tamiのブログ

このブログ・・・妄想ー空想大好きな私が、勝手に楽しんで・・・勝手に文字にしています。ボロボロですが(笑)

Drown -36 -end-

2021-11-08 11:11:54 | Drown


周年記念日に合わせ計画は進められていた・・・取り合えず依頼はハインが受けていた事で深夜に依頼先へ向かう。


『本当に全部に?』
『一年位の予定らしい(笑)』
『分かったけどさ・・・』

『イメージカラーと(笑)取り合えずのデザインは出来てた。だから二人は膨らませて足してくだけでいいとさ』

ハインは車から二人を下ろし待っていた人がいる所へ行こうと促し歩かせる。

『あの人達?』
ハインを見つけココだと言いたげに笑み会釈していた。
紗綾は描ける嬉しさでカメラを出しながら歩いた。

『(笑)すみません、待たせましたか?』
『大丈夫です。(笑)こちらから』
どうぞと促していたが自分達をも観察していた姿に苦笑いしかない。

『(笑)イメージ案は準備して頂けました?』
『あります。場所ごとにありますが大丈夫だったでしょうか』

『・・・まったく同じに?』
『すみません本職ではないので外部へ依頼し作成しました』
『・・・』

『あの・・・』
『(笑)ならソコで頼んでしまえば安あがりだったんじゃ?』
『『・・・』』

依頼主は驚き、ハインは確かにと黙った姿に里桜は笑うしかない・・・話した紗綾は気にせず社屋のロビーを眺めた。


『一ヶ月で・・・』
『本当に一月で出来ますか?』
『・・・』
『そのデザインは?』

紗綾に言われコレだと数枚のデザイン画を受けとる・・・ドアや通路まで丁寧に描かれていた事で、同じ場所の方を眺めながら見比べた。

里桜は床へ置く・・・
『これ・・・上?下?』
『・・・下なんです』
『なんで?』『上は?』

紗綾と里桜の声が重なり笑いながら見合うと二人は社員の方を眺めた。

『天井は大変だろうからと。それと、照明で崩れるだろうからと・・・言われまして・・・』
『『・・・』』

『大丈夫でしょうか・・・』
『・・・』
ここまで準備して迷うのかと驚き、里桜は依頼しといて自分達に聞くのかと驚いた。

『これ描いたの私達じゃないのに何で確認するの?』
『・・・すみません、イメージ画なので依頼した時は雰囲気だけを書面にして出したんですが』

『『・・・へぇ』』
どう答えて いいか分からずハインへ目配せながら呟いたのだった。

『・・・取り合えず全て出して置いて貰えます?』
『・・・』
『通行止めにはしてあるが・・・』

『何処を通ってくの?』
『大丈夫なの?』
『完成までは裏口を使って貰う事にはしたが、それでいいか?』
『いいけど・・・』

『足場を組む作業と、警備も確実に出来る会社は選んでよ?』
『いつもの場所に頼んだ(笑)』

『両方?』
『当たり前だ(笑)知らずに入って怪我されてもな』

『(笑)綿密な契約はしてくれた?』
『まだサインは入ってない(笑)、ソコまで出来るか知らないしな』

暫く眺めていたが面倒になり聞いてしまえと声にした。

『質問・・・いいですか?』
『(笑)はい』
『このデザイン画はイラストっぽくなってますけど・・・』

『そうなんです。依頼した時に初代から最新までのキャラクターを入れたくて案を出したんです』
『・・・』

『そのキャラクターのデザイン画を全て下さい』
『(笑)私も質問しても?』

面倒だと里桜が言った事で返事を待ったが考え始めた事で時間も惜しいと紗綾が呟いた。

『・・・はい』
『イラストレーターへ依頼した内容を今、教えてくれます?(笑)』
『・・・』

『すみません(笑)私が。
当社はキャラクター等を人形やぬいぐるみをメインに始め今は雑貨も扱っていますが、周年記念にと初代から作られたモノを全て入れて欲しいと頼みました』

『この森に?』
『動物がメインだった事で違和感がないようにと』
『イラストレーターが?会社から?』

『当社のアンケートで多数をしめたのでウチが頼みました。それは難しいですか?』
『・・・んー何と言えばいいか』

『(笑)マンガチックでいいんじゃない?』
『・・・』
『理由は?』

『キャラのデザイン画だし(笑)、玩具っぽいのに画風が実写っぽいって・・・』

『あー、空想?おとぎ話みたいな?むかーしむかしって感じ・・・でもないか・・・』
『絵本みたいなイメージで・・・』
『出来ますか?』
『・・・』

『だからぁ・・・その絵でも本物に近いような絵とかもあるでしょ(笑)
見本とか参考にしたいような作品とかありません?』
『・・・あるんです』

『どれ?』
『・・・絵本なんですが』
『なに?』『言って』
『・・・アレク・フィードの、不思議な旅という・・・絵本の・・・』

『え?』
『あー・・・』
『・・・』

ハインが驚く・・・彼女達までが唸り理由は何だと社員達は三人を見返した。

『・・・このイラストレーターへ依頼したのに、いいんですか?全く違う作風になっても・・・大丈夫でしたか?』

『構いません。イメージ画として依頼したので・・・もちろん了承して貰ってます』
『そうでしたか』
『・・・』

『ま、いいんじゃない?』
『紗綾・・・』
『だって欲しい絵は、自然の中に会社で作られたキャラがいる事でしょ?』

『・・・玩具会社だしね』
『だよ』
違うかと社員達の様子を眺める紗綾と里桜だった。

『クリーニングに三日使い始めますが大丈夫でしょうか』
『(笑)こちらは描き初めが一日目として、終わり一月で完了という事は変わりません』

『・・・一ヶ月は』
『(笑)描くのは。そこに足場を作る日数や清掃等の時間は含まれないと伝えてましたが・・・』

違うかと見返すハインに確認しながら頷いた人・・・知らなかったのは一人だったが驚いた顔に苦笑いをした。

本当に出来るのかと驚く人に口を引く彼女達の視線は描く場所だった。




壁を眺め身動きもせず、ひたすら何かを考える人に視線が集まったが暫くすればスケッチしていた。

規制線は引かれ端の方は作業員が建設現場で見る足場を作っていた事に社員達は驚きながら通過していく。

直ぐに通り抜けられなくなりシートで覆われていった。

二階まで吹き抜けではあるが、見下ろす場所は明かり取りの為か透明なビニールシートでロビーは囲われた。

両端は天井まで壁はある・・・正面二階途中まで、入り口はガラス張りだ・・・左側に受付カウンターがあり通り過ぎればエレベーターの入り口へ繋がる通路だった。

右側は二階通路からロビーを見渡せる・・・待合室や休憩スペース等の寛げる場所にもなっていた。

雰囲気やデザインを考え纏めてきた紗綾・・・その雰囲気を思い出しながら里桜は描く場所で想像しながら眺めた。

下絵と紗綾が線を作り出す・・・反対側で里桜が描き始め・・・それは数日におよび担当社員が驚いた。

描き終わるかと見ていれば一人が色をつけ始める・・・反対側にいた人は離れ眺めていたが身動きもなかった事に驚いた。

ざっくりと塗っている事は知れるが、広がる場所にはどうなるのかと眺めていた。

足場の上で眺めていた彼女は使うだろう色を持ち 上がっていく・・・降りては数個の缶を手に一番上まで持ち運ぶ。

どんな仕上がりだと休憩する時間は、二階の通路に人は集まりはじめ苦笑いをしながら塗る里桜だった。

角になる部分に大木のように葉が生い茂り存在を見せるように左右へ広がっていた。

『あ・・・』
『どうした?』
『あの絵・・・』
『なにがだ?』

『あの木・・・あの木は絵本に出てくるイラストに似てるが・・・大丈夫か?』
『先輩?』
『作家に連絡しとかなくて大丈夫なのか?不味くないか?』

『・・・』
『確かに似てますが・・・』
『絵本作家と挿し絵の作家の許可は取ったのか?』

『・・・似た感じで頼んだ後に先方には伝えたとか聞いてますが・・・』

『・・・確認はしとけよ。訴えられたら消さなきゃならなくなるだろうしな』
『サリの担当会社に依頼したので大丈夫なんじゃ?』

『・・・』
そうなのかと聞き入りながら眺める人達だった。


日を要し ロビー全体が把握し始めた頃、所々に抜け落ちたような空間が目立つようになってきた。

数多くの場所に自分の会社のキャラクターが入る事は最近になって知った社員もいた。

楽しそうに笑み描いている女性二人の姿は社員にも話題は増えていったが 近場で描いている人へ声もかけれず眺めるだけの日々だった。

少しずつ、この二人がサリというアーティストなのだという噂は社内で広がり始めた。

それでも担当社員は他へ噂話は出すなという契約条件もあるのだと教えて徹底し始めた。

前から表に出ないプロフィールに想像は膨らんでいったが・・・違約金の発生も自分の会社には痛手になる。

そこは担当社員から上へ報告し各課へ徹底して貰うべく話を通して貰った。

また暫くして、見えていたはずの二階からシートは濁り見えなくなった事で社員達の話し声はすれど集まりは少なくなった。


静かな空間で落ち着くと二人はチェックをしながら眺める・・・楽しかった時間は終わりを見せた。

最後の夜食だとハインは持ち込み三人で食べながら完成したろう作品を見渡した。

『(笑)時々なら受けていいか?』
『・・・』
『(笑)楽しいしね』
『ん?里桜は?』

『・・・(笑)了解したら頻繁になりそうで』
『(笑)あー確かに』
『そうそう無いのも知ってるけどね(笑)』

『(笑)海外でも?』
『来るならね(笑)』
『(笑)あるならね』
揃った声に笑うハインは頷き彼女達を眺めた。

『里桜は戻る?』
『・・・仕事もパス』
『だよね・・・無理そうな気は私もしてる』

『仕事なら悪いが、そっちからの依頼はパスしてる・・・それとな・・・』
『『(笑)任せるよ』』

『・・・いいのか?』
『(笑)ハインが忙しくならない程度になら構わない。リンとの時間も必要なんだよ?』

『・・・(笑)それは分かってる。今も無理はしてない』
ならいいと笑む里桜に苦笑いをした。


完成し全てが撤去され・・・話題はあがったがサリの姿は出なかった事に安堵した。

サリのサインした場所は何処だと探す社員達・・・時間が出来るとロビーに集まる事に社員達の笑みは増えていた。

企画し担当した人達だけが知るが、そこは言わないと決め眺めるだけだった。



紗綾を見送り戻った里桜・・・今回用のスケッチブックをアトリエへ置き部屋へ戻る。

ベッドで眠る高階の姿を見つければ久しぶりに会った事で嬉しくて寄り添うように眠り始めた彼女だった。

背中が温まり、里桜が帰って来たのだと気付き ゆっくりと寝返り彼女を見つめた。

うつ伏せた彼女は手枕にして眠っていたが自分の気配を感じたのか自分を静かに見返した。

彼女が自分を見つめる・・・柔らかな笑みは心の中まで捉え絡み付いた気がした。

―おかえり―
そう囁けば微笑んだ彼女が頷いた・・・疲れた顔のようで優しく抱き締めた。

自分の身へ彼女の腕が絡まる・・・全てを自分へ預ける里桜に嬉しくてキスを落とした。

彼女の口端が引かれ眠りへ入り込んだようだと苦笑いをした。


変わらない優しい笑みで見つめる彼女と寄り添える事で余計に安らぎ心の中まで穏やかにした。

彼女に執着する自分に苦笑いだ・・・会えば自分へ寄り添う・・・触れれば全部を預けてくれる。

その心地好さに浸れる自分はより幸せを感じた・・・

嬉しくて彼女を見つめる・・・気が付いたのか自分の頬に触れた彼女の手が引き寄せた。

微笑んだ彼女が口付ける・・・触れた唇が微笑む・・・嬉しくて彼女を自分へ埋めれば、フッと笑った息が自分を撫でた。

お休みと囁く優しい声音が響く・・・より温まる自分を感じながら眠りへついたのだった。


新たな自分達の生活は始まった・・・色んな場所へ出向く事は慣れた頃から楽しくなった。

仕事も纏めれば集中していく自分を知った・・・多方面から依頼も増え頑張れたが・・・何より仲間達が安心したように笑みで送り出してくれた。

最近はからかう・・・それも恒例になりつつある・・・里桜はといえば何度、藤野や紗綾に呼ばれても行く事はなかったがテレビ電話では話すようになり苦笑いだ。

回数を増やせと叫ばれても忙しいと滅多に出ない・・・面倒だと暇な時間でも出なかった。

仕方ないと昼寝をしている姿を見せた事はあり笑い声で里桜が起き不意に切ってしまう事も楽しかった。

寝ている彼女を抱き込み仲間達と話す事も増え気を使う皆へ謝る彼もいた。

一緒に居る時間が増えれば嬉しくて抱き込む・・・離せとも言わず彼女は諦めたように静かに過ごしてくれる。

彼女が仕事へ行くとき、時々だか着いていく・・・そこで自分の仕事をして時間を潰した。

充実した時間が増え嬉しかった・・・休憩時間は彼女と他愛ない話をする。

それはアトリエでも変わらなかった事が嬉しかった・・・集中していく里桜だが自分がいれば休憩し話し相手になってくれた。

邪魔かと声にしてみれば大丈夫なのだと笑った彼女が手を止める・・・話しながら仕上げる事もあった。

終われば自分だけの彼女が寄り添うように隣へ来てくれる・・・それだけで自分も幸せだと思えた。

不意に親からの連絡はある・・・直接彼女へ連絡する親に戸惑うが、少し話せば彼女は自分へ回す・・・自分がいなければ切っていると聞けばホッとした。

謝りは互いから・・・気にするなという言葉も互いからだったが、今はそれも笑って流せるようになった。


木陰で身を寄せる・・・彼女を抱き込み空を眺めた・・・穏やかな陽気は心地好く 久しぶりの二人の時間を共にした。

葉音が優しく聞こえる・・・彼女と過ごす今が一番幸せだと改めて感じ、日々を共にする今を味わう二人だった。


-end-



2021・7
お付き合い下さり ありがとうこざいました。

何度もストップしENDへ運べずの話しは長々となり・・・無理矢理 ENDへ運びました・・・

バレンタイン話だったはずが・・・無理だった・・・
1月から始めたのに夏!

いやー参った!参った!7月も終わるし・・・
読んで頂き感謝です。 -tami-


放置し過ぎた・・・今は夏じゃなくて冬だった・・・

めんどくさがり-tami-は変わらず、のほほんと遊んでおりました!

2021・11 やっと完了!次も飽きずにp(^^)qがんばります!-tami-








Drown -35

2021-11-07 00:45:34 | Drown




抱いて寝ていた自分のはずが違った事に驚いた・・・彼女がいない事に驚き過ぎて動けず瞼さえ上げられなかった。

疲れも重なり眠気は遥かに重く、彼女まで消えてしまったのだと力さえはいらなかった。

手足を投げ出し眠れた自分に苦笑いしかない・・・そして気づく・・・伸ばしていた自分の手に彼女が触れている温かさがあった。

枕の下へ腕が入っていて彼女の温かさは直ぐに気付かなかったのだと口を引く自分もいた。

起こさないように近寄り彼女を背から抱き締め重ねた彼女の手を眺めていたが そっと包み嬉しさに浸った。

ホッとした・・・姿を消されたら今度こそ会えなくなりそうな気がしていたから。

深く息を吐く・・・
『黙って消えないから寝て・・・』
『・・・』
自分のため息の理由に気付いた彼女の言葉に苦笑いをした。

『それとも・・・』
『ん・・・話してていいか?。このままで・・・いいか?』
『体勢を代えない?』
『いい・・・』

『・・・何から話す?』
『ん・・・里桜は、これから何をしてくんだ?』
『・・・特に決めてないかな。これっていう事がないから・・・ただ、描いて売れたら助かるけど』

『・・・』
『アトリエはあるから籠れるし』
『そこに行く?』
『・・・予定はしてた』
『ソコで暮らす?』
そういう事かと彼女を見つめた。

『揃ってるから・・・
あなたは?仕事は順調に出来てるの?』
『自分のは全部、終わらせて来れた。会社も回せてる・・・』

『(笑)良かった』
『親のこと・・・本当に悪かった・・・代わりに謝る事しか』

『子供が大事な親だもの・・・どの親でも子供を心配するのは当たり前だし・・・もう忘れてくれたら』
『それでもだ・・・迷惑かけた』
『・・・』

『そうだ・・・聞いて・・・聞きたい事・・・があった・・・』
『どんな事?』
『聞いていいのか分からないが』
『ん・・・』

『子供・・・なんで・・・』
『・・・』
『俺なら大丈夫って・・・意味・・・』
『・・・ハインから?』
『聞いた・・・』

『あなたは・・・私が どんな選択をしても理解しようと努力してくれてたから・・・』
『考え抜いて決めた事だろう?』
『ん・・・』

『俺が隣に居ても大丈夫か?気にしないで子供に会いに行けるだろ?』
『・・・』
『遠慮しないで会いに行けるだろ?』

『それ・・・』
『彼らの子供だろ?でも母親だし会いたいと・・・子供も小さかったし』
『それでも幸せだと思える?』

『・・・俺の気持ちを優先しなくていい。ただ里桜と一緒に生きたいだけだ・・・(笑)それで十分・・・
里桜は?それで幸せだと今でも思えるのか?』
『・・・(笑)』

フッと笑った里桜が寝返りをし自分を見返した・・・頬へ触れた彼女の手で余計に温まれた。

自分を変えられない・・・こんな嫌な性格でも気にせず、ひたすら自分だけを思い自分だけに思いを届ける彼。

聞けばやはりと変わらない彼の言動に笑み返す・・・高階風侑もまた自分を貫く人だった事を思い出した。

『あなたを苦しませて来た私と』
『一緒に生きたいだけだ・・・俺も里桜を苦しませて来たから・・・』
『・・・』

『・・・(笑)里桜が居て・・・初めて自分を生かせられた・・・
里桜が受け止めてくれたから(笑)自分を思えた・・・夢だと諦めてた事も出来たし』

『友達と』
『(笑)本気で考えてた訳でもなかった・・・終わりはあった(笑)期限付きだったんだ・・・』
『・・・』

『(笑)里桜の作品は優しかった。見てる自分に勇気を吹き込んでくれてた。里桜の言葉は自分の中に染み込んで強くしてくれた』

『もともと強いのに・・・気付いてないだけだと思うけど』

『(笑)違う。知ってるだろ(笑)里桜を追いかけてる自分に呆れてるし女々しいとも思う・・・こんなだから捨てられるんだと分かってた。

これが最後と・・・(笑)毎回、自分を励まして来てたんだ・・・だから』

『一度離れて自分の先を考えようって思った・・・私のせいで悲しませてく事も辛くさせるのも嫌だったから。

何かをする度に物凄く考えて決めてきたけど、自分の心の中で愛した気持ちを消した事はないの。

決心する時・・・励ましてくれた貴方の言葉と笑顔を思い出してた(笑)不思議と大丈夫と言われてる気がして頑張れたの』

『これからも愛してていいか?離れず・・・ともにと・・・』

『今までも・・・これからも貴方を愛してく気持ちは変わらない。
ずっと(笑)愛してたし・・・
妊娠中も(笑)心の中に貴方が住んでた・・・』

『子供と・・・子供には母親が』
『(笑)母親は・・・私にはむいてなかったみたい。というか・・・自分が産んだけど自分の子じゃないと思ってたからか、自分でも可笑しいと思うけど置いてきた罪悪感はなかった・・・なかったの』

『・・・』
『(笑)リンを愛してるわよ?頑張って産んだもの。でも母親だけど(笑)母親じゃないって・・・不思議と距離はおいた気がする』

『無意識にか?』
『・・・たぶん』
『話してくれたら・・・』
『・・・貴方の両親から責め立てられたら嫌だし・・・これから』

『そこは俺も気にしない・・・
ずっと一緒に生きたいだけだと何度も伝えたろ・・・取り合えず自分の我慢が限界になるまでは親と付き合おうと思ってた。

里桜を探しながら考えて・・・見つけたら里桜の隣で生きてく自分を想像してた』

『・・・生きる事が辛い?』
『・・・(笑)溺れてる自分も嫌いじゃない・・・居ない苦しさだけが怖かった。
また親が出て来る・・・どう対処したら里桜を悲しませないか考えて、どう出て来たら潰せるかと』

『潰せるって・・・』
『そんな親だった・・・利用価値は何だと計算してく親だった・・・うんざりするのに縛られて身動きも出来なかった。

底がないほど絡み付く・・・自分の親だと諦めたら自分の大事な人達まで苦しませてる』

『それが嫌?』
『・・・(笑)・・・里桜を繋ぎ止めてないのに、里桜の作品の所有権を主張してた。
承諾なしに婚約者を作ったり、画廊を開いてサリの名を売ったり作品まで』

『それ・・・』
『ナツさんが気付いて・・・紗綾からハイン?アレクか?マネジメントしてる会社・・・そこへ連絡して法で脅して貰った』

『知らなかった・・・』
『噂でもスキャンダルは防ぎたかったし』
『(笑)ありがとう』
『・・・俺の親が原因なんだぞ?』

『所有権なら今はハインとリンにしてあるの・・・紗綾のは紗綾自身に明確に残したから大丈夫のはず』
『(笑)良かった・・・』
『・・・』

一緒にいるなら彼にと思った自分に苦笑いだ・・・その彼は本当に自分だけでいいと思ってくれていた事にホッとした。

『『・・・(笑)愛してる』』
笑み見つめた互いの声は重なったのだった。



重ねた肌の熱さに酔う・・・離れていた分の想いが互いの身へ張り付き離さなかった。

自分へ埋め込み彼女を見つめれば、柔らかな笑みは自分だけに向けられ深まで激しく揺れた。

唇が絡み付く・・・ざわつく身が余計に焦がれていく・・・中で駆け巡り激しく昂る身が喜んだ。

深みへ引き摺られ奥底で浸る・・・想いごと押さえ込まれれば自分の中で恋い焦がれた記憶が溢れ出した。

優しい彼の笑みが自分を焦がす・・・笑みの中に自分が笑っていた姿が見え嬉しくて見返した。

自分を抱く手が彼の想いを伝えてくれていた・・・自分だけを見つめ自分にだけ焦がす・・・

彼の想いが自分の中で駆け巡り温めた・・・それが嬉しくて口付ければ彼が返事をしたように唇は塞がれた。

互いの想いが行き来する・・・焦れったい互いに気付くが今迄の思いを隙間へ埋め尽くす。

全てに隙間もないように耐えた身は喜び埋めていく・・・彼女の中で自分を刻みこむ・・・既にあるのに染み込ませていった。

グッと耐えた潤む目が揺れ・・・浸り始めた身が互いを恋しがり彼女から注がれた思いは自分の中で溢れていった。

絡め離さない思い・・・触れた唇が微笑み潤んだ目は互いを捉え震えた。

足りないと忍ばせ揺さぶれば激しく返され、昂る身が熱くなり浸るように味わった。

熱く吐き出す吐息までが焦がしていく・・・口付けた唇までが追いかけた事に苦笑いだ。

嬉しくて昂り激しく駆け巡る・・・疼く身が喜び耐える間もなく突き抜けた。

息の荒さも愛おしく誰にも渡さないと唇まで貪った・・・そっとキスを返す・・・直ぐに返事をしたように彼女の唇は微笑んだ。

優しく抱き締める・・・途切れずに互いの中で浸っていた想いは交換し奥へ落として浸らせた。

呼び覚ました想いを熱く吐き出すと優しい笑みで返された・・・溢れても注がれていく事に気付けば身は笑みを浮かべていた。

腕の中へ押し込める・・・優しく微笑んだ彼女に笑み返す・・・自分だけに向ける笑み・・・

『(笑)離れず側に居てくれ』
『・・・(笑)繋いだ手を離した事はないわ』
事の終わり・・・自分を抱き込み見つめていた彼が呟いた・・・

自分を生かした彼の笑みは自分の中へ染み込み温めた・・・それは変わらなかった事に改めて感謝した彼女だった。




それぞれの時間は流れ色んな事が起き、過ぎていた日々は流れていく。

スケッチブックに描き貯めたモノを出せとハインから催促され渋っていた ある日、久しぶりだと遊びにきたのは紗綾だった。

いつか一緒にと約束していた・・・紗綾とは電話やメールだけのやり取りだけだ。

会うのは本当に久しぶりだったし野垣と一緒に泊まりにくる計画だったはずだ。

都合がつかなかったのだと思えば、それにハインが間に挟まり調整していたのだと気付いた。

楽しげな笑みで現れた・・・何より紗綾が里桜のアトリエに到着した途端に現れたのだ。

何かしら仕組まれた気がしハインを眺めていれば笑み返した目は何かを黙っていたのだと知れた。

『どした?』
『こんな偶然あるかな』
ハインを見ていたが、電話が来たようで離れていった姿を目で追いながら紗綾へ言った。

『ん?』
『彼が居ない今で、計画はしてたけど今じゃない紗綾一人が来て(笑)・・・着いた途端にハインが久しぶりに来たんだよね』

『・・・そーなの?
あれ?違うんじゃない?急に彼も仕事が入ったから後から来るって聞いてたよ?』
『・・・』

『仕事もあるって聞いてない?』
『・・・少し前に、サリで依頼があったとかは聞いたけど・・・』
『確かに。(笑)少しだけって私も聞いたけど』

『(笑)紗綾は許可した?』
『するわけない(笑)、旅行がしたくて計画してたんだもの。でも暫く泊めて貰えるなら一つってだけ(笑)』

了解したのだと思い出しながら紗綾が言った。

暫く見合い笑っていたが互いに昔を思い出したのか可笑しくて・・・その答えは同じだったと気付けば笑うしかない二人がいた。


騙された二人・・・それでも久しぶりに楽しみながら出来る仕事なのだろうと思えば嬉しくて・・・ハインが戻るまでハイン達と暮らしていた日々を懐かしむ二人だった。












Drown -34

2021-11-06 10:24:19 | Drown


真っ暗な中をひた走る・・・途中で休めた事にホッとした・・・到着するにも時間は遥かに遅すぎる。

それでも場所を変えずに居て欲しいと祈りながら運転してきた・・・ハインから新たに地図が届いた。

里桜は移動していないと・・・アレクは励ましのメールのように連絡をくれた。

二人の為に彼女がした事・・・何度か頭に過るが、何故かホッとした自分がいて・・・気にならなかった事に自分でも苦笑いだ。

自分以外の・・・そう言った親友の声を思い出した・・・それが何だと跳ね返した自分もいた。

彼女が居ない・・・共に生きると誓った・・・隣に・・・そう約束した自分が壊した。

彼女が居ない辛さや淋しさに呑まれていく事で、いつからか親友からまで言われ・・・止められ・・・執着しているのかと錯覚してしまう。

本当にそうなのかと・・・そんな余計な考えも普通にしてしまう自分もいた。

なんども考えるが、彼女を愛し続けられると思えば嬉しさが甦り 目の前にいないのに確信してしまう自分もいて笑えてしまう。

なのに会えた途端に激しく動揺してしまう・・・突き刺さる彼女の言葉は自分の全部を押し潰していく。

それは駄目だと祈りながら彼女を求める目は捉え離したくないと心まで叫んだ。

彼女の子供だと知った・・・見た瞬間から激しく自分を自分で怖がらせていた。

愛してるのに寄り添えないのだと自分を突き落とす・・・会えて嬉しいのに駄目だと目が子供の姿を思い出す。

可哀相だと自分の心に叫びそうになるのに、彼女を求めなければ自分が狂いそうだと焦る。

諦めかける自分を自分が問い愛していたろうと奮い起こす・・・日々、激しく自分の中で揺れ動いていた。

彼らの話を聞きながら自分の腕の中へ戻せる嬉しさを無意識に味わった・・・途端に会いたくて・・・腕の中へ連れ戻したくて来てしまった。

やっと着いたが、ドライブには遠すぎた・・・疲れが眠気を誘う・・・



朝になっていた事に苦笑いだ・・・運転し続け自分に疲れがでたのかホッとして車を停めたが・・・いつの間にか車の中で眠ってしまった。

気付けば明るさは広がり綺麗な空は広いのだと思わせてくれるほどだった。

ふと誰かの姿に気付く・・・不思議そうな目が近付いてきた事に苦笑いしかない。

その制服は従業員のようで、よく見れば駐車場の入り口に自分は車を停めていた事に気付く。

謝り誘導された場所へ車を停めリゾート施設内へ入りフロントへ向かうべく歩いた。

予約は、ココヘ向かう間に連絡はしていた・・・メールの返信にはフロントで手続きをすれば泊まれ、部屋も好きな場所が選べた。

仮予約のメール画面を見せ次はと部屋へ向かう・・・施設内の地図はメールで貰っていたので、それを見ながら行った。


荷を置き出かけた高階・・・里桜が行きそうな場所はと考えながら施設内を歩いた。

遊歩道も多く、軽く山登りも出来る場所だった・・・小さな小川も近場を流れていた。

だからか近場にはキャンプ場もあり遊具も豊富にあった事に驚いた・・・スポーツ施設のような造りもあった。

山へ登る・・・頂上への道は1ヵ所だけだった事にホッとしたが何故か下山する為の道は別に作られていた。

これでは下りてくる人には会わない・・・暫く悩んだが登る事にして来てみた。

とくべつ急な斜面はなく比較的に登りやすい事にホッとした・・・何より色々な年代の人達もいる事に驚いた。

所々に休憩所のような場所はある事で宿泊者までが散歩のように登っていた。

頂上に近くなる度に休憩所は下山する登山道へ導く為の標札が増えた・・・リタイヤし下山したい人の為かと口を引く。

最初に知った時に里桜が下りて行く登山道にいるかもしれないという思い過った。

そこを耐える・・・頂上でスケッチしている事を願って登った自分がいたから。

途中からは居なくてもココまで来たのだからと気持ちを切り替えた・・・下山道の標札が気になり足が向く・・・それは駄目だと頂上へ視線を飛ばす。

もう少しと足を進め自分を励ましながら歩く・・・頂上だと示す道標が見え・・・休憩所までがあり登れた人達は笑みを浮かべ景色を楽しんでいた。

空気が澄んでいるからか遥か先まで見渡せた・・・自然という色合いは鮮やかで来て良かったと笑みを浮かべた。


ベンチが少ないからか休憩する人達が少ない場所があった・・・そこは岩が地面から出ていて歩きにくそうだった。

大きな岩が張り出した場所に目が止まる・・・その近くへ座り景色を眺める人がいた。

ドキンと激しく心臓が飛び跳ねた気がした・・・それは見つけられた嬉しさか、人違いかと緊張した。

少しずつ歩く・・・近付くたびに自分の中がザワつき何かの音までが響いてくる事に口を引く。

自分の中で何かが激しく飛び跳ねる・・・岩へ直接座っている人の手にあったモノが見えたから。

なにより本当に彼女だった事に嬉しくて中が高鳴った・・・楽し気にスケッチする姿は久しぶりに見たからだ。

邪魔はしたくないが隣へ行きたい自分・・・身体の中から高鳴る心臓の音が彼女へ聞こえそうなほどに嬉しくて踊っていた。

彼女だと分かった瞬間、迷いから足が重く前へ進めなかったのに 確信した途端に歩きは早まった気がした。

描き終わり今度は写真へ残す事にした・・・辺りを数枚ずつ撮りカメラを鞄の上へ置いた。

その間にドキンと自分の中で響いた・・・カメラを置いた時、自分の視界に彼の姿が見えたから。

あり得ないのに自分の心が喜んだ事に苦笑いだ・・・似た誰かが居たのだろうと思えた。

それでも久しぶりの感情が震えた事でスケッチブックに目が止まる・・・自分が可笑しくて笑えた。

ならば描こうと手にし目を閉じる・・・二人で歩いた場所・・・そうだったと笑みが溢れた。

彼の笑み・・・その笑みを切り取りスケッチブックへ描きとめる・・・その記憶だけで・・・思い出すだけで心が温まれた自分に苦笑いしかない。

優しい笑み・・・自分へ向けられた笑みが悲し気な顔に変わっていく・・・チャペルで自分が隠した絵を眺めていた彼の姿が甦った。

笑った顔は自分だった事に驚いたが暫くして手が止まり動かなくなった・・・何かを考えているのかと見つめた。

真後ろに自分がいたが集中する彼女は気にしないだろうと覗いていた自分に苦笑いした。

腰を下ろし彼女を見つめる・・・ポツッと音がした事に驚き彼女を見れば頬へ伝う涙がスケッチブックへ溢れ落ちた事に気付いた。

誰かの気配がしていたがスケッチする自分の絵を見ている人がきたのだと知り口を引く。

笑顔の彼を描いた自分に苦笑いをした・・・少し近寄った誰か・・・不意に溢れた涙に驚いたのだろうと思えば恥ずかしく声も出なかった。

誰かの手が震えながら自分へ伸びてきた事に驚いた・・・大丈夫だと声にもならず、涙も止まらなかった。

恥ずかしくて うつ向いた自分を優しく抱く誰か・・・心の奥で優しく笑っていた彼だと勝手に思ったのだと苦笑いだ。

離してほしくて グッと誰かの胸を押す・・・優しい手が涙を払い自分を押し込む・・・

『泣くな・・・』
その声に自分の指先が飛び跳ねた・・・自分の全部が驚き・・・自分の全部で彼だと知った。

『ずっと・・・こーしたかった・・・でも泣いてる里桜じゃない・・・』
『・・・なんで』
『チャンスをくれ・・・愛してる俺を捨てるな・・・』

『・・・捨てた事は・・・』
『ん・・・でも愛した記憶だけで生きてくのは苦しいだろ・・・俺は里桜と一緒に生きたい・・・お前は?』

『私は・・・』
『誓ったのに里桜を置いて行った事は本当に悪かった・・・
愛した記憶が執着してて里桜を探してるのかと自分に驚いた・・・だから考えてた・・・チャペルの絵で・・・そう思ったから。

自分勝手に子供から母親を取るのかと怖くなった・・・だから諦めようと思った。

なのに・・・ムリだった・・・どう考えても一緒に居たい自分だった・・・なら子供と一緒に連れて行ってもいいかと』

『子供は・・・』
『ん・・・会いたいなら会えばいい・・・子供の家族に会っても気にしない・・・俺が居る場所に戻って来てくれるなら平気だ。
それは、里桜には出来ないのか?』

『・・』
『ココで里桜が生きてくなら俺もココで生きる 、一緒じゃないなら、生きてる気がしないから。

仕事なら何処ででも何でも、自分も出来る・・・今の仕事も里桜が居ない場所なら しなくてもいい・・・一緒なら方法を考えてく自信はあると思えるから』

『・・・』
『里桜・・・もう一度だけ・・・』
『・・・』

身体を振るわせ静かに泣く里桜に辛くギュッと抱いた手は離せなかった自分もいた。

ふと里桜の手に目が向けばスケッチブックに触れていた気がした・・・不意に目が止まる・・・

前なら季節の春や秋と文字で書いてあったが、彼女の手が触れていた場所に自分の名前があった。

そっと表紙を捲る・・・
その瞬間の出来事・・・絵を眺めれば一瞬で戻れた自分に苦笑いだ・・・

共にした時間を切り取り写真のように、その記憶がスケッチブックの中へ綴じられていた。

この中から選び、あの絵に記したのだと思えた・・・

『これは・・・』
『ん・・・幸せだと思えた瞬間だろ・・・見て直ぐに思い出せるから・・・同じだ・・・』
『たくさんあって・・・』

『・・・この中では生きれない』
『嬉しくて・・・』
『悲しくて・・・辛くなる・・・
記憶は重ねていかないと幸せだと笑えないんだな・・・』

『増えないから』
『ん・・・幸せだと嬉しいのに、そばに居なかったと実感して・・・これが今の自分だと脅されてく』
『・・・』

同じ辛さを持っていた彼に驚いた・・・幸せだった日々に振り向けば一瞬で身が凍り付いた。

現実の中に彼は居ず、自分は大丈夫なのにと思えば無意識に彼の姿を探した。

頭の中で彼は居ないと知るのに何故か目が彼を探し自分の中は彼を求めていた。

無意識に自分の手が彼へ抱き付いていた・・・自分の辛さが中から出ていった気がした事に苦笑いだ。

自分へ腕を回し抱き締めた里桜に気付きホッとした自分がいた・・・何より気づいた自分を誉めた。

嬉しいのに戸惑う・・・それは一瞬で消され彼女の近くに自分はいるのだと実感した。


少しだけと彼女を連れ下山する・・・繋いだ手は離すなと握り締めた。

里桜は直ぐに帰る事にしていたと聞けば慌て部屋は取れたと自分の部屋へ連れていった。

ようやく落ち着けると彼女を隣へ座らせ見つめた・・・より大人になった彼女の姿。

見ていたようで見れていなかった自分だと知った・・・うつ向くだけの彼女の姿に大丈夫なのにと抱き締めた。

疲れたような彼の顔は自分を探し続けていたのだと分かる・・・互いに傷ついても、話は最後まですれば良かったと思えば彼に申し訳なく・・・まともに顔も見れなくなった。

だからか悲し気な目が頑張るように笑み自分を抱き締めた事に苦笑いをした。

少し休めと言っても笑み返すだけの彼に苦笑いだ・・・勝手に帰らないと言っても不安なのか自分を見つめたままだった。

ならばと2人で横になる・・・自分を離さない彼の手に笑み見返した。

話は後にと言えば優しい目が笑み頷く・・・黙れば眠るかと笑み彼を見つめていたが少し寝て欲しくて目を閉じた。

自分を包む手が弛まない・・・自分を押し込めているが、不意に緩み眠気が襲うのに駄目だと押し込み直す彼がいた。










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2021-11-05 10:59:40 | Drown


作業場を別の場所へ変えた里桜は描きためていたスケッチをもとに本格的に描き始めた。

その絵ごとに道具も変え仕上げていく・・・途切れない自分の手に より嬉しくて楽しくなった。

描こうと思った自分・・・それは少し前にリンをスケッチした時に過った。

フッと笑える自分に苦笑いだ・・・こんな自分は本当に普通の生活は不向きなのだと悟った気もする。

何より紗智よりも家庭という場所や母親という気持ちに拘らない自分を改めて知った。

リンが恋しくなる日もある・・・それでも離れられる自分がいる・・・リンが笑み幸せな場所で暮らせるなら自分は平気だったと。


暫くして子供を描きあげ・・・その手で・・・スケッチブックから出したくなった自分に気付いた。

リンを見つめ・・・ナナを眺めていたが不意に甦る記憶へ引き摺られ思い出した。

今までに相談してきた皆の声・・・ハインの言葉を思い出す・・・それからの日々は子供へ視線を向ける自分がいた。


そして気になったのだろう紗智が声にする。

『里桜・・・』
『ん?』
『・・・もしかして』
『ん・・・やっぱり私には不向きだった・・・子供を悲しませる事だったみたい』

『・・・後悔してる?』
『それは、してない。代理で良かったかも。母親の意味を私自身が理解してない気がする・・・リンの為にも・・・もっと早く離れれば良かった・・・』

『・・・』
『(笑)それは大丈夫だ』
『あれ?』
『(笑)帰ってた?』

振り向けば、会話に混ざった声はハインだった・・・悲し気でもないハインの笑みは紗智だけが驚いていた。

『い?』
『大丈夫だ(笑)』
『(笑)消えるのよ?』
『大丈夫だ(笑)。もう少し大きくなって本人が望んだら会えよ(笑)』

『了解(笑)』
『(笑)アトリエは準備してた。来年までに描き貯めとけ(笑)個展を開く』

『・・・いいの?』
『(笑)売っていいか?』
『・・・売れるなら(笑)』

互いに了解と笑みながら呟いた事に紗智は苦笑いをした・・・本当の兄妹のようで似ている二人に笑み返した。



サリの個展は話題を呼んだ・・・

その個展は紗綾と一緒にすると聞けば嬉しくて連絡を取り合う日々になったが、残る数点はと急かされ始め考えた。

描き貯めていたのは紗綾・・・早々に運び込まれ自分のアトリエにある保管庫が埋まる可笑しさは里桜を余計に楽しませた。

焦らない里桜に苦笑いをするハインもいたが、集中していく里桜も知る事で諦めも早かった。

日付も決まれば紗綾が来ても話す声もない・・・徹底した集中力に苦笑いだった。

互いの色んな経験は深まったのか、似た印象でもなく絵ごとの雰囲気は深まっている気がした。

そしてサリの作品へ二人は集中し始める・・・それぞれの良さが込められていった。

作品は風景や人物画・・・二人の思い出・・・色々な画質と楽しみながら描いていく二人の息も直ぐに重なった。

その数・・・その絵に込められていく思いは様子を見に来たハインとアレク達を驚かせた。



大きなギャラリーに数多くの作品が展示されていく・・・過去の作品は写真で纏められていた。

サリの来た道のように順番に作品は飾られた。

一番奥の壁・・・ソコにはサリという題で描かれた作品・・・スタンドを描いた・・・それはソコへ描いた絵ごと・・・

車も・・・絵本の挿し絵も・・・商店街の絵も・・・その時々の作品が詰め込まれ一枚の中へ描かれていた。

それはキャンパスにもない作品もある・・・それもサリだったのかと確認出来る程に数多くあった。

一番下に二人が描いている姿があった・・・細長いキャンパスにサリの名が入っている。

よく見ればサクとリンの姿までが描かれている・・・知る人しか分からない場所に。

全てはサリの作品のように花で覆われていたり木々や枝葉で遮られてもいた。

それぞれが繋がるような・・・その時々の・・・その瞬間の・・・楽しかった事や幸せな瞬間・・・そうとれるような気もした。

非売だった事にコレクターが驚きハインへの連絡は直ぐに届いた・・・欲しいと金額は つり上がるが 全て断りサリが所有すると声にした。


ずっと作品を眺めていて動かない客がいると連絡がはいりハインが行ってみれば見知る人だった事に苦笑いをした。

サリという題の作品の部屋にはベンチが置かれ、ゆっくり眺められるようになっている。

その一番前のベンチで ジッと作品を眺めていた姿があった・・・その視線の先に口を引いた。

それぞれが本当に小さく描かれている・・・その箇所の絵、その上に薄い色の花が重ねて描かれていたが・・・それは全てサリのプライベートだった。

数ヶ所の中の一つ・・・リゾートにあるチャペルに描いた絵と同じでもある絵・・・思い出に入り込んでいるのかと静かに隣へ座り一緒に眺めた。

『(笑)貴方は凄い』
『・・・』
思わず呟いたハインの声に、驚いた顔で自分を見返したのは高階だった・・・

自分が隣に居た事も気付いていなかったのだと思えば可笑しくて笑ってしまった。

『(笑)すみません、集中力も凄いんですね』
『・・・』
『・・・(笑)まだ、見ていたいですか?』
『あ・・・時間・・・』

『(笑)過ぎました。他の来観者は来ませんから(笑)大丈夫です』
『すみません・・・』
謝りながらも、戸惑うような顔はあり暫く自分を見ていたが諦めたように視線を戻した。

『(笑)知らない作品を見れて嬉しかったです・・・。
(笑)こんなに描いていたのだと知れました・・・どれだけ(笑)好きだったのかと』


笑みながら作品を眺め静かに話す彼が羨ましく・・・自分の中が揺れ始め辛くなった。

少しずつ、本当に手放したのかと思え 思いまでが離れたのかと揺れる・・・胸が苦しくなり自分を落ち着かせようと絵を眺めた。

驚いた・・・自分では見えないが激しく動揺し始めた気がした・・・身体が震え何かに耐えるように思えた。

我慢していたのか無意識なのか溢れ落ちた涙がぽとりと音がした・・・静かな場所だっただけに悲し気な音のようで戸惑った。


パタパタと柔らかな音が近付いてくる・・・その音が何かを知るハインは静かに立ち上がり出迎えた。

走って来たのはリンだった・・・キュッと音を出し立ち止まったリンは笑み返した。

『(笑)パパ・・・い?』
『いいが(笑)誰と見に来た?』
『(笑)アレクパパ』
そうかと抱き上げ一緒に眺めた・・・

『お友達?』
『(笑)そうだ。静かにな』
『(笑)ナナねぇも来た』

笑みながら呟いたリンにキスをする・・・ナナを抱き姿を見せたのはアレク・・・その後ろに紗智がいた事に高階が驚いた。

ママと呼び子供が手を伸ばした事で紗智が抱き寄せる姿に驚き戸惑った。

『ママ(笑)リーちゃんは?』
『(笑)お仕事です』
『そっか(笑)』
『(笑)ナナと向こうを見て来よう』
『そだね(笑)』『おっけ(笑)』

互いに見あい微笑んだ子供は紗智の手を取り歩いて行った。


ハインを見れば悲し気で・・・アレクはベンチの端へ座り絵を眺め、もう一度 ハインを見つめた。

頷く・・・そのハインの姿に仕方ないのかと自分を励まし絵へ視線を戻した。

『・・・子供達は私達の子です』
『・・・知ってます・・・分かっています・・・』
驚いた高階だが直ぐに声にした彼を見返せば悲し気な目は直ぐに絵へ戻った。

『俺は男で・・・子供は産めません・・・』
『・・・』
だから何だと驚いた・・・それを知るのに とどめを刺された気がして苦しくなった。

『・・・どうしても家族が欲しくて・・・探してました。見つからなくて・・・信用も出来なくて・・・話し合ってた間は喧嘩も多くて・・・』

『(笑)私が仕事へ逃げた事もあります・・・』
アレクという男の声は悲し気で驚いたが、助けるように苦笑いをしたハインが声にした。

『・・・』
『喧嘩はするなと(笑)止める紗智は里桜まで連れてきて・・・里桜に呼び出される日が増え皆で話し合いもし説教までされてました・・・』

『(笑)たんたんと話す里桜が怖くなる日もありました』
『・・・』
『籍を入れるか・・・子供を迎えるか・・・』
『・・・』

『家族が欲しかった・・・
(笑)今は違いますが、当時は血の繋がりが家族なのだと・・・偏った考え方をしてたんです』

『・・・私は・・・一緒に生きる事が全てだと、それで満足だった・・・一緒にいる瞬間が大事、それが自分の幸せだと思えた。

子供が居なくても(笑)こいつだけで十分幸せで、仕事で疲れても(笑)隣で寝てる姿を見れば自分までが癒された』

『・・・な・・・何の話を』
『・・・(笑)家族が居ない紗智が俺に家族を作ってくれたんです・・・ハインの子でも良かったのに・・・』
『・・・』

『子供の先を考え籍を繋げました』
『なら・・・里桜・・・は・・・』
『(笑)アレクの為に・・・』
『それ・・・は・・・』

『・・・二回目で・・・成功し妊娠したと聞いて相談しました。やはり子供が可哀相だからと・・・
里桜とは既に離婚してます・・・』
『え?・・・』

『・・・貴方なら大丈夫だと聞いてました』
『・・・連れ・・・』

不意に言った自分の言葉に驚いた高階の声が止まる・・・自分達を交互に見ていたが静かに絵へ視線を向けた事に苦笑いだ。

『・・・家族という場所から連れ出してもいいですか?』
『やっぱり(笑)そー来ましたか』
『・・・』

『(笑)今まで貴方が里桜の心から消えた事はありません』
『あ・・・子供は・・・』

『(笑)アレクと私の子供です。里桜を母親だと理解はしてますが、リンの親は自分達だと知ってます。

だから一緒に住めないのだと里桜がリンへ伝えてます・・・小さいながらも(笑)里桜の子だからか理解も早くて驚きました』

『・・・本当に里桜から離しても大丈夫でしたか?』
子供を心配してくれる高階に驚き声も出なくなった・・・何よりアレクの様子を見ながら話していた。

『連絡を取り合う事は気にしません・・・もちろん会う事も気になりません・・・
本当に・・・大丈夫です・・・』

だから里桜をと言いたげで、それでも本当に子供から母親を離す事に戸惑う高階に苦笑いだった。

ここでは多くはないが似た境遇や環境の子供はいた・・・同性婚と認められ養子縁組みをする人もいた。

卵子や精子の提供を受け代理と頼む人達も・・・だから気にするなとも言えなかった。

分かったと自分達は頷くだけ・・・そして大丈夫だと笑み頷くだけしか出来なかった。

『紗智は子供と居たいと(笑)、だから何度も話し合いました・・・まだ相談中ですが籍は抜いてません』
『・・・』

『紗智に気持ちが残っているかは知りません・・・隠すのも上手くて、それは里桜にも話してないみたいで俺にも教えてくれません』
『・・・』

『(笑)気持ちが固まったら先に進む紗智なので・・・のちのち考え(笑)相談しようかと』
『それは大丈夫なんですか?貴方が・・・』

『(笑)さっきも言いましたが終わるまでともに生きる事が自分にとっては全てなので』
『あなたも本当に凄いですね』

『(笑)里桜も』
『・・・今も同じです』
『(笑)何がです?』

『共に生きたくて・・・その理由です。
昔・・・先の話をした時に・・・共に生きると互いに思った・・・なのに彼女から絵を取りたくなくて・・苦労をさせたくなくて、勝手に一人にしてしまった』

『里桜なら本当に気にしないのに・・・』

『(笑)確かに。
当時は・・・自分の親だけでなく親友の親達にまで足を捕まれていた。
何が起こるか分からない状態になる事が怖くて・・・彼女達に手が伸びない事を祈りながら出たんです』

『『・・・』』
『親と連絡はしたくなかった・・・でも親子喧嘩をしておかなければ彼女に目が向く・・・煩わせ絵が描けなくなったらと・・・本当に怖かった・・・』

『・・・無駄な努力をして大事な瞬間を逃がしたんですね・・・』
『・・・(笑)今なら、そう思います』
『・・・(笑)』

『里桜は・・・今は・・・』
『(笑)行くんですね』
『・・・いいですか?』
『(笑)里桜の気持ち次第でしょう』

『・・・話をしたいので・・・連絡先・・・あ、今は何処に?』
『(笑)それが問題』『(笑)問題』
『・・・』
『(笑)アトリエの場所はコレですが』

そう言いながら小さなカードを渡され眺めれば住所と番号が書かれていた。

『このアトリエには居ないんですか?』
『(笑)新しいスケッチブックを持ち歩き始めたので・・・』
『・・・』

『自然公園がある地域か・・・』
『森・・・』
『あ、紗綾と山登りの話をしてた気が・・・緑も多くて・・・』
『あーハイキング出来るって・・・どっかのリゾートの裏手にあるとかないとか・・・』

そんな話をしていた記憶・・・確かと呟いたアレクに思い出しながら呟くハイン。

そうだったと笑みハインを見つめるアレクの眼差しに、目の前の二人は本当に愛し合っているのだと自分へ言っているようだった。

『・・・電源は落としますよね』
『昔から?』
聞いてみればハインが聞き返した事で、彼女は変わっていないのだと変にホッとした自分がいた。

苦笑いをしながらも、そうだと頷けば それは自分達にも困るのだと笑うアレクもいた。

ハインは迷わず携帯を手にしていたが・・・フッと笑いながら眺めだした。

『・・・あ』
『ん?どした?』
『・・・(笑)GPSで居場所をチェックしてたらバレた(笑)』
『確認は出来た?』

『(笑)したから余計にバレたんだろ。それより電源は落としてないから予測はしてるかもしれない(笑)』
『(笑)諦めた』

里桜らしいと笑み二人は話していた姿に、笑って過ごせていたのだとホッとした高階だった。

ハインと連絡先を交換すれば直ぐに居場所を特定し送ってくれた事に感謝し、その場を後にしたのだった。


車を走らせる・・・自分も知る場所にホッとしたが、スケッチブックに描くほどの景色はあったかと考えながら向かうのだった。







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2021-11-04 12:04:24 | Drown


下見にハインと来た里桜はカメラに撮り貯めていく・・・雰囲気だけでも分かりやすいようにと透明なシートにしてあった。

そして、そこへ出店する店は仕上がっていて中まで見れる今の雰囲気は楽しめた。

『あの・・・』
中を覗いていた里桜へ声をかけた人・・・振り向けば、その店のスタッフらしき人だった。
何かと返事を返す間にハインが挨拶をした・・・

『壁一面に何かを描くらしいと聞いてまして・・・』
『・・・はい』
『貴方がたは関係者でした?写真を・・・撮られていたので・・・』

『・・・はい』
『すみません、その作業内容とか知りませんか?』
『理由を』
もどかしくてとハインは言葉を返した。

『ここは飲食街なので』
『知ってます。
・・・すみません、はっきりと言って貰えませんか?時間が惜しいので』
『・・・すみません。開店までキッチン内での作業もあります』

『・・・すみません。どういう理由があって話されているか分かりませんが、こちら』
『すみませんっ』
『いいんです。聞いて下さい』

『・・・はい』
『フードコート内の作業等の行程計画はあり各店舗へ出されています。
それから各店舗ですがカウンターや出入り口は全てシート等で完全に閉じ入らないようにします。
人の出入りもないはずですが聞いてませんか?』

『・・・』
『調理関係はしない前提で』
『恐らく、それはココが終わればの話のはずです。
コート内は足場も組み危険なので他の関係者は出入り禁止という条件でした・・・』

『・・・』
『すみません、フードコートの責任者へ連絡し話をしてくれますか?』
ハインは里桜へ続けろと促し、声をかけた人へ向き直したのだった。



全てに囲まれた状態で見上げる彼女達にハインが笑いながら飲み物を差し出し一緒に眺めた。

『(笑)実物が激しすぎる』
『楽しみでしょ!(笑)これ』
『まーね(笑)。へんに納得しちゃったよ・・・この広さは(笑)本当にヤバい』

『ね(笑)』
『(笑)ねじゃないから。あの枚数って、ちょっとビビった(笑)』
『(笑)ちょっとなんだ』
『ちょっとか(笑)』

里桜とハインの声が揃い可笑しくて笑み返す紗綾だった。

紗綾が来たのはニ週間前だった・・・直ぐに写真を眺め下絵と一緒に見比べる・・・そして二回目だと確認しに行くという里桜と来たのだ。

その前から少しずつチェックをしに数日ずつ紗綾は来ていた・・・その間に部屋を借り里桜と暮らし始めてもいた。

仕事中心になりつつある事で子供の事を聞いたが、大丈夫だと笑う里桜に驚いた事もあった。

それでも時々だったが子供から電話が来る・・・優しい声音は母親だと笑み自分は下絵を眺める。

ここへ来る事は内緒にした・・・そして彼には極秘依頼だと諦めて貰い内緒と密かに出国してきたのだ。

叔父から尾行もされ他国経由も面倒だった・・・そこは諦めて欲しいとハインは予測し準備もしてくれた。

無駄な出費だったと笑いながらハインへ言ったが、だから来るなと無言で言えたと言われ変に納得してしまった。

子供がいる事で居場所はバレているのだが前なら来ていた電話さえ音は鳴らなかった。

ホッとする自分に謝る里桜とハインに笑み返した日を思い出した・・・これだけの規模で時間も割かれる事は止めたかったのだ。

来てしまえば自分も里桜もスイッチが入る・・・仕事モード・・・絵を描く事に集中する自分達だと知る。

ふと気付いて、連絡していなかったと慌てる自分もいた・・・食事と思い出す事も・・・

里桜へ電話が来ていても気にもならなくなった・・・それが里桜の子供だったとしてもだ。

気になったのは最初だけ・・・互いに笑う日々になった。


そして始める日・・・久しぶりだろうと紗綾が準備していた服装に笑う里桜もいた。

そして、いつもなら来ないハインまでが初日から来た事に驚いた里桜もいた。

『(笑)暫くは観察させて貰うぞ』
『『(笑)仕事は?』』
『・・・あるに決まってるだろ(笑)偶然にも自分が確実に必要な仕事が重なってなかっただけだ』

『・・・』
『(笑)本当に大丈夫だったんだ』
『なら(笑)いいけど・・・』
『(笑)確かに』

そうかと準備を始める紗綾に笑み頷きながらも材料の確認と工程表を眺める里桜だった。

下絵と交互に眺め確認しては壁へ線を入れていく・・・思い描き離れては確認し、下絵を見比べ考える・・・そんな日々は流れた。

そして二回目で だいたいの構図は決まり手順を書き込んでいく紗綾は里桜と話ながら始める。

気を付けろと徹底し声にする里桜・・・安全ベルトを不意に引く里桜に苦笑いをする・・・確かにヤバいと気を引き締める紗綾もいた。

二手に分かれ次々と塗り込んでいく事に凄いと笑み、時に時間を取れと休ませては飲食を強制的にさせた。

こまめ・・・彼女達には面倒になるが時間だと手を止めるハインに諦めた・・・その時間の長さは自分達も驚き笑えた。

歳だと笑いながら紗綾が水分補給と飲みながら描いている場所を眺める・・・里桜もだと手に持たせ飲ませる紗綾もいた。



搬入する許可を貰えた事にホッとする・・・中へ入れば真っ暗で・・・電気をつけた。

壁との隙間は段ボールで塞がれていた事に笑えた・・・真新しい場所も傷防止の段ボールだ被われていて、ソコから新たに被された段ボール。

その徹底ふりに感謝だ・・・そして防犯の為と透明なシートは厚地だった事にホッとした。

真ん中あたりは透明だった事で、ホールにある足場を眺めた・・・三階まである中央・・・二階部分は小窓があり換気口のような穴が並んでもいた。

その中央の一番高い場所で天井部分に色をつけている誰かの姿があった事に驚いた。

別の日に、用はなかったが理由を作り入り込んだ・・・その絵は広がり明るい色だった。

日を追う毎に出来上がる様子を見れた嬉しさは不思議と頑張ろうと思え休憩と手を止め眺める事も増えた。

それは他店でも同じようだった・・・火気使用は出来ない・・・まして食品さえ持ち込む事も作る事も許可は貰えなかった事に驚いた。

全ては安全策と説明され相談会や話し合いは多かった・・・暫くなかったが絵が半分を終えた頃から細かな物品は搬入許可は出た。

聳えるほどの足場・・・今はコート内をぐるりと置かれていた・・・そして下へ広がる絵とともに足場は少しずつ外されていた。

天井の絵がリアルに見える・・・その途中から緑が増え下へ・・・それは写真から絵に変化していく様は凄いとスタッフと眺めた。

場所によっては妖精が飛び・・・森にいそうな動物が現れ・・・空想のような世界までが描かれた。

笑みを浮かべながら眺める人に目が止まる・・・誰かと話していた事で相談しながら描いているのだと知れた。

二人だけでかと驚く人達もいた・・・楽しそうに描いている姿を眺め仕上がる絵を楽しみに待つ人は増えていった。


いつの間にか完成はしていたが乾燥期間なのかコート内は静かで・・・何より足場はキレイに失くなっていた。

それでもシートは外されてもいない・・・取るなと言う新たな連絡はあった事で誰も触る事すらなかった。


『ん?』
『どうした?』
やっと入店許可はおり、キッチン内の最終確認と来たのだ・・・終わったと友人がコート内を眺めていた。

突然、唸る事で何だと視線の先を探せば・・・コート内の真ん中に人が寝そべっているような姿が見え驚いた。

何より、シートに貼られた紙があった・・・
『これ・・・読んだか?』
『(笑)面倒で』

指をさした場所・・・その紙は反対側から貼られていて中から読めるようになっていた。

『店の枠の色を変更したい場合は早急に連絡をして下さい?』
『枠?』
『すげぇ、店の表は(笑)こーなってんのか』

『赤または焦げ茶色で変化をつけるかってさ(笑)』
『提案?』
文字の下は写真が貼られ、向こうから見える店構えに驚いた。

そういえばと思い出す・・・コート内は統一されるが暖簾や看板は自由だった。

『ほら(笑)看板の色合いは正解だったろ』
『(笑)お前の創造力は凄いな』
笑みを浮かべた友人に苦笑いをしたが、枠かと写真を眺め考えた。

この場所だと赤いラインが入っていたが、変更しない場合は枠もなく同じ絵柄のままになる。

焦げ茶かとジッと眺めていたが、ふと視線を感じ見返せば寝転がっていた場所で自分達を見ていた人がいた。

思わず笑み返した自分に苦笑いだ・・・照れてしまう友人に笑っていれば1人が起き出し歩いてきた。

何より寝そべっていた人は2人だった事に驚いてしまった。

『(笑)ご苦労様です』
『・・・ごっご苦労様です・・・』
『読んでくれました?』
『・・・はい』

『どーします?変更するなら今から始めますけど(笑)』
『・・・変えた方がいいですか?』
『(笑)その雰囲気で、入れたら可愛い感じになるかなーって・・・』
『・・・』

『向こうは食事、こっちは軽食・・・おやつ?的な飲食店って想像で仕上がってたので・・・』
『・・・ 任せても』
『入れる方向で?』

『・・・両隣ははいりますか?』
『(笑)隣はナシ、その隣は水色って連絡が入ってます・・・』
『・・・』
『(笑)焦げ茶でも、まんま(笑)その色でもないので・・・』

『想像が・・・』
『ですよねー(笑)、左隣とこちらは両方の絵が重なってるので(笑)ラインが入っても違和感はなさそうで提案したんですけどねー』

『なら本当に任せても』
『希望もない?好きな色で』
『全部見てないので』
『・・・』
『絵の雰囲気とか邪魔もしそうで』

『(笑)店を目立たせようと思わないんですね・・・お二人は』
『あー・・』
『ま(笑)、何を売ってるかは知れる看板なので大丈夫そうですけどね(笑)』

『・・・』
『(笑)了解。ラインは入れる方で考え』
『・・・』
『(笑)学生が多そうだと聞いたので可愛い系で塗りますね?』

『・・・お願いします』
『(笑)大人へ知らせるなら焦げ茶のイメージだったらしいですよ!』
『(笑)それも考えでましたが・・・』

『狙うなら(笑)どっち?・・・ってか好きな色で塗りません?』
『・・・お願いします』
『(笑)了解。では』

そう言うと戻っていく後ろ姿を眺めていたが・・・

『(笑)塗っていいかの確認にしてくれたら良かったのにな・・・』
『・・・あー』
確かにと苦笑いをした自分に笑いながら行った人を眺めていた。

話をしたのか自分達の方を見たが直ぐに立ち上がり何処かへ行ってしまった。

暫くすればカートを転がし戻ってきたようだった。

女性二人だった事に驚いて帰ろうと思っていたのに足が止まった・・・数種の缶が乗せられていた。

そのカートの横に台が作られていて、そこで色を作っているようだった。

試しなのか資材へ塗り色を確認している姿を見惚れるように眺めていれば・・・突然自分達を見返した一人が見せてくれた。

『(笑)この色がい?こっち?』
よく見れば微妙に違う・・・そして、どっちも焦げ茶色をしていた事で何れだけの色を準備しているのだと確認するように見てしまった。

『あ・・・パステル系で?それとも発色がいいのに?』
変更するかと聞かれ苦笑いだ・・・

『迷いますよねー(笑)確かに。取り合えず期間内なら塗り直しもオッケーなので、変更なら窓口へ連絡して下さいねー』
『・・・はい』

思わずだろう友人が返事をした事で、話をしていない人が塗り始めたようだった。

『向こうは・・・』
『今から行く』
話していた彼女は後ろで色を作っていた彼女から受け取れば直ぐに声にした。

見れば、さっき聞いた色ができ塗りに行ったようだった。

つなぎなのか、作業着に着いた色の多さに驚いた・・・その色が壁にあるのかと眺めれば・・・新たな色はまざり作業着に着く理由を知った。

それは手に着いた事で、タオルのように作業着へ足れそうだと拭っていたから。

大変だなと眺めていたが次に持ち込む話を友人が始めたことで見るのを諦めた。


キッチン使用の許可はおり行ってみれば他店のスタッフも来ていたが、皆はキッチン内にいるのではなくホール側で眺めていた姿が多かった。

やっと見れると自分達もキッチンから出たのだった。

店側ではない反対側に壁の絵を背景に、撮れる場所があった事に驚いた・・・何処かで見た記憶・・・それでも目の前にある事で面白いと眺めた。

床には立ち位置だろう足跡があり、ソコへ立てば撮れた写真で何かを知る・・・女性が笑みを浮かべ撮っていた。

森の中で蝶の羽が羽ばたいていた・・・身を小さくし重ねあわせる・・・キラキラ光るさまと蝶の羽は自分の背にあり妖精のような雰囲気になっていた。

ウサギの耳までがあるが、それは子供専用なのか列を成すよう連なり描かれているが 人が立てば耳だけが出る。

それは不思議な光景になると思わず笑ってしまった・・・その絵の床・・・その場所ごとに小さな足跡があったから。

子供にも楽しめる場所のようで面白かった。

暫く眺めていた人達は満足したのか、それぞれの場所へ戻る・・・それは自分達もだとキッチンへ入ったのだった。



オープン・・・
その前後のイベントは数多く、話題は広がり集客へ繋がった・・・思いの外、子供連れは多く楽し気な笑みは多かった。

色んな時間帯で利用客は変わるが、自分達の店も集客できた事にホッとした。

前に見た彼女の姿が見え珈琲を差し入れるかと眺めれば、子供連れだった事に驚いた。

自分達へ説明していた人が子供の父親だった事にも驚いた・・・穏やかな笑みは子供に向かう・・・笑みの柔らかさで彼女は母親だったと口を引く。

不意に視線が重なり自分の方が驚いた・・・初めて会うような笑みの気もした・・・その視線が流れていけば他人かと驚いた。

忙しくなったキッチン内に気付き手を動かした彼がいた。
友人の何かを言いたげな笑みに苦笑いをしたのだった。