tamiのブログ

このブログ・・・妄想ー空想大好きな私が、勝手に楽しんで・・・勝手に文字にしています。ボロボロですが(笑)

かごのとり 38

2018-09-28 08:15:18 | かごのとり

隣二軒が変わるのか、工事するようでシートが覆われ始めた。
営業中の静けさで、自分達の場所に気を使ったのだとホッとした。

何が出来ると話題は商店街の中で囁かれ始めた。
暫くすると全て撤去され更地のような状態は続き・・・その理由を知った。


立浪コウヤが部下を引き連れ店が終わる時間帯にやって来た。
マリナまで笑いながら一緒に来た事に驚いた。

『(笑)想像した話で合ってるの?』
アキが目の前に座り、コウヤが話す前に声にした。
『(笑)数が増えただろ・・・チャンスだと思った。
いつか変化してくなら、俺の場所に交ざると解決しないか?それを利用してくれたら、俺は叶う・・・』

『(笑)だから始めないの?』
『下準備は済んでる・・・それでも二人が相手なら出しても無駄だと俺でも分かる。
だから今まで通り変えずに居ていい・・・店が横になっただけと頼めないか?

日中はカフェ・・・店の半分は飲食・・・ここと同じ感じに・・・時間は長いが二人は飲食だけだから、同じ時間から始めればいい』
どうだと見返すコウヤ・・・その間にマリナがタブレットを出して店の雰囲気だと見せてくれた。

『私ね(笑)カフェがしたかったの・・・だから色んな事は勉強してきた。
働くと前の店から噂が始まっちゃうから長く続ける事も出来なくなっちゃう。

ずっと出来そうなココなら大丈夫かなって・・・自分で頑張れそうかなって思ったの。
前に話してた・・・コウちゃんが昔、話してた事を思い出して頼んでた・・・』

『俺はさ・・・こんな場所に居たかったが、無理だと諦めてた・・・一人にさせられて・・・ずっと何かが足りないって・・・
そんなヤツが集まったから・・・寂しさは少なくなった・・・それでも出来立ての飯は温かいと、笑って食べれる場所が欲しかった』

『 ・・・それがハヅキのご飯だったって事?』
アキの呟きに苦笑いをして小さく頷くコウヤだった。

『ハヅキが欲しいんじゃない・・・今は・・・自分を置ける場所が欲しくて・・・マリナを利用してる。
店が大きく、新しくなっても雰囲気は同じように作れるだろ?

タケルも・・・個人でって夢はあるだろうが、同じ場所で続けられないか?
一緒に働き続ける事は出来ないか?』

『私はね(笑)、ハルト君たちが嫌じゃないなら雇いたい。知らない誰かより、知ってる人と一緒にしたいの。
安心して一日を過ごせる場所が欲しいから・・・』

『向こうは?』
『(笑)・・・抜けたいの。自分を変えたいって・・・驚いたけど・・・自分が可笑しくなったみたい(笑)』

『(笑)先まで一緒に居てくれそうな人が見つかったのね・・・』
『ハヅキは気づくの早いね(笑)。でもね、本当の先は分からない』
『(笑)相手に試して貰うのも、いいかもね。マリナの居場所を見つけたなら』

『一人でも頑張れる場所(笑)』
言い直した彼女に微笑んだ。
『(笑)同じ場所にアキと私を引っ張ってるわよ?』
『無理かな・・・』
『弟まで(笑)』
今度はアキまで呟いた・・・

『(笑)人が増えたって聞いたから・・・ココも変化させて住まいにして・・・入り口は見えるけど塀にして(笑)。
裏は増えるし(笑)そんな場所に・・・二人なら出来そうでしょ?』

『増えるから雇えば給料は高くつくよ?』
『(笑)物凄く考えてきた・・・流れも知ってたし、それはアキの店だから変更しないで続けられるようにって頑張ったのよ?』

『誰が纏めるの?』
『代表はコウちゃん(笑)、以外と経営向きなの知ってた?』
煩いとムッとしたコウヤに笑うマリナ・・・前より柔らかな笑みだとハヅキはアキを眺めた。

『ん?』
『(笑)アキの店よ・・・私は今も居候だった・・・』
『(笑)店もだが、上は賃貸にして・・・もしもの金は賄う事にした。
必要なら安く売る(笑)ココを完全な住まいにするとは思ったが・・・
裏は閉じて、売った金で上に入らねーか?』

『 ・・・』
『通り抜けはな・・・いくら囲っても絶対じゃない・・・ガキの安心を考えるなら塞いで一ヶ所の出入り口を確保した方が心配は減るぞ?』

『(笑)建ててない理由に気づいたわけだ・・・』
『買ったくせに進ませないから考えた・・・雑魚寝が増えてんのに出さねーし』
『(笑)了解。コウヤも交ぜてあげるわ』
突然呟くアキの声に驚き、マリナとコウヤが見返した。

『了解(笑)、裏は売れと話は出てるから売ったら考える(笑)。
アキがいいなら店から始める』
『いい・・・か・・・?』
『(笑)自分の直感は信じときな』
『サンキュ・・・』

『(笑)食べさすけど、探しな』
『 ・・・そこはさ』
『ハヅキ自身が(笑)離さないのよ?隙間はない・・・今も昔もね。
二人の恋しさは分かるけど(笑)寄り添う事は出来ても浸りはない。
自分達は自分達で(笑)』

『手がいっぱい?そんな意味か?』
そうだと頷く笑みに苦笑いだった。
あわよくばの考えは二人でしていた笑み、それでも拒否される予想はあり楽し気な嬉しそうな笑みになった二人に微笑むアキとハヅキだった。

打ち合わせと次々と決めていくコウヤの楽しさを眺める・・・自分が楽しい仕事や生活が出来ているのだと、不思議とホッとした自分に笑った。


自宅に戻りタケルやハルトへ相談だと話を早々に始めるアキ・・・本当かとハヅキを見返すハルトに苦笑いだった。

『悩んでたカフェは、本当に自分でしたい部分だけで仕事が出来る。
それでもいいなら、マリナへ話をしてきなさい。
それでも(笑)修行は必要だからね』

『 ・・・(笑)雇われるのが俺には合ってる・・・だけど一緒にする笈川さんと相談はしないと・・・』

『そうね。だけど約束だからというだけの思いは駄目よ。ハルト自身の本音はちゃんと言う事(笑)』

分かったかとハルトを見つめたハヅキに、確かにと苦笑いをするハルト・・・早々に流されそうな気がしたハヅキの声に、自分を持とうと改めて感じたハルトだった。

タケルはと眺めれば一人考えていた姿に口を引いて声を待った。
その間だとアキと、家の確保と考えていた。

それでも素早い決断をする二人に、本当に深く考えない事に笑うハルトだった。
何でと苦笑いをするアキもいた・・・

『本当にそれでいいのか(笑)迷わないから不思議だと可笑しかった』

『(笑)アキが頑張った場所は自分家にしなきゃ・・・店の上なら近いけどね(笑)』
『ファミリールームかなんかにして貰って(笑)入ろうと思ったのよ』

『俺・・・俺はさ・・・』
『(笑)タケルといいなら、二人で住める広さを確保するけど?』
『ん・・・それを頼もうと思った(笑)、どっちにしても二人で住むだろ?
ここでならケイタ達も安心するだろうし、俺も来れるし(笑)』

『俺は?』
『タケルさ(笑)俺と折半しね?駄目か?』
『あんた達は私と同じにして協力してくれない?』
『 ・・・』

アキの呟きに驚く二人・・・同じように見返したハヅキは、タケル達も眺め改めてアキを眺めた。
『杉原さんが来やすくって(笑)タケルもハルトも遠慮したと思うけど?』
ハヅキが変わりに声にする。

『分かる(笑)。それでも子供たちの安心が欲しくて・・・
二世帯みたいな造りなら・・・気にならないかと思った(笑)。
いつかは結婚して出てくだろうけど(笑)近場で私の安心を貰えないかなーって(笑)』

『広さは十分あるけど・・・』
『(笑)練習用、自宅用で下は考えるし部屋に戻れば完全にプライベートにもする(笑) ・・・一瞬・・・さ・・・』

『私か(笑)・・・自分を鍛える為に出るよ。なにより不規則な時間だから、こっちは楽になると思う(笑)何より隣だしね。
必要なら手は出す(笑)。それとね・・・』

『分かるよ(笑)自立でしょ?』
アキの呟きに俺達かと二人を見返したタケル達・・・そうだと頷くハヅキに苦笑いだった。

『学生は終わったわ(笑)、今度は自分を自分で育てる・・・(笑)大丈夫と時間を自分の為に使いな・・・』
『 ・・・同じ敷地にあっても別(笑)』
『あー(笑)それが二世帯ってやつ?』

『中で行き来 出来るドアはあるけどね(笑)独立って家にしてみる。
もちろん部屋代は貰う(笑)それが貯まったら自分で考えるもよし!』
そうかとアキの言葉を考えるハルトだった。

『アキちゃん(笑)。俺さ、働いてみるよ・・・確かに独立して自分の店って大きく思ってたけどさ・・・
この店だったから(笑) ・・・アキちゃん達がいたから出来てた・・・安心を貰ってて・・・錯覚してたみたいだ。
(笑)家族が近くにいる安心は、俺にもまだ必要で・・・雇って貰えるなら、(笑)俺には合ってる気がする』

『(笑)いつかは出せば?』
『ん・・・いつか(笑)考える・・・』
そうかと笑みを浮かべたアキに、笑み返したタケルだった。

『ハル・・・』
『ん(笑)、俺もアキちゃんに払うから頼んだ。
今まではハヅキにして貰ったから(笑)、大人の一歩と恩返しするよ』

『(笑)ケイタ達に?』
『ん(笑)ハヅキはそれが希望でしょ?自分によりも俺より小さな子に・・・』
『そうだ(笑)カズキは?トモヤも一緒に住めば?』
『 ・・・そんなに広いの?』

『(笑)この広さに店の少しを家にして塞ぐかなって。
玄関にして(笑)ここが私達、上を作って4部屋に水回りとリビング(笑)余裕でしょ?』
『あー(笑)私達の安心・・・そこが埋まるな・・・』

アキの大まかな雰囲気だけでも、十分な広さはあると分かる。
季節によっては家の下はリビング代わりに使いそうな雰囲気もある・・・何より月一の宴会は新規の店ではしなそうで・・・まだ暫く世話になると声にしてタケルとハルトは頼むのだった。


翌日からはマリナ達へも相談をしていくアキ・・・子供たちへ不安は出さないように楽しみだと教えていく彼女達だった。


かごのとり 37

2018-09-27 00:22:34 | かごのとり
※すみません・・・


疲れた体を押して、やっと寝れるとベッドに潜り込む・・・可笑しくて笑う彼女を止めた早瀬が照れながら抱き締めた。

待っていたような顔・・・素早く伸ばした手・・・寝転べば引き寄せ自分を抱き込む手際のいい彼に笑った。

『(笑)彼にお礼したいけど、何がいい?』
『いいさ・・・安心したらしいから』
『彼も悩んだ一人?』
『違和感を持ったままに来た一人・・・未だに探してる』

『どっちがいいやらね・・・どっちも困るけど大人になってから気づく方が楽なのかな』
『トモヤは ど真ん中だから余計に辛かったよな・・・知ったばかりで自分に起こるし・・・
それでも穂隅は驚くなって教えてたんだよな・・・誰でもなるしって』

『幼すぎて怖かった・・・何かを間違えたらヤバいって・・・触れなかった』
『 ・・・』
『ごっごめん。どっちも抵抗もない自分は知ってるから・・・』

『女も?』
『(笑)女だらけの場所で生きたわ』
そうだったと苦笑いした早瀬は、改めてハヅキを見返した。

『同じよ(笑)アキもそう・・・男だらけなら同じような事件は起きるのかな』
『襲われた?』

『私じゃない・・・知らない人がね・・・

シャワー室に見張りはないの・・・時間が惜しいからか次々と順番で入る。
脱衣室は無防備じゃない? 手がね(笑)伸びてくる』

『それは好んで?』
『んー人肌の恋しさ・・・それから本気モードが目覚めた?だからかな・・・
抵抗出来ないと囲まれて・・・ヤバいし』
『いっイかされる?』
焦る声音に苦笑いをしたハヅキ・・・

『ハヅキ・・・は・・・』
『(笑)ムカついて、アキと仕返しして離れたわ』
『 ・・・』
『快楽に溺れたら狙われ続ける(笑)、触って・・・止めて・・・終わり』

『どーなる?』
『しっ知らない・・・イケずに終わるだけ?かな・・・』
『 ・・・辛いな』
『んースッキリ感はないかもね・・・露骨に触って何が楽しいやら』

『トモヤにも触れる・・・か・・・』
『家族の一人だから平気ってヤツかな・・・
それでも自分に来る手より出す方が気にならなかったな・・・』

『触られ捲ってるな・・・お前・・・』
『 ・・・こーして来る(笑)』
触られ唸る早瀬が驚いた・・・

『 ・・・もしかして、それを楽しんだからハヅキに触って確認してたのか?』
来た頃の事だろうと笑って頷くハヅキだった。

『(笑)誰が誰を好きでも、それを聞いても違和感はないわ。
愛した人がいて幸せねって答えるだけよ・・・』
『ふざけて触る事は出来てもな・・・寝るのはムリだな』
そう呟く早瀬が自分を眺めた。

『(笑)確認したいわけだ』
彼の手が伸びる・・・そのままに滑らせ巡らせ始める・・・
苦笑いして頷く早瀬に仕方ないと話し出すハヅキもいた。

『(笑)愛した相手だから出来る行為と思えないの?
それでも、した事はないけど・・・同性とは想像も出来ない。遭遇したら触って相手が惚けた間に逃げるかな』
『(笑)頼んだ』
笑って呟く早瀬に笑み返したハヅキだった。

『トモヤは確定出来ないよね・・・』
『それでもバイトは変えずに置けよ・・・男に狙われるよりましだ・・・
危険度で選ぶなら今の方がトモヤには助かる・・・大丈夫そうな店で手が伸びるなら特に・・・』

確かにと頷くハヅキだった・・・ ホッとする温かさが心地好く、緩やかに身が解放されていく事になっていた自分にも笑った。

『レン・・・』
『焦がれてるみたいだ・・・寝たい俺を邪魔してる・・・』
全身の力が抜け睡魔が回った瞬間・・・巡っていた手は強弱を始め、狙いを定めた指先は迷いなく触れていた。

寝かせて欲しくて彼を呼ぶ・・・どんな言い訳かと耳を澄ませば・・・そうきたかと思わず笑うハヅキだった。

諦めろと背を向け 笑ったふりをしながら睡魔を探すが・・・彼の手は身へ張り付き、それは手のひらで確認するような触れで撫でられた。

マッサージと思い込む・・・首筋から肩・・・腕を巡り肩へ戻る・・・背中を強弱をつけて上下する・・・

『上手い(笑)』
『(笑)サンキュ』
少しずつ脇へずれていく・・・その行為は下がり体は、ゆっくりと温まり始めた。

『指圧の加減って・・・なかなかな・・・』
わからないと呟いたが、返事はないハヅキを覗く・・・笑いながら続ける早瀬もいた。

体がビクつき互いに驚いた・・・俯せていた自分が今は仰向けになり・・・マッサージではあるが、自分の片足は彼の肩へ乗っていた。

『これは・・・』
『 ・・・』
何故だと聞くが照れた笑みは答えない・・・よく見れば自分の足に花は咲き・・・彼の手を眺め辿れば自分が跳ねた理由を知った。

何より爆睡する自分が遊ばれていた事が可笑しかった・・・その手はどうするのかと彼を眺める・・・

『続けるべき?』
『マッサージしてなかった?』
『あー全部した・・・眠気が起きなくて・・・』
『そのマークは?』

『あー恐らくツボかと思った場所は強めにしてみた』
『それで?』
『指は疲れたし・・・話してない暇な唇で全部を確認してみた』
『 ・・・』

指をさして確認だと示して見れば頷いて・・・唇で触れたと自分の口まで自分で差していた。
忍ばせ浸る場所でジッと動かず待っていた彼の指を眺め彼を見た。

『(笑)両方』
『んっ・・・』
囁くように言った彼が静かに動き出す・・・バレたと待ち構えた彼に捉えられていくハヅキだった。

『触れの体験頼んだ(笑)』
『レン・・・飲んだ?』
休ませた身を入れ替えて、彼女を離してベッドへ埋まる彼に呟きながら触れていった。

強弱をつけ巡り流れをつける・・・力は足りないと彼を跨いで流しながら掌を巡らせていく。

タオルをかけようと止めた手が捕まれ・・・寝返りをした早瀬が笑う。
前かよと見返したが目を閉じ笑っている楽しそうな彼に苦笑いだった。

足から始める・・・以外と重労働な行為だと感じながらマッサージをした。
温まり始める・・・自分もそうだったと、優しく巡らせ肌に触れていった。

タオルがかけられる・・・何でと見れば自分を見下ろす笑みがあり、優しい眼差しで微笑む彼女がいた。

両手を出して彼女を優しく包み口付けをした・・・ハラリと彼女の髪が垂れ下がる・・・口付ける場面が隠されるのかと笑みが溢れた。

絡ませた唇からも笑みが溢れ、触れているだけで幸せだという思いが自分に注がれた気がした。

手を流し彼女へ巡らせる・・・少しずつ絡めた吐息が温まる。離すなと優しく押さえ付け忍ばせた場所から浸る早瀬だった。

額を預け耐える彼女に笑み静かに巡らせる・・・熱さは吸い取る・・・より彼女が愛しいのだと確認のように求めていく早瀬もいた。

見つめなくても・・・気配だけでも分かる熱さは自分だけに預ける彼女を優しく深みへ追い込み、自分だけの彼女へ浸るように落ちていったのだった。



起こされ目覚めた早瀬が苦笑いをした・・・優しいキスを貰いシャワー室へ連れ出される。
時間なのだろうが考える事は出来ず朦朧として眠気を洗い流す・・・

全部に触れた記憶が沸き・・・彼女の手が止まり鏡越しに眺めれば、呆れた顔で・・・今の自分に照れた。

『遅刻すると思ったから手伝っただけよ(笑)』
『遊んで(笑)ごめん』
いーえと笑いながら早くしろと促されるが・・・彼女を抱き締め余韻に浸る早瀬だった。



肩を組み項垂れるように帰ってきた早瀬に呆れるハヅキ・・・苦笑いして深谷が飯と呟いた。
テーブルへ出して微笑んだ。

『そんな日もあったと笑えば? 食べたら直行ね(笑)』
『 ・・・』
驚く深谷が彼女を眺め早瀬と苦笑いで返した。


彼女が離れた途端に小声にして呟く深谷に笑う。
『理由を知るのか?何で?彼女に言った?』

『(笑)言ってない。俺らの姿を見て何かあったかは気付くだろ・・・気にするなと直接言わなかっただけだ』
『ミスりまくった事がバレた心境だぞ(笑)俺まで・・・すげー複雑』

小さな小さな呟きに、確かにと笑む早瀬・・・原因は自分達にある・・・寝不足、それしかない・・・その理由もまた自分・・・止められずに彼女へひたすら求め溺れた結果だ。

情けなさは沸くが、自分の責任でもあり声は出さずに受け入れて一日を淡々と進めた。
理由は知らないが、深谷も同じだったようで珈琲を求める行動は止まらなかった。

呆れる仲間達のフォローで二人は それ以上のミスもなく終われたが・・・礼をして残業と机に座れば上がれと出された二人だった。

目の前には確実に酒はない・・・食事をしたら休めという無言の声・・・ふと気づく視線・・・食べろと笑うハヅキの笑みに苦笑いをした。

『あー俺も心配してくれる本命(笑)引っ張らないとな』
『 ・・・居なかったか?』
早瀬に言われ苦笑いをした・・・

『どーにも靡いてくれなくて(笑)、それでも話してたら朝・・・謝って署に行った』
『 ・・・寝てない?』
『(笑)ちゃんとした睡眠は・・・』
ハーと深く吐いた深谷、それぞれに自分に笑い気持ちを切り替えて食べ始めたのだった。


いつもなら起きて待つ自分・・・それでも眠気は自分から離れずだった。
前はなかった一日のリズムは自分から崩していた・・・それを嫌うハヅキが離れる怖さが沸いた事に驚いた・・・

それでも休もうと眠り始めるが、ヤバいという気持ちが夢にまで現れ何度も目が覚める。

繰り返す寝返りで寝付けないのだろう早瀬・・・そっと起きて彼を眺めた。
新たな寝返りで気づく・・・合わさる視線に口を引く・・・

『黙って消えないから、レンは自分の場所を自分で守って・・・大丈夫(笑)離れたいなら貴方を拐って出るから』
『 ・・・』

『(笑)重なる事が増えた・・・前は勝手に自分一人で出来ると離れた。
あの頃に似てる気がして・・・違った?』
『 ・・・』

『レンの時間も大事・・・それを狂わせてる自分は嫌なの』
『ごめん。反省中だった・・・』
『互いに行動する時間が違うから・・・どっちかに重ねたら無理がしょうじる・・・』

『それが今って事も知る・・・だからヤバいと寝ようと思った。これを続けたらハヅキが離れそうな変な恐さが自分を起こしてるだけだ・・・』
『(笑)レンを愛してる・・・』
『 ・・・』

『確かに回りへ目が向く事が多い・・・私が気になるから動いちゃう・・・しなくてもいい事まで。
それでも気付かないフリも出来ない・・・これが私・・・

番号を背負った頃の時間に自分が支配されてる・・・気持ちさえ簡単に切り離しちゃう。
だけど今の私には、気持ちだけは離したくない・・・レンと居たいから』

『会う回数がさ・・・俺には足りなくて・・・話は十分と思える。
それを通り越してハヅキの時間を潰してる気がして・・・』
『殆んど(笑) ここで暮らしてるのに、足りない?』

『 ・・・完全に越して来たら、ハヅキの時間が崩れてくだろ?』
『(笑)越して来たら、レンは私の時間に重なる気がしてた・・・
全部で休める場所は必要と思ったから言わなかっただけ・・・』

『帰れと言ってた理由だったのか?』
そうだと頷くハヅキに驚いて・・・それでも自分の為だった事が嬉しくて彼女を抱き締めた。

『一緒に・・・全部に入り込んでいいか?』
『 ・・・』
『たぶん(笑)俺の方がぶれる・・・強制された生活はしてないから。
だから、少しだけ我慢して目を瞑ってくれたら・・・頑張れる・・・頑張る事でもないけど・・・』

『貴方が楽になるなら(笑)。私は大丈夫な時間を作る努力をしてみる・・・レンだけを観察する時間(笑)』
照れた互いに微笑んだ。



かごのとり 36

2018-09-26 00:56:00 | かごのとり
※たぶん・・・


早くも実現した子達の目は輝く・・・それでも恥ずかしそうに早瀬の後ろを歩く姿は、行き交う同僚達には可愛いのだと集まる視線に早瀬が項垂れた。

『マジか?』
事情を話していた早瀬の部屋の前で待っていた人達の笑みは長引いていた・・・

『おっお巡りさん・・・』
『刑事さんがいいな(笑)』
柔らかく言い返した人が笑う。

『あー本当に勿体ない時間だったな・・・』
『(笑)深谷が早い』
『刑事さんは大丈夫なの?』
『男だしな(笑)。外で人目を気にするよりマシ(笑)捨てれずに保管してたんだ・・・』

『見つかったら?』
『(笑)どーなるやらだな。口外禁止だからな(笑)』
『見せて貰うから(笑)言わないよな!』
集まり出した人達・・・了解と頷く子達に笑いながら早瀬が招くのだった。

深谷と甲ヶ崎、そして穂隅とは早瀬と同期で、気の合う事で休みが合えば飲みに出る親友という仲間でもあった。

『本格的な映画鑑賞に使うべきモノがこれかよ・・・』
準備しながらボヤく早瀬・・・それが可笑しくて深谷が笑う。

『(笑)自分で提案したんだから諦めろ』
『(笑)AVが大画面だぞ?』
『あー昔だったら(笑)激しく喜べたよな』
だなと笑いながら、懐かしそうに準備する大人達を眺める子達・・・

コードを伸ばして皆が座る近場でセットした。
『だよな(笑)。音量は低めにしとかないとヤバい(笑)』
二つのスピーカーが置かれた・・・

『あつまんじゃね?』
『お巡りさんが?』
『(笑)そこは諦めろ』
驚いた顔の子達に笑いながら、窓は締め切り確認して一つ目だとスタートボタンを押した。

息を呑む・・・輝く目・・・呆然と眺める・・・そのままの言葉は目の前に繰り広げられた事に驚く子達を眺める早瀬達もいた。

『レン、あの子は予備軍かも・・・たぶんだがな』
『興味ない?』
『ん・・・友達を観察して同じような気持ちを真似てる気もする・・・』
『一人でした事もないらしい(笑)』

『マジ?』
『理解してなかった・・・一人声にして、恥ずかしくて止めたのは回りだ』
『教えた?』
『聞いてくるまで待ってる。祖母と二人で暮らしてきた・・・今は入院してるから知り合いの所と交替で預かってる』

『 ・・・彼女が集めてるのか(笑)』
『かもな(笑)。妹的な扱いでも平気でヤバかった(笑)』
お前なと笑う深谷が早瀬に笑う・・・トモヤの様子を眺め考えるのだった。

唸り、焦り、それでも見たい衝動・・・少しずつ うつ向くトモヤを静かに離してやった。

『(笑)大丈夫か?』
『病気なの?』
『どー見える?』
『んー・・・皆と同じような気持ちにならない・・・気持ち悪い事って思ってたけど、そうでもなくて・・・
皆みたいに恥ずかしくもなくて・・・』

『へぇって感じか?』
そうだと頷くトモヤだった。
『そこは痛くないのか?』
指をさされた場所を知ると、うつ向いたままに頷くトモヤだった。

『ん・・・興奮するって押さえたカズ君に驚いたけど・・・これはトイレ用だし・・・とくに・・・』
『男なら機能するモノ・・・』
『朝とか・・・ならないよ?嘘ついちゃったけど・・・』

『前のバイトの店長に触られた時は?』
『気持ち悪かった・・・触って・・・興奮してくる店長に驚いたけど・・・だけど慣れちゃうから平気だった。
我慢してたら終わるし、お客さんくるから止まるし・・・』

『んー・・・何かに興奮すると、起き出す事って君には無かった?』
『 ・・・なかった・・・よ・・・』
『皆でトイレした時は?』
『恥ずかしいから同じ場所ではしないよ(笑)。見たら恥ずかしいから・・・』

『(笑)そっか』
『病気?』
『人より遅いだけ(笑)そんな気もする。体の強さとか大きさとか・・・それは関係ないんだ・・・君の心と体の準備が出来たら始まると思う』

『そうなんだ(笑)。良かった』
『女の子としてみたいか?』
『あー考えた事なかった(笑)。タケル君とハルト君は見慣れてたから恥ずかしくないってカズ君に言ってたけど(笑)』

『ん?』
ムッとした物言いにトモヤには驚き、そうかと思い出して口を押さえ話さないと意思表示した。
それでもと小さく呟く。

『驚いて見ないように背を向けたし、直ぐに出てドアを閉めたからジッて見てないってよ?
直ぐにバスタオルで隠れる事が多かったって聞いたし(笑)良かったね』

『 ・・・』
静かな笑いは体を揺さぶり、一人項垂れる早瀬の姿にも驚いたトモヤだった。

『準備が出来て何かを見た時、触った時・・・自分にも起こる事は忘れない事(笑)病気じゃないよ・・・普通の事だから大丈夫だよ』
『どっちでも?』

『トモヤは知ってるのか?』
『店長から聞いたり・・・カズ君に会う前に一緒に遊んでた子から聞いた事はあるよ・・・怖かったけど。
男の子が男の子を好きにもなるし、 ・・・出来るんだって・・・意味は分かんなかったけど、好きになる人もいるって』

『トモヤは?』
『んー男の子も女の子でも考えた事なかったから・・・それに、女の子に触られた事はなかったし』
『大事なんだから、どっちでも触らせんな』
恥ずかしそうに うつ向くトモヤに苦笑いをして頭を撫でた早瀬だった。


深谷が慌て、玄関へ走る・・・明かりが漏れた事で気付いたのだ。
知った同士が笑いながら静かに入ってきた。

『あそこの?』
店からかと笑う人達は眺めながら笑ってみていた。


『うわっ!』
気付いた子が叫ぶ・・・余りにも大勢の大人達に囲まれていた自分達だったから・・・
『何で、そっと見るか分かった気がする・・・』
誰かの呟きに大人達は笑った。

その状態に、あーぁと撫でて からかう・・・密かな内緒話の囁き・・・
『ハルトとタケルは(笑)気を付けろ』
『あー(笑)姉ちゃんな!』
早瀬が笑って呟くと仲間が言ってみた。

『あれは男だ!』
叫んだタケル・・・
『ねーちゃんだし大丈夫だ!』
ハルトがフォローしてタケルは、もう言うなと睨んだ。

『でも初めて見たけど、これより綺麗だぞ?』
思い出したように呟く事に驚いた。
『へぇ』
『おっぱいでかいぞ?』
『このDVDの人は病気だな・・・』

『んー、やり方しか分かんなかった』
『ヤバイけど、もういいや』
『だね・・・』
『 ・・・』
『でかいの(笑)誰?』
『ハヅ・・・キ・・・・』

タケルの言いかけた声を慌て止めたハルト・・・そうだったと頷く二人の視線は早瀬へ向かう・・・当然ながら皆からも集まり・・・押し黙った早瀬・・・

『だから見ても立たないと(笑)』
『綺麗さ一押しのを持って来たんだよな俺・・・』
深谷の囁きに口を引くだけの早瀬達だった。



帰り道・・・刑事四人で子供たちを送りながら話していた。
『だから許可なく触るな』
『(笑)犯罪者になるしな』
『触られたら?』
『続けずに(笑)離れる』

『するならゴムは必須(笑)』
『あーDVDのやつ・・・』
『(笑)勉強も兼ねたから、探した探したー(笑)』
『(笑)使い方は練習しとけ』
『かっ買えないよ・・・』

『そう思って買っといた(笑)。やるから分けろ、いつかの為に一つは残しとけ』
深谷の準備がいいと甲ヶ崎が笑う。

『 ・・・』
『重要なのは、本当に好きな相手にだけだ。好きじゃないなら手も出すな』
分かったと頷く子達に笑む彼らだった。

ハルトに肩をくんで顔を覗き笑う早瀬に、照れた顔で眺め前を向いたハルトに笑み返した。
『子供だから(笑)』
『驚いて反応しなかっただけだろ(笑)、生理現象だしな・・・』

『それでも・・・やっぱり姉ちゃんだから(笑)やだよ』
『カエデは?』
『あー。
ずっとさ・・・思い出して考えたけど(笑)家族だから嫌だ。
好きな子が出来たら考えるよ』

『それが一番だな(笑)』
『タケルとさ(笑)・・・考えたり話してたけど、やっぱり好きな相手がいたらだって(笑)そう思った』
『自分では?してたか?』

『ん・・・恥ずかしくて風呂でね(笑)ネットで見た時は凄く緊張して・・・
だけどさ、ケイタ達きたし・・・それからは見てない(笑)』

『(笑)偉い』
『何か変だよね・・・女もなんのかな・・・』
『あーしたくなる事もある・・・ってか?』
『んーでもやだな・・・』

『性の対象外にしとけよ?』
『なんないよ(笑)。見ても困る対象なんだよね・・・今はないけど』
『どんだけ・・・』

『んー・・・タケルが言った通りだった。
忙しいし時間がないから気にもしない、家族じゃんって風呂に入ってくるし・・・バスタオル一枚で部屋に戻るし・・・
ほんと俺たちは透明人間にされてた・・・・』

『(笑)ラッキーだったのにな』
『他人だったけど家に入った途端に家族って仲間になったから・・・かな。
女の人がする事って思ってもなかったけど・・・それはハヅキだから、アキちゃんだから・・・(笑)それで分かる?』

『(笑)分かる・・・』
『裸族だよね(笑)』
『だな(笑)』
二人の会話に笑う仲間達と楽しいと、隣で笑うタケルの頷く姿も可笑しいとハルトが笑みを浮かべたのだった。



後ろで歩くトモヤが穂隅と話をしていた・・・
『トモヤは?(笑)見たのか?』
『見てない(笑)。男が好きって、やっぱり変なの?』

『んー、そういう人が少ないからマイナスに思われるだけだ。
言われて悲しいから黙る・・・辛くて悲しいから隠れる・・・
女の子が好きな女の子も(笑)居ることは教えとく』

『そっか・・・
ほんとはね、ホモって知ってる・・・婆ちゃんから聞いたんだ・・・
母さんと喧嘩して泣かせたって・・・愚痴を溢してた』
『トモヤの父さんが?』

『みたい・・・。だから捨てられたって・・・子供ごとって・・・
ほんとはね・・・僕も捨てられたんだって・・・婆ちゃんが言った。
そんな親は捨てとけって・・・諦めろってさ・・・』
驚いた穂隅だったが、優しく肩を抱き頭を撫でた・・・

『(笑)ハヅキちゃんがね、ギュッてしてくれる。大丈夫って・・・だからかな、アキちゃんまで(笑)してくれるようになった。寂しいの・・・バレたのかな・・・』

『トモヤ(笑)。ほっとけ・・・妹のかわりに皆を抱く。ハヅキも寂しくて抱く・・・代わりに抱き付いとけ』
『レン兄はいいの?』

『頻繁にはするな(笑)俺が寂しい』
『(笑)分かった』
ホッとして呟いたトモヤが笑み、皆が歩く輪へ走り 交ざって歩く姿を眺めた早瀬達だった。


『調べた?』
『商店街の人に聞いてたって(笑)俺は又聞き。だからハルトよりも見てる・・・今はトモヤの自信をどうつけるかアキと考え中(笑)』

『(笑)お前は頑張れ』
『してるしてる(笑)』
『おっきいのか・・・(笑)見た目は』
違うなと呟きながら考える穂隅。
『(笑)想像は止めろよ』
言葉を止めた早瀬に、フッと笑うのだった。



走り込むように帰ってきたトモヤ・・・そのままバスルームへ駆け込んで行った事に驚くハヅキだった・・・
玄関を眺め追い掛けられた感じでもなかった事で閉じたドアを眺めた。

誰もいない部屋・・・だからか悲しく聞こえるようなシャワーの音で想像も容易かった。

ハヅキが入り込む・・・それさえ気づかずに流れたシャワーの下で項垂れるトモヤを抱き締めた。

『何があった?』
怯えた震え・・・声は小さく・・・泣き声は耐えるような様子にハヅキが聞いた。

『触られて・・・今までは平気だったし、何も起きなかったのに。
だけどね・・・別の子が触った時に驚いたから離れたんだけど・・・』
『反応して驚いた?』

『ビックリした・・・変な感じで・・・怖くて・・・ギュッって自分じゃなくなる感じで・・・痛くて・・・怖くて・・・
皆が心配するから恥ずかしくてトイレに籠ったんだけどね・・・』

『ん・・・』
『見たら驚いちゃって・・・だけど初めてだったから・・・』
『触ってみた?』
『ん・・・戻んなくて・・・怖くて・・・変な気持ちになるし・・・痛い気もするし・・・熱くなって・・・病気だった僕・・・』
『誰が触った?』

『お店の女の子・・・でも女の子の手とと違うんだって教えるのに実験台って男の子がね・・・平気だからいいよって言っちゃった・・・』
『直接?』
首をふるトモヤの呼吸が少しずつ変わり始めた。

『それから?』
『遊びに来た男の子が、こーするって触って・・・でもパンツの中で始めたから驚いた。

それでも 全部は見えないようには、してくれてたけど・・・お腹が変で・・・急に笑いだして・・・反応いいなって・・・やだった・・・から・・・手を叩いて・・・離れたんだけど・・・』
『今は?』

『手・・・の感触・・・を思い出すと・・・』
震えだし自分で押さえて項垂れるトモヤ・・・泣きながら押さえこみ、辛そうな顔つきに驚いた。

『我慢出来そう?』
『・・・何で?』
『正しい方法があるんだって・・・内緒にするから来て貰って教えて貰お』
『だけど』
『ん・・・怖いよね・・・』
『ん・・・』

反応するのか腰を引き、ギュッと押さえるトモヤを優しく撫でた。
縁へ座らせ待たせ出て行った。
静かに始まる微かな唸り・・・か弱い泣き声も小さく響く・・・


暫くすると早瀬が仕事を抜けだし誰かとやって来た事に驚いた・・・
悲し気な笑み・・・携帯を繋げたまま話を聞いて来たからか、その人が静かに入っていった。

『ごめん・・・』
『大丈夫だ(笑)ちょうど外にいたから』
『私がしても良かったけど・・・抵抗があったら・・・後から不味いかなって思って・・・』

『知ってた?』
『知らないけど(笑)・・・出せばいいんでしょ?』
『 ・・・』
『想像でよ・・・』
『(笑)真っ赤だぞ?』
『それとコレは違うでしょ(笑)』

まーなと抱き寄せた早瀬・・・参ったと項垂れるハヅキに笑み、バスルームへ視線を向けた。

『あー(笑)音楽とか流せるか?』
『気づかないふりか(笑)』
そういうと、部屋の端にあったラジオのスイッチを流しボリュームを上げたのだった。

『誰も居なくて助かった・・・』
『俺もだ(笑)、ヤツがいて助かった・・・』
『 ・・・』
『友達たくさん(笑)』
確かにと笑う早瀬は入り口から離れたのだった。

着替えを準備して待っていると苦笑いをしながら出てきた二人を眺めた。

『話はしたし教えたから(笑)』
了解と笑み返すとトモヤが泣きそうにハヅキを見ていた事に驚いた・・・

本当に小さな子供のように泣くトモヤ・・・口を引く・・・分かったのか静かにハヅキへ歩き出した。
もう一枚のバスタオルでくるむと優しくトモヤを抱き締めたハヅキがいた。

『驚いたぁ・・・』
『 ・・・(笑)』
『ハヅキちゃんがしてよー』
『 ・・・』
驚いた・・・続いた言葉に驚き過ぎて視線を彼らへ向けたが・・・呆れた早瀬と笑った顔の穂隅が見返していた。

『ダメだけどぉ・・・ダメなんだけどぉ・・・』
『それは女の手が欲しいと言いたいわけ?』
『 ・・・』
『レン・・・とか?』
『やだぁ・・・恥ずかしいよぉ・・・』

『だから自分でするんじゃん・・・
それより、反応したなら誰かに触って貰うのも禁止!』
『またなったら?』
『 ・・・こっ困るね、早々なるもんなの?』
『あ、女の子だもんね・・・』

『取り合えず勉強会して貰う?』
『誰に?でも、一緒にしてくれる?』
『 ・・・』『 ・・・』
『さっき、して貰ったじゃん?』
『恥ずかしいよぉ・・・』

『確かに(笑)だいたいは出来るけど、私は男じゃないから・・・それに関して(笑)無理な事もあるの』
『 ・・・しゃ』
『女はしない(笑)
何でじゃなくて、理由も知らないけど女は出ない』

『 ・・・』
『知ってる男同士で体験したら?』
『父さんとかに』
『だね(笑)でも婆しかいない・・・
新たに見せるより方法を教えて貰って、自分でしたなら格好いいと思うけど?』
『 ・・・』

『その葛藤は止めて(笑)。
泣きながら聞くから覚えてないのよ・・・時間を貰うから(笑)ちゃんと教えて貰いな』
『分かった(笑)一緒に習お』

『ひっ必要ないから私抜きで頼む。出来たら褒美をあげる(笑)』
『んー(笑)』
『覚えたら考えて(笑)』
分かったと頷くトモヤが照れながら礼をすると、服を貰いその場で着替えを始めた事に呆れ項垂れた。

『トモヤ・・・』
『ん?』
『小さな子が増えたからリビングで着替えはしない約束は?
これは恥ずかしい事って理由として覚えてなかった?』

『 ・・・いつも(笑)居なくて忘れてた』
アハハと笑う二人に呆れ戻ると彼らは帰っていった。


『すっきり?』
『怖かった・・・またなるのが怖い』
『大人になったのね(笑)』
そうかとホッとした顔のトモヤは勉強だとテーブルへノートを出して行く・・・トモヤの時間だと眺めるハヅキもいたのだった。


かごのとり 35

2018-09-25 08:01:49 | かごのとり

驚き過ぎて声も出ず動けなかった・・・店の住所を聞いて、内緒で出向いたのだが、本当にココかと入るに入れない気もして迷っていた。

名前だけの相手・・・この人かと眺めれば男勝りと思えた言動だった。
何より子供にも見える子達の多さに驚くしかなかった。

子供を眺める姿で、どんな関係なのかと気になり促された店内へ入れず可哀想な子供なのかと見守った。

以外にも顔見知りで、子供の言動は彼女を慕っていた口調・・・何より名前が違い、見に来た人は店内にいる人と知り驚いた。

二人が出逢ったから増えた子供も一緒に育てていると聞いた。
大人になるまで・・・そう言った息子に驚いた。


目の前で自分の自立を目指している子と助けている人・・・苦しめる親・・・事の終わりは警察の人が言った。
もっと驚いたのは、同じように子を助けている人達の中にいた事・・・

-血の繋がりは関係ない-

息子の言葉が響いた・・・・

-自分が愛した人と居たいだけ-

-許可が欲しい訳じゃない、彼女の人となりを教えに来ただけだよ。
間違った噂を信じて彼女を見て欲しくない。見るなら・・・今の彼女だけを見て欲しいから来たんだ-

どれだけ騙されたのだろうと出向いた・・・我が子でもない他人が人を育てる事は有り得ないと確認しに来たのだ。

-親が全てじゃない・・・子供の成長を邪魔してる人もいる、そういう子達を育てる(笑)そんな言葉で片付けて楽しんでるんだ-

そうも言った・・・優しい笑みで・・・

大事な自分の子を守りたくて来た・・・そんな親は居ないと教えたくて。
慈しむ穏やかな目・・・優しい笑み・・・見ていた息子が愛した人は本当に人をと噂話を思い出した。

暴力・・・それは言葉でも・・・殺されそうな時に逃げた弾み・・・身内から出ない声は彼女をもっと傷付けたと言った息子の目は本当に悲し気で辛そうだった。
それでもいいと彼女を説得した息子・・・だから会えたとも言い切った。

切り盛りする姿は、飲み屋という低い位置で見られがちだ。
今、見ている店は定食屋・・・夜に開く店なだけに思えた・・・細かい気遣い・・・見ているだけで分かる。

常連という年配の人へ声をかける姿は、言葉は乱暴でも敬う気心はあるのだと気付く。

さっきまで怒られていた子達は食べさせられ、階段で何処かへ行ったようだった。

『食べに(笑)行かないか?』
後ろから聞こえた息子の声にバレたと苦笑いした。
『どうだった?彼女が誰か知れた?』
『 ・・・』

『(笑)近所の人達の栄養管理をしてる気がするよ・・・
キャップを被る人はハヅキという彼女と話せて元気を貰ってる(笑)
あのテーブルは飲み仲間らしいよ』

笑みながら色んな説明をする息子の笑みに可笑しくて、それでも あの中へ交ざれた楽しさを味わっている気がした。

『行こう(笑)呼ばれてるし』
『ん?見つかった?』
『んー右端のテーブルで笑ってる人・・・』
『あの人は警察の人よ?さっき手帳を見せてたわ』
『彼女の親友の彼氏だよ(笑)』
『 ・・・』

『そ(笑)ハヅキという彼女さ・・・逃げまくってた彼女を捕まえて話し込んで(笑)頼みまくって・・・』
『(笑)捕まえたわけだ・・・』

『最初からね(笑)彼女だけを見て考えてた・・・誰に何を言われても動じない人になった。俺と同じ・・・(笑)彼女と居たいから・・・それだけだ』

『また今度にするわ(笑)子供が起きてる時間に。それでいい?』
『なんで?』
『子供をみれば分かる・・・』
『引き取ってから一年も母親はしてないよ?』
『 ・・・』

『 ・・・育てて来てない・・・母親にさせてくれる子供たちと楽しく暮らしてるだけだ・・・』
『産んだでしょ?』
『理由は子供たちに言ってない・・・幸せな場所だったと思ったからと伝えたそうだ。
でも探せた時に施設に居たと・・・もう少し大きくなったら言うそうだ・・・』

『貴方はそれでいいの?』
『(笑)彼女と居たいだけだ・・・子供の本当の親になれるわけない・・・
でも・・・(笑)彼女の子だから、ヤバいなら3人を連れ出して俺は逃げる・・・(笑)それで泣かずにすむならね』

『ずっと幸せと言える?』
『(笑)絶対はない・・・幸せになる努力はするよ。
子供達なら、彼女が笑ってるなら隣に居ていいと(笑)許可は貰ってる』

『貴方を・・・何て・・・』
『ナオ兄(笑)・・・大人の兄貴から始まった・・・(笑)今はパパと呼ぶべきかと二人で相談してる(笑)、使い分けも楽しいと声にもしてる・・・』

『弟って子は?』
『奥のキッチンで料理を出してるよ(笑)。今、酔っ払いを出してるのが親友のハヅキさん・・・』
『呼び捨てされてたわよ? 親代わりじゃなかった?』

『ハルトかな(笑)。早瀬・・・ハヅキさんの彼氏(笑)彼から聞いたけど・・・』

色んな話をする息子に苦笑いをした・・・本当の家族以上に知る間柄・・・皆で一緒に過ごす事だけで楽しいのだと、そんな大事な場所と表現出来る息子の言葉が優しく聞こえた。


飲んでいた早瀬のテーブルに座ると、何も言わずにグラスを出され飲めと促された。
小さな笑みを浮かべた杉原は静かに口へ運んだ。

『内緒で見に来るって、(笑)親だからか?』
『 ・・・』
『(笑)ウチはイベントがあった日に来たらしい・・・客が多くて近くで見れず声もかけられず帰ったらしいが』

『そのあとは・・・』
『さぁ(笑)』
『なんか言われた?』
『(笑)電話は放ってる』
『 ・・・』

『知りたい事を文字に(笑)。そう言ったから来たメールは答えて返してる』
『何で直接声で話さない?分かって貰えないだろ』

『散々言ったさ(笑)。
俺の場合、友人からも 回りから素早く噂で聞いた話が持ち込まれた。

上司は知り合いだったから口外はしない約束で話したそうだ・・・それでも遅かった・・・親が知る警察関係の人から聞いてた・・・(笑)想像して盛った話が出来上がってた。
(笑)説明は遅すぎて・・・言われ過ぎて洗脳されそうになった・・・』

『だから聞かない(笑)』
そうだと頷く早瀬に、確かになと口を引く杉原だった。
『どこから漏れるんだろうな・・・』
『(笑)当事者が呟きますからね・・・噂から恐らくの話が真実味を帯びて・・・(笑)ですかね』

『 ・・・(笑)難しいな』
頷くだけの笑み・・・食べろと皿を出されて行く事に可笑しくて、それでも笑みながら食べる二人だった。

『仕事(笑)、先へ進めそうでした?』
『(笑)営業担当が頑張ってる・・・
集められるが(笑)その先が本職じゃないからね・・・色んなルールが存在する場所から外れると待ったされるし・・・』

『そういえばネット販売とか』
『そこは少しずつ(笑)。そっちが本職になりそうで・・・』
『鮮度から何から(笑)生き物は大変というのは本当だな・・・』
今度は杉原が頷きながら笑み返す・・・

『頑張らないと・・・』
『頑張るしか・・・』
二人の重なりは同じと笑う二人だった。



申し訳なさげなアキに苦笑いしたハヅキ・・・同じ想像は正解だったから声をかける事は止めていた。

杉原と道端で様子を見ていた女性と一緒にいた事に気付いた・・・
ハヅキが気付いたが、杉原に気づくタケルの呟きでアキも知った。

ハヅキが仕方ないと、通りで見たと声にする・・・行くべきか悩んでいる間に杉原一人が戻ってきた。
二人で飲んでいる姿を観察し大丈夫だったか見ていたが・・・

『まだ(笑)アキに話を持ってきてない・・・その時に考えたら?』
そう囁かれ頷くだけしか出来なかった。


雑魚寝状態の子達を眺め、その穏やかな寝顔に微笑んだ。
皆で手当てをしたのか、出された救急箱を見てカズキを眺めた。

それぞれに貼られた絆創膏に笑う。
『トモヤはさぁ・・・本当にマリナの所で大丈夫と思う?』
突然話し出したアキに苦笑いをしたハヅキ・・・

『男から狙われない場所でもあるけどね・・・女から来たら、この子はどうでるやら』
『ん?その子・・・』
『新規で出来た店に頼んで働かせて貰ってたんだけど、店長に狙われてたらしくて・・・』

『 ・・・』
『触られてたって・・・
それでもバイトしに行けたなら・・・多少は平気で・・・もしかしてって・・・』
『恋愛対象は男?』
『んー・・・本音は聞いてない』

『質は似てる・・・それでも恥ずかしさは少ないし』
『子供の域から出てないから』
だよなと早瀬が頷く・・・

『ガールズカフェをしてるから、日中の時間帯でバイトを頼むか考え中ではあるけど・・・』
『夜は怖いしな・・・あー歳でムリか』
そうだと頷くアキもいた。

『友達にさ・・・居るんだ・・・見て貰うか?』
遠慮がちに声にした杉原を皆で見たが、どうだと笑みトモヤを眺める杉原だった。

『そいつは昔からで(笑)早々に謝りながらアウトした・・・自分を知りたくてバーとか(笑)集まる場所とかに行って確認してた』
『確信できた?』

『楽になったとは聞いてる・・・病気かと一人で悩んでて・・・変だって理由を考えてた。
(笑)好きだけど、友人関係が崩れるって黙って一緒に遊んでた。

好きな人に恋人が出来て・・・初めて聞いた・・・泣きながら また謝って・・・そいつに言うなと黙れと泣いてた・・・』

『嫌悪感は?』
『親友(笑)それが真っ先に頭に過った・・・失恋した事は知るが、自分じゃないと今でも思ってる。

ま・・・対象が自分じゃなかったからかもしれないがな・・・今はバーで働いてるし(笑)彼氏もいる・・・』

『男・・・』
『だ(笑)。普通のサラリーマンだった・・・』
『トモヤは恋愛してないよな・・・』
『弱くて誰かにすがりたい一心で友達と一緒に遊んでる・・・
寂しくて構って欲しくて・・・だから人を思う優しさはあっても恋愛に変わる事はなかったはず・・・それが女の子でも』

『想像?』
『んー。マサヒロのお母さんから少し(笑)。ついでとトモヤまで食べさせてたって聞いた』
『(笑)マサヒロは何で逃げる?』

『ねー(笑)。自信が持てない事は全部拒否したくて、逃げるが勝ちって飛び出すらしいわ。
昔、苛められてたから巻き込まれる前に逃げて帰って来る事を教えてからみたい・・・』

『それで自分を守ってるのよね・・・安心する場所探しをしてるようにみえるし・・・』
『ハヅキもだが・・・アキは何で気づく? 言った言葉で確認してみれば本当にそうだった事が多い・・・それは人に対してもだ・・・今は慣れたが(笑)驚きの方が多かった』

『んー』『なんだろ・・・』
何でだと自分に問うが、深く考えてもいないそぶりは分かり彼らが気付けば笑うだけだった。

『観察が上手いと(笑)』
『そう(笑)思っとく』
二人の呟きに微笑む彼女達だった。



トモヤを行かせてみれば、仕事が楽しいと弾む声は多く、暫くは様子見と家へ戻った時間は勉強に付き合うアキだった。

中学の復習から始めてみれば、行けないだけと分かり笑うアキは次へと進ませた。
それはカズキやマサヒロまでが加わり、誰かしらリビングで勉強している姿を見れた事にホッとした。

教材は使い回し、商店街の人達の協力も貰い譲って貰ったモノで続けるトモヤだった。


半年も過ぎた頃から別の勉強という話題は始まった。
アキ達が戻れば押し黙る・・・それはタケルやハルトまでが加わり理由に気付いた。

今さら思春期かと可笑しくて・・・それでも可愛いくて放った。

仕事あがりに同僚と飲み、戻った早瀬が苦笑いをして固まる集団に声にした。

『ここは小学生が居る(笑)。まかり間違って気分で女を襲うな。
一人は風呂ですませろ・・・』
『どうやって?』
誰の呟きだと声の主を探す早瀬・・・トモヤだと思え笑いだした自分に視線が集まった。

口を塞がれ話すなと言う意思表示・・・驚いた顔・・・恥ずかしそうな顔・・・学生の頃に体験するはずの話は二十歳という近さで始まっていた事に驚いた。

本当に間違えば犯罪の域で捕まる・・・その歳でと好奇の目が集まる。

『 ・・・小遣いを出しあって雑誌を見たり(笑)DVDを借りて、どっかで見てきたらどうだ?』
『そんな場所・・・』
『あー(笑)ねーか・・・』
『 ・・・』
好奇心丸出しの輝く目は数多く、苦笑いの早瀬だった。

『俺ん家?』
『あったの?』
逆に驚かれる事にまで可笑しくて笑いは止まらない早瀬もいたのだった。



かごのとり 34

2018-09-22 09:07:25 | かごのとり

久しぶりに緩やかに流れていく店内・・・混みは解消され静かな雰囲気に可笑しくて、先に食べろとタケルを休ませたアキだった。

子供たちも促して皆で嬉しそうに、楽しそうに食べる姿に笑みながら眺めるアキに口を引いたハヅキがいた。

こんな日もいいと、緩やかに出来る接客は一人で十分と笑うハヅキ・・・
そこへふらつきながら陽気にやって来た子達に呆れ眺めた。

『カズキ?あれは酔ってる?』
思わず呟くハルト・・・何でと眺めるタケルは静かにハヅキを眺めた。
既に準備は万端のようで腕をくみ仁王立ちして睨んでいた。

歩き出す・・・アキは客へ謝りながら回り煩くなると声をかけていった。

『それ・・・・未成年を引き連れて王様気分を味わってる?』
『(笑)なわけねーよ・・・ちょーっと、一緒に遊んで飲んできただけだ』
『その顔は?』
後ろに居た子達が押し黙りうつ向いた。

傷だらけの状態で喧嘩をしてきた事は見てとれた・・・歩いて来た事で大丈夫そうではあったとホッとしたハヅキは一番年上のカズキを観察し始めた。

店へ来た客は、この状態は知るので避けて敷地へ入っていく。
端に寄せてカズキ達を眺めた。

様子を伺う人達・・・店に来たようにも思えたが、何だと子供をどうするのかと心配しているのだろう視線を外しカズキ達を眺めた。

『学校は?』
『ムリだとさ(笑)、やってらんねーよ。暴れたら追い出されたさ・・・信じてくんねーのよ』
『そう簡単に信じるわけない・・・それを我慢して自分の為に頑張る場所と決めたんじゃないの?』

『我慢・・・(笑)。そりゃ最初はしたよ・・・それでも』
『散々暴れてきたんだから、大丈夫だと信じる時間は必要だと教えたけど?』
『 ・・・してくんねーよ!』

『それでも我慢と言ったわ・・・近い人達なら尚更と・・・知らない人達の声も交ざると・・・
それでも頑張ると言ったのは誰?』
『俺だけどさ・・・どんだけ我慢すればい?自分の為にやってる事を全部否定されたら・・・』

『学校が?』
『親・・・』
違うと後ろに居た子が呟いた。

『真面目に受けないから まともに出来ないってさ・・・何が我慢ってさ』
『我慢したわよね?』
『 ・・・』

『同じ学校のヤツが、親と一緒に』
『我慢できた?』
『 ・・・』
『聞き流せって言葉は思い出せなかった?』
『無理だった・・・』

『親を殴ったら・・・小突かれて殴られて・・・』
『罵倒されても我慢?』
泣きながら呟く子を見返した。

『ホッとけと言ったわ。皆がしてきた代償って・・・繰り返す事になるから我慢して聞き流せって・・・』
『子供だぞ!』

『意味を理解したなら・・・都合よく子供になるな・・・
暴れていい子供は小学生まで・・・ましてカズキはもうすぐ大人と呼ばれる年になる・・・

自分を理解して欲しいなら、遣りきってから声で返しなさい・・・
ふざけた大人でも、理解は出来るはずだから』

『親はさぁ・・・』
『お金を出して学校に行かせてる大人だから、子供に威張るのも我慢はしなきゃね。
切り離せるわけない・・・』

『邪魔だ、顔もみたくないとか言っといて・・・学校にまで来るんだぞ?
余計な事まで言ってくんだぞ?』
『信じたいからよ・・・気長に待てなかったからかも・・・
カズキがしてきた事・・・その姿が消えないから確認したくて行ったかも』

『今日もさ・・・殴りに来たぞ・・・ここで話すって呼び出された』
『ん?その傷?』
『これは違う・・・カズキの親にボコられたから動けなくて、学校のヤツが今ならって・・・奴らが殴りかかってきて』

『言葉を変えなさい・・・まずは言葉を丁寧に・・・』
『見方が変わるって思えないよ・・・』
『暴れるからじゃん・・・加わったからでしょ?
自分の目的から外れないって言ったわよ?』

『 ・・・』
『これ以上休んだらクビよ?』
『辞めたよ・・・』
『書き間違えたって休学扱いにしてある・・・カズキがしたい仕事は卒業証書が必要だから行けと言ったわ。
行ってからも勉強は続くと知ったわよね・・・出して貰える未成年の内にとも』

『離してくれよ・・・気が狂って・・・間違いを起こす前に助けてよ・・・』
目が回ると地面へ腰を落としたカズキに寄り添うように泣く子に苦笑いをした、諦めたように項垂れる子達まで座り込んだ。


『お前!』
何処かで叫ぶ声・・・怒りは声からも分かり深いため息をするハヅキは店内を眺めた。
その間も激しい足音は怒りを現しているように感じた。

『ハヅキ(笑)。どっちが大事?』
『ごめん』
『貴女は子供(笑)。私の今は店にしとくから守りな!』
『サンキュ(笑)』
店と外のやり取りに、タケルが苦笑いをしてケイタ達をハルトへ預けて離した。

素早く下りてきたハルトはタケルと店先に待機するように待った。

現れた人は誰かと分かる・・・泣きながら後ろを歩く女性・・・引き止めるつもりもないようだった。

自分の子から友達を引き剥がしていく手を止めたのはハヅキだった。
それを振り払い息子の胸ぐらを掴み叩きながら睨み付けていた。
ハルト達は転がされた子達を起こし少し離してやった。

『あのあと喧嘩したそうだな・・・どれだけ迷惑かけてる?
どれだけ親に恥をかかせる?』

そう言った途端にまた殴り倒された・・・ムカついたカズキが、殴りかけようとしていたが・・・ハヅキに気づき 振り上げた手を静かに下ろした。

余計にムカついたのか父親の拳が振り上がる・・・下ろせなかった手を捕まれ驚いた父親はハヅキを睨んだ。

『任せろと言ってこれか?』
『 ・・・』
『まともになってねーだろ!』
『 ・・・子供を殴り殺す気でしたか?』
『真っ当にする為だろ。分かんねーから正してんだろ』

『小さな頃から?』
『しねーと分かんねーからな・・・分かるまでブッ飛ばすさ』
『それは間違いと気づいてませんか?』
『バカだから分かってねーんだよ!』

『子供は痛いだけです』
『だから、ふざけた事はしなくなるだろ!』
『小さな頃からなら、無意味と気付けませんでしたか?』
『あ?』
ムッとした父親はハヅキの手を振りほどいた・・・

『学校に、なぜ邪魔をしに行くんです?いちいち殴ってるのは気晴らしでした?』
『なに?』
今度はハヅキに拳が振りかぶり危ないと叫ぶ人の声で驚いた父親・・・スッと避けたハヅキにホッとし、ざわつきだした。

『子供を痛めて直せるなら、とっくに暴れる事なく学校へ通ってたはず・・・同じ暴力で誰かを傷付けずにすみました』
『 ・・・』

『お母さん・・・泣くだけの母親も、カズキには理解できません』
『馬鹿だから・・・』
『馬鹿にしたのはお二人です・・・見たくないなら下さい』

『私の子よ!』
『産んだのは!ですよね。 守って貰えない苦しさは必要ありません』
『 ・・・』
『いい気になるなよ?』
『 ・・・』

『(笑)金を取りてーのか?』
『取った事もありませんけど?』
『自分の子だぞ?まともにしたくてブッ飛ばして直してんだぞ?』
『子供を壊してますけど?』
『んぁ?』

『学校で子供を殴ったら、カズキの居場所は無くなります。
他人の前で子を戒めたら、カズキは自分が誰かを見失います。
色んな捌け口をカズキへ向けないで下さい』

『お前・・・聞いたぞ?入ったんだよな』
『確かに。今は出直して生きてますが?』
『妹って家族ごとだろ?そんなヤツがカズキを教育出来んのか?』

『カズキのやる気しだいです。子供なりに先へ考え始めましたから。
大丈夫と黙って見守りませんか?』
『バラすぞ?』

『その』
『その脅し・・・。脅迫と捉えて逮捕しますよ・・・』
『てめえは誰だ!』
『こういう者です!』
ハヅキの声に被せるように怒りを抑えて会話を切ったのは早瀬だった。
押し黙る父親・・・余計に怯えた母親だった・・・

『素行不良なら相談窓口を教えます。この子は一度、補導し時々様子を確認していると同僚から聞いてます。
保護者責任は、前に外れたはずですが・・・違いましたかね・・・
確か父親という声の方から聞いたのですが・・・』

『そうだが・・・学校に様子を見に行っただけだ』
『 ・・・暴力をふるったと聞きました、聴取をと聞いてます。連絡が行くようなので警察へ出向いて下さいね。
今は私が預かります、今後の事は話し合い連絡を保護者の方へするようにしますが・・・いかがです?今日はこれで・・・』

『帰っていいか?』
『構いません』
『俺を捨てろ!』
カズキの叫びは一瞬で辺りまで静まった・・・泣きながら、自分の両親を睨みつけていた子供の姿に 回りの大人達は驚いた。

『保護者ってヤツは拒否したい・・・全部を捨ててくれ・・・もう沢山だ』
父親へ叫ぶ声だった・・・
『カズキ!』
駄目だと泣き叫ぶ母親・・・父親はといえば、視線が自分へ集まる恥ずかしさで顔を赤らめていた・・・

『頼むよ・・・』
力なく膝まつくカズキの襟首を掴み無理やり立たせたハヅキに驚きカズキは見上げた。

『親だから・・・』
彼女の言葉を理解したのか、泣きながらうつ向くカズキに口を引いたハヅキは両親にと頭を下げさせた。

『親の働いたお金で育った・・・着てる服も買い揃えてくれてた・・・それに感謝は必要』
『あんな!』
『親でも・・・
同じようにならない努力・・・我慢・・・どんな事にも挨拶は必要・・・その場の言葉がある理由でもある』

『 ・・・お世話になりました。自分で働いて稼いだら自分で学校に行きます。
先を決めたら・・・最後に言いに行きます。ありがとうございました・・・』

ギュッと握り締めた手・・・言いたくないと我慢した声・・・
何も言えなくなった両親が佇むが、これ以上はと早瀬が帰るように促した。

何度も謝るように呟くカズキに、悲しくて一緒に泣くトモヤだった。

『ごめんね・・・父さんが・・・』
『(笑)過ちは戻せないと分かった?』
『ハヅキちゃんは無実だったじゃん』

『それでも行った事実は消せないから言われたわ・・・これが現実よ。
なら言い返せる大人になればいいだけ・・・本当の理由を知ってくれてる人達を増やせばいいだけ(笑)

我慢出来ずに暴れたらゼロに戻る・・・振り出しに戻るのよ?何もしてない頃じゃない・・・始めた頃の・・・嫌な場所に戻るの。

せっかく努力してきた道が崩れて歩けなくなるのよ?
(笑)まだ子供・・・大人になれたら消えてるはずと前に進みな。

それから(笑)トモヤは誰かれ構わずにまとわりつくな。自分の自立は?
マサヒロは?カズキに構ってる暇はないんじゃないの?』

『分かるけどぉ・・・』
呟きながら泣くトモヤ・・・すまなそうに項垂れるマサヒロに呆れながらハヅキは眺めた。

『こんな噂は言い返せる大人になりなさい(笑)』
『でき』
『やるのよ・・・今だから直せる歳に皆はいるの。助けが入る場所はラッキーだと頑張りな』

泣き止まないトモヤに笑いながら肩を組んで泣くなと声をかけるタケル。
頑張れとカズキとマサヒロの間に入り肩を組むハルトは店に入ろうと促した。

『あーやらかした』
子供達の後ろ姿を眺めながら呟いた。
『2度目だしな(笑)構わねーよ』
『1度目の俺が大丈夫だったし(笑)カズキも平気だぞ!ハヅキがいたから(笑)少し大人になれました』

『(笑)なったの?』
『あー親父が言ったし(笑)』
『偉い(笑)報告出来たんだな』
早瀬はハルトに微笑んだ。
『レン兄が(笑)言い方を教えてくれたから、母親が居ても苦痛じゃなかったし我慢出来た(笑)サンキュ!』

早瀬へ笑みながら呟くハルトに笑うのだった・・・店内を眺める・・・謝りながら礼だと一皿ずつ配るアキもいた。

『アキさーん(笑)連絡ありがと。馬鹿息子を受け取りに来たわ!』
『うわぁー』
叫び逃げるマサヒロに笑う皆がいた。

『カズキ君(笑)離さずに連れてきてくれて、ありがとね(笑)』
『いえ・・・』
マサヒロの母親が言った言葉に照れたカズキ・・・誉められたカズキに笑みながらアキとハヅキはカズキを挟んで抱き締めた。

偉いとキスをした二人に身を固めたカズキ・・・笑う彼女達の姿があった。

『トモー!(笑)』
『ひっ一人だし!』
『婆ちゃんが心配してる!』
『面会終ってるよ』
『あー、明日行こ(笑)。それよりバイトは?何で行かない?』

『店長が怖いー・・・触るし・・・嫌になっちゃってぇ・・・』
『ん?』
小さな囁きに驚いたのは、トモヤの呟く声が聞こえたアキとハヅキだった。

敷地から出て3人で話す・・・
『いつからよ』
『何でよ』
『なんで言わなかった?』
『触るってどこよ・・・』

『ハヅキちゃん次々と聞かないでよぉ』
『ごめん。婆ちゃんの所には会いに行ってる?』
『い・・・』
『行ってないじゃん嘘つくな、昨日行った門屋のおばさんから聞いてるよ?』

『ごめんなさい』
『トモヤ・・・本当にしたい事は何?』
『んー・・・お金ないし学校もね』
『だからバイトするのよ』
『勉強ね、教えるって言ったでしょ?』

『お仕事して、小さい子を見てて俺までって・・・アキちゃん休めないじゃん』
『ちょっと(笑)誰かを忘れてない?』
『ハヅキちゃんはカズ君を捕まえてるしー・・・』

『一人も二人も一緒って聞いてるでしょ?(笑)近くで勉強してくれるならって話だったわよ?』
『それより触るのは男だけ?なんで拒否しないの?』
『捕まったら力ないから逃げれないよ・・・我慢したら終わるし』

『あーマジか』
『現行犯?』
『いーや(笑)。このまま辞めとくべきかもね。後で脅されたら脅す事にしよ。それよりさ・・・鍛える方が先だな・・・』

『こっ怖い場所は無理だよ?』
自分の事だと焦るトモヤが声にした。
『てっとり早いからねー』
『無理だよ・・・婆ちゃんの病院代を先に何とかしなきゃ・・・』

『そこはねぇ商店街の会長が考えてたから心配ない(笑)。婆に買う土産代は稼げる場所か・・・』
だよねと考える二人を見上げる心配そうな顔・・・心細い子犬の潤んだ目のようで呆れたハヅキが腕に抱きながら考えるのだった。

『あ、マリナの所は?』
『大丈夫かなぁ・・・』
『(笑)聞いてみるね』
頼んだと笑うハヅキに何だと眺めたトモヤ・・・何かを考えながら自分を見ている事に驚いた。

『あー家が狭い(笑)』
『裏手は確保したけど(笑)建物に手は出せないのよね』
『あー(笑)頑張ろ』
だなと笑う二人は仕事だとトモヤに笑いながらも店へ戻るのだった。