tamiのブログ

このブログ・・・妄想ー空想大好きな私が、勝手に楽しんで・・・勝手に文字にしています。ボロボロですが(笑)

アンリッシュ 3

2019-02-28 09:30:45 | アンリッシュ

雑音・・・久しぶりに来てみて驚いた・・・たった数日、物静かな場所にいただけなのに自分で来た場所の音の激しさは耳が痛いと叫びそうなほど戸惑った。

久しぶりに会う弟の様子に笑いながら眺める彼がいた。
確認と報告・・・打ち合わせと話に来たのだろうと待ち合わせの場所にやって来た。

時々だか耳を押さえ辺りを眺めては嫌そうに 項垂れていた姿が可笑しくて笑えた。

苦笑いで返す弟に笑み、人を離し二人で奥の部屋へと入り込んだ。


『何で(笑)そーなってる?』
『(笑)物凄く静かな場所だった・・・』
『(笑)どれだけ』
『んー ・・・自分の息遣いが大きく聞こえる位・・・(笑)』

本当かと疑うような兄 颯の笑みに、事実だと頷く蒼・・・それでも信じられないと眺めていた。

『(笑)中まで入ってはいない・・・回りを調べてただけだが(笑)夜は自分の息遣いだけ・・・だから昼間に探してたんだ(笑)』
『(笑)何処にいた?』

『屋敷の裏手・・・(笑)東側にいた・・・本当に広い敷地だった・・・広大な私有地だからか柵はなかったが(笑)あれは森・・・山奥っていえるな(笑)。
そこに高い塀で囲って監禁されてる・・・(笑)久しぶりに木登りしたぞ』

『(笑)マジか』
本当かと、それでも楽しそうだと笑う兄に苦笑いだった。

『見張りも?』
『広すぎて頻繁に見回ってなかったが・・・・』
『監視カメラで?』
『(笑)音』

『ん?』
『(笑)見回りの時に中の音で確認してるだけだった・・・』
マジかと笑う兄・・・

『車で移動したい位だった(笑)。警備の奴等も途中まで車で来て歩いてチェックしてた。
音で探るように(笑)、それと夜はライトを照らして、あちこち・・・へんな警備の仕方をしてるから焦った(笑)』

『中は?』
『あー(笑)、それほど外に出てるって事もない・・・殆んどは家の中に居る。
誰も塀の中まで確認もしてなかった。それに鍵がな(笑)門の外から頑丈なヤツでされてたから出る事もないんだろうな・・・』

きっとと見て来たモノを思い出し笑っていた。

『家の中だけか・・・(笑)テレビ見て時間潰してるとか?』
『(笑)知らねーよ。少しだけ暗めの明かりでいるが、直ぐに消える(笑)何で楽しんでるやら・・・』
蒼の様子に驚く・・・女が一人、囲われた中で生活する日々・・・どんな女か見たくなった。

『囲う奴は行かねーのか?』
『ない(笑)、と思う・・・見たのは全部、警備の奴だけだった。
屋敷の出入りは外へだけで、女の所へ行く姿は誰一人ない(笑)』
『(笑)緩いな』

『だから余計に何で縛ってんのか調べないとヤバい(笑)』
『見てーな(笑)』
『(笑)彼女が怒るぞ』
楽し気な兄の呟きに笑う蒼もいた。

『見るだけだ(笑)。後の方法は考えるがな・・・(笑)面倒だから女は任せるから探しとけ』
『マジ?俺?』
自分がするのかと驚いた蒼は兄の顔を眺めた。

『(笑)いつする?』
『屋敷の娘が婚約したんだとさ(笑)。その祝いで花火をあげるそうだ』
『すげーな(笑)』

『(笑)似たじきに祝い事があって、その度に花火をあげるそうだ。
だから、その音に紛れて連れ出す事にした』

『(笑)人は増えんじゃね?』
『だから(笑)入れんだろ。女の顔も近い奴だけだろうし(笑)取り合えず簡単に』
『さらっと(笑)連れ出せ』

『なー(笑)マジで俺?』
『 ・・・(笑)』
心配なのかと笑う兄だった・・・・




行こうと手を伸ばす・・・その手に見向きもせず空を眺め微笑んでいた彼女がいた。

夜空に綺麗な花が咲く・・・柔らかな明かりに照らされる様が綺麗だと眺めていた。

『行こう・・・』
そう言ってみれば、本当に驚いた顔で自分を見た事に戸惑った。
『見張りが薄い今だから出れる。それもバレずに出れる・・・』
だから行こうと手をより彼女へ向けて出した。

『先に出ます!』
後ろから来た人が何かを持ちながら歩いて行ってしまった。
『待って!それを持って行かないで・・・』

『大丈夫だ(笑)お前が大事と言ったから、丁寧に運ぶ。ちゃんと壊れないように大事に持ってけと行ったから』
『だけど・・・』

そう言いながらも迷う彼女だった・・・それでも駄目だと思い直したのか、行かないから返してと言いながら追い掛けた。

背丈もある身も隠せる程の雑草が伸び、塀が近い場所から入り込んだ。
この辺は来た事もなく手入れも、した事もないようで・・・年に一回、手入れしに来る人達も何もしない場所だと調べて分かった。

端にある壁・・・その下の角を開く・・・ソコから男は出ていってしまった。
驚き過ぎて声にもならず立ち止まる彼女の手を引いた・・・

されるがまま・・・促されても暴れず叫びもない彼女は諦めたように・・・穴へ押し込まれても声にも出さなかった。

そっと手を繋ぐ彼は辺りを探りながら歩き出した・・・枯れ葉の踏む音はすれど、花火の上がる音でかき消されていく・・・楽し気な声音は聞こえ始めれば彼は彼女を抱き込んで静かにと囁き素早く場を離れようと歩かせた。

ようやく駐車していた場所につく・・・既に上がる花火の音はなく・・・車に乗せた彼も隣へ乗り込んだ・・・
助手席で待っていた男は、そっと彼女の膝へゆっくりとそれを置いてくれた。

『ありがとう(笑)・・・大事にしてくれて・・・』
箱に入れられていたが、壊れないようにか衝撃吸収材のような柔らかな素材のモノで包まれてもいた。
両手で抱き締める・・・

愛しそうに抱く箱・・・心から大事にしていたモノが手元に戻った安心感からか微かな笑みを浮かべる彼女・・・良かったと、一緒だと思えホッとしているのだろうと思えた。

走り出しても、暫く眺めていた・・・それは微動だにせず、ずっとだった事に驚いた。
自分がどんな場所にいたのかさえ気にもとめない・・・これだけが全てと優しく自分で抱いていた。

車を乗り換えても、回りが声にしても全て自分には関係もない事と気にしていなかった。

『気にならないのか?何処に行くかとか・・・』
どうにも自分が気になり声にしてみた・・・
『約束したから・・・見つけてくれるでしょ?』

『 ・・・あぁ』
『待つ場所を貰えたら十分・・・』
それだけ言うと窓から外を眺め始めた彼女に戸惑った。


静かに朝陽が登り始める・・・空に舞う鳥がいただけで笑む・・・微かに見えた聳えるビルに驚く・・・見るモノ全てが初めてだろう視線・・・僅かに微笑む彼女に怖さはない事は不思議だった。

移動中に兄と連絡を取る・・・そして彼女を隠す場所は決められた・・・



捨てられたように聳えるビルの屋上・・・野晒しにされただろう建物・・・それは辺りまで同じ廃墟といえた場所だった。

それでも、この建物は兄が管理している・・・勝手に入り込む事も出来ない場所だった。

行ってみれば取り合えずだろう兄の手下達が掃除をしていた。
何処からか持ってきたベッドまである・・・眺めてみれば、マンションだったと分かる・・・それはキッチンやバスルームはあったからだ。

一応と水を出してみれば使える事に可笑しくて笑えた。
『とーぜん使えるさ(笑)』
不意に現れた兄の声に苦笑いだった。

『去年は逃げてた奴を匿うのに使ったしな(笑)。それから使ってもないが・・・外から見える場所の明かりはないぞ・・・』
『蝋燭で間に合う(笑)』

『ん?どんな暮らしだ?』
『あー・・・電気を使ってたのは(笑)冷蔵庫・・・キッチンだけだった(笑)』
凄いだろうと呟いた蒼に驚きながら女はと探した。
『驚き過ぎて(笑)今は景色を楽しんでる・・・』

彼女を促し連れてきた・・・室内に驚き、バルコニーへ出た姿があった。
その景色に驚いて立ち止まったまま動かなくなり・・・辺りを眺めジッと見つめていた・・・


何もない屋上ように広がる場所だった・・・屋上に部屋があるような・・・
本来なら贅沢に使える場所・・・整備されていたのだろう花壇の跡まであった・・・

空を眺め微笑んでいた彼女に驚いた・・ 何処だと探してみれば連れ出された怖さも持たず、今ある場所で暮らす楽しみを持つような笑みの気がした。

壊れそうなほどに細い線・・・髪は纏めてはいたが女ならではの手入れはしていない気がした。

『女だが・・・女じゃねーな(笑)』
『手は出すな(笑)。逃げたら、どー出るかも分からない』
『ん?』
どんな意味だと弟を眺めた。

『生きる約束(笑)それだけで来てる・・・出たのは世話をしてくれた人の墓参りをする事(笑)だから探してくれと頼まれた』
『条件?他は?』

『外での生活が出来るまで俺が教えてくれるなら(笑)そう言った』
『(笑)保護者にされたのか』
笑えると体を小さく揺らし笑う兄に苦笑いしかなかった。

屋上の端を教えるように連なる花壇・・・その端に歩き出した彼女を眺めた。
残され生き延びたような花が可愛く咲いていた。
そっと触れる彼女の指を眺めた。

『まー食料は運んどいた(笑)、何とかなんだろ?』
『たぶん(笑)』
『仕事(笑)休んで女に付き合え』
『 ・・・』

『逃げ出したらどーすんよ・・・見学って勝手に出たら?(笑)やべーだろ』
『大丈夫なように手は回してくれたんだろ?』
『一応(笑)。俺が見張ってアオが囲う女って事で、(笑)手は出さずに報告しろとは言ってある』

『兄貴・・・』
理由はそれかと、勘弁しろと見返せば笑って肩で手を振りながら帰っていってしまった。

『蒼さん。俺らは貴方の下へ就く事になりました』
『たぶん女を回りへ知られないようにかと・・・なので出さず蒼さんの指示に従えと・・・兄貴が・・・』
言われたのだと、すまなそうに呟く男に苦笑いだった。

『 ・・・一緒に住むのか?』
『あー(笑)それは蒼さんの役目で、俺らは隣の部屋に準備してあるそうで(笑)すみません・・・』
『さっきのエレベーター前のドアだけです。鍵は3つ(笑)俺らは1つ持たせて貰います』

『俺と彼女の?』
『たぶんとしか(笑)』
了解と受け取り彼女を見返せば、花壇へ上ろうとした姿に驚いた・・・
手下の一人、イチが慌て走り込み彼女の手を掴んだ。

『古いんで落ちます・・・』
『ごめんなさい・・・どれだけ高いか見たくて・・・』
『 ・・・』
『お前な・・・脱走した事が早くバレるだろ・・・
確かに回りに建物はあるが、顔を出せばココにいるとバレる・・・』

『ごめんなさい・・・』
『いいか、下は覗くな』
『ココに出ても平気?何処まで歩いてもいいですか?』
『下から見えない場所・・・は、知らねーな・・・ユウ!』

『はい!』
『確認してペンキかなんかで(笑)線を引いてくれ』
『マジっすか?』
驚きながら、慌て叫んだ声に苦笑いしかない。

『あー大丈夫っす(笑)。
手摺から覗かなければ見えないはずです・・・回りは上がれません。
全部出入り口も階段も塞いでありますから(笑)・・・火を起こしたりとか・・・住んでる感じに見えてないはずなんで』

『回りに住んでる奴は?』
『(笑)基本、使ってる女だけっす。店に出しても逃げるんで、逃げない条件で住まわせてます(笑)』

『ココは?』
『(笑)ボスの許可なく入れません。
下3つばかり許可された奴しか住めてません』
兄の下、トキタとトモヒロが交互に声にした。

『上には?』
『知りましたでしょ(笑)専用キーって・・・それが無ければ入れませんし乗れません(笑)』
徹底した作りに笑う・・・見た目は廃屋なのに、ちゃんと住んでいる人は居た事に・・・

打ちっぱなしのコンクリートは剥き出しで、それぞれの部屋を区切るドアさえなかった。

『(笑)蒼さん。戻っていいですか?』
『ん?』
『俺らは明日から住むんで(笑)』
『あー荷造りか(笑)』
『はい(笑)。蒼さんのはボスが準備してます。女・・・彼女・・・
あの人のは蒼さんがすると(笑)聞いてました。それでも一応って少しだけですが準備はしてあります・・・』

聞きながらも驚き声を失ったように押し黙る蒼に、すまなそうに説明はしていくトキタだった。

頭が痛む・・・そんな気がして項垂れていく蒼・・・諦めたように額を押さえ準備してこいと彼らを行かせたのだった。


辺りを眺め自分が住む場所の見学だと歩き出す彼女・・・タオルを見つけ、ソレを置く為の場所を丁寧に拭きあげた。

そっと飾る・・・キッチン内を眺め、見つけたとグラスを一つ取り水を汲む。

外へ出て行けば咲いていた花を一輪摘んできたようでグラスへ差し込んだ。
笑み見つめ静かに祈る・・・その笑みの優しさに見惚れるように眺める蒼だった。


『お仕事って・・・』
ふと思い出したのか、自分へ振り向いた彼女が呟いた。

『探してる・・・だが暫くは駄目だ・・・様子をみないとな』
『 ・・・ここに住んでもいい?』
『そうだ・・・』

『あっちも使って大丈夫ですか?』
指を指して言った彼女の指差す方を眺めた。

『屋上で何をする?』
『あ・・・材料がありませんね(笑)』
『何を作る?』
『んー椅子(笑)ベンチというモノです・・・晴れた日に外で過ごせるし・・・』

『買ってきてやる(笑)』
『売ってるんですか?拾ってきてくれるんじゃなくて・・・』
『 ・・・』
『もしかして、洗濯物を干すモノもありますか?』

『 ・・・・どうやって洗って干してた?』
『えっと・・・バスルームにあるボールで洗って・・・絞ったら外のベンチに・・・
バァが居た時はロープを使ってました・・・だけどココは、紐もないし・・・紐を縛れる場所もないし・・・お布団を干せる・・・』

場所もないと、すまなそうに見返す彼女を眺めた。

苦笑いだ・・・初めてみた場所で自分を生かす努力をした彼女に・・・何を見聞きしても一瞬で受け入れていく事に。

使い方を教えれみれば自分で始める彼女に笑った・・・それが恥ずかしいのか照れた笑みで始める彼女だった。

身綺麗にした彼女が髪を拭き、そのタオルを巻き付けて食事の準備を始めた。

眺めのスカートは今は彼女の胸から下へワンピースのように着ていた。
楽し気に作っている間にバスルームへ入った。

手際もいいのか、出た頃にはキッチンカウンターに置かれていった事には驚いた・・・

『こーしてくれたのは(笑)私のいた場所を知ったから?』
カウンターにある椅子を指差し微笑んでいた彼女・・・

もとからあっただけの椅子・・・ダイニングも知らないのだろう彼女の呟きに口を引いた。
そうかと笑み、どーぞと促す彼女に笑った・・・

『後で聞いても?』
『何だ?今は駄目か?』
『あー(笑)冷蔵庫の中に・・・知らないモノがあって・・・食べ終わったら聞こうかと(笑)』

分かったと言うと、ホッとしたように微笑んだ彼女は椅子に座り食べ始めたのだった。



アンリッシュ 2

2019-02-26 00:38:18 | アンリッシュ


朝陽の眩しさに目覚めた彼・・・既に彼女の姿は見えなかった。

何時だと飛び起きてみれば、まだ早い時間だった・・・

滅多に起きた事もない時間・・・室内を眺め苦笑いだった。
本当に小さな部屋・・・扉というモノは玄関にある場所しかなかったと眺めながら歩く。

簡易に作られたバスルームであろう場所はカーテン一枚・・・今は開け放たれていた。

ソファーは誰もが昔見た・・・そんな小さな物で驚いた・・・小さな子供が見るような絵本から様々な本は壁という仕切りとして本棚に収まっていた。

可愛いキッチンだろう場所・・・カウンターは手作りのようでキッチンに誂えて出来上がっている気がした。

2つしかない椅子・・・使われてもいないような暖炉・・・必要最低限・・・本当にそれだけだった。

全ては買い整えたのではないと分かる・・・端に置かれた道具で、ここで必要なら作れとあるのだろう・・・想像も容易い気がした。

そっと身を隠す・・・門は開かれ次々と男達が運び込む・・・が、本当に敷地へ一歩・・・その場所へ置かれていった。

薄地のセーターに長めのスカート姿だった・・・足元を眺めれば、サンダルを履いていた。

激しく・・・悲し気な施錠された音は響く・・・
気にも止めない彼女は、運ばれて来た荷を確認するのように眺める・・・微笑む姿に驚いた。

笑みながら荷を持ち歩いてきた。
そういえばとキッチンを眺めれば、大きめの冷蔵庫だろう物はあった事にホッとした。

電気と確認してみれば、その特殊に包まれた配線は家の外へ出ていた事に驚いた。
辿れば線は地へ埋められ・・・生かすだけの処置・・・そんな気もして驚くしかなかった。

そんな自分の様子に何が可笑しいのか荷を置いて笑う彼女・・・気にも止めずに次の荷物を取りに向かった。

家の中へ運び込むと、小分けしながら纏め冷蔵庫へ詰め込む姿はありジッと眺めた。
冷凍庫・・・そう呼べる物もあった・・・

暫くして食事だろう旨そうな匂いが漂う・・・笑みながら作る彼女を眺めた。

歌を歌い楽し気に作る彼女に笑み見返す・・・照れたのか途切れた歌は、いつの間にかまた始まった。

そっと窓辺へ小さな皿を置く・・・よく見れば小枝で造られた十字架が飾られ出来たばかりの小分けされた料理だったと気付けた。

『一緒に暮らしてた・・・』
『(笑)バァの写真はないの・・・
今は家族の場所で眠れてるはずよ(笑)』
『通いで?』

『 ・・・私の為に・・・家族と離れ離れにされちゃってた・・・』
『居なくなってから一人で・・・』
『だね(笑)。私のたった一人の家族・・・』
悲し気な笑みで呟いた彼女は静かに食べ始めるのだった。

『お前が一番大事なのは?』
どれだと聞いてみれば、窓辺にあるものが全てのように笑み返した。
それ以外と聞いても無いのだと笑みながら答えた彼女に驚いた・・・それは確かだろうと思えるこの場所を眺めた。

少ししか食べない彼女・・・残りはと見返せば、どーぞと手前に置かれた事に驚いた。

自分の為に作ったという彼女の笑み・・・自分を観察するように眺めていた。
聞けば初めて誰かへ作ったと言った・・・確かにと思え口を引いた。

監禁されていた場所だ・・・誰一人中まで入る事もないのだろう・・・予想よりも旨い料理に笑え静かに食べる彼だった。

昨日の話は覚えていないのか、出る準備もしない彼女がいた。
敷地内に咲いていた花で、花束を作り手渡しながら礼を言った彼女を眺めた。

出れる事はないのだと心から思っていたのだろう言動も数少なく戸惑った。

本当に連れ出し、外で生きれるのかと・・・病気で外へ出れなかった人は知る・・・日々、外へと願う・・・その姿を見たい自分だった・・・出れた事の感謝に褒美をと、ただそれだけで計画を練りやって来た。

裏で伸ばされている手を立ちきりたくて考えに考えてきた・・・全てを握る彼女なら、本来の力を発揮したら親族さえ手足も出せないのだろうと。

それは予想を反して戸惑う・・・表向きは全てを奪われていた状態だったのだ・・・生き延びる為でもなく、生かされていた。

だから仕方ないと生きている気もした・・・・何より調べあげていく内に知れた事・・・そして取り合えずと来た自分達だった・・・

『出たらあなたの家族はバラバラになる・・・
殺される事もある・・・話しただけで・・・私の様子を知っただけで壊されていく』
『昔の話だろう・・・』

『去年、私を逃がそうとした人は会社まで潰されたと聞いたわ・・・
私はまた誰かを悲しませてしまう・・・昔、バァが教えてくれたの。
バァの家族は私を助けようとしてくれたの・・・だけど見つかった・・・だから何度もお願いして殺されずにすんでたの・・・
貴方から聞いて・・・嬉しかった・・・』

『お前が逃げない理由か?』
そうだと頷き笑みで返した彼女だった。

『外で生きる方法も知らない・・・
生きるのに必要な事(笑)それは働くって事なんですって・・・
私は働いてないけど・・・貰える・・・生きてたら貰える・・・だから生きて行こって・・・だから出来る事だけ頑張るの(笑)バァと約束したから』

『(笑)働く場所も探してやる・・・全部を捨てて、生きてみないか?』
『 ・・・した事もない私でも出来る事はあった?
あなたもバレず・・・見つからずに過ごせる場所なんてあった?』

『 ・・・ここみたいに安全な場所ではない・・・数多くの人達が住む場所で生きてみるか?』
『 ・・・』
『(笑)名を変え生き直す・・・そんな場所・・・自分で生きたいと想える場所を探せ(笑)。
それがどんな場所か(笑)俺は知らない・・・お前が叶え生きて行けばいいだけだ・・・ここではない場所で』

それだけだと言った自分を眺める彼女の目は迷っている気がした。

『バァの眠る場所を探してくれる?』
『分かった。時間はかかるぞ?その人の家族は今、外国で暮らしてるそうだ』

『 ・・・最初だけ・・・外の暮らしに慣れるまで・・・貴方が私に教えてくれますか?』
『怖いよな・・・構わないが・・・』
『バァとの思い出があるココだから本当は離れたくないけど・・・』

『一人は寂しいとか?』
『(笑)自分しかいなかった・・・誰かと話した事も少ない・・・寂しいと思えたのはバァが居なくなってから・・・
今は慣れて大丈夫です・・・約束を胸にしまってきたから・・・』

だから平気だという彼女の姿を眺めた。
孤独という場所しかしらない彼女・・・それを知らずに当たり前だと生きてきたようだった。

出た事で味わう彼女自身は大丈夫かと、勝手に連れ出そうとしている自身に苦笑いをした。

迎えの時間も迫る・・・取り合えず連れ出してみるかと彼女を眺めるのだった。


利用されているのに知らずに生かされてきた彼女・・・怯えもない・・・生きるという約束だけで日々を過ごしてきた。

何処で生かすかと考えれば、それは兄が住む場所しか思い当たらなかった。
裏手へ浸る兄・・・暴れまくり大元を壊し自分でのしあがった。

裏の世界・・・手を汚さずとも蔓延る場所で生き延び誰一人、手出しも出来なくなった。

その場から出なければ狙われる事もない・・・その手に交じれば誰かへ渡される事もない。

既に親は縁をきった・・・十代の頃から家を出た兄・・・稼いだと、自分と遊んでくれる兄は嫌いではなかった。

何より声にはしないが約束は必ず守る・・・回りへ揺らぐ約束でも、引き受ければ成し遂げた。

だから自分は情報を探り会社を起こし親との縁もきって生きてきた。
最近になり跡継ぎと呼び戻されたが利用しようと兄と相談し今日まできたのだ。

犯罪と一般的にいう出来事は簡単に手を染めていく自分の親と知るほどに早々に手を切った自分を誉めた。

先に出た兄の言葉は本当だったと 肩を落とした自分に、今のうちに力をつけろと教えられてきた。

だから今がある・・・その場へ連れ出して行けるが、どう生かそうと考える彼だった。



アンリッシュ 1

2019-02-25 08:28:41 | アンリッシュ


-やっとだ・・・-

そう思えた瞬間・・・嬉しくてだろう微笑む自分に気づけた。
笑みで逝ける・・・その事に感謝して見返し、彼女は目を閉じたのだった。



自分の位置に気づいたのは幼い頃だったが、生死の自由さえ奪われていた事に気付けていなかった。
自分以外でバァ一人だけ・・・物心がついた頃には二人だけの生活だった。

聳える塀に囲まれた場所・・・そこが自分の居場所なのだとバァの呟きで教えて貰い日々を過ごした。

時々出されバァの説明で何処かへ出向く・・・久しぶりだと微笑んだ大人達・・・不自由はないのかと問われ無いと答えると帰された。

たったそれだけ・・・その部屋から出される前に引き摺るほどに長い布を被せられ人目を避ける為だと歩かされていた。

声も・・・自分の住む場所から出た瞬間から、奪われるからと一言も声を出しては駄目だとバァに言われた。

例え聞かれても声ではなく頷くだけ・・・それを破れば両親さえ殺されるとバァが聞いたと悲し気に教えてくれた。

7歳を迎えた頃に、バァが教えてくれた・・・それが全てで従う理由・・・この空間で生きる理由を・・・

そのバァが逝くと言った少し前に、また謝りながら声にしてくれた。
自分が生かされている理由・・・死ねない理由は不確かでもあるがと・・・

もしもがある、だから守り生き延びて行けと言った。
自分の代わりは来ない事も・・・


本当の独りを、これからしていく為にと全部に前からバァと一緒にしてはいた。
楽しいとする自分に、悲し気に笑み頑張れと励ますバァ・・・その意味を知る・・・そして初めてバァの名前を知った。

別れを惜しみ悲しんでいると、バァの家族が迎えに来たからと連れ出され行ってしまった。

無に近い静けさ・・・二人で食べながら会話を楽しんだ記憶・・・優しい笑い声さえ消える。

気分をかえろと散歩をさせられた事を思い出し、庭へ出た・・・素足の感触・・・その時の会話さえ甦る・・・

時々だが手入れだと庭師が入り込んでいたが、いつしか来なくなった・・・ならばと自分達でしてみようと二人で少しずつと手入れを始めた。

時々、門の下の隙間から差し入れのように花の苗が置いて行かれる。
礼をして受け取る・・・それを庭へ埋めて初めて何の花かを知った。

バァが手入れをしながら歌う・・・いつの間にか自分で覚えていたのか口ずさみながら手入れをした。
綺麗だと花を摘み飾る・・・週に一度、家に必要なモノが運び込まれる。

会話も禁止されている・・・自分が声をかけようとすると怯えた顔になり焦るような顔つきになれば話すなと訴えた。


バァの囁き・・・
-お嬢様は特別なのです・・・貴女と話せば、その者の家族までが殺されるそうです・・・だから無闇に声をかけてはなりませんよ-

ずっと聞かされていたバァの声が自分の中へ響いた。


家屋から庭へ延びた床・・・数メートルほどの板が敷かれた場所に木製のブランコがあった。
造りは頑丈で、これもまた時々だが新しくしてくれる・・・背丈に合わせて設置してくれる。

優しく揺れながら歌う・・・庭へ響く歌声は花だけが観客のように自分を見てくれた。
バァのいない場所・・・今は一人で歌う・・・優しい声音は誰も微笑む事もない。

蝶が舞う・・・楽しいと飛ぶ姿だと微笑んだ・・・自分の代わりに空高く舞い、自由に好きな場所に行けと励ました。



ある日・・・真夜中の事、迎えに来たと慌て入り込んできた人に驚いた。
静かに自分を起こしバァと繋がる者だと知らしめ出ようと着替えさせ促される。

『長田です。お嬢様・・・早く・・・』
手を引かれ静かに寝室から出る・・・待ち構えた人に気づくと項垂れ・・・自分へ膝まつき謝りながら泣いていた。

出来なくなったと謝る・・・叫びはない・・・辛く悲しいのだろう声音で何度も謝り、誰かへ許しを乞う。

自分を守れという言葉に驚いた・・・意味を理解して居なかったのだろう自分は戻れと言われた。


立ち上がり、また謝りながら戻れと促され・・・大丈夫かと見返せば溢れた涙は止まらずに押し出した姿を眺めるしかなかった。

『叔父様、絶対にダメですから・・・』
後ろにいた人へ声にする・・・無視されても静かに声にし頼み込んだ。

だからか自分をジッと見返す叔父・・・何も言わずに戻るので、背を向けて何度も声にして願ったのだった。

門がしまり・・・聞いた記憶と同じ鈍い音が響いた・・・二度と会えない音・・・その昔に聞いたバァの声がした。



初めて見る人達の中に連れ出された・・・布が引かれ眩しくて暫くは誰かも分からなかった。
聞かれても声にせず、答えろと強要されても出すなという教えは守った。

ひそひそと、それぞれに囁くが自分には聞こえない・・・
どんな人達なのかさえ分からずだった・・・そして見知る人だけへ見返した・・・前に居た人達ではない不安は自分の中でも驚く・・・その気配で分かる気がした自分にも驚いた。

同じ作りの室内・・・窓から見える景色も同じだった事で、それだけでホッとした。



輪とした佇まい・・・自分の立場も知らされずに一人生きてきた事は前日に聞いた。
だからと聞いて出席だけをと、声にせず様子を見るだけと聞かされ仕方なく来た。

観察は怠らず回りの人達にまで眺め、この瞬間は何だと考えた。
背を向かされた人は、控えた者がまた丁寧に布を被せ隠した。

部屋から連れ出されていく姿を見送るように眺めるしかなかった。



気分を変えたくてクローゼットを眺め変身と呟きながら着替えた。
家屋に流れる言語・・・誰かが何処かで会話をしているように、大きくもなく小さくもない音量で長し一日が始まる。

寂しくないようにとバァが去る前に考えてくれてから、日々の日課となった。

大きめのサンルーム・・・ハンモックに揺れながら庭を眺め家屋を眺め・・・飽きれば空を眺めた。

ゆういつの楽しみはバァが教えてくれた歌・・・そして部屋に流れるメロディを聴きいる事・・・何より外の様子が分かる・・・

それは楽しい事だけではない・・・ニュースという声で始まるそれは時に悲しく酷い様子まで声にしていた。

細かく想像も出来ないが、外もまた生きるのに大変な場所のようだと知った。

自分の目で見れる事もない世界に想いを馳せる・・・行けないと分かるだけに自分に笑う・・・その言葉は知れても、それが何かは知らない自分だった。

この場が全て・・・だから楽しく過ごそう・・・そう言ったバァの笑みは自分の中で響きながら続いた。




夜空に花火が上がる・・・
何かを街で祝う為だと聞いていたが、もう そういう季節なのだと知った。

ハンモックに揺れながら眺める彼女・・・突然 目の前に現れた人に驚き身を固めた。

目を凝らす・・・
また一人、静かに来た事に何だと眺めた。

『明日・・・場所を替える・・・出してやるから準備しとけ』
『 ・・・』
『出たくはないか?』
昔見た記憶を思い出した・・・あの人が、どうなったかは知らないが怯えていた事で自分を連れ出す事は危険な事なのだと思っていた。

『出たら・・・』
『明日の花火は今日よりも音は大きく、この場の見張りも解かれるそうだ。
本当に・・・出たくはないか?』

『あなたに何が起こるか・・・』
『その昔の話は調べた・・・お前と一緒に暮らしていた人の家族だったが・・・逃がしたくて入ったと・・・
今は外国へ家族ごと出されている』

『良かった・・・生きてる・・・』
『 ・・・』
驚いた・・・本当に何も知らされず、一人この場所で暮らしていたのだと。

親から代々続く家系は途切れそうだという噂で、繋がる親族が集められた。
代が替わる頃に、本当の居場所を教えて貰える。

全ての主・・・掟という居場所・・・
今、目の前にいる彼女に一人 のし掛かる財産は生きてこそ発揮されているモノと知った。

なのに大事に扱われず人目にも出られずに生きている・・・調べて初めて存在価値を知るが、この扱いは何だと訝しげてもいた。

調べ続けている内に、共に暮らしていた誰かを知った・・・その後の事も。
莫大なモノを動かさなければ彼女は居なくてもと知ったが・・・一番近い親族が回していた。

少し大きくなれば、有無はなく目の前に出され書類にサインさせてから戻していた事を知った。
怖がりもなく普通と受け止め自分を生かしているのだと思えた。

『バァが眠る場所に花を手向けないか?』
『したいけど出れないから・・・』
『そうそう様子見にも来ないと知るだろ・・・
明日の朝に大量の食材が運ばれるそうだ。その後に出る準備はしとけ・・・』

『バレたら・・・』
『バレずに入ってきたが?』
『 ・・・』
確かにと、自分へ話す人を眺めていたが痺れを切らして歩いて行った姿があった。

無理だと分かる・・・前もそうだったからだ・・・自分から動かなければ大丈夫だろうと足音だけを聞き目を閉じた。

既に花火は終わり静けさは戻ってきていた・・・暫くすれば、この塀の外の見回りの時間だ。
さっき居た人は早々に帰るだろうと、無事に帰れる事を祈った。

明かりが辺りの木々へ反射し始める・・・見回りの人達が来ているのだと知れる。
この暗さの中で何を探るのかと笑う・・・聴こえるのは流されている優しい曲だけだった。

いつもなら消しに戻る・・・眠る時間でもあったから・・・

ガチャガチャと鳴り響いた音に何だと眺めれば、いつもの門番が驚きながら入り込んできた。

『就寝される時間でしたが・・・どうかされましたか?』
『 ・・・』
『見回りが終わる頃に止まる音が、今も聞こえているので・・・確認をと』
『 ・・・』

『ここで眠ろうと?体を壊すので、お戻り下さい・・・』
分かったと頷き起き上がった彼女・・・自分を確認するように見ていた事で諦めたように家へと戻った。

敷地から出て行ったろう音の響きに笑み、彼女は真っ暗なまま寝室へ戻るのだった。



蝋燭の灯りすらない真っ暗な部屋に驚いた・・・
本当に電気も通らない家なのだと・・・これが今の生活かと驚くしかない・・・微かな月明かりからソファーを目に止め、そこで彼女を待つ事にした。

外からの監視は音だけと聞いたが、それも事実と確認出来た事に安堵し様子を探った。

戻った彼女は迷いもなく、彼女自身の部屋だろう場所へ向かう。
何かにぶつかる事もなく・・・この生活だ、物もないのだろうと思えた。

『帰らなかったの?』
『 ・・・』
驚いた・・・布団のすれる音がしただけ・・・寝たのだろうと思った途端に声がした。

『そのソファー・・・そこは朝・・・物凄く寒いけど・・・』
『 ・・・見えるのか?』
『月明かりがあるもの・・・』
そんなにかと振り向けば、自分には暗く・・・時々見せる明るさは、物が微かに見える程度・・・そんな状態だった。

『どこなら朝まで寝れる?』
『 ・・・泊まるの?見つかるわよ?』
『(笑)ここまで入らないだろ?』
『そうだけど・・・』
彼女の呟きに苦笑いをしながら、彼はベッドの近くへ ゆっくりと歩き出した。

『どこに?』
『お前の前に』
そうかと思ったのか彼女が動いた音がした・・・何だと足を止めてみれば、自分の手を掴む・・・そっと手を引き案内してくれていたようだった。

ベッドだろう場所に座らされる・・・
『目が悪いの?』
『 ・・・お前が特殊なだけだ』
『そうかな・・・』
『ここで寝てるのか?』
『ここしか無いもの(笑)』
どんな状態かは知らない・・・それでも多少ふかふかした布団はあったのだと思えた。

『晴れたから干したの(笑)。今日はお日様の匂いで寝れるから(笑)嬉しいの』
布団を撫でているのか僅かな音に口を引いた。



アンリッシュ

2019-02-19 09:16:00 | 序章・予告編


継ぐモノが何か知らなかった・・・


『知らない!』
「言葉を習い始めたって聞いたよ?」
『知らない・・・声にしちゃ駄目よ・・・』
『(笑)二人だけだし(笑)。ママたちは向こうにいるから平気(笑)』
そうかと少しの笑みで見返しうつ向いた。


『 ・・・言葉が難しいね』
「(笑)大丈夫・・・」
「だいじょうぶ・・・」
『(笑)大丈夫だよ。聞いてたら覚えるよ(笑)きっとね』
『 ・・・(笑)』

色んな言葉で教えてくれる子だった・・・本当に時々しか会わない子・・・
いつからか会わなくなってからは、忘れた頃に電話で話せた。



初めての旅行は楽しく、母と二人だけで巡る場所で色んな事を色んな言葉で教えてくれた。

目の前に現れた子・・・物静かで声も出さず本へ目を向けたまま、返事も返してくれなかった。

話し続けても嫌がらず隣で本を読んでいる不思議な子だった・・・とうぜん自分の言葉に相槌もない。

この子のお母さんが呆れ話してくれるが自分自身・・・気にもならず景色の良さに、庭に咲く花の綺麗さに嬉しくて構わなかった。

外国で初めて友達になったダレン。

少し前に、この子の誕生日だと連れられた場所へ行けば・・・華やかなパーティで驚いた。
子供なのに、たくさんの大人にお祝いされる子が凄いと眺めた。

笑うしかない・・・ムッとした顔・・・諦めた顔・・・あれは仕方なく歩いてるなと分かるほどの姿だった。

挨拶をしてもチラッと見返すだけ・・・笑っても笑み返さない子の手に触れて待たねと声をかけて帰った。

翌年・・・留学だと行かされた場所に同じ子がいてホッとした。
知らない場所で一人は怖かったから・・・それでも皆がいる場所に交ざらない子が気になった。

楽しいのにと呟けば、遊んでおいでと帰される・・・声をかければ、友達が呼んでるよと離される。

それも可笑しいと友達を呼んでみれば、苦笑いだけの子・・・友達と話していても離れずに一緒にいてくれた。

いつからかクラスが同じになり、住まいも近くなった事で 彼のお母さんの一声で送迎してくれるようになった。

だからか話す機会は増え自分とも話してくれるようになった。

日々の楽しさは嬉しくて、いつからか物静かな子の笑みは優しくなった。
『まだ行ってなかったのか?』
驚いた顔で聞く彼に頷けば、そうかと翌日には観光だと連れ出してくれた。

学生になれば言語の多い授業は増え、これもいつの間にか彼が言語を変えて話してくれるようになった。

『(笑)話せるようになったわよ』
『聞いてるからね(笑)』
『急に理解出来る事が(笑)一番驚いたかな・・・』
そうかと笑う彼に微笑んだ。

『(笑)見付かりました、帰りましょう』
警護していた男が静かに声にし、二人は連れられて帰った。


これも、いつからか分からない・・・自分にも警護する人が増えていた・・・それは彼にも居て・・・常に守るように少し離れた場所から見てくれていた。


だからか余計に話す事も増えた・・・二人で話していた時に彼の母親が静かに部屋へ戻れと促さる。

焦るように静かに入ってきた母親が話をしてくれて事情を知った。
それは自分の母と同じ理由だった・・・やはり声にするなと約束させられ外で話す事もやめた。


二人だけで話す機会は多くなり、嫌だと思っても逃げられない事を知った。

大人へ近付く度に狙われる自分達に焦った・・・その回数が増え帰国する事になったが、バレたら危険だと教えられ連絡さえ させて貰えなかった。

真夜中に飛び込んできた彼に連れ出され束の間の静かな時間が持てた事にホッとした。
離れたくない一心で逃げるしかない状況・・・それしか知らない自分達だった。


連れ戻され自宅に閉じ込められ・・・悲し気に見つめる母に謝った。
ほどなくして縁談だと言われたが、拒否する自分は関係なかった事に項垂れるしかない・・・

仕方なく会ってみれば優しい人でホッとしたが・・・彼もまた自分へ謝りながら断れない理由を教えてくれた。

何より大事にしてくれる人だった・・・自分の変化に早く気付いた彼が、自分の母へ謝り報告をする・・・
恥ずかしそうな演技かと思えば本当にそう思うのだろう彼の顔に驚いた。

目まぐるしく推し進められる事に戸惑うが、向こうで会った彼との話を思い出した。

知らせは必要かも知れないと連絡をする・・・驚き迎えに来そうな勢いは一瞬だった・・・

どうなるか先も互いに分かる・・・それを先に声にしたからか押し黙る彼に苦笑いだった。

それでも、日を改めて連絡をしてみた・・・
『決めたの・・・だからしてみるわ』
『本当に君は危険じゃない?』
『(笑)産まれてからずっと危険よ・・・お互いの場所は離されないもの。
なら生きてく為に私は頑張ろうと思うの』

『彼・・・』
『そうね(笑)。本当にいい人だった・・・自分の事のように励ましてくれる・・・声にしないで居てくれるから(笑)平気よ』
『カナコ・・・』

『(笑)ダレンも頑張って・・・
そして・・・いつかでいい・・・会えたら一緒に食事をしましょう(笑)』
『 ・・・』
『私が決めたの(笑)、約束してくれる?』
『 ・・・分かった』

それから数度の連絡はしたが、夫の為に止め・・・この子の為にと気持ちをかえた。

色んな言語を聴かせる・・・それは産まれる前から始めた。
産まれたばかりの子が眠る間も、静かに聴かせ日々は過ぎた。

ようやく片言の言葉を話せるようになった頃に・・・乳母が決まったと現れた。
知る人で助かったと先の為に理由も話して頼み込んだ。

それは自分の為に働いてくれる人達まで教え徹底して貰った。
それも二月で・・・子供と引き離され、抵抗も出来ない夫は日々、怯え狂っていった。

自分までが屋敷から出され・・・監禁され始め・・・密かに探しに来てくれた人の声で子供の様子を教えて貰った。
その先の為に声にした・・・泣きながらも伝えて欲しくて頼み込んだ。

言って来たのだろう、伝えたという知らせは翌年だった・・・その後の連絡はない・・・深みへ囚われていた自分に気付いた。

医師さえ見張られ怯えながらも静かに看てくれていた。
同じ言葉が返る・・・今回は二年ぶりだと知り驚くしかない。
ならばと考え医師へ頼み込んだ。

日付を聞けば子供の誕生日・・・神の思し召し・・・そう感謝し手紙に書き留めた。
悲しくて・・・恋しくて・・・それでも準備していた自分を誉めた。

記憶力が良かった子・・・教えれば声にした事を思い出した・・・

あの時・・・ならばと電話をした・・・楽し気に、覚えたての言葉で会話を楽しむ姿があった・・ だから覚えていて欲しいと祈った。

いつか自分の為に役にたつはずだからと手紙にしたためる・・・大丈夫と祈る・・・頑張った自分を信じる事にした。

いつか迎える本当の自分の場所・・・望む場所へ子は生けるように考えた・・・そしてそれを実行してきた。

頼んだ人達へ願いを込めて祈るしかない自分は、今は我が子を信じるしかない・・・彼の子なら、先へ行ける力は持っているはずと祈った。

笑いながら見下ろす人の顔を眺めた・・ 寝てもらおうと有無なく投与される・・・意識も遠退く間・・・その顔をながめ小さく呟いた。

『こども・・・』
『生かしてるさ(笑)。ダートンの命と知るだろう?安心しなさい(笑)』
その笑みは本当と分かるが、ただ生かされている気もした・・・何も出来ない自分・・・眠らされていく自分を諦めるしかなかった。


ひたすら願う・・・

-子供を助けて・・・幸せな場所へ導いて・・・貴方の子を自分の手で守って-

薄れる光りと自分の思いは、全てが沈んで無へ運ばれていく・・・溢れた涙さえ知らずに彼女は眠りについたのだった。




立て続けに、彼女の回りの人達が亡くなったという知らせが舞い込んできた・・・焦りながら母の元へ出向く。

ほとんど屋敷に父の姿はない・・・だから母と二人だけの生活のように思ってきた。
家の事情を知る母・・・知らなければ万一の場合、動けないだろうと父が母へ呟いていた。

だから全ての理由を知る母へ教えて貰いに出向く。
彼女の母と親友だった・・・だから大丈夫か知りたくなったのだ。

『なぜ出来るのです?後継者は彼女の母じゃ・・・』
『ダートンだから・・・そんな言い方だったけど・・・今度は彼女の子が継いだそうよ・・・』
『 ・・・』

何も言えなかった・・・全てが恐ろしくて、彼女まで巻き込みそうで怖かった。
手放し会わずに過ごせば危険に晒されないと言われ諦めた・・・なのにこれだ・・・

事実を言えば、子は拐われ揉めていく事も分かる・・・余計に悲しませる事にもなると話せなくなった。

子は無事か知りたいが、いまだ継ぐ者として扱われてもいない・・・候補という立場で下手に身動きも出来なかった。

彼女は本当に、決めた計画をしたのか知りたかったが遠く離れた場所から出れない自分を諦め今は確実にトップへ向かうべく力を貯めようと誓った。


ようやく会えた姿にホッとしたが、生気もなく笑みもない姿に驚いた・・・それでも何とか考え母へ聞いてみた。

ならばと父に内緒で思いを話す・・・それは何度も繰り返せば母は気付いたのだろう自分を抱き締めた事に驚いた。

理由を知ったのかと声にせず見返せば潤んだ目から溢れ落ちた母の涙に焦った。
改めて抱き締めた母の手が優しく背を撫で・・・大丈夫と祈ろうと小さく囁く声に頷いたのだった。


ようやく許しが出た事で、昔聞いたのだと言葉が理解出来るか毎回少女へ声にした。

不思議そうに聞き入る姿にホッとした・・・それでも、いいかと答えサインする事で、それが少女の今の現実なのだろうと思えた。

排除の動きがあれど、トップへ座る人は正統な場所に戻った事で様子をみ、少女を見守る声は増えていった。

だから余計に自分が試せと許された・・・それは持ち場を変えたかった人達が多かったから。

色んな場所へ出向かせられる事も増え候補から主へ代を替えられた事にホッとした。

邪魔されず人を動かせる事で、ダートンを調べ始めれば それは組織の上から声があり少女の事以外をバラした。

守るべく出向かせ潜ませた・・・それは外まで・・・そしてダートンの動きは知らしめたように報告をしたのだった。

成長した我が子に笑む・・・ホッとした顔がバレ両親に呼びつけられた・・・
許しを乞う・・・自分の意思を伝え全部を手放してくれと頼んだ。

約束・・・それが全てだからと、願うように謝った・・・
声にせず全てを受け入れてきた息子と知る・・・だから余計に苛立ったが、その徹底さは本物だと信じて任せた自分の子を誉めた。

自分で調べても、息子の子は優れた比があると思えた・・・

昔を思い出す・・・息子を笑わせ楽し気に話していた二人の姿を・・・
笑みのない少女と息子が重なるように見えた・・・そうかと笑みは溢れた。

あの子にも笑みを戻せる者が出来た事を聞けば苦笑いだった。


この場所で生きる自分の血筋・・・その為だけに生きる術・・・それに力をつけ鍛えていく姿にホッとした。
秘かな願いと微笑んだ妻に笑む・・・自分の息子を信じれる自分が嬉しくなった。

『共に願おう(笑)』
そう言ってみればホッとしたような穏やかな笑みの息子に微笑んだ。
どれだけ愛したのかと・・・


すれた場所のクラブへ息子に連れられ来てみれば・・・その理由に苦笑いだった。
妻を抱き聞き入る・・・優しい笑みで食い入るように見つめる息子に口を引いた。

前から一人になれば聴きいる、いつもの曲だった。
どれほど好きなのだろうと思った事もある・・・聞けば息子と彼女の想いが詰まっていると言った。

歌詞を調べ胸は締め付けられたが、大丈夫と微笑んだ事に驚いた。

その娘が歌う・・・互いに知らない者として生きていく・・・それでいいと思えた・・・知られれば争いが始まるから。

全部を簡単に手離した孫に笑む。
本当の幸せを手に入れたからと聞いたが、それを願い祈ってやるしかないと微笑んだ。

『彼女に似て綺麗ね(笑)。いつか先で教えてあげましょうね(笑)』
優しい笑みで呟く妻に笑む・・・

『ここは(笑)彼女は守られるが我らには違う場所です(笑)、早々に車に戻りましょう・・・』
促され車へ乗り込む二人だった。

戻った男が車へ乗り込み走り出す車の中で報告を受けた。
幸せを祈るダレンだった。


-end-


まとまりのない始まりで申し訳ない・・・無理やり話へ入り込み、本編へ繋いで頂けたら大感謝です。

とはいえ最初と最後の話で・・・ネタバレだったなとヘコむtami(笑)、自分を応援します。

よければ本編へ・・・ -tami-





2019バレンタイン 8 -end-

2019-02-14 02:52:20 | イベント 関係の お話




仕事あがりに彼女に会いに行く日々に自分でも可笑しくて笑えた。
会いたい想いは枯れず、それは和葉もだった事に苦笑いだ。

呆れる一流も着いてくる・・・ソコには都和がいたからだ。
瑞季と仲良く会話を楽しむ姿に笑み、静かに帰る時間を待つ一流・・・そこへ久しぶりだと奏多が遊びにやって来た。

カウンターに居座る遥加に笑み、ここへ来いと呼んだ。
苦笑いをしながら席へ着く姿を眺めれば和葉までが来て照れていた。

繋がった事に気づく奏多は一流に苦笑いをした・・・
少し話した二人はカウンターへ戻って行った。

『教えたのは奏多だった(笑)』
『ほんとに繋がるとはな・・・』
『(笑)やったんだろ・・・』
『ん・・・ま(笑)いいけどな』
『(笑)からかうなよ・・・余計に離れたら辛いのは誰だ?』

『 ・・・』
『(笑)ほら、チョコ食っとけ』
『あー(笑)今日だったな・・・』
そうだと笑み珈琲を飲む一流に笑み返したのだった。


イベント・・・
甘く香る店内・・・それぞれのカップルの笑みは嬉しそうで、幸せそうに相手を見つめる目は多かった。

遥加の口へ放る舞潤の姿に目が止まる・・・その隣で同じように女が和葉へ食べさせる姿があった。
静かに口を引く・・・笑う一流は奏多の口に放り込んだのだった。

幸せと叫びそうな遥加の笑みにホットし・・・嬉しそうな和葉の笑みに苦笑いをした。

視線が重なった・・・彼女の笑みは奏多から遥加に戻っていった。
慌てるように振り向く遥加に苦笑いをした・・・ムッとした遥加が彼女の顔を引き寄せ口付けた事に笑えた。

離せと肩を叩き離れた遥加に笑む優しい眼差しに焦がれた気がした。
指先をつつかれる・・・自分に戻れと笑う一流の顔に苦笑いだった・・・

都和を迎えに行けば、呆れた顔で一流が戻った・・・

『どした?』
『(笑)奏多をイカせてくれるなら家に帰ると言い切った』
『 ・・・』
『(笑)瑞季が驚いてた。遊ぶか?』

そうだなと笑う奏多は素早く瑞季を捕まえ連れ出せば、慌てた都和を捕まえた一流も連れ出し帰っていった。

車内でムッとした顔の都和に笑う奏多もいた・・・
『母さんが心配するだろ(笑)、しわ寄せは都和に行くぞ!』
『だからって瑞季にキスしなくてもいいじゃん』

『一流に俺をやったろ(笑)』
『(笑)お兄ちゃんを温めて欲しかっただけよ。ハル兄の代わりにね(笑)』
『なら(笑)都和が温めろよ』
『やーよ。(笑)瑞季がいるのに・・・』

『(笑)四人でする?』
『 ・・・それは、した事なかったな・・・でも瑞季に触らない?』
『なら誰にするよ・・・』
『トワ・・・』
『ん?』

『ほんとにする?私はやだな・・・』
『(笑)激しくしない?』
『やだってば・・・』
瑞季が呟き都和に抱き付いた姿に笑み一流に笑う奏多もいた。

『一流(笑)俺に付き合え(笑)』
『解消はしてやるがな・・・』
『えー(笑)。一流は手伝ってよ・・・』
『奏多が離すか?』

『 ・・・ほんとに出来たの?』
『女だけって思ってたのか?』
『和君は?本当に女だけ?』
そうだと頷く二人に驚く都和達だった。


一流の背を押しながら部屋へ入る兄の姿に驚いた都和・・・静かに部屋を覗けば笑う二人と目が合い苦笑いをした。

来いと捕まれ狙われる・・・一流の手に慌てるが、その柔らかな触れに震え忍ばせられた事で唸った・・・奏多が笑み瑞季を捉え二人を向き合わせ狙った・・・泣き顔だった小さな声音は静かに変わり始めた・・・

焦るが動けない都和・・・耐え狙われた状態のままに瑞季を引き寄せた・・・苦笑いをした奏多は一流が狙う場所へ忍ばせた・・・都和を助けたのは瑞季だった。

足から崩れる都和・・・それは既に同じだった瑞季もいたが、急ぎ互いを連れ出す姿に笑う兄達の声が聞こえ部屋の鍵は閉じたのだった。

話し声を聞き入るが奥へ行ったようで聞こえなくなった・・・ホッとした瑞季が笑み都和にキスをすれば優しく忍ばせた手に笑み都和を部屋へ連れ戻したのだった。


戻った都和に笑み一流は奏多を襲う・・・もともと和葉へ片想いをしていた奏多を知る・・・寝るのも男だけ・・・誰かへ靡く事もない。

持て余した身を女に委ねるが、必ず戻り自分を預け解消する奏多と知る。

自分の恋心は分からない・・・一流は気にもせず奏多を抱く・・・それは逆もあり奏多が選び果てさせていた。

今はと眺めれば抱けと呟く奏多に苦笑いをし狙うように果てさせず自分を開放させていった。

果てた身を休ませる互いに声もなく、次はと自分へ貪る奏多を受け入れた・・・しつこさは遥加と同じだった・・・暫くは身が堪え出来なくなる・・・それが自分だと一流は身を預けたのだった。



昼イチで食べに出てみれば、家政婦が急ぎ出す・・・何だとダイニングへ行けば揃う皆の姿に笑えた。

怠そうな顔の姿に笑う・・・遥加の女に・・・都和の女に・・・そして和葉の女まで居て笑えた・・・

『奏多(笑)、一流を苛めんなよ・・・』
『(笑)してねーよ。俺がヤバかっただけだ』
『(笑)珍しいね、それ・・・』
『 ・・・(笑)まざる?』

『間に合った(笑)大丈夫だから優しく頼むぞ・・・』
『(笑)おっけ!』
それぞれの会話に呆れ、舞潤が遥加を眺めれば照れた笑みで キスで返した姿に皆の方が呆れたのだった。


『こんな子達に育てた気がした母さんを哀れんでよ・・・』
呆然と佇み溢れた母の言葉に皆は笑み返す・・・

『我慢の限界が来たら全部囲って逃がすわよ!』
『『『 ・・・・』』』
母の言葉に驚いて遥加達は声を失った。

『お父さんに頼んで売り飛ばしてやる!』
『母さん?』
『貴方達に付き合う皆が可哀想でしょ! 減らしなさい!』
『『『 ・・・』』』
新たに残る人達まで声を失ったのだった。


部屋に戻り寛ぐ柚月と舞潤・・・思い出した二人が笑だした。
『凄い人だね(笑)』
『型破りの家系だったわけだ・・・』
『疲れるよね・・・』

『(笑)そういえば、次・・・見つけに出なきゃヤバいと思う』
『あー聞いた(笑)。二人もと受かったから良かったけど(笑)、そうそうイケメンは見つからないのよね・・・』

『(笑)面接日を増やす?』
『あー・・・助かる・・・舞潤は行く?見る?』
『柚月と一緒にする(笑)』
『『ん?』』
会話を遮る遥加・・・ムッとした彼が舞潤を連れて奥へと入り込んでしまった事に驚いた。

『マヒロ!遥加さん?』
何故と呼び止める声も聞こえないのか連れて行った場所へ行こうとした柚月を抱き止め 笑いながらソファーへ戻したのは和葉だった。


『もう・・・ムリだ・・・って・・・』
しつこく張り付く遥加に耐えれず荒い息を我慢して呟けば狙いを定めた悪戯な目が笑み返した。

舌を見せた彼に呆れ触れ始めた事で身は弾け飛んだ・・・痺れる全部に耐え彼へ捕まれば楽しそうな笑みで返され諦めた舞潤だった。

手足を投げ出す・・・動けば身が軋み音を立てて崩れそうな気がして動けなかった。
身を重ね眺める彼に何だと見返す舞潤もいた。

『どの部分でやけたわけ?』
『 ・・・やる・・・』
戸惑うように呟いた遥加を眺め考える・・・その間に身へキスを落としては自分を見つめる彼がいた。

そっと抱き締める・・・髪を撫でて見つめた舞潤に苦笑いをした彼に微笑んだ。

『店で接客をする人達の面接を一緒にするって言っただけよ?
するって言葉を勘違いしてない?』
『 ・・・言葉を選んで正確に会話をしとけよ・・・俺の身がもたないだろ・・・』

『それは私って(笑)思わないの?』
『今まで焦がしてきた俺を考えろよ・・・』
『(笑)全部に結びつけないで・・・
これを許すのも遥加だけ・・・全部をあげたのに搾り取る気?』

『本当に全部?寄越してる?』
『 ・・・』
『誰に』
『預けてるのは遥加だけよ、身を預けた事もないのに・・・』

『 ・・・何で(笑)足りねーかな・・・』
『物凄く愛してるのにね・・・信じて貰えてなかったんだ・・・』
残念だと呟く舞潤に笑み口付ける遥加もいた。

甘く囁く舞潤に笑み、そうだと思い出したようにリモコンを使いボタンを押した。
モニターにうつされた二人の姿に驚き遥加を眺めた。

事の始まり・・・求められ脱がされていく柚月と和葉が見えた・・・
『これはルール違反よ・・・
もしかして私も誰かに見られてた?』
『してない』

言い切る彼に消せと促し背を向けた舞潤、焦るように消し彼女を抱き込む遥加だった。
謝りながらもキスをする・・・

『深める為の行為は誰かに見られたくない・・・これが遥加には普通でも・・ 私は普通じゃない・・・これは嫌・・・』
『悪かった・・・
事の始まりはムカついたからだ・・・人の部屋で始めるから・・・止めろと押さえたくて録画して脅した』

『だれ・・・』
『都和と奏多に決まってるだろ・・・疲れんだよ・・・』
『だからここ・・・』
そうだと素直にバラし話し出した遥加に驚き身を変えて見つめた。

『遊びは兄弟の間を埋めて始めた・・・ムカついた時に都和を脅してイカした・・・そしたら面白いって奏多が交ざった。
それよりも前から奏多とは遊んでた事を知って・・・何も言えなくなった・・・俺らは壊れてる・・・』

『大丈夫と戻してよ・・・遥加は大丈夫・・・』
『舞潤は?都和なら触れるのか?』
『 ・・・(笑)少し壊れてるかも・・・それでも溺れたい衝動は遥加にだけ・・・』

『奏多なら?』
『ない・・・それは有り得ない事よ。彼は遥加じゃないもの・・・』
そうかという目は悲しそうだった事に驚いた・・・

『それは私を彼へ預けて試したいって事?』
『絶対にない・・・』
言い切る彼にホッとした舞潤だった。

『それを本当にしたら死んでやる・・・』
『 ・・・しねーよ』
迷ったと思えた舞潤もいた。
『 ・・・な・・・に・・・』
声にしなかった舞潤に戸惑いジッと見つめた彼に悲し気に微笑んだ。

『なんで悲しむ?』
『試そうと迷った遥加に気付いたから・・・』
彼女の言葉にそうなのかと考える遥加・・・それでも、奏多が触れるのは嫌だと思えた自分を誉めた。

『考えた?』
『奏多が舞潤に触る事は嫌だと本気で思えたから嬉しかったんだ・・・』
そう言えばホッとした顔になった舞潤に 愛しさは増し自分の溺れたい衝動は激しく昂った。

中まで・・・彼女の全部を手に入れたのだと安心出来た自分を誉めた。
誰にも渡したくない想いは彼女だけと思え嬉しくなる・・・自分を掴み絡ませる彼女に苦笑いをし見つめた舞潤の照れた笑みは激しく自分を引き摺った。

寄り添う彼女が嬉しくて、その優しい笑みは自分だけと感じた瞬間・・・中は飛び跳ね唸るしかなかった遥加だった。

驚いた顔に照れ抱き寄せキスをすれば触れていた手は離れず線を辿るように背へ向かった。

『(笑)煽るな』
『ん・・・ムリだもの・・・』
『 ・・・』
声にせずに触れた唇は彼の体ごと布団の中へ入り込んだのだった・・・
【この後は皆様の想像で・・・】




日々の楽しさは自分を楽にし息も吸える気がした。
声は響けど気にする自分もいなくなった・・・舞潤に助け出された自分を知った気がした。

和葉の笑みも嬉しそうで・・・柚月と過ごせば幸せな笑みに変わりホッとした。

奏多から狙われそうな日々は消えたからとも思えた・・・こんな場所へ連れ出されないように和葉を連れ出し囲った事は間違いなかったと笑みは溢れた。

遥加と同じで優しいから・・・そう言って気にもしない和葉の笑み・・・一番の親友だったから・・・自分の気持ちを大事に接してくれた彼を深みにはまらせずに過ごせた事にホッとするのだった。

舞潤が今日も自分を癒す・・・甘い香りはバレンタインを過ぎても、ホワイトデーを過ぎても変わらなかった。

自分だけに向ける笑みにホッとする・・・大丈夫と自分へ囁く彼女の声音だけが自分を助けた。

居心地の良さは彼女とだから余計に癒せるのだと思え嬉しくなった。

共にいく・・・それだけで幸せを感じる自分を誉めた・・・
変わらず呆れはするが癒せと求めれば受け入れ、しつくせば自分を抱いて眠る・・・愛した笑みも自分だけに向ける眼差しに焦がれた気がした。

キスをすれば今は口付け絡ませて返す・・・声にもして囁く甘さは自分を心の底から抱き締めた・・・

そう言えば彼女の照れた笑みは自分を優しく抱き止めた事に、互いに声もなく浸れたのだった。

『(笑)幸せね・・・』
自分を抱き締め囁く彼女の声音に自分の笑みが溢れたのだった・・・


-end-


結局はここへ落ちた!
拙く・・・本当に失礼致しました。

お付き合い下さり感謝します。
想像を遥かに膨らませ爆発させて妄想して下さいませ。
丸投げですみません(-_-;)

みなさんにとって・・・
幸せな一日でありますように(^-^)v

happy Valentine!!
-tami-