tamiのブログ

このブログ・・・妄想ー空想大好きな私が、勝手に楽しんで・・・勝手に文字にしています。ボロボロですが(笑)

ゆめ B-5

2021-06-30 08:40:09 | ゆめ



大巫女達が自分を引き留める・・・多少は動けるはずが微動だにもしなかった事に驚いた。

そして知らない巫女様の姿に驚きながら見つめれば・・・

「ナギと申します・・・
今日までハルを鍛え足りない力を分けました。
そなたはココで終わらせなさい」

『ハル巫女だけでは!』
「終わらせる力があります。ハル巫女が抑え込んだら、滅しなさい」
『その間に・・・もしかしたらっ!』

「その覚悟は出来ています。だからハルが行ったのですから。それを無駄にしてはなりません」
『ですが!』

「今!そなた一人しか・・・祓う力を持つ者は居ないと知るでしょう!
この先、誰が神殿を守れるのです?祓えなければ汚れていくだけ!違いますか?」
『 ・・・』

その迫力に声まで失う・・・その視線の先に代々の大巫女達が自分を見つめていた事に気付いた。

「ハル巫女が集め封じます・・・そなたは終わらせるだけです。
私の力を持たせ向かわせました・・・迷わずに祓いなさい・・・残された者達の為に・・・何より、一人立ち向かったハルの為に・・・」

目の前で自分へ諭す巫女・・・それでもと迷うトギ巫女・・・その向こうでは出入口の所で新たな悪鬼が渦巻いてきた。

ハルが 散ろうとしているモノを引き留めていた・・・地へ突き刺さっている剣はブルブルと震え、今にも抜けそうな勢いもあった。

対峙しながらも守を唱え剣へ触れる・・・神社の敷地へ押し込むように仕向けていった。

真ん中にある社・・・両扉は開ききっていたが白でもない不気味な色の何かが吸い込まれていく様子がみえる。

何処からともなく漂いながら流れてくる・・・この近場へくればスッと社の中へと誘い込まれて行くようにも見えた。

何もない空間だが、その手で押さえている気までする・・・本当に扉があるように見えるのだ。

彼女の体重をのせ、扉を抑え込んでいるのにハルの身が押し戻される・・・その度に彼女もまた押し込み 守を唱えた・・・

時に札を取り出し空へ放る・・・生きているような動きで舞っていた護符・・・それは何かを探しているようにみえる・・・

そして不意に動きをかえ流れるように見つけた場所まで突き抜け向かった。

木の葉のような小さな小刀は・・・スーっと壁へ張り付くように流れていく・・・その護符の後を追うようにナイフ迄が舞った。

そこは護符が緩み剥がれそうな場所だった・・・張り付いた途端にナイフが護符と共に壁へ突き刺さった。

弱さを強化するように護符を重ねていく・・・新たな剣で空を斬り僅かに残るモノを滅した。



扉を押さえ守を唱える。
押さえ込み護符を自分の血で書き込む・・・守を唱えてから扉の隙間がある場所へすり込んだ。

悪鬼の強さが彼女を襲う
血を吐いていても扉を押さえている手は緩めなかった。

誰もが助けたいのに・・・誰一人、動けずにいる・・・それは自分の力では出来ない事と知るから・・・

自分達が近付けば巻き込まれハル巫女の力を削いでしまう・・・せっかく集めたモノを散らしてしまうから。

片方の扉を封じたハル巫女・・・その姿に頑張れと祈るしかない・・・

何かをしている姿は分かるが、何もされていない巫女が血だらけになり始め戸惑った。

蹴られている訳でもない・・・殴られている訳でもない・・・なのに、そうされているように巫女の体が揺れる。

体が曲がり血を吐く・・・その血で符へ文字を書いたようだが巫女の手から操るように飛んでいく。

扉を型どるように自分の血を塗り付けていく事に驚いた・・・そこへ護符が貼り付く・・・血を糊のように使っていた気がして声も出ない。

別の場所では、それが家屋へ突き刺さった事に驚いた・・・その間に僅かに光る剣先が空(くう)を舞う・・・何かを唱え斬っていた。

見えない何かを閉じ込めている気がした・・・それは巫女の体が揺れるから・・・トギ巫女を見つめ何かを確認もしている気がした。

残る巫女達が集まり浄化するべく守を唱え始め舞い始めればシャンという鈴の音が辺りへ響き始めた。

それは代々の巫女達までが舞い始めれば、音は深く響きハル巫女が放つ護符はより強固に社へ貼り付いた。

準備をしたかと言いたげに見返すハルの姿に戸惑う・・・押し込めているハル・・・突き刺されても微動だにしない。

自分の血で結界をはり強固にしていく・・・トギはフーと息を吐きながら自分を落ち着かせる。

ようやく現れたモノがハルの目の前に来た・・・ナギと言った巫女が身構え僅かな光でハルへ力を注ぐ。

それは大巫女達までが注いでいた・・・守を唱えながら滅する為に使う剣先を撫でていく・・・鈴の音がより響き渡れば、ハルは刃先へ全部の力を込め身構えた。

僅かな視線の先にトギ巫女が見え意思を固めた事を知った・・・黒く揺れる悪鬼・・・その不気味な笑みは本当に視える者には恐怖を煽る。

この世界の中でなら必ず出来ると知る事で自分に怖さは沸かなかった・・・何より、どうすれば退治出来るかと頭の中で説明してくれていた事に可笑しくて笑えてしまう。

力が沸く・・・ナギや巫女達が勇気と力を自分へ注いでくれていると分かる・・・心強い自分が出来上がった気がした。

血文字で作った護符を扉に貼り付けた・・・完全に封じる為に残る護符を胸にしまう。

剣を握り締め対峙する・・・

-お前にブレはないな(笑)不思議だぞ・・・-
『自分の役目と心してますから』

-なぜ助ける?利用されてきたはずだろう-
『正しき者へ引き継ぎましたから』

-隠れ諦めたらどうだ?-
『(笑)全て出したから、ココにいるのですよ?』

話始めたハル巫女の姿に誰もが驚く・・・味方へ落とすべく脅し恐怖を煽っていく悪鬼の声は誰もが聞き取れない。

動じずに話始めたハル・・・僅かな悪鬼の迷いを剥ぎ取っていく事にナギが気づけば苦笑いしかない。

刻まれ悪鬼から離れたモノが吸い込まれていくが、悪鬼自身はそれに気づく事なくハルと見あっていた。

-仲間もいるだろ-
『半分は罰を受け巫女という場所から離されています。安心して逝きなさい』

-この地に作りたくてな・・・-
『あなたが居るべき場所でもありません・・・あなた一人の場所でもない』

足元が悪鬼の怒りで凍り付く・・・グッと構えた剣先を地へ少しだけ触れた瞬間、スーっと凍り付いた地は元の状態へ戻った。

不意にぐらつく悪鬼に剣が形を作るように舞った・・・何だと見ていた悪鬼の顔が引きつる。

姿が緩んだ隙を狙いハルが悪鬼へ振り下ろす・・・歪んだ顔でハルを見返した頃には遅かった。

一瞬で散らばったそれを扉へ誘い込む・・・トギ巫女迄が近寄りながら守を唱え始めた。

重なる声音と鈴の音の優しさが響く・・・パタンと音がした場所へ 護符が自ら貼り付いた。

背で押さえ込んだハルは数枚を出し護符を作り出す・・・取っ手に剣を突き刺し扉が開かないようにした。

唱えてきる声音がより響きだす・・・ハルは血文字で書いた護符を扉を封じる為に貼り付けた。

扉から僅かに滲み出るような霊体の様子が見てとれる・・・それは時に細長い刃先のように飛び出てハル巫女の体を突き刺していた。

タン!と激しく背を叩かれ正気を戻された事を知った・・・始めよと言われた気がしてハルを見つめた。

滅す為の守・・・唱え始めれば飛び出ていたモノが消えていく・・・ハル巫女だけが優しい笑みで見つめていた。

暫くして彼女は笑みだけを残し目を閉じる・・・・白い扉が赤に染まっていたが・・・消えていく巫女の姿と共に白くなっていった。

何かと対峙するトギ巫女が祷りのように呟き始める・・・剣を巫女へ向け舞うように流れる。

その回りで・・・目を見張り驚いた・・・うっすらと見え始めた数人の巫女の姿に。

神事を行う時に身に纏う服・・・裾が揺れ・・・袖が舞う・・・一糸乱れず流れるような姿が見えた。

その向こう・・・集めていると聞いた巫女の姿は彼女自身の血で赤く染まっていった。

その姿で護符で防ぐ・・・見えなかった扉は本当にあったが、既に赤く染まっていた。

それを背にした巫女の笑み・・・眠り始めるような優しい笑みを浮かべていた事に驚いた。

巫女達が舞い始めれば、一人残っていた巫女が消えていくように見えた。

扉が真っ白に変化していく様・・・その幻想のような光景に声を失った・・・身内のしでかし・・・その罪を一人背負い消えていくのだと思えた。


一人守った巫女が消えていく・・・その有り得ない光景に身動きも出来なかった・・・。

出逢った者達を声で助けていく・・・それは自分を傷付けていく人達まで・・・それは視えるからと言った巫女の笑みを思い出す。


血を吐き出す・・・何かに殴られたかのように・・・それは誰だと探しても見えない。

何かと対峙している目線で知れる・・・それに怯える事なく立ち向かう・・・先の為にと一人役目を背負った。

感謝し見送る・・・助けられない申し訳なさに項垂れる。

膝まつき頭を下げる・・・同じ気持ちなのだろう護衛していた者・・・誰もが自分の隣へ来て膝まついて頭を凭れた。

『感謝します』
『約束は必ず・・・』
それぞれに話した事はあったのだろう礼を呟きながら祈るように見送るのだった。


「ハル・・・」
『感謝します(笑)』
「(笑)帰れるのだな」
『 ・・・アキとハナを(笑)』
「(笑)幸を運ぶ」
『トギ巫女様へも(笑)』

頷いている間に消えていく・・・最後まで笑みを浮かべていたハルに微笑むナギだった。





体がビクン!と飛び跳ねた・・・苦しかったと息を吸う・・・今度は静かに息を吐いた。

息を吐く音が重なり誰だと目で探せば・・・またかと項垂れ力も沸かなかった。

『何日寝る気だった?』
『遊びに行かないの?』
ムッとして彼の後ろから声をかけるカズネに苦笑いだ。

『覚えてない・・・
なんで私はココで寝てるの?』
『『『酔ったから!』』』

そう言われて余計に力が抜けていくようだった・・・手足を投げ出し力も入らない・・・それは可笑しいのか笑いながら自分の腕を枕のように寝始めた彼の姿。

呆れた友達が出ていく・・・退けろと声も出ない・・・退けろと腕も動かない事に口を引いた。

『毎回・・・身代り』
『しっ!』
慌てるように言葉を止めた彼女に驚き見返した。

『あれから夢は見るが、自分が交ざった事は一度もない。必ず最後の場面だけ見てた・・・』
『 ・・・』

『消えたあと・・・祭りのように人が集まって神社は新しくなってた。

ハル巫女と言われた人の下・・・アキとハナ・・・だったか・・・その二人が祝詞とか何とか・・・まー(笑)忘れたが、それを踊って終わった。

ナギとか言う人が昔の・・・伝説の大巫女だったか・・・なんかお伽噺に入り込んでく事に違和感があって・・・そう思ったら起きた・・・』

『へぇ・・・』
『実際に・・・本当に・・・』
『話は二度としないで。それをすれば今度は貴方が体験してくかもよ?』
『 ・・・』

『それぞれの夢で終わらせて』
分かったと激しく頷いたがスッと黙り・・・自分の身へ腕を回し抱き込まれた。

『ん?ハイリ?』
『俺の夢の中で勝手に死んでくな』
『 ・・・』

『見るなと言われても誰かに見せられてるんだ・・・安心する為には必要なんだ・・・これは我慢しとけ!』

『 ・・・』
『(笑)疲れてんなら寝とけ』
それだけ言うと彼は本当に寝入った事に驚いたが、それよりも何故という疑問が自分を包んだ。

同じ夢・・・自分は体験し彼は見る・・・交ざりは数回らしいが・・・似た人は見るが話した事はなかった。

話しかけられそうな時は無関係だと離れた・・・それだけが違う・・・会話した途端に同じ目にさせそうで怖かった自分だと思えた。


彼女の手を枕に眠る友達に呆れる・・・抱き枕のように抱き込んで寝入っていたからだ。

それは少し羨ましくもあり・・・隣で笑う友達にバレたのだと苦笑いをする・・・同じだと目配せた事で気持ちは一緒なのだと可笑しくなった。

両手を広げ眠った彼女・・・腕枕をされても抱き込まれても寝れる事に可笑しくて笑うしかない。

それが彼女だと思えた・・・だからか二人の姿に笑みを浮かべるナツとカズネだった。









ゆめ B-4

2021-06-27 00:46:08 | ゆめ



近付く度に苦しくなる・・・汚れた空間に入ったような・・・古ぼけた家屋の塵や埃が舞うような・・・

なにより嫌な気は、外なのに室内で充満しているような錯覚さえ覚え・・・足取りは確実に重くなっていく。

大丈夫かと自分の様子をみながら進めてくれる護衛者たちに感謝しかない・・・急ぎたいのに動けず、何もしていないのに酷く疲れてくる。

それでも行かなければ終わらないと知る・・・次々と巫女が集められた・・・その状況や理由を知り自分がすべき事を知った。

その場の神社・・・そして回りに住む人達へ危険が及ぶ事も抑える為に・・・負で汚れた場所を浄化する為に・・・


その話し合いをずっとしていた・・・トップにいる大巫女・・・そして代々の大巫女様達と。

少しずつ分担し担っていては時間がかかる・・・それは広がり始めたから。

早急に済ませたい事でもあるが、安全を一番にと話し合っていた。

神社内での出来事・・・派遣されていた巫女や、地域の富裕層・・・しまいには神殿の巫女までが加担していた事を知った。

それを指示していた後ろの人達の居場所に戸惑う・・・裁くのも、それをする方が生かされない。

本家が揺れる・・・その揺らした罪を問われれば暴いた神殿が危うい・・・調べつくした事をアキが伝えると出掛ける準備をする。

『アキ・・・』
『はい』
『貴女は残り暫く違う仕事をなさい。今回の事は全く知らなかった・・・貴女は関係ないと・・・』

『 ・・・出来ません』
『この場を消す事は私には出来ません・・・』
『トギ巫女様がいらします・・・』
『責任者ですから』

『いいえ。私はココを守る力はありません』
『出来ますよ(笑)。貴女なら・・・(笑)大丈夫だと思ったからハル巫女が貴女を守りました。

出来ると思えたから(笑)私は貴女を鍛えたのです・・・手の届かない場所を埋めるに必要だと今はハナを鍛えているのです』

『 ・・・また罰を受けるという事ですか?』
『そういう先なのでしょう』
『駄目です。大丈夫ですから・・・ちゃんと調べてあります・・・だから!』

『アキ・・・よく考えてみて・・・
それが正しくとも・・・それが事実でも・・・その場の決まりがあるのです。

この場の先が曇るなら今のうちに直さねば・・・綺麗にしなければ先は明るくなりません。

今回の事がそうです・・・汚してきた方達は、この場を守り遣う一族でした・・・ましてソコは本拠地から近い・・・』

『ならっ・・・でもっ!・・・』
駄目だと言い切りたいのに分かると納得してしまう・・・こうならと別の案を出したのに先が見えてしまう・・・。

切り返し言いたい言葉が出なくなった・・・トギ巫女様だけではない・・・現状で表立って姿を見せていたのはハル巫女だけだった。

ハナを置き出歩く・・・いつもなら遠出も誰かを着ける・・・なのに今回は途中でハナだけ帰された・・・護衛の数が増えていた理由だった。

行きたいのに行けなくなった・・・助けたい気持ちだけ飛ばす事しか出来なくなった。

連絡してくれる人・・・それが自分も知る人だった事に驚いた・・・地を知り内密に行けるからだ・・・。

手紙を託す・・・向かう人を見送る・・・急ぐ姿にホッとしたが、申し訳なくて悲しくなった。

「残る者の悲しみは深いのね」
「自分の力があって良かったと頑張れるのに」
「確かに(笑)。残る者達を信じてるから行けるわ」

「(笑)残された方は大丈夫と信じて先へ向かう。安心してって言えるようにね(笑)」
「まさか(笑)自分で視れるとは・・・」

優しい笑みが自分の隣で増えていく・・・反対側には大巫女が歴代の大巫女様達に苦笑いをしていた・・・。



ここまで負を集める神社は初めてだった・・・敷地は大丈夫のはずが、外より断然いないが僅かに漂い始めていた。

排除しようが本当に靡かない・・・札の効力さえ効かない事は初めてだった・・・ただ逃げていくだけ・・・

逃げても場から出せばいいが、出て行く事すらない・・・離れた場所で様子見をしているような気もした。

ならばと囲い一ヶ所へ纏めるように別の護符をまく・・・知れず貼り付け外へ出ないようにした。

同じ気持ちなのだろう、この地の巫女様達が護符を手に追って来てくれた・・・・数が増え淀むモノが笑みながらも離れていく。

何も知らない事にホッとした・・・嘲りながら入ってくれる事にもだ・・・不意にビリビリと震える自分の身。

グッと抑えられるような苦しさに耐える・・・入り口にある護符が震え彼女は符に触れ守を唱えた。

「(笑)意味はあるか?」
嘲る声音が隣で聞こえる・・・
「我が集めるは皆の協力者ぞ?」
『選び抜けば、こうなりませんでした』

「話せるとは(笑)久しぶりぞ」
『正反対のモノを集める意味をお教え下さい・・・』
「憑いてきたから受け入れたまで」

『普通なら、ここまで集まりませんよ』
「(笑)楽しいからだ・・・決まりは果て秩序は消えた(笑)。そしたら楽になり後悔もした・・・(笑)早くにしとけば良かったとな」

『 ・・・こうすべき事ではありませんでした・・・』
「(笑)入れないモノが中で自由になるのだぞ?」
『本当にそうか・・・お確かめ下さい・・・』

それは向こうだと促した・・・そうかと揺れる人が嬉しそうに入り込む・・・ソコへ飛び込むように何かがスッと向かう事に気付いた。

静かに現れた人達が優しく護符を貼る・・・それは出入り口を狭めていく・・・それに触れ念を入れて触れ守を唱えていく。

最後の出入口を護符で閉じ・・・指先で剣に触れ呪を唱え・・・祷りながら出入口の地面へ突き刺した。


何もない場所で地響きのように地が揺れる・・・中にある木々の葉が業とらしく靡いていた。

土埃が僅かにおき風に流されるように その場だけが舞ってもいた。

怯える者が増えていく・・・それは目の前で有り得ない事が起きていて、実際に自分の目で見えていたから。

様子を見に来た人達・・・馬車から降りた人に驚き誰もが頭を下げて出迎えた。

隣にトギ巫女様までが来ていた事に驚いた・・・国を纏める人・・・この人がとハルは様子を眺めた。

不意に自分の隣へ佇む人達が現れ自分へ微笑んだ事で、今・・・自分がすべき事なのだと、それが確かなのだと知れた。

トギ巫女様が頭を下げて出迎える・・・
『トギ巫女・・・誰がいる?』

『代々の・・・大巫女と任されてきた方達です。優れた力があり今もなお私達に知恵を授けて下さっています』

『代々・・・その者達は我らを呪わなかったのか?』
『役目と果たして来ました・・・姿を残したのは今いる巫女達を導くため・・・そう感じております』

『そうか・・・
ソコにいる巫女の目が数人と言っている気がするが・・・』
『今は七人ほど・・・ハル巫女へ助言するべく参ったようです』

『ここでするのか?』
『はい。今は結界をはり閉じこめています』
『その悪鬼が原因か?』

『原因を作った者へ取り憑き、その悪鬼が戻るのを待っています』
『それが・・・』
『はい・・・
終わり次第、罪は償わせて戴きます・・・なので』

『本当か?他にしようはないのか?』
『既に中まで巣食い祓う事も出来ませんでした。直系全てが落ち既にハル巫女が見送りました』
『 ・・・』

『神殿の中心まで忍び、放置すれば消え去るのを待つだけになります・・・どうか許しを・・・』

許可をくれと願う大巫女を眺め分家の神社を眺めた・・・ココを守るように作られた町並みは見てきた。

荒廃し人も荒れ死体は転がり荼毘にもふされていなかった・・・子供は泣き叫び何処かへ走り去っていく。

虚ろな目で何処かを眺め、誰が近場を通っても気にもせず歩いていた・・・栄えていた頃を思い出しながらココまできた。

向こうの神社の入り口に血だらけの男が ふらつきながら歩いてきた・・・後を追っていた者を切り殺す・・・不気味な笑い声と共に神社の敷地へ入って行った。

呆然と眺めるだけだ・・・恐怖がかち 誰も動けずにいた・・・
ハル巫女という名だと、その巫女を眺める・・・神事をする時に身を纏うモノを着ていたが一人だけだった。

『あの者だけでするのか?』
『代々の大巫女様達が決め・・・』
『出来るのか?』

『そう聞きました・・・
ですが私も参ります。私の後をアキ巫女が引き継ぎますので・・・今は時間がありません・・・まずは失礼して着替えて参ります』

『 ・・・』
『いいえ・・・』
驚き声が出なかった・・・行ってしまった方を眺めていたが前にいたハル巫女が呟き会釈した彼女が近付いてきた。

『代々の大巫女様・・・カズ巫女様が力を分けて下さいます。
トギ巫女様でなければ、より祓う事も出来ません。
次を継ぐ巫女に祓う力は弱く今は引き継ぐ事は危険です』

『一人では危ないのだろう・・・』
『今の所は。ですがカズ巫女様が分けて下さる力があれば繋ぎ止める事ができ、トギ巫女様が祓って下されば終われます』
『どーする?』

『お願いします・・・
神殿という場所は残りますが・・・トギ巫女様が居なくなれば時を待たずとも消え去ります』

『あれだけの巫女がいるのに?』
『強い力を持つ者が居ないだけです・・・残念ながら。
なので、どうか守って下さいませんか?巫女を・・・』

『ハル巫女と言ったな』
『はい』
『生も奪われる事もあると聞く』

『引き換えてでも終わらせる覚悟は既に。代々の大巫女の力は遥かに上・・・抑え込むすべは習い今は閉じこめています。

完全に出来たら、代々の大巫女様達と・・・トギ巫女様で終わらせられます・・・どうか・・・罰は私一人で済ませて頂きたく・・・』

『ハル巫女を継ぐ者は?』
『既に引き継ぎは完了し継ぐ者を助ける巫女も鍛えました。大丈夫です』
『予測し参ったのか?』

『はい・・・
恐れ入ります・・・時間がありません・・・』
来たようだと呟き神社の方を慌て眺め、また自分の方を見返す巫女を眺めた。

『願いを聞き入れよう・・・
ハル巫女・・・頼んだぞ』
言ってみれば僅かに笑み返し頭を下げて離れていった巫女を眺めた。


自分を囲むように立った大巫女様に笑み返した・・・

『(笑)申し訳ありませんが、この先も皆を助けて頂きたく・・・力は半分に』
「無理よ」
「足りませんよ?」

「(笑)私が全てを与え助けます・・・」
不意に現れた姿に驚いた顔で見返した大巫女達・・・カズ巫女が気付き膝待ついた。

「ナギ巫女様ですか?」
「「「 ・・・!?」」」
残る6人の巫女達までが驚き慌てるようにカズ巫女と同じように膝まつきナギを見上げた。

『皆さんはナギを知るんですか?』
「何故知るのです?」
「呼び捨ては駄目です!」
『 ・・・』

「(笑)友達として今日まで来ました。ハルだけが私を視れたので」
「ならハルが残り」

「いいえ。ハルだけが出来る事・・・そう、なってしまいました・・・
今、終わらせる事が出来るのはハルしかおりません」
「 ・・・」

『来たようです・・・行くのでトギ巫女様を説得して下さいよ?』
「ナギ巫女様の力を?」
「もう?貰ったの?」

『ここへ来る前に(笑)、本来なら結界も張れませんでしたよ?』
そうだったと呟く巫女に笑み返したが、皆から少し離れ礼を言うように頭を下げて敬した。


ハルが行った事で慌てトギが追いかけたが途中で引き留められたように止まり誰かと話をしていた。

見えないのに見えているような錯覚・・・本当に腕を捕まれ止められている姿は驚くしかなかった。









ゆめ B-3

2021-06-21 16:35:03 | ゆめ


束の間の休息・・・
報告や会議で日々を追われるように来てしまった。

皇族が押し寄せる・・・外の富裕層も何故か相談と集まり出し・・・忙しなく承けた大巫女様達だと驚いた。

次々とくるモノに対し彼女は裏付ける為に動く・・・その場で対処する仕事は苦手だから。

だから裏方にして貰い今日まで過ごしてきた・・・間の連絡はアキに頼みハル巫女はハナを連れて出歩いた。

驚く事で恐怖を煽るかとハナの様子で仕事をしていたが、次第に大丈夫な気がしてハナに構わずに始めてみた。

自分がするべき手順に慣れたのか、ハナが先回りもする・・・それにホッとして手早く事を進めた。

その甲斐もありポツンと少しの時間が出来た・・・


三つ目の居所・・・そこは一つ目で承けたモノの詳細を報告し次へ対処すべき話し合いをする場所だった。

それだけではない・・・庭は散策も出来るほどの広さで疲れた巫女達を癒やす場所でもあった。

木陰に休息できるスペースは数多くあり、彼女はその一つへ腰掛け自分の力を抜いた。

風が舞い優しい葉音だけが聴こえる・・・シンと静まる空間のようで、全身を自然の中へ落とせた。

鳥の囀ずりさえ僅かに聞こえ笑みも溢れた・・・負という気配もない・・・全てに守られた場所だった。

「ハル(笑)」
『お出でになりましたね(笑)』
「(笑)誰も貴女へ教えないから紹介するわ」
『誰を?』
『はい?』

ナギと話していたが何の事だと返事をしてみれば、その声はナギではなく警備する者の出で立ちをしていた人が居て驚いた。

可笑しかったのだろう・・・その人の隣で声にして笑う姿に苦笑いをした。

『何か用がありましたか?』
『 ・・・すみません・・・私も休憩で同僚と・・・』

来たのだと謝る人に口を引いた・・・その同僚という人が会釈する・・・手にした水だろうモノを自分へ差し出した。

『(笑)ありがとうございます・・・私は大丈夫ですから』
笑み返した自分へ新たな会釈・・・本当に大丈夫だと押し返した。

そこへ来たのはアキ・・・似たモノを手にし微笑んでいた・・・口を引きながらアキに笑む。

『(笑)巫女様に戴いて・・・来ました』
相手の手にあるモノを眺めるアキ・・・礼を言いながら受け取り飲み物を口にした彼女に皆の視線が集まった。

『お話し中に、邪魔しました』
『大丈夫です(笑)』
「(笑)この人よ・・・」
会話をしている間に話し続けるナギの言葉・・・前に自分の身に起きた事だった・・・だからねと笑み返すナギもいた。

『此度の件・・・本当にありがとうございました(笑)』
『はい?』
驚く顔に苦笑いだ・・・

『(笑)大巫女様と殺されずにすみました。貴方の知らせで助かったのだと知りました。
(笑)お礼が遅くなり大変失礼を致しました』
『あぁー・・・ ・・・』

その事かと思ったのだろう二人は唸りながら気にせずにと囁くように言った。

『受け止めすぎなのでは?』
『(笑)お二人に感謝します』
『いえいえ(笑)、役に立てられホッとしました。無事でなによりです』
『(笑)ありがとうございます』

いいえと呟く声に笑み返す・・・礼をした彼女はまた座り直した。

少し離れた場所で休憩をする・・・僅かな視線が自分へ来ていたが気にせず疲れを癒やすように身を置いた。

アキ達が戻る・・・頑張ると言いたげな二人の後ろ姿を眺めた・・・

「(笑)さまになってきたわね」
『ありがとうございます(笑)ナギさん』
「(笑)呼び捨てでいいって言ったわよ?」

『そうですが(笑)、今・・・本当に心から思えたので声にしようと(笑)』
「そっか(笑)」
『はい(笑) ・・・』
「(笑)偉い・・・気づいてたのね」

そうだと そっと頷く・・・僅かに視えた人達の集まり・・・その集団が近付いて来たのだ・・・笑みで迎える・・・


不意に立ち上がり誰も居ない場所を出迎えるように見つめた巫女に驚いた・・・驚いたのだが、それは自分達も分からない事。

それだけに隊長から聞かされていた事を思い出し視線を外した。

僅かに視線に入り込む・・・それも気にしないように努める・・・誰かへ会釈し微笑んでいた優しい笑み。

見惚れるように眺める同僚に駄目だと促し二人で より視線を外す・・・話しも出来るのだと聞いていた。

微かに聞こえる会話・・・驚きを隠しながらも耳を塞いだのだった。


『(笑)皆さんも休憩を?』
「そーよー(笑)」
「声は(笑)低くね」
「どうせ(笑)聞こえないわ」

『大丈夫です(笑)私の声は、聞こえないフリをしてくれますから』
「(笑)そうだけど!」

『残りは明日から始めます(笑)それでいいですか?』
「いいと言ってたわ(笑)」
「それでも気を付けなさいね」

『はい。(笑)休みながら進めます』
「早めがいいわ」
『(笑)分かりました。ならば』
「あー(笑)私が連絡係するわ」
『(笑)了解です』

話は終わり失礼して休むと呟くハルに苦笑いだ・・・スーっと静かに寝入った姿に皆が笑みを浮かべた。

「ハル一人に任せるとはね(笑)」
「(笑)一人じゃないけど」
「下が慣れるまでよね」
「(笑)ハナがでしょ。アキは上・・・」

「確かに(笑)。資質が違う以上、ハルが鍛えられる訳でもないし」
「そうね。(笑)ほら、心配したハナが戻ってきたわ」

その先へ視線を向けた巫女の呟き・・・パタパタと小走りに戻ってきたのはハナだった。

大巫女様達に驚きながらも立ち止まったハナは皆へ会釈した・・・いいからと促せば、新たな会釈をしてハルの隣へ座り凭れさせた。

『ハナ?』
『はい。いま少しだけ(笑)休んで下さいませ』
『ありがと。貴女は巫女様がたと話を・・・』

恐れ多くて出来ないと言おうとしたが、スッと寝入った事で諦めた。
ならばとハナは皆を見つめ笑み返した。

「今は(笑)視えるの?」
『はい(笑)、失礼してます』
「何故かしらね(笑)」
『わかりません・・・急に視えだす事に驚くから・・・とか・・・』

「(笑)違うわね」
『 ・・・』
「諦めて自分を認めれば良い(笑)」
『 ・・・ハル巫女様が』

「貴女の力を信じてるわ(笑)。ハルと同じ力もあるのに」
「(笑)ハナ。ハルは貴女の力を止めてるのではない・・・ハナが自分で調節しているのです」

『そんな・・・そう自在に力を操る術はありません』
「(笑)無意識・・・」

「外で集まらないのはハルが防ぎ寄せてないだけです。
これだけの仕事をし、貴女達を守り負を持つ巫女を牽制までしていますよ?」

『呼び出しも・・・』
いつもなら誰も居ない隙に呼び出されココでの事を聞かれる・・・上の巫女様達の情報をくれと、しつこく引き留められていた。

今はそれもない・・・そうだったと項垂れるハナだった。

『どっ!どうしたら出来ますか?』
少し強めの声音に皆が苦笑いをした・・・肩がスッと軽くなり、ハルを起こした事に気付いた。

『申し訳ありません・・・』
すまなそうな顔に苦笑いをしたハル・・・可笑しくて笑う巫女様達にハルもまた笑み返した。

『皆様(笑)』
「「(笑)なによ」」
『ハナには(笑)ハナの歩みがあります。自分で行かねば自分を助けられず大事な事が抜けますので(笑)なにとぞ・・・』

「(笑)分かった分かった」
「知ってますよ(笑)。ハルの疲れを癒やせと急かしたかっただけだ。
(笑)すまなかったな、ハナ・・・・」

『すみません・・・自信もなくて』
『巫女様達も知ってます(笑)』
それはと微笑んだハルを見つめた。

『何事も経験が先を伸ばします・・・どんな些細な事でも自分で考えていくべき。
だから気持ちを安定させてハナは出来る事をすればいいだけです』

「(笑)ハルが疲れますよ?」
『じっくり(笑)休みますから。巫女様がたはハナへの助言を増やして戴く事で(笑)良しとしますね』

ハルの言葉に驚く人達・・・そうかとハナは頭を下げた・・・

『よろしくお願いいたします(笑)』
「(笑)任せて!」
「ん?」
「あれ?」
不意に呟く人達・・・驚くハナまで辺りを眺めた。

『入り込みましたね・・・』
護衛はと、さっきまで居た人達の場所を眺めれば既に居なかったが向こうから走り込んで来た姿にホッとしたハナもいた。

新たに現れた巫女が苦笑いをする・・・皆へ知らせのように来たのだと知れた。

「ハルを探してるみたいよ?」
「何故かしら」
『 ・・・』
「アキでもいいかと誰かを捕まえて聞いてたらしいけど・・・」

それぞれの呟きで考え始めるハルもいた・・・それでもアキと二人でなら、入り込んだ人達の居場所も特定できる。

ならばと待ち構えたハルにハナが驚いた・・・自分達へ会釈し賊から守るべく身構えた人達。

『ありがとう』
『いいえ。家屋へ戻りませんか?』
『巫女様を捜しているらしく』

『(笑)話があり、無理をしたようです。その方と話をするので、来たら倒さずに願います』
『危険では?』
『取り合えず(笑)話してみます・・・』

驚いた顔で見返した二人は、待ち構え辺りを探るように眺めた。

暫くして少し離れた場所の塀を飛び越える姿が目に止まり、ハルは近寄ろうと歩き出した。

慌て引き留める警護者に笑み大丈夫と呟いた。

その賊は二人だった・・・剣を振り上げ行く手を塞ごうとしていた警護者を見つけ動き出す。

一人が待てと叫び剣を下ろせと命じ自分へ頭を下げた事に驚いた・・・部下だろう男も習い鞘へしまうと頭を下げたのだった。

『すみません・・・場を荒らしてでも』
『(笑)無事で何よりでした・・・』
『申し訳ありません・・・』
『急用なら自分でもします(笑)。構わず お話下さい』
『 ・・・』

ハルに言われたが近場で護衛している者を見返し新たに集まり始めた者達を眺めていた。

気づいたのか、護衛者が後から集まる者達をその場で停止させていた事に驚いた。

もう一人が話をしに向かうようで走って行ったが、一人が残され見返された。

『申し訳ないが、耳は塞ぐ・・・これが私の仕事でもあるので諦めて頂く』
『 ・・・』

『(笑)この方以外も居ります。皆さんには見えませんが・・・
大丈夫と気にせずお話下さい』

優しい笑みで言ったハルは、自分達へも寄越すのだと苦笑いだった。
項垂れる顔に苦笑いだ・・・それでもと男は声にした。

『・・・
それを理由に手練れが集められ放たれました。
アキ様とハル様の身が危険に晒されます・・・我らより遥かに強く・・・』

『神社は完全に落とされたのですか?』
『 ・・・』
自分が危険になったのに聞いていたのかと驚き声も出なかった。

『神社は無事ですか?』
『 ・・・もっ持ちこたえているようにも思えましたが、今は分かりません』

『外は完全に落ちたように思えます・・・その・・・人ですが人のようでもなく・・・』

『怒り狂うという言葉どおりのようで・・・』
フッと巫女様達が消えた・・・

『ハナ』
『はい。大巫女様に報告してきます』
『皆さんの言葉も伝えるのですよ?』

『(笑)はい。必ず!』
笑み返したハナが走り出した・・・

『危険が迫っています。何処かへお逃げになられては?』
『これが私の先なのだと気付けました(笑)感謝します』

『 ・・・』
それは、どんな意味だと驚き見返したがハルは構わず隣で控えていた護衛する男に振り向いた。

『どうぞ』
気づいたのか自分に用があるのだろうと声にした。

『二人の手も借りココを守って下さいませんか?』
『 ・・・』

『追われつつ知らせと来ました。戻れば殺されるでしょう・・・ならば戻さず貴方がたの補佐と』
『手を使えと?』

そうだと笑み頷く巫女に驚いた・・・確かに手は足りない・・・軽く飛び越え中の場所まで来れた腕は欲しかった。

『隊長へも私から伝えます』
『連れて参れと・・・』
また、そうだと笑み頷く姿に諦めた・・・この巫女の先読みは他の巫女より確実でもあった。

それは隊長さえ信じる・・・大巫女様達の下にいる巫女様よりだ・・・ならばと会釈し二人を見返した。

『貴方達を信じます・・・ココが崩れたら全てが落ちます。それは私には耐えられません・・・なので共に守って下さいませんか?』

『我らを信じて下さると・・・』
『信じます』
『集められるなら私と会った人達ごと・・・』
『(笑)大丈夫と』

『部下は外で見張りをしております』
『ならば、この方と共に守って下さい。話しも全て伝え今度こそ諦めずに』

『諦めた事をなぜ・・・』
『(笑)隣で悲しんでいる方から聞きました。大丈夫(笑)出来ると・・・信じていると言ってますよ?』
『『 ・・・』』

心当たりがあるのだろう二人が見あう・・・笑み返したハルは大巫女様達のもとへ歩き出したのだった。








ゆめ B-2

2021-06-19 09:52:30 | ゆめ


遥か先にまで連なる門戸・・・その間の朱の門を幾度も潜り抜け二人は守衛に連れられ歩いた。

本来なら何度も見せる身分証・・・アキだけが門番へ見せ門を潜った。


『足元に気を付けて・・・』
『(笑)ありがとうございます』
案内するように前を歩いていた守衛が頭を下げながら言った・・・笑み返した二人は巫女達が待つ宮居へ向かうのだった。




あの後・・・彼女は養生する為に二つ目の場所で過ごした。

動けるようになると、大巫女から呼び出される日々になり主従する者に付き添われ奥まで入れた。

それに慣れた頃に元の部屋へ戻ったが身分証は最初だけで後は出す必要もなかった事に驚いた。

そして自分の位置がはっきりした事に苦笑いだ・・・自分の上に二人・・・下にも二人居た・・・・

そして自分の今はハルという名前で誰かへ指示するが自分で出向く方を仕事と働いていた。

その数の少なさは本当だったのだと知れば驚くしかない・・・巫女という場所に後ろ楯があれば入れた事にも。

ここなら食べて行ける場所でもある・・・本当に見えなくても一度、入居してしまえば出される事も少ないという。

巫女という場所で担える者は上に居る人達が見出だすだけと知れた・・・だから力をつけ、この場所で位をあげる。

見聞きする者・・・その場で繋ぐ者の少なさは仕方ないのだ・・・そこに見習いという立場の個人の部屋付き巫女が数人ずつ着いていた。

自分は最初から必要はないと一人で行動していた事を知り驚いたがアキという巫女を守れと言われ・・・何となくだが悟った。

足を引く・・・それを目の当たりにし近場へ置けば、これ見よがしな言動が増えアキを本格的に鍛えた。

位が上なのに見聞き出来ない巫女・・・中には出来る者を囲う・・・その貧しさに利用される事を選ぶ者もいた。

そして一番驚いたのは、視えると声にしていた巫女・・・それを利用し神殿で働いている者を揺らす。

騙し・・・脅し・・・罠まで仕掛ける・・・そして不意に足を引く・・・団結し揺さぶる事もある・・・だからか本当に視える者はより鍛えていくしかないのだ。

教える事しかないが、それはナギという巫女から習い彼女はアキへ教える事にした。

ナギはアキにも視えず、何故か大巫女達にも視えなかった事にはホッとした・・・姿からも位は上の方ではないがナギ自身も言わず誰にも内緒にした。

誰よりも知る掟・・・それは自分自身も習える事だけに助かった・・・直ぐに自分は本当のハル巫女ではない事も気付かれたが、自分自身も理由は知らないと詳細も言わず今日まできた。

秘密と徹底し祷りの後は仕事とアキを連れ歩いた・・・他の神社へも出される事は多かったから。


その間の時間を使い、アキを説得していった・・・大社からの命で地方へ出向く事があり供にと連れ出す。

鳥居を潜るまで怯えるアキ・・・それは霊体にかと思えば、ソコに住む人達だった事に驚いた。


ココへ来る為に数人の警護者と一緒にきた・・・女が二人、そして男は三人・・・どの人も手練れは確かで森を通り抜ける間に現れた数多い族も容赦なく退治していた。

アキが怯え動かなくなる・・・専属と一人の警護者を着けて守って貰った。


『ハル巫女様は怖くないのですか?』
『怖い(笑)。だけど大丈夫と言ったから(笑)大丈夫と信じてるだけよ』
『 ・・・霊体も?』
『もちろん(笑)』
『『『 ・・・?!』』』

警護者達まで驚いている事に苦笑いをした・・・もう少しで着くが取り合えず休憩をと川辺で休んでいた時に話をしていたのだ。

『巫女様だからですか?』
警護者の一人が呟いたが、それは思わずだろう謝るように頭を下げた姿に笑み返した。

『(笑)どちらかといえば、霊体の方が怖いです・・・』
『ですね・・・』
アキが頷いたが驚くように隣で休んでいた人が聞いてきた。

『な、何でです?』
『(笑)生きている人は姿が見えるからです』
『見えないから怖いと?』
『(笑)私には、そちらも視えます・・・』

『なら・・・』
『(笑)霊体も多少の力があるんです・・・より強い霊体は人を喰う・・・』
『『 ・・・?!??!』』
『悪鬼になれば人を襲い操る・・・人を人として生かしてくれません』

『喰われたら死ぬんですか?』
『(笑)本来の身ではなくなる・・・そういう意味です。
んー・・・・人が変わる(笑)そう言えば何となくでも理解出来そうですか?』

『あー呪いみたいな・・・』
『取り憑く・・・』
『(笑)そんな感じです。本人の意思に関係なく誰かを欺く・・・時に操り・・・弱味を握り中で巣食えば恐怖を煽り魂を絶望へ導く』

『それは怖いですよね・・・』
『ですね・・・』
『それは成仏出来なかったから・・・ですか?』

『それもあるかもしれません・・・
思いが強いほど・・・この世に残りたくて居座るのかもしれませんね・・・』

『巫女様なら助けられるでしょう?』
小さな囁きに苦笑いをした・・・

『すみません(笑)』
『そっそれは どういう・・・』
どんな意味だと呟く人に口を引き苦笑いをした。
『誰もが出来る事でもないんです』
『巫女様なら・・・』

『(笑)誰もが出来る訳ではないんです・・・相当の力を持つ者・・・より巫女としての力を持ち、優れた術で霊体と対峙し祓う・・・
ただ習い(笑)直ぐに出来るという事もありません』

『なら鍛えたら・・・』
『 ・・・残念ながら・・・』
『『 ・・・・』』
近場で警護する者でも理解は難しいだろうと否定した。

『どんなに鍛えた巫女様でも、生気を奪われ命を落とす事もあります・・・全てを祓える方が居たなら・・・力を備えたなら・・・
そう・・・思う巫女様達は数多い・・・』

そうだったのかと驚き・・・自分達への期待までが消えたような気がし苦笑いをした。



ザザッ!っと・・・不意に現れた刺客のような者達が現れ身構える・・・その者達の視線はアキだった事に驚いた。

『待って下さい・・・』
剣を振り上げ斬ろうとする者へ、彼女は慌てる事なく声にした・・・巫女へ斬り込む怖さもあるのか、一瞬だが怯えた目をした事に気付いた。

ホッとする・・・その一瞬だったが、身構える姿は変えなかったが降り下ろす事はしなかったから。

『どのような理由で』
『言うわけが!』
恐る恐る・・・その変な怖さは沸くのか声音が震え始めた。

『教えて欲しい訳ではありません。
その理由を命じた方へ伝言を・・・』
『な・・・にを・・・・』

『巫女を利用した理由・・・そして巫女が話した事・・・それが許せず敵討ちのように殺めようと思うなら覚悟を持ってなされて下さいと』

『そっそれは!』
『なぜっ!』
数人の刺客がいたが慌てるような言動に、誰かに命令され本当に来たのだと思えた。

『力ある巫女を殺めれば・・・』
『 ・・・』
『この地は・・・浮遊する魂が多すぎます・・・・身を悪鬼に変え・・・弱い魂さえ食いつくしそうです』

『 ・・・』
『人が変わり・・・気がふれ・・・何かに怯え・・・不明の病と治らず床へ伏す・・・』
『 ・・・それが?』

『半分は霊体が人へ憑き悪さをしています・・・その者へ霊体となり礼をしているからです』
『 ・・・』
『だから?』
一番後ろに控えていた男が睨むように見返してきた。

『何の力もない者が霊体となり仕返しをしているのです。その程度ですみますが・・・力ある巫女が霊体となったら・・・』

『どっ・・・ ・・・・』
どうなるとも声に出来ず自分が知らない怖さで身が強張り始めた。

『生きている人が、人を脅す口実によく口にしますね(笑)』
『のっ呪い殺すと?』

『身を悪鬼に変える者は人へ憑き中へ巣食う・・・すれば場は 荒れ狂うと思いませんか?』

心当たりもあるのか刺客の者達は互いを見合い迷い始めた。

『アキ・・・貴女は何をしました?』
『 ・・・・』
押し黙ったが言えないと自分へ目で訴えているようだった・・・アキを見返し、それでも声にと見つめれば・・・重い口が緩んだ。

『・・・ ・・・お手伝いを・・・』
『どんな・・・』
『入り込んだ魂を見送る・・・始めに・・・・私が・・・・見つけたので・・・』
『その場の巫女様の・・・』

『祓ったはずなんです・・・ですが効かず・・・想像ですが・・・その家族へ』
『乗り移った・・・』
『恐らく・・・』

『その巫女様より力が付いた霊体だったのかも・・・』
『怨念が強くて・・・巫女様も病に落ち・・・私を神殿に送った・・・後に・・・』
『亡くなった・・・』

そうだと項垂れたアキの頷きに想像でもない霊体は存在している気もした。

『祓って下さいませんか?』
『私に、その力はありません。
私の役目は、この地の状態を見聞きし神殿へ報告をする事ですから』
『 ・・・』

『巫女がみな祓えるとは限りません。
それぞれの力で出来る者が出来る事をしています』
『巫女なのに・・・』

『霊体の存在を詳しく知る者・・・それが巫女ですから・・・』
『祈祷した巫女は出来ると!』

『そう・・・言わなければ巫女は殺されますから・・・
言えば脅され殺される・・・見えないのですから事実と証明する事も出来ませんし』

『 ・・・』
『(笑)貴方の懐に小さな魂がいます・・・・私は・・・そう視え・・・聞こえた事は話せますが、それだけです』

『 ・・・』
誰もが押し黙る・・・自分だと気づいた男が身へ触れ何かを押さえ付けた。

『寺へ参り預けては?』
『 ・・・』
『それを手に逝きたいようです』
『これは!』

『大切なもの・・・だから余計に身に置きたいのでしょうが・・・
解放されない魂は悲しすぎます・・・そこで共にすれば集まるのですよ?』

『どっどうなりますか?』
『悪鬼に喰われ消え去るだけです』
『 ・・・』

『見送る魂は優しい笑みが溢れ召されます・・・
泣きながら消えていく事を望むのですか?』
『 ・・・』

『皆さんで見送れば(笑)安心して逝けます・・・よく考えて下さい』
優しい笑みが自分へ向く・・・その笑みが握り締めた手を緩めた。


真ん中に居た男が深く会釈した。
『どう・・・話せば・・・』
『(笑)手練れが数多く、再度参る事を始めに伝えて下さい』
『ん?』

『(笑)それから伝言を預かったと』
『 ・・・はい』
何だと驚いた男だったが、気づいたのか直ぐに返事が返ってきた。

『巫女を殺めた罪は末代まで響く。逝ってなお苦しみ続け、自分の子・・・全ての親族まで呪われていく様を見たいのかと(笑)。そうお伝え下さい』
『『 ・・・!?!』』
その言葉に誰もが驚き過ぎて身が凍り付いた・・・

『力ある巫女は果てしなく生きています・・・』
『本当に・・・』
『(笑)五代前の皇族に仕えていた巫女様から聞いたので確かだと思います』

『ハル巫女様?』
『 ・・・(笑)貴女を守れと言った大巫女様がそうです・・・次の代で殺されましたが・・・』
そうだったのかとアキが何かを考えながらうつ向いた。

その刺客は何処かの警護者だったようで殺気だった気配が消えていく事にホッとした。

深々と会釈した男達は静かに消えていったのだった。


やっと辿り着いたが、敷地へ入りホッとした・・・そこだけは穏やかな気が流れていたからだ。

荒んだ場所だと報告をしなければと、言い使った仕事をこなしていく彼女達だった。



神殿へ戻った二人・・・暫くして呼ばれた理由を知る・・・その手柄に・・・その力が認められ位が上がった。

二人が密かに肩を落とす・・・誰もが羨ましがる事・・・なのに二人にはない事に驚いていた。

『目が止まれば無理難題が自分達に降り注ぐ・・・出来るはずと無理強いされ出来なければ・・・』
『殺される・・・』
『そんな!』

彼女の呟きにアキまでが声にした・・・二人に仕えるハナが驚きながら呟いた。

『(笑)ハナ』
『はい』
『(笑)アキの補佐として頑張れるよう鍛えなさい』
『そんな力は・・・』

『(笑)ハナなら出来ます・・・自分を認めればいいだけなのですよ?』
『怖くて・・・』
『前の部屋より(笑)ココが心地好いと聞いてますよ?』

『空気が澄んでいて気持ちよく寝れるので・・・』
『視ないふり(笑)そんな事をせず諦めて鍛えなさい。アキと供に生きるのです(笑)』
『『巫女様は?』』

二人の言葉が重なった事に笑み返す・・・息の合う二人だと・・・信じて正解だったと。

力を合わせれば、より大巫女様達の力にもなる・・・この先の為にと自分の許す時間の中で頑張ろうと誓った。






ゆめ B-1

2021-06-18 15:35:17 | ゆめ




焦げた臭い・・・その熱さで目覚め・・・その自分の状態に驚いた・・・息を飲む・・・燃え盛る火の中に自分が居たからだ・・・


熱いはずだ・・・床板の上に居た・・・そこに立てられた柱に自分が繋がれていたのだ・・・

隣には自分以外の誰かがいるようで、煙でよく見えないが祈りに似た言葉を呟いていた。

これは処刑されている自分だと思えば驚くしかない・・・その理由さえ分からずココからかと。

ジリジリと自分の着ているモノへ飛び移りそうな炎・・・迫ってくる炎の熱さ・・・少し離れた場所に怯えた顔で祈っている人達の姿もあった。

暫くして向こうから走り込む人達の姿が見え始め・・・その手にしたモノを持ち近場の人達を押し退けながら何かを叫んでいた。

驚いたが何でと見ていれば、一斉に皆が慌てるように動き出した・・・その人の数は増えていった。

手にしていたモノはバケツのようで、自分へ飛び散るモノは水だった・・・慌てながら自分達の回りにある炎を消していく。

床へ巻かれるが水は直ぐに蒸気へ変えていく・・・焼け焦げた臭いや煙にむせる・・・より煙が広がり苦しくなった。

急げと護衛なのか見張りと来ていた人達までがバケツを手にし火消しする・・・ほとんどが女性だった事に驚きながら眺めた。

名を叫び 助けようとしている人達 ・・・・暫く我慢していれば、火は消せたのだろう自分達を呼びながらも助けようとしていた。

この熱さの中で・・・ふと気付く・・・その人のような者達が居た事を・・・喜怒哀楽もそれぞれで驚き声も出なかった。

その姿を眺める・・・ソコに居るのだろう場所を避けながら自分が繋がれている縄を仲間らしき人達が解いてくれた。

気付かない人達は素通りしていく・・・揺らぐ人達もだが、その中でも心配そうに手を握り締め回りの人達と同じように呟きながら祈っている姿もあった。

大丈夫と囁く・・・もう少しだけ頑張れと呟く・・・間に合うとも囁いていた・・・その理由も気になるが、見聞き出来る自分に驚いた。

思い出してみれば、一番近くにいた人も・・・その姿は揺らぎ・・・回りの人達より透けて見える人もいた・・・祈る姿は同じなのにだ。

自分と同じ服・・・似たような髪型・・・それは巫女の容姿だと知る・・・・それが今回の自分の居場所なのだろうと見回した。

不意に自分の目の前に来た人・・・苦笑いをし自分を見るが、透けて見える理由は何だと驚いた。

それでも想像は容易い・・・現実なら自分は視た事はない・・・その存在さえ話には聞くだけだ・・・そんなドラマもある・・・幽霊という人の魂・・・霊的存在の人達。

隣で縛られた人が助けられ、心配そうに集まり覗いていた・・・そこへ透けた姿の人達も近寄っていた。

自分の縄も解かれれば、大丈夫かと縛られた場所を冷えたタオルで巻いてくれる人がいた。

「大丈夫と言ったろ(笑)」
『(笑)間に合って良かったね』
『 ・・・』
透けた姿の巫女が苦笑いをする・・・巻いたタオルを押さえながら言った人は心配事が無くなったような顔で・・・変な違和感をもった。

透けた人達の姿は自分に視えているのに、あちこちで互いにホッとしている姿がある・・・話もしていて、会話が合わない事に何でと驚いた。

『ねぇ、何て言ってるの?』
『 ・・・』
静かに自分へ聞いてくる事に驚いた・・・会話をしているようなのに全く違う言葉だったりもした。

そして気付く・・・聞こえる人は少なく自分は聞こえ、話を聞いたら教える役割をしていた事に。

声にしない事で理由まで話してくれたが・・・それが自分の事で仕事だろうと思えた・・・そして丁寧に呟き別へ視線を外した。

拒否はするなと・・・拒否は出来ないと・・・そう捉える言動もあり声にする事も諦めた。

自分の立場が分からず、取り合えず喉を押さえてみれば今は声が出せないのだと早くも理解し謝る人達。

話さなくて良かった事にホッとしたが・・・同じように笑み仕方ないと頷く幽霊なのだろう人達を見返した。

「(笑)この者達に我らの声は聞こえません」
『 ・・・』
「(笑)何で驚くのです?」
「声が出ないのですよ?(笑)聞き直すのは後にしたらどう?」

「視る者は少ない(笑)、まして聞こえる者は数人でしょう(笑)」
「皆、巫女だから・・・すーぐ(笑)忘れちゃうのよね!」
「誰が誰だかねぇ(笑)」

覚える気もない素振りはあり、それでも気にせず逆に楽しんでいるようだった。

笑い出す・・・より楽し気に話を始める人達・・・その姿は巫女という立場に身を包んでいたが、どの服よりも豪華だった。

刺繍が施され位があるのか友達のような会話だが序列はありそうな品のある佇まいだった。

一緒に張り付けられた人・・・その人が深々と頭を下げた事に苦笑いをしていた・・・

揺らぐこの人達が助けてくれたのだと気付き自分も礼をしてみれば視える人達まで習った。

殆んどの人達の目が驚いた顔で自分達を見返す・・・頭を下げた方角を眺め、また自分達を眺めた。

「(笑)我らの姿は、この者だけ。そっちの巫女は視えぬ」
その人達が苦笑いをする・・・隣に居る人もまた、すまなそうに視線を下げたのだった。



先の読み間違い・・・思いの外、宮の住人達の逆鱗に触れた・・・その責任を取らされたのだと知り驚いた。

それは巫女の命をもって償うのだと聞けば驚くしかない・・・そんな世界に飛ばされたのだと気付く。

それでも、自分が助けるべき人を探すしかないと観察を始めてみた・・・疲れそうな関係性は面倒だと改めて思え我慢だと耐えた。

この中でも数は多いからなのか派閥という位置が出来上がっていた事に驚いた。

そして巫女という立場の中でも位はあり本当に上という場所に居る人だけが完全に視えている事を知った。

それから暫く観察していれば話し声は聞こえていないようだった・・・お喋りな人達が多いのに、その声に煩いと反応しない人の方が多かった。


だからか通訳のように、こう言っている・・・とか、こう伝えている・・・など、互いの間へ身を置いて聞いては話すという役割の巫女もいた。

そこに自分の名も連なっている事に可笑しくて口を引く・・・霊の存在は信じた事もないが実際に視た事もなかった。

透けた巫女は数多い・・・その地位は上にいくほどに見聞きする事に長けている。

視る事はあれど声まで聞こえる人は少なかった事の方が驚いた・・・長・・・その地位から数人だけが見聞きしている。

より姿もはっきり視えない巫女は多数で・・・視えていると誤魔化す巫女までがいて驚くしかない。

この場所で生きる為なのだろう口を閉ざす事にし聞かれた事だけを伝えようと気を付けた。

何より自分は声音だけで判別し伝えていた事を知り、ならばと気を使った。

その中で・・・時々だが見聞き出来る巫女がいた事に驚いたが、ぼんやりとしか・・・そう答える巫女を見つけた。

はっきりと視え謝る姿まで・・・だからか、守れと言われ頷いてみれば翌日から自分と行動を共にする巫女見習いとして部屋付きになった。

項垂れ・・・謝り・・・本当にすまなそうに自分の世話をする・・・構わないと言っても卒なくこなす。

聞いてみても「本当にぼんやりとしか・・・」それしか言わない・・・自分で認めたくないのだと知れた。

ならば気にせずに自分の目的を果たそうと日々を送った。



「そなた(笑)雰囲気が変わりましたね」
『(笑)そうですか?その声はカズ巫女様ですね』
「でた!(笑)」

「その声(笑)。それを言うのも慣れましたね」
「(笑)ほんとねぇ」
『(笑)皆さんでトギ巫女様と話を楽しまれては?』

「(笑)飽きたのよ」
『 ・・・』
「(笑)会議で話すから」
『 ・・・では、アキと話を』
「(笑)内緒にしてるし」

『この部屋でなら(笑)誰も気にしません』
『ハル巫女様・・・私は・・・』
焦るように自分へすがるアキに苦笑いをする・・・

「耳はあるものよ?」
『 ・・・!?』
「有り難い事に(笑)聞こえない巫女に役目をさせてるけどね」

楽しげな呟きとソコだと指さす事で視線を向ける・・・障子に見える人影に呆れ苦笑いをした。

『そうね(笑)なんと無くって言ってたわね・・・』
『話している気がしているだけで・・・』

アキの呟きに苦笑いをし、分かったと頷くしかない自分に疲れると項垂れた。

『早めに参り時間潰しと散策に出ましょうか?』
彼女の呟きに嬉しそうに頷く人達・・・アキは素早く仕度の準備と動き出した。

『アキも着替えなさいね(笑)』
『 ・・・』
『取り合えず(笑)端で控えてくれたら、用は素早く出来るし(笑)』
戸惑うアキに構わず言うと着替えを始めるのだった。

盗み聞きしていた子が慌てるように去っていく・・・しっかりと足音を響かせた事に苦笑いをした。

「この時期だからでしょう・・・そなたは我慢なさい(笑)」
そっちにも居たぞと笑み視線を促す場所・・・開かれた窓の端に見えた服・・・僅かにスッと姿を消した。

ハァと激しく溜め息をしたが、笑い声は増えサッと消えた事に余計に項垂れるしかない。

誰を観察していいのかさえ分からなくなる・・・それは、これからなのだろうと自分へ頑張れと励まし部屋を出たのだった。



===

「バレたわ!」
「気を付けなさい!」
「なぜ逃げるのよ!」

追っ手が迫るなか森の中をひた走る・・・何とか逃げ延び真実を伝えなければ殺されてしまうから。

大巫女様の為に・・・しれず出された自分を恨んだ。

証拠を掴めた事にホッとした・・・気付かれ逃げたが・・・力が及ばず自分の身代わりに捕まった。

助け出せず、ならばと証拠を集めたが敵は多く欲に巻かれた仲間の数は多すぎた。

誰も信じれず一人ずつと考えていたが時間が無さすぎた・・・それは護衛までが手に落ちていた。

助け船はあれど誰にも視えない人達・・・それを証明する力もない・・・手にしたモノだけでも届けようと密かに抜け出す。

不意に現れた者達・・・背から抱き込まれ自分の意識が遠退いた・・・・


==

ようやく捕まえた・・・漏れたが最後、神殿から追放されてしまう・・・やっと抱き込めた人達の負の力は大きく、巻き込まれた自分を呪った。

指示された手紙を盗まれ・・・頼まれた品まで奪われた・・・それがバレれば自分まで危険に晒される。

何の力もないのだと知られれば、やっと出来た後ろ楯さえ消え自分の身が危なくなる事を知った。

既に始まっていた事で手も引けなくなった・・・彼女を捕まえ奪われた全てを取り返すしかない。

上にまで知られたが、それは大巫女様だけで止まりホッとした・・・その間に奪えばいいと動いた。

明日の処刑に間に合う事に心底ホッとする・・・


ようやく自分の心配しなければならないモノが消える・・・二人が処刑されれば助かり、位もあがる。

次の代は自分の味方だ・・・早く燃え上がれと願う・・・ぜんぶ終われと願うだけだ。

火の手があがる・・・大巫女様が何かを唱え静かに終わりを待っているようだった。

彼女が気付いても・・・逃げれない・・・話さないよう口も縛られていた・・・やっと火の手が回り始めた。

目覚めた彼女を笑う・・・視線があったが自分へ訴えている気もしなかった・・・彷徨う視線に気付き眺めた。

何かがソコに居るのだろう・・・それは昔いた巫女達だと言われていたが、自分の目で確かめる事も出来ない。

怯えもない目・・・その状況に恐怖もない彼女に驚いた・・・不意に何処かへ向けた場所を見つめ驚いた顔になった。

想像は容易い・・・諦めろと言われたのだろうと思ったが・・・彼女の感情は変わらず、驚いた顔だけだった。

火が回り煙は濃く立ち込めても二人の姿に変化もなかった・・・助けて欲しくて祈る巫女達もいた・・・

邪魔だと足を引いていた上級巫女達は笑いたいのに我慢したような顔でうつ向いていた。

視えている者が誰かへ願いを乞う・・・頼むと祈り見上げては燃え盛り始めた場所を眺めていた。

生きる為に、自分の家族の為にした・・・それが神殿を揺るがす事だと知った頃には遅すぎた。

大丈夫だと・・・自分へ力を貸してくれると言った言葉を信じるしかない・・・それは駄目だと言った彼女だった。

でも彼女は守れる力もない同期だ・・・確かに力はあれど自分まで助けてくれる事はしないと思った。

自分を守る為にした・・・自分が生きる為に・・・後悔しても遅い・・・始めてしまったのだから。

大丈夫だと視線を向ける・・・バレるなと睨む者もいる・・・この中で生きるしかないのだ。

火が強くなる・・・もう見れないと視線を外す・・・隣で自分の手をくるみ震える巫女もいた。

僅かに視えるようだが黙っていた・・・自分だけに教えてくれた・・・この友人だけに今は頼るしかない。

密かに教えて貰いやり過ごしてきた・・・この子もまた彼女や自分と同じ頃に神殿へ来た。

彼女だけが大巫女様達に認められ位が上がり離れてしまった・・・助けてくれると信じていたのに。

疑われ本当に助けてくれた事もあったが・・・忙がしくなり会う事も少なくなった頃に自分は切り離された事を知った。

裏切られた事に肩を落とす自分を勇気づけてくれたのは今、隣にいる子だ。

彼女ほどの力はないが近場にいてくれる・・・欲のない子・・・上に行く気もない。

今の場所で十分だと彼女と二人で笑っていた事を思い出した・・・
-さよならね-
そう思った・・・

途端に助けられていく事に驚いた・・・燃え上がる炎が小さくなっていく・・・終わると思えたのに、まだ駄目だと声にされた気がした。

本当に助かった二人・・・撤回された事で二人が解放された・・・何より守られた場所で療養していた事に驚いた。

誰にも手が出せない場所・・・それは仲間の巫女さえ入り込めない場所・・・静かに不正がばれ、証拠というものが溢れ始めた気がした。

生きた心地もしない・・・多少、力があると噂されていた見習いが彼女についた事で本当の事だったのだと気付く。

仲間へ引き寄せられず叱られた・・・本当に噂だけで止まっていたから・・・自分でも断言していたのに。

大巫女様達も言っていたが、彼女だけは近場へ置き習わせていた・・・力を持つ者だけで固まる怖さは、何もない者達には恐怖でしかない。

それも気にせず助けてくれていた彼女だった事を、今更だが思い出した・・・フッと嘲笑う・・・既に遅かったから。

諦めるしかない自分は口を閉ざしたのだった。