『本当に全部に?』
『一年位の予定らしい(笑)』
『分かったけどさ・・・』
『イメージカラーと(笑)取り合えずのデザインは出来てた。だから二人は膨らませて足してくだけでいいとさ』
ハインは車から二人を下ろし待っていた人がいる所へ行こうと促し歩かせる。
『あの人達?』
ハインを見つけココだと言いたげに笑み会釈していた。
紗綾は描ける嬉しさでカメラを出しながら歩いた。
『(笑)すみません、待たせましたか?』
『大丈夫です。(笑)こちらから』
どうぞと促していたが自分達をも観察していた姿に苦笑いしかない。
『(笑)イメージ案は準備して頂けました?』
『あります。場所ごとにありますが大丈夫だったでしょうか』
『・・・まったく同じに?』
『すみません本職ではないので外部へ依頼し作成しました』
『・・・』
『あの・・・』
『(笑)ならソコで頼んでしまえば安あがりだったんじゃ?』
『『・・・』』
依頼主は驚き、ハインは確かにと黙った姿に里桜は笑うしかない・・・話した紗綾は気にせず社屋のロビーを眺めた。
『一ヶ月で・・・』
『本当に一月で出来ますか?』
『・・・』
『そのデザインは?』
紗綾に言われコレだと数枚のデザイン画を受けとる・・・ドアや通路まで丁寧に描かれていた事で、同じ場所の方を眺めながら見比べた。
里桜は床へ置く・・・
『これ・・・上?下?』
『・・・下なんです』
『なんで?』『上は?』
紗綾と里桜の声が重なり笑いながら見合うと二人は社員の方を眺めた。
『天井は大変だろうからと。それと、照明で崩れるだろうからと・・・言われまして・・・』
『『・・・』』
『大丈夫でしょうか・・・』
『・・・』
ここまで準備して迷うのかと驚き、里桜は依頼しといて自分達に聞くのかと驚いた。
『これ描いたの私達じゃないのに何で確認するの?』
『・・・すみません、イメージ画なので依頼した時は雰囲気だけを書面にして出したんですが』
『『・・・へぇ』』
どう答えて いいか分からずハインへ目配せながら呟いたのだった。
『・・・取り合えず全て出して置いて貰えます?』
『・・・』
『通行止めにはしてあるが・・・』
『何処を通ってくの?』
『大丈夫なの?』
『完成までは裏口を使って貰う事にはしたが、それでいいか?』
『いいけど・・・』
『足場を組む作業と、警備も確実に出来る会社は選んでよ?』
『いつもの場所に頼んだ(笑)』
『両方?』
『当たり前だ(笑)知らずに入って怪我されてもな』
『(笑)綿密な契約はしてくれた?』
『まだサインは入ってない(笑)、ソコまで出来るか知らないしな』
暫く眺めていたが面倒になり聞いてしまえと声にした。
『質問・・・いいですか?』
『(笑)はい』
『このデザイン画はイラストっぽくなってますけど・・・』
『そうなんです。依頼した時に初代から最新までのキャラクターを入れたくて案を出したんです』
『・・・』
『そのキャラクターのデザイン画を全て下さい』
『(笑)私も質問しても?』
面倒だと里桜が言った事で返事を待ったが考え始めた事で時間も惜しいと紗綾が呟いた。
『・・・はい』
『イラストレーターへ依頼した内容を今、教えてくれます?(笑)』
『・・・』
『すみません(笑)私が。
当社はキャラクター等を人形やぬいぐるみをメインに始め今は雑貨も扱っていますが、周年記念にと初代から作られたモノを全て入れて欲しいと頼みました』
『この森に?』
『動物がメインだった事で違和感がないようにと』
『イラストレーターが?会社から?』
『当社のアンケートで多数をしめたのでウチが頼みました。それは難しいですか?』
『・・・んー何と言えばいいか』
『(笑)マンガチックでいいんじゃない?』
『・・・』
『理由は?』
『キャラのデザイン画だし(笑)、玩具っぽいのに画風が実写っぽいって・・・』
『あー、空想?おとぎ話みたいな?むかーしむかしって感じ・・・でもないか・・・』
『絵本みたいなイメージで・・・』
『出来ますか?』
『・・・』
『だからぁ・・・その絵でも本物に近いような絵とかもあるでしょ(笑)
見本とか参考にしたいような作品とかありません?』
『・・・あるんです』
『どれ?』
『・・・絵本なんですが』
『なに?』『言って』
『・・・アレク・フィードの、不思議な旅という・・・絵本の・・・』
『え?』
『あー・・・』
『・・・』
ハインが驚く・・・彼女達までが唸り理由は何だと社員達は三人を見返した。
『・・・このイラストレーターへ依頼したのに、いいんですか?全く違う作風になっても・・・大丈夫でしたか?』
『構いません。イメージ画として依頼したので・・・もちろん了承して貰ってます』
『そうでしたか』
『・・・』
『ま、いいんじゃない?』
『紗綾・・・』
『だって欲しい絵は、自然の中に会社で作られたキャラがいる事でしょ?』
『・・・玩具会社だしね』
『だよ』
違うかと社員達の様子を眺める紗綾と里桜だった。
『クリーニングに三日使い始めますが大丈夫でしょうか』
『(笑)こちらは描き初めが一日目として、終わり一月で完了という事は変わりません』
『・・・一ヶ月は』
『(笑)描くのは。そこに足場を作る日数や清掃等の時間は含まれないと伝えてましたが・・・』
違うかと見返すハインに確認しながら頷いた人・・・知らなかったのは一人だったが驚いた顔に苦笑いをした。
本当に出来るのかと驚く人に口を引く彼女達の視線は描く場所だった。
壁を眺め身動きもせず、ひたすら何かを考える人に視線が集まったが暫くすればスケッチしていた。
規制線は引かれ端の方は作業員が建設現場で見る足場を作っていた事に社員達は驚きながら通過していく。
直ぐに通り抜けられなくなりシートで覆われていった。
二階まで吹き抜けではあるが、見下ろす場所は明かり取りの為か透明なビニールシートでロビーは囲われた。
両端は天井まで壁はある・・・正面二階途中まで、入り口はガラス張りだ・・・左側に受付カウンターがあり通り過ぎればエレベーターの入り口へ繋がる通路だった。
右側は二階通路からロビーを見渡せる・・・待合室や休憩スペース等の寛げる場所にもなっていた。
雰囲気やデザインを考え纏めてきた紗綾・・・その雰囲気を思い出しながら里桜は描く場所で想像しながら眺めた。
下絵と紗綾が線を作り出す・・・反対側で里桜が描き始め・・・それは数日におよび担当社員が驚いた。
描き終わるかと見ていれば一人が色をつけ始める・・・反対側にいた人は離れ眺めていたが身動きもなかった事に驚いた。
ざっくりと塗っている事は知れるが、広がる場所にはどうなるのかと眺めていた。
足場の上で眺めていた彼女は使うだろう色を持ち 上がっていく・・・降りては数個の缶を手に一番上まで持ち運ぶ。
どんな仕上がりだと休憩する時間は、二階の通路に人は集まりはじめ苦笑いをしながら塗る里桜だった。
角になる部分に大木のように葉が生い茂り存在を見せるように左右へ広がっていた。
『あ・・・』
『どうした?』
『あの絵・・・』
『なにがだ?』
『あの木・・・あの木は絵本に出てくるイラストに似てるが・・・大丈夫か?』
『先輩?』
『作家に連絡しとかなくて大丈夫なのか?不味くないか?』
『・・・』
『確かに似てますが・・・』
『絵本作家と挿し絵の作家の許可は取ったのか?』
『・・・似た感じで頼んだ後に先方には伝えたとか聞いてますが・・・』
『・・・確認はしとけよ。訴えられたら消さなきゃならなくなるだろうしな』
『サリの担当会社に依頼したので大丈夫なんじゃ?』
『・・・』
そうなのかと聞き入りながら眺める人達だった。
日を要し ロビー全体が把握し始めた頃、所々に抜け落ちたような空間が目立つようになってきた。
数多くの場所に自分の会社のキャラクターが入る事は最近になって知った社員もいた。
楽しそうに笑み描いている女性二人の姿は社員にも話題は増えていったが 近場で描いている人へ声もかけれず眺めるだけの日々だった。
少しずつ、この二人がサリというアーティストなのだという噂は社内で広がり始めた。
それでも担当社員は他へ噂話は出すなという契約条件もあるのだと教えて徹底し始めた。
前から表に出ないプロフィールに想像は膨らんでいったが・・・違約金の発生も自分の会社には痛手になる。
そこは担当社員から上へ報告し各課へ徹底して貰うべく話を通して貰った。
また暫くして、見えていたはずの二階からシートは濁り見えなくなった事で社員達の話し声はすれど集まりは少なくなった。
静かな空間で落ち着くと二人はチェックをしながら眺める・・・楽しかった時間は終わりを見せた。
最後の夜食だとハインは持ち込み三人で食べながら完成したろう作品を見渡した。
『(笑)時々なら受けていいか?』
『・・・』
『(笑)楽しいしね』
『ん?里桜は?』
『・・・(笑)了解したら頻繁になりそうで』
『(笑)あー確かに』
『そうそう無いのも知ってるけどね(笑)』
『(笑)海外でも?』
『来るならね(笑)』
『(笑)あるならね』
揃った声に笑うハインは頷き彼女達を眺めた。
『里桜は戻る?』
『・・・仕事もパス』
『だよね・・・無理そうな気は私もしてる』
『仕事なら悪いが、そっちからの依頼はパスしてる・・・それとな・・・』
『『(笑)任せるよ』』
『・・・いいのか?』
『(笑)ハインが忙しくならない程度になら構わない。リンとの時間も必要なんだよ?』
『・・・(笑)それは分かってる。今も無理はしてない』
ならいいと笑む里桜に苦笑いをした。
完成し全てが撤去され・・・話題はあがったがサリの姿は出なかった事に安堵した。
サリのサインした場所は何処だと探す社員達・・・時間が出来るとロビーに集まる事に社員達の笑みは増えていた。
企画し担当した人達だけが知るが、そこは言わないと決め眺めるだけだった。
紗綾を見送り戻った里桜・・・今回用のスケッチブックをアトリエへ置き部屋へ戻る。
ベッドで眠る高階の姿を見つければ久しぶりに会った事で嬉しくて寄り添うように眠り始めた彼女だった。
背中が温まり、里桜が帰って来たのだと気付き ゆっくりと寝返り彼女を見つめた。
うつ伏せた彼女は手枕にして眠っていたが自分の気配を感じたのか自分を静かに見返した。
彼女が自分を見つめる・・・柔らかな笑みは心の中まで捉え絡み付いた気がした。
―おかえり―
そう囁けば微笑んだ彼女が頷いた・・・疲れた顔のようで優しく抱き締めた。
自分の身へ彼女の腕が絡まる・・・全てを自分へ預ける里桜に嬉しくてキスを落とした。
彼女の口端が引かれ眠りへ入り込んだようだと苦笑いをした。
変わらない優しい笑みで見つめる彼女と寄り添える事で余計に安らぎ心の中まで穏やかにした。
彼女に執着する自分に苦笑いだ・・・会えば自分へ寄り添う・・・触れれば全部を預けてくれる。
その心地好さに浸れる自分はより幸せを感じた・・・
嬉しくて彼女を見つめる・・・気が付いたのか自分の頬に触れた彼女の手が引き寄せた。
微笑んだ彼女が口付ける・・・触れた唇が微笑む・・・嬉しくて彼女を自分へ埋めれば、フッと笑った息が自分を撫でた。
お休みと囁く優しい声音が響く・・・より温まる自分を感じながら眠りへついたのだった。
新たな自分達の生活は始まった・・・色んな場所へ出向く事は慣れた頃から楽しくなった。
仕事も纏めれば集中していく自分を知った・・・多方面から依頼も増え頑張れたが・・・何より仲間達が安心したように笑みで送り出してくれた。
最近はからかう・・・それも恒例になりつつある・・・里桜はといえば何度、藤野や紗綾に呼ばれても行く事はなかったがテレビ電話では話すようになり苦笑いだ。
回数を増やせと叫ばれても忙しいと滅多に出ない・・・面倒だと暇な時間でも出なかった。
仕方ないと昼寝をしている姿を見せた事はあり笑い声で里桜が起き不意に切ってしまう事も楽しかった。
寝ている彼女を抱き込み仲間達と話す事も増え気を使う皆へ謝る彼もいた。
一緒に居る時間が増えれば嬉しくて抱き込む・・・離せとも言わず彼女は諦めたように静かに過ごしてくれる。
彼女が仕事へ行くとき、時々だか着いていく・・・そこで自分の仕事をして時間を潰した。
充実した時間が増え嬉しかった・・・休憩時間は彼女と他愛ない話をする。
それはアトリエでも変わらなかった事が嬉しかった・・・集中していく里桜だが自分がいれば休憩し話し相手になってくれた。
邪魔かと声にしてみれば大丈夫なのだと笑った彼女が手を止める・・・話しながら仕上げる事もあった。
終われば自分だけの彼女が寄り添うように隣へ来てくれる・・・それだけで自分も幸せだと思えた。
不意に親からの連絡はある・・・直接彼女へ連絡する親に戸惑うが、少し話せば彼女は自分へ回す・・・自分がいなければ切っていると聞けばホッとした。
謝りは互いから・・・気にするなという言葉も互いからだったが、今はそれも笑って流せるようになった。
木陰で身を寄せる・・・彼女を抱き込み空を眺めた・・・穏やかな陽気は心地好く 久しぶりの二人の時間を共にした。
葉音が優しく聞こえる・・・彼女と過ごす今が一番幸せだと改めて感じ、日々を共にする今を味わう二人だった。
-end-
※
2021・7
お付き合い下さり ありがとうこざいました。
何度もストップしENDへ運べずの話しは長々となり・・・無理矢理 ENDへ運びました・・・
バレンタイン話だったはずが・・・無理だった・・・
1月から始めたのに夏!
いやー参った!参った!7月も終わるし・・・
読んで頂き感謝です。 -tami-
※
放置し過ぎた・・・今は夏じゃなくて冬だった・・・
めんどくさがり-tami-は変わらず、のほほんと遊んでおりました!
2021・11 やっと完了!次も飽きずにp(^^)qがんばります!-tami-