪いよな(笑)』
『 ・・・』
真っ赤な顔で押し黙るマリア・・・項垂れ頭を凭れた月野が確かにと苦笑いをし始めたのだった。

『(笑)話を続けていいか・・・』
比嘉の呟きに笑いながら頷く月野もいた・・・照れた顔でマリアは頷く・・・どうぞと言えなかったから。

『んー、ボスの帰りに会えるって言っろ・・・俺らは何で残る?』
『話があると聞いてます』
『誰から?』
『雫会の主からです・・・』
『どんな?』

『創業者です・・・』
『雫という人に会う?』
『ではなく・・・』
『本家の家族って所か・・・』

『はい・・・恐らくフウカ様の事でお願いしたので・・・と・・・思うのですが・・・

あの・・・そろそろ離して頂けると』

『もう?』
『会って来ようと思います』
『俺も行けるか?』
『申し訳ありませんが・・・』
『確かにな(笑)リン込みで会うか・・・』

『(笑)連れ出しの許可を貰うのか?』
『んー(笑)そうでもない』
『執着してないか?』
『(笑)欲しいもんは手にしてく事にしただけだ。最初で最後にな(笑)』

『あとで揉めないように考えろよ・・ (笑)まじで考えてくれ』
『ん(笑)悪かった ・・・』

比嘉の後ろ姿を眺めながら笑う月野・・・どんな事かと考え始めたマリアに苦笑いをして彼女の視線へ自分を入れた。

『考えなくても大丈夫と信じて(笑)マリアは気にしない・・・』
『会のメンバーは諦めてないので・・・無闇に事を起こしたら・・・』

『(笑)マリア・・・傷一つなく連れ出してく事しかハルは頭にないはずだ。
大丈夫と見守る事をしてくれないか?』
『 ・・・努力します(笑)』
それでいいと抱き締める・・・

『失礼します。フォーザ様に・・・』
『なに?』
苦笑いで離した月野に笑み部屋から出てみれば、入り口から中へと入り込まずに待っていたチーム長がいた。

『明日10時・・・吾川様とフウカ様が出られる時間に下でお待ちすると・・・
それと、騒ぎだしたので鎮めて頂けませんか?』
『まだ、出てない?』

『はい・・・フウカ様を連れ出した時に、お嬢様が伝えていたのですが一向に諦めずです』
『伝えてみた?』
『ほっとけと・・・それで部屋へ・・・』

『声は出せないものね・・・了解(笑)』
『感謝します(笑)』
『ジャイン様を呼んで(笑)』
『さきほど(笑)。今は下へ向かっている所でしょう・・・』

ありがとうと笑みを浮かべたマリア・・・チーム長が手にした紙袋に笑うと着替えと戻るのだった。



雫 14

2019-01-28 08:12:00 | 雫 ーしずくー

木々の中でも明るい場所・・・それでも雨は優しく舞い降りていた・・・

『ここは本当に綺麗な場所だね(笑)』
『そうね(笑)』
『なんで止めなかったの?』
『出れなかったから・・・』
『雨がないから?』
笑むだけの人が優しく自分へ微笑んだ。

『ずっと気になってるね(笑)』
『外はね(笑)、降ったり止んだり・・・激しく降ったり・・・色んな天気があって面白いの(笑)。
そんな天気で気分も変わるから(笑)余計に見ちゃう・・・』
『(笑)何でって?』
そうだと笑うリンに微笑む・・・

『その恵みの雨で笑えたから、今はそんなに気にもしてないよ?』
『(笑)良かった』
『ここで、いつも何をしてるの?』
『(笑)皆を見てるわよ?』
『疲れるね(笑)』

『自分から(笑)見ようとするからよ・・・』
『 ・・・(笑)それを、しなくてもいいって人に会ったよ・・・』
『(笑)マリアを連れて行ってくれた人達よね・・・』
そうだと頷くリンに微笑んだ。

『だからマリアを頼んだの(笑)、そんな場所なら先へ進める場所の気がしたから』
『皆の為に力を戻したの?』
『(笑)やっぱり気がついてたのね』
『ん・・・』
『ごめんね・・・』

『(笑)気にしてない。マリアさんの中で違う気が働いてる気がしただけだもの。
教えてくれた事は嘘でしょ?皆が掟とか言ったけど・・・力が増えたり減ったり・・・普通はない(笑)』

『たぶんとしか(笑)言えないでしょ・・・』
『はい(笑)』
そうだと可笑しくて笑うリンだった。

『おじいさんと(笑)何処で会ったの?』
『(笑)小さな頃よ・・・誰かに連れ出されて・・・車が危険って言ったら、慌てて逃げてったの(笑)』
『その隙に逃げれたんだ(笑)』

『どしゃ降りって言うんだっけ(笑)。激しく降る日だった。
子供だから(笑)驚いたんだと思う・・・送るから乗れって捕まれたの(笑)』
『いい人で良かったね(笑)』

『リンは・・・それ以上、増やしては駄目よ・・・』
『消える?』
『体がね・・・』
『私・・・は・・・』
『 ・・・(笑)』

『ごめんなさい・・・』
『(笑)いいの。・・・・』
リンを見ていた優しい眼差しは、その後ろへ流れた・・・
『おじさんだね(笑)』

気配で知るのか呟くリンの頭を優しく撫でる・・・そっと来た人に笑み返すと同じように頭を撫でた彼も座り二人を眺め微笑んだ。

『(笑)何処まで知れた?』
『んー半分(笑)』
『(笑)そうか・・・知りたいか?』
『はい・・・』
『雫と・・・』
『トウヤ・・・』

『事実を知らなきゃ、これから防げないだろ・・・』
『兄弟じゃない?』
『 ・・・』
『えっとね・・・その辺は見聞きしてるの(笑)。捕まってた時とか・・・同じように捕まってる人の言葉で・・・』
だから聞くというリンに苦笑いだった。

『(笑)雫は一族の中で産まれてない・・・・そしてリン・・・お前もだった』
『でも居たって・・・』
『その人が連れてきた・・・今となっては、その場所も知らないが。
たぶんとしか言えない・・・雫とリンは同じ血筋から産まれてきてる気がする・・・』

『ん?そんなに力はないよ?』
『(笑)雫がマリアの力を交ぜたからだ・・・暴走しないように・・・』
『でも、本当に同じ?雨がない場所で・・・』

『(笑)慣れだろ・・・それも、たぶんとしか・・・』
『 ・・・(笑)』
フッと笑い自分達を眺めていたリンに、何だと見返す・・・

『(笑)何を思った?』
『話してもいい日に聞いた事(笑)
答えは貰った事がなくて・・・今、聞いて本当に知らないから言わなかったんだなーって(笑)そう思った・・・』
『 ・・・(笑)』

リンの言葉に可笑しくて笑う二人・・・その二人の笑みが嬉しくて交互に眺めながら微笑むリンもいた。

『フウカに少しあったのは?』
『 ・・・』
『子供?』
一瞬で二人の笑みは消え・・・悲し気な顔の二人で真実なのだと思えた。

『誰も知らない・・・微かな力があると泣き方で知った・・・だから本家へ連れてった』
『 ・・・何で?ここで・・・』
『本当はそうしたかった・・・だが俺達の子とバレたら危険は増える・・・』

『 ・・・ごめんなさい』
『違う・・・リンのせいでもない・・・、全体に危険な状態だった・・・何処からでも入り込めそうなほどに・・・

逃げずに我慢したリンがいたから、置いて来れた・・・じゃなきゃ連れ去られたろう・・・』

『それでも・・・』
『違う・・・会えなくなったろうし、話す事も出来なくなったろう・・・』
『何でフランに?』
『ジャインが休暇で戻った時に知った・・・争いは好まない父親がジャインの妹が嫁いだソコで育てさせたと・・・後で知った・・・』

『知ってたのに、何で防がなかったの?』
『 ・・・争いに巻き込まれた事を見たから・・・ならばとまきぞいで・・・
それよりはマシと思った・・・おじさんが防いでくれると思ったから。

昔は本当に優しい人だった・・・お喋りだから(笑)余計な事は教えずに来たんだけど・・・』

『フウカの力は先で発揮しないの?』
『遺伝しない(笑)』
『雫の中で育ったからなだけ・・・』
『それでも残ったのは利用されそうだったから・・・逃げる事で使えたらと少しだけ・・・』

『殺されそうだった?普通なら諦めて置いてくでしょ・・・力がないんだもの・・・
なのに分けたって事は、それだけ危険な状態だったって事?』

そうだと溢れた涙も拭かずに頷く雫を優しく包むようにトウヤは抱き締めた。

『私の力は何時までもつかな・・・』
『ごめんな・・・未知数としか分からない・・・
雫はここだから使えるが、リンは雨で使える・・・そして(笑)キスをされても使えてるらしい』

『それは嘘って知ってるよ(笑)、それに、キスされてない。あの人がギュッてしただけで・・・それでも出来たもん』
『(笑)焦ったな・・・契約が残ってたから・・・』

『みた?』
『(笑)冷えた体を温める為って・・・それは知らないものね・・・その時にキスした彼を見たわ・・・
大事にしてくれる人だと思ったからホッとしたの・・・』

『 ・・・怖いね・・・近いって・・・』
『大好きと思えるならいいのよ(笑)』
『 ・・・』
『外で生きたいでしょ?』
『でもここ・・・』

『私がいる・・・
それとね(笑)。謝るけど携帯で続けてくれない?
それは偶然の雨の日でいい・・・』

『それと、万が一を考えて雨がない日が続いたら そっとここへ戻りなさい・・・
その二つの約束を頼む・・・

それとな・・・もう1つ、リンに頼みたい事がある・・・』

そっと心に決めた話を、リンは静かに聞いていたのだった。




警護を連れたリンが部屋へ入ってきた事に驚く人達は恐れ多くと身動きも出来なかった。
皆を眺め警護をしている一人へ目配せた。

『フウカ様を預かるそうです・・・』
『我らが・・・』
『ベル側で預かり・・・他へ預けると聞きましたのでお連れします』
『お嬢様・・・お助け下さい・・・』

誰かの呟きに、静かに出来ないと僅かにクビを降りフウカを探した。
すがる人達が触れようとしたが、警護者は引き離していった。

『皆さんの掟が消えましたが、一切触れる事なく頼みます。
我らのルールは続行です・・・排除させて頂きますが?』
ジッと見据え、増えた警護者達の中で待つリン・・・その前に居た一人が皆へ声にした。

『言伝てがあります。
全員、全てを出し引き払うようにと・・・戻りの許可はしないそうです。
ですから忘れ物はないようお願い申し上げます・・・』

フウカを抱き上げ戻った人が目配せると、出口を開けてリンと一緒に連れ出した。

『主という方から・・・
候補にした子供たちの解放を望む・・・大事に育て生きなさいとの事です』
『それだけ?』
『はい』
『力の事は?』

『何もありません。
最後に、分けた全てを止めるという事もお伝えします』
『 ・・・』
『そんな・・・』

一斉に項垂れた事に驚いた・・・何より自分達が育てた子供の心配はいいのかと眺めた。
誰一人、引き留める者はいず・・・気にかける子達もいなかった事に驚くしかなかった。

静かに会釈した人は仲間を促す・・・そっとドアを閉めたのだった。


『大事に育てた子供を見捨てるのか?』
『それは違うんじゃ?』
『もしかして助けた?残る力があるかもと利用されそうで・・・』
『 ・・・』

『小さな子を育てた人達から引き離すんだぞ?』
『 ・・・』
『気を失ったまま?』
『みたいだ・・・何処に連れてくやら』
それぞれに呟き、静かに歩けば色んな人達が見守るように眺めていた。


『お姉さん!』
呼び止めた子は服装から候補の一人と思えた。
『フウカはどうしたの?』
悲し気に笑み返したリンは携帯を出して見せた。

-全員の力は消えたでしょ?普通という場所で頑張ってね-
『お姉さんとフウカは? フウカは消えたって聞いたよ?』

-記憶もないみたい・・・だから、この場所から離れる事になったの-
『フウカだけ?』
-皆もよ・・・力は必要ない場所で生きるの-

『終わったから?』
そうだと頷くリンにホッとした顔の子供たちに警護者達が驚いた。

『お姉さんも止める?声は?』
-ここを出たら大丈夫みたい。いつか会えて・・・話せたらいいね-

『(笑)フウカは生意気だけど、本当は優しいのよ?』
知ってると頷く笑みで皆はホッとした顔になった。

-幸せを祈るね-
『ありがとう(笑)。お姉さんが守ってくれたから生きれた事は、お母さんから聞いてるよ(笑)大丈夫の魔法・・・』

そう言った子が皆の頭を撫でながら笑っていた。
今度はリンが笑みながら皆へ撫でて抱き締めていった。

『さよならなんだね・・・フウカとも・・・皆とも・・・』
一人の呟きに笑み返すリン・・・
そっとフウカの頭を撫でて離れた子供たちの中を歩き出すリンだった。




雫 13

2019-01-27 01:17:43 | 雫 ーしずくー

抱き上げられて戻されてくる子供たちの中にリンはいなかった。
何より最初に連れ出した彼の言葉に皆が驚き・・・雫関係者は項垂れた・・・雫の終わりが来たのだと知ったから。

その先でフォーザが倒れた・・・
それでも誰一人迎えに行かなかった事に驚いた比嘉は行くべきか迷った・・・スッと出向く人に驚き、視線が集まる・・・

『コウスケ?』
『あー悪い(笑)。理由は後で言うから待ってろ・・・』
中へと進む月野・・・関係者でもないのに奥へと歩く・・・止めようとした者が立ち止まり戻って来た事に驚いた。

『なぜ捕まえないんだ?』
『声が聞こえました・・・あの者へ頼んだから手出しはするなと・・・』
『聞こえなかったぞ?』
『いえ、確かに』
『私もです・・・大丈夫だから戻れと』

仕方ないと見返せば既にフォーザを抱き止め戻って来ていた。
途中の場所から別の場所へ行った事に驚くしかない・・・

『吾川様・・・比嘉様と共に部屋へお戻り下さい・・・』
『今から?』
『あれが終わってもいないんじゃ?』

『すみません、そう言伝てるように申しつかりました・・・』
そうかと仕方なく戻る吾川・・・リンが気になる比嘉は視線を外さなかった。

『比嘉様ですね』
静かに別の一人が促す・・・
『戻りません・・・暫く時間がかかるので、招待された方たちは部屋へ戻って頂きます・・・』

『これは毎回?』
『私は初めて見るので・・・』
知らないと言った人を眺め、もう一度 見返すとリンは更に奥へと行ってしまった。

『お部屋へ案内します』
『帰るまでに会えそうか?』
『待って貰うようにと言伝てはありました・・・』
丁寧に押し出されると比嘉は諦め戻るのだった。



驚いた事に月野は既に部屋にいた・・・自分が使っていた部屋を指差し苦笑いをした顔に何だと先を追った。

ドアは開いていたが、SPという人が入らずに二人で待機し見守っていた姿があった。

『何でココに?』
『聞こえたんだよ・・・マリアを連れ出せと・・・』
『ん?あれはフォーザだろ?』
『近場へ言ったら、その子がマリアだと言った・・・それから戻る途中で曲がれ(笑)とか誘導されてな・・・で、何故かここ・・・』

『 ・・・起きねーか?』
『知らん(笑)』
『リンはどうなった?』
『 ・・・』
月野は知らないとクビをふり、比嘉は視線を警護者へ向ければ すまなそうに小さくクビをふった。

『本物はベル・・・か・・・
潰れてもいいが、あんたらの仕事は消えそうだな』
思わず呟く比嘉に、聞いていた二人が苦笑いをする・・・

『それでも腕がありゃ、何処でも出来そうだな(笑)』
呟き続ける比嘉に苦笑いをする月野はソファーに座らせた。

『入るぞ(笑)』
吾川が声にして入ってきた・・・進藤と一緒に・・・
『(笑)ハルよ・・・』
『はい?』
『可愛かったろ(笑)』

『 ・・・誰が?』
『もしかして途中で現れた人がボスが知る方?』
『あの子だった(笑)。今日で最後かの・・・辞めたなら・・・』
『あの場所から出れんのか?』

『(笑)だったな・・・あの場所は悲しすぎるな・・・幼い子までが馬鹿な大人の餌食にされて・・・』
『ジャインとかいう・・・』

『彼の言葉が本当なら・・・そこで眠る子も狙われてたんだろうな・・・』
『やっぱ女だったな(笑)。にしても力は強そうだ・・・』
『リンを守ってたんだろうな・・・』


『なんで!』
ガバッと飛び起きたフォーザ・・・そして自分の姿に驚き叫んだ。
警護者が会釈する・・・

『知らない女性が、フォーザ様の着替えをし帰られました』
『見た事もないと?』
『はい。初めて会いました』
『 ・・・』

『お嬢様は戻られていません』
『こちらで待機をと指示されています』
『私も?』
『はい・・・』
そうかと眺めれば、見返す人は3人だった事で自分の居場所を知った。

『君の力はもうないのか?』
月野が呟く・・・
『 ・・・前から ありません』
フォーザは驚き月野を見返した。

『ジャインという男が話をしてた・・・フウカよりも力はあったと・・・
それから、今は失っていると・・・』
『 ・・・』

『(笑)ココから出たら、誰かに声にするつもりはないから安心しとけ』
『お嬢様がお世話になりました・・・』
『いつ戻る?』
『 ・・・』

『雫を消したら、リンだけが狙われるのか?』
『 ・・・』
『そーなるだろ・・・もともとベルだけの力なら、今あるリンを囲いたくて探し出し狙うだろ・・・失ったか出来なくなった事を知らせる方法は考えてあんのか?』

『 ・・・』
『(笑)そこの彼らも声にはしないさ・・・それが決まりでプロだろ。
マリア(笑)、近場にいるなら信用してる証拠と悟っとけよ(笑)・・・』
SP達を眺めながら彼女へ話した。

『えっ・・・』
『マリアって名だろ(笑)。コウスケが迎えに行って連れてきてんだぞ?
そん時に名前を聞いたんだってさ(笑)可愛い名前だな』
『 ・・・』

遠慮なしの会話に驚き、名前の話になり苦笑いをし・・・少しずつ恥ずかしくもなってくるフォーザの照れに笑み返す比嘉だった。

『行くあてねーなら、リンと一緒に お前も来い(笑)。コウスケが囲ってやるってさ・・・』
『 ・・・』
『ハル・・・そんな適当に・・・』

『一緒に来りゃリンも安心、マリアも安心だろ(笑)。ついでにボスのガキも来たら全部に安心になんねーのか?』
『 ・・・』
比嘉の言葉に驚いた顔は出来上がった・・・

『ま、ボスが引退したら一般人だろ(笑)まとめてソコに押し込めば何とかなんだろ』
『 ・・・(笑)そこまで考えてたのか』

『(笑)ボスの顔は娘を見る目だったろ・・・子供を作りもしねーのは、家業のせいだろ(笑)そこに家族を置く不安・・・』
違うかと見返せば正解という笑みだった事に笑う比嘉もいた。

『にしてもだ・・・リンはおせーな・・・』
ふと呟いた比嘉だったが・・・背凭れへ身を埋めてマリアを眺めた。


『お嬢様はココに?』
ふと気になり彼女はSPへ聞いてみた。
『分かりません。我らもココで待機と』
『連れて来るか・・・どう・・・』
『いえ、フォーザ様はココに・・・待機という事でしたので頼みます』
新たな会釈に項垂れたフォーザもいた。

フッと笑う比嘉に視線が飛ぶ。
『不思議だよな(笑)。名前を聞いてマリアって知ったら、前のフォーザは何処に行ったか聞きたくなった(笑)そこまで徹底した腕は凄いな』
『 ・・・』

『雨に浸り続けてて風邪を引く事はなかったのか?』
『 ・・・お嬢様はありません』
『リンは何で倒れる?気を失うのは集中したからか?』

『 ・・・自分の意思で始めるからです』
『あー急に力を使ったからか・・・』
『数は多いですか?』
『んー会った頃は数回・・・それでも会う前は入院してたらしいぞ?』
『 ・・・』

『わしも・・・聞いていいか?』
吾川が会話に交ざる・・・どうぞと頷くフォーザもいた。
『あの子の名前は・・・もしかして』
苦笑いをしながら、そうだと頷くフォーザに口を引き納得するように笑み返した。

『(笑)お会いした事があるんですね』
『小さな頃にな(笑)。それでも確実に守れなんだ・・・それさえ知るように笑ってたな(笑)』
思い出すように微笑んだ吾川に優しく笑むフォーザだった。

『生きてんのか?』
『はい・・・』
『来れんのか?』
『いいえ』
『本家は全部こっちにか?』
『 ・・・』

『(笑)テレビの見すぎか? (笑)力を持つ子供が産まれる血筋・・・それが あの場所・・・違うか?』
『 ・・・』

『(笑)ガキが力を失う・・・
本当に出来るのは雫だけ・・・他より、たまたま力が出たリンに加えて出したって所か?』
比嘉が会話に割り込み呟いた。

『 ・・・』
『(笑)言わねーよ。俺には必要ない・・・助かったけどな・・・
リンは、もしかして雫の娘?』
『 ・・・?』『えっ』
『ん?』『はぁ?』『えっ・・・』
室内に驚いた声音は重なりをみせた・・・それはSP達までだった。

『触れたら力が失うって話は嘘だろ・・・
雨の中で見てる時・・・誰かに触られる事に怯えてる・・・探る力が遮断されるからか?』
『恐らく・・・』

『雨の中でリンに触れた人の先が読める・・・誰かの姿を思い出すと見れる・・・無意識に見る先は細かい(笑)、無理やり見れば気を失うほどに疲れるってところか・・・』

『だからお嬢様へも触れないで貰えると・・・』
『(笑)キスは?』
『当然ダメです!』
『力は消えないだろ(笑)』
『 ・・・』

『マリアが何処まで知るか分からないがな・・・知らないままにリンに寄り添うな。真実を話してやれよ・・・』
『比嘉様・・・』

『全部に我慢して誰かの為に生きてんだぞ?
その理由くらい教えてやるべきだ』
そう言うと比嘉は寝るとソコから離れて行った。

『マリアさんは始まりの一人?』
『はい・・・・』
『(笑)頑張ったな・・・』
月野に言われたフォーザは驚きながら見返した・・・

『ハルの想像だけど(笑)、マリアさんは雫さんの妹とか?』
『 ・・・いえ』
『リンは娘?』
『知りません・・・育ての方はいましたが・・・』

『本当に小さな頃までだよね(笑)』
『なぜ・・・』
『これは俺の想像(笑)』
『はい・・・』

『親から受ける無条件の愛情を抱いた事はないから、自分が心から受けた嬉しさでお返しのように返してる気がしてる・・・

力を持つ自分でなくて、自分自身を見る相手だけ・・・気になって力を使ってるんじゃ?』

『 ・・・』
『(笑)俺達の仲間もそうだ・・・知らないからな・・・相手が傷付いた理由に気付けない。
(笑)抱いて温めてくれる優しさを貰った事がないから・・・相手に与えられないんだ。

だから思ったその時の思いだけで動く・・・(笑)リンは礼だと力を使う・・・普通はない雨の中では可哀想に思う・・・風邪を引きそうだと止めるが、心配された自分が嬉しくて・・・

(笑)そんな思いを繰り返してるんじゃないかと思った・・・今回の話を聞いたからかも知れないがな(笑)』

『心配して頂き・・・・』
『(笑)ストップ。それはリンと話せたら聞く。マリアさんへ、何もしてないよ?』
『 ・・・お礼を』

『して欲しくてココに居るわけじゃない・・・
(笑)ハルなら会いたくて・・・俺は仲間が助かったから礼を言いたくて・・・たんにそれだけだ(笑)・・・』

『(笑)ありがとうございます』
いいやと笑み返す月野に、苦笑いをする・・・


警護者へ連絡が入る・・・了解と呟きフォーザへ振り向いた。
『警備は室外になりましたので、ドア前で待機します・・・』

それだけいうと彼らは部屋から出ていった。
迷うように携帯を眺めるフォーザに、口を引き眺めた。

『お嬢ちゃんよ(笑)。連絡が来るまで休みなさい・・・』
『ボスも大丈夫ですよ(笑)、ホテル見学でもされたらどうです?
進藤さんが暇そうだし(笑)』
確かにと笑う吾川も部屋から出たのたった。