雑音・・・久しぶりに来てみて驚いた・・・たった数日、物静かな場所にいただけなのに自分で来た場所の音の激しさは耳が痛いと叫びそうなほど戸惑った。
久しぶりに会う弟の様子に笑いながら眺める彼がいた。
確認と報告・・・打ち合わせと話に来たのだろうと待ち合わせの場所にやって来た。
時々だか耳を押さえ辺りを眺めては嫌そうに 項垂れていた姿が可笑しくて笑えた。
苦笑いで返す弟に笑み、人を離し二人で奥の部屋へと入り込んだ。
『何で(笑)そーなってる?』
『(笑)物凄く静かな場所だった・・・』
『(笑)どれだけ』
『んー ・・・自分の息遣いが大きく聞こえる位・・・(笑)』
本当かと疑うような兄 颯の笑みに、事実だと頷く蒼・・・それでも信じられないと眺めていた。
『(笑)中まで入ってはいない・・・回りを調べてただけだが(笑)夜は自分の息遣いだけ・・・だから昼間に探してたんだ(笑)』
『(笑)何処にいた?』
『屋敷の裏手・・・(笑)東側にいた・・・本当に広い敷地だった・・・広大な私有地だからか柵はなかったが(笑)あれは森・・・山奥っていえるな(笑)。
そこに高い塀で囲って監禁されてる・・・(笑)久しぶりに木登りしたぞ』
『(笑)マジか』
本当かと、それでも楽しそうだと笑う兄に苦笑いだった。
『見張りも?』
『広すぎて頻繁に見回ってなかったが・・・・』
『監視カメラで?』
『(笑)音』
『ん?』
『(笑)見回りの時に中の音で確認してるだけだった・・・』
マジかと笑う兄・・・
『車で移動したい位だった(笑)。警備の奴等も途中まで車で来て歩いてチェックしてた。
音で探るように(笑)、それと夜はライトを照らして、あちこち・・・へんな警備の仕方をしてるから焦った(笑)』
『中は?』
『あー(笑)、それほど外に出てるって事もない・・・殆んどは家の中に居る。
誰も塀の中まで確認もしてなかった。それに鍵がな(笑)門の外から頑丈なヤツでされてたから出る事もないんだろうな・・・』
きっとと見て来たモノを思い出し笑っていた。
『家の中だけか・・・(笑)テレビ見て時間潰してるとか?』
『(笑)知らねーよ。少しだけ暗めの明かりでいるが、直ぐに消える(笑)何で楽しんでるやら・・・』
蒼の様子に驚く・・・女が一人、囲われた中で生活する日々・・・どんな女か見たくなった。
『囲う奴は行かねーのか?』
『ない(笑)、と思う・・・見たのは全部、警備の奴だけだった。
屋敷の出入りは外へだけで、女の所へ行く姿は誰一人ない(笑)』
『(笑)緩いな』
『だから余計に何で縛ってんのか調べないとヤバい(笑)』
『見てーな(笑)』
『(笑)彼女が怒るぞ』
楽し気な兄の呟きに笑う蒼もいた。
『見るだけだ(笑)。後の方法は考えるがな・・・(笑)面倒だから女は任せるから探しとけ』
『マジ?俺?』
自分がするのかと驚いた蒼は兄の顔を眺めた。
『(笑)いつする?』
『屋敷の娘が婚約したんだとさ(笑)。その祝いで花火をあげるそうだ』
『すげーな(笑)』
『(笑)似たじきに祝い事があって、その度に花火をあげるそうだ。
だから、その音に紛れて連れ出す事にした』
『(笑)人は増えんじゃね?』
『だから(笑)入れんだろ。女の顔も近い奴だけだろうし(笑)取り合えず簡単に』
『さらっと(笑)連れ出せ』
『なー(笑)マジで俺?』
『 ・・・(笑)』
心配なのかと笑う兄だった・・・・
行こうと手を伸ばす・・・その手に見向きもせず空を眺め微笑んでいた彼女がいた。
夜空に綺麗な花が咲く・・・柔らかな明かりに照らされる様が綺麗だと眺めていた。
『行こう・・・』
そう言ってみれば、本当に驚いた顔で自分を見た事に戸惑った。
『見張りが薄い今だから出れる。それもバレずに出れる・・・』
だから行こうと手をより彼女へ向けて出した。
『先に出ます!』
後ろから来た人が何かを持ちながら歩いて行ってしまった。
『待って!それを持って行かないで・・・』
『大丈夫だ(笑)お前が大事と言ったから、丁寧に運ぶ。ちゃんと壊れないように大事に持ってけと行ったから』
『だけど・・・』
そう言いながらも迷う彼女だった・・・それでも駄目だと思い直したのか、行かないから返してと言いながら追い掛けた。
背丈もある身も隠せる程の雑草が伸び、塀が近い場所から入り込んだ。
この辺は来た事もなく手入れも、した事もないようで・・・年に一回、手入れしに来る人達も何もしない場所だと調べて分かった。
端にある壁・・・その下の角を開く・・・ソコから男は出ていってしまった。
驚き過ぎて声にもならず立ち止まる彼女の手を引いた・・・
されるがまま・・・促されても暴れず叫びもない彼女は諦めたように・・・穴へ押し込まれても声にも出さなかった。
そっと手を繋ぐ彼は辺りを探りながら歩き出した・・・枯れ葉の踏む音はすれど、花火の上がる音でかき消されていく・・・楽し気な声音は聞こえ始めれば彼は彼女を抱き込んで静かにと囁き素早く場を離れようと歩かせた。
ようやく駐車していた場所につく・・・既に上がる花火の音はなく・・・車に乗せた彼も隣へ乗り込んだ・・・
助手席で待っていた男は、そっと彼女の膝へゆっくりとそれを置いてくれた。
『ありがとう(笑)・・・大事にしてくれて・・・』
箱に入れられていたが、壊れないようにか衝撃吸収材のような柔らかな素材のモノで包まれてもいた。
両手で抱き締める・・・
愛しそうに抱く箱・・・心から大事にしていたモノが手元に戻った安心感からか微かな笑みを浮かべる彼女・・・良かったと、一緒だと思えホッとしているのだろうと思えた。
走り出しても、暫く眺めていた・・・それは微動だにせず、ずっとだった事に驚いた。
自分がどんな場所にいたのかさえ気にもとめない・・・これだけが全てと優しく自分で抱いていた。
車を乗り換えても、回りが声にしても全て自分には関係もない事と気にしていなかった。
『気にならないのか?何処に行くかとか・・・』
どうにも自分が気になり声にしてみた・・・
『約束したから・・・見つけてくれるでしょ?』
『 ・・・あぁ』
『待つ場所を貰えたら十分・・・』
それだけ言うと窓から外を眺め始めた彼女に戸惑った。
静かに朝陽が登り始める・・・空に舞う鳥がいただけで笑む・・・微かに見えた聳えるビルに驚く・・・見るモノ全てが初めてだろう視線・・・僅かに微笑む彼女に怖さはない事は不思議だった。
移動中に兄と連絡を取る・・・そして彼女を隠す場所は決められた・・・
捨てられたように聳えるビルの屋上・・・野晒しにされただろう建物・・・それは辺りまで同じ廃墟といえた場所だった。
それでも、この建物は兄が管理している・・・勝手に入り込む事も出来ない場所だった。
行ってみれば取り合えずだろう兄の手下達が掃除をしていた。
何処からか持ってきたベッドまである・・・眺めてみれば、マンションだったと分かる・・・それはキッチンやバスルームはあったからだ。
一応と水を出してみれば使える事に可笑しくて笑えた。
『とーぜん使えるさ(笑)』
不意に現れた兄の声に苦笑いだった。
『去年は逃げてた奴を匿うのに使ったしな(笑)。それから使ってもないが・・・外から見える場所の明かりはないぞ・・・』
『蝋燭で間に合う(笑)』
『ん?どんな暮らしだ?』
『あー・・・電気を使ってたのは(笑)冷蔵庫・・・キッチンだけだった(笑)』
凄いだろうと呟いた蒼に驚きながら女はと探した。
『驚き過ぎて(笑)今は景色を楽しんでる・・・』
彼女を促し連れてきた・・・室内に驚き、バルコニーへ出た姿があった。
その景色に驚いて立ち止まったまま動かなくなり・・・辺りを眺めジッと見つめていた・・・
何もない屋上ように広がる場所だった・・・屋上に部屋があるような・・・
本来なら贅沢に使える場所・・・整備されていたのだろう花壇の跡まであった・・・
空を眺め微笑んでいた彼女に驚いた・・ 何処だと探してみれば連れ出された怖さも持たず、今ある場所で暮らす楽しみを持つような笑みの気がした。
壊れそうなほどに細い線・・・髪は纏めてはいたが女ならではの手入れはしていない気がした。
『女だが・・・女じゃねーな(笑)』
『手は出すな(笑)。逃げたら、どー出るかも分からない』
『ん?』
どんな意味だと弟を眺めた。
『生きる約束(笑)それだけで来てる・・・出たのは世話をしてくれた人の墓参りをする事(笑)だから探してくれと頼まれた』
『条件?他は?』
『外での生活が出来るまで俺が教えてくれるなら(笑)そう言った』
『(笑)保護者にされたのか』
笑えると体を小さく揺らし笑う兄に苦笑いしかなかった。
屋上の端を教えるように連なる花壇・・・その端に歩き出した彼女を眺めた。
残され生き延びたような花が可愛く咲いていた。
そっと触れる彼女の指を眺めた。
『まー食料は運んどいた(笑)、何とかなんだろ?』
『たぶん(笑)』
『仕事(笑)休んで女に付き合え』
『 ・・・』
『逃げ出したらどーすんよ・・・見学って勝手に出たら?(笑)やべーだろ』
『大丈夫なように手は回してくれたんだろ?』
『一応(笑)。俺が見張ってアオが囲う女って事で、(笑)手は出さずに報告しろとは言ってある』
『兄貴・・・』
理由はそれかと、勘弁しろと見返せば笑って肩で手を振りながら帰っていってしまった。
『蒼さん。俺らは貴方の下へ就く事になりました』
『たぶん女を回りへ知られないようにかと・・・なので出さず蒼さんの指示に従えと・・・兄貴が・・・』
言われたのだと、すまなそうに呟く男に苦笑いだった。
『 ・・・一緒に住むのか?』
『あー(笑)それは蒼さんの役目で、俺らは隣の部屋に準備してあるそうで(笑)すみません・・・』
『さっきのエレベーター前のドアだけです。鍵は3つ(笑)俺らは1つ持たせて貰います』
『俺と彼女の?』
『たぶんとしか(笑)』
了解と受け取り彼女を見返せば、花壇へ上ろうとした姿に驚いた・・・
手下の一人、イチが慌て走り込み彼女の手を掴んだ。
『古いんで落ちます・・・』
『ごめんなさい・・・どれだけ高いか見たくて・・・』
『 ・・・』
『お前な・・・脱走した事が早くバレるだろ・・・
確かに回りに建物はあるが、顔を出せばココにいるとバレる・・・』
『ごめんなさい・・・』
『いいか、下は覗くな』
『ココに出ても平気?何処まで歩いてもいいですか?』
『下から見えない場所・・・は、知らねーな・・・ユウ!』
『はい!』
『確認してペンキかなんかで(笑)線を引いてくれ』
『マジっすか?』
驚きながら、慌て叫んだ声に苦笑いしかない。
『あー大丈夫っす(笑)。
手摺から覗かなければ見えないはずです・・・回りは上がれません。
全部出入り口も階段も塞いでありますから(笑)・・・火を起こしたりとか・・・住んでる感じに見えてないはずなんで』
『回りに住んでる奴は?』
『(笑)基本、使ってる女だけっす。店に出しても逃げるんで、逃げない条件で住まわせてます(笑)』
『ココは?』
『(笑)ボスの許可なく入れません。
下3つばかり許可された奴しか住めてません』
兄の下、トキタとトモヒロが交互に声にした。
『上には?』
『知りましたでしょ(笑)専用キーって・・・それが無ければ入れませんし乗れません(笑)』
徹底した作りに笑う・・・見た目は廃屋なのに、ちゃんと住んでいる人は居た事に・・・
打ちっぱなしのコンクリートは剥き出しで、それぞれの部屋を区切るドアさえなかった。
『(笑)蒼さん。戻っていいですか?』
『ん?』
『俺らは明日から住むんで(笑)』
『あー荷造りか(笑)』
『はい(笑)。蒼さんのはボスが準備してます。女・・・彼女・・・
あの人のは蒼さんがすると(笑)聞いてました。それでも一応って少しだけですが準備はしてあります・・・』
聞きながらも驚き声を失ったように押し黙る蒼に、すまなそうに説明はしていくトキタだった。
頭が痛む・・・そんな気がして項垂れていく蒼・・・諦めたように額を押さえ準備してこいと彼らを行かせたのだった。
辺りを眺め自分が住む場所の見学だと歩き出す彼女・・・タオルを見つけ、ソレを置く為の場所を丁寧に拭きあげた。
そっと飾る・・・キッチン内を眺め、見つけたとグラスを一つ取り水を汲む。
外へ出て行けば咲いていた花を一輪摘んできたようでグラスへ差し込んだ。
笑み見つめ静かに祈る・・・その笑みの優しさに見惚れるように眺める蒼だった。
『お仕事って・・・』
ふと思い出したのか、自分へ振り向いた彼女が呟いた。
『探してる・・・だが暫くは駄目だ・・・様子をみないとな』
『 ・・・ここに住んでもいい?』
『そうだ・・・』
『あっちも使って大丈夫ですか?』
指を指して言った彼女の指差す方を眺めた。
『屋上で何をする?』
『あ・・・材料がありませんね(笑)』
『何を作る?』
『んー椅子(笑)ベンチというモノです・・・晴れた日に外で過ごせるし・・・』
『買ってきてやる(笑)』
『売ってるんですか?拾ってきてくれるんじゃなくて・・・』
『 ・・・』
『もしかして、洗濯物を干すモノもありますか?』
『 ・・・・どうやって洗って干してた?』
『えっと・・・バスルームにあるボールで洗って・・・絞ったら外のベンチに・・・
バァが居た時はロープを使ってました・・・だけどココは、紐もないし・・・紐を縛れる場所もないし・・・お布団を干せる・・・』
場所もないと、すまなそうに見返す彼女を眺めた。
苦笑いだ・・・初めてみた場所で自分を生かす努力をした彼女に・・・何を見聞きしても一瞬で受け入れていく事に。
使い方を教えれみれば自分で始める彼女に笑った・・・それが恥ずかしいのか照れた笑みで始める彼女だった。
身綺麗にした彼女が髪を拭き、そのタオルを巻き付けて食事の準備を始めた。
眺めのスカートは今は彼女の胸から下へワンピースのように着ていた。
楽し気に作っている間にバスルームへ入った。
手際もいいのか、出た頃にはキッチンカウンターに置かれていった事には驚いた・・・
『こーしてくれたのは(笑)私のいた場所を知ったから?』
カウンターにある椅子を指差し微笑んでいた彼女・・・
もとからあっただけの椅子・・・ダイニングも知らないのだろう彼女の呟きに口を引いた。
そうかと笑み、どーぞと促す彼女に笑った・・・
『後で聞いても?』
『何だ?今は駄目か?』
『あー(笑)冷蔵庫の中に・・・知らないモノがあって・・・食べ終わったら聞こうかと(笑)』
分かったと言うと、ホッとしたように微笑んだ彼女は椅子に座り食べ始めたのだった。