tamiのブログ

このブログ・・・妄想ー空想大好きな私が、勝手に楽しんで・・・勝手に文字にしています。ボロボロですが(笑)

or −3

2023-04-28 12:41:52 |  or


最初は声にした里瑠さえ主総から直接命令された事で黙った・・・帰り道はムッとした顔だったが。

だから余計に言葉もかけられなかった・・・そして別れ際に綾音は里瑠へ振り向いた。

『・・・』
『協力・・・し合えるの?』
『・・・する』
『・・・分かった』
『・・・』

一瞬・・・迷ったような顔をした里瑠に諦めた・・・全部は行ってから考えようと返事をし自宅へと戻る綾音だった。



自分の部屋へ入り考える・・・聞いてきた話の中での事・・・飛ばされる場所の情報さえない。

なのに準備をしろと言った・・・救出しに行かせるのに二人だけ・・・連れ戻せと言うのに現状の詳細も無かった事は本当に苛立った。

辞めると言った罰・・・それでも自分がいる組織の一番上から直接命令されたのだ・・・だから行くしかない。

ベッドの上へ取りあえずと乗せていく・・・渡されたモノは何処にと考え悩んだ。

室内にあるランプが点滅した・・・それは暫く休憩するという知らせで父や弟、従業員は休める。

出る準備をしてから手伝おうと戻ってくる父や弟を待った・・・


笑いながら自分を眺める二人に苦笑いだ。
『やっぱり(笑)』
『(笑)辞められなかったんだろ』
二人の呟きに口を引く。

『その装備・・・凄い場所なんだね・・・姉さん、マジでやばい?』

『ヤバい(笑)・・・二人で行って把握されてない人数を救出して戻る事になった』
『・・・』

父親だけが驚き声まで失った・・・弟の直己は考えながら何処かへ行ったが、後で手伝うと父へ言ってからまた準備を始めた。

『無事に戻れよ・・・待ってるからな』
『・・・(笑)頑張る』
自分の声に頷き父親は体を休ませる為に部屋へ戻っていった。


『(笑)姉さん、これ強化したんだけど使ってよ』
『ん?』
『防護服(笑)、ちゃんと試したから体は守れるし隠せるよ。一番下に』
『・・・これ』

『(笑)脱がなくても体は洗えるし、脱がされる事も出来ないよ。それと預かったのは完成してたんだよね(笑)日の目が出るな』

ラッキーと笑みながら言った直己に苦笑いをした。

手首と足首は綺麗に隠れるが捲れる事もない・・・そしてハイネックにしてあり伸ばせば顔も隠せる細工も前より違っている気がした。

『さすがに(笑)物凄く細い針は不味いかもしれないけどね・・・意外と上手くいったから、数着ほど(笑)』
作ったのだと笑う直己だった・・・

『これ・・・私以外が使うと、どうなる?』
『(笑)守れるけど、脱がされたらアウト。本来は姉さん用だし・・・
あぁ(笑)もう一人の・・・女の子?』

『子・・・』
『いつ行く?』
『十日後に迎えが来る』
『呼べる?絶対の保証はないけど変更する時間は1日あれば・・・』

『(笑)寝る暇ないじゃん』
『だけどさ二人だけなんでしょ?その人が怪我しなきゃ姉さんも楽じゃないの?』

直己の呟きは確かにと思え防護服を眺めた・・・

『いいから呼んでよ(笑)』
『・・・』
『あ・・・持ってるか・・・』
『身だけっぽい』

『・・・ん?』
『腕と足は切ったから』
『・・・はぁ?』
『・・・我慢はね』

『あぁ・・・姉さんを狙ってた人か・・・
でも救出しに行くなら手は足りないと、困るの姉さんだよね・・・ま、いっか(笑)体が守れるなら何とかなるもんね・・・』

『(笑)まーね』
『そうだ・・・姉さんの剣さ、マジで強化させた?配合・・・』
『(笑)極秘』

『持とうとしたらさ』
『怪我した?』
『し、してない・・・大丈夫な場所だったから助かった・・・(笑)ごめんなさい』

『(笑)いいけど』
『誰かに取られるより確かだよね(笑)仕掛け・・・鋭利過ぎるよ』

『まあね(笑)・・・(笑)指紋もだけど、微量でも反応したなら成功だった(笑)』
『兄弟でもヤバい(笑)』

『触るな(笑)』
『細工した途端に刃が出たから危なかったよ。場所は教えといてよ次は(笑)』
『(笑)了解。予備のも細工して』

『ん・・・上に何を着る?って・・・それにするの?』
『・・・戦乱としか聞いてなかったから・・・布が(笑)無難?』

『・・・(笑)そっちにしたら?便利に使えそうだよ?』
どれだと指先を追う・・・

全身に収納するポケットはあるが飛び出ない作りだ・・・腕も身も足も・・・全てに止められた紐で太さも調節出来る。

全部外せば包帯の変わりにも何にでも使えるような作りにしてあった。

『(笑)切れるしね・・・』
『紐は多く(笑)、また手足に巻くんでしょ?あ・・・それ(笑)何?時計?カメラとか?』

『・・・連絡用って聞いてた』
『通信機か・・・電話なら音が鳴るよ・・・ね普通・・・鳴らないなら振るえるのかな』
『さぁ・・・』

渡された透明のベルト・・・見た目は時計が見え腕時計のようになる。

平たい形状だから そう見えるが見た目はブレスレットのようだ・・・そして直ぐに詳細がない理由はと考えてしまった。

靴を揃え選べるように運んで来た直己に感謝して、休憩しとけと押し出した綾音だった。


残り数日という所で里瑠が来た事に驚いた・・・迷うような顔つき・・・これは何の理由で来たのかと考えながら迎え入れた。

取りあえずと別室へ案内した直己だった・・・綾音の手があき行けと促され苦笑いしかない。

『(笑)姉さん・・・嫌いなの分かるけどさ・・・』
『・・・顔に出てた?』

『もろ(笑)・・・行けば仲間だしさ二人だけなんだから頑張ってよね(笑)』
『・・・』

弟からの言葉に苦笑いだ・・・ドアをあけ綾音を促し入らせた。

『姉さん(笑)』
『ん?』
『皆を救出して無事に戻るんだからね(笑)それは約束だよ?』
『おっけ(笑)』

『互いに命を預ける覚悟も(笑)信じるのも必要だよね・・・二人だけで行かされるんだし』
『『・・・』』

『(笑)十分に話し合って頑張ってよ』
『『・・・(笑)了解』了解』
遠慮もなく初めて会った里瑠へも聞こえるように話した直己に誓うように呟いた。

飲み物とつまめる菓子のようなモノはトレイにありテーブルへ置いていった。


『準備が終わったから来た?』
『・・・落ち着かなくて』
『何に?』
『その前に・・・』
『今までの事なら』

『それでも謝りたかったから』
『・・・』
『ごめんなさい・・・自分では気付かなかった・・・昨日、聞いたんだけど・・・副隊長が調べてくれて』

『・・・ん?』
『・・・隊長に薬を使ってコントロールされてたって・・・だから気持ちが不安定で狂ったように見せる為に仕組まれてたって』

『・・・』
『その報告を後でしようとしたら行かされる事になって報告が出来なかったって教えてくれた・・・』

『・・・分かった。それで気持ちは切り替えられた?』

『そこが分からないから先に謝る。どこでスイッチが入るか調べられないでいるから』

『確かにね・・・』
『本当に落ち着かない理由は、詳細がなかった事・・・
副隊長に聞いたけど知ってたのは二つの部隊で十人が行った事だけだった。救助するにも』

『何人行って何人戻って来たか教えて貰えてない・・・戻れた人の詳細もない』

『頼むと言った人の娘だけを連れて帰れって意味にも取れたけど、他の人達が生きてたら一緒に戻れるのかも知らないから』

『行く前に聞く事にしようとは思ってたけど・・・』
『戦乱って初めて行くんだけど・・・何処までかは知ってる?』

『どんなかも知らない。それに真ん中に落とされるって意味が分からなかった』

『それは同じ・・・場所を設定させてから飛ぶはずなのにって思ってたから・・・
行かせたい理由は処罰・・・ユリ隊長の親が戻したいと騒いだから呼ばれたのかも・・・って思った』

『あぁ・・・』
里瑠の言葉に それはありえると思え考える綾音だった・・・ふと、里瑠の姿を眺める綾音に気づいた

『それは、もう行ける?それで終わり?』
『何が必要かも分からないし、飛んで直ぐに危険なら荷は最小限にしとこうかと思ったから』

『・・・』
『充電式は?』
『二つ持ってるけど、そこに何かが当たったら壊れる・・・ソーラーなら陽があれば使えると思ったけど』

『私も持った・・・
まずは移動して場所を確保してからだけど・・・』

『ん・・・逃げてから居場所を把握して・・・それから探す?』
『探す』

『ん、真ん中なら紛れて隠れられるとは思った』
『全部の把握・・・』
『それと、これ・・・腕時計に?』

『連絡用ってだけで考えとく』
『端を繋げると作動するけど違和感があったから普通にそのまま繋げてみたら・・・』

こうなったのだと見せられた・・・それはブレスレットのような輪になり場所によって時計が現れていた。

その隣はモニターのようだが一つだけ黄色で点滅していて驚いた・・・
『これ・・・』

『飛んだ人達も着けてたならって思ったんだけど・・・』
そうかと自分のモノも腕には着けず端を合わせ輪にしてみた綾音が眺める。

『『・あ・・』』
互いに唸り見合ったが直ぐに眺めれば、時計の隣で点滅しているのは黄色が二つだった。

『・・・位置・・・GPS』
『皆の・・・』
互いに呟きながら元に戻し付ける場所はと考える・・・

『どーしても腕にするのは抵抗があって・・・』
『信用できないしね』

『罰・・・だね・・・本当にごめん』
『・・・聞いてい?』
『ん・・・』

『協力できるか聞いた時、迷ったのは何で?』
『・・・迷ったんじゃなくて驚いただけ』

『何に?』
『ずっと・・・敵みたいに狙ってたから嫌われて当然だけど、協力できるか聞かれた・・・から・・・』

『気持ちは本当に切り替えてくれてる?』
『ん・・・申し訳なくて・・・殺されて当然だけど・・・あの人は助けたかったし・・・』

『ユリ隊長?』
『世話になったから』
『・・・へぇ』
それは同じだった事に驚いた・・・

『あの・・・今から戻れた日まででいい・・・だから・・・』
『分かった』

『戻った日に考えてくれる?』
『・・・』
『だから・・・謝り足りない事だったから・・・』

『分かった。それ以上の言葉は後にして』
『了解・・・あと・・・』
『まだあった?』

『・・・ごめん。どーにも不安だから前日に聞きに行ってくる・・・その後に寄っても』
『分かった』

『ありがと・・・』
『飛ばされる場所・・・何処までか分からないから、もう少し装備してみてよ』
『・・・了解』

『防護服の袖・・・ついてるのない?』
『動きやすいから・・・あ、薬は持った・・・』

『解毒剤はある』
『あーそっか。そっちがいいかな』
『・・・靴は?』

『足首じゃ不味いかな・・・』
『動き重視だったんだね・・・』
『ん・・・』

『何で切られても構わない動きだけにしてる?確かに刺されないだろうけど頭と手足の先は無理じゃん・・・防ぐ事は滅多にしないよね』

『・・・斬られる前に消すし』
『確かに・・・』
それはそうだと呟いた里瑠に、確かにと口を引く綾音だった。



出発までの日々は本当に忙しくした綾音だった・・・疲れは取れと休ませられる・・・本気の爆睡もした。

行く前の食事は一緒にしてくれた二人に感謝だ・・・そして・・・直己は間に合ったと二枚のマントをくれた。

『(笑)姉さんを守る一枚。も一つは一緒に行く人にあげて』
『ありがと(笑)・・・』

『ちゃんと帰ってくるんだぞ?怪我もするな・・・』
『(笑)了解』

ギュッと抱き締め呟いた二人に笑み頷く綾音だった・・・それから身へ装着しながら試しと腕をならす。

説明しながら装着する直己に苦笑いだ・・・端に渡されたモノを巻き付け眺めれば点滅する印が近付いて来ていると知れた。

カバンを背負う・・・これは身へ張り付き邪魔にもならないよう作られていた。


こういうものが欲しい・・・そう言えば直己が考え作り出す・・・それは父親までがアイデアを出してくれる。

強度を上げていくのは自分だ・・・それが完成し使って来てもいたが今回、もう一つあり直己を見返した。

これは里瑠になのだろう姿を見せた事で自分へ目配せていた・・・その里瑠の格好はと振り向けばショルダーバッグのような形で驚いた。

『そのバック(笑)可愛いね』
『それは使いやすいから?』
『分からない(笑)。初めて使ってみたから』
『『えっ・・・』』

驚いた・・・その辺も気にならない里瑠だった事を初めて知った。

『特製で作ったんですけど(笑)使いませんか?』
『(笑)いいの?あ・・・』

あまりにも嬉しそうに呟いた里瑠に驚き見返す自分たち・・・恥ずかしそうに黙り苦笑いをした。

そっと直己は手渡し怪我なくと呟いた事で、里瑠は丁寧に頷き今度は頭を下げた姿に綾音が驚いた。

『気持ちは切り替えたはずじゃ?』
『・・・そうなんだけど』

両手で受け取り自分の荷物を入れ換える・・・見ていれば自分と似たようなモノがあって驚いた。

直己は姉と考えは似ているなと準備品を見ながら思った・・・それでも姉より考えは違うのだとも思えた。

『これ・・・』
『(笑)気温の変化は体を壊すので使って下さい。雨避けも寒さも(笑)暑さも防げます』

『火は?』
『(笑)大丈夫です。だから誰かに取られず気を付けて下さい』
『(笑)ありがとう』

大事に畳み取り出しやすい場所へ入れた里瑠だった・・・背負うと里瑠の身へ滑るようにベルトは締まっていった。

それから思い出したように綾音へ振り向いた。

『聞いてきたんだけど、知れたのは』
『え・・・全部じゃないの?』

『違った事に違和感も激しくて・・・ちょっとムカついてる』
『何が知れた?』

『一回目は五人・・・救助兼偵察で数回ほど五人ずつ投入されたけど新たに投入した人のうち一人だけ戻った事。

毒に冒されてて解毒できず死んだ事で詳細は聞けなかったみたいだけど五人の生存は確認できてたって。
それから新たに数人・・・』

『・・・二十五人投入されてて五人だけ確認されてる?』

『その残った人達と協力して終わりにしてこいってだけ。何処をって聞いても行って見つけてから聞いてって事しか教えてくれなかった。

投入した人数は副隊長が調べてくれたんだけど・・・ニ~三十人ほど行ってるらしい』

『協力して終わりにって意味は?』
『向こうで聞けってだけ・・・』
『・・・』
『ね、ムカつくでしょ・・・』

怒りを抑えた里瑠の顔・・・確かに直接、自分で聞いていたらムカつきそうな気がした。

『猶予は?』
『予定は二週間・・・だけど深夜の連絡で話を聞いてから考えて、決定した時に折り返し報告はするって』

『欲しい情報はくれなかった訳だ』
『そう・・・最後に、全員で戻れって・・・付け足したように言われて驚いたけど』

『へぇ・・・』
そうかと呟いた綾音に苦笑いをする里瑠だった。




『山間に寺があるようだ・・・だから近い場所に飛ばす。そこは郊外だから安心しとけ』

『デイナとグランの間でもあるから気を付けなさい・・・』

『味方はどっちの国ですか?』
『どっちでもないがグラン側を減らす計画で向かいなさい』
『・・・』

『両国内で味方を探し皆で消せばいいですか?』
『・・・それでいい』

『残していく必要が?』
『・・・』
『行った数を聞いても?』

飛ぶ前にと呼ばれ行けば前と同じ人達が居た・・・細かく知りたくて里瑠が声にする・・・ならばと聞いてみた。

何かを隠す意味が分からなかった・・・ならば自分が最初に知りたかった人数はと声にした。

声が止まる・・・里瑠が副隊長から聞いた人数さえ言わない事に驚きながらも見返した。

『・・・知ら』
『知る必要はあります。その人数で計画し向かうのですから。
私達を行かせる理由は』

『なぜ聞く?』
『罰として死ねというならココで処刑を』
『・・・』

『飛んだ場所で数を減らして死ねというなら、ハッキリ答えて下さい。
たとえば一人だけ見つけ連れ戻せとか・・・』

『刀堂・・・』
『今ココで、二人で辞職したら拒否しようかと』
『理由が必要か?』

『はい。答えて頂きます。詳細もなく行かせ戻った者は居たんですか?』
『・・・』

『隊員は消耗品だと思うのでしょうが意思はあり家族もいます』
『詳細は』
『その詳細さえ聞いていません』
『・・・』

『部隊を出した事。ユリ隊長を救出する事。真ん中へ落とし死んだ事。聞いたのはソレだけです。
救出する為に行かせるにしても二人だけ・・・何故ですか?』

『疑問は多く不安しか持っていません・・・飛んだ数と生死の確認は出来ているのか・・・私も知りたいです』

『・・・五つの部隊を飛ばせたが三日後に連絡は消えて確認も出来ていない。
ユリ隊長が一人だけ戻したが中毒で意識も戻らなかったようだ・・・拷問を受けていたらしい』

『・・・戻す方法があるんですね』
『そのベルトだ。お前はなぜ手にしない?』

『壊される可能性が高いからです。腕なら尚更。これは腕でしか機能しませんか?』
『生体に反応するよう』

『・・・手を使うのに、武器が当たり壊れたら戻れませんよ?』
『輪にすれば大丈夫なはずだ』

『一つだけでも機能するなら戻せる。今は二つ点滅しているだろうが・・・それは君達だ。
その場所に三回触れ、点滅している間に君が触れている者を出せる』

『戻している者は出れずなんですね』
『触れている間に離さなければ戻れると思う。もう一度触れば点滅は消える』

『連絡方法は?』
『時計の方に三回触れたら通話は可能だ・・・どの部隊も三日後に途絶えた』

『・・・総勢三十名』
『殺される可能性はありますか?探っている途中の報告は』

『飛ばせた場所は変えていたが全てに乱の中だったようだ・・・だから今回はより離れた場所にしたが確実ともいえない』

『だから二人・・・』
『あぁ・・・取りあえず二日分の情報は手に入るからだ・・・』

思わずだろう里瑠の呟きにムッとする人達・・・確かにと様子を見ていた綾音もいた。

黙っていて話さない上の人達・・・痺れを切らしたのか目の前の人達の中では下の上官が答えた。

『・・・その人数分のベルトを持って行けば渡し連絡を取り合う事は可能ですか?』
『・・・』

『どんな準備をし向かったかは知りませんが防護服を着ていたから毒を飲ませられたはず。

解毒剤が出来ているなら持って行きます・・・解毒して休ませ体制を整えてから反撃し完了させようと思いますが・・・』

『出来るか?それを手渡し』
『分かりません。知らない状況の中に行くのは二人だけですから。
万能に解毒するモノ、あるなら下さい』

言えば直ぐに出された事に苦笑いしかない・・・一袋ずつ持たせるのだと中身を確認して里瑠を見た。

『三十くらい・・・』
小さな錠剤だった・・・自分が手にし十で一纏めにしてみた・・・それぞれにと渡したのだろう見返す綾音だった。

『見つけた者の名と・・・』
『ベルトはないと?』
『重複すれば・・・』

『こちらで反応しないなら、その分』
『ないのだよ・・・残っていたベルトは五つのみ・・・その二つを君たちに渡した』

『その一つを運んで欲しい』
驚いた・・・作れる者が居ないのだと気づいた。

飛ぶ直前だが知れた事にはホッとした・・・それでも先の情報はない事で諦めるしかないのだと思えた。

『リル・・・』
『ん?』
『同じ場所に飛ばなかった場合』
『アヤを探す。合流するまで逃げ切る事にする・・・だから』

『了解(笑)。同じ事を言おうと思った。まずは逃げ切る・・・それから合流し確認してから動く』
『もし・・・』

『仲間を見つけても放置して。まずは合流する事だけ考えて・・・』
『そうじゃなくて』
『逃げ切る』

『・・・自分より腕が上の人達なのに途絶えたから』
『逃げ切る・・・』
『分かった』
『悪いが(笑)・・・同じ場所なのは確実だ』

『デイナとグランの戦争区域が全域に広がっているなら必死に逃げないと・・・

寺だから安全は、ソコでは普通でもないはず・・・どんな場所でも捕まる可能性は大きい事と覚えて行かないと・・・』

死んでしまうと言い返す綾音を驚いて見返す人達に、自分たちの方が驚いてしまった。





or −2

2023-04-26 14:13:09 |  or


ようやく登りきり疲れたと項垂れる自分がいた・・・振り向けば遥か下へ伸びる階段の傾斜に可笑しくなる。

これを登った自分を密かに褒めた・・・次はなんだと辺りを眺めれば、遥か遠くへ伸びる街並みが見えた。

空の色が綺麗に見えた・・・下は 聳える建物の様々な形で、その間を走る車はカラフルで面白かった。

隣の街並みまで森林公園が広がり誰もが寛げる空間はあった・・・飛行機でもないが、空を飛ぶモノさえ道のようにうねり空に近い空間で走っている。

この周辺だけが異世界のようで便利なツールは利用されていない・・・上へと運んでくれるモノはなく自分の足を使う。

誰かを呼ぶにも人を使う・・・便利なツールは、この地を守るセキュリティだけだった。

一歩出れば便利さは数多く利用出来る・・・そういう特殊な場所でもあった。

建物を囲む床板は野晒しなのに綺麗で驚いた・・・まだ待たされそうな雰囲気はあった。

身形を整える人達に口を引き静かに床へ座り遠くを眺めながら待つ事にした。

威圧されているような雰囲気さえ出始めれば里瑠を座らせた人達も動かないよう隣へ佇み呼ばれるのを待った。


『アヤ・・・立つんだ』
キー副隊長が静かに自分へ声にする・・・始まるのかと立ち上がり見返した。

『出れるんですよね?』
『・・・分からない』
『罰は受けます』

『・・・俺も呼ばれた理由は聞かされていない・・・
アヤ・・・もう少し我慢して欲しかった』

『迷惑をかけました』
『そうじゃなく・・・』
『手を引く事に決めてました』
『店か?』

『(笑)繁盛していて助かりますが、滅多に休めず倒れても困るので辞めようと思ってたんです』
『店を継ぐのは弟だろう・・・』

『人手が足りずです(笑)』
『悔やまないか?』
『ありません。勝手してきたので、今は満足してます』

『懲りたのか?』
『・・・疲れただけです』
『・・・だから身形を変えた?』
『はい。空にしたので回せますよ』
『お前・・・』

自分の荷を全て出したのだと言えば驚き声まで失ったキー副隊長に申し訳なくなった。

それでも決意は変わらないと意思を示した綾音だった。


ようやく呼ばれ促された部屋・・・ベンチのように横へも前後へも並び置かれていた。

ここへと促され座ればまた待たされる・・・前方にはステージのように少し高くなっていて椅子が置かれていた。

誰かが入ってくる・・・新たに護衛の後ろから自分達の遥かに上の人達が来ていた。

視線を下へ運び指示されるまで立って待つ・・・両手首にある手錠を眺めながら声を待った。

裁判のような雰囲気・・・本物は見た事はないが、繋がれた手首の状態で罰を受けるのだろうと諦め静かに待った。

一斉に立ち上がり席へついたのだろう頭を下げ礼をする・・・座れと促され始まりを待った。


やはりと項垂れるしかない・・・今回の事を事細かく説明されていく・・・当時の状況は報告していたのだろう大まかな説明だけだった。

これは戻らず向かい言い渡された何かの罰を受けるのだろうと覚悟した。


少し離れた場所にいた里瑠・・・足に置いた手が握り締められた事で怒りを覚えたのかと驚いた。

=違うのに=
微かに彼女の声が聞こえた・・・本当に小さな声・・・聞き取り難いほどの囁く声だった気がした。

里瑠の事を話していたが否定したいのに出来なかった彼女の悔しそうな小声で説明されていた話は違っているのだと知った。

今度は自分の話だった・・・自分へも聞いてもくれなかった・・・見た者の勝手な想像で文にしている気までしてきた。

悔しさが握り締めた里瑠の手だと思えた・・・確かに違うと叫び否定もしたくなる。

それでも自分達から声を出し訂正も出来なかった・・・自分達より遥か上の人達の言葉も切れないからだ。

想像した自分達の言動話になっていく・・・耐えるしかない・・・早く終れと祈る綾音がいた。


これからの話にもなる事には驚き副隊長を眺めれば、自分と同じように驚いた顔をしていた。

里瑠のチームのカー副隊長も驚いた顔をして上段にいる人達を見ていて・・・僅かに違和感を覚えた。

『本当に辞めるのか?』
『はい』
『理由は?』
『家業を手伝いたいので』

『それは』
『いつでも辞められると入りましたが騙されていましたか?』
『・・・』

言葉を切った事で、言うなといいたいのか黙れと隊長が自分を慌て頭を下げさせる・・・上段の人達の微かな笑い声まであった。

『まよ』
『振るより作る方をしたいので』
『・・・腕は良いと報告はある』
『より数は増やしたく』

『なぜ今なんだ?』
『その今が家族を苦しめているので軽減したく前から考えていた事でした』
『必要か?』

『はい。私には絶対です』
『・・・(笑)人質と取られたら?』
『当然、助けます』
『殺すと言われたら続けるか?』

『いいえ、拒否します。数多くの敵から囲まれても助けだせます。私の全てですから』
『・・・』

『それが誰でも迷いなく出来ます』
綾音の言葉に驚く人達は増えていった気がした・・・


『辞める前に静めたい場所があるが行けるか?』
『拒否します』

『(笑)その多勢を潰して欲しいと頼んだら?』
『私には必要ないかと』
『・・・』

『(笑)自分の為と家族の為にしないか?』
『失礼ですが』
『アヤ・・・』
『構わない(笑)。言ってみなさい』

『・・・良い評価を持って下さりありがとうございます』
『(笑)それを言いたかったと?』

『もちろん違います。
その多勢を潰させる為に私の家族を人質にしたいと聞こえますが』

違うかと声にした綾音・・・自分よりも上の人達は余計に驚いた顔で彼女を見返していた。

『剣を作り出していた頃に、その使う仕事先を見たくて始めました。
その世話になった方に言われ礼を兼ねて来ただけで続ける為と今におりません』

『・・・』
『解放するから仕事をしていけともとれますが、自身に傷がつけば家業に支障が出ます・・・』

『中を荒らした罰だろう・・・』
『お言葉ですが、これまで放置して来たのに今更でしょう・・・辞めると声にした途端に罰を強要するのですか?』

『そうだ。お前の隊長に面倒を強いたろう』
『・・・』
『その世話した者も出向いている』
『・・・』

だからなんだと見返し綾音は考えた・・・荒らした罰を決めるのに軍のトップや、全てを纏める人達までが揃っていた事に気付く。

これは有り得ない状況だったと改めて思えたが、その遠回しのような状態さえ面倒な事に巻き込まれたのだと思えた。

『連絡が途絶えた・・・』
『その方との貸し借りは消えていますが』
『・・・』

『借りを作れば』
『ありません。消えた時に家業に戻ると誓ったので』
『・・・助けてくれないか?』
『・・・』

最初から静かに声にもしていなかった人・・・その人が不安そうな顔で不意に言った。

今・・・何が起きているのだと様子を眺め考える・・・真剣な顔が揃い始める・・・迷うような顔つきで考えながら自分をも見ていた。

無駄な声にもせず言葉を連ねる綾音に驚いた・・・最初から自分を持つ子だった事をキノは思い出した。

何より手にする武器は誰よりも使いならし腕も良かった・・・だから隊長さえ余計に黙って利用してきた。

チームの内で揉める事もなかった・・・僅かな怪我が増えたのは里瑠が狙い始めてからだ。

互いのチームは当事者抜きで相談しあった事もある・・・解決策さえ思い付かず面倒で避けてきた。

そして、その日に驚き慌てる二人のチーム長や仲間達だったのだ。

救助に向かわせたいのだと初めて知った・・・ならば罰と呼び出さず向かえと指示すれば良かったものを途中からだが連行させた。

最初から条件付きだと言えば綾音なら何も言わずに受けたろうと上司達を眺めた。

『娘から聞いた事があり名前を覚えていた・・・腕がよく覚えも早いと。すまない・・・今回の事と重なった事で君が連れて来られたようだ』

『・・・』
『女だけで部隊を作り自由をと願って始めたのが私の娘だった・・・ユリを覚えているか?』
『今は・・・』

『特令を受けた事で全員で向かったが知らせが途切れ』
『申し訳ありませんが詳細は』

『ある程度は必要だろう。君の指示が事態を招いたのだろ?・・・』
『それは すまないと思うが・・・』

『二月ほど連絡が途絶えている。今は手段さえないと聞いた・・・』
『腕の良い他の方へ』

不意に話し始める人達の言葉を聞く事も面倒になり声にしたが・・・止まらなかった。

『既に十数人ほど向かった』
『・・・』
『怪我をした者が一人戻され理由は知れたが・・・』
『・・・』

何を言っても断ってくる綾音の姿に驚いた人達は多かった・・・

『・・・私が行きます・・・私では無理ですか?』
『数人を向かわせると聞いていた』

『そうですか・・・理由を聞いても?』
『・・・』

里瑠が声にした事に隊長達までが驚き声も出ずに見ていた・・・詳細まで教えたくないのだろう上段にいる人達は声にもしない。

この人数でも黙って、説明もしない人達に苦笑いしかない・・・最初から行けと言えばいいのにと思いながらも様子を見る事にした。


『どうやら、出口は戦場の真ん中のようで、不意をつかれ他の者達は殺されたかもしれない。

だから別のチームを探せずに終わっている・・・上手く避けても調べる間に敵が増えていったようだ』

『何をしに?』
『全てを終らせる為と聞いた』
『戦争を?』
『戦乱の世へ』

『黙って下さい!』
『駄目です!』
『・・・ここから出たら声にもするなと誓約書を交わせば良いだけでしょう・・・』

説明したい人・・・詳細は言うなと止める人・・・必要はあると、違うかと怒りを抑え声にしたのはトップのアスカ主総だった。

その間も声にする人を見返し考えながら質問を繰り返していく里瑠に驚いたのはカー副隊長達だった。

巻き込まれていきそうで黙っている綾音に苦笑いだ・・・彼女は推薦され入隊してきた。

女の子だと驚いたが、自分も知る友人の一人ユリが推した子・・・そのユリも腕が良かったが男だけの部隊では障害は何かと多かった。

意見さえ通らない・・・信用しない者は多かった・・・だから女だけの部隊を作ると聞き驚いた。

試しと許可され出されれば他の部隊より出来は遥かに上・・・他の部隊からの声さえ耳に入れない強さがあった。

その部隊は数年で解体され数人ずつ他へ組み込まれた事は知れた・・・時に召集され出される事もあり、都合よく使われ始めていた。

綾音は解体前に出された・・・隊長は面倒だがと上から指示され自分が預かったのだ。

ユリと似た動きに驚いた・・・次々と武器を進化させれば前の段階の武器は誰かへ貸す事も気にしなかった。

何より味方でもある自分のチーム内で信用していない気もした・・・深く馴染む事なく日は過ぎていった。

それでも支障はない・・・指示された事は消化する・・・勝手するが結果的にミッションは成功していた。

認めざるを得ない状態だった・・・だからか隊長からのクレームは無かったのだ。

今回の事は気にはなっていたが、募集され行けるかという話は1つも出なかった。

それは隊長からの声でしか行けなかったからだが、相談さえされなかった。

諦めた今・・・綾音を選び行かせたい人はユリの親でもある上司の気もした・・・予測し考え抜いた結果なのだろうとも思える。

今は志願した里瑠にも驚いた・・・これが本来の里瑠なのかと観察する・・・目があった友人が笑み返した。

友人のカオルだけがチーム内で里瑠を守っていた・・・里瑠は隊長や仲間から煽られ鍛えられていたのだと言った。

日頃から緊張感は増え、始まる前まで里瑠だけがしごかれていた・・・止めた事もあるが始まれば途中でも言葉巧みに里瑠を煽っているのだと。

落ち着かせてから里瑠を確認しミッションの内容を把握させてから離す事にしている事も聞いていた。

話を聞いていて、何人で行くのかも気になる・・・同じ副隊長としているが、本当は自分が知る隊員もいて助けにも行きたかった。

まずは話を聞くと目配せたカオルに口を引く・・・行くべきかも悩まず断る綾音・・・確かに自由でもある。

綾音から聞いて鍛冶屋に様子見で行ったが弟らしい子は楽し気ではあったが忙しなく働き通しの気もした。

その報告は自分の隊長へも言ってあった・・・ならば受理しようと話は終っていたはずだった。

だから綾音へ伝えようと思った矢先に連絡が来た・・・待っていれば隊長と自分まで報告するよう言われた。

綾音を待っていた時に里瑠に見つかり一暴れした・・・その間に素早く懲罰隊が姿を見せ綾音を連行すると手枷をした。

驚き過ぎて理由さえ聞けなかった隊長に呆れたが促されれば素直に向かう綾音に苦笑いをした。

確かにミッション中の出来事でもある・・・予定時間より遥かに長引いた事も確か。

二人の言動・・・全て流してきた綾音の出来事に罰は必要なのだと、そう判断されてしまったのだと思い促されるままに来た。

来れば違った事に驚きしかない・・・どの部隊でも話が出ていた事でもあった。

『君は訓練中でもなさそうだな』
『辞めましたから・・・整える必要もなかったので、これで来ました』

『罰はあったと?』
『あるから呼ばれたのだと理解したので来ただけですが・・・』

いちいち遠回しに話し出す・・・次は自分だと言いたげに見返す人達だと面倒で視線を外した。

より面倒な雰囲気になった気がした事は直ぐに気付いた・・・手錠は自分へ聞く間に外されたから。

罰よりもと声にする・・・聞くなと自分へ言い聞かせ、話すなと願うしかない状況になった。

ユリ隊長は自分を鍛えてくれた人だ・・・その人を助けたい気持ちはあるが、実家の状況は直ぐに解決もしない。

まずは自分の家族を助けたいのにと項垂れる・・・その気持ちが強く申し訳ないと多少は思う綾音だった。


頑なに断り続ける・・・
=面倒は耳を直ぐに閉じるから面白いのよ=

笑いながら教えてくれた娘の言葉を思い出した・・・それでも家族思いで何かあれば全てを放り飛んで帰ると笑って言っていた。

妹のような近い関係になり楽しくなった事も聞いていた・・・それでも娘を取り戻したくて声にした。

苦笑いだ・・・聞かないという姿に見えたから・・・どう説得しようかと綾音を眺め考える。


『十日ほど猶予を与える・・・準備をしなさい』
『・・・『了解・・・』』
里瑠は返事をしたが呆れた顔の綾音は直ぐにムッとし返事もしなかった。

『二人で協力しあい終らせる事。そして救助を優先とする』
『刀堂よ・・・頼んでも良いか?』
『・・・』

主総の言葉が放ったのに、娘を助けて欲しいと願いながら聞く・・・一人は強制し一人は選択しろという。

何故か二人だけで行けと命令している人達だと一人ずつ眺めた。

『十日後、迎えを出す。武器は厳選し身を強化せよ。三日ごとに、深夜に報告して欲しい』

主総が呟けば端から何かを持って現れた人が出てきた・・・そして自分と里瑠へ渡された。

『・・・悪いが頼んだよ・・・』
自分へだけ見つめ呟いた声が聞き取れた事で綾音は見返してしまったのだった。








or −1

2023-04-24 12:48:22 |  or



綺麗に並ぶ石畳は遥か奥へと伸びていた・・・人が二人並んでも反対側から誰かが来ても邪魔にはならないほどの広さがあった。

辺り一面、芝が敷かれてあり所々に低木の花が咲き誇っていた・・・大きな池には小橋がかかり優雅で・・・風情があると言いたげな造りだった。

小路は左右にも分かれていて、それは何処かへ通じるようだ・・・真っ直ぐに歩けば早いのにと思えるほどに曲がりくねっていて笑えた。

こんな場所もあったのだと驚きしかない・・・何よりココは邸宅でもない・・・その建物に、遥か前の方へ聳えるほどの階段が見えた。

確かに罰を与えられる場所ではあるが、ココを登らされるのかと面倒で億劫になり立ち止まった。

止まれば自分を連れている人も止まり休んでくれる・・・こんな人達も居たのかと可笑しくなった。


後ろから騒がしく張り上げる程に叫んでいる声が響き出す・・・その声は誰かと知った。

振り向けば、やはりと項垂れた。
『赤毛か・・・』
思わず声にしたが、その赤毛の女も自分に気付いたのか余計に叫び出した。

『お前が早くしないから巻き込まれたろ。面倒だったぞ!』
『・・・』
『この辺で退け!出てくんな!』

さっきまで自分が連行され、行く行かない 登る登らないと叫び、濡れ衣だと叫ぶ・・・手錠を外せと叫んでは転がされ煩かった。

なのに自分を見た途端に、自分の名前を叫び狂ったように暴れ過ぎただろう言動で連行されたようだった。

これで何度目だろうと項垂れるしかない・・・それでも手前までで、この場所は初めてだった。

〈 煩すぎる 〉
項垂れ自分に構うなと目線は合わせないよう他を眺めた。

タッと小走りの音がしたが最後は力よく跳ねたのだろうと咄嗟に身を前へ移動してから横へずれた。

また飛び蹴りかと苦笑いだ・・・だからスッと避けた・・・からわず同じように飛び蹴りする時の音だ。

バン!と隣へ着地した桜井里瑠が怒りながら振り向いたが、同時にまた蹴ろうと思ったようだ。

繋がれた両手で塞ぎながらも彼女を眺めれば、その彼女に繋がれていたロープが勢いよく引かれ 次の反撃も来なくなった。

新たな叫びで素早く口は塞がれる・・・そんな彼女が可笑しくて静かに笑う綾音だったが自分もまたグッと引かれ、行けと促され階段を登り始めた。

余りの動きに里瑠の身に巻かれた縄から繋げる人達が増え・・・塞がれた口からも、忙しく出てくる唸り声も聞きたくなくて登るのも止め端へ寄った。

理由に気付いた男達は里瑠を促し登らせ始める・・・通り過ぎれば フーと息を吐く綾音と、自分を連行してきた人達も同じように溜め息をしていた。

里瑠の髪色は陽射しがあたると赤毛のように見える・・・着ている服は黒っぽい緑色でもある。

そこの好みは自分と似ていて苦笑いしかない・・・そのままの色でもない方が自分も好きだった。

自分は紺色のように見える服にしていて髪は陽が当たれば黄色に見える・・・

互いに特殊仕様で武器を衣類に装着していたが、今・・・それは取り上げられている。

連行されながらも休む度に里瑠は振り向き自分を睨む・・・塞がれた口から溢れる怒りは 無くならないのかと観察した。

同じ場所へ同じ時間帯に連行された事で急に変な違和感をわかせた・・・里瑠にライバル視される理由さえ知らなかった。

いつからか自分が巻き込まれるはめになった・・・似た命令は早々に自分のを済ませてから横取りしに里瑠が来る。

数も競う・・・出動回数も競い始め、腕を磨く為だと邪魔もし本当に面倒な子だった・・・

言い訳を一つ見つければ倍以上に言葉は押し寄せてくる。

抜かりなく足も引く・・・狂ったような言動・・・自覚のない考えや言葉を使って他人を利用する、それは無意識に。

何より口は普段から容赦なく出るが手足も半端なく飛び出てくる・・・彼女を嫌いでもないが自分へ振りかぶる事が一番面倒だった。

勝手に・・・いつの間にか彼女のターゲットになっていた・・・チームの仲間から理由を聞かれるが、分かるはずもなく苦笑いだけした。


今回は・・・里瑠のチームと合同で現地へ飛んだ・・・そこは数が多く時間が惜しかった。

だからチームごとで場所を決め動く計画だった。

なのに里瑠は いつものように近場へ来始め苦笑いだ・・・途中でも副隊長から指示が飛ぶ・・・回り込み隙を狙う、それは自分へも。

何処へと追いかけてくる里瑠を邪魔だと蹴り倒したのは、自分のいるチーム仲間のサクだ・・・暫くしてムカついた里瑠がまた騒ぎ始めた。

当然ながら事はスムーズに進む事なく終わった・・・取り逃がしたがキー副隊長が追い綾音は里瑠の動きを止めてから回り込み敵を倒した。

邪魔をしたと里瑠が騒ぐ・・・キー副隊長が目配せ諦めた綾音は素早く里瑠を離し逃げた・・・

予想通り追いかけてくる・・・そのままに里瑠の所属するチームの場所へ連れていった・・・

呆れたようにチラリと眺める隊長なだけで、構わず敵を倒しているだけの彼女の仲間達に苦笑いだ。

いつものように彼女のチームの副隊長だけが近寄る・・・素早くカー副隊長が彼女を捕まえていてくれた。

恒例のように里瑠は綾音を狙う・・・その場所で敵を倒しながら里瑠の剣を受けては弾いた流れで敵を倒した。

敵に抑えられていた人の近場へ移動させ討ち捨てた後に里瑠を回し蹴った。

カー副隊長がまた彼女を押さえ込む・・・その間に綾音は自分が配置された場所へ戻るのだった。

この行動は毎回だ・・・面倒だが他の仲間達の足も引けない・・・関わりも拒否したいのに皆はまたかと見返すだけ。

邪魔される度に自分の隊長に声にしている・・・なのに解決もして貰えなかった。

里瑠の隊長へも謝りながら抗議するが、解決する事なく日々は過ぎていた・・・

だから面倒で今回は全てに拒否しキー副隊長から目配せられても動かなかった。


自分のチームのキー副隊長と里瑠の方のカー副隊長は親友であり何かと相談しあい解決もしてくれていた。

でも、その時だけだ・・・その時は本当に助かる・・・その後の里瑠の動きは止まるから。

遅れが出始めればカー副隊長が連れ戻しに来る・・・対峙した剣ごと押しやり、彼女のバランスを崩した間に離れる綾音もいた。

この繰り返しにムカついた綾音・・・除隊すると声にし届も出し隊から離れたが、慌て引き留めるキー副隊長を見返した。

そのままに連れ戻されれば、そこは隊長の部屋だった。

『除隊願を破れ』
『殺して終わらせてもいいなら』
『・・・』
『ならばリルの目の前で宣言し、敵へ身を売ります』

『アヤ!』
『敵なら、どうどうと殺せるので』
『理由は探して』

『探して下さらなくて構いません。自分でカタをつけます。
これまでの事、ありがとうございました』

誰かの声が始まる前にと自分が決めた事を呟く綾音・・・直ぐに頭を下げ隊長の部屋から出た。

本当に我慢は出来ず限界だったと気づく・・・このところ本当に里瑠を斬ってしまいそうで焦る事は増えていた。

味方だから・・・だから諦めたが里瑠は自分を本当に狙う・・・それでも味方という意識はあるのか掠り程度は多かった。

理由も聞いたが結局はムカついただけという言葉だけが返る・・・それだけでミッションは邪魔され、チームへ足を引いていた。

時間は割かれスムーズにもいかない事は増えていた・・・隊長達で話し合い解決して欲しいと願ったが叶わずだ。

どれだけ里瑠は守られているのかと聞いた事もあったが驚くだけで教えてくれた事もなかった。

似た言動をした別の隊員・・・その人は反省室に入れられた・・・なのに里瑠はない。

他の仲間達へ迷惑をかけているのに隔離されない・・・いつからか日陰て囁く哀れな自分が増えた。

自分へ目があれば巻き込まれないのだ・・・頑張れと励まされる日もあった。


その日・・・我慢の限界は越した自分を知った・・・最後だと出た日だった。

キー副隊長が自分を宥める・・・その後ろに里瑠の副隊長カオルが見え近場に里瑠はいるのだと知った。

『先に謝ります』
『駄目だ』
里瑠を二人で眺めながらも綾音がキー副隊長に呟く・・・

『無意識に出すので止めようもなく諦めて頂きます。キー副隊・・・これは・・・今回は放って下さい』
『・・・』

現地へ到着した途端に自分の視線を不意に切り 目を合わせたキー副隊長だった・・・その端に数隊がいた事を知った。

その中に見えた姿でキー副隊長を見返した・・・どう言うべきかと考える顔に直ぐに決めた言葉を言った。

有無なく宣言する・・・驚き仲間まで振り向き自分をみていた。

『カタがつかなかった場合、申し訳なく先に謝ります』
『何をする?』
『向こうへ下ります・・・』

抑えようとした手から一歩離れ頭を下げる綾音に驚いた顔をする・・・不意に近寄った里瑠の胸ぐらを掴み睨みつけた。

『最後の警告をする・・・一振りだけ我慢してやる・・・』
『なにをだ?』
『二振り目からは遠慮しない』

『お前の!』
『その!お前の血で綺麗に流してやる・・・嫌なら目の前に立つな!』

里瑠を押しやったが怒りは激しく綾音へ走り出そうと立ち上がった・・・そこで直ぐにカー副隊長に捕まる里瑠がいた。

驚いた顔は多く綾音を観察する・・・
『アヤ、いつもより多い・・・』
『・・・』

仲間の声に振り向き声にもしない綾音に驚いたようだった・・・

『アヤ・・・さっきのは?』
『自分で自分を助けるだけです。最後のミッションなので遠慮なく終わらせますから』
『・・・』

剣を手にした綾音が軽く回す・・・近場に立て掛けてあったパイプが綺麗に斬られ二つになって転がった事で素早く背へ戻した。

驚きは辺りへ浸透していく・・・チラリと彼女を眺めれば黙って転がっているパイプを眺めていたが、仲間は綾音を見ていた。

辞めると皆へ宣言までした・・・そして試しと今日は新規のモノを持ち込むとも聞いていた。

綾音の剣は鋭く切れ味も抜群で、それは日に日に進化していた・・・その特殊さは防護服まで特殊な作りになってきた。

綾音の弟と進化させていく・・・その技術は奪われないよう手を打つ綾音もいた・・・その綾音からさえ奪われないような対策はしてあった。

防護服も剣も綾音仕様に特化してあり誰も使えないようだった・・・どう違うかも知らなかっが、目の前で起こった綾音の剣に驚きは隠せなかった。

どちらも綾音から声もなかったから・・・それは誰しも同じだが多少の説明はする。

なのに綾音だけは自分を守る為と声一つなかった・・・それが今回は分かるのかと思えばチーム以外の視線も集まり始めていた。


そしてその日・・・
宣言通り綾音は里瑠へ刃を向けた事に皆が驚いた・・・数多くの敵がいる中で、こりもせず ついでのように里瑠が綾音へ振り上げた。

余裕で交わした綾音・・・多少の加減はあった事は後で知る・・・深い傷は受けていなかったから。

今までなら防護服でさえ切れなかったが、今回の剣の切れ味は抜群なのだろうと誰もが驚いた。

全身へ撫で付けていく・・・里瑠も敵を利用して綾音へ刃を向けていたが・・・近場で気付く仲間の声で皆も知った。

腰や足に装着していた武器が地面へ溢れていく・・・刻む・・・その言葉のようにバラバラになっていた。

里瑠を止めていたが綾音は構わずに切りつけていく・・・何度か敵を倒した後に刃先を里瑠へ撫で付けた。

服へ染み出るような状態ではなく肌が見え血は流れ落ちていた・・・滲む場所も増え切れた箇所が見えていた・・・それは綾音自身ではなく里瑠だけだった。

里瑠は叫びながら今度は敵ではなく綾音だけを追った・・・蹴り飛ばし足へ斬りつける・・・身が激しく飛んだ・・・仲間が焦り駆け込む。

その様子で敵陣へ向かう綾音に驚いたが別の敵は目の前・・・倒していくはずの彼女は居ない。

素早く敵をかわした綾音、その敵は味方の中を突破し倒れていた里瑠へ向かっていた。

すんででカー副隊長が敵の剣を止める・・・倒れた里瑠の回りを囲んだ仲間達は敵へ剣を向けた。


驚いた・・・綾音は敵から守らなかった・・・それでも里瑠の事では目を閉じてきた自分達・・・この状態でも我慢はしていたのだと思えた。

なぜなら里瑠の防護服は切れていたが身に深い傷は見当たらなかったから・・・

体力も消耗し動けずにいたが、里瑠は耐えながらも後を追うかのように目で探していた。

グッと里瑠を押さえ込めば驚いた顔で見返す・・・動くなとカー副隊長が睨み付ければ諦めたように項垂れ静かになった。

その間に仲間達は敵を倒していったのだった・・・

終わったのだろう別隊の仲間が駆け込んでくる・・・そこに綾音の姿はなかった。

親友のキー副隊長もいない事で、里瑠と会わせないように気を遣ったのだろうと思えた。


陣地へ戻れば直ぐに呼び出された・・・行ってみれば床へ膝立ちしうつ向いていた綾音がいた。

隣には綾音のチーム隊長とキー副隊長が並んで立っていた。

里瑠が連れられて来た事で、今回の事と知れる・・・床へ押さえ込まれ綾音と同じように膝をつかされた。

『どの辺で終らせるつもりだった?』
大隊長が静かに呟いた・・・

『対処が遅れ申し訳なく』
『二人で やらせ終らせるか?』

『それをさせたくなくて時間を使っておりました。理由も分からず邪魔され、我が隊に時間を割かれ考えておりました』

『一人離れリルを相手にしてから戻っておりました・・・聞いても疎通はなく迷ってました』
キー隊長達が声にする・・・

『アヤよ・・・どうしたい?』
『辞めさせて頂きます。受理して下さい・・・それで終りに』
『理由は聞かないのか?』

『・・・まともに話す事なく斬りかかり相手をするのも面倒でした。
疲れも激しく・・・考える気もおきません・・・なので除隊を・・・願います』

『・・・』
「今回が最後と出ましたので、完了と受理して頂けますか?」
「・・・」
一瞬だが綾音の言葉を聞いていた里瑠が驚き身が跳ねた。

『リルよ』
『はい』
『アヤを狙う理由はなんだ・・・』
『・・・』

『たんに腕比べをしたかった訳でもないだろう・・・作戦中まで実行していたと聞いたぞ?』
『・・・』

『少し前から聞いている。手合わせしている姿も確認した・・・
ちゃんと、お前へ聞く姿勢はあったが、狂ったように狙う理由はなんだ・・・』

『とく・・・に・・・』
『ん?』
『お前は意味なく仲間を殺したくなるのか?』

『本当に殺すつもりは・・・』
『アヤは敵ではないぞ?』
『・・・』

『申し訳ありませんが、理由を聞く事も今は必要ありません。
この場で受理して下さい・・・それで十分です』

『辞める必要は』
『お前の顔を見た瞬間、今日は殺意を覚えた。辞める事を思い出したから・・・それで済ませただけだ』
『『・・・』』

深く狙わなかった理由だと知った人達・・・回りの人達まで驚き綾音の言葉を聞きながら眺めた。

『・・・勝手しますが、お許し下さい・・・お世話になりました』

グッと床へ頭をつけた綾音が呟いた・・・それから静かに立ち上がり新たに頭を下げてから、その場を後にしたのだった。



追いかけてきたキー副隊長に呼び止められ肩を引かれたが、条件反射のように腕を掴み捻りあげようとした綾音・・・それを外し瞬時に見返し抑えた。

『・・・すみません』
『(笑)殺気だちすぎてるぞ』
『マジで疲れました・・・顔を合わせる事も拒否します』

『本当に辞めるのか?』
『ここの仕事は合わないようです』
『でもないぞ?それに新たに一揃えしたろ・・・無駄になるぞ?』

『・・・いつか始める時に使います』
『そうか・・・なら鍛冶屋に戻るのか?』

『はい、父の手伝いをします』
『明後日の10時(笑)真ん中に呼ばれたから来い・・・審議するそうだ』
『・・・それで終れますか?』

『カオルが謝ってた・・・リルにもだったが』
『・・・』

『ずっとアヤと比べてはリルを鍛えてたそうだ・・・隊長から精神的に追い込まれてきたリルの変化に違った意味で喜んでたらしいが・・・』

『大事な場面でも来てたのに?』
『それさえ気にならず腕を鍛えに行っているだけと思ってたらしい』

『作戦中に練習していたと?』
『だ・・・』

フッと笑うだけの綾音だった・・・ゆっくりと会釈した彼女は帰り道へ戻ったのだった。

項垂れた様子に驚いた・・・呆れたのか力さえ入らない様子・・・本当に辞めるのだと思えば戸惑うキノだった。



その日・・・
来た事はホッとしたが普段着だった事に驚いた・・・通常なら制服を着ているはずだったから。

本当に辞めるのだと、気持ちを固めて来たような気がした。

昨日は、最後の腕試しと叫びながら向かって来た里瑠の姿に驚いたが怪我はしたくないと避けていた。

剣を持っていないと気付き手持ちの剣を投げ付けた里瑠・・・素早く抜いた綾音が身構えた。

刃で押さえ込む・・・グッと引けば慌てたのか緩んだ隙に思い切り押しやった。

手合わせ・・・その身軽さで腕の差は知れる・・・気付く里瑠は悔しそうに睨み、倒す策を考えているような顔をした。

面倒だとより身構えたが、驚いたカー副隊長の姿で諦める・・・深手は今は不味いのだと里瑠を眺めた。


背負っていた弓で矢を放つ・・・ベルトに納めていた氷銃で狙い撃つ・・・短刀を抜き放った瞬間、腰にある剣を振り防いだ。

落ち着いた状態で動きを見極め里瑠を離す・・・避けながら弾き身を交わしていく綾音に感心し眺めた。

バン!と激しく近場で鳴らされた音で動きを止めた二人・・・その瞬間、一斉に取り囲まれ何かが起きたと気づいた。

自分達のトップを守る人達・・・その護衛する容姿に気付き手にしていた全てを綾音は放棄した。

それをしなければ、キー副隊長へまで迷惑はかけてしまうと思ったからだが、気づかなかった里瑠は驚きながらも逃げ出していった。

呆気に取られたが、両手首に手錠は嵌められ歩けと促されたが・・・互いに落ち着けと数時間だけ拘束された。


呼び出された今日も、話があるのだろうが、またお叱りがあるのだろうと思えば余計に疲れが身を奪う気がした。

より面倒になったのだと連行される自分に可笑しくなる・・・笑うしかない自分に呆れたのだった。






or

2023-04-23 11:54:05 | 序章・予告編



シュッと空を切る音が通り過ぎる。
金属がぶつかり火花が暗闇の中で飛び舞い散った・・・

パスッと何処かで音がする・・・しなった剣を音がした方へ流せば、銃から飛び出た弾は剣を撫でながら弾道を戻っていった。

唸る声がすれば、未だに使う者がいるのだと可笑しくて フッと笑う音が聞こえた・・・

銃は音が出ないモノまで進化したが弾の補充は進化せず、数多く持つ面倒さで先が消え今は滅多に使う者はいない。

何より安全上だと多少の音がするモノが増え始め音のない銃は廃れていった。

その銃は弾が飛び出る瞬間、火花が散り煙まで発生するようになり敵の的にもなっていった。

弾道の距離を伸ばせば音は大きく、消せる銃は増えたが開発されていく事もなく 援護だけの為に飛距離だけが伸びた。

今は剣と弓が多いが・・・その弓は援護する為に使われ・・・遥か昔に世へ出回ったが改良は遥かに進みだしていた。

剣や刀は鍛冶屋へ出向き自分で鍛え上げる・・・その技術は質で進化を遂げ様々な種類は人それぞれで仕上がっていく。

金属の配合は数多く、持ち主だけが知る・・・手にするモノの出来で腕は上がり位置まで変化した。

鍛冶屋を営む両親に鍛えられていた綾音と直己は作る事だけを教え込まれていた。


小さな頃、街で争いがおき母親が巻き込まれてから綾音は手にする方を選び密かに習った。

寝るのを惜しみ訓練している者達を観察し体も鍛えた・・・その間も自分用に作る事にし客の剣を鍛えながら考え始めた。

手にすれば自ずと争う場所に導かれると反対する父・・・頑張れと励ます弟の直己との板挟みになった。


色んな音がしている鍛冶屋の一番奥は昔ながらの造りで熱い・・・鍛え抜いた者さえ拒否し入りもしない。

その手前の部屋から熱さは消える・・・特殊な炉はありソコでも作り上げる事が出来た。

その次の間から客は個人で仕上げていく・・・試しと研磨し納得するまで居座る客もいた。

昔ながらの方法も父親は利用する・・・より強度は上がり客足が止まる事もなかった。



『入っても?』
『・・・』
突然、店主の刀堂へ声をかけた者に頷くと手招いた・・・一瞬で汗だくになる・・・炉は数ヵ所もあり驚きながら眺めていた。

『見るのは初めてですか?』
『そうだ』
『話が?なら外へ』

『もう出る。自分のモノが始まる場所を見たかっただけだ・・・が、あれは?あの子用に?』

一番奥で炉へ入れては出し型へ嵌め込んでいる気がして驚いた・・・

『いえ。あれは客用です』
奥へ行こうとしたが熱はより強く危険だと主に止められ・・・外へと促され諦めた。

『女の子じゃ?』
『・・・(笑)貴女は女性だ』
『(笑)確かに。あの子は・・・』
『大丈夫ですよ(笑)』

『慣れ?』
『(笑)恐らく』
『・・・振る腕は?』
『ありません。作りだす腕はありますが・・・(笑)』

『残念だ(笑)』
『・・・』
『(笑)女だけの部隊を作っていて・・・メンバーを集めていた・・・今日は剣を』
『直す?・・・軽く?』

『・・・(笑)です・・・だが強度は無理だろう?』
『(笑)最新のよりは強く出来る事は教えましょう・・・試しますか?』

『頼む』
『その階段を上がり一番手前の部屋へ・・・直ぐに参ります』
『分かった』

『申し訳ありませんが、他の方へ見せる事は拒否します・・・構いませんか?』
『・・・』

供に来ていたのだろう部下らしき女性がムッとした顔で睨み付けたが、手前にいた人が構うなと引き留めスッと2階へ上がっていった。


扉を開ければ、ガランとした何もない部屋だった・・・これは試しと振り回しても支障はないようで天井までの高さも十分にあった事には驚いた。

その天井からスタッと飛び降りてきた子・・・さっき見た子にも似ていて驚いて見返した。

『すみません・・・内緒だから、家の廊下として・・・(笑)』
あるのだと天井を指差し謝る子に苦笑いだ・・・

『(笑)お前の歳は?』
『・・・(笑)ごめんなさい、秘密です』
『・・・そうか(笑)、お前も作れるのか?』

『(笑)鍛えるだけですが。さ、これでどうぞ』
『(笑)男の子だったのか・・・』
『・・・』

両手に乗せた剣・・・それを受け取れば素早く移動し端にあった紐を掴んだ。

途端にスーッと天井へ上がった姿に笑えた・・・確かに邪魔にならないからだ。

剣を振る・・・手に馴染み 軽さは自分のモノより上で驚いた・・・少しコントロールすれば余計に馴染む気がした。

振り回し身を返す・・・壁に足をかけ身を翻す・・・ふと天井に座り自分を見ていた子が増えた気がした。

見上げれば謝り身を隠した子は、持ってきた子より歳上のような気もした。

『どうですか?』
またスタッと降りてきた子に笑み返し、まだ居るかと眺めた。

『邪魔して、ごめんなさい(笑)』
『構わない。お前の姉か?』
『・・・(笑)』

『内緒か(笑)確かにな。腕利きは抜かれるしな・・・
(笑)これより重さは変えられるか?普段は背に置く』

『それ・・・持たせてくれますか?』
『・・・』

見る側には気付かれる出来・・・だから無闇に他人へ渡さないが、ここは信用できると紹介して貰い来てみた。

迷う顔をした・・・それでも手にしないと客の腕も分からない・・・殆どの客は一旦帰るが、この客はと見下ろし観察をした。

上手く気配を消す子に苦笑いしかない・・・それでも剣の出来はいいと紹介された。

暫く考えていたが・・・
『これより軽く頼みたいが・・・』
預けた剣を受け取る直己は考えた。

『グリップに重みを?』
不意に上から声がする・・・
『試せるか?』

そう言ってみれば下に居た子がグリップに何かを仕込むと自分へ差し出した。

『なぜそう思った?』
『鞭を使う事もありそうだったから』
『・・・』

驚いた・・・今、試した動きだけで想像までした子に・・・少し離れていたが動きも交え振ってみた。

近場を通り過ぎても動かない子が面白く、これも気にしない事で親に黙り練習している気がした。

『グリップの太さは』
『(笑)同じにしますよ』
男の子の呟きに頷くと自分から受け取り上へ放った事に苦笑いだ・・・ちゃんとグリップの方で受け取ったから。

『頼んだ(笑)』
『『了解(笑)』』
姿は消したが返事は大きく笑えた。


仕上げまで数多く工程はあるが、どのやり方でも出来る工房は初めてだった。

いつもなら刃先から自分で選んでいた・・・途中の工程も出来る部屋で考える。

ここは部屋の真ん中に作業台があるが隣で作っている者がいても観察されるような事もなく隠されてもいた。

何より出入りするドアもあり、作業中ならロックされる・・・ここまで徹底する鍛冶屋は滅多にない。

迷えば職人を呼び相談も出来る事を知り室内のモニターのスイッチを入れた。

『なんでしょう』
『刃先の相談をしたいが・・・』
『立て込んでおり・・・私でなくとも構いませんか?』

『あの子に相談は出来ないか?』
『・・・なら、娘でも?』
『頼む』
『誤魔化しなく話せますか?』
『・・・』

『刃先なら教えて頂けないと完成も・・・』
『だから迷った』
『取りあえず行かせます』

本当に忙しく手は離せないのだろう直ぐにモニターの映像が消えたが、そこで直ぐにドアにノックされロック解除のスイッチを入れ招いた。


箱を持って入ってきた子が会釈しながら端へ置き自分を見た。

『予算内で、それに合うモノを準備しました。使うモノだけを取り残りは出さず置いといて下さい』
『分かった』

『相談とは・・・』
『どの組合せがいいか迷ってる』
自分の言葉を考えながら持ってきたモノを眺め数タイプを出して話していく。

イメージだと言葉にすれば、使うモノを入れ替え説明してくれる・・・どれを言っても返す言葉に笑み返す。

質問されるが答えるまで待つ・・・言えば考えプラスもマイナスも話してくれた。

『これはどうだ?前のヤツに混ぜ強度をあげたが・・・』
『これの量は増やさないなら』
『折れやすい?』

『量で変わります。強化されますが、しなりは少なくなりますよ?』
『それは試したモノから話してるよな?』

『はい。あれは混ぜてません』
『しなりは欲しいんだ』
『(笑)削れば可能なはずですが』
『・・・』

そうかと思え剣を眺め考える・・・その間に これから使える機材を出してくれた子に苦笑いだ。

戻っていいかと自分へ振り向く・・・頷いてみれば丁寧に会釈し出て行った。


数人の部下へ新調しろと行かせてみれば苦笑いだ・・・それは全員が自分で作らず買ってきただけだったから。

自分以外、専用の武器を作る事はしなかった・・・そして様子見と一人ずつ見てこいと伝えたが誰一人、会う事はなかった。

報告された話に呆れた・・・当然ながら作らないから・・・試しはしたようだが会えなかったという。

ならばと見張りをさせた・・・ようやくの知らせは空き地で自身を鍛えていた事。

そこは私有地だった・・・馴染むよう剣を使う場所として使っていた事を知った。

その動きに驚いた・・・だから姿を見せた頃に出向いた・・・最初は偶然を装って。

その回数は増え手習いのように自分を真似る・・・怪我をしないよう慎重に教えれば、すんなり吸収していく。

驚きは通り越し、基本を徹底し教え込んだ・・・親にバレて激しく抗議されたが、諦めず根気よく自分を伝えていく姿に感心した。

暫くすれば納得はせず賛成もしないが訓練を続けてもいい許可は貰えたようだった。

鍛えていく・・・その腕に惚れるとはコレだと苦笑いだ・・・今の部下達より使えそうで声をかけた。

その間も次々と自身の武器を進化させていた・・・いつからか、いつのまに・・という言葉だけになった。

遥かに腕が上がった頃、仕事にしないか誘ってみた・・・それは自分の部下より腕が上がったから。

クレームは入るが試しと腕比べをさせる・・・悔しがる部下を宥め共に鍛えよと励ました。

指示すれば、指示した以上の成果を挙げ・・・必要分以上の情報を手にし戻ってくる。


いつからか回りのチームからの囁きは上から広がり解体もさせられそうになった。

確実に完了させてきたのに自分を利用しただけで続ける先は消えそうだった。

体よく追い払われ始め・・・幼馴染みと婚約をしていたのだと知ったのも最近だった。

部下の腕が上がり成果も目に見え始めた頃から利用される事が増えてきた事に気づいた。

それを利用してチームが壊されそうになり考える・・・彼女達に合うチームを探す・・・好き勝手に弄られる間に仲間の居場所を探した。

ようやく・・・そう思えばホッとした・・・何かと自分へ励ましてくれる幼馴染み・・・その声で頑張れたのも事実。

密かな情報も教えてくれた・・・知れるはずもない彼の場所からだった事は驚いた。

それでも感謝し見つかるなと彼へ伝えたのだった。


同期の友人から綾音の現状を聞いていた・・・上手く立ち回れていた事にホッとした。

自分を使いたくて親まで利用する事にムカついたが我慢してチームへ交ざった。

時おり聞こえる話に驚く・・・より優秀なチームが鍛えられ動かされる事で自分もまた より鍛え新たなチームが作れるよう頑張った。


上からの囁き・・・裏があると声にした彼からの話に驚いた・・・調べようと互いに離れ密かに動くのだった。




-end-



お付き合い下さり ありがとうございます。
よければ本編へ

-tami-