tamiのブログ

このブログ・・・妄想ー空想大好きな私が、勝手に楽しんで・・・勝手に文字にしています。ボロボロですが(笑)

かごのとり 10

2018-08-25 09:20:21 | かごのとり

不思議な緊張感は店内に漂った。
テーブルのあちこちにストーブはある・・・早々に長居はしない事で必要以上に増やさなかった。

わざわざ持ち込んでテーブルを陣取る人達・・・苦笑いをしながら、先に来ていて飲んでいた人達・・・それが少しずつ集まり始めたのだ。

いつの間にか互いのテーブルを占める数は同じになっていた。

今にも飛びかかりそうな状態もあり、アキは我慢もして料理を出していた・・・追加は諦め入り口に貸し切りの看板を出した。

真ん中へ佇むアキ・・・その隣へ立ち、それぞれの男たちを眺めた。

『営業妨害って意味は知ります?』
『 ・・・』
どちらも答えずに押し黙る彼ら・・・

『そこ! それ壊したら貴方をボコるわよ?』
『出来んのか?』
『試すなら敷地から出なさい・・・』
男の凄みも気にせずに呟くアキ・・・

『同じように出すから、飲んで食べて支払いをしたら帰って・・・』
『飲みに付き合え』
『クラブじゃない・・・買われる気もないわ』

『ハヅキは何処から来た?』
いつか聞いたなと口を引いて、上を指差して見返した。
コウヤが立ち上がり目の前に立つ・・・

走り込んできた彼女が見えた・・・タケルが呼んだのだろう、慌てコウヤを離して見返した。

『暴れたら駄目なのに、何で苦しめるの?』
『苦しめてねーぞ?』
『刑事さん達に挑んでるじゃない』
『血の気が多い事を利用して捕まえようとしてんだよ。挑発には乗らねーよ』

『同じでしょ?静かに飲みにって逆手に取る為に煽ってない?』
『ねーよ(笑)』
『どっかと喧嘩中なら、ここまで巻き込まれるから来ないで!』

『 ・・・』
何で知るとマリナを眺めるハヅキ・・・今度は刑事達を眺めて呟いた。

『集団で集まられても、店も困ります・・・多くても4~5人で・・・
男性の集団はここは無理(笑)女性客が多いので・・・』
だから悟れと謝りアキ達をキッチンへ促した。

『(笑)わーお! マリナちゃーん?』
ここかなと呟きながら、女たちを引き連れて来た女性に男たちの顔はそれぞれの笑みが生きた。

『パーティ帰りでねー(笑)飲み足りなかったぁ。
ハヅキは?どの子?』
『ん?』
自分かと顔を覗かせるが、笑みを浮かべたマリナがハヅキの手を掴み彼女の前へ連れていった。

抱き締める・・・
『(笑)相変わらず、凄い体にしてるわねぇ・・・ドレスに響かない?』
『ママ?』
後ろにいた女の呟きに、ハヅキが苦笑いをする・・・全部に触れる・・・肩から胴や腰、もちろん胸も・・・

『変更なし?』
『たぶん・・・』
『まるさん?』
『(笑)ちゃんと、マチって名はあるのよ。アキさんね(笑)世話になったわ、ハルトはどの子?』

『寝てます(笑)』
『そっか(笑)。アキさん・・・休みには戻すから、その間のハルト君を頼むね』
『 ・・・』
何の事だとアキ達はハヅキを見返した。

『話してない?』
『来月って?(笑)』
『面倒でね(笑)』

『ナナオ!。シャインで落とすのか?』
誰だと振り向けば見知る男の姿に苦笑いしかない。

『(笑)あら、立浪様・・・何だろ・・・(笑)狭すぎ』
ここで会うのかと呟く二人、答えずに笑うだけのハヅキを彼女達は眺めていた。

『アキ(笑)』
『マジ? (笑)貯めるの?』
『もちろん(笑)』
『集中したいから?』
『ん(笑)』

二人だけの会話・・・飲めと促し話に交ざるなと飲ませる女たちもいた。
それは刑事達だけではない・・・コウヤの部下へも飲ませていた事に気づくアキが笑み返した。

『立浪様(笑)。そこから出れたのに、寄られたら疑われ戻されます・・・
どーぞ個人で・・・そちらの皆様も同じく個人でいらして下さいませ』

丁寧に頭を下げたマチ・・・申しなさげに彼女の姿勢を戻し、自分からも頼むと頭を下げたハヅキだった。


『ハヅキちゃん・・・』
マリナの心配そうな顔に笑む・・・半分は諦めたような顔のアキ・・・二人に苦笑いしか出なかった。

『ごめんね(笑)。先の自分の夢を始めるの・・・ありがとね。
それと(笑)皆にもハルトを頼んだ・・・
ちゃんと休みは確認しに来る(笑)』
『絶対に?』
そうだと頷くハヅキに笑み返すしかなかった。


皆を帰した後でアキと話を始める・・・
『いつから、まるさんと?』
『一人になってから中庭でね・・・アキも知ってたんだね・・・』
『助けてくれてたの・・・
ねぇ必要なの?本当に?』

『来始めたから・・・確かめたくて(笑)』
『誰?前の人達って事?』
『ん・・・まるさんの店を、また使い始めたみたい・・・

会社の名前を出した時に驚いたから、少し聞いたら・・・話してくれたわ。
それでも証拠はない・・・全部を切り離したらしくて無理そうだった。
だから新たなモノを掴んで・・・聞き出そうと思った・・・』

『危険よね・・・ハヅキの証拠を作り上げられるんだから』
『 ・・・そうだね・・・暫く貯めたら陽がある場所に出て乗り込んでみる・・・』
『上手くいく予定?』

『(笑)頑張る・・・それしか・・・』
ハヅキの言葉に、仕方ないとフッと息を吐いたアキは口を引いた。

振り向けば彼女達だけになった・・・客は追い出したのだと誰かの呟きで知る。
笑いながらも片付けて、早々に・・・完全に貸しきりにしたタケルだった。


それから暫くは、皆の居場所の確認だと出歩いた。
多少の不安にかられる姿に笑うハヅキ・・・ハルトまで押し黙り寝るまでハヅキを観察していた。

『私の働く場所が代わるだけなのに(笑)、なんでハルが緊張してるの?』
『俺の保護者だから・・・』
『(笑)寂しいと言え』
『うるさい!』
ガバッと布団に潜り込んだハルトの頭を優しく撫でたハヅキだった。

『(笑)普通の生活をしてたのに、急に見た事を掘り下げたら・・・有り得ない場所へ連れ込まれた・・・
そんな世界もあったと・・・怖さより無力感だらけで何も出来なかった』

『今なら出来るから、それをしに行くのか?』
『ん・・・後悔したくない・・・』
『妹って・・・さ・・・』

『(笑)物凄く・・・お喋りで・・・明るい子だった・・・
沢山の偶然に気づかれて・・・全部を一つの出来事に纏めた人がいる・・・それを崩して本当の出来事に戻したいの・・・突然・・・未来を閉ざされたから』

『危ないだろ・・・悪いヤツの中に行くんだろ?』
『 ・・・』
『いい人達の中に居るのに、何で危険な場所に行く?』

『(笑)そこへ落とされてから・・・片足は繋がれてるの・・・
だからね・・・ここの私じゃない時は知らないふりをして』

『危険だから?』
『巻き込む事は出来ない・・・余計に掴まったら動けなくなるから・・・』
『しない・・・ハヅキちゃんが諦めなきゃならないって事になるなら・・・
タケルにも言っとくから・・・別人だから近寄るなって・・・それでい?』

ハルトの呟きに苦笑いをして礼を言うハヅキの声に余計に身をまるめていた。
優しく撫でる・・・

本当の弟のような気もして苦笑いだ・・・妹も同じ事を言うだろうと思い出した。
不思議と妹が引き寄せてくれたのかと思えた。

何となく似ていた雰囲気・・・余計に近くなると、ハルトの言動は妹のような気がして嬉しかった。

根は優しく、話せば明るい・・・急に物分かりが良く大人のような言葉を自分へ投げる。
それでも心配という言葉で自分を引き留める姿を見て錯覚する事もあった。

男の子なのに・・・妹と重なる不思議さは自分を引き締める意味でホッとしてもいたのだ。
守る存在・・・生きる場所の実感・・・妹の代わりに教えてくれるハルトに感謝する彼女だった。