<番外編 その3>
幼い頃から見てきたトキマサを預かる事になったのは数年後だった。
初めて逢った頃のトキマサは、小さな子だった・・・怯えからか声一つ出さなかった子供だった。
怒るような目は悲し気で、それでも耐えた顔つきは彼の容姿からかけ離れていた気がする。
からかい挑む目付きで離れないモノ・・・それを無視して我慢していた姿は幼いトキマサには辛い事だったはずだ・・・泣き叫びたいほどの恐怖は布団へ潜り込んでまで耐えていた。
優しく抱いて大丈夫と安心させてやる・・・身を守るすべを一緒に習おうと誘った。
頷くが微かに震える手を包み目を合わせソレを離した。
対話し離す・・・諭し逝かす・・・掴み倒しては逝かせた姿をみせ、自分達は大丈夫なんだと・・・ソレがいる理由を聞き出し逝かせた。
納得すれば自分の手を繋ぎながら観察を始めたトキマサにホッとした。
逃げてくる可愛い姿は親を求めるようで自分の方が辛くなったが、優しく手を撫でて自分は大丈夫と意思を示し始めたトキマサに安堵した。
巫女様からも手習いのように視せて貰え似たソレと対話も出来るようになった頃、ようやく学校へ行けるようになった。
頑張るという笑み・・・相変わらず声にはしないが手で拳をふり、行ってくると元気に手をふる姿が見れるようになった。
共に過ごす日々は子育てをしているようで楽しかった。
リンという友達が出来ると余計に自信もつき始めたのか声も少しずつ出るようになった。
話せて嬉しいと声にすれば照れた笑みで自分へ返してくれるトキマサを優しく抱き締めた。
恥ずかしさが出始めれば、男の子という言動は見え隠れし これも楽しみの一つとなった。
調子の出ない日は数珠を巫女様に清めて貰い自分の手首へ嵌めてくれる事もあった。
日々・・・成長していくトキマサは歳の離れた本当の弟のようで嬉しかった。
ココを離れる日・・・泣きながら迎えに来いと叫んだトキマサ・・・頑張れると宥める女の子に頷きながら見送るトキマサの姿は今でも思い出せるほどに鮮明だ。
巫女様からトキマサを預かる話・・・本当に自分でいいのかと相談する日々・・・本人の希望だとも言った巫女様・・・自信を持てと言い切る師匠と巫女様を信じた。
自分よりも強い子・・・トキマサを守れるのかと不安だった・・・持ち込まれる仕事だけを何とか やりこなす日々もあった。
それでも仕事に慣れ始めた自分に、やっとホッと出来た気がした。
梶がいる近場の人達の場所で数多く舞い込む事には苦笑いだったが、自分の師匠と梶の親との繋がりがあった事の方が驚いた。
だから、この街だったのかと師匠へ聞いてみれば笑って頷く事にも驚いた。
自分にも合うようで穏やかに過ごせる場所も数多くあった事に感謝した。
神社へ出向き身を守る・・・その間隔は少なくなり自分なりに鍛えられてきた事は胸を撫で下ろした。
回り出す仕事・・・人手が足りず声はなくとも師匠から手は出してくれた・・・そして時々だかトキマサが見習いとして来る。
呑み込みも早くなった事で、成長したトキマサの心は本当に強くなった事に感謝した。
梶が笑う・・・トキマサが来て一緒に仕事を始めた頃から余計に近くなった。
トキマサを知り、ようやく自分との近さを知れば信用すると声にして自分ごと近場へ置いてくれた。
『(笑)本当に弟だったよな』
『子供に近いと思いますよ(笑)』
『(笑)産んでねーだろ』
『育ててきた気分なんです(笑)』
『(笑)愛した?』
『もちろん(笑)』
『(笑)俺は?』
『 ・・・貴方が良いなら愛し続けます(笑)私には必要なので』
『(笑)俺は、お前以上に愛してるぞ?』
『(笑)感謝します・・・かじさん(笑)』
『お前だけ・・・近場へ寄せるが、トキマサは離しとけよ・・・交ぜんな(笑)俺はお前しか守れねーならな・・・』
『(笑)分かってますよ・・・』
返る返事に笑み優しく口付ける梶に照れながらキスをするタナダだった・・・
一人でも こなせるようになったトキマサ・・・自分ならと、もう一人頼むと言われ迷っている内に師匠の親友が連れてきた。
渡された手紙を読み口を引く。
『どした?何の手紙だ?』
『(笑)師匠です。も一人、預かれと・・-』
『ガ、ガキ?』
そうなのかと声にする梶はタナダを抱き締め一緒に手紙を覗いた。
頷くタナダを肩越しに確認すれば苦笑いをしながらタナダの肩へキスをした。
途中からだがトキマサの成長は見てきた・・・共に隣へ互いを置いて生きてきた事で揺るがない分、またかと呆れる梶もいた。
『今度は女の子です(笑)。まぁ・・・トキマサの妹的な存在でしょうかね』
『ん?』
『(笑)トキマサとなら倍の力は出せ、互いの成長を促せ先へ生きれると・・・』
『引き受けんのか(笑)』
『(笑)感謝します』
『OKって、(笑)言ってねーぞ』
『部屋が空いてますから(笑)』
ならいいと諦めた梶。キスを落とし・・・照れた笑みが自分へ注ぐ。
自分を安定させ自分を生かすひとだと微笑んだ。
ようやくカタがつく・・・ほらなと笑うタナダに笑み返す・・・
いまだ自分だけへ向けた想いが嬉しかった・・・先へ向かう不安を簡単に剥がし捨ててくれる存在にもなった。
久しぶりだと自分を連れ出す梶に苦笑いだ・・・その光景に慣れたトキマサが呆れた顔をするが、いつものように自室へ戻り眠ってしまう。
女の子が出てきて身を固め・・・すぐに誰かを知ったのか会釈して部屋へ入ってしまった。
その会釈の場所・・・そして視線は自分でもタナダでもない・・・自分の隣だった事には気づく・・・前に言われたモノだろうと苦笑いをした。
寝惚け微かに眠りながら口を引くタナダにキスをする・・・
既に玄関にいた梶・・・抱き上げられた状態のタナダが我に返る。
『こっこれ・・・』
慌て梶の腕から逃れ返事を待ったが、笑う梶はタナダを引き寄せ見返した。
『あー・・・ガキ(笑)二人に見られた』
『 ・・・』
顔を引きつらせたようになったが、恥ずかしさで項垂れ梶の胸へ力なく顔を埋めたのだった。
微かな笑いは揺れる・・・
『貴方は変わりませんね(笑)』
『お前は? (笑)愛情はもう、ねーのか?』
『消えませんよ(笑)。まぁ程々にして貰えたら増えそうです(笑)』
『減らしたら住むぞ(笑)』
ここにと笑う梶に苦笑いをするタナダは外へと促し、二人は互いの時間を重ねたのだった。
-end-
※
お向き合い下さり感謝です。
んーバタバタした今月・・・本当の隙間だけで空想に飛んでいたtamiでしたが、何とか楽しく終われて良かったです。
ありがとうございました
-tami-