入り口は別にあるのだが、キッチンとリビングは繋がっていた・・・リビングの方は大きなモニターがあり映画も見れるようになっていて前回は本より映画をみた。
軽く食べ部屋へ戻る・・・サンがジッと見ていたが、観察されていた事に苦笑いをし部屋へ戻った。
自分を知って欲しくて部屋の扉は開いたままにし窓は開け放った。
心地良い風が室内を通り過ぎていく事で心身が癒されていく気までしたハルトだった。
それにしてもと苦笑いしかない・・・久しぶりに全身の筋肉痛に加え、足の怠さを味わった。
足の裏が熱く・・・じわじわと全身に痛みが走る・・・その痛みは諦め身をほぐそうと体を動かした。
部屋からでれば、柔軟体操のように体を動かしているハルトの姿が見え驚いた・・・筋肉痛なのだろう唸りは苦笑いだ。
確かに軽く動かせば多少、身は軽くなる・・・自分の疲れを癒すようマッサージをしてから眠った。
昔・・・爺とトウマから習ったからだ・・・疲れたと思えた日は習慣のようにしていた。
『大丈夫ですか?』
『うっ・・・だ大丈夫だ(笑)、久しぶりに歩いたから体がついてけなかったみたいだ(笑)』
そんな自分が可笑しいのか笑いながらもハルトはマッサージしては軽く動かしていた。
『あ、そうだ・・・ドア(笑)開けといても構わないか?』
『・・・大丈夫ですけど・・・クロウ達の視線(笑)気になりませんか?』
『ならなかった(笑)、さっきはサンからチェックされてた気がする(笑)』
『・・・(笑)』
そうかと見返したハルトの笑みに、可笑しくて苦笑いだ・・・その前から順番のようにクロウ達は眺めていた事は知っていた。
クロウ達にも大丈夫な人なのだと分かるまで放っておこうとアイリは黙っていた。
アイリの部屋のドア下はクロウ達が自由に出入り出来る仕掛けはあった・・・それは出入りしていたサンやウィンの姿を見て気づいた。
彼女が下へ行く・・・皆の世話があるのだろう話はしたかったがハルトは黙り体を動かした。
階段の上で座り皆を眺めていたハルトに気付いた・・・その姿も気にはならないクロウ達にホッとした。
階段の手摺へ凭れ動かないハルトがいた・・・よく見れば眠っていて苦笑いをした。
クロウ達は先に気付いたのか途中までだが、そっと近寄り観察が終われば下へ戻ってきた。
サンが近付き眺めている姿が見え驚いた・・・警戒心はサンも強い・・・それでも目が合えばハルトは笑みを溢し話しかけていた。
今は眠っている姿まで眺める・・・他の子達よりも真剣にだ・・・クロウは理由を知りたいのかサンを観察し始めた。
見ていたのだが飽きたようにフッと視線を外して遊びにいったサンを目で追う。
その様子にアイリは何故だと考える・・・思い浮かぶ事もなくサンを眺めた。
庭と室内の間に置いてあったベンチに座り駆け回り遊んでいる子達を眺めるアイリの隣へハルトが座る。
『(笑)何を考えてた?』
『あー・・・(笑)』
ベンチの背へ凭れ膝をかかえていたアイリが1頭だけ眺めている気がして声をかけた。
『何が気になる?・・・』
『・・・(笑)』
隣へ座ったハルト・・・ウィンを追いかけていたサンのスピードが落ちチラリと自分達を見始めた気がした。
『・・・アイリ?』
『・・・すみません・・・
えっとですね・・・サン・・・が』
『サン?』
彼女の言葉でサンは何処だと探すハルト・・・フラワ達がサンの近場を通り抜ける。
いつもなら監視のようにジッと眺め視線を外さないサンが、今は真剣に自分達を見ていた・・・それも伺うように。
クロウはと眺めれば、さっきと同じようにサンを観察していた事に気付けば可笑しくて苦笑いをした。
『・・・アイリ(笑)教えて貰えたら』
『・・・ずっと(笑)・・・理由は知らないんですけど、サンがハルトさんを気にし始めてるみたいで・・・』
『・・・俺?』
『はい(笑)、スッとハルトさんが現れると(笑)考えてるみたいに観察してました』
『・・・あれ・・・今もだよな?』
『(笑)はい。何故か・・・そう思って見てたらクロウまで(笑)サンを気にし始めたようで・・・なぜか・・・』
『な(笑)・・・クロウなら分かる気はしたが』
『クロウですか?』
『(笑)そのクロウだ。アイリの彼氏のように守って・・・(笑)見張って・・・寄り添ってるだろ・・・』
『はい・・・』
『(笑)ログでさ・・・』
『はい・・・』
『(笑)朝・・・起きた時、アイリの隣でクロウが寝てたろ?』
『はい(笑)、早起きなので私が起きるまで隣で待ってますけど・・・』
『な・・・起きて(笑)アイリを見てたらスッて顔を出した・・・俺を見て(笑)起きたなって顔で・・・そう(笑)自分に言われた気もして(笑)可笑しかった』
『・・・(笑)』
『(笑)クロウと目が合ったが、またスッとアイリの隣で眠ったのか伏せて見えなくなったんだよな・・・』
『へぇ・・・』
『今(笑)クロウが気になるのがサン?だから見て考えてる?(笑)あれ』
そっと静かに声にするハルトに頷くアイリ・・・苦笑いで返す彼女もいた。
おすわりし今度は丁寧に・・・そんな様子でハルトを見始めるサンに驚いた・・・自分ではないハルトへ視線を向けていた。
何故だと理由を考える・・・よく見れば微かに自分を確認するように見ていた気がした・・・
クロウはと探せば、さっきとは違う場所でサンを眺めながらも自分の方へ歩いて来ていた。
視線を感じたのか自分を見るクロウに微笑んだアイリ・・・チラリとハルトを見たが直ぐに自分の足元へ伏せた。
驚いた顔でクロウを眺めるハルト・・・見上げたクロウが見返したが自分を見てから今度はサンはと視線を戻した。
『アイリ(笑)・・・』
『はい』
『・・・(笑)俺の位置があがった?』
『はい?』
『サンの中で考える俺の位置(笑)』
『・・・』
『んー(笑)、最初は無関係な人』
『あの・・・意味が・・・』
『(笑)サンにはアイリが家族で俺は他人だった・・・(笑)だけど会う度にアイリと近くなって来た事で、他人から知り合いに昇格・・・(笑)とか』
『・・・』
『(笑)その知り合いから友人に・・・ま、友人とまでは(笑)なってないけどな』
『それはサンから見て・・・』
『そうだ(笑)アイリと近くなってきたから俺とどう接するか考えてるとか(笑)』
『・・・あー(笑)』
そうなのかと考えながらサンを眺めるアイリ・・・ならばコナツの時はと思い出すのだった。
とはいえ自分とも近くはなったが、より近くなっているのはトウマだ・・・今のコナツとの付き合いはマウレアのエリン達とも違う。
家族に近くなっていた・・・でもサンもクロウも今のような様子はなかった気がする。
へんな違和感を覚えたのは初めてだった・・・足元にいるクロウの隣へ座るサンを撫でながら眺める。
スッと歩きだしたサンに笑みを浮かべたアイリだった・・・近場へくるとクロウと同じように伏せ前足へ顔を凭れていた。
遊び疲れたのか皆が集まる・・・近場へ休憩と伏せ寝始めた様子に苦笑いだ・・・逆に考えながら1頭ずつ眺めるハルトもいた。
『・・・(笑)飼い主が知らないんじゃ、分かるはずないな(笑)』
静かに笑みながら呟くハルトと苦笑いをした。
食事をすませキャンプ場へハルトを送った・・・散歩のように皆がそれぞれに遊びながら向かったが、いつものようにアイリの近場を歩くクロウ。
サンは少し離れた場所で歩いていたが確認するような視線は自分だけでなくハルトへまであった事に気付いた。
挨拶をしたアイリが戻る・・・クロウはアイリの行動に合わせ歩き出す・・・サンはと、そっと見れば驚いた事にハルトを見ていた。
苦笑いだ・・・それでも今はとアイリは家へ戻る・・・いつの間にかクロウと自分の回りをサンは遊びながら歩き始めた。
その夜・・・爺の家へ食事をしに向かった・・・相談したくて・・・
『(笑)話は?』
『サンの事なんだけど・・・』
『(笑)どんなだ?』
『んー自分の想像があってたか(笑)知りたかったの・・・』
『サン?・・・サンだけか?』
『ん・・・
一緒に暮らしてきたのに、最初の居場所から違う場所に・・・違うな(笑)』
『居場所?・・・サンが居場所を変えたって事か?』
『ん・・・サンの飼い主は私じゃなくてサンが選び直してるみたいに思えきて・・・自分から選び直すものなの?サンが認めた人に・・・』
『・・・クロウは?』
『クロウは私だけ・・・でもサンの様子が違うって観察はしてる』
『・・・喧嘩は?してないか?』
『全く(笑)』
なかったと爺へ言ったアイリに苦笑いをしながら見返した。
『(笑)どんな様子だった?』
『観察してた・・・ジッと見て考えてる感じはしたかな・・・声を待ってるような顔・・・
さっきは、私を少し見て直ぐに』
『誰だ?』
『・・・ハルトさん。彼が動くと眺める・・・ジッと観察して伺うように待ってる』
『どう見えた?』
『気付いた時は、ハルトさんの様子を見てる気がしたけど庭では指示を待って待機してるって感じの顔だった。
だけど私の隣に来たからかチラッて(笑)一瞬、私を見たけど直ぐにハルトさんに戻ったの』
『(笑)残念か?』
『そうじゃなくて・・・(笑)』
『(笑)今は確かに飼い主でもあるが、アイリが絶対的な存在だと思ってるのはクロウだけだろ』
『・・・』
『確かに命令もきく。クロウ達はアイリを家族の一人と受け入れた。
クロウにはアイリがトップだと思ってるがサンは違ってたのかもしれんな・・・』
『それはサンがハルトさんを自分の家族の一人と認めたって事?』
『声をかけてみたか?』
『なにもしてない・・・私は観察してる理由を考えてたし、見てる理由はなんだろうって』
『・・・(笑)物は試しだろ』
『なんか・・・寂しくなってきた』『(笑)大丈夫だ。見てきた感じでは家族の一人と思ってるはずだ』
『・・・もしかして訓練士としか思ってなかったとか・・・』
『そーじゃなく(笑)、フィンやフラワ達とかトウマとの関係と同じ感じじゃないのか?』
『・・・あー(笑)』
そうかとアイリが唸った・・・家族の中でも順位はある・・・それはサン達にも。
クロウだけは違う・・・強さでいえばクロウが一番だが、皆の中でのトップはサンだった。
観察すればサンより前へ出ないし、ウィン達が出れば駄目だと教えるように吠え押さえ込む。
一番上だと皆へ知らしめるクロウの様子は仔犬の頃に見て驚いた事は度々あった。
アイリへつくクロウ・・・サンはクロウの行動に注意するような態度もないがウィン達には違っていた。
5頭の中での順位は絶対で外れない事に気付いた頃からは、命令も世話も全てサンからにした。
外出もクロウは絶対についてくる・・・サンは他の子達の様子で決めると気付き声をかけてから促す。
人のように話しては考えさえ自分の命令が絶対に必要だと思えた時は服従だと教えてきた。
だからサンが動けば他の子達は絶対に従うようにもなった・・・絶対的命令は滅多にさせてきてもいないアイリ。
どこからとサンの様子を思い出しながら考えたが・・・それは、どこからではないと苦笑いだ。
今回、一緒にいった事で彼の様子を観察してサンはより考え始めたはずで、危険度はサン達は知るが彼の声は皆へ向けていた。
近寄れば触らせた・・・偶然でも出来れば褒めあげる・・・飲食は彼へ頼んでいた・・・なぜなら自分は手が回らなかったから。
その前に彼へ頼みサン達へ説明もし飲み水も餌も見せてから彼へ渡し改めて見せた。
トウマの時も同じように頼んだのに餌は見向きもしなかった・・・だから自分が声をかけ食べさせた。
今回もだろうと最初のタイミングで説明はした・・・だから彼が準備したものを飲んだし食べた・・・。
その様子で彼はサン達に謝り、誉めちぎった・・・全員が彼へ近寄りはしなかったが、水も餌やおやつも合図を待って食べた。
・・・クロウの様子を思い出し、そうだったと口を引く・・・
食べていいと合図をしたハルトだった・・・サンは彼を見て考え食べ始めたが、クロウは自分を探し確認した。
頷けばクロウは食べた・・・その様子を見たサンも自分へ視線を向けた事で頷いた。
ログまでの道のり・・・その1日でグッと近くなったのだとアイリは気付いた。
明日からより確認してみようと、そう思えたアイリだった。
苦笑いだ・・・滅多にない言動とサン達の事での戸惑い・・・躊躇う事なく過ごしてきた。
なぜか自分もマウレアの人達に抵抗もなく自分から近寄った・・・いつもなら迷子の客は夜遅くてもキャンプ場へ帰す・・・危険なら大丈夫な場所を探し帰るよう促してきた。
今回は自分の居場所に抵抗なく連れてきた・・・それはオールの人達まで・・・その場の人達と知らずに。
彼らにも戸惑いはなく、それでも女性でもない事で自分の自宅ではなかったがトウマへ連絡し近場に居て貰ってはいた。
驚いたトウマから連絡がきて初めて気づいた・・・初めて会った人達なのにテリトリーに入れたから。
少しずつ慣れだと外へ出してきたのはトウマだった・・・そのトウマはアイリが外で暮らせるようにと声にしてきた。
そして・・・言葉の最後に話の理由を声にした・・・だから・・・本当に・・・アイリには必要でもあると。
落ちついた事で学校に行こうと促した・・・戸惑うアイリを安心させ大丈夫だと教えてきた。
でもと言えば、ならと言い聞かせるように優しく呟くトウマ・・・自分の体験まで話しては家から出した。
興味はソコかと驚き慌てるようにトウマが連絡してきて知ったアイリの夢。
自分とトウマ、そしてクロウ達がアイリの家族で一番に思うのだと嬉しそうに言った・・・アイリの中で絶対的な家族だと。
ある日は、サンがリーダーだったと驚きながら教えに来たアイリを思い出す・・・
喧嘩をしても怯える事なく立ち向かうクロウだったからか、クロウがリーダーだと思っていた。
なのに違ったと慌てながら教えてくれた・・・それはじわじわと広がるような嬉しさがアイリを笑顔にしていった。
楽しみながら始めたアイリ・・・その数に驚き、凄かったとトウマが呟く・・・友人に見せ、その彼女達の声も増えていく。
全部見たいと言われたが持ち出しは拒否された・・・恥ずかしいのだと照れた笑みに苦笑いだ。
ならばと考え記念と写真に撮りためたが、アイリには言わず表に出してみれば数多くの仲間に好評だった。
トウマから聞いて驚いたが、自分でも確認すれば驚いた事を思い出した・・・その腕に外へ目を向けさせたが出る気もないアイリだった。
まずは本人の自信をつけさせ外へ目を向けさせようと待った・・・そっとでも出れた笑みを思い出した。
嬉しかったがクロウ達を中心に過ごす事は、アイリには絶対で動かなかった事は驚いた。
それに縛られた生活をさせているようで申し訳なかった・・・連れてきたばかりにと・・・。
ブリーダーと犬達を育ててきた自分・・・今は小さくし副業のような状態にした事でトウマにも負担にならず助かった。
なにより今は専門にスタッフは残ってくれている・・・通いだがトウマに負担が向かないよう頼んである。
それでもアイリへ5頭もの大型犬を預けてしまっている・・・家族と一番真ん中へ孫のアイリは置いた。
悩んでいる姿に苦笑いだ・・・その感情の複雑さは見てとれる・・・戸惑いはアイリの中を揺らしている気もしたが本人が気付かない事はホッとした。
親を失くした喪失感に似た感情の始まりのような気もすると・・・その頃のアイリに似ていて自分まで戸惑ってしまう。
それでもハルトという男を知ってからか変に大丈夫な気もする・・・そんな事まで考えていく自分もいて笑えた。
そのアイリの笑みに息子トウリと重なる・・・その優しい瞳はアイリの母アヤの笑みと重なり驚いた。
色んな思いが重なり苦笑いをすればアイリが見ていて苦笑いだ・・・どうしたのかと考えながら見ていたアイリだった。
『・・・(笑)』
『大丈夫だ(笑)、サンの親はアイリだと知ってるし変わらないから安心(笑)しなさい』
『(笑)・・・』
『主が変わっても(笑)親はアイリだとサンは思ってるはずだしな』
『ん(笑)、分かった』
『今は(笑)様子を見てればいい』
『分かった(笑)悩むの止める』
『それがいい(笑)。それより』
『ん?』
『(笑)その人は・・・』
『だれ?・・・ハルトさん?』
『(笑)そうだ。アイリには、どんな人なんだ?』
『・・・分からない』
『(笑)初めてだしな』
『・・・何が?』
『・・・(笑)クロウ達のように警戒せずに近寄せただろう?』
『・・・あー、泊めた事?』
『・・・』
他の事では気付きも早いのに、恋愛に関しての事へ考えも向かないアイリに苦笑いだ。
『爺?』
『・・・(笑)アイリには特別な男かと思っただけだ』
『なんで?なんでそう思うの?』
『(笑)理由を作った気がしたからだ』
違うかと笑み見返せば驚いた顔は自分の言葉を思い出し考え始めた姿になった。
孫の女の子達の様子を思い出しアイリへ声にした・・・そうなのかと考え始めるアイリだった。
その年頃の子達と違った様子は仕方ないと、アイリのペースで考えて欲しいと願った。
ようやく見れた事も嬉しくて、それを楽しめと思いながらアイリを見つめる藤城だった。