だから余計に言葉もかけられなかった・・・そして別れ際に綾音は里瑠へ振り向いた。
『・・・』
『協力・・・し合えるの?』
『・・・する』
『・・・分かった』
『・・・』
一瞬・・・迷ったような顔をした里瑠に諦めた・・・全部は行ってから考えようと返事をし自宅へと戻る綾音だった。
自分の部屋へ入り考える・・・聞いてきた話の中での事・・・飛ばされる場所の情報さえない。
なのに準備をしろと言った・・・救出しに行かせるのに二人だけ・・・連れ戻せと言うのに現状の詳細も無かった事は本当に苛立った。
辞めると言った罰・・・それでも自分がいる組織の一番上から直接命令されたのだ・・・だから行くしかない。
ベッドの上へ取りあえずと乗せていく・・・渡されたモノは何処にと考え悩んだ。
室内にあるランプが点滅した・・・それは暫く休憩するという知らせで父や弟、従業員は休める。
出る準備をしてから手伝おうと戻ってくる父や弟を待った・・・
笑いながら自分を眺める二人に苦笑いだ。
『やっぱり(笑)』
『(笑)辞められなかったんだろ』
二人の呟きに口を引く。
『その装備・・・凄い場所なんだね・・・姉さん、マジでやばい?』
『ヤバい(笑)・・・二人で行って把握されてない人数を救出して戻る事になった』
『・・・』
父親だけが驚き声まで失った・・・弟の直己は考えながら何処かへ行ったが、後で手伝うと父へ言ってからまた準備を始めた。
『無事に戻れよ・・・待ってるからな』
『・・・(笑)頑張る』
自分の声に頷き父親は体を休ませる為に部屋へ戻っていった。
『(笑)姉さん、これ強化したんだけど使ってよ』
『ん?』
『防護服(笑)、ちゃんと試したから体は守れるし隠せるよ。一番下に』
『・・・これ』
『(笑)脱がなくても体は洗えるし、脱がされる事も出来ないよ。それと預かったのは完成してたんだよね(笑)日の目が出るな』
ラッキーと笑みながら言った直己に苦笑いをした。
手首と足首は綺麗に隠れるが捲れる事もない・・・そしてハイネックにしてあり伸ばせば顔も隠せる細工も前より違っている気がした。
『さすがに(笑)物凄く細い針は不味いかもしれないけどね・・・意外と上手くいったから、数着ほど(笑)』
作ったのだと笑う直己だった・・・
『これ・・・私以外が使うと、どうなる?』
『(笑)守れるけど、脱がされたらアウト。本来は姉さん用だし・・・
あぁ(笑)もう一人の・・・女の子?』
『子・・・』
『いつ行く?』
『十日後に迎えが来る』
『呼べる?絶対の保証はないけど変更する時間は1日あれば・・・』
『(笑)寝る暇ないじゃん』
『だけどさ二人だけなんでしょ?その人が怪我しなきゃ姉さんも楽じゃないの?』
直己の呟きは確かにと思え防護服を眺めた・・・
『いいから呼んでよ(笑)』
『・・・』
『あ・・・持ってるか・・・』
『身だけっぽい』
『・・・ん?』
『腕と足は切ったから』
『・・・はぁ?』
『・・・我慢はね』
『あぁ・・・姉さんを狙ってた人か・・・
でも救出しに行くなら手は足りないと、困るの姉さんだよね・・・ま、いっか(笑)体が守れるなら何とかなるもんね・・・』
『(笑)まーね』
『そうだ・・・姉さんの剣さ、マジで強化させた?配合・・・』
『(笑)極秘』
『持とうとしたらさ』
『怪我した?』
『し、してない・・・大丈夫な場所だったから助かった・・・(笑)ごめんなさい』
『(笑)いいけど』
『誰かに取られるより確かだよね(笑)仕掛け・・・鋭利過ぎるよ』
『まあね(笑)・・・(笑)指紋もだけど、微量でも反応したなら成功だった(笑)』
『兄弟でもヤバい(笑)』
『触るな(笑)』
『細工した途端に刃が出たから危なかったよ。場所は教えといてよ次は(笑)』
『(笑)了解。予備のも細工して』
『ん・・・上に何を着る?って・・・それにするの?』
『・・・戦乱としか聞いてなかったから・・・布が(笑)無難?』
『・・・(笑)そっちにしたら?便利に使えそうだよ?』
どれだと指先を追う・・・
全身に収納するポケットはあるが飛び出ない作りだ・・・腕も身も足も・・・全てに止められた紐で太さも調節出来る。
全部外せば包帯の変わりにも何にでも使えるような作りにしてあった。
『(笑)切れるしね・・・』
『紐は多く(笑)、また手足に巻くんでしょ?あ・・・それ(笑)何?時計?カメラとか?』
『・・・連絡用って聞いてた』
『通信機か・・・電話なら音が鳴るよ・・・ね普通・・・鳴らないなら振るえるのかな』
『さぁ・・・』
渡された透明のベルト・・・見た目は時計が見え腕時計のようになる。
平たい形状だから そう見えるが見た目はブレスレットのようだ・・・そして直ぐに詳細がない理由はと考えてしまった。
靴を揃え選べるように運んで来た直己に感謝して、休憩しとけと押し出した綾音だった。
残り数日という所で里瑠が来た事に驚いた・・・迷うような顔つき・・・これは何の理由で来たのかと考えながら迎え入れた。
取りあえずと別室へ案内した直己だった・・・綾音の手があき行けと促され苦笑いしかない。
『(笑)姉さん・・・嫌いなの分かるけどさ・・・』
『・・・顔に出てた?』
『もろ(笑)・・・行けば仲間だしさ二人だけなんだから頑張ってよね(笑)』
『・・・』
弟からの言葉に苦笑いだ・・・ドアをあけ綾音を促し入らせた。
『姉さん(笑)』
『ん?』
『皆を救出して無事に戻るんだからね(笑)それは約束だよ?』
『おっけ(笑)』
『互いに命を預ける覚悟も(笑)信じるのも必要だよね・・・二人だけで行かされるんだし』
『『・・・』』
『(笑)十分に話し合って頑張ってよ』
『『・・・(笑)了解』了解』
遠慮もなく初めて会った里瑠へも聞こえるように話した直己に誓うように呟いた。
飲み物とつまめる菓子のようなモノはトレイにありテーブルへ置いていった。
『準備が終わったから来た?』
『・・・落ち着かなくて』
『何に?』
『その前に・・・』
『今までの事なら』
『それでも謝りたかったから』
『・・・』
『ごめんなさい・・・自分では気付かなかった・・・昨日、聞いたんだけど・・・副隊長が調べてくれて』
『・・・ん?』
『・・・隊長に薬を使ってコントロールされてたって・・・だから気持ちが不安定で狂ったように見せる為に仕組まれてたって』
『・・・』
『その報告を後でしようとしたら行かされる事になって報告が出来なかったって教えてくれた・・・』
『・・・分かった。それで気持ちは切り替えられた?』
『そこが分からないから先に謝る。どこでスイッチが入るか調べられないでいるから』
『確かにね・・・』
『本当に落ち着かない理由は、詳細がなかった事・・・
副隊長に聞いたけど知ってたのは二つの部隊で十人が行った事だけだった。救助するにも』
『何人行って何人戻って来たか教えて貰えてない・・・戻れた人の詳細もない』
『頼むと言った人の娘だけを連れて帰れって意味にも取れたけど、他の人達が生きてたら一緒に戻れるのかも知らないから』
『行く前に聞く事にしようとは思ってたけど・・・』
『戦乱って初めて行くんだけど・・・何処までかは知ってる?』
『どんなかも知らない。それに真ん中に落とされるって意味が分からなかった』
『それは同じ・・・場所を設定させてから飛ぶはずなのにって思ってたから・・・
行かせたい理由は処罰・・・ユリ隊長の親が戻したいと騒いだから呼ばれたのかも・・・って思った』
『あぁ・・・』
里瑠の言葉に それはありえると思え考える綾音だった・・・ふと、里瑠の姿を眺める綾音に気づいた
『それは、もう行ける?それで終わり?』
『何が必要かも分からないし、飛んで直ぐに危険なら荷は最小限にしとこうかと思ったから』
『・・・』
『充電式は?』
『二つ持ってるけど、そこに何かが当たったら壊れる・・・ソーラーなら陽があれば使えると思ったけど』
『私も持った・・・
まずは移動して場所を確保してからだけど・・・』
『ん・・・逃げてから居場所を把握して・・・それから探す?』
『探す』
『ん、真ん中なら紛れて隠れられるとは思った』
『全部の把握・・・』
『それと、これ・・・腕時計に?』
『連絡用ってだけで考えとく』
『端を繋げると作動するけど違和感があったから普通にそのまま繋げてみたら・・・』
こうなったのだと見せられた・・・それはブレスレットのような輪になり場所によって時計が現れていた。
その隣はモニターのようだが一つだけ黄色で点滅していて驚いた・・・
『これ・・・』
『飛んだ人達も着けてたならって思ったんだけど・・・』
そうかと自分のモノも腕には着けず端を合わせ輪にしてみた綾音が眺める。
『『・あ・・』』
互いに唸り見合ったが直ぐに眺めれば、時計の隣で点滅しているのは黄色が二つだった。
『・・・位置・・・GPS』
『皆の・・・』
互いに呟きながら元に戻し付ける場所はと考える・・・
『どーしても腕にするのは抵抗があって・・・』
『信用できないしね』
『罰・・・だね・・・本当にごめん』
『・・・聞いてい?』
『ん・・・』
『協力できるか聞いた時、迷ったのは何で?』
『・・・迷ったんじゃなくて驚いただけ』
『何に?』
『ずっと・・・敵みたいに狙ってたから嫌われて当然だけど、協力できるか聞かれた・・・から・・・』
『気持ちは本当に切り替えてくれてる?』
『ん・・・申し訳なくて・・・殺されて当然だけど・・・あの人は助けたかったし・・・』
『ユリ隊長?』
『世話になったから』
『・・・へぇ』
それは同じだった事に驚いた・・・
『あの・・・今から戻れた日まででいい・・・だから・・・』
『分かった』
『戻った日に考えてくれる?』
『・・・』
『だから・・・謝り足りない事だったから・・・』
『分かった。それ以上の言葉は後にして』
『了解・・・あと・・・』
『まだあった?』
『・・・ごめん。どーにも不安だから前日に聞きに行ってくる・・・その後に寄っても』
『分かった』
『ありがと・・・』
『飛ばされる場所・・・何処までか分からないから、もう少し装備してみてよ』
『・・・了解』
『防護服の袖・・・ついてるのない?』
『動きやすいから・・・あ、薬は持った・・・』
『解毒剤はある』
『あーそっか。そっちがいいかな』
『・・・靴は?』
『足首じゃ不味いかな・・・』
『動き重視だったんだね・・・』
『ん・・・』
『何で切られても構わない動きだけにしてる?確かに刺されないだろうけど頭と手足の先は無理じゃん・・・防ぐ事は滅多にしないよね』
『・・・斬られる前に消すし』
『確かに・・・』
それはそうだと呟いた里瑠に、確かにと口を引く綾音だった。
出発までの日々は本当に忙しくした綾音だった・・・疲れは取れと休ませられる・・・本気の爆睡もした。
行く前の食事は一緒にしてくれた二人に感謝だ・・・そして・・・直己は間に合ったと二枚のマントをくれた。
『(笑)姉さんを守る一枚。も一つは一緒に行く人にあげて』
『ありがと(笑)・・・』
『ちゃんと帰ってくるんだぞ?怪我もするな・・・』
『(笑)了解』
ギュッと抱き締め呟いた二人に笑み頷く綾音だった・・・それから身へ装着しながら試しと腕をならす。
説明しながら装着する直己に苦笑いだ・・・端に渡されたモノを巻き付け眺めれば点滅する印が近付いて来ていると知れた。
カバンを背負う・・・これは身へ張り付き邪魔にもならないよう作られていた。
こういうものが欲しい・・・そう言えば直己が考え作り出す・・・それは父親までがアイデアを出してくれる。
強度を上げていくのは自分だ・・・それが完成し使って来てもいたが今回、もう一つあり直己を見返した。
これは里瑠になのだろう姿を見せた事で自分へ目配せていた・・・その里瑠の格好はと振り向けばショルダーバッグのような形で驚いた。
『そのバック(笑)可愛いね』
『それは使いやすいから?』
『分からない(笑)。初めて使ってみたから』
『『えっ・・・』』
驚いた・・・その辺も気にならない里瑠だった事を初めて知った。
『特製で作ったんですけど(笑)使いませんか?』
『(笑)いいの?あ・・・』
あまりにも嬉しそうに呟いた里瑠に驚き見返す自分たち・・・恥ずかしそうに黙り苦笑いをした。
そっと直己は手渡し怪我なくと呟いた事で、里瑠は丁寧に頷き今度は頭を下げた姿に綾音が驚いた。
『気持ちは切り替えたはずじゃ?』
『・・・そうなんだけど』
両手で受け取り自分の荷物を入れ換える・・・見ていれば自分と似たようなモノがあって驚いた。
直己は姉と考えは似ているなと準備品を見ながら思った・・・それでも姉より考えは違うのだとも思えた。
『これ・・・』
『(笑)気温の変化は体を壊すので使って下さい。雨避けも寒さも(笑)暑さも防げます』
『火は?』
『(笑)大丈夫です。だから誰かに取られず気を付けて下さい』
『(笑)ありがとう』
大事に畳み取り出しやすい場所へ入れた里瑠だった・・・背負うと里瑠の身へ滑るようにベルトは締まっていった。
それから思い出したように綾音へ振り向いた。
『聞いてきたんだけど、知れたのは』
『え・・・全部じゃないの?』
『違った事に違和感も激しくて・・・ちょっとムカついてる』
『何が知れた?』
『一回目は五人・・・救助兼偵察で数回ほど五人ずつ投入されたけど新たに投入した人のうち一人だけ戻った事。
毒に冒されてて解毒できず死んだ事で詳細は聞けなかったみたいだけど五人の生存は確認できてたって。
それから新たに数人・・・』
『・・・二十五人投入されてて五人だけ確認されてる?』
『その残った人達と協力して終わりにしてこいってだけ。何処をって聞いても行って見つけてから聞いてって事しか教えてくれなかった。
投入した人数は副隊長が調べてくれたんだけど・・・ニ~三十人ほど行ってるらしい』
『協力して終わりにって意味は?』
『向こうで聞けってだけ・・・』
『・・・』
『ね、ムカつくでしょ・・・』
怒りを抑えた里瑠の顔・・・確かに直接、自分で聞いていたらムカつきそうな気がした。
『猶予は?』
『予定は二週間・・・だけど深夜の連絡で話を聞いてから考えて、決定した時に折り返し報告はするって』
『欲しい情報はくれなかった訳だ』
『そう・・・最後に、全員で戻れって・・・付け足したように言われて驚いたけど』
『へぇ・・・』
そうかと呟いた綾音に苦笑いをする里瑠だった。
『山間に寺があるようだ・・・だから近い場所に飛ばす。そこは郊外だから安心しとけ』
『デイナとグランの間でもあるから気を付けなさい・・・』
『味方はどっちの国ですか?』
『どっちでもないがグラン側を減らす計画で向かいなさい』
『・・・』
『両国内で味方を探し皆で消せばいいですか?』
『・・・それでいい』
『残していく必要が?』
『・・・』
『行った数を聞いても?』
飛ぶ前にと呼ばれ行けば前と同じ人達が居た・・・細かく知りたくて里瑠が声にする・・・ならばと聞いてみた。
何かを隠す意味が分からなかった・・・ならば自分が最初に知りたかった人数はと声にした。
声が止まる・・・里瑠が副隊長から聞いた人数さえ言わない事に驚きながらも見返した。
『・・・知ら』
『知る必要はあります。その人数で計画し向かうのですから。
私達を行かせる理由は』
『なぜ聞く?』
『罰として死ねというならココで処刑を』
『・・・』
『飛んだ場所で数を減らして死ねというなら、ハッキリ答えて下さい。
たとえば一人だけ見つけ連れ戻せとか・・・』
『刀堂・・・』
『今ココで、二人で辞職したら拒否しようかと』
『理由が必要か?』
『はい。答えて頂きます。詳細もなく行かせ戻った者は居たんですか?』
『・・・』
『隊員は消耗品だと思うのでしょうが意思はあり家族もいます』
『詳細は』
『その詳細さえ聞いていません』
『・・・』
『部隊を出した事。ユリ隊長を救出する事。真ん中へ落とし死んだ事。聞いたのはソレだけです。
救出する為に行かせるにしても二人だけ・・・何故ですか?』
『疑問は多く不安しか持っていません・・・飛んだ数と生死の確認は出来ているのか・・・私も知りたいです』
『・・・五つの部隊を飛ばせたが三日後に連絡は消えて確認も出来ていない。
ユリ隊長が一人だけ戻したが中毒で意識も戻らなかったようだ・・・拷問を受けていたらしい』
『・・・戻す方法があるんですね』
『そのベルトだ。お前はなぜ手にしない?』
『壊される可能性が高いからです。腕なら尚更。これは腕でしか機能しませんか?』
『生体に反応するよう』
『・・・手を使うのに、武器が当たり壊れたら戻れませんよ?』
『輪にすれば大丈夫なはずだ』
『一つだけでも機能するなら戻せる。今は二つ点滅しているだろうが・・・それは君達だ。
その場所に三回触れ、点滅している間に君が触れている者を出せる』
『戻している者は出れずなんですね』
『触れている間に離さなければ戻れると思う。もう一度触れば点滅は消える』
『連絡方法は?』
『時計の方に三回触れたら通話は可能だ・・・どの部隊も三日後に途絶えた』
『・・・総勢三十名』
『殺される可能性はありますか?探っている途中の報告は』
『飛ばせた場所は変えていたが全てに乱の中だったようだ・・・だから今回はより離れた場所にしたが確実ともいえない』
『だから二人・・・』
『あぁ・・・取りあえず二日分の情報は手に入るからだ・・・』
思わずだろう里瑠の呟きにムッとする人達・・・確かにと様子を見ていた綾音もいた。
黙っていて話さない上の人達・・・痺れを切らしたのか目の前の人達の中では下の上官が答えた。
『・・・その人数分のベルトを持って行けば渡し連絡を取り合う事は可能ですか?』
『・・・』
『どんな準備をし向かったかは知りませんが防護服を着ていたから毒を飲ませられたはず。
解毒剤が出来ているなら持って行きます・・・解毒して休ませ体制を整えてから反撃し完了させようと思いますが・・・』
『出来るか?それを手渡し』
『分かりません。知らない状況の中に行くのは二人だけですから。
万能に解毒するモノ、あるなら下さい』
言えば直ぐに出された事に苦笑いしかない・・・一袋ずつ持たせるのだと中身を確認して里瑠を見た。
『三十くらい・・・』
小さな錠剤だった・・・自分が手にし十で一纏めにしてみた・・・それぞれにと渡したのだろう見返す綾音だった。
『見つけた者の名と・・・』
『ベルトはないと?』
『重複すれば・・・』
『こちらで反応しないなら、その分』
『ないのだよ・・・残っていたベルトは五つのみ・・・その二つを君たちに渡した』
『その一つを運んで欲しい』
驚いた・・・作れる者が居ないのだと気づいた。
飛ぶ直前だが知れた事にはホッとした・・・それでも先の情報はない事で諦めるしかないのだと思えた。
『リル・・・』
『ん?』
『同じ場所に飛ばなかった場合』
『アヤを探す。合流するまで逃げ切る事にする・・・だから』
『了解(笑)。同じ事を言おうと思った。まずは逃げ切る・・・それから合流し確認してから動く』
『もし・・・』
『仲間を見つけても放置して。まずは合流する事だけ考えて・・・』
『そうじゃなくて』
『逃げ切る』
『・・・自分より腕が上の人達なのに途絶えたから』
『逃げ切る・・・』
『分かった』
『悪いが(笑)・・・同じ場所なのは確実だ』
『デイナとグランの戦争区域が全域に広がっているなら必死に逃げないと・・・
寺だから安全は、ソコでは普通でもないはず・・・どんな場所でも捕まる可能性は大きい事と覚えて行かないと・・・』
死んでしまうと言い返す綾音を驚いて見返す人達に、自分たちの方が驚いてしまった。