囲われた場所へ大きなテントが張り巡らされ始めた事に驚いた。
何より警護者達がいつもより近くで待機している事に苦笑いだ・・・その理由は外の出来事が始まったから・・・
数多くの人達が準備をと出入りする・・・回り込む面倒さで壁が壊されもしていて笑えた。
その笑みが出来る自分にホッとした・・・受け継いだ事を終わりにしたかった母を知れた・・・父も出来ず自分へ回ってきた・・・それを頑張ろうと知らずに来た自分・・・
蒼に出されず、ここで生きたなら・・・未だに母に会えず誰も知らなかったはずだ・・・母の願いさえ。
色んな思いが駆け巡る・・・テントの端で自分を見ていた人に気づく・・・蒼達の父親、加賀美だと分かる・・・そしてマベルという場所の幸坂という人だった。
話がしたい人達は警護者達が丁寧に断り離してくれた。
何より叔父が始まる前から事は進められないのだと知るからか、引き止めては話し込んでいる姿もあった。
機材まで運ばれ驚いたが、家の中へ入り気分転換だとラジオのスイッチを入れたのだった。
それはボリュームのスイッチだったが・・・外へも聴こえるようになったのは、何時からだったか思い出せない。
それでも嬉しかったから・・・一日中、聴こえるようにスイッチを切った事はなかった。
流行りの曲・・・そう言った蒼を思い出す・・・流れる音楽は、ソコにいる人達にも笑みが溢れる事を知った。
運ばれたモノは自分が今日着る為の服と靴だった・・・準備してくれたのだろうと着込むと、新しく付けてくれた屋根の下で待った。
「陽葵様・・・
これから始まりますが、全て近場で待機させて頂きます・・・理由は」
「皆さんが危険になりませんか? そうなりそうな状態になるなら、離れてくれますか?」
「 ・・・」
「守る仕事でも、命を投げ出されても悲しいだけです。
大丈夫と終わりにする私の為に怪我をしたら・・・そっちの方が私には悲しい・・・私の為なら・・・必要ありません」
「 ・・・」
「違います」
「陽葵様 ・・・我らは貴女から雇われていません。主の為に仕事をしているのです・・・陽葵様の為でもなく(笑)主の為です」
「気にせず待機します・・・離そうとするダートンの主へ声にしてくれませんか?」
「だけど・・・」
「(笑)仕事がちゃんと出来るよう、頼んでいるだけですよ・・・」
「お願いしますね(笑)陽葵様・・・我らの為に・・・」
彼らの呟きにジッと見返す陽葵・・・諦めたように頷いた事にホッとする姿があった。
迷うように眺めれば大丈夫と主の為だと新たに声にする・・・諦めるしかないと陽葵はテントの方を眺めたのだった。
勢揃いする中へ入り込む・・・その人達も正装していた事に苦笑いだった。
モニターは、いつもより大きく・・・写された人達の数も多かった事に驚いた。
それぞれの報告・・・今までなら、どんな時も途中で交ざりサインをしたら出されていた・・・居なかった時間の様子はこうだったのかと陽葵は眺める・・・その時間は静かに流れて行った。
途中でダートン側からの報告・・・その他にと声にした叔父の声は、最後にと止められ別の場所のオーナーへ回された。
代表として当番だと声にした人が纏めていく・・・そして陽葵が呼ばれ前の席に着けば、少し離れた場所へ移動した叔父の姿があった。
彼女は構わずにモニターの向こうを眺めた。
「レディ(笑)、報告は完了した。
まずは、そちらから話があるそうだが・・・」
「はい。宜しいですか?」
陽葵の声に、その人は後ろへ控えていた人達の顔を確認するように眺め、了解は取れたと笑みながら陽葵を見返した。
「では(笑)話したまえ・・・」
「話す言葉は一つ・・・」
「声を・・・」
「all out」
そう言った途端にざわつくように、それぞれに話し出した人達の姿があった。
叔父は驚き、どんな意味だと陽葵へ詰め寄るが警護者達は引き離した。
ダートン側席でも、騒ぎだし叔父へも詰め寄っていた。
「取り分を」
新たに言語の違う言葉で話され、ダートン側の驚きは静まり出した。
「10」
「継ぐ者を」
「ダレン様へ全て」
「声を」
「Tribute fromZ toダレン 」
陽葵の呟きに、思わずだろうモニターの真ん中に座っていた人が立ち上がり、その場に居るのだろう人を睨むように眺めた。
それでも、それぞれの言語で話し合いのように始まり陽葵は待つように椅子の背へ凭れた。
向こう側の人達の様子が可笑しいと、ダートン側は密かな相談をする・・・叔父に詰め寄り聞きだしていた。
『ダートンへ、訳して戴きたく・・・』
叔父が恐る恐る声にする・・・真ん中で写る人が手を差し伸べ静止するようにと声を止めた。
グッと陽葵の身を押し顔を眺めた。
『すみません。私の役目を終わらせたく願い出ました。
承認されれば、終わります・・・その後は叔父様が話をし提案して下さい』
『されるわけがない・・・代々から繋いで来たモノぞ?』
『叔父様が作ったモノでもありません・・・』
『お前の父親が遺したんだぞ?』
『知っていましたか?本来・・・引き継ぐべき人は母でした・・・』
『聞いていない・・・』
『 ・・・その話は何故・・・繋がなかったのでしょうね・・・』
『後継者ではなかったと?この方が?』
まさかと驚き呟く人達・・・そんなはずはないと驚きながら、それぞれに互いを見あっていた。
些細な囁きは叔父へ少しずつ不信感を持ち始め・・・ついに主導を握り始めたのは加賀美と幸坂の場所マベルだった。
『静かに・・・』
スピーカーからの声で一斉に声を止めモニターへ視線を戻した事に苦笑いをする人達もいた。
『陽葵・・・そちらの言語で始める』
『はい』
『君の声は承認された。よって、この瞬間から完了とす。いいですか?』
『はい』
『駄目だ!駄目です・・・反故して頂きたい』
慌てるように声にする叔父を眺めたが、向こう側の人達は苦笑いをしながら説明だと代表に声にした。
『ダートンの皆様は正統に引き継がれていないようだ。
全ては正統に引き継がれ、ダートンは陽葵へ繋いだ。
その前・・・それは陽葵の母だったが・・・それでも正しく娘へ繋がれた事で、こちらから声に出さなかった。
無駄なサインさえ止められなかったのは、正統な主 陽葵だったからです・・・藤條様は正しく管理されなかった・・・
よって、ダートンは組織から名を完全に削除する・・・』
『陽葵から繋ぐべき』
『無駄だ・・・彼女は全てを手放した・・・誰の管理でも彼女の子でも再び戻れる事はない』
『何て事をした・・・』
『陽葵様・・・』
『陽葵!』
『オールアウトとは?何だ!』
叫び睨むように聞く加賀美を見返した。
『そのままです。組織から出る・・・全てを出し終わりにと願い出ました』
陽葵の声に怒りながら近寄る・・・警護者達が陽葵を囲うも、他の警護者達が現れ対峙する間に幸坂が引き離して連れ出した。
それぞれが銃をだし、それぞれの守る人達から銃口を避けるために銃を向け始めた・・・
止めろとモニターからの声・・・駄目だと焦る声はスピーカーから響く。
陽葵の警護者も銃を出し静かに陽葵の近くへ向かった。
震えた手を押さえ陽葵の身へ銃を突き付ける・・・その姿に回りは驚き幸坂への説得も始まった。
死んだら終わり・・・完全に止まる・・・繋ぐべき者が消えたら・・・次の為に・・・潤うモノが消える・・・・・・全ては自分達のモノのような物言いだった・・・
だからダートンは・・・やはり裏切り者は・・・脱退して良かった・・・先ずは大丈夫・・・揶揄する声はスピーカーからも聞こえてきた。
静かに銃口は陽葵へ集まり始めた・・・
この醜い姿を晒す人達の中に自分も含まれるのだと思えた・・・何より、自分の次へ繋ぐ先は計画されていた事に気付いた。
それで終わるなら構わないと思えた・・・それが願いだったなら、自分が完全に終わらせればいい・・・そう思えた。
逝けばバァに会える・・・バァの家族へ運んでくれる事を願った・・・約束でも確実とは言えない・・・死んだら確認も出来ないから。
それでもダレンという人を信じ母は考えた・・・産まれた私を利用してだ。
正統に引き継がれて居なかった事は本当だった・・・そんな組織の存在する中でまともに先へ繋げられるはずもない・・・
それでもダレンという人は欲しいのだろう・・・その理由は知らないが、母を諦めた・・・事の次第の予測はしても自分へ声を出す事もしなかった。
ならば全てを・・・そう思った・・・全てを終わらせる絶好のチャンスがきた・・・走り出した人が見え、笑みながら駄目だと静止させる・・・驚きながらも足を止めてくれた事にホッとした。
-やっとだ・・・-
そう思えた瞬間・・・嬉しくてだろう微笑む自分に気づけた。
笑みで逝ける・・・その事に感謝して見返し、彼女は目を閉じたのだった。
銃声・・・
聞いた事のない音が始まったが、それは何かも知りたくもなかった・・・楽しい日々が次々と思い出され嬉しくなった。
銃声や誰かの叫びが始まる・・・何処だ何だと言い出し始めたが構うなと目を開けるのも諦めた。
スピーカーからの声さえない・・・怯えた声まで始まり・・・不意に捕まれた腕に驚いた。
顔を引きつらせ辺りを探りながら逃げ場を探していた幸坂だった・・・
『君と生き、先で子供の為に力をつけよう・・・』
『 ・・・』
まだ諦めていないのかと驚いた・・・痛みが走る・・・飛び交う銃声の音は激しいのに自分へ来なかった。
今はやっと掠り傷・・・不思議とガッカリした自分に気づいた・・・テントの中はテーブルの下へ隠れる人達がみえ、何処かへ伏せながら逃げていく姿もあった。
身を隠しながら警護者達は自分を見ていた・・・蒼達の父、加賀美が伏せ・・・様子を探りながら幸坂へ来いと呼んでいる。
繋ぐ彼の手を離そうとするが、食い込むように握り離されなかった・・・それでも撃たれていく・・・加賀美が撃たれた姿に気づく幸坂が驚き焦りながら引き返した・・・激しく揺れた身は自分を掴む手が緩んだ。
視界が揺れる・・・ようやく迎えたモノは身へ突き刺さった気がした・・・
幸坂が激しく揺れた途端に今度は彼女が揺らぎ地面へ倒れていった。
陽葵を守る人達は既に撃たれていて、それに耐えながら自分へ近寄ろうと這っていた。
この惨劇に何処から始めたのかと探り弾が飛んでくる場所を探った。
銃を構えながら多勢の男たちが現れ始めた事に気づく・・・それは、いつか見たダーナルとカナンという組織の者達だった。
ダートンの主を探しだし足へ撃ち込んで動きを止めた事に驚いた・・・結果だと聞いている声も大きく、回りも事の先を教えろと叫ばれていた。
騙すなと脅され、その場にいた者達を捕まえていく・・・
仲間がつつき何だと見返せば、彼女が倒れた場所には幸坂しか居なかった事に驚いた・・・
『加賀美様は?』
『あいつらに捕まり今はテントの中だ』
『なら彼女は彼らが連れ出した?』
『そう願い大丈夫と祈ろう・・・』
『それでも探し確認しないと・・・』
確かにと頷いた仲間と支えあい、静かに場を離れたのだった。
壁沿いを這う・・・少し前に彼女と彼らが会った場所・・・そこは既に壊してあった事に驚いた・・・。
何より知らない男たちが現れ自分達を背負い脱け出した事に声も出せず互いに見あった。
連れ出されている事で利用し倒してから逃げようとふんだのに、着いた場所には知る男が笑って待っていた事に驚いた。
『君・・・』
『(笑)病院に行くんで、全部捨てて下さいよ。そろそろ警察も着くんで(笑)巻き込まれたって事で行きますよ!』
『だから(笑)君はスーツを?』
フッと笑った颯は仲間をそれぞれに乗せ自分達までバンへ乗せ車は走り出した。
『そうだ、撃たれた彼女は?急所は外れてたか?』
『大丈夫だったか?』
『彼が連れ出したんだろ?』
『(笑)早々にぶっぱなす事は予想外で・・・俺らより早く行った事も・・・まじ(笑)ヤバかったですよね・・・』
『君が言った通りだった・・・』
『あの笑いで飛び込んでったから俺の方が焦りました・・・(笑)それでも、慎重に近付いて連れ出せたので』
『本当に笑みながら撃たれるのを待ってた・・・何を思い出してたんだか・・・』
『それでも、君には感謝する・・・』
『いーえ(笑)。この前の礼ですよ』
止血を手伝い、状況の報告のように話してくれる颯に感謝した。
守れなかった事は戻り報告した時に謝ろうと、今は彼女の無事を祈ろうと思う3人だった。