tamiのブログ

このブログ・・・妄想ー空想大好きな私が、勝手に楽しんで・・・勝手に文字にしています。ボロボロですが(笑)

ハロウィン2018

2018-10-31 23:33:07 | イベント 関係の お話


<番外編 その3>



幼い頃から見てきたトキマサを預かる事になったのは数年後だった。


初めて逢った頃のトキマサは、小さな子だった・・・怯えからか声一つ出さなかった子供だった。

怒るような目は悲し気で、それでも耐えた顔つきは彼の容姿からかけ離れていた気がする。

からかい挑む目付きで離れないモノ・・・それを無視して我慢していた姿は幼いトキマサには辛い事だったはずだ・・・泣き叫びたいほどの恐怖は布団へ潜り込んでまで耐えていた。

優しく抱いて大丈夫と安心させてやる・・・身を守るすべを一緒に習おうと誘った。

頷くが微かに震える手を包み目を合わせソレを離した。
対話し離す・・・諭し逝かす・・・掴み倒しては逝かせた姿をみせ、自分達は大丈夫なんだと・・・ソレがいる理由を聞き出し逝かせた。

納得すれば自分の手を繋ぎながら観察を始めたトキマサにホッとした。

逃げてくる可愛い姿は親を求めるようで自分の方が辛くなったが、優しく手を撫でて自分は大丈夫と意思を示し始めたトキマサに安堵した。

巫女様からも手習いのように視せて貰え似たソレと対話も出来るようになった頃、ようやく学校へ行けるようになった。

頑張るという笑み・・・相変わらず声にはしないが手で拳をふり、行ってくると元気に手をふる姿が見れるようになった。

共に過ごす日々は子育てをしているようで楽しかった。
リンという友達が出来ると余計に自信もつき始めたのか声も少しずつ出るようになった。

話せて嬉しいと声にすれば照れた笑みで自分へ返してくれるトキマサを優しく抱き締めた。

恥ずかしさが出始めれば、男の子という言動は見え隠れし これも楽しみの一つとなった。
調子の出ない日は数珠を巫女様に清めて貰い自分の手首へ嵌めてくれる事もあった。

日々・・・成長していくトキマサは歳の離れた本当の弟のようで嬉しかった。

ココを離れる日・・・泣きながら迎えに来いと叫んだトキマサ・・・頑張れると宥める女の子に頷きながら見送るトキマサの姿は今でも思い出せるほどに鮮明だ。

巫女様からトキマサを預かる話・・・本当に自分でいいのかと相談する日々・・・本人の希望だとも言った巫女様・・・自信を持てと言い切る師匠と巫女様を信じた。

自分よりも強い子・・・トキマサを守れるのかと不安だった・・・持ち込まれる仕事だけを何とか やりこなす日々もあった。

それでも仕事に慣れ始めた自分に、やっとホッと出来た気がした。
梶がいる近場の人達の場所で数多く舞い込む事には苦笑いだったが、自分の師匠と梶の親との繋がりがあった事の方が驚いた。

だから、この街だったのかと師匠へ聞いてみれば笑って頷く事にも驚いた。
自分にも合うようで穏やかに過ごせる場所も数多くあった事に感謝した。

神社へ出向き身を守る・・・その間隔は少なくなり自分なりに鍛えられてきた事は胸を撫で下ろした。

回り出す仕事・・・人手が足りず声はなくとも師匠から手は出してくれた・・・そして時々だかトキマサが見習いとして来る。

呑み込みも早くなった事で、成長したトキマサの心は本当に強くなった事に感謝した。

梶が笑う・・・トキマサが来て一緒に仕事を始めた頃から余計に近くなった。
トキマサを知り、ようやく自分との近さを知れば信用すると声にして自分ごと近場へ置いてくれた。

『(笑)本当に弟だったよな』
『子供に近いと思いますよ(笑)』
『(笑)産んでねーだろ』
『育ててきた気分なんです(笑)』
『(笑)愛した?』
『もちろん(笑)』

『(笑)俺は?』
『 ・・・貴方が良いなら愛し続けます(笑)私には必要なので』
『(笑)俺は、お前以上に愛してるぞ?』
『(笑)感謝します・・・かじさん(笑)』

『お前だけ・・・近場へ寄せるが、トキマサは離しとけよ・・・交ぜんな(笑)俺はお前しか守れねーならな・・・』
『(笑)分かってますよ・・・』

返る返事に笑み優しく口付ける梶に照れながらキスをするタナダだった・・・

一人でも こなせるようになったトキマサ・・・自分ならと、もう一人頼むと言われ迷っている内に師匠の親友が連れてきた。
渡された手紙を読み口を引く。

『どした?何の手紙だ?』
『(笑)師匠です。も一人、預かれと・・-』
『ガ、ガキ?』
そうなのかと声にする梶はタナダを抱き締め一緒に手紙を覗いた。

頷くタナダを肩越しに確認すれば苦笑いをしながらタナダの肩へキスをした。

途中からだがトキマサの成長は見てきた・・・共に隣へ互いを置いて生きてきた事で揺るがない分、またかと呆れる梶もいた。

『今度は女の子です(笑)。まぁ・・・トキマサの妹的な存在でしょうかね』
『ん?』
『(笑)トキマサとなら倍の力は出せ、互いの成長を促せ先へ生きれると・・・』

『引き受けんのか(笑)』
『(笑)感謝します』
『OKって、(笑)言ってねーぞ』
『部屋が空いてますから(笑)』
ならいいと諦めた梶。キスを落とし・・・照れた笑みが自分へ注ぐ。

自分を安定させ自分を生かすひとだと微笑んだ。

ようやくカタがつく・・・ほらなと笑うタナダに笑み返す・・・
いまだ自分だけへ向けた想いが嬉しかった・・・先へ向かう不安を簡単に剥がし捨ててくれる存在にもなった。

久しぶりだと自分を連れ出す梶に苦笑いだ・・・その光景に慣れたトキマサが呆れた顔をするが、いつものように自室へ戻り眠ってしまう。

女の子が出てきて身を固め・・・すぐに誰かを知ったのか会釈して部屋へ入ってしまった。

その会釈の場所・・・そして視線は自分でもタナダでもない・・・自分の隣だった事には気づく・・・前に言われたモノだろうと苦笑いをした。

寝惚け微かに眠りながら口を引くタナダにキスをする・・・
既に玄関にいた梶・・・抱き上げられた状態のタナダが我に返る。

『こっこれ・・・』
慌て梶の腕から逃れ返事を待ったが、笑う梶はタナダを引き寄せ見返した。

『あー・・・ガキ(笑)二人に見られた』
『 ・・・』
顔を引きつらせたようになったが、恥ずかしさで項垂れ梶の胸へ力なく顔を埋めたのだった。
微かな笑いは揺れる・・・

『貴方は変わりませんね(笑)』
『お前は? (笑)愛情はもう、ねーのか?』
『消えませんよ(笑)。まぁ程々にして貰えたら増えそうです(笑)』
『減らしたら住むぞ(笑)』

ここにと笑う梶に苦笑いをするタナダは外へと促し、二人は互いの時間を重ねたのだった。


-end-


お向き合い下さり感謝です。
んーバタバタした今月・・・本当の隙間だけで空想に飛んでいたtamiでしたが、何とか楽しく終われて良かったです。

ありがとうございました
-tami-



ハロウィン2018

2018-10-31 23:32:33 | イベント 関係の お話


<番外編 その2 >

※遠回しの・・・


その日以来、偶然は数多く重なり その度に話をする機会が増えた。
遅めの夕食・・・食後のカフェ・・・本当に色んな時間帯で会い、その時々で飲みながら食べながら他愛ない話を楽しんだ。

梶につく何かとの対話は目の前で起こり、時に激しく疲れタナダは謝りながら寝込んだ。
それでも止めないタナダに、ならば頑張れと励ます梶に感謝した。


『あー・・・』
久しぶりに梶の自宅へ来たタナダの呟きに梶が苦笑いをする。

やっと着いたと・・・重い足取りで辿り着いたタナダの背を休める事なくバスルームへ詰め込まれた。
眠気が誘うが、久しぶりの風呂へ浸かれた事にホッとして体を癒して出た。

『(笑)何処まで出される?』
座れと隣へ促して梶はタナダへ声にした。
『今日は3件でした・・・自分と同じ仕事をする者が居ないから仕方ないけど・・・』

『(笑)諦めてんだろ』
『 ・・・はい』
『ん(笑)頑張ったな・・・ん?数珠がねーぞ?』
『(笑)神社へ預けて来ました・・・』

『替えはねーのか?』
『はい・・・
それより、いつも不思議だったんですが・・・』
『何がだ?』

『ここに霊は来なくなりました・・・護符・・・置きましたか?』
『いーや?何もしてねーぞ?』
『あれから2回ほど居たのに、それから一切視てなくて・・・それでも私には有り難い・・・ココに来やすいから』

『(笑)それは助かる・・・』
『はい?』
それは何でだと驚いたタナダが梶を眺めた。

飲みながら笑う梶の姿を眺める・・・洗い髪が、いつもの彼とは違う雰囲気を漂わせていた事で小さく飛び跳ねる自分の中に気づいた。

照れた笑みになり視線を外したタナダに可笑しくて余計に見つめた。
仕事上がりで自宅へ帰る途中、連絡が取れ家へ来いと呼んでみたのは梶だった。

最初の頃より飲みに来るタナダ・・・話の掛け合いは楽しく、本当に話は尽きないほどに気も合った。

一緒にいて苦でもなく面倒もない・・・互いに慣れ始め、自宅を行き来する事もあったが部下からタナダへ頼まれ今は梶の自宅だけになった。

謝りもしたが、タナダは気にも止めず部下へも声にして助ける事もあった。
それでも一人片し異様な疲れの原因を知る梶だけは有無もなく自宅へ運ばせ自分で介抱した。

不意に起き出したタナダは飲むと照れながらビールの缶を持ち出した。
冷蔵庫の中味からツマミを作り出しテーブルへ乗せていく。

『嫁に(笑)貰ってやるか?』
『(笑)女を呼んで作らせとく』
『何だよ(笑)出来た頃に食いに来んのか?』
『あー(笑)いいアイデアですね』
言いながらポスッとソファーへ座り飲み始めるタナダに笑う。

『あーマジで旨い(笑)』
一口頬張りビールを飲む梶に笑み返すタナダもいた。

数本をあけたタナダに笑いながら、もう一つを開けようとした手を止める。

『二日酔い起こすぞ(笑)』
『爆睡したくて・・・(笑)飲みたくなったからですよ』
『(笑)いつもの倍になったぞ?』
『居心地の良さで(笑)酒が旨いと改めて思いました・・・』

『(笑)タナダ』
『(笑)はい』
『酔った(笑)タナダは可愛いな』
『(笑)はい・・・・ん?可愛い?』
『そうだ(笑)可愛い』

『 ・・・び、微妙だ』
『やじゃないのか(笑)』
『(笑)からかわないで下さい』
『してねーよ(笑)』

互いに掛け合う言葉に笑う・・・次だと声にしようとしたタナダの顔は驚いた顔つきになった。

仰け反るようにソファーへ凭れ視線は少し上へあげていた。

『タナダ!追い祓え!』
『 ・・・』
「(笑)やっぱな・・・おめー俺が見えんのか」
『視えます・・・何用ですか?』
「酒が旨そうでな(笑)。力つけて遊ぼうかと思った」

『お酒はあげますが、飲んだら・・・飲んだら去りなさい・・・』
「(笑)やなこった」
『祓いますか?』
「弱いんだろ(笑)そんな力もねーくせに」

『体験しますか?』
「コイツを乗っ取るぞ(笑)」
『乗り移る力はないでしょう・・・勝手な真似はせず悪戯は止めて逝きなさい』
『ん?俺を利用すんのか?』
それは自分にかとムッとしてタナダの手を掴んだ・・・

「あー(笑)惚れてんのか。やべーな。脅しのネタは貰ったぞ・・・」
にやけた企む声音に苦笑いだった・・・梶に入り込まれないように、静かに鞄から取り出したモノにソレは驚き後退りし始めた。

指へ一滴溢し梶の額へ触れた・・・驚いた梶はタナダだけを見つめ黙っていた。
『この意味(笑)知るのですね・・・』
見返したタナダの呟きに余計に驚き眺めるモノ・・・

「滅すのか?俺を?」
『逝くべき場所に逝かないからです。生きた者へ逃げ込むべきではありません・・・戻れず彷徨くだけの存在となります・・・貴方も視た事はあるでしょう?いいのですか?』

「 ・・・」
本当にあるのだろう考え込む姿を眺めるタナダは数珠がない事に気づくが、そっと梶の手に触れ視線はソレへ向けていた。

『遅くはないと思います・・・』
「間に合うのか?」
『大丈夫です・・・目を閉じ思い出しなさい・・・逝く道は現れてくるはずですから・・・』
そう言われ静かに笑み目を閉じた事にホッとして見つめた。

グッと力が抜けた自分に笑う・・・フーと息を吐いたタナダに笑みながら抱き寄せた。

『か、かじさん?』
その行動に驚き彼の名を呼ぶ。
『(笑)頑張ったな・・・数珠ばかりに頼らずに頑張れ・・・』
優しく撫でてくれる梶の手に笑みを浮かべるタナダだった。

偉いと小さく呟きながら、撫でた手の感触にタナダは照れた。
少しずつ違和感は起きる・・・小さな子供を癒すような優しいキスは自分へ向けられてきた。

髪に触れた唇に緊張する・・・それは下がり瞼へ落とされた・・・

『かじさん・・・』
『ん・・・(笑)なーんか可愛くてな・・・』
『私は・・・』
『ん(笑)されとけ・・・どうせ疲れて動けねーだろ』
『(笑)はい・・・』

違和感はないタナダに苦笑いをする・・・愛しさは静かに沸き起こり不思議と自分も嫌じゃなかった事に笑えた。

だだ癒されていく自分にホッとした・・・頑張ったと慰められた優しい声音が心地好く、その中で眠りたくなった。

張り付くほどに近い梶に、照れは半端なく沸くが それも心地良いのだと思えた自分に照れた。

触れた自分の唇は余計に温まる事に苦笑いだった・・・女へ向けた想いより数倍も愛しさは大きかった事に気付く。

受け入れたような笑みの気もして嬉しくもなった。
そっと頬へ触れる・・・何だと微笑んだ笑みに見惚れ思わずだった・・・唇を重ねた自分に苦笑いだ。

抵抗もない唇・・・その触れた唇を覆う・・・離したくなくて重ね貪るように深く絡ませた。

微かなタナダの漏れた声音が自分を昂らせた・・・自分をさらに高みへ運びそうで・・・驚き逃げたタナダを追って絡ませた。


驚きはしたが嫌でもないキスは深く絡まり出した・・・それでも梶だから・・・そんな想いだけで預けた。

離れない唇・・・少しずつ恥ずかしくもなる・・・愛しいと梶を想える自分もいた事も気付いた。

首もとへ触れた梶の手が熱い・・・そんな気がして見つめれば梶の視線と重なった。

優しい眼差しの笑みに見惚れた・・・自分とは違い綺麗な瞳が、今は自分だけを見詰めている事に嬉しくもなった。

自分へ預け始めたタナダに嬉しくて貪る・・・微かな声音が響きは自分だけにと、より絡ませればタナダの目が潤み始めた・・・

自分を見返す目・・・潤む目は、今は自分だけに向けてくる・・・誰にも渡せないと思えるほどに・・・そばへ置き見つめていたいと思えるほどに求めた。

気づけばシャツのボタンは外され身が露になっていた・・・恥ずかしくて梶の手に触れてみれば苦笑いをする彼の顔があった。

『(笑)いいか?』
『 ・・・(笑)』
笑み頷くタナダに優しく口付けを落とした。

身へ触れた手の温かさが自分の中を熱くしていく・・・その場から弾けるような嬉しさや気持ち良さは全身へ駆け巡り出した。

思わず溢れた吐息・・・それだけで昂る自分に照れた・・・自分の身が恋しいと叫ぶ・・・タナダに触れていく自分の手は笑みを浮かべながら巡り出していった。

小さな跳ねた身が可愛いと笑う・・・タナダの照れた笑みが自分を頂へ真っ直ぐに運ぶ・・・そんな気がした。

戸惑い震えたタナダの手に笑み、ここだと一緒に触れながら導く・・・微かな驚きは可愛い照れた笑みで自分を捉えた。

『はじ・・・私は初めて・・・で・・・』
『(笑)気にしないで感じとけ・・・』
小さな囁きに運ぶ手は喜んでいた・・・その反応で自分が突き抜けそうで苦笑いだった。

迷いも持つタナダの手が自分へ触れる・・・その温かさが滲むように巡り出した。
苦笑いだ・・・この自分の昂りはタナダが先だと狙うように触れた。

ビクつくタナダの照れた笑みで大丈夫だと囁き、愛してると囁いた。
それは自分もだと今の思いを声にする・・・恥ずかしそうに照れた笑みが自分を熱くさせていった。

また戸惑い始めたタナダに口付ける・・・呼び覚まされたように唇が微笑んだ事に苦笑いだ・・・激しさは抑え怯えさせないように囁きながら求める梶もいたのだった。

駆け巡る自分の身に驚き戸惑った・・・その度に好きだと囁く梶に照れ・・・そして愛してると囁く声音に身は昂り湯が沸騰していくような感覚が芽生えれば心地好さは激しく震え全ては梶へ渡した。

真っ白な・・・何かが弾けとんで行く事に驚く・・・気持ち良い感覚は居心地も良かった。

より抱き締めてくれる腕の中は温かく、それは自分だけで留め置きたいと思えるほどに優しく身は焦がれていった。

気づけば梶の腕の中から出されてもいなかった。
心配したような梶の顔に照れながらキスを返した。

『(笑)大丈夫だったか?』
『平気です・・・ここに居たから・・・(笑)安心して居れる自分が嬉しいんです・・・』
タナダの呟きに照れたが梶は優しくキスを落とした。

イク瞬間、全てが弾け飛び熱くさせた・・・ヤバいと見つめれば同じような笑みがあった事にホッとする。

自分へ回したタナダの手は一瞬だけ食い込んだ・・・その笑みが自分へ刻まれた事にホッとした。

フッと新たな力が抜けていく・・・同じ気持ち良さを味わい互いに弾け飛んだ・・・同時にイッたタナダに嬉しくてキスをした梶もいた。

目覚めれば照れた笑みが返り探るように見つめた・・・寝とけと促す・・・本来の・・・今だけの想いでもないタナダにホッとした梶だった。



ハロウィン2018

2018-10-31 23:31:45 | イベント 関係の お話


<番外編 その1 >


久しぶりだと参拝に来た。
稼業が稼業だけに負は困ると親の代から来ていた場所だった。

神社の境内に身を置いて体を休める人がいた事に目を止めた。
辛そうに項垂れていた姿が気になって見ていれば少しずつ青ざめていた顔色は戻り始めたようだった。

人の心配かと苦笑いをした男は呼びに来た部下を連れ本殿へと出向いたのだった。

数ヵ月後・・・また同じ場所に居た人に驚いた・・・眺めれば前回と同じだった事が可笑しくて笑った。

その後に気になり数回、神社へ足を運んでみれば同じように居座り休んでいた姿に口を引いた。

声をかけようか迷い・・・それは一瞬で思い直した自分・・・この自分の居場所なら敬遠される・・・数多い部下の出で立ちで想像は容易い。

迷惑までかけられないなと苦笑いをする。
自分の想い・・・その理由にも気付かずに、何時もの理由で神社へ通う・・・それも可笑しいと自分を笑った。


見回りだと街中を歩く・・・
きらびやかな繁華街・・・夜という時間はないのだと街中を明るくするネオンは消えず陽の光りのように地を照らしていた。

その場に似つかない一人の姿を目に止め何だと訝しげながら観察をした。

夜の街には似合わない服装・・・普通の人達でもない格好は目立っていた。
曲がり角・・・そこで急に立ち止まり誰かとの やり取りのようで笑えた。

その人の横を通り過ぎる人達は驚きながら振り向き眺め・・・何度も確認するような仕草で・・・何かで揉めているのだろうと思えた。

暫く眺めていれば、ホッとした顔になりポケットから何かを取り出した・・・重なる手が離れれば手首へ何かを嵌めた気がした。

疲れたような顔・・・そばの店の看板へ手を置き全身から溢れるような溜め息までが分かり可笑しくなった。

『ボス?』
笑いながら何処かへ視線を向けている事に戸惑いながら暫く黙っていた男・・・誰かを眺めているのだと気付けば、それはボスを狙う誰かかと焦りながら観察をした。

それでも違う雰囲気にもなり、それは何だと声にした。
笑みながら顎で示した方を確認してみれば一人、そいつかと検討をつけて眺めた。

危険人物ではなかった事にホッとしたが観察を始める・・・調べろと言われるのかと思えば、ただ見ていただけと知り驚いた。

『ん?前に・・・会った事・・・が・・・』
会った事があるなと考えながら呟くボスに、そうだったかと眺めた。

『あ・・・』
一人の部下が思い出してのか、ボスは誰だと部下を眺めた。
『確か・・・先月、神社で見た者のような気がします・・・』
『あー(笑)。似てるな・・・』
眺めなから話をしていた・・・

不意に力なく体ごと抜けていくような姿と気づく・・・体調が悪いのかと驚いた。
ボスが迷いなく歩き出した事にも驚いた・・・慌て追い掛ける。

腰を支え抱き抱えたボスに戸惑った・・・謝りながら顔も上げられず手の力もないのか、だらけたままだった。

『すみません・・・』
聞いている声音も弱々しく驚いたが、連れ出したボスにも驚いた。
何より車に乗せてしまい別宅へと指示をされた者が驚き身を固めてしまった。

『(笑)いいから行け!』
自分達の戸惑いがバレたが、それでも笑いながら行ったボスに慌て従うのだった。


部下を帰しリビングへ戻る・・・
『お前、名は・・・』
戻りながら名前はと 聞こうとした男は、ソファーに力なく座っていたはずの場所から寝室の方を眺めていた姿に驚き声を失なった。

『その貴女が何用でソコへ?』
・・・・・
『居るべき場所でもない・・・本来の場所へ帰りなさい・・・』
・・・・・
『確かに彼の部屋ですが、貴女が苦しむだけと知るのなら諦めなさい。
そうです・・・居場所はありません』

それだけ言うと寝室を眺めていた視線は自分へ来て静かに流れ窓の方へと向けていった事に驚いた。

『良かった・・・』
そう言いながら手首へ触れた手を眺める男・・・
フーと息を吐いたが、床へストンと座り込んだ・・・

『大丈夫か?』
声をかけられ驚く姿に笑いながら抱き上げソファーに座らせた。
『重ね重ねすみません・・・お世話になり・・・迷惑までお掛けしました』
『かまわねーよ(笑)。それより・・・』

『あっ・・・すみません。失礼しました!』
慌て立ち上がるが、抜けていた力は急だからか入らずヨロケてしまった。

『いいから動くな(笑)』
座らせた男の呟きに、もう一度礼を言った。

『さっきの・・・事の説明をくれ(笑)』
『 ・・・』
『(笑)何だよ・・・言えねーのか?』
『そーではなく・・・』
『(笑)いいから言ってみろ』
『 ・・・貴方は信じるか・・・』
迷うように考えていたような呟きに笑いながら促す男を見返した。

『 ・・・』
『言ってみろ(笑)構わねーよ』
『 ・・・では』
言いましょうと声にした。
『(笑)おう』

『 ・・・その部屋で暮らしていた女性に』
『ん?女は部屋に住まわせてないが?』
『あ・・・そうではなく・・・
えっと・・・・その前に・・・聞いても良いですか?』

『いいぞ(笑)』
驚いた・・・少しは訝しげ不審にも思うだろう出来事の後に聞く可笑しさを持たない人に。

『 ・・・いい(笑)』
『 ・・・はい。貴方は霊がみえますか?というか信じていますか?』
『あの幽霊ってやつか?』
『はい』
『(笑)見た事はない』
『 ・・・』

この人に違和感はないのかと驚きしかなかった。普通なら、何だどうしたと慌て別の会話へ流されるが聞かれた事に戸惑いもなく答える事に驚いた。

『私に・・・私は』
『あー(笑)幽霊が見えんのか』
『 ・・・はい。普通の場所・・・ココに居るべきではないと、逝くように話を』
『してたのか・・・』
そうだったかと普通に受け止め声になっていた人に驚いた・・・怖さや気味の悪さ、恐れはないのか気にもなった。

『 ・・・はい』
話をしていたのだと呟けば、そうかと頷きながら苦笑いをして自分を見ていた男を見返した。

『ん?』
『 ・・・怖くはないのですか?』
『あー・・・・ねーよ(笑)。第一、見えねーしな』
確かにとフッと溢れた笑みに見惚れるように眺める男に驚いた。

『あ・・・・私は田奈多優と申します。大変お世話になり、あり』
『(笑)タナダか。言い名だ。俺は梶将貴という・・・宜しくな(笑)』
礼を言おうと声にしたが、それを切り満面な笑みで自己紹介をする男に驚いた・・・

『お願いします・・・・え?なぜ・・・』
『(笑)そりゃ知り合いになったからだろ。何かの縁だ(笑)、ゆっくりしとけ。なんなら(笑)泊まっていけ』
『 ・・・』

『体が弱えーのか?昔から?』
『 ・・・そうではなく、霊の気が強いと』
『あー倒れそうなほどに疲れんのか・・・てーへんだな(笑)。その体質は』

『 ・・・(笑)』
『ん?』
全てに軽く、自分への気味悪さも何も気にも止めずに声にする事に可笑しくて笑み返した。

『いえ(笑)、普通なら気味が悪いと怖がったり、遠ざけていく事なのに・・・・貴方と話せば(笑)これは普通の事のような気もしてきて・・・(笑)可笑しくなりました』

『(笑)そういうヤツもいた・・・それだけだろ。
それより怖ーのは生きた人間だろ(笑)・・・考えられる頭があるのに相手と話さずに勝手に片す・・・
人の為と、声も聞かずに事を起こしやがる・・・』

『 ・・・』
『あ、わり(笑)』
話ながらも少しずつ怒りを覚えた声音になったとタナダへ謝るカジに笑みながら首をふった。


初めて逢うタイプの人だと驚いた・・・
自立と、この街に住み始め数年が立つ。
依頼されれば街の外へも出向く・・・一人だからか、あちこちへ呼ばれていく。

師匠から連絡は来るが大丈夫と自分を安定させ身を清めてから出向き用が済んだら清めろ・・・それだけの毎回の声に本当に自分には合っているのかと疑問は大きくなっていた。

知られれば拒否され、そんな職業かと驚かれ線を引かれていく・・・既に話し相手もソコをつき余計に心身の立ち直りは遅くなって来ていた。

だから暇が出来れば近所の神社へ足を運んでいた。
神官は師匠を知るので気軽に過ごせる事もタナダには余計に安心する居場所にもなっていた。

梶という彼の言葉に苦笑いだ・・・回りの人がいて本職という彼の場所は想像できた。

一人なら普通のサラリーマンでもない容姿は、職業は何だろうと見れば考えそうな出で立ちだった。

撫で付けられた髪・・・自分より遥かに落ち着いた雰囲気は大人そのもののようで羨ましかった。

自分を芯から持つ人・・・中に重きがあり自分で先へ行ける人と思えた・・・


疲れた笑みだったタナダ・・・何かを話したいようだか眠そうに目は静かに閉じていく・・・その姿が可愛くて眺めていても飽きないなと苦笑いをした。

ソファーへ凭れ力なく埋もれていく姿に笑み、端にあった毛布をかけてやれば温かさが分かるのか口端が笑み寝入り出した。

ビールを飲みながら窓から見える夜景へ目を流した。
人が一人増えただけなのに、ほんのり温かさが室内へ漂う居心地の良さに笑えた。

会話さえしていないが、気にもならず安心したように眠るタナダを時々 暇だと眺めた。

一瞬・・・悲し気な顔になり何だと眺める・・・苦しそうな息遣いに驚き、大丈夫かとタナダの頬へ手を伸ばす。

人肌の温かさが分かるのか、静かに笑みにかわる・・・これが安心するのかと自分へ寄せ背凭れへ凭れた。

タナダを抱けば自分までが温まる・・・毛布一枚だからか余計に心地良いのだと笑みが溢れた。
面倒だとソファーへ乗り上げ足の間へタナダを収め抱き寄せた。

毛布をかけ直せば余計に張り付く人肌の温かさが身へ染み込むように気持ち良くなった。

抱いて寝る心地良さ・・・梶は自分がしている可笑しさに笑みながら眠りについたのだった。



ハロウィン2018 -8 -end-

2018-10-31 22:55:27 | イベント 関係の お話


優しい笑みを自分へ向けて見送ってくれる巫女へ会釈した。

奥の大巫女が笑みを浮かべて手をあげていた・・・

=今の貴女なら大丈夫です(笑)。ソコに居たいなら幸せに過ごしなさい・・・大丈夫と自分を信じ思う先を見つめていけば良い=

声音が優しく響く・・・自分へ向けた声と知り笑みながら頷いた。

「リン・・・いいのか?」
『ん・・・声だけで十分(笑)。感謝してるし恩も返したいけど、それは誰かへって(笑)ずっと言われてたから。
ニキも(笑)ありがとう・・・これからも宜しくね』

「 ・・・・・感謝(笑)してるんだろうな」
『物凄く(笑)。もっと大好きになったもん。自分と生きてくれて、ありがとう(笑)』

照れた笑み・・・その思いが分かるニキが口を引く・・・大巫女を眺め、リンを眺める。

=感謝しますよ・・・リンの存在を受け入れた貴方に・・・=
-もっと崇めろよ(笑)-

=(笑)声が聞けて、話せて嬉しく思えました。貴方自身の先も貴方らしくリンと共に歩きなさい=

その言葉に苦笑いだ・・・フッと笑うニキは足早にリンの前を歩き出したのだった。

薄れかけた大巫女の影・・・終わり間近な状態と気づくニキもいた・・・本当に言わないで置くのかと眺めれば、言わなくて大丈夫なのだと諭す呟きに苦笑いだった。

《 リンを守れ・・・すれば己の先も静かになるのだから・・・》

大巫女が自分へ話をした日を思い出していたのだった。




いつもより静かなニキを眺めるリンもいた・・・違和感はあっても理由に気づけず、それでいいのだと諭すニキに苦笑いだった。

了解という呟きにも、いつものようにフッと笑うだけの事・・・リンが何だと顔を覗き込んでもニキは笑うだけだった。


通常の仕事だとトキマサが迎えに来てくれた。
前回の礼だと車を出してくれたタナダへ連絡をし礼を言った。

『構わない(笑)』
それでもリンは最後まで向かうのだと知れば邪魔をするように自分も動いた。

『二人でいけそう?』
トキマサへリンが呟く・・・そんな雰囲気はあると声にしたのだ。

『違和感があって(笑)俺らを思い出したから確認して欲しいとさ(笑)。
だからマジで確認だけにしとこうぜ・・・』
『(笑)了解!』

「(笑)寝てるぞ」
『ん(笑)大丈夫だから休んでて』
『ニキ? (笑)師匠だぞ?』
ニキが休むのかと声にしたトキマサに苦笑いをしながら頷くリンもいた。

確認・・・タナダから言われたが本当にソレだけで終わる事も少なかっただけに信用はするなとリンへ呟いた。

笑むだけのリンを眺め、口を引くニキの笑みは優しく視えた・・・何より偶然だろう姿にトキマサは驚いた・・・
人のような優しい笑みだった事に・・・

ジッと自分の後ろを驚きながら視ていたトキマサに苦笑いをする。
その驚きでニキの姿を視ていた事に気づく・・・チラリとニキを眺めれば、視線は重なり笑み返した。

スッと自分の姿を消す・・・そんな事も出来るのかとリンまで驚いて眺めた。

フッと溢れた笑う声音を楽し気に見つめ、さあ行こうと促すトキマサだった。

どんな事態に入り込むのか知らないだけに頑張ろうと思えたリンもいた。

自分の背から首へ流れる優しい手がある・・・それは自分へ大丈夫と背を押してくれたような・・・自分がいるから大丈夫と教えてくれているような・・・そんな優しい温かさだった事に嬉しくなった。

ニキの手は、やっぱり温かいと笑むリン・・・今も・・・これからも一緒にいれる嬉しさは次々と自分から沸き出すようでホッとする。

ずっと先まで共に行ける喜び・・・一緒に・・・隣にいるだけでホッとする自分にも照れた。

有り難くて・・・嬉しくて・・・それは少しずつ大きくもなり・・・共に生きるべき互いの存在に改めて確認出来たような気もしたリンだった。


-end-



お付き合い下さり感謝です。
何にしようと考え飛び込んだ この話は、私用でストップしてしまい・・・数日後に控えるハロウィンに間に合うかドキドキしてました。

空想へ飛ぶ・・・暇も時間も全部に思うように進まずで・・・ようやく今となりホッとしたtamiでした。

駆け足で・・・忙しかった今月・・・何とか駆け抜けられそうです(笑)ココは。
ありがとうございました!
2018・10
-tami-



※よければ番外編も(笑)どーぞ。
イベント話へ捩じ込みます(^^)v






ハロウィン2018 -7

2018-10-31 22:14:38 | イベント 関係の お話

恒例行事の強制参加・・・当たり前のように田舎へ子を連れていく事に嫌気もさしていた両親だった。

親族が集まり、お前達は直系に近いのだからと言われるが、扱いは酷く・・・リンが産まれて余計に悪くなった。

両親以外にはなつかず、怯え泣くだけの子・・・どんなにあやしても泣き止まず、可愛くないと相手にもしなくなった。

成長すれば、泣く事も多少は減ったが笑顔を見る事はなかった。
何かに怯え、逃げ惑う・・・来るなと叫び部屋の端で震えていた。

いつかは部屋に一人なのに誰かと話す会話をしていた・・・大人のような言葉使い・・・何かに受け答えもしていた様子は不気味だった。

気がふれたような叫び・・・何かに怯え叫ぶリンを驚いて眺めるだけの日もあった。

主という老夫婦は考え、悪霊が憑いたかもと 祓って貰うのだと神社へ連れ出す事もあった。

敷地へ入れば不思議と静かにする・・・促されれば従う・・・聞いてもみるが声にはしなかった事で何かが子に乗り移ったのだろうと勝手に思い込み祓いに来たようだった。

それでも帰れば同じ様子のリンへ、変な恐れを抱き始めた親族の進言で老夫婦は意思を固めてしまった。

子の親へ用を言いつけて子から離した・・・いつもなら買い物へも何をするにも邪魔な場所へも連れて行った二人は我慢しながらもリンに待つよう言うと出かけて行った。


『何が怖い・・・』
『 ・・・』
答えないと苦笑いをした婆は促す。
『それを取ってやる。一緒に着いて行きなさい』
爺が言った言葉に頷く子を悲し気に見つめた。

『迷うな・・・』
叔父の呟きに項垂れ押し黙った。
『裏の山奥にな、お前を泣かないようにする神様がいる。
そこに行けば大丈夫だ、連れてってやるから お前は親を安心させてやれ』

『行くぞ!』
迎えに来た誰かの声に、叔父はリンを押しやった。

手を繋いでくれると思い手を出したが、その手は背を押し素早く離れた事で諦め・・・両親が悲しむ事は嫌だと我慢して着いていった。

何より視なくてすむならと思えたから、それが出来るならと従った。
緩やかな山道・・・それは時々、道から反れて入り込んだ・・・疲れ助けて欲しいのに大人は手を引いてもくれなかった。

笑うモノがいても、不思議と近寄りはなかった事にホッとしながら先を行く大人だけを見て歩いた。

夕暮れ・・・陽がくれるのだろう岩壁にある大きな裂目がある場所で火を起こす大人を眺め平な岩へ腰を下ろして眺めた。

自分が寝ていた事に驚いた・・・温かな火の明かりで辺りを眺めれば誰も居なかった事にもっと驚いた。

それでも怖さのない自分・・・薪を探しに行ったのだと動けるはずもない自分を落ち着かせた。

次に気づけば近場に大量の薪はあり一つずつ加えていった。

寒くもないが、途中で食べろと持たされたリュックから お握りを出して食べる。
残りは後でとしまいこむ・・・一人だが怖さのない空間で・・・静かだった事の方が嬉しくて落ち着けた。

ここが その場所だったのかと、静かな場所だった事にホッとした。
声を聞く事もない・・・驚かせるモノも居ない・・・怖い姿で助けろと騒ぎ立てるモノ・・・体を貸せと脅すモノも居なかった。

こんな場所があったのかと驚いたが、安心も出来る場所だった事に嬉しくて火を眺めながら自分を癒すように体を楽にした。

裂目の入り口に何かが居ると分かるが自分へ近付かない事にホッとして構わずに眠った。

寒くなり薪を足す・・・少し前にも習った事はあった。
誰も視えない もう一人の婆が教えてくれた・・・空気が交ざるように・・・薪は一つずつ・・・上手く出来れば誉められ、その理由まで教えてくれもした。

今は便利だと笑って呟く婆と笑えた事を思い出した。
視えない爺は昔話が好きで誰も知らない話を沢山してくれた・・・近場に寄るモノを遠ざけてもくれた・・・

嫌な囁きをするモノも親族だった事は驚いたが構うなと耳を閉じてくれる婆の笑みで聞こえないふりをした。

我慢出来なくて食べる・・・不思議と薪は無くなりそうだと思えば、いつの間にか増えていた事には驚いた。
だから苦でもなかったが、お腹が減った頃・・・帰ろうか迷った・・・


『ジッとしてたな・・・』
その声は叔父の声だった・・・その人は驚きながらも自分のリュックへ食料を入れてくれた、
『ありがとう(笑)』
幼いリンの呟きに驚いた顔で見返す・・・

『(笑)ここは大丈夫・・・』
その言葉に驚きながらも自分を眺める叔父を見た。
『 ・・・家へ帰る事は駄目だと言いに来た』
『 ・・・いるの? ・・・ママとパパは?』
『何がいる?』
逆に驚きながら言った叔父の言葉に何だと不安になるリン・・・

『 ・・・い、いる』
その叔父の呟きに怖いと自分を抱いて見返した・・・
『じゃ帰れないよ・・・怖いもん・・・』
『・・・・俺が来た事も言うなよ、叱られる・・・』
どんな意味かは理解出来なかったが分かったと頷くリンを眺めた。

『暫くココで暮らせ。たくさん食わず少しずつだ。じゃーな』
分かったと言う前に足早に戻っていく叔父に驚いたが、叔父が言った居るという言葉が大きく それが怖いのだと話せなかった。

両親はと聞きたかったのにと悲しくもなった・・・
大丈夫だと・・・不安を自分で消す・・・ココよりも怖い場所・・・両親が怒られている姿も見なくてすむ。

この場所なら我慢は出来ると、消えない火を眺めるリンもいた。
明るくなれば辺りを眺め静かに火の番もしながら時間を潰す・・・遠くには行けない・・・ココに戻れないと思えたから。

後はアレが来ない事を祈るだけだ・・・一人は怖い・・・それでも両親を待つ時間と同じだったからか、静かな空間を楽しんだが・・・それは数日のようだった。


どのくらい日は過ぎたのだろう・・・
薪が足された音に目が覚めた・・・それでも力が入らないリンは誰かと見れなかった。

気配が静かだった・・・どーしても気になり・・・目が合う・・・驚いた顔で自分を見ていたモノを見返した。
怖さはなく、悲し気な目だったからか不思議と優しくも視えた。

『お名前・・・は?』
いつか視たモノ・・・だからか余計にホッとしたが、ふと考え・・・それでも知らなかったと苦笑いだ。
聞いた事は無かったとリンは話したくて声にした。

「ニ、ニキ・・・」
『(笑)薪を・・・ありがとう・・・寒かっ・・・た・・・』
そうかと苦笑いをしたニキは一つをくべてリンを眺めた。

「(笑)おっきくなったな」
『ん・・・だからココに居れる』
「気付いてるか? お前は捨てられたぞ?」
『(笑)違うよ・・・初めてだけど・・・皆で守ってくれた・・・』
「お前が怖くてココに捨てたんだ・・・」

それは本当なのだろう眼差しにガッカリしたリン・・・それでも両親を想い・・・寂しくもなった。

『 ・・・・・ニキ・・・ニキは居てくれる?少し寝たいから・・・何だか眠くて・・・水もないから・・・出たら怖いし・・・
ココはね・・・あれが居な・・・いか・・・ら怖くない・・・の・・・』

そう言って目を閉じた・・・
今は動けない・・・寝て力を貯めてから・・・そう思った・・・視えない婆から聞いた事もあったから・・・。


喉が潤い、静かにゆっくりと口へ水が入り込む・・・喉の渇きが消えホッとした。

『ありがとう・・・ニキなの?』
「 ・・・」
『小さいのに・・・私を持ち上げられるなんて・・・凄いね(笑)・・・嬉しい・・・』
優しく包んでくれているニキだったと、これは嬉しくて安心したリンだった。

「親と逢いてーか?」
『ん・・・だけど怖い・・・』
いると言った叔父の声が聞こえる気がした。
「お前を探してるぞ・・・」
『怖くて・・・帰りたいけど・・・』
「連れてってやる・・・」

『ニキが一緒にいてくれたんでしょ?いつも私の様子を見てくれてた?ニキだよね?』
怖さのない場所だったが、不思議と安心も出来たのはニキのお陰だと思えた。
「 ・・・」
『(笑)ありがとう・・・』

「食いもんねーだろ」
『もうない・・・』
「戻ったら食え」
『ニキも食べてる?』
「 ・・・あぁ」
『お腹いっぱいじゃないんだね・・・帰ったら一緒に食べよ(笑)』

「喰いもんが違げーよ・・・」
『ママに準備して貰う(笑)。だから一緒に帰ろ』
「出れねーんだ・・・」
『捕まってる?』
「 ・・・」

『(笑)出してあげる。一緒に帰ろ・・・そしたら助けられるから教えて』
「なんだ?」
『(笑)逃げる方法』
「怖くねーのか?」

『だれ?ニキが?
(笑)大丈夫だよ・・・ニキの手はあったかいもん・・・私を見てて守ってくれてるもん』
「そっそーでもねーぞ?」

『一緒に居たいの(笑)。ニキは私が守ってあげるね。約束よ?』
「 ・・・お前」
『大好きな一人だから(笑)。一緒に居たら楽しいと思うの。
ニキが私を助けてくれるなら、私はニキを助けるよ』

「行けねーよ・・・」
『んー・・・探して見つけてくれる?
私が何処に居るか探せるよね・・・』
「まーな(笑)泣き声は覚えたぞ?」
『(笑)一緒に生きてくれる?怖いから・・・居ない場所を一緒に探してくれる?』

安心と思えたニキの存在・・・ニキまでが自分を捨てて行くのかと怖くもなった。

「 ・・・泣くな」
溢れた涙を拭きながら呟くリンに口を引くニキもいた。
『(笑)絶対だよ?逢いに来てよ?』
「 ・・・」
『ニキが好きなのに・・・』

返事をしてくれないと、重い瞼を開けて頬へ触れた。
ほんのり温かなニキに笑む・・・戸惑うニキも見返した。

『逃げられるなら逃げて私の所に来てね(笑)』
「 ・・・」
それでも返事をしないニキの頬を両手で触れ目を合わせた。
苦笑いしかないニキ・・・それでも笑ったと嬉しくて笑み返すリンだった。


自分の名が森の中へ響く・・・嬉しくて探すリンに可笑しくて抱きながら見えるように体を向けてやった。

「ここまでだ・・・」
『待ってるから来てね!』
「 ・・・」
『私の所に来て』
「捨てられて、こんなに辛い場所に置いてきぼりされたんだぞ?また捨てられるぞ?」

『なら、その前に来て教えてよ・・・
ニキが来るの待ってるから・・・ニキは私が嫌い?』
「いや・・・」
『お願い ・・・なら私を探して迎えに来て!ニキ・・・』

お願いと悲し気に呟くリンの頬へ触れて見つめた・・・その手を優しく包み頬擦りをして染み込めと願いながら・・・離さないでと祈りながら目を閉じた。

不思議とニキがいれば安心を覚える自分を知った・・・大丈夫かと顔を覗かせるニキに嬉しかった記憶が甦る。
また逢いたいと、離れたくない気持ちが沸き起こり始めた。

自分を守ってくれたなら、今度は自分がという思いがわけば絶対にしようと決めたリンだった。
離れたくない一心でニキへ話す・・・答えないニキに悲しくもあった。

それだけ捕まっている場所の辛さは自分よりも大きいのだと、助けてあげたくて祈った。

『返事は?待ってるから・・・
今は?一緒に逃げれそうなの?』
「 ・・・リン」
『ん?駄目なの?私が子供だから?』
声をくれないニキに悲しくなった・・・それでも一緒にいて欲しくて願いながらも声にしたリンもいた。

リンの言葉に答えられなかった・・・あの両親なら大丈夫だろうと思えた。

心配し大丈夫と願い必死にリンを探している声は本物だと思えたから・・・自分じゃなくてもと思った。

そっと額へ手を置けば、新たに微笑んだリンと目があった。

『待ってるよ?(笑)楽しみに待ってる・・・我慢して待ってるから早く来てね(笑)ニキ・・・大好きだよ(笑)』

その笑みの優しさに苦笑いだった・・・ココでの辛い体験は全て消してやろうと額へ触れたのに消す瞬間に微笑んだリンだった事で戸惑った。

『また逢いたいの・・・ニキと居たいから・・・お願い・・・待ってるから来てよ・・・』
「 ・・・分かったよ・・・」

必死に頼み込む小さな人間の子供・・・必要とされる子の想いと、自分への優しさは嬉しかった・・・だから思わず今だけと声にしてしまった自分に苦笑いだった・・・

聞いたリンは嬉しくて、力の入らない腕を頑張って運びニキへ抱きついた。

『(笑)待ってるね。早くだよ?』
リンの嬉しそうな声に笑むとニキは目を閉じ記憶を消した・・・悲しい現実は夢だったと思わせたくて・・・

完全に力の抜けたリンにキスをする・・・思わず・・・そんな思いでそっと地へリンを寝かせる。

見つけたと走り込んできた父親・・・恐る恐る震える手で抱き上げた・・・泣きながら良かったと二人を優しく包むように母親も抱き締めた。
ニキは優しくリンの頭を撫でると森へと歩き出したのだった。


バシッという音・・・驚きながら抱かれたリンを見返した。
力なくだれていたリンの手のひらは、ギュッと何かを捕まえたようにも見え可笑しくなった。

その気配で気づくニキもいた・・・何かで自分の繋がれた気配が消えた事を知れば笑みは深く笑うしかない・・・あの小さな握り締めた手の理由・・・。

蠢く何かは辺りを探り始めた事も分かった・・・それは外れた何かを探そうとしていたのだ。

手繰り寄せては勢いよく放たれ、うねりながら森の中を彷徨くように・・・滑るように流れていた。

それを掻い潜るニキ・・・捕まりそうだと一瞬は焦るが不思議とリンの声が木霊すると、自分へ力が入り込む事に気づく。

口を引く・・・
-待ってるよ(笑)-
それだけの声・・・その声の力に笑みながら、それを避け 身を隠しながら場を離れていったのだった。



数年後・・・
探せたが自分がリンには視えない事に驚いた・・・前よりも怯え泣きはしないが、離れた事で記憶も ちゃんと消えていた事にはホッとした。

それでも、何処かで聞いた場所を思い出し声にすれば聞こえたようでホッとしながら調べ始めたリンに安堵した。

場所は知る・・・既に自分の力も弱くなっていた・・・捉え食らい付く力もない・・・やっと見つけたリンに逢えた。

驚きもせず大事に自分を抱く・・・心配そうに眺め泣きそうな顔で少しずつ水を飲ませる姿に不思議とホッと出来た自分も可笑しかった。

何処に行くのも隠すように、そして大事に包むリン・・・自分が必要だと言った声が木霊する・・・一緒に生きようと声にしたリンに可笑しくて笑った。

居心地はいい・・・まして喰える環境もいいと力を取り戻すべく散歩とリンから離れる。

変わらずに怯えるが少しずつ大丈夫という自信がつき始める歳になるとリンは笑みながら、散歩に行けと出してくれた。

喰うと脅しても笑って返してくる・・・喰す姿を見せても驚くのは最初だけで気にもしなくなった。

集め易いリンの友達が来ると探しに行く手間は省け、声のない笑みで礼を言うリンに笑った。

そうかと喰ってみれば大丈夫かと笑いながら自分を視る・・・大丈夫だと眺めればホッとした顔つきで近場の友達とまた話始めた事にも笑えた。


そんな日々だったと懐かしむニキの笑み・・・溢れ止まる事もなく溢したリンは涙を払う事もせずに静かに泣いていた。

想像とは違った出来事の一つ・・・父の親・・・祖父母・・・全ての親族・・・そうだったと改めて確認できてしまった自分・・・両親の今は幸せなのかという思いまで甦ったのだった。