『雨女だな(笑)』
『まさか出掛けに降りだしてココまでって(笑)、それでも祝いの雨かもしんねーぞ?』
ようやく戻れた家の中で寛ぐ二人の会話だった。
帰る準備をしながらも、二人は車を建物の前に寄せ準備をした。
月野が荷物を取りに中へと戻っていった。
霧雨のように舞う本当に小さな粒が、どこへ落ちると迷うように動いているようで それを眺めながら皆を待った。
スッと現れた一人の男がいた事に気づき視線を向けた。
『リンの叔父にあたります・・・
この先・・・本当に雨の中へ入れない日が続くなら、一度ココへ戻して頂く』
『絶対?』
『リンは・・・出される事が多く・・・雨と長く離れた場合、本当にどうなるか分かりません・・・』
『雫という人は?』
『ココから遠く離れた事はありません・・・ですが雨がない場所では体が弱っていきました・・・
自ら雨の中へ入った場合は止める事なく置いて下さい・・・』
『なら・・・弱る前に戻し、また連れ出すが・・・』
『本人が望むなら・・・
それから、自分から力を使わずにすむ生活を頼みたい・・・』
『(笑)・・・リンの性格を知ってて言う・・・言いますか?(笑)自分から雨の中へ入るのに・・・
ま、それでも俺が見たなら止めるが・・・』
『どんな状態かは(笑)知るのですね』
『無意識(笑)・・・そうじゃないなら止めてく事にします』
『(笑)助かります』
『 ・・・力が消えたら・・・リンも消えるんですか?本当に消え去る?』
『 ・・・雫と生き方が違うので、本当に誰も知りません・・・
その覚悟を持っていけないなら・・・どうぞリンを返して下さい・・・』
『抱いてい?』
『 ・・・』
驚いて声を失った叔父に苦笑いをしながら視線を外した。
『ガキって分かる・・・最初は本当に手も出したいと思わなかった。
何だかな・・・いつもと違う事は気付けた・・・』
『試したいと・・・』
『(笑)試さない。それはリンが大事で・・・そばに置きたいだけだ』
『(笑)それで何故、聞きました?』
言い返されて苦笑いしかない・・・少し考え自分はと男へ話始める比嘉だった。
『使い果たして消えるなら・・・使わせないが、暫く仕事をすると言った・・・・先の事は今の自分が何とかしてれば、回避も出来る。
その場で起きても同じ・・・だから力のあるリンは必要でもないが・・・普通の・・・リンは俺には必要だと思えた。
・・・それは全部・・・いつか・・・手を出しそうで・・・』
『 ・・・全てはリン自身が決めて来ました(笑)幼い頃から・・・・
迷うなら、二人で話してみたらどうです?』
『 ・・・』
『愛したなら尚更・・・預かる子供としてではなく・・・共に先へ生きたい人として・・・触れたいと思う理由(笑)お探し下さい・・・』
『 ・・・理由か』
そう呟きながら考え始めた比嘉だった。
荷物を転がす音に気づいた比嘉は、帰ると言おうと 自分と話していた人を眺めたが・・・既に姿はなかった事に苦笑いしかなかった。
リンの叔父・・・大事に裏で守り育てた人なのだろうと思えたが・・・今更だが失礼な事を言ったとヤバいと焦る比嘉だった。
自分が口にした言葉に苦笑いだった・・・思わず・・・それだけで口にしたが、本当に申し訳ないと思え 謝るように静かに会釈し頭をさげた。
トランクへしまう月野・・・項垂れたままに車へ寄り掛かる比嘉の前にリンが佇んだ。
『構わないから自分の先へ行きなさい(笑)。君が大丈夫なら・・・』
『ん?』
『これは、何の事?』
『俺に?そう言えって?』
そうだと頷くリンを近くへ引き寄せ、腰を抱いて彼女に笑み返した。
『お前が出来る事を出来るまでしとけ・・・それがリンの生きていく先なら構わない・・・』
『 ・・・何を話したの?』
『(笑)大人の話・・・』
『 ・・・』
『(笑)俺は俺らしく・・・迷うな』
『何の事かも知らないのに?
・・・もう少し子供にも分かるような言葉で教えてくれない?』
『(笑)少しずつ教えてやる』
『 ・・・』
不思議そうに見返すリンに笑いながら彼女を引き寄せれば額が触れる。
『私の何を(笑)探りたいの?』
『(笑)全部』
『 ・・・』
押さえられている自分の首にある手を離そうとするリンが可笑しくて笑う比嘉もいた。
『ハル、じゃれつくな(笑)。帰るぞ』
『ん(笑)』
苦笑いをした比嘉はリンと後部席へ入り込んだのだった。
雨の中、車の窓をあけて凭れたリン・・・風と一緒に顔へ受け止めるように眺めていた。
優しく頭を撫でる比嘉の手に笑み、そのままに眠り始めたリンだった。
見覚えのある場所で目覚めた自分・・・動かされても眠っていた事に気付けば可笑しくて笑う彼女がいた。
寝返りをする・・・温かな布団だと眺め・・・目の前に彼がいた事に驚いた。
『(笑)あったまったか・・・』
『ん・・・(笑)ありがとう・・・』
ならいいと照れた笑みで返されたリン・・・比嘉はそのまま眠りへ入り込むように目を閉じた。
穏やかな笑みの彼の優しさに、ふと手を伸ばす・・・そして自分が何も着ていない事に気づいた。
驚き・・・叫びそうな自分の口を押さえ・・緊張しながらも静かに寝返りをした。
出るに出れない状態・・・何でも何度も頭の中で考える・・・まずは服だと探し始めるリンだった。
フッと溢れた笑いは背中の方でした・・・そうだろう、比嘉が脱がせた事は知る・・・それでも恥ずかしくて服だと辺りを眺めた。
スッと自分へ触れる手が前へ伸ばされてくる・・・驚かせないように・・・そんな感じと分かるが、既に遅くドキドキした音は自分から激しく鳴り響いた。
お腹を通り過ぎ下側にある腰へ滑り込んだ彼の手は自分を簡単に捕まえ引き寄せられた。
彼の身へ触れた事も分かる熱さは余計に恥ずかしくなった・・・祈るように指を絡め自分の前で抱き込む。
その手を包むように彼の手が重なった。
『(笑)冷たい雨は駄目だ・・・冷える前に諦めて戻れ・・・』
いいなという彼の声に小さく頷くリンもいた・・・
『はなっ・・・』
『 ・・・(笑)はな?』
『は・・・』
『体が冷えたからだろ(笑)。一番早くあったまる・・・前にもしたぞ?』
『だっ、だけど・・・』
震えた声音に笑む比嘉は彼女の肩へキスをした。
『んーごめん(笑)。その時を思い出したから抱いてる・・・』
『駄目なんだってば・・・』
『消したいと思わないのか?』
彼の言葉に驚いて比嘉の顔を見たくて振り向けば、優しい笑みの顔だった・・・片手が離れたが頬へと場所をかえた比嘉・・・優しい笑みは近付き口付けられた。
驚いて彼の目を見る・・・触れた唇が微笑んだ・・・
『何があっても自分は出来ると思え(笑)本当に出来ると知ってるだろ』
『 ・・・』
『(笑)前は本当に無意識にキスしてた・・・だけどリンは雨の中へ入ったし力は使えてたろ?』
『 ・・・』
『(笑)これも知らなかったですますか?』
驚きながら彼の声を聞いていた・・・答えようとしたが彼の唇で塞がれ声を出せなくなった。
彼の優しい笑み・・・見守るような笑み・・・前と変わらない笑み・・・それが自分へ向けている笑み・・・
『大丈夫だ(笑)』
声音まで優しく自分へくれる事が嬉しくて・・・不思議と自分へも笑みが溢れてくる気がした。
笑みの近さに照れれば、それは同じなのか照れた笑みのようだった。
離そうとした手が捕まり彼の手で連れ行かれた。
抱けと言うのか、彼へ回した状態に比嘉を見返した。
張り付かせた彼に驚く・・・
『えっと・・・ね・・・』
妙な違和感に彼を見ながら呟くが・・・
『我慢させてる・・・(笑)』
『ごめんなさい・・・私は・・・もしかしたら・・・えっと・・・子供で・・・』
『今はしない(笑)。だから我慢してると言ったろ・・・ほっとけよ・・・』
『 ・・・手・・・おしりの手・・・離し・・・』
『離したらリンを抱く手が始まるからだ(笑)』
『これが我慢なの?』
苦笑いしながら笑みで返事をした比嘉に微笑んだリンだった。
『気になる・・・』
『(笑)・・・・・外したら俺が(笑)ヤバい・・・』
『 ・・・誰かいるなら呼ぶ?』
『リンは皆に(笑)体を見せんのか?』
『 ・・・』
だよなと笑う彼女へ優しく口付け始める比嘉だった。
深く絡み付き逃げる彼女を追う・・・あがる息の熱さを出させながら彼女を見つめ温かさに浸る比嘉だった・・・
深く眠りだした彼女に笑み・・・我慢出来ずに彼女に触れ忍ばせた唇を止め額を預けた・・・
リンの歳は十代だったと思いが過り・・・暫く仕事をすると言った声が甦った。
眠り込んだリンだった・・・彼女の意思を無視し始めそうな自分・・・舌で味わうように触れたい衝動は無理やり引き剥がした。
何処までも自分の中へ連れ込みたい思いに気付けば、リンを愛した自分なのだと自覚した気がした。
自分の思いだけを無理やり捩じ込む気もした・・・それが今、自分がしている事かと苦笑いだった。
本当に無意識に触れている・・・自分の唇が触れている・・・止められそうにない・・・今は止められるのに、そう考え始めれば触れていた唇があった。
リンの腰を捕まえていた自分の手が温まる・・・気付いたリンの手が重なった事を知った。
潤ませた彼女の瞳が揺れる・・・泣きそうな悲し気な目でもない事は気付けた。
吸い込まれそうな彼の目を見つめる・・・嫌でもない触れに気付いた・・・我慢といった彼の声が聞こえ・・・苦しそうな潤む目・・・自分へ触れる笑みの交じり・・・
『えっちな目をしてるよ(笑)我慢って言ってたのに・・・』
照れた笑みで声にせずに頷く比嘉に
笑み返した。
静かに浸り始めた比嘉に微笑んだリンもいた・・・
『比嘉さんの』
『ハルでいい』
『 ・・・』
『ハル。呼び捨てろ』
『ハル・・・手を止めて・・・』
『(笑)大丈夫だ・・・自分を信じろ』
少しずつ・・・彼の声が響く・・・分かったと言いたくて小さく頷く自分にも照れたのだった。
目覚めれば朝だった事に驚いた・・・眩しくて布団を被るリンだった。
『ん?これなに?』
驚いて自分の手や足を見ながら呟いた・・・体へもあった事で余計に自分を観察し始めた。
何だろうと考える・・・何より雨音がする事に気づくと、着替えを探し着込むと庭へ出た。
不思議と、あの場所から出た自分が不安だった・・・だから雨に触れたくて身を置いた。
懐かしくて昔を思い起こす・・・
あの場所で微笑む二人の姿があった・・・優しく笑みかけてくれる二人・・・それが嬉しくて微笑んだ。
フッと笑う・・・振り向けば自分を捕まえようとした比嘉の驚いた顔があった。
『気配?気配を読んだのか?』
『(笑)私を指差して笑ってたから・・・二人の視線は私じゃなかったけど』
『 ・・・』
口を引いた比嘉が苦笑いをしてリンの腕を掴んだ。
中へ戻れと歩き出すが・・・その手を掴み彼を眺めた。
『 ・・・』
『教会に行くの?ストライプのネクタイをした人がいる?』
『 ・・・兄貴に・・・呼ばれ・・・た・・・からな・・・』
『 ・・・』
遠くを見るように視線が飛んでいったリン・・・掴む手は両手になった頃、視線は自分へ戻ったようにみえた。
『これから行く準備をするから、先に声を・・・行ってくると・・・だけ・・・』
『その人が銃で撃つ・・・』
『誰を?』
『2人・・・3・・・4・・・何でフウカも?』
『いや?ボスだけのはずだ・・・が・・・。行かないとヤバい・・・話もあるが挨拶もする・・・欠席は出来ない』
『月野さんから比嘉さんと吾川さん・・・驚いて車から飛び出てきたフウカが走って来て・・・撃たれた・・・』
『まだ、撃たれてない。
そのストライプのネクタイをしたヤツがするのか?』
そうだと頷くリンを眺め抱き締めた。
『防ぐ手は考える・・・上の呼び出しは絶対だから行かなきゃならない』
『でも・・・』
『ここにフウカを連れてきて貰う・・・それから出向く・・・撃たれても掠り傷にしとく・・・
行かないフウカの変更で、見たモノが変わるのか?』
『聞いた事はないけど・・・行かなかったら消えるから・・・』
『リンを置いて死なない。
それより見れたな(笑)ちゃんと・・・』
『 ・・・』
『(笑)意識を飛ばさなきゃ、ふかーく感じれたのにな(笑)残念だろ』
顔が熱くなった・・・恥ずかしくてうつ向けば頭へキスをした比嘉が抱き上げ部屋へと連れ行かれたリンだった。
静かな空間に楽し気な声は響いていた。
マリアの声・・・そしてフウカの声だった。
弾む話に笑みを浮かべ・・・リビングへ出たのだった。
夕飯をすませた後も楽しい会話は続く・・・フウカの笑みにホッとしたのだが、どうしても気になり庭へ出る扉をあけるリンがいた。
静かに踏み出す・・・既に空は夜へ変わっていたが、止まない雨は降っていた。
ポツッと可愛い音が始まる・・・その音に笑みを浮かべるリンが、もっとと足を前へ踏み出した・・・が、不意に身を引かれ抱き込まれた事に驚いた。
『大丈夫だった。見なくていい・・・』
微かな匂いに本当に擦り傷は出来た事を知った。
それでも自分のそばに来た彼にホッとしたリンは体の向きを変えて比嘉を抱き締めた。
それに驚いた比嘉は室内で見ていた月野へ視線を飛ばす・・・同じように驚いた顔だったが、口を引き笑うとマリアを促し迎えに来ていたボスにフウカと帰れと見送ったのだった。
『 ・・・今は大丈夫かと見なくていい(笑)、最初のが一番で防ぐ努力はしてきた・・・だから大丈夫と安心して寝とけ。寝れないなら遊んでろ(笑)』
大丈夫と優しく背を撫でた比嘉の呟き、分かったと頷くリンに笑みを浮かべた。