tamiのブログ

このブログ・・・妄想ー空想大好きな私が、勝手に楽しんで・・・勝手に文字にしています。ボロボロですが(笑)

アンリッシュ 21

2019-03-29 14:53:10 | アンリッシュ

眠り続ける蒼の手に触れ彼を眺めるだけの日々になった。
ようやく病室へ運ばれ、今は隣に颯も寝ていた・・・そのベッドに凭れ茉尋が笑みながら眠っていた。


そっと息を吐く陽葵が呟く。
『私ね・・・頑張ってくる・・・
だからね・・・その間に頑張って治してくれない?・・・・待ってるから。

変に怖くなるの・・・嫌だから・・・だから動ける今の自分を利用して探してくる。

蒼が教えてくれたから出来るよ・・・ダートンから出る準備と・・・両親と弟に会って顔を覚えてくる・・・だからね・・・・大丈夫って・・・言って・・・』

静かに呟いた彼女は彼の手を包み自分に押しあて祈るように目を閉じた。
それから蒼へキスを落とした陽葵は静かに病室を出たのだった。


柔らかな話し声に目覚めた颯が眺めた・・・陽葵の声に耳をすませる。
静かな室内に優しく響く声・・・それは祈りのように柔らかで・・・決めた思いは強く聞こえた。

-大丈夫と言って-
その声は誓いのようで・・・本当に蒼が声にしたような、そんな不思議さがあった。

大丈夫と祈る・・・自分で初めて決めた思いは実れと祈った。




『持ってきたよー(笑)』
茉尋が笑みながらやって来た・・・ベッドを直せと笑いながら指を指した。

『織田(笑)頼んだわ』
『(笑)うっす!』
後ろから来た織田が笑みながらボタンを回し颯を起こした。

『織田、収まったか?』
『はい(笑)。カナンの上とダーナルの真ん中が喧嘩中。それでも飛び火は無くて助かりました』
『それは柚侑がしてる?』

『(笑)いえ。1つ上の兄貴・・・巧さんがしてました。レミさんの見張り付きで(笑)』
『柚侑が(笑)操ってんじゃん』
『そーとも(笑)言いましたね』
笑う颯と織田に笑みながら蒼が視線を寄越した・・・

『リハビリおせーぞ(笑)』
『確実に治したいからだ(笑)。次いでに鍛えて出ようと思った』
『探せたか?』

『時々、スッと病院を変えてる(笑)。その度に怒りながら出向いてた・・・』
『今は?何処で暮らしてる?』
『 ・・・(笑)』
『蒼兄貴・・・元の場所でした』

『ん?屋敷の部屋じゃなくて?』
『(笑)楽しそうに歌ってましたけどね』
様子を見たのだろう月島の呟きに、驚きながら蒼をも眺めた。

苦笑いした顔・・・呆れた顔をした大多で、自ら選んだのだろうと気付いた。

『鍵はねーよな(笑)』
『無いです。出る時は病院で警護してた人達がついて出てました(笑)』
『それでも味方って気もしないんですよね』

『ん?一花は?』
『笑わず話さずです。病室へ行って会った後の表情はありましたけどね・・・それ以外の姿を見ると一切・・・』
ないのだと寂しそうに呟く月島に口を引き蒼を眺めた。

耐えた顔もせずに出来る事をし、淡々としている蒼に苦笑いだった。
『蒼(笑)』
『ん?』

『ちゃんと時間は守って体も休めろ。大丈夫と叫んだ夢を見て飛ばせ・・・ちゃんと届くから(笑)』
『 ・・・・(笑)』
意味に気づき蒼が笑む・・・また静かに始める彼らに笑み、颯は昼寝だと眠り始めたのだった。



叔父へ連絡を入れれば、時間を待たずに迎えに来た事に苦笑いだった。
自分が居る場所も聞かず、分かったとだけ言って電話が切れたのにだ・・・

暫くして数台の車が連なり来た事に気づく・・・その間に急に割り込むように停まる車があったが、待っていた彼女の後ろから現れた警護者の姿に開けた車のドアは勢いよく閉まり走り去った。

運転手の顔で彼らの父親だと気づいた・・・何より助手席で顔を隠した幸坂友貴の姿もあった。
利用し利用されているだろうにと呆れ眺める陽葵だった。

警護者に促され乗り込めば、守ってくれた人も同じ車に乗り込んだ。
本当の場所は何処なのだろうと思えたが、これは自分に探せるはずもなく様子を眺めるだけにした。

待ち構えた中に一人入り込めば、会議のようにズラリと並び座る人達がいた。

何故か彼らの父親も幸坂も同席し静かに居た事に苦笑いしかない。

叔父の近場に座らされ、警護者はその後ろに控えた・・・出ろと言われても会釈して佇む。

何かの名前を言い新たな会釈と同時に陽葵の後ろへ控え直した事で叔父は諦めたようだった。

『さっそくだが・・・既に決まった中味を動かしたいと思う』
そう言いながら説明を始めれば、だから始めろと陽葵に言い、新たな会話は皆と始めたのだった。
やっと終わったかと叔父を眺める。

『話が?(笑)取り引きか?』
『気持ちは変わりません。彼らが全て・・・傷をつけた代償は払って頂きます』
『出来ると?』

『それから、私の本当の両親と弟に会わせて頂きます。
も1つはバァの・・・長田やよいさんの家族と・・・全ての理由はこれです。

何も知らされず一人生きて来ました・・・生かして頂き感謝はしますが、その前に私の全てを満たして頂きます』

『出来ると』
『思うから伝えました。何をされても返しは理由に繋がります。
生かすは叔父様の為、殺すは私の為に・・・選んで貰えたら助かります』

『その理由を知るのにか?』
『自分の為に生きてみたいだけです・・・その先へ繋ぐ事はしないと先に言っておきます』

『全ては血筋と聞いたか?』
『既に止めると(笑)先に伝え、皆へ伝言を頼み了承されてます』
『いつ・・・』
『昨日です』
『なら』
『血筋なら、私で終わります』
『聞いてみてくれないか?』

『叔父様がお聞きに。そちらの伝言方法は知りません。
私へ連絡が来るのは10日後だそうです・・・それまでにお願いします。

家族に会いたいので・・・それまで、世話になります。前のように・・・それで十分です』
そう言って立ち上がり丁寧にお辞儀をした陽葵は部屋を後にしたのだった。


『どちらに?』
先に歩いていた陽葵へ警護者が聞く。
『私が住んでいた場所です。でも・・・困りました・・・場所が分かりません』

『森の外れですか?もしかして柵が張り巡らされた・・・』
『(笑)はい、ソコです。連れて行ってくれますか?』
『ソコは・・・』

『壊されてましたか?』
『いえ・・・手配しますね』
『(笑)ありがとうございます』
嬉しそうな彼女に驚きながらも電話をしていく・・・車に乗せ走らせたのだった。


荒れた状態に可笑しくて笑いながら家へ向かう・・・埃はあれど使える状態は多く・・・ホッとした。

『屋根がないから不味いかな・・・』
呟く陽葵は眺めながら中へと入り込んだ。
外と繋がる窓を全て開け放ち、一緒に来た人達はどうするのかと眺めた。

『我らは外に・・・』
『何人も?』
『3人です。今は用で2人が出ました・・・
屋根・・・その依頼と必要な物の準備をしに行かせました』

『狙われる?』
『前ほどはないかと・・・それでも、もしもと指示されているので・・・気になさらず・・・
それと、出口は広くし壊します。
車を入れ置くので・・・入り口付近は大丈夫そうでしたか?』

『平気・・・でも休める場所はここだけよ?皆さんが座る椅子とか準備してくれたら・・・』
『いえ。貴女が良ければ車で休ませて頂きます・・・
構わず自由に。用がある場合・・・それと外出、またはここから離れる場合の連絡は下さい・・・』

『ごめんなさい・・・迷惑かけて・・・』
『それは仕事なので、気になさらずに頼みます・・・』
『(笑)ありがとう』
言われて照れたのか笑みながら会釈し、敷地の中を確認していった。

ならばと遠慮なく家の掃除と楽し気に始める陽葵だった。




静かな場所だった・・・療養所という場所に弟はいた。
叔父に連れられ向かった場所・・・驚くほどに近い場所だった・・・蒼と居た場所よりも時間はかからず驚いた。

別棟だと案内された場所で、その子は車椅子に座り何処かを眺めていた。

付き添う人が会釈する・・・その奥で庭の手入れをしていた人の手が止まった事に気づくが知らないフリをして弟だと言った子を眺めた。

家から優しい音が聴こえる・・・その優しい響きに笑み、ゆっくりと様子を見ながら近寄った。

『名前を教えてくれる?』
『 ・・・』
名前が知りたくて声にするが自分を見ない子を眺め叔父を見返した。

『話せない・・・暫く時間をやろう』
それだけ言うと叔父は もと来た道を戻っていった。
膝まつき顔を見つめ視線を重ねた。

『初めまして(笑)。私は藤條陽葵と言います・・・貴方と会えて(笑)嬉しいです・・・』
ジッと視線も合っているのか見てくれているのかも分からない・・・瞳さえ動かさない姿に涙が溢れた。

表情もない・・・生きている温かさはあるのに、触れた手に視線も飛ばさなかった。

『名前・・・この子の名前は知りますか?』
後ろに立っていた人へ陽葵は声をかけて聞いてみた。
『和希と言うそうです。私も一度も声を聞いた事はありません・・・』

『いつから、この子を?』
『お世話を始めて8年になります・・・』
『そばにいてくれて(笑)ありがとうございます・・・』

立ち上がりお辞儀をした陽葵の笑みに目を潤ませうつ向いた。
腰をおろして和希を見つめ、手に触れて優しく包み込んだ。

『知らなくて・・・ごめんね。貴方を待たせてたのかな・・・

(笑)元気になったら・・・一緒に暮らそ?(笑)待ってるから・・・頑張ってみて・・・生きていいの・・・
大丈夫(笑)、貴方の心が弾むように祈るから・・・出来そう?』
ゆっくりと呟く陽葵の声に何となく目が合った気がした。

『あの・・・』
戸惑い・・・言いかけた人を見返す陽葵・・・それでも微かに聞こえた音楽に耳をすませた。

『家から流れている曲は・・・・』
『前からだそうです・・・起きている時は聴かせる事と聞いていたので・・・』
一瞬の迷いは消え、陽葵に聞かれた事を思い出しながら答えた。

『心が休まる音ね(笑)。貴方が大好きな曲? 私が好きなのはね(笑)教えてあげるね・・・』
そう言うと、笑み見つめながら優しく歌い始めた・・・


『小さな頃に、私のお世話をしてくれた人から教えて貰ったの(笑)。
優しくて・・・楽しくて・・・(笑)歌えば嬉しくなった・・・
あの曲も(笑)好きだったな・・・』
思い出すように話す陽葵・・・ふと気づけば和希から溢れた涙に気付いた。

『悲しい曲じゃないのよ?(笑)心を休ませる為の歌なの・・・大丈夫と、和希がホッと休めるように歌ったのに・・・』
何が悲しいのだろうと見つめながら和希へ言った。

-バァ-
和希の口が微かに動く・・・
『バァの優しい心は私の中も温めてくれてる(笑)。和希もでしょ?』
聞こえていたのか、溢れる涙に驚いた陽葵は後ろの女性を眺めた。

何だと近寄り和希の姿に慌て涙を拭きながら大丈夫と囁き抱き締めた。
収まる気配もない・・・落ち着くようにと祈りながら、流れていた曲を陽葵は静かに歌い始めた。

和希の撫でていた手が止まる・・・静かに和希から離れ顔を眺めた。
何かを言いたいのに声がでず、それが悲しいのか何を言いたいのかも分からなかった。

『木の手入れをしてる人は、私がお世話になったバァの家族でしょ?私を助けに来てくれた人・・・
もしかして貴女も?』
歌を止めて和希を眺めず、遥か先の景色を眺めるようにいた陽葵が呟いた。

『 ・・・』
『(笑)答えなくていいです。私が自分で見つけるので・・・』
『あの・・・』
『いいんです。バァのかわりに弟を見てくれてありがとう・・・
私は大丈夫と先に伝えてくれますか?(笑)後で謝り自分で言い直すと・・・』

『 ・・・はい』
『和希君(笑)、も少し頑張れるかな・・・。今ね(笑)叔父様と交渉中なの・・・今度は私達のお父さんとお母さんに会ってくるね・・・』
そう言って抱き締めた陽葵が和希へキスをした・・・

『和希は大丈夫(笑)。また後でね・・・』
手に触れて呟いた陽葵は佇む人に会釈し場を離れたのだった。

途中で振り向く・・・見送るように見ていた人達に微笑んだ陽葵だった。




アンリッシュ 20

2019-03-21 12:19:07 | アンリッシュ


見送る・・・
グッと握り締めた彼女の手を眺め、笑みながら彼女に視線を戻した。
静かに息を吐く・・・それに気づいた彼女が同じように息を吐いた。

乗り込んだ事でホッとしたのも束の間・・・不意に手首を捕まれ屋敷の中へと連れ出された。
驚きは身を固め止める事も出来なくなった。

何処からか騒がしい音が聞こえてきた・・・驚き振り向けば、遥か先の道から大勢の人の塊が近付いて来るようで慌てていたのだ。

車を停めていた颯達・・・慌て一人が出てきて車の前に立ちはだかり、やって来る集団を眺めながら待っていた。

幸坂が慌て自分を連れ出す・・・はや歩きだったが次第に走り出した事で陽葵は転ばないように走るしかなかった。

離してくれない手首が痛くても、取ろうとすれば力が入り余計に痛む。
諦め幸坂の後を追うように走った。

数多いドアは警護している人が待ち構え通り抜けると閉めては自分達を追い抜き先の扉を開けて誘導していた。

後ろからも、何処かからも騒がしく慌ただしい音は激しく響いた。
待ち構えていた人がいたが、誰もが顔を引きつらせ怯えにもにた顔で戻った幸坂にホッとしながら眺め始めた。

『さて、騒がしいが暫く一緒に身を隠して貰おう・・・
それから私と話し向こうへ連絡しようと思う』

『彼らが自宅へ帰れたら連絡がありますから・・・それまで向こうへ連絡されても話す事もありません』
『 ・・・』
『取り引きをしようと?』

少しずつ怒る顔になっていく回りの人達を眺め、ムッとしても口を引き自分をみていた叔父の姿を見返した。

激しい音は近い・・・そして銃声まで交じり驚いた。
『どこか知るかね?』
叔父は誰かへ聞いた。

『ダーナルが話を・・・対話したいと連絡が来ていました』
『到着し暴れているのもダーナルのようです・・・
それとカナンも一緒に来ているようです・・・』

幸坂が電話をしながら報告のように話し出した。
次の部屋だと次々と移動させられ・・・ソコは遥かに広く何の部屋だと見渡した。

全力で走れば この端へ辿り着ける・・・フォールのような広さに驚いた。
歌っている場所のように壁際には絵や置物が飾られ花まで生けられていた。

話す声さえ響きそうで驚く彼女に叔父が笑っていた。
ダン!と激しくドアは開き、黒服姿の誰かが勢いよく転がされた。

雪崩れ込むように、数多い人達が入り込んできたが・・・自分達がいた後ろの扉から、同じ似た服装の人達が何かを手にし飛び込んできた。

不安を煽る・・・それでも数の違いだと思えば、幸坂が自分を引き寄せ静かに後退った。

『おーっと(笑)。女は連れ出すな!』
誰かの叫びに一斉に視線を向けられ驚いた。

『動くな!』
ダートンの警護者が静かに二人を囲う。
『だから!動くなと言ったろ!』
2発の銃声に驚き陽葵がクビをすぼめた。

対峙しあい話をしていたが、ジリジリとにじり寄る人達へ銃口を向け 遠慮はしないとダートン側は笑みを浮かべた。

威嚇のように時を探し弾をあちこちへ埋め込んでいく事の怖さは互いに無かった事に驚いた。

新たに現れた人達・・・見ても分かる外国人・・・厳つい姿が目を見張る。
その多さで互いの数が同じようにみてとれ静かな笑みは止まったように思えた。

銃声は響く・・・それは幸坂が自分を連れ出そうと動けば鳴った・・・だからか、叔父は幸坂に止まれと命じ静かにさせた。

端に颯達が見え驚いた・・・佐条が蒼を支え守るように立っていた事で、ダーナルに囲われたのだと思えた。

大丈夫という蒼の口の動きが見えた・・・彼らも痛みに耐えて残されたのだろう悲しくてうつ向いた。

溢れた涙に気づき、そっと抱き寄せる幸坂・・・怖くて震え泣いていると思えたのだろう・・・彼もまた優しい一面があったのかと思えた。

そんな余裕のある自分にふと気づく・・・静かに息を吐く・・・幸坂を離し、彼女はまた視線を戻したのだった。

どこかでスイッチが入ったのか、ダーナルとカナンの人達から動き出した。

怒濤のような叫び・・・そして銃声・・・人が殴られ倒されていく・・・蹴り飛ばされ転がされていく・・・3人の外国人が幸坂と自分を連れ出し走り出した。

幸坂と繋がる手は離され、それぞれに囲われて走れと叫ぶ。
その間も銃声は激しくなる・・・隣で走る人が撃たれたのか地面へ崩れた。

それでも別の警護者が自分の腕を掴む・・・そして走らされた・・・待ち構えた人達は遥かに遠い場所にいた、それはダーナルでもカナンでもないと知った。

走りながらも振り向く・・・数多い人達が床に倒れていて驚いた・・・その数に戸惑い走る力は少しずつ抜けていった。

強く引く手に足が付いていかず彼女が転ぶ・・・追い付いた人達に撃たれたのか自分へ当たらないようにか庇いながら痛みに耐えていた。

叔父が走りよってくる・・・後を追う人達の数も減ってもいない・・・厳つい人達は薙ぎ倒すように散らしていった。

これは何だと怖さより悲しみが強かった・・・どれだけのモノなのだと・・・人を傷つけてまで必要なのかと・・・そんな思いは静かに駆けめぐった。

誰かが近寄れば撃たれていく・・・ザーッと激しく走り込んで来た数人・・・彼女を守るように佇んだ人達を見上げれば、それは蒼達だった事に気付いた。

回りの人達を倒すのは外国の警護者たち・・・次々と倒され近付く男達は止まるが、殴られ・・・蹴られ・・・その唸りは数多く聞こえた。

自分を庇っていた人が横たわる・・・大丈夫かと眺めれば逃げろと聞こえた。

向こうから知らしめるように銃を持つ人達が近づく・・・叔父が掴むが嫌だと振り切った。

幸坂が庇う・・・叔父が気づき睨みあい始めた・・・残る数の人達が警護者の隙間を狙い通り抜ける・・・それは蒼達が引き止め倒していた。

だからか外国の警護者たちは彼らに手を出す事はなかったのだ・・・ダーナルが近寄る・・・

立っていた颯の服に滲む血が見えた・・・力なく崩れ織田が支えて地へ座らせた。

佐条が叫んでいた・・・それは説得している声のように聞こえた・・・
行こうと急かす叔父・・・向こうから来た人と話しながらも自分を見ていた事に気付いた。


数発の銃声が突然響いた・・・目の前の幸坂に当たったのか静かに倒れこんだ・・・蒼の名を叫ぶ誰かの声・・・振り向けば佐条だった事を知った。

倒れ始めた蒼の姿は、ゆっくりで・・・慌てながら支える佐条も見えた。

何が起きたのかと体は凍り付いた・・・不意に腕を捕まれ引き摺られる・・・ハッとした・・・蒼を押さえる佐条の手が赤く染まり出したから・・・

捕まれた手を思い切り離せと振りきれば驚いた顔で見返す人を睨み彼女は走り戻った。
苦しそうな息遣い・・・彼の手まで染まり始め悲しくなった。

『泣くな・・・』
苦し気な彼の声音が響く・・・震えた手で彼へ触れた。
『やだ・・・』
『一花・・・病院・・・』
颯の声にハッと気づいた彼女が頷いた。

連れ戻そうとした叔父に気づき見上げた。
『叔父様・・・彼らを病院へ』
『何を言ってる?』
怒りながら陽葵へ呟く人を見返した。

『私は大事と言いました。恩人だからと・・・・この人達が本当に死んだら・・・・一人でも死んだと分かったら全て!手放す事にします』
『陽葵!』
『手当てを!病院へ運んで下さい!』

『陽葵!』
『諦めて下さい!』
そう言うと佐条を眺め蒼を眺めた。
『どーやって運べばいい?』
『織田!車は?』
佐条が咄嗟に叫んだ。

『持ってきます!』
『私も行く!
佐条さんは二人を守ってて下さい・・・絶対・・・・やだから・・・お願いします』
『行け・・・』
泣きながら頷く陽葵は織田と離れた。

近くにいた外国の警護者に話す・・・迷いもあったが二人を連れ出し誰かへ連絡しながら案内をしたのだった。



警護者が運転するバンで皆で病院へ入った。
治療室や手術室、それぞれに運ばれる・・・医師に止められても離れたくない彼女の叫びに佐条が抱き寄せた。

警護者は二人を促し端にあるソファーへ座らせた。
呆然と蒼が運ばれて行った場所を眺める陽葵・・・回りの喧騒さは気にもならないように、その場所だけを眺めていた。

「待機した者4人で警護してます。交代はしません。貴女は大丈夫ですか?」
一人の警護者が彼女と視線を合わせる為に腰をおろし見つめた。
話し出した言語が違い驚いた佐条は陽葵を眺めた。

「貴女に怪我は?」
「 ・・・ありません。彼は大丈夫ですよね?」
「そう信じ待つ事も大事です・・・」
「貴方は何処から?」

「ダレン様から依頼され別で探しておりました・・・」
「 ・・・」
「落ち着いたら話し合いを・・・そう、言付かりました」
「ありがとう・・・」

話しながらも途中から視線は別へ向けた彼女だった。
静かに立ち上がり会釈した男は、少しだけ離れ彼女を守るように二人で佇んだのだった。

外国語を話し出した陽葵に驚いた・・・自分の手から離さずに身を固め震えていた。
話す間も・・・話し終えた今も手は繋がれたままだった。

蒼が入った場所の隣へ颯は入れられた・・・その前で待っていた織田は静かに近寄り陽葵の隣へ座り込んだ。

『織田さん』
『はい・・・』
『颯さんまで撃たれてた?』
『いえ・・・さっきのではなく、その前のでした・・・』

『貫通とか言ってなかった?』
『 ・・・俺ら・・・俺らを安心させたくて・・・我慢してたみたいで・・・』
『大丈夫なように、ソコに入ったの?』
『そうです・・・』

『本当に大丈夫よね?二人は本当に・・・大丈夫よね?』
『はい(笑)絶対に。俺らを残しません・・・蒼さんだって一花さんを残しません。生きる為に入ったんですから・・・』

『何で撃たれたの?逃げなかったのに・・・』
『君を連れ出そうと近付いた人が居たから。幸坂という男は、蒼を撃った弾が食い込んだ・・・掠った弾はもう一人に』

『その人達も病院に行けた?』
『運んでたから行ってるはずだ』
『兄貴達の親父さんでした・・・』
『撃たれたんだ・・・』
『叔父って人の話を無視して連れ出そうとしたので・・・』

蒼が撃たれたのは父親のせいだと知れば余計に悲しく辛くなった。
蒼達を犠牲にして連れ出そうとした・・・
『また私のせいだ・・・』
一人小さく呟く陽葵へ何も言わずに寄り添う二人だった。




コツコツと院内に響かせ近付く音・・・誰だと織田と佐条が振り向いた。
数人が歩いてきていた・・・身形のいい姿・・・それでも外国人のような雰囲気だった。

その後ろにはダートンの男・・・彼女の叔父がいた・・・スッと二人の警護者の間に隙間が出来、ソコを通り陽葵の前に佇んだ。

「これからの予定を聞こう・・・」
「 ・・・」
「(笑)陽葵の予定だよ。それに合わせようと思う」
「 ・・・今は・・・」

それだけを言って考えた・・・暫く陽葵が、彼がいる場所眺め・・・目の前の人を眺めれば、その後ろで焦りながら自分を見ていた叔父と目があった。

静かに息を吐くと目の前の人を見ながら立ち上がり見返した。

「話しなさい」
「彼らが元気になるまで保留します・・・その後に叔父と話し合い決めようと思います」
「警護は必要か?」

「ダートンからも、他からも狙われないなら必要はありません。
暫く・・・私の身に自由を下さいますか?」
「(笑)分かった。直通は覚えているか?」
「はい」

「ならば、その連絡から始める事にしよう」
「ありがとうございます(笑)」
「(笑)あれだけの中で防いだなら・・・彼らの生きる力は強い。だから信じ待ちなさい」
「はい(笑)」

陽葵の返事を聞いた男は静かに帰って行った・・・・声にも出せなかった叔父・・ それは、前を歩いている人が絶対の存在だからだろうと思えた。

ならば本当に自分の邪魔をする人は暫くは居ないとホッと出来た自分に苦笑いだった。


『今の人は?』
『(笑)声は知ってました・・・でも会った事はなくて・・・
その後ろの二人とは会ってて・・・直接じゃないけど話した事はありました』

そう言って振り返りドアを眺める陽葵だった。
急に慌てたように歩き出す・・・焦り立ち上がり眺めた先に颯の姿があった。

駆け寄り寝かされていた姿を眺め、側にいた医師を眺めた。
『じきに麻酔は切れます。
・・・・大丈夫ですよ(笑)麻酔で眠っているだけです』

『(笑)ありがとうございました』
『あの・・・ソコに入った人は・・・』
声音が震え医師を見つめた陽葵の声だった。

『出血も多く、まだ終わっていません・・・終われば担当医師から説明を受けて下さい・・・
この方も数時間は病室へ入れません・・・・ICUで経過を看ます』
待てと促され元の椅子へ戻るかなくなった。

時間が止まっている気がした・・・果てもない刻を彷徨うような錯覚を覚える。

それでも待つ事も慣れた・・・信じれば迎えに来ると分かる・・・治し自分を連れ出す蒼と分かる、だから待てると自分へ誓った。

それでも今、この瞬間は分からない・・・目の前に彼は居ないから・・・だから確認し自分でみない事は信じるなと思えた。

生きる為に入った・・・だから大丈夫だと・・・何度も祈りドアの向こうで頑張っているはずの彼を信じた。

微動だにせず、ジッと堪えてドアだけを眺める陽葵の姿・・・座らせても暫くすれば立ち上がり今かと待ち構えたように佇む。

大丈夫という囁き・・・待てる誓いのような囁き・・・それは数度し静かになった。

溢れた涙は時おり自分で気づき拭きながら見ていた。
茉尋が静かにやって来た・・・大丈夫と織田から聞けばホッとして陽葵を眺めた。

声をかけても反応もない・・・ひたすら無事を祈り大丈夫と蒼へ声をかけているように眺めていた。

諦めた彼女がソファーに座る・・・颯の所へ行っても近寄る事も出来なかった事で一緒に待つと座ったのだ。


新たな靴音・・・それに早く反応したのは陽葵だった。
驚きながら彼女の視線を辿れば、それは二人の父親だった。

痛みを耐えながら、静かに歩く人を見返す・・・暫く眺めた陽葵は振り向き蒼がいる方を見つめ始めた。

『戻り始めましょう・・・』
『貴方に用はありません』
『 ・・・ダートンから離れませんか?』
『貴方がすべき事でもない。まして貴方が動いても、手に入るモノは一切ないと気付いていませんか?』

『蒼と』
『引き継がれる事もありません』
『全ては』
『貴方が考える必要もない』
『 ・・・ならば、幸坂君と』
『 ・・・』
それからは声にする事もなくなり、駆け寄って来た警護者に連れ出されて行った。




気づけば病室で寝かされていた陽葵・・・目覚めた陽葵にホッとする茉尋の笑みが溢れた。
『蒼・・・』
思い出したように呟く陽葵に優しく笑み返す茉尋だった。

『終わったけど会えないわ・・・手術は成功してるけど目覚めるまで分からないって・・・
だけどね(笑)、頑張った颯は目覚めた・・・だから直ぐに蒼さんも起き出すはずだから(笑)もう少し待とうね・・・』

彼女の優しい笑みにホッとして笑み返した陽葵の頬を拭った。
溢れた涙に気づく陽葵が照れる・・・繋がれた管を諦め、外の明るさに気づく。

『一花は(笑)まる一日寝てました。日付はとっくに変わってまーす』
楽し気な声に笑う陽葵だった。





アンリッシュ 19

2019-03-20 12:08:00 | アンリッシュ

ズラリと並ぶ車に驚いた・・・ソコへ交ざる人達まで増え、佐条は一花を直ぐに車に乗せて飛び乗った。

『あの・・・』
『あれはダートンだ・・・本当かを確かめる為とダーナルから君を守る為だろうな・・・』
『これは捕まるの?』

『織田(笑)、牽制してる間に』
聞きながらも車を走らせた織田に苦笑いをした佐条がいた。

『佐条さんは本当に蒼とお友達でしたか?』
暫く後ろを見つめ、追ってくる車を眺めていたが彼女は前を向き話し出した。

『 ・・・』
『柚侑さんみたい?』
『そっちが合ってる・・・
ゼロから奪えと言われ、探れば直ぐに蒼から連絡が来た・・・だから近いのかと思ったが・・・』

『 ・・・ゼロって?』
『 ・・・』
『(笑)一花さん。ゼロは颯兄貴の組織の名前でした』
『あー』
なるほどと笑みが溢れた一花を見ていた佐条は驚き眺めていた。

『ゼロとカナンとダーナルか・・・(笑)仲良しになったら凄いですね・・・』
『 ・・・』『 ・・・』
『ん? そうだ(笑)蒼の会社は?』
『 ・・・あぁ(笑)。蒼兄貴の会社はエンドです(笑)』

『終わりなの?』
『 ・・・』
『(笑)始まりと終わりで仲良しなのね・・・私は何がいいかな(笑)』
考えながら呟く一花に二人が苦笑いをしながら、これから行く先へ視線を戻した。

『表は敵で・・・秘密は仲良しって・・・素敵だけど疲れそうね・・・
(笑)頑張る皆が偉い・・・生きてく場所を作る事が出来て羨ましいな・・・』

『(笑)一花さんは?出来てますよね?』
『んー(笑)それは一花の為に作ってくれたから。だけど頑張るね。』
『そうして下さい(笑)』
織田との会話に意味も分からず眺めた佐条に苦笑いをする織田だった。

『君は本当に戻るのか?』
『(笑)出る為に・・・頑張りますね』
『蒼は無事に・・・』
『そう祈ってますよ(笑)。約束を破ったら、どっちも捨ててやります』

『はい?』『ん?』
それは何だと驚き唸るように彼女をチラチラと眺める二人に一花が笑いだした。

『ずっと・・・蒼との約束が私の中で生きてます。
あっちの約束を今は祈ってます・・・
あの・・・ダーナルは怒りませんか?貴方が私を助けたから・・・』

『 ・・・(笑)ダーナルのトップは大丈夫です。貸しが一つあり最後に使うつもりで今日まで来てるので』
『あー(笑) ゼロの健人か、エンドの健人になるって意味?』
『 ・・・』

『ん?違うの?
だって柚侑さんはゼロの柚侑になったみたいに仲良しよ?』
『 ・・・一花さん』
『 ・・・秘密の(笑)関係って事にしとく?』

『(笑)すみません、そーして下さい・・・』
そうかと一人納得した彼女だった。
先は遥か遠く・・・待ちくたびれた一花は眠り始めたのだった。


『この子・・・』
『すみません(笑)。理解は月島達・・・エンドの奴らしか知りません。
もともと外へ出た事もなく、蒼兄貴が一つずつ教えてたそうで・・・
俺も最初の頃しか会ってなくて・・・』

『出た事がない?囲われてたって』
聞いたと織田を眺めた。
『屋敷の所有する森のなかで一人で暮らしてたらしいです。誰かと接触する事もなく出される事もなかったと聞きました・・・』

『 ・・・』
『(笑)耳コピ出来て歌手に・・・』
『それでゼロツーのクラブで使ったのか・・・』
『はい(笑)、凄いですよ・・・使える電化品は冷蔵庫だけ(笑)、ラジオを聞いてたのにラジオが何か知らなかったんですから・・・』

『どんな・・・』
『10畳位の家で(笑)だだっぴろい庭は3メートルの壁に囲われてて外から施錠されてたらしいです(笑)』
『一人・・・』

『はい(笑)。ガキの頃は居たらしいですけどね・・・その後は一人で・・・
人と話す事なく暮らしてたと・・・マジで驚きました』
『さっきの意味は分かったか?』

『仲良し?』
『そうだが・・・』
『俺は何となくしか・・・』
すみませんと苦笑いをする織田に、確かにと口を引く佐条だった。



『ここ?着いたの?』
『 ・・・』
大きなゲートを潜り、木立の間を走り抜けていく・・・途中からスピードをあげ車間はあいた・・・・・案の定、後ろの車が近づく間に分厚い門は素早く閉ざされた。

これ見よがしな家屋が飛び出るように現れ始めた事に3人は驚き・・・陽葵一人が何処だと眺めていた。

車が停まれば二人へ顔を覗かせ聞いてきた。
驚くしかない・・・自分がいた敷地さえ知らなかったから。

開けようとしたドアはロックされていて、今は交替で運転して来た佐条が開けないように閉めていた。
織田が睨み付けながら外へ出る・・・

『私が出し、連れていきます。離れて下さいますか・・・』
言われて驚きながら下がった人を眺め、他からの動きを眺めながら後部のドアを開けて彼女を出した。

スッと織田の袖口を掴めば、佐条も下りてきて彼女の隣へ佇んだ。
そっと腕を組み直した陽葵が呟く。

『まずは案内を頼みます。私と電話で話した方と彼らと会います』
『 ・・・』
驚いた男は振り向き様子を伺った。
大きく開かれた玄関から出てきた人へ会釈し指示を待つよう佇んだ。

『陽葵・・・』
『彼らの元へ案内を』
『まずは部屋』
『案内を・・・』
『(笑)分かった。終われば連れて来なさい』
分かったと会釈したのは、後ろに控えていた人だった。

『(笑)初めまして。マベルの幸坂友貴と言います。お二人は・・・』
『迎えに頼んだ方達です。 二人と一緒に行くので気にしないで案内して下さい』

名前は言わないと呟き歩く陽葵だった・・・震えた陽葵の手に気付き、大丈夫と触れた織田の手に笑み返し案内をする幸坂の後に歩く・・・

家屋の外れだろう、結構な距離に苦笑いをする・・・初めて歩く場所を不思議そうに眺めながら歩く陽葵の姿に佐条が驚いた。

暫く歩いていたが・・・不意に立ち止まる陽葵を何だと見返せば、彼女が床を眺めていた事に気づいた。

二人も見やれば、外へ出れる扉から自分達が行く先へ何かの跡が線のように続いていた。

幸坂に促されていく・・・その線は部屋の扉の中へ続いていた。
二人は何かを気づいた・・・陽葵の両手が繋がれ温まり・・・そっと背を撫でられる・・・佐条の手だった。

開かれたドア・・・どうぞと促し笑みながら幸坂が入って行った。
来たかと電話で聞いた声がした・・・織田と繋いだ手が強くなる・・・

『入りましょう・・・』
佐条の小さな声に頷くが、織田が先に入り彼女を優しく引いた。

客室のような造り・・・2つのベッドにそれぞれに寝かされていた事に驚いた・・・手当てされている訳でもなく、見ても分かるほどに放置という言葉が似合った。

駆け寄りたい気持ちを抑え織田の手は離さずに二人を眺める・・・男が近付くが、佐条が間へ入り織田は奥で颯が寝ているベッドに陽葵と近寄った。

不意に連れ出されないように彼女との間へ入り込んだ。
『寝てるの?』
思わず呟く陽葵に苦笑いをした男は違うと首を振った。

『颯兄貴・・・』
織田が優しく揺する・・・
『蒼・・・(笑)生きてるか・・・』
佐条は蒼を揺すった。
声のない状態に彼女は二人の男を眺めた。

『大事と言ったのに・・・』
『 ・・・』
答えない男たち・・・
『大事と言ったのに!』
彼女が叫ぶ・・・・
『(笑)寝かせろ』『疲れてんだ(笑)』
不意に笑み呟く事で3人はホッとしたのだった。

『・・・・幸坂さん、部屋から暫く出てくれますか?』
『 ・・・』
『幸坂さん、同じです。離れて俺たちを楽にしてくれませんか?』

『 ・・・我らは彼女に』
『貴方に用もありません。今は部屋から出てくれませんか?』
幸坂と加賀美が彼女を待ちながら眺めていた。
『陽葵様・・・』

『貴方との約束は終わりました。礼は叔父様から頂いて下さい。今は部屋から出て頂くと嬉しいのですが。
それと手当てが出来るモノ・・・持ってきて下さると・・・ありましたか?』

『 ・・・』
佐条が扉の近くへ立つ・・・視線があえば、どーぞと手招き出ろと促した。
諦めたように出れば素早く扉を閉めた佐条だった。

『派手にやられましたね・・ 』
思わずだろう織田の呟きに、苦笑いをする颯・・・何かないかと探し出す織田だった。

『(笑)何だ』
颯が笑みながら彼女に言った・・・泣きそうな顔・・・謝る声も小さく、痛そうで確認したいのに出来ずに二人を見つめるだけだった。

『監視カメラがあんぞ(笑)。堂々と付けてきやがった』
『ごめんなさい・・・』
『いいから蒼の様子も見てこい・・・』
『はい・・・』
隣のベッドへ近寄るが、彼の視線は誰もいない場所だと気付いた。

『ソコ?』
『そうだ・・・泣かずに頑張れ・・・左へ一歩(笑)』
言われて蒼を眺めながら左へずれた。

『音も拾うか分からない』
それでも声音は小さい蒼に、触れたいのを我慢して見返した。
端へより前で指を絡めていた蒼は彼女の手に触れ見上げた。

『傷だらけ・・・』
『始めるんだよな・・・』
『はい・・・』
今度は握手のように彼女と繋ぎ視線を合わせた。

-大丈夫だから頑張れ-
声のない蒼の言葉は何かと気づいた彼女が微笑んだ。

『怪我をさせてごめんなさい・・・』
『いい』
スッと離れた蒼の手に泣きそうになった・・・駄目だという蒼の戸惑い・・・蒼の視線が別の場所に行った。

その瞬間、勢いよくドアはひらき、案内した幸坂がケースを持って入ってきた。
ホッとした顔・・・直ぐに蒼は幸坂へ視線を向けた。

『外で待ちますから早めに』
彼らには用はない、そんな態度だと分かるほどに敵対した姿に口を引いて見返す・・・それから彼女へ視線を戻すと笑みを変えて見つめた。

『彼らが帰ったら行くと伝えて下さい』
『 ・・・』
『手当ての仕方が・・・』
幸坂には構わず織田へ視線を向けて話し出した陽葵に皆が驚いた。

『おい(笑)。そこで言ってるぞ』
『知らない人とは話せません』
そう言ってからケースを開けて織田へ見せる陽葵に笑う颯と蒼だった。

『帰れんのか?』
『家についたら私に連絡をしてくれますか?』
『持ってねーじゃん(笑)』
『(笑)そーだった』

『あ(笑)あず・・・あります。これを使って下さい』
『貴方のは?』
『(笑)二台持ちしてました』
『ありがとう(笑)』
織田から受け取った携帯を大事にしまうと、織田と同じモノを取り出し蒼の手当てをした。

『(笑)貴方も出来そう?』
『取り合えず(笑)』
『あー(笑)お前は下手そうだしな』
『 ・・・いったい手当てしてあげて下さい・・・』

ムッとした顔で颯へ呟く陽葵に苦笑いをする・・・暫く聞いていた佐条が口を引いた。

自分達の名を出さず彼女につけていた名前でも呼ばない・・・そうかと黙り笑いながら傷がある場所を消毒した。

『(笑)お前はいいのか?』
『(笑)看護師に変身』
呟きながら笑い、絆創膏まで貼ってくる佐条に苦笑いだった。

中はと佐条が捲れば・・・何も着ていなかった事に慌て陽葵が背を向ける・・・楽し気な笑みの颯と目があった・・・笑いながら布団を捲ろうとした颯の手に驚き、床へ視線を向けて座り目を隠した。

『服は?何で?ヘンタイ?お馬鹿なの?さっきの人も?』
矢継ぎ早に呟く陽葵に可笑しくて、ベッドから伸ばした手が頭を撫でた。
うつ向いたままに手に触れる。

『気絶したから水をかけられたんだ。それからココ(笑)』
『これが本気の・・・・ごー・・・・』
何て言ったかと考える陽葵もいた・・・

『一番いてーしな(笑)、逃げも微妙だろ?』
『必死なら逃げれるよ?』
『(笑)まーねー。ついでにアホを倒して服を取れば済むしな』

『へぇ・・・あ、服を貰わなきゃ・・・』
『(笑)その手・・・離さねーとな』
『あ、バレたかな』
『さっきコイツが外したさ(笑)。来ないって事は音だろうな』
『それでも俺がソレを妨害してるんで(笑)』

小さな機械を見せて織田が笑みながら、大丈夫だと呟いた。
佐条が笑み、ドアの外へ顔を覗かせ話し出した・・・服を頼んでいた事にホッとした陽葵だった。

『か、隠してくれた?』
『コイツがな(笑)』
良かったと蒼を眺めれば痣は激しく・・・勢いよく颯を眺めれば・・・それは同じ状態だった事に悲しくてうつ向いた。

『泣くなって・・・これで力を使ったら、一人で交渉出来ねーぞ?』
分かると頷く陽葵・・・彼らの足が両方に現れ視線に入った事に驚いた・・・余計に顔を隠しうつ向く陽葵に男たちが笑った。

『(笑)その光景はヘンタイが女見て楽しんでるようにしか見えないな』
『仕方ない(笑)。勇気と元気の注入だから』
そう言った颯が彼女の頭を優しく撫でた。

『(笑)後は蒼に抱っこして貰え。ほら、お前らは背を向けろ(笑)』
可笑しくて笑いながらも織田と佐条に言った颯だった・・・

驚いたのは佐条・・・織田が静かに背を向け・・・視線の端で軽々と彼女を抱き上げる姿に焦り佐条もまた背を向けたのだった。

『陽葵・・・(笑)焦らず、ゆっくり話せば出来るから頑張れ・・・バァに会えるように祈っててやる(笑)』
小さな小さな彼の声が囁く。

『頑張る・・・』
『弟の事は入院してる事を聞いたと話してから会いたいと伝えろ・・・』
『会ってみたいけど・・・お互いに知らないのよ?』

『それでも・・・自分の弟の顔は覚えられる・・・どんな状態かは気にせずに直接会って話てこい』
分かったと頷く陽葵に彼はキスをして、そっと抱き締めた。

『っ!』
『ごめんなさい、そっとしたのに・・・力がついたのかな(笑)』
『傷口に触って苛めたろ(笑)』
『え・・・背中にあるの?』
慌てた陽葵が下りようとする・・・織田と佐条も驚き振り向いた。

『あ、颯さんもでしょ。病院・・・医者・・・』
『(笑)掠り傷を抉られただけだ・・・中で止まってもない(笑)』
『本当ですか?』
織田は颯を、佐条は蒼を確認していた・・・

『お前が(笑)離れたら俺はコイツに全部見られて恥ずかしいんだよな(笑)』
『 ・・・』
退けようとした彼女が静かになり皆が笑う・・・本当にどうするのかと 眺める・・・

『困った・・・・・あ(笑)・・・も一回、後ろ向いてくれますか?』
陽葵の呟きは皆を眺めながらだった。

笑い返す佐条は蒼へ指差していた・・・その先を辿ればズボンを履いていて・・・裾は丁寧に捲られていた事で騙したのだと気づき項垂れたが、傷があると思い出し離れた。

両手を握り陽葵を眺め微笑んだ。
『探してくれる?』
彼女の呟きに、見つめながら頷く蒼だった。

『見つけ出して自分ごと見てくる・・・。どんな場所だったか・・・確認して・・・この礼は返してくるね(笑)』
『どーなったか(笑)教えてくれ』
分かったと笑み頷く陽葵だった・・・




アンリッシュ 18

2019-03-18 09:04:29 | アンリッシュ


柚侑がいた場所から荒らされていった・・・その報告で調べる蒼達・・・それでも助けを呼ばない柚侑に呆れ、仕方ないかと颯が仲間を引き連れて出向いていった。

織田からの連絡で蒼が出向く・・・蒼の下は、あらゆる方法で全てを探りまくった。

次々と情報は集まりトップへ流していく・・・加勢するようにダートンが混ざりだし本家が蓄えた人達が現れ始めた。

焦りを押さえ月島達は蒼へ連絡していく・・・カメラで押さえ颯の下も連絡を取り、この場所も騒がしくなった。

皆の情報が行き交う事で落ち着かなくなった一花を離そうと奥の間へ茉尋が笑みながら呼んで待つ事にした。

騒音はない部屋・・・他の彼女達も集まり楽しい会話は続いた。
慌てるような顔で勢いよくドアを開けた人を驚いた顔で茉尋が見返した。

何かに気付くと苦笑いをしながらも皆へ笑み、話を聞いてくるねと出ていった。

どーしても気になる一花は静かに部屋を出たのだった・・・
一番手前にあるスペースには怪我をした人達が数人いた事に驚いた。

それでも痛みを堪えて話をしていた姿で出て行った先で何かが起きたのだと耳を済ませた。

『何処に?』
『ダートンの屋敷に』
『撃たれたまま?』
『そーです。腕と肩・・・』
『全部?』

『いえ、蒼さんが柚侑さんを車から落として・・・諦めたのか二人だけを』
『 ・・・』
『蒼に怪我は?』
『体には無さそうでしたが・・・』

『背から一発・・・』
そう言いながら戻ってきたのは柚侑だった・・・肩を担がれ血だらけの体を押さえ歩いてきた彼に驚いた。

『入ってる?』
『貫通してる・・・
すまない・・・足を引いて・・・本当に・・・』
項垂れたように呟きながら力尽きていく柚侑をソファーへ寝かせれば誰かが近寄り手当てを始めた。

『屋敷にと言ってた、彼女と交換する手筈は探すとか言って・・・』
『蒼は大丈夫そう?』
『俺を飛ばしたので・・・』
『親はいた?』

『マベルグループ・・・そこの息子と話をしてました・・・連絡方法を知らないだろうって脅してたが・・・』

『行くから・・・私が行くから、ソコへ連れて行ってくれませんか?』
会話に交ざり出した一花の声に驚きながら彼女を見つめた。

『全部・・・全部・・・私のせいだから・・・・』
『それでもね・・・一花ちゃん』
耐えていた一花の涙が溢れ落ちた・・・

『 ・・・大丈夫と教えてくれたから・・・取り合えず殺されず、お金が動かせる今は余計に大丈夫かもって・・・

本当に連絡出来なかったら危険なんでしょ?颯さんを拐ったのに・・・今度は蒼まで・・・
他の人達まで巻き込んで、表に出したくて柚侑さんを狙ったんでしょ?
そういう事ですよね?これ・・・』

『一花ちゃん・・・』
『フー・・・・(笑)。皆さんに大事な人は私にも大事な人で・・・
今の私がしなきゃ・・・私しか出来ない事・・・だから・・・(笑)だから頑張ります』

『一花ちゃん・・・』
『茉尋さんも大丈夫と信じて待ってくれますか?(笑)頑張れるって・・・私に力をくれますか?』
『ごめん・・・』

引き留めたいのに出来ない自分・・・危険な状態かもしれない颯に不安で怖かった。

行ってくれるなら・・・二人が守る子は自分も守るのに・・・色んな想いは複雑に絡み迷いは激しかった。

『一人で行ったら、別の誰かに連れてかれそうで・・・
あ・・・あの人・・・えっと・・・レミと一緒に捕まって・・・』
『ダーナル?』

『レミを大事に扱ってくれた人・・・知りませんか?』
『何?何をしたいの?』
驚きながら茉尋が呟いた・・・手当てがすんだ柚侑が静かに一花を眺め話始めた。

『あいつはダーナルの中間で、佐条健人と言う・・・』
『柚侑さんは知ってたの?』
『 ・・・(笑)むかーし・・・喧嘩もした事もある・・・蒼とも(笑)』
『同級生?』
苦笑いして頷く柚侑に驚く彼女達だった・・・

『柚侑さんの妹と気づいたから・・・だから、あの時(笑)優しくしてくれたんだ・・・』
『最初から居た?』
『途中からで・・・あ、だから私達は逃げられた?』

『 ・・・恐らく・・・
一花さん・・・彼に連絡したら、どうするんですか?』
『 あ・・・ ・・・蒼に怒られる・・・かな・・・』

繋がりを知り驚いた一花・・・暫く考えていたが怖くなったように小さく呟いた。

『どうしようと?』
痛みを堪えて話せと自分へ言った柚侑を眺め、諦めたように呟いた。

『あの人が怖くなかったから・・・その人に連絡して連れてって貰おうと思ったの。
そしたら組織って人達は増えるし、本当に私が行くから人も多くなるし・・・その間に助けられないかなって・・・思って・・・』

『出来そうですけど、一花さんが』
無理そうだと言おうとした彼女が急に微笑んだ事に驚いた・・・

『助けられるなら大丈夫・・・
その人に、ここの誰かが着いて一緒に入ってくれない?
私が話して駄々こねるから・・・連れ帰って貰う人は必要でしょ?佐条さんは敵だから・・・知り合いなら・・・大丈夫かな・・・』

『駄々って・・・』
『 ・・・(笑)交渉。蒼と約束したの。
それをして家族は見付けられるって・・・だけど今は蒼達が先。
怪我してるから・・・余計に怖くて出来なくなるから・・・助けて欲しいから・・・』

彼女の声に皆が押し黙る・・・いいのかと皆を眺めれば、それぞれに考える仕草は見てとれた。
一花が柚侑を眺め近寄り膝まついた。

『佐条健人さんは逃げも隠れんぼも上手でしたか?』
『 ・・・強いですよ・・・蒼より喧嘩はヘタですが・・・タケの腕はいいです』

『敵だけど・・・協力してくれそうですか?誰にも捕まらず、その屋敷に連れて行ってくれそうですか?』
『ダーナルの幹部が交ざりそうで・・・』

『それでも・・・嘘の交渉をして佐条さんと私で行けませんか?』
『して欲しいと・・・』
そうだと頷く一花を眺め、颯や蒼の仲間を眺めた。

『俺が行きます・・・屋敷まで・・・
だから柚侑さんは取引をダーナルとして下さい。
そして佐条さんを指名すれば・・・何とかなりませんか?彼女からの指名でと・・・・言ったら・・・』

『ダーナルなら一緒に行くぞ?』
『屋敷へ着けば一花さんが乗る車だけ通すはず。ダーナルは入れないでしょう・・・3人で入る事の条件は、一花さんがダートンと交渉して貰えば・・・』

織田が話し出す・・・静かに考えながら聞いていた柚侑だった。

『ダートンへ連絡して下さい・・・
あ、蒼のお父さんは?その人に・・・』
『 ・・・』
『私が知ってる・・・電話が来た事あるし・・・変えてないなら繋がるかも・・・』
かけてと急かす一花に、迷うように携帯を出した彼女が一花を眺めた。

『そうだ・・・電話してる場所が分かるって・・・分からない方法は知ってますか?』
ここでは駄目だろうと一花が呟けば、悲し気な目でイチ達が立ち上がって一花を眺めた。

『イチ君(笑)、してくれる?。前に言ってたの知ってるよ?』
『 ・・・』
『(笑)交渉する。絶対に取り戻すから信じて助けてくれる?』

その優しい響きに苦笑いをするイチと大多達・・・仕方ないと準備を始める蒼の下にいる子達を皆は眺めた。
茉尋の携帯に繋ぎ、今度は彼女を眺めた。

『兄貴は沢山の対策は考えてて・・・・事が起きたら迷わず動く(笑)そう言ってました。
だから、一花さんが始めたら(笑)俺らは動けます・・・』

『(笑)兄貴が戻れば直ぐに一花さんを取り戻す準備も始められます』
だから電話をと彼女を眺め一花に笑む子達に苦笑いをした。

フーと息を吐いた彼女が一花を見つめた・・・怖さはない笑みに変わっていた事に驚いたが、茉尋は番号を探し一花へ手渡したのだった。

『なんだ(笑)。久しぶりだな・・・
電話をくれても颯はやらんぞ(笑)』
『初めまして・・・』
『ん?どちら様かな?』

『貴方は今、何処に?』
『颯なら近くにいたぞ?それでもな、出せないと分かるだろ』
『(笑)声を下さい・・・』
『やらんと言った!』

『私の名前は藤條陽葵と言います。貴方は私を知りますか?』
『 ・・・』
『叔父様と話をしたいのですが・・・』
『 ・・・本物と証明出来ますか?』

『だから叔父様に変わって欲しいと聞きました・・・』
『 ・・・今は居ない・・・貴女はどちらに?』
『貴方が颯さんの近くにいるなら、颯さんと蒼さんの声が聞きたいです・・・出来ませんか?』

『戻るなら会わせましょう』
『そうではなく、今!二人の声が聞きたいです・・・大事にしてくれているなら戻ろうと思います。
皆へ怪我をさせる事は嫌になったので・・・』

『 ・・・』
『無理なら叔父様に連絡し直します』
『一時間後に連絡を。この携帯に必ず』
聞いた直後に切った事に皆が驚いた・・・力が抜けたように崩れる一花に慌て月島が支え椅子に座らせた。

『こっ・・・怖かった・・・・』
『聞けた?』
『あ・・・一時間後に連絡しろって・・・慌てた声の気もしたから二人の所へ行ってくれると思った・・・』

『直ぐに切ったから駄目かもって思ったわ・・・』
『怖い話し方で・・・これ以上聞きたくなかったの・・・』
それだけだった事に驚いた皆も、理由を知り力なく それぞれに座り出した。

誰かが笑い始める・・・その可笑しさに皆も少しの希望が持てたのかホッとするようだった。

『そう言えば(笑)、何で一花なの?』
『 ・・・新しく生きる為に(笑)』
『つけてくれたんだ(笑)』
『(笑)はい。だから呼ばないで下さいね!』
『嫌い?』

『皆の中で生きてるから(笑)一花が好きですよ?
本当の名前は怖いです・・・人が消えて・・・人の暮らしを止めてく・・・私と話せば、仕事は失い閉じ込められ・・・怪我までしてく・・・
昔は殺されたと聞いてます・・・そんな名前なら・・・』

『貴女の親が付けたのでしょ?』
『思い出せません・・・最近・・・弟がいた事を知りました・・・
サインしなければ、家族は殺されバァの家族まで居なくなると教えられて来ました・・・』

『 ・・・』
『貰うなら一花という名前だけ・・・(笑)それで一花が生きるなら・・・十分に幸せで(笑)それ以上はいりません』
『蒼さんが(笑)幸せにしてくれる?』

『はい(笑)、彼が迎えに来たから・・・イチ君達と会えたし(笑)颯さんが働かせてくれたから、皆にも会えた(笑)。
お金も大事と知りましたけど・・・生きるに必要と知りましたけど・・・
(笑)怪我をするお金は必要ないです・・・』

『捨てるの?』
『(笑)はい。家族が出来たから(笑)頑張って生きた褒美は貰えました』
本当に嬉しそうに話す一花に苦笑いをした。

『ついでに(笑)良い事考えました』
『(笑)怖い・・・』
『大丈夫です(笑)。上手く出来ます!』
『どんな?』
『(笑)秘密です!』

『いつかバラして(笑)』
『(笑)はい。あ、柚侑さんは大丈夫・・・』
だったかと探せば眠るようにソファーに居た姿に驚いた。

『(笑)大丈夫よ。手術も出来る医師は居るの(笑)。ちゃんと手当てしたから寝れてるわ』
『良かった・・・レミが悲しまないですみますね・・・呼べないのが残念ですけど』

『そうね(笑)。何かとね』
想像しやすいと笑う二人だったが・・・捕まっている二人を思い出し、静かに祈る一花の姿に微笑んだ。



1時間後・・・連絡をしてみれば、直ぐに出た声に驚き思わず携帯を眺めた一花に皆が驚いた・・・もしもしと電話の向こうから聞こえた声に、苦笑いをする茉尋が 震える一花の手を笑みながらつついた。

落ち着けと自分に言い聞かせ静かに携帯からの声を聞いた。

激しい音や息遣いは聞こえ手を握り締めた一花だった。

『それ以上したら、貴方へ許す気持ちは消えます・・・その音・・・止めて下さい・・・』
『 ・・・』
想像出来たのかと驚き、静かに誰かへ命令したようだった。

『見えないからと場所を離れたなら・・・貴方との話も終わりです』
『させていない・・・』
『ならば携帯を颯さんへ。終われば蒼さんへ渡して下さい。
二人と話がしたいです』

『スピーカー』
『お断りします。それぞれに、ちゃんと話をしたいので・・・』
分かったと呟き、少しの間が出来た事が怖くなり祈るように聞き入った。
息の荒さに怖くて涙が溢れる・・・

『一花だって?(笑)勇気が持てたな』
『 ・・・』
『柔じゃねーぞ(笑)一花・・・』
『茉尋さんも頑張ってますよ(笑)』
『(笑)決めたのか?』

『はい(笑)。頑張りますね。だから痛いの少しだけ我慢して下さい』
『一花(笑)』
『本当にごめんなさい・・・』

泣くのを我慢した自分の声が止まる・・・それでも時間が過ぎれば切れてしまいそうでグッと耐えて耳をすませた。

『なくな(笑)。今、隣で寝てるから待ってろ(笑)大丈夫だ・・・』
『はい(笑)』
二人の辛さが伝わるようで震える手を押さえながら静かに待った。

『一花・・・触ってねーけどな(笑)』
『(笑)見えてるから大丈夫。痛いのやだって言ったのに・・・』
『一花(笑)』
『頑張るよ(笑)。ちゃんと聞いてね。
始めるよ・・・佐条健人さんと織田さんと行くから待っててね・・・我慢して頑張ってくれる?』

『(笑)っ!・・・・何処に居た?』
『皆の場所よ・・・』
『約束の始まりか?』
『ん(笑)・・・始めるよ・・・だからね・・・』

『 ・・・ちゃんと考えたのか?』
『ん(笑)』
『俺も始めるぞ・・・』
『頑張れるよ(笑)。自分ごと・・・守るよ・・・だから頑張ってね・・・やだから・・・』

『お前が?』
『これは(笑)聞かれてるの?』
『(笑)聞き耳たてんの上手いしな。どー出来んのか見てやる(笑)。ついでに利用してやるぞ!』
『(笑)調べてくれてありがとう』

『 ・・・』
『(笑)誰に捕まっても同じだよ・・・』
『(笑)変わんねーな』
『だね(笑)大丈夫・・・って言ってみて』
『 ・・・』
何が大丈夫かと蒼に聞く声に苦笑いをした一花に、皆が驚きながら皆は眺めた。

『私の呪文なのに・・・その人は、ほっといて構わずに言って・・・』
『大丈夫だ(笑)。お前は生きて行ける・・・(笑)これでいいか?』
『ありがとう(笑)。頑張るね』

フッと笑った蒼が痛んだのか唸る声になり押し黙った。
手の震え・・・茉尋と月島が手に触れ大丈夫だと言ってくれた。
溢れた涙を拭き取り静かに耳を済ませた。

『もしもし?』
『 ・・・その二人は私の恩人でもあります。命が消えたなら、全部を終わらせ死んでやります。だから諦めて下さいね』
『殺すぞ!』

『脅しても無駄です。生きて返して下さい』
『貴女が屋敷へ来れば帰しましょう・・・』
『何処かへ捕まっても困るので一緒に行く二人に頼みました』
『迎えに』

『いりません。二人が颯さんと蒼さんを連れて帰れるように一緒に行くので。それ以上の傷は増やさないで下さい』
『 ・・・』

『 ・・・その場所に叔父様も居ますよね・・・代わって下さいますか?』
『 ・・・』
雑音はしたが切れずにホッとして待った。

『陽葵・・・本当に君か?』
『はい。その二人は私を他の怖い人達から守ってくれていました』
『利用してるのに?』
『利用価値があったからと知るでしょう?、だから叔父様も私を利用したのでしょう・・・』

『 ・・・』
『彼らを迎えに二人が私と一緒に行きます。殺さずに帰してあげて下さい』
『陽葵も来るなら生きて待たせよう』
『行きますが、約束に反したら消せる事を思い出したので・・・それを実行しますから覚えていて下さい』

『 ・・・それをしたら』
『二人を無事に・・・今は見てないので叔父様と話もしたくありません。
さっきの人と約束したので、叔父様はちゃんと見張ってて下さいね』

『言えるほどに(笑)教わったわけだ・・・』
『生きる為に必要な事を学んだだけです。本当に私が必要なら、見張りを』
『分かった・・・』
『二人の状態を見てから決めます・・・』

それだけ言って電話を切った一花に、皆が驚きながらも少しでも前へ進めた気がしてホッとしていた。
次は自分かと、目覚め様子を伺っていた柚侑が苦笑いをしたのだった。





アンリッシュ 17

2019-03-16 00:28:19 | アンリッシュ

隙をみて彼女を連れ出した蒼・・・束の間の自分達へ癒しを求め出掛けた。

朝陽が上りそうな頃・・・見張る人達の寝惚けている姿も眺め 静かに二人が外へ出た。

追われている足音もない・・・離れた場所に置いた車に飛び乗り二人は場を素早く離れたのだった。


ドライブのように誰も走らせていない車道を走り抜ける。
少しずつ空は明るくなり始めると、他の車が一台・・・また一台とあちこちから増え始めた。

それでも地方へ行くのか蒼は車を停める事なく突き進んでいた。
初めて見るような景色は様々で、森のような場所から街へ移り住んだ場所・・・そのどちらでもない自然が広がり視界は遥か遠くへ伸ばせるようになってきた。

初めて見る海に見惚れるように黙り眺める・・・続く道路の真横を 見えない果てのように陽射しを照らし 揺れる波の眩しさに笑みを溢した。

暫く走らせた蒼・・・小高い場所を上りきり車を停めた。
色んな姿をみせる波間に笑み、潮風に浸るように眺める・・・窓へ両手を乗せて凭れ、その場を感じ身へ染み込ませるような陽葵の笑みに蒼は笑みを浮かべた。

聞いた事はない自然の音に耳を傾ける・・・静かだったが何かをする音に蒼へ振り向けば座席のスペースをあけ足を伸ばしていた。

『車は便利なのね(笑)』
そうも出来たのかと眺め、また海を眺め始めた彼女・・・不意に引き寄せられた事に苦笑いをして彼を見つめた。

自在に自分を操るように運ぶ蒼が可笑しくて笑う・・・彼の足へ座らされ抱き込まれた状態・・・それでも窓から見える景色はあったと見始めた。

『ん?』
彼に凭れたままに角度が変わる・・・不思議だと笑み彼を眺めれば口を引き笑う姿に笑み返した。

『(笑)潰せる?』
『(笑)頑張れ・・・』
フッと笑い呟いた彼女にキスをした。

『これは独特の香りね(笑)、海っていう特別な・・・』
『音も・・・』
『(笑)私も音の方が心地いい・・・連れてきてくれて(笑)ありがとう・・・』
『いつでも(笑)』

見渡す限り果てまで続く波に照らされる眩しさはキラキラ光り色んな綺麗さが不思議に見えた。
音さえ変化もする事に楽しくて嬉しくなった。

『不思議(笑)。子守唄に聴こえてきた・・・』
『早起きしたしな(笑)、眠くなったと言え』
蒼に言われてキスをする・・・彼の口許が微笑んだ事に笑み返した。

『(笑)苦しくないか?』
『平気だけど貴方が痛くないの?』
横向きに座らされ凭れた自分・・・だから言ったが、器用に互いの体の間へ手を入れ自分を移動させ向きを変えていく。

新たな角度が変わるが殆んど寝る状態に近くなり可笑しくて笑った。
彼に乗り上げた状態に笑う・・・

『この狭さは貴方が苦しくなるよ(笑)きっとね・・・』
凭れた彼女の呟きに優しく背が囲われる・・・彼の伸ばした手がケットを掴むと優しく包んでくれた。

『寝心地も良くなったわけだ(笑)』
笑みながら目を閉じた彼女が そうだと頷いた・・・静かに窓を閉めロックした彼・・・静かな時間の中に浸る二人だった。


気づけば彼女は起きていて、自分へケットがかけてあった事に苦笑いだった。
シートに凭れ窓から眺めていた彼女を抱き寄せた。

『(笑)俺をあっためとけよ・・・』
『寝にくいと思って(笑)』
彼を跨ぎ倒れそうな自分を支え彼に微笑んだ。

笑みの優しさに照れる彼女・・・自分だけのと思える笑みに見惚れる・・・そっと照れた笑みで近寄る彼女・・・唇にキスし見つめた陽葵に笑み返した。

頬を掴む手が温かい・・・優しく耳元へ囁く声に彼女を包み込んだ・・・愛してるという囁きに落とされる・・・既に溺れているのに彼女の声音で身は喜んだ。

恥ずかしいのか自分でした事の照れに顔を隠した・・・
『ココで抱けないのが残念(笑)』
囁くように彼女に呟けば真っ赤な顔で自分の唇を塞いだ彼女を見つめた。

触れた彼女の手にキスをする・・・抱き込んだ彼女に笑み静かに息を吐いた。

『戻れば確実に狙われてく・・・本格的に探し始めたから・・・近いはずだ』
『怖い・・・』
『だな・・・だけど、それを利用してバァもその家族も・・・そして陽葵の家族も探せるはずだ・・・
投げ出せるなら捨ててしまえ・・・陽葵が必要ないなら。

その間に家族の居場所を確認させて欲しいと頼んでみる・・・生きてる可能性が高い・・・何処か・・・病院か何処かに監禁されてるはずだ。

弟は近いと聞いた・・・会えなくなるとも聞いてる・・・一度は会ってみたいと思わないか?』

『それが本当かは・・・』
『だな・・・だから会わせて欲しいと、ならば全てを渡せると交渉する。
会えなければ諦めろと言えば、事は先へ進むはずだ・・・陽葵が生かされている理由だから』

『 ・・・』
『頑張れる(笑)。終われば俺の所へ戻れ・・・駄目だったら拐いに行くさ(笑)探し出せるからな・・・』
彼に言われ待てる自分がいる事は分かる・・・その間に一人でする事の不安が大きかった。

『 ・・・魔法の呪文があって・・・』
笑みながら聞いていた彼女が、少しの間で考え始め思い出したように小さく呟いた。

『ん?』
『いつ聞いたかも忘れたけど・・・これも今、思い出したんだけど・・・』
『 ・・・バァから?』
『んー確か、バァにも内緒って・・・言った事も話した事もなくて・・・』

『バァと二人で暮らしてたろ・・・』
『そうなんだけど・・・昔・・・小さな頃に夢で見て思い出したの。だけど言っちゃ駄目な言葉で・・・向こうの人達と話せる呪文があったの』

『言ったらどーなる?』
『 ・・・終わりって・・・だけどね、悲しむ人達まで出てくるって・・・苦しくなる事もあるって・・・本当の最後に使えるんだよって言ってた』

『誰だった?』
『顔も覚えてない・・・その声が聞こえて来ただけなの。私なら覚えてられるから、出来るよって・・・』

『サインする理由を知ってたか?』
『少しずつ・・・10の歳を迎える前から・・・意味は分からなかったけど何かを聞かれてた・ ・色んな言葉もあって・・・。

叔父さんが画面から見えない場所で慌てながらサインをしろって・・・だからか分からないけど・・・サインしてる間に声にしてるの・・・』

『理由・・・意味に気付いたのか?』
『 ・・・たぶん』
不安そうな声音で頷きながら答えた彼女を見つめた。
抱く力が強くなり、それは駄目な事かと彼を眺めた・・・

『何処まで蔓延っているか俺にも分からない・・・海外の・・・各地にあるモノは陽葵が捨てれば、その場へ吸収されると聞いた。

本家へ流れてくるモノは全て消えると・・・そして次に引き継ぐ者も居ないそうだ・・・
もし・・・いつか先で・・・陽葵に子供が産まれたら、その子が引き継ぐ者として囲われるはずだ』

『それも嫌だ・・・離されるって事でしょ?』
そうだと思うと頷いた蒼へ凭れた・・・優しく撫でて落ち着かせる彼だった。

『それを当てにしたい人達が陽葵を狙ってる・・・それは海外の人達までいるようだ・・・健全な状態・・・だから止められずにいる状態になってると言ってた。

陽葵はそれを利用して探し出す・・・見つけ本人と会って全部を確認する・・・譲れる可能性がある言葉が必要かもしれないと引き延ばす。
無理だったら小出しに・・・』

『半分?』
『出来るのか?』
『そんな意味もあった・・・』
『ならば言ってみろ・・・それから交渉し直す(笑)。バァ達と会えたら嬉しいだろ?』

『ん(笑)、会いたい・・・』
『最後の足掻き(笑)。考えまくって最善を考えてく・・・』
『隠れんぼね(笑)』
『もし・・・』

『いい(笑)。大丈夫・・・貴方の手に誓ったから・・・約束は守ってくれるよね?』
『迎えに行く(笑)花の香りも探しながらな・・・』

『分かった(笑)。頑張れるわ・・・だけど怪我はしてないでね・・・ドキドキしながら待つのも嫌なの・・・変な不安が』
大丈夫と微笑んだ蒼に抱き付いた・・・

『俺と居る事は知り始めた・・・』
『煩くなるから・・・』
『そうだ(笑)頑張る力が持てるように・・・陽葵を愛した俺は手離さない(笑)絶対に探すと誓う為に来た。
信じて待つ(笑)俺を生かすのも陽葵だから・・・陽葵しか出来ない事でもあるから・・・』

そうだったと改めて気づく彼女・・・頭から首もとへ優しく撫でていく・・・頑張ると誓うように・・・大丈夫と頑張れるように・・・互いを励ますように・・・

フーと息を吐く・・・陽葵も同じような仕草をして心を決めた笑みに変わった。
行くかと呟く笑みに彼女が頷いた・・・頬を掴み目を合わせた蒼が優しく口付けたのだった。




帰り道・・・・
『あー(笑)。車を替えたのにバレたか・・・ネットワークが凄いな(笑)』
郊外を走らせていた・・・街中へ入れば逃げる道は閉ざされるから・・・それでも、いつの間にか後ろへ付く車は増え始めているようだと気づいた。

『気を付けて・・・』
分かってると呟きながら誰かへ電話を始めた蒼だった。無事を祈る・・・木霊する彼の言葉を思い出し自分の中へ大事にしまい両手を絡めて祈った。

その姿に笑みながら颯の陣地へ車を走らせる・・・荒れた地域へ入り込めば既に待ち構えた颯の手下達が見えた。

連なる車を停めていく・・・転がり簡単に横転していく車をよそに蒼は走り抜けたのだった・・・

廃屋へ車を止め、言われた場所へ彼女と走る・・・厚みがあるドアは次々と閉じていった。

楽し気に叫ぶ颯の声が響く・・・スピーカーから出されている声に苦笑いをして階段を駆け上がった。

待ち構える人達の笑みでホッとする蒼に不安は消え去った気がした。

待ち構えていた一人の女性が部屋へ案内してくれた・・・他にも数人いた女性達に驚く一花・・・初めましてと呟く人達が一人ずつ自己紹介を始めた。

『一花ちゃん(笑)。最後は私ね。
私の彼は颯よ・・・前に会いに行ったけど(笑)会わせてくれなかったのよ?』
『会えて嬉しいです(笑)』

『私も(笑)。楽しみながら男供を待とうね!』
弾むような可愛い声に笑み返す一花・・・颯と似ていて楽しむ事が一番のように皆を励ましていく彼女を知った。

優しく笑み返す・・・彼らは大丈夫と微笑んだ・・・皆の姉のように落ち着かせる彼女の声でホッとするのだった。


海へ行った話になり、本当に初めて見たのだと言っても信じて貰えなかった。
深く追及され濁せば笑って誤魔化し他の女性へ話題を振ってくれる彼女に感謝した。

二人だけになり茉尋が笑みながら話してくれた。
『皆も(笑)同じよ。だから声にしたくないなら、しなくていいの。言ったら落ち着ける人もいれば嫌だと思う人もいる。

だからね(笑)、そんな言わなかった事で気にしない・・・誰にも一つくらい秘密があるのよ』

『(笑)マヒロは?』
『あるよー(笑)』
当たり前と笑って呟く彼女に、静かに歩み寄った颯は彼女を捕まえ目を合わせた。

『(笑)大好きよ!』
『誤魔化すな(笑)、どんな秘密だよ・・・』
『(笑)言えないから秘密と知ってよ』
『俺には?(笑)言わねーのか?』
『皆に知られたら秘密って言葉が消えちゃうじゃない(笑)つまんないー』

言葉遊びのように楽しむ彼女を抱き込んだ颯が見つめられ照れた顔になった。
互いの想いは深いのだと見ても分かる・・・自分まで嬉しくなった。

『一花の笑いは何だ(笑)』
『んー(笑)幸せのお裾分けが嬉しかったから・・・』
『 ・・・へぇ』
意味が分からないと取り合えず呟く颯に笑みながらキスをした彼女は自分から引き離し一花に微笑んだ。

彼女は気付いたような顔だと笑み返す一花だった。



休憩と蒼が戻ってきた・・・既にソファーで寝落ちしていた一花を抱き寄せ眠り始めた姿に驚いた。

茉尋が笑みながら毛布をかけてやった・・・綺麗に組み込まれたように蒼の上で収まり眠る一花・・・抑え込む蒼の手も離れず器用に彼女は眠る・・・。

『これは(笑)いつもしてるの?一花ちゃんも疲れないの?』
眺めながら呟く彼女に苦笑いをして、そうだと頷く颯がいた。

眠そうに呟く声は小さく始まった。
『首が・・・いたっ・・・離して・・・くれる?』
『 ・・・』
答えずに彼女の首の後ろを少し撫で眠りへ戻っていく蒼・・・

『横になって寝たいのに・・・』
一花の呟きに静かに移動し体を横にした蒼だった・・・

『下ろしてよ・・・落ちる・・・』
『落とした事はないだろ・・・』
『潰すよ・・・』
『 ・・・頑張れ』
『ここの隙間がいい・・・』
背凭れがある場所の肩をつつく一花の指・・・その手を押さえ寝始めた蒼だった。

驚きながら聞き入る二人・・・グッと笑いを堪えた颯に我慢だと口を抑え込む彼女と耐えた。

諦めた一花の声が止まる・・・本当に寝たのかと彼女が覗けば驚いた顔で颯を眺めた。

穏やかな笑み・・・ホッとしたような彼女の笑みの優しさに引き寄せた颯がいた。

『一花の保護者みてーだぞ(笑)』
『同じでしょ(笑)可愛い二人を眺めたら幸せーって(笑)思えちゃうよね・・・頑張れる子で良かったね(笑)』
自分を抱き込む颯にキスをした彼女に照れながらも二人を眺める颯がいた。

『これで本当に連れてかれたら怖くて』
『柔じゃねーぞ(笑)一花もな。
もしもは話し込んで計画してた(笑)だから、マジで事が起きたら一花を探しまくるだけだ(笑)』

『(笑)人脈は広げたしね。頑張った颯に褒美を遣わす(笑)。何がい?』
『茉尋(笑)食わせろ』
『 ・・・休暇中でしたの(笑)』
静かに笑い颯へ囁いた彼女を捕まえた彼だった。

『あれしてよ(笑)どれだけ潰せるか試してみよ』
『お前・・・(笑)お前でも余裕で一花を抱き上げられるぞ・・・』
『そうなのよ(笑)確かにそーだと思った』

『ん?』
『隣に座り直そって(笑)一花ちゃんの腰を押したらスーって(笑)。クッションに乗ってたから余計に動いたけどね(笑)一花ちゃんまで笑って可笑しかったわよ・・・』

思い出したように笑い始めた彼女に、笑みながら見つめる彼だった。

楽し気な会話に笑む一花・・・顔の向きを代えた途端に毛布がより引き上げられた・・・彼を眺めれば笑み返す蒼は寝ろと隙間へ優しく落とし向きを変えて眠り始めた。

より囲われた一花・・・温かいと笑み 寄り添うように凭れ眠り始めたのだった。

潰されるかと焦り眺めれば苦しそうでもない一花の様子に驚いた。
蒼の服を掴み眠る一花の寝顔は穏やかで・・・爆睡し始めた蒼に気付いた。

『寝てても気は使える蒼だったな』
楽し気に見下ろす颯は彼女を連れ出したのだった。